安価な中古ミラーレス機とマニアックなレンズで、
コスパの良いアダプター遊びを楽しむシリーズ第45回目。
今回は、まず、このシステムから。
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カメラは、LUMIX DMC-G5 基本性能・操作系等のバランス
に優れ、かつ安価(中古で1万円台後半)でコスパが良い。
レンズは、PANASONIC G20mm/f1.7Ⅱ(H-020A)
2013年発売の比較的新しいレンズであるが、旧型が、
DMC-GF1と同じ時期の2009年に発売されていて、
評判の良いレンズであった。
Ⅱ型は、旧型に比べデザインが少し洗練されており、
少しだが軽量化している、中身のレンズ構成は同じである。
現在の中古相場は、旧型が2万円前後、Ⅱ型が25000円前後
と、数千円の差がついている。レンズ自体の性能からすれば
旧型でも十分なのであるが、デザインの良さを考慮し、新型を
選択した。
f1.7の大口径を活かし、かつ、ベース感度がISO 160と
やや高目のDMC-G5で使う為、ND2(減光1段)のフィルター
を装着している。
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最短撮影距離は20cmと、焦点距離の10倍ルールからすると、
普通のスペックである。
類似の仕様の一眼用レンズで、SIGMA AF20mm/f1.8が
存在するが(第18回記事)そのレンズは、フルサイズ用なので
極めてサイズが大きく、フィルター径にいたっては82mmΦ
もある(本レンズは46mmΦ)
それに比べて、本レンズの何とコンパクトな事!
イメージサークル、すなわち対応センサーのサイズが倍ほど
違うだけで、ここまでレンズの大きさに差が出てしまうのか、
と驚きを隠せないのだが、まあ、シンプルにμ4/3の恩恵、
という事に思っておこう。
マイクロフォーサーズ機装着時の換算画角は、40mm相当と
なり銀塩時代で言う準標準画角となる。
とは言え、元々が20mmと、銀塩で言えば超広角の部類で
あるから、計算上でも多大なボケ量は期待できない。
ボケ量を得るために、もう1歩寄りたくなったり、もう1段絞り
を開けたくなる事は当然なので、ND2フィルターを装着し、
できるだけ昼間でも絞りを開けられる(シャッター速度オーバー
になりにくい)ようにしている訳だ。
しかし、購入前に予想していた程、撮りやすいレンズでは無い
という事がわかってくる。
まず、被写体を探す目線の問題がある。
広角が必要な場合は(本シリーズ記事においては)
GXR+S10 24-70mm相当や、Q7+02 Zoomの 23-69mm
相当や、K-01+20mm での30mm相当とか、すなわち24mm
ないし28mmの画角が得られるシステムを用いている、これが
私には感覚的に使い易い。
対して、銀塩用の28mm広角をAPS-C機に装着した42mm
相当という画角は、どうも「調子が狂う」のである。
つまりレンズは銀塩時代から慣れ親しんだ28mmなのに、
28mmの目線で被写体を探して、いざカメラを向けると、
銀塩時代には,あまり馴染みのなかった40mm相当の画角と
なるからだ。
勿論それは28mmに限らず、他の焦点距離でもセンサーサイズ
の差で画角が変わる、それはもう十分慣れているはずなのにだ。
まあ、これは私の個人的問題なのかも?40mmの画角が、好みに
合っていないのかも知れない・・
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画角が好み(感覚)に合わないという事で、遠距離被写体
中心に変えてみよう。遠景であれば画角の違和感はあまり
関係ないし、いざとなれば、DMC-G5の長所である、直接連続
可変可能なデジタルズームを用いて画角を微調整しても良い。
だが、さらに画角以外の別の問題点が出てくる。
こういう明るい遠景被写体の場合は、ND2フィルターを装着して
かつ、DMC-G5を最低感度にしてあっても、絞り開放のf1.7は、
シャッター速度オーバーで使えず、多少(f4あたり迄)絞って
使う事になる。勿論G5は絞り優先モードで使っているが、
G20/1.7は絞り環の無いAFレンズなので、オールドMFレンズの
ように直接絞りを制御できず、ダイヤルを廻さなければならない。
(まあ、今時のカメラは殆ど全てそういう操作系だ)
そして、1ダイヤル方式のG5では、オールドレンズをアダプター
で使う場合は自動的にダイヤルが露出補正にアサインされる。
(注:これは単純だが素晴らしい発想だ、他社ミラーレス機では、
この機能が無く、絞り値変更用ダイヤルがアダプター使用時には
完全に遊んでしまっている場合が殆どだ)
だが、AFレンズを使う場合は、さしものG5の優れた操作系で
あっても、絞り用ダイヤルをワンプッシュして、露出補正
モードに切り替えなければならない。
これは悪い操作系では無い、ダイヤルに指を置いたまま全ての
操作が出来る訳であり、他社ミラーレス機のように、いちいち
露出補正用のボタンを手探りで探して、それを押してからまた
ダイヤル位置まで指を戻してそれを廻す、という無駄な操作が
不要なのだ。
けど、そうであっても「絞りと露出補正が同時に変更できない」
という問題が依然残っている。
上写真の遠景の塔、シャッター速度オーバーを避ける為、
絞りをf1.7→f4 に変更する、同時に、塔をどう表現するかに
よって露出補正をプラスまたはマイナスにする必要がある。
何故ならば背景の空が明るいから、塔は中途半端な明るさ
になる。
塔の明るさを標準的にするならばプラス補正(しかし、空は
トンでしまう)逆に空の風合いを残すならばマイナス補正だ。
(その代わり、塔はシルエット表現となる)
したがって、この状況では、絞り制御と露出補正設定が同時
に必要だ、これはG5の操作系であっても、ダイヤルを押して
絞りと露出補正とを切り替えつつ、各々の設定操作が必要
なので少々面倒だ。
普段のG5の使い方、すなわちアダプター+MFレンズか、
または、(G5を母艦としている)フォクトレンダー・ノクトンで
あれば、絞り環を左手で廻しながら右手で露出補正を操作できる。
何故同時にしたいかと言えば、カメラを向ける前に、その両者を
調整しなければならない事が予めわかっているから、できるだけ
そういう操作は、ちゃっちゃと済ませてしまいたいからだ。
すなわち、写真を撮る前にカメラの絞り値や露出設定を行うのは、
論理脳(左脳)の仕事であり、写真を撮る時には、感覚脳(右脳)
が動いている。それらを混在したくないので、スムースかつ
速やかにカメラ設定を終える必要がある、という事である。
さらに言えば、最高シャッター速度近辺では、露出補正を
マイナスにすると、それでまたシャッター速度オーバーになる、
なので、また絞りを少し絞らないとならないという面倒な操作が
必要となる。
で、やはり、ここではスムースにいかなかった(汗)
撮ろうとした時、絞りと露出補正の設定が同時に出来ない事に
気がつく。まあ1ダイヤル操作系カメラでは当たり前の話だが、
G5にAFレンズを装着するケースは極めて少ないので、逆に、
MFレンズでは当たり前に出来ることが出来ない事にイラっとする。
撮影直前だから、右脳にすでに切り替わっているのに、それを、
また左脳に戻して、チマチマと設定操作をやる気にはならない、
「ええい、面倒だからいいや!(輝度差を消す為に)擬似HDR
モードにしてしまえ!」ということで、上の、あまり作画的には
意味の無いエフェクト使用の写真を撮る羽目になった訳だ・・
まだ問題はある。
絞りを開けて使える光線状況においても、今度はボケ量の不足を
感じてしまう。
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このような状態では、例えばノクトン25mm/f0.95等を使えば
画面左手前の部分だけにピントを当て、あとはス~っとボカして
立体感を得られる、けど、G20mm/f1.7ではこれ位迄だ。
元々広角なので、絶対的なボケ量が少なく、作画上で、よりボカ
したい時に、そのマージンが無い。
まあでも、これらの課題は、カメラやレンズの仕様上の話であり
G20/1.7の性能自体の問題点では無い。写りは評判どおりに良い
レンズだと思うし、総合的にも悪いレンズでは無い。
今度また別のボディで使ってみるとしよう。
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本レンズの中古購入価格は、2015年に23000円程、性能からの
価値はどうだろう・・? 17000円くらいが適切なような気もする。
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さて、次のシステム
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カメラがNEX-3 MF操作系に若干問題有りで、トイレンズ母艦
の他、AF広角を装着して使う事が殆どだが、今回はMFの広角
ズームを装着して、限界性能チェック(使えるかどうか)をしてみよう。
レンズは、COSINA 19-35mm/f3.5-4.5である。
銀塩MF一眼時代、高価であった超広角レンズの穴を埋める為に、
色々と発売されたサードパーティー製超広角レンズの中の1つだ。
超広角ズームとなっているので雰囲気的には使いやすそうだが、
実際はどうだろうか・・
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銀塩時代、このレンズをOMマウントで購入し、OM-2N等に装着
して使っていた時には、もっとフレアっぽく、描写力もたいした
事はないと思っていたが、意外にいけそうだ。
また、ズーム特有の各種収差は、周辺に関してはNEX-3が
APS-C機である事から、切り捨てられている。
近接撮影、およびその際のボケ質はどうか?
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ここで問題が・・ これ以上寄れないのだ。
最短撮影距離は、極めて長い50cmだ。
19-35mmの広角なので、10倍ルールからすると、
19cmまで寄れて欲しい、まあ、ズームではそこまでは難しい
ので、せめて望遠側の35mmの10倍で35cmまでは寄れて
欲しかった。これはかなり不満な性能だ。
まあ銀塩時代は、広角は絞ってパンフォーカスとし、中遠距離
の被写体を平面的に撮る、というのがセオリーであったので、
最短が50cmだろうが、はたまたレンジ機用の広角レンズで
70cm~1mであろうが、気にする人は殆ど居なかったように
思える。
しかし多種多様な撮影技法が必須となるミラーレス時代、
さすがに、この近接性能では使い物にはならない。
途中から、もうピントリングを最短の50cmにほぼ固定して
絞りも開放にしたまま、被写体を探していた。近接被写体を
見つけたら、あとは自分が前後してピントを合わせれば良い、
MFレンズでの、ごく基本的なテクニックだ。
ちなみに、冒頭の G20mm/f1.7 のような広角AFレンズで
近接撮影をしにくい理由の1つとして、最短を超えて踏み込んで
しまうとAFが迷って往復する、という問題があるからだ。
まあ、システムによっては、むやみに往復する事はなく撮れない
ままの状態で止まっている賢いAF機構もあるが、それにしても、
やはりAF近接は「最短を超えてしまったらどうしようもない」
という強迫観念があるので撮りにくい。
(AFとMFをシームレスに変えれるカメラやレンズもあるが
使える条件が色々ある)
で、COSINA 19-35/3.5-4.5 の場合は、MFであるから
勿論そういうAFの問題は関係なく、安心して近接撮影が出来る。
で、近接撮影の際は、最短が長く、暗いレンズなのでボケ量は
少ないが、意外にボケ質は悪くない。
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本レンズの購入価格だが、1990年代に9000円であった。
良く覚えていないが、もしかすると新品だったかもしれない。
なにせ、COSINAは1990年代当時、MFレンズをかなりの値引率
(何と定価の7~8割引!)で販売していた。下手をすると、その
定価に(中古店側が)惑わされて、中古価格の方が新品価格より
高かった事も良くあったくらいである。
本レンズは、まあ現代においては必要なレンズでは無いと思う。
かつて、こんなレンズもあった、という参考まで。
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さて、次のシステム
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カメラは PENTAX Q7 超小型のミラーレス機であるが、
小型化はメリットばかりではなく、センサーサイズ、操作系等
デメリットも多い。
そして、Qシステムの最大の問題はレンズ互換性の無さであり、
Q用のレンズを他のミラーレス機で使えない事が1つ、
それと、Qにアダプターをつけて一眼用等のレンズを使う事は
可能であるが、その際に、MFのピント合わせを補助する有効な
機能が何も無く、ピーキングは精度が全く足りていない。
で、まあ、実質的には純正のQシステム用AFレンズを使うしか
無いのだが、互換性が無いからと言って、出番が減って
しまうと、なかなか減価償却が出来ない、おまけに減価償却は、
持論のミラーレス機用のルールでは「1枚2円の法則」だが、
Qの場合、専用のレンズ群の価格をどう捉えたら良いものか?
Qでしか使えないのであれば、レンズもちゃんと減価償却を
意識する必要があるだろう。
そもそも減価償却とは、使い切れない、使いこなせない、
高価なカメラを安易に買ってしまう事を、自分にも他人にも
戒めるルールだ。
で、買ってしまった以上はガンガン使い込んで(撮って)
元を取る事が必須だ。
本レンズ、Q用 02 Standard Zoomズームは特徴が無く、
面白みの無いレンズであるが、それでも、Qシステムでしか
使えない以上、沢山撮って元を取る必要がある。
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なお、私の場合は、ミラーレス機では、少なくとも減価償却
レベル(1枚あたり2円)を達成しない限り、同一マウントで、
次の新しいボディは買わないようにしている。
具体例として、本シリーズに登場する中古ミラーレス機の
現在の減価償却状況だが。
>μ4/3機
G1(赤)→0.8円/枚
G1(青)→0.4円/枚
GF1→1.3円/枚
E-PL2→0.9円/枚
G5→1.7円/枚
GX7→償却中(上記が全て償却済みなので買った)
>Eマウント機
NEX-3(1)→償却後、水没故障で廃棄
NEX-3(2)→0.7円/枚
NEX-5→譲渡
NEX-7→償却中(上記が全て償却済みなので買った)
>Kマウント機
K-01→2.0円/枚
>Xマウント機
X-E1→償却中
>GXRマウント機
GXR→償却中(レンズ代込みと考えると償却困難)
>Qマウント機
Q7→償却中(レンズ代込みと考えると償却困難)
と、現在償却中のボディの他は、全て「ミラーレス1枚2円の
法則」をクリアしている。だが、注釈のように、専用レンズ群を
伴うマウントでは、償却が難しいかも知れない。
例えば、GXRでは、本体と3つのレンズユニットで計7万円強を
投資しているが、ユニット群込みで1枚2円を達成する為には、
35000枚を撮影する必要がある。仕様的に老朽化したGXRで、
この枚数の撮影はなかなか難しい。
ちなみに、初代GR Digital(2005年発売)は、10年間以上
現役で撮影を続け、45000枚を達成したが、購入価格も当時で
75000円もしていたので、これでもやっと1枚2円弱だ。
2015年購入のGXRを、その調子で約10年、2025年まで
使うのは、とても無理であろう。
そうした場合、ルールを変えるべきか、ちょっと迷いどころだ。
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Qシステムでも同様。1本1本は安価であったので、知らぬ間に
殆どの専用レンズを集めてしまった(汗)おまけに、Cマウント
(産業用カメラ用)レンズまで買ってしまっているので、
トータルの投資価格は、そこそこ大きい、これもまた減価償却
困難であろう。
思うに、やはりレンズは汎用性が高いマウントの方が望ましい。
本シリーズでは、古いレンズは、1990年代から使用している
ものが良く出てくるが、概ね20年である。各レンズを、どのカメラ
で何枚撮影したか、などはとうていカウント不可能であるが、
それぞれ、十分な数は撮っている事であろう。
近年では、最も多く撮影したレンズは、ノクトン25mm/f0.95で
数年間でおよそ2万5000枚以上は撮っている、けど、新品で
8万円以上もしたレンズであったので、これでもやっと1枚4円弱だ。
対極のレンズとしては、ドラゴンボートの撮影で良く使用する、
TAMRON 200-400/5.6は、20年近く、恐らく8万枚以上は
撮影していると思うが、元々2万円台の中古購入価格だったので、
こちらは1枚0.25円と完全に元が取れている。
商業撮影で、同じf2.8大口径ズームで、年間何万枚、何十万枚と
撮影するならば、元が高価でも、数年で減価償却できるだろう、
まあ、仕事撮影ならば、その結果として収入が伴うから、より
そのあたりはシビアに考える必要があるが、趣味撮影においては
本来、あまり減価償却など意識する必要は無い。好きな機材を
好きなように買えば良い訳だ、けど、それでは歯止めが効かない、
いわゆる「レンズ沼」に突入してしまう事を心理的にも防がない
とならない、だから「元を取るまで撮るという」ルールは必要だ。
結局、レンズの減価償却を、どう考えるかは微妙だが、まあ今の所
「レンズは将来に至るまでずっと使えるから、コストは考えない、
ただし、コスパは強く意識する」という感じであろうか。
まあ、これで「レンズ沼」が止まるとは思えないが・・(汗)
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さて、余談ばかりで、Q7+ 02 Standard Zoomの話が
ちっとも出てこなかったのだが(汗) 本シリーズの初期の
記事(第2回、第3回、第5回)で、たびたび紹介してきたシステム
であるから、まあ、今回はレンズの詳細は割愛しておこう。
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さて、次は今回ラストのシステム。
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カメラはお馴染み NEX-7
レンズは、OLYMPUS E.ZUIKO AUTO-T 200mm/f4 である。
本レンズはレア品である。というのも、普通はこのスペックの
レンズは OM-SYSTEM 用であるのだが、本レンズは M42
マウント仕様となっているのだ。
オリンパスは、1970年代初頭に、FTLというM42マウントの
カメラを発売した事がある、その直後にOMシリーズが発売
された為、FTLは短命に終わったのだが、そのFTL用のレンズ
として、28mmから200mmまで、最小限のラインナップとして
6本のレンズが発売されていた、そのうちの最望遠のレンズが
このE.ZUIKO 200mm/f4となっている。
Eの名前のごとく、レンズ構成は5枚であろう。
しかし、現代においては本レンズの情報は極めて少なく、
より詳細な出自等は不明である。
実は、本レンズを持ち出すのはおよそ20年ぶりだ
(その理由は後述する)さて、実写・・・
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ほう、意外に良く写る、特に、シャープネスとコントラストの
バランスが良い。ただ、ボケ質がちょっと危ない、これは
絞りを使って破綻回避をするしか・・・ううむ、絞りが動かない!
絞りがちゃんと動く事は、レンズ単体では事前に確認できていた、
しかし、M42マウントアダプターに装着するだけで、この様子だ。
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さて、システムの紹介写真がなんだか、おどろおどろしい雰囲気
になっているのは、実は、本レンズは1990年代に、ちょっとした
事件があったからだ。
当時、カメラ好きの友人が居て、彼はオリンパスとコンタックス
の2つのシステムを重点的に収集していた。そこで、私はこの
オリンパス E.ZUIKO 200mm/f4を彼の元に持っていき、
「どう、オリンパスの珍しいレンズだけど、使ってみる?」
と言ったのであった。
彼は「M42マウントだね? じゃあ、アダプターがあるから、
CONTAX RTSⅢに付けてみよう」と、おもむろに嵌めこむ。
・・・そして、2度と外れなくなってしまった(汗)
RTSⅢだが、1990年の発売で、定価はなんと35万円!
当時最も高価な銀塩一眼レフであった。
これはヤバい、35万円のカメラに、こんなしょうもない(失礼!)
レンズが付けっぱなしとは・・
10分ほど2人で、レンズを外す算段を色々やってみたが、やはり
外れない、2人とも技術系なので冷静に状況を分析する。
匠「ほら、FUJIの ST-801なんかも、普通のM42規格ではなくて
開放測光とか独自機能がついていて、他のM42のボディに
つけるのは難しいでしょ? それと同じでは?」
友「これ、OLYMPUS FTL用のレンズだよね? 確かそれも開放
測光だったので同じかも。普通のM42には無い爪とかが
ついていて、それがひっかかっているのだろうなあ。
でも、どうやって外す?」
匠「う~ん、カメラを分解するしか無いかも、でもRTSⅢ(汗)
怖くて、とても自力で分解する気にはなれないよねぇ」
結局、相談した結果、修理代は折半するということで、メーカー
修理に出す事にした。まあ、2週間ほどで戻ってきて、事なきを
得たのだった。修理代は覚えていないが、1万円位だったか・・
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その後、このレンズは、付けたら外れなくなる「悪魔のレンズ」
として長らく使用する事はなかった。
銀塩・デジタル一眼用のM42アダプターは、フランジバックが
一眼マウントとほぼ同じ長さな為、外れなくなったら全く触れず、
どうしようも無い。
けど、ミラーレス時代のM42アダプターは、完全に独立した機構
となっているため、最悪レンズが外れなくても、またアダプターを
買えば何とかなる。本シリーズ記事で紹介する為に、恐る恐る
装着してみた訳だ。
で、その結果、やはり動きがなんだかおかしい、中でどうなって
いるかわからないが、絞り環が殆ど動かず、f4からf8くらいまで
絞った状態で頭打ちとなるし、無理に廻そうとするとレンズの
ねじ込みが廻ってしまう。
まあでも、外れる事は外れるみたいだ、ただ、絞りの自由度が
無いので「ボケ質破綻回避」などの高度な操作は出来ない。
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しかし、まずまず良く写るレンズだ、第43回記事で紹介した
XRリケノン 200/4よりも上かも知れない。
弱点は最短撮影距離が2.5mと長い事だ、何度か記事で書いて
いるように最短が2mを超えると感覚的にはずいぶんと遠く感じるし、
私個人的にも2~3m位の距離感覚が弱いようで、被写体を
見つけても、数十cmバックしないと最短に満たない場合が多い。
でも、今回は、そういう事もあろうかと、ヘリコイドアダプター
を用いている、最短が足りない場合、ヘリコイドを廻す事で
さらに近接撮影が可能な優れものだ。
けど、いくらでも寄れるようになる訳ではなく、感覚的には
1m台後半あたりで頭打ちだし、繰り出し量も非常に多く、
何度もヘリコイドを持ち替えて廻すのも大変だ、勿論繰り出した
状態では無限遠撮影は出来なくなるので、撮影後は速やかに
元の状態に戻しておかなければならない。
そのようにして近接撮影すると、こんな感じ。
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本レンズの購入価格だが、1990年代に9000円であった。
ただ、前述の RTSⅢ修理代負担分が5000円ほど追加される
とすれば合計14000円だ、高い買い物だった・・(汗)
勿論現代において必要なレンズでは無い、そしてもし買った
としても、下手をするとカメラから外れなくなる「悪魔のレンズ」
である。M42は、1970年代当時のユニバーサル・マウント
(汎用性を目指し、メーカー間の互換性を打ち出した)もので
あった筈なのに、実際にはここでも、一部のメーカーは「差別化」
の名目で、後年、メーカー独自の改良を施して、汎用性を失って
しまった訳だ。
つくづく、カメラ業界は、「協調」がなかなか成り立たない
世界だと思う。
まとめとしては、M42マウントのオールドレンズを購入する場合は
注意が必要という事だ。PENTAX製や海外製プリセット絞りレンズ
などは、まだ良いとしても、1970年代の、FUJICA STシリーズ用
M42開放測光(STマウント)やOLYMPUS FTLシリーズ用等の
M42開放測光レンズは、いずれも形状はM42マウントであっても、
装着互換性は無いと思った方が良い。
特に一眼レフには絶対にアダプターで装着しない事、ミラーレス機用
ですらも十分に注意をして装着する(最悪、外れなくなるリスクも覚悟)
という感じだと思う。
M42以外にも、ロシア製KIEV用マウントとニコンFマウント、
旧CONTAX Cマウントと、ロシア製Cマウント&ニコン製Sマウント
等の組み合わせも、マウント形状がそっくりでも、微妙に仕様が
異なるので、装着には十分に注意をする必要がある。
もう文字数が限界なので、次回記事に続く・・