さて、毎度おなじみの、安価なミラーレス中古機に様々な
マニアックなレンズを装着して楽しむというシリーズ。
今回第43回目は、まずこのシステムから。

カメラは、SONY NEX-7
レンズは、コシナ・ツァイス プラナー 85mm/f1.4 ZF
本レンズは、銀塩時代の京セラ・コンタックス製の
超人気レンズ、プラナー 85mm/f1.4(1975年のRTSと同時発売、
以下、区別の為、RTS PLANAR 85/1.4と呼ぶ)のリメイク版である。
レンズ構成はいずれも5群6枚、最短撮影距離も1m、と同じ、
勿論両者MFであり、これは同一レンズと思われる
2005年頃に、京セラ・コンタックスがカメラ事業から撤退
してしまった後、独ツァイスと提携したのは、コシナ社であった。
その後、コシナは2000年代後半に本レンズを含め、何本かの
ツァイスブランドのレンズを、一眼レフ用マウントで発売開始、
一部は新設計であるが、中には本レンズのように京セラ時代と
内容が同じものもある。
10年近くに渡り、コシナ・ツァイスの一眼用レンズラインナップ
には大きな変化が無かったが、近年、最新設計で超高性能、
しかし超高価なプレミアムレンズ群「OTUS」シリーズ、および、
デジタル時代に合わせて再設計した高級レンズ群「MILVUS」
シリーズを相次いで発売開始、その結果、従来のツァイス一眼用
レンズ群は「Classic」という位置づけでラインナップされている。

本レンズは、中身は言わずと知れた「プラナー85mm/f1.4」
である。
余談だが、ツァイス・レンズは、1.4/85のように絞り値を先に
書くのがメーカー側の慣習であるが、本ブログでは、ツァイスだけ
特別視する事はなく、他のレンズと同様に焦点距離を先に書いている。
そもそも、何故そうした逆の書き方をしているかといえば、
今からさかのぼる事80年前、1930年代の、ツァイス・イコンによる
レンジファインダーCONTAXの発売時に、ライバルのライカへの
対抗心からか?CONTAXでは、絞りの回転方向や、ピントリングの
回転方向、レンズの装着方法、等、様々な点において、ライカとは
逆に設計されていた。
恐らくは、レンズ焦点距離と絞り値の表記方法もそれと同類なの
であろう。
その流れは現代まで脈々と続いていて、CONTAXのレンジ機を
参考にしてSシリーズを作ったNIKONは、さらにそれをベースに
ニコンFを開発したため、その後、現代に至るまで、他社のレンズや
カメラとは、レンズ装着方向、絞り回転方向、ピントリング回転方向、
露出計のプラスマイナスの向き、等の様々な点が逆となっている。
これはニコンと他社カメラを併用する際に不便極まりない。
なお、その原因を作ったCONTAXでは、現代の(コシナ製の)
ツァイス・レンズ群においては、対応マウント毎に、ピントリング
の回転方向が異なるという処置を行っている、これは一見、
ユーザー利便性が高いように思えるが、そもそもの原因を考える
と、まあ一種の「贖罪」と言っても良いのかも知れないが・・
余談が長くなった(汗) プラナー 85/1.4の写りであるが、
本レンズは銀塩時代には「神格化」されていたレンズであるが
同時に中古の玉数も極めて多かった、その理由は、本レンズには
いくつかの弱点が存在し、それを回避する使いこなしは、銀塩時代
には極めて困難であったし、高価でもあったので、撮影技術を
伴わない、お金持ちのユーザーが多数購入するけど使いこなせず、
そうしたユーザー層が多数本レンズを手離して、中古市場に
溢れていた訳である。

その弱点とは、これもマニアの間では極めて有名な話であるが、
「ボケ質の破綻」および「ピントの不安定さ」の2点である。
で、これらは銀塩時代では、例え撮影技術が高くとも回避が
難しい事であった。「ボケ質の破綻」とは、本シリーズ記事では
毎回のように書いている事なので、その説明は割愛しよう。
けど、そもそもマニア間では「プラナーボケ」と呼ばれるもので
あり「ボケ質破綻の元祖(?)」のような立場のレンズである。
ボケ質破綻の回避方法は一眼レフ(銀塩・デジタル)での光学
ファインダーでは困難で、ミラーレス機の高精細EVFを見ながら、
背景撮影条件を微妙に変えていくしか方法が無い。
「ピントの不安定さ」は、まず、85mm/f1.4という被写界深度が
極めて浅いレンズでは、銀塩・デジタルのMF/AF一眼、あるいは
ミラーレス機におけるMF/AF + EVF ,拡大、ピーキングなどの、
あらゆる手段をとってもピント精度を高める事は難しい事と、
加えて、いわゆる「焦点移動」が出る事が問題である。
「焦点移動」とは、絞り位置によりピント位置(距離)が
変動するレンズ設計上の特性(欠点)であり、一眼レフの場合
開放測光・開放測距であるから、絞りは撮影直前に絞られる為、
そこでピント位置(距離)がずれてしまう。
しかし、ミラーレス機でアダプターで本レンズを使用する場合は
絞込み測光・絞込み測距の為、「焦点移動」の問題は発生しない。
なので、これらの問題が起きないミラーレス機で、かつ、
EVFおよびピーキングが高精度かつ拡大操作系が良いカメラ、
例えば、本NEX-7やPANASONIC GX7等が、PLANAR
85mm/f1.4を使うには適したボディであるという事になる。

さて、しかし、いくら「神格化」された、プラナー85/1.4と
言っても、それはもう40年以上も前の話だ、本レンズは
すでに半世紀近くも前の設計の、「オールドレンズ」な訳だ。
(高価すぎるので)まだ購入していないが「OTUS」や「MILVUS」
といった、最新ツァイスに比べ物にもならない事は確かであろう。
なので、あまり本レンズに過剰な期待をかけても意味が無く、
また、「絞り値2.5~2.8程度でポートレートを撮る」といった
銀塩時代の”定番の使い方”に拘る必要も、現代においては
全く無い、普通のレンズとして好きなように使えば良いと思う。
冒頭のメジロや上のサギの写真では、NEX-7のデジタルズーム
機能を使用している、デジタルズームを過剰にかけると
画質の劣化がはなはだしい、だからこの機能は使わない人が殆ど
だと思うし、ましてや銀塩時代に「高性能」と謳われたプラナーだ、
銀塩時代は「保護フィルターを1枚つけただけても画質が悪くなる」
と言って、頑なに本レンズをあがめていた人も多かったのだが、
同様に「高性能なプラナー85/1.4にデジタルズームなど勿体無い」
と思うユーザーも多い事であろう。
しかし、ちょっと待った・・
「高性能レンズだからこそ、デジタルズームでの劣化を最小限に
留められる」とも考える事もできる、さらに言えば、そもそも、
40年以上も前の設計なので、現代においても高性能であるとは
言い切れない、だから、私としてはプラナーだからと言って
特別視する訳ではなく、普通のレンズとしてガンガン使って
やるのが良いと思っている。

本レンズは、2006年の発売直後に新品購入、
価格はかなり高目の、10万1000円であった。
実は、京セラ・コンタックス版のRTS PLANAR 85/1.4は、
1990年代に所有してRTS等に装着して使っていたのだが、
正直、歩留まりが悪く(36枚撮りフィルムで1~2枚くらいしか
ちゃんとしたカットが撮れない)ので辟易していて、これを
下取りして より安定性が高く高性能な、PLANAR 100mm/f2
(第32回記事参照)に買い換えてしまっていたのだった。
しかし、手離したRTS P85/1.4の、バッチリ決まった時の
描写力が忘れがたく、そのRTS版は、2000年代半ばでは、
京セラがカメラ事業から撤退した事等から、4万円前後の安価な
中古相場で販売されていたので、「もう一度買いなおすか?」
と考えていたところに、本レンズが発表され
「よし、買うならこっちだ!」と、思わず中身を確かめもせずに
予約してしまったのだ。
なにせ、その間の2000年代前半に発売されて、私も購入した
N PLANAR 85mm/f1.4 (第13回記事)は、RTS版の欠点を
緩和した優秀なレンズであったので、それよりさらに新しい コシナ製
新PLANAR 85/1.4は「もっと優秀なレンズだろう」と、かなり期待
したのであった。
だが、喜び勇んで購入して、写してみてがっかり
「なんだ、RTS版と同じじゃあないか・・」と。
「これだったら、4万円でRTS版の中古を買えば良かったよ」
とも思ったが、でも、レンズの作りはRTS版よりもはるかに良く、
高級感があったので、「まあ良しとするか・・」という結論で、
現代に至るまでたまに使用して楽しんでいる次第だ。
RTS版より大柄(フィルター径72mmΦ,重量570g、ZF2,
ZE版はさらに大柄)になっているが、NEX-7との組み合わせは、
重量バランス的にも、優秀なNEX-7のMF操作系においても
悪くない。
なお、本レンズは初期型のニコンマウント版(ZF)であり、
CPU非内蔵型なので、ニコン製デジタル一眼では高級機で無いと
露出計が動作しない。(ZF2型であれば動作する)しかしながら、
アダプターで使う上では、CPU非内蔵であっても何ら問題は無い。
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次は、このシステム。

カメラは GXR 、カメラの基本操作系は悪くないのだが、
現在においては、他のカメラと比べて性能的老朽化が厳しい
(AF精度悪い、MFは絶望的、最高ISO感度低い、エフェクト無し、
AWB不安定等)ので、早く使い潰してしまうのが良いシステムだ。
レンズ(ユニット)は、S10 24-70mm(相当)/f2.5-4.4
これは、1/1.7型CCDであり、GR Digital Ⅲ~Ⅳ型と同等、
手ブレ補正内蔵、最短撮影距離は1cmと、2000年代後半の
カメラスペックとしては上々である。

既に第1回、第19回記事でも本ユニットは紹介しているが、
基本的にユニットの描写力は悪くない、レンズが画像処理エンジン
と直結しているメリットで、各収差も良く補正されている模様だ。
できるだけ沢山使って、早く減価償却してしまおう。

収差の件だが、GXR には、マウントA12 というライカMマウント
のユニットがあって、これには、周辺光量、色・歪曲収差などの
補正機能がついていて発売当時は非常に魅力的であった。
その後、2010年代前半には、SONY やFUJIFILMのミラーレス
機にも同様な収差補正機能が搭載されているのだが、純正レンズや
純正アダプターを使用しないとその機能が使えないため、すべての
レンズに汎用的にその補正が出来る訳ではない。
GXRシステムは発売後しばらくは、どのユニットも非常に高価
であり、十分に中古価格が下がるのを待って2015年の購入に
なったのだが、購入時に、Mount A12 も、検討対象に入っていた。
しかし、GXRを実際に使ってみて、MF操作系は、ピーキングの精度、
背面モニター、EVF(別売)の解像度、表示拡大操作系の悪さ、など
から考えると、MFレンズを使うのはピント合わせが絶望的、と判断、
そして、レンジ機用レンズの最短撮影距離の長さ、などを総合的に
考え、実用的では無いと判断、購入を保留している。
もし、Mount A12が、EOS(EF)などの、マウント径が大きく、
フランジバックが短い、すなわち、多くのマウントアダプターを
流用できる汎用的なマウントであったら、迷わず買ってしまった
かも知れない、まあでも、ライカMマウントに一眼用レンズを
装着する各種アダプターも存在しているので、いずれ機会が
あれば買ってしまいそうな気もするが・・

GXRシステムの最大の課題は、AF/MFのピント精度である、
A12 28mmや 50mmは、描写力は非常に優秀だが、それは
ピントが合った時の話で、実際の所は、ことごとく外してしまう。
S10 24-70mmの場合は、マクロは比較的合うが、中遠距離が
厳しい場合がある、絞り込んで被写界深度を深くしても
あまり改善されず、ピント合わせ全般が不満だ。
絞りと言えば、今回S10を使っていて、ボディ本体の前ダイヤル
(絞り値調整用に使っている)が不調になった。
本来 f2.5、2.8,3.5・・のように順番に変化するのが当然なの
だが、f2.5の次がf5になったり、さらに廻すとまた値が戻って
しまったりする(汗)これは内部のロータリーエンコーダー部品の
不良(接触不良または老朽化)だ。
過去にも、いくつかのカメラで同様な不調に陥った事があり、
昔のカメラは銀塩一眼もデジタル一眼も高価であったので、
修理に出したのだが、GXRユニットの現在の中古価格は1万円
程であり、修理に出すと下手すると中古価格よりも高くなる。
今回は、接点復活剤 CRC 2-26を注入、見事に復活した。
私は、CRCは、他に最も一般的な 5-56 および、浸透力の高い
5-56DXの計3種類を使っている、2-26は電気接点に強い仕様だ。
ただ、こういう応急修理は、注入量、注入の場所、注入後に
浸透させるための動かし方、などを適当にやると症状が悪化
したり、最悪はカメラを壊してしまうリクスもある為、簡単に
誰にでも推奨する事は出来ない。まあ、GXRの場合は肝心の
CCD関連部品が本体側には無い為、その点安全だと思った事と、
最悪壊れても、中古を買いなおせば良い、という判断であった。
それに、CRCでの修理は慣れている。カメラはもとより、家電に
いたるまで「まず応急修理は、CRC」という感じで長期にわたり
愛用しているので、かなりの経験があるのだ。壊しても良い
リスクとの引き換えは毎度の事だが、高い確率で応急修理は
成功している。

マクロはさすがに強い、ボケ質は、初代GR Digitalと似て
いて独特だが、悪いボケ質では無いので気に入っている。
本ユニットは、GXRとのセットで2015年に購入、計2万円程度で
あったが、現在はさらに相場は下落傾向、ボディとユニットを
各々単品で買えば、さらに数千円価格を下げる事ができると思う。
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次いで、このシステム。

カメラは、LMUMIX DMC-G5 、特定のレンズの専用機および、
MFやデジタルズームの操作系に優れるため、望遠オールドレンズ
のアダプター母艦として使用している、基本性能は高く、中古価格も
1万円台後半と安価で、コスパが極めて高い。
レンズは、XR リケノン 200mm/f4である。
1970年代後半~1990年代前半の、リコー 銀塩MF一眼レフ
XRシリーズ用のMFレンズで、PENTAX Kマウントとほぼ互換、
ミラーレス機に装着する場合は、Kマウントアダプターで全く
問題なく使用可能である。
レンズ構成は 5群5枚、最短撮影距離は2mである。
(注:一部の資料では、最短2.5mと記載されている模様だが、
本レンズは間違いなく最短2mである、後期型なのかも知れない)

早速デジタルズームを使用、そもそもマイクロフォーサーズ機
であるので、本レンズは400mm相当の画角となり、さらに
G5の前部ファンクションレバーに2倍までのデジタルズームを
アサインしているので、800mm相当までは、レバー操作1つで
即時連続画角操作が可能、加えてデジタルテレコンをで倍
または4倍に出来る(これもFnキーにアサインしておくと便利)
ただし合計倍数が4倍を超えたあたりから急速に画質は劣化し、
加えて、G5には手ブレ補正機能が無いので、1500mm相当を
超えたあたりから、ブレ量が甚だしく、フレーミングすら、
ままならない状態になる、しかし勿論三脚を使うと、こうした
出会い頭の被写体が撮れず、撮影機会を大幅に制限してしまう
為、三脚は使用しないスタイルである。

この手のオールド望遠レンズは遠距離被写体で被写界深度を
あまり意識しない(つまり平面的被写体)の場合は、さほど
悪く無い描写をするのだが、背景をボカす場合など、例の
ボケ質破綻が出やすいのが弱点だ。背景条件などの撮影アングル
を変えたくない場合は、絞り値でボケ質をコントロールするしか
方法がないが、本レンズでは実質的に f4,f5.6,f8の3つの絞り値
しか使えない、f11まで絞ると、そもそも背景をボカしたいという
意図に反してしまう。この3つの絞り値でボケ質破綻が回避できる
組み合わせがあれば良いが、そうでなければ、その構図自体を
諦めるか、ボケ質破綻を受け入れるかどちらかだ。
この点、f2.8,f2などの大口径望遠レンズでは、ボケ量の増加と
ともに、ボケ質破綻回避の選択肢も増える為、作画表現上では
望ましいが、その代わりレンズが大きく重く高価になってしまう。

G5の144万ドットEVFはピントの山を掴むには、後継EVFよりも
適しているが、ボケ質はわかりにくいので要注意だ。
後継EVF、例えば236万ドット、276万ドットではその逆だが、
ピーキング機能が搭載されている場合が多く、その精度が
優秀なカメラであれば、236万、276万のEVFの方が、僅かに
使いやすいであろう。

またしてもデジタルズーム、望遠撮影時には非常に便利な機能で
あるが、画質劣化(輪郭がパキパキになったり、色が滲んだり)
するのでちょっと惜しい、まあ、それでも、2000年代前半の
コンパクトデジタル機のデジタルズーム機能に比べれば
ずいぶんと進化しているので、あまり倍率を上げなければ
実用範囲であると思う。
本レンズの購入価格だが、2000年代に7000円であった。
現代では玉数が少なく、入手性が悪いレンズではあるが、
200mm/f4級のMF望遠レンズはマウントに拘らなければ
多数中古市場にあり、どれも基本的には大差無い性能であり
(=悪くは無い)しかも数千円程度と非常に安価である。
このクラスの望遠を買うとすれば、例えば第36回記事で紹介した、
ミノルタMD 200mm/f4あたりが、入手性も良く、安価で性能も
十分なので適していると思う。
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次は、今回ラストのシステム。

カメラが LUMIX DMC-G1、優れた操作系を持つベーシックな
マイクロフォーサーズ初号機であり、コスパは極めて高い。
レンズは、OLYMPUS OM-SYSTEM 50mm/f1.4である。
1970年代~1990年代に発売されていた、OMシリーズMF一眼
レフ用のMFレンズだ、発売期間が長いが、本レンズは1970年代の
ものと思われる。
大口径の割りに小型コンパクトであり、フィルター径は49mmΦ
である。ちなみにOMシズテムでは小口径レンズの殆どが
49mmΦ、大口径レンズの多くが55mmΦにフィルター径が
統一されていたが、本レンズは小口径タイプのフィルター径に
収まっている。

オリンパスOMの標準レンズには、50/1.2.50/1.4 ,50/1.8の
3本が存在するが、55mm/f1.2というレンズもあり、こちらは
この当時(1970年代前後)では、大口径標準は技術的に50mm
では作りにくく、55~58mm程度の焦点距離になってしまって
いたものであり、つまり古い型であるという事だ。
第26回記事で、OM50/1.8を紹介しているが、そのレンズは
ジャンク品を購入したもので、残念ながらカビが発生し、
本来の性能を発揮する事が出来ていなかった。
本OM50/1.4は、古い時期のものだが、幸い保管状態は問題
なく、カビの発生などは無い。

写りはごく普通であり、例えば第32回記事で紹介した
ミノルタ New MD50/1.4 と大差は無い、両者のレンズ構成は
いずれも 6群7枚(変形ダブルガウス)であり、フィルター径
も同じ49mmΦと小型だ。
他にMFの50mm/f1.4というと、
第12回記事のキヤノンFD50/1.4
第22回記事のPLANAR 50/1.4、
第25回記事のヤシカ ML50/1.4、
を紹介済みだが、このあたりも全て6群7枚のレンズ構成だ。
(50mm/f1.4でも、たまに5群7枚とかのレンズがある)
しかし、フィルター径は、ヤシカが52mmΦ、キヤノンFDと
CONTAX PLANAR が55mmΦであり、レンズも大柄となっている。
まあつまり、各社多少の差はあったとしても、50mm/f1.4級の
標準レンズは、概ね1970年代頃に完成の域に達しており、
いずれも比較的良く写るという事だ。
まあでも、良くこのシリーズで書いているように、50mmの
MF標準レンズを買うならば、f1.7~f2級の小口径標準の方が
さらに良く写る場合もあり、大口径だから良いという訳でも無い。
小口径標準の方が、小さく、軽く、安価で、おまけに良く写る
となったら大口径標準の存在意義は何か?という事になるが、
半絞り~1絞り明るい事で、暗所の撮影での有利さ、さらに
ボケ量の大きさが優位点として上げられる。
まあ、MF銀塩時代、大・小口径の標準レンズには勿論価格差が
あったので、メーカーによっては、小口径版の方の最短撮影
距離を、あえて50~60cmに抑えて差別化していた状況もあった。
つまり、開放f値と最短撮影距離の差により、小口径版では
大口径版ほど背景をボカす事はできない、「だから値段の差が
あるんだよ」という理屈であろう。でも、今にして思うと
少々セコイ考え方だ、そんなところで差別化する必要は無いと
思うが・・
ちなみに、大口径f1.4版の最短は、ほぼ全てが45cmである。
まあ、その時代、50/1.4は、各社の代表的レンズであったので、
スペック競争で負けるわけには行かなかったのであろう。

本レンズは、1990年代に11000円で購入したもので、程度が
若干悪かったからか、第一次中古カメラブームの当時としては、
相場的に安価であったと思う。
現代における中古相場も、ほぼ同様の1万円強くらいだと思う。
レンズの玉数(中古の数)だが、微妙に少なくなってきている。
近年では、例えば大阪の中古店などでは、売れない(売り難い)
MFレンズをあまり扱っておらず、ニコンやコンタックスの人気
ブランドや、マニアックなレアモノが中心となっている。
つまり、オリンパスOM、ミノルタMD,キヤノンFDなどのMFレンズ
の玉数が減っているという事だ。
その代わり、ニコンやコンタックスのMFレンズの中古相場は
以前よりずいぶんと上がっている。一部は、なかなか手が出せない
価格になってきており、例えば、コンタックスPLANAR 50/1.4が
3万数千円(!)とか、そんな感じだ。(以前は2万円を切っていた、
また、小口径のPLANAR 50/1.7ですら、27000円もしている!)
前述のように中身のレンズ構成は、他社大口径標準もほぼ全て
同じだ、コンタックスと書いてあるだけで他社と中古価格が
3倍も違うのはいかがなものだろうか?
まあつまり、高くても買う人がいるから相場は上がるという
事であり、良い意味でも悪い意味でも、ブランドの「付加価値」
があるから世の中の経済は廻っているという訳だろう。
高く買ったことで、当然ユーザーは、良く写ると思い込んで
しまう訳であり、結果、顧客満足度は高くなるだろうが、
その反面、絶対的な価値判断感覚はなかなか身につかない。
メーカー名(ブランド)にとらわれず、このレンズの性能で
あれば、いくらくらいが妥当、という判断が出来てくれば
よりオールド・レンズ遊びは楽しくなってくるのだが・・
まあでも、わかっている人は、ブランド神話にとらわれず、
安くて良いものを買えば良い、ブランド品の相場が上がれば
他社同等品の相場は下がる、というのが一般的な傾向だ。
本シリーズ記事では、コスパという概念を強く打ち出している、
いくら良く写るレンズでも、価格が絶対的判断基準よりも
高価であれば、そのレンズはダメレンズとして評価される。
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さて、余談が長くなったが、オリンパスOM標準は、他に
55mm/f1.2も所有しているので、いずれ紹介してみよう。
でも、これらのOM標準の中では、50/1.8が最もコスパが高い
レンズ(写りも良い)だとは思うが・・ けど、現状の
カビレンズではしかたが無いので、余裕があれば50/1.8は、
再(々)購入してみるとしようか・・
さて、今回はこのあたりまでで、次回シリーズ記事に続く。