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レンズ・マニアックス(84)

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新規購入等の理由で、過去の本ブログのレンズ
関連記事では未紹介のマニアックなレンズを主に
紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズ3本および、再掲レンズ1本を
特殊な使用法で検証する。

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ではまず、今回最初のレンズ
_c0032138_06460185.jpg
レンズは、MINOLTA AF ZOOM 100-300mm/f4.5-5.6
(中古購入価格 3,000円)(以下、AF100-300)
カメラは、SONY α65(APS-C機)

発売年不明、恐らくは1988年頃に発売されたと
思われるAF望遠ズーム、勿論フルサイズ対応だ。

焦点距離範囲、開放F値、最短撮影距離が同等の後継
レンズとして、1990年代に発売されたxi仕様と
APO仕様の物がある模様だ。(それらは未所有)

よって、本レンズは「初代」だと思われるのだが、
準ジャンク品と言えるような年代と中古価格ながら
異様に綺麗な個体であり、デザインについても、
初代を画像検索したものとは僅かに異なる様相が
見られ、発売途中で何らかのマイナーチェンジが
行われた可能性もあるが・・ もはや詳細は不明だ。
以降は、本レンズの実機を元に、これを初代製品
と仮定した上で話を進める。
_c0032138_06460111.jpg
で、本レンズが発売された時代は、銀塩一眼レフ
のAF化転換期であり、MINOLTAは既に1985年から
α-7000、α-9000等の実用的AF一眼レフを
発売し、他社に対して先行していた(=αショック)

αショック以前の1980年代前半にも、各社から
試作品的なAF一眼レフは登場してはいたのだが、
MINOLTAの場合は、そのAF性能が実用的レベルに
達していた事、そして他社試作機では専用AFレンズ
が数機種程度しか無かったのに対し、MINOLTA
では広角から望遠までの様々なAFレンズを同時に
ラインナップし、これが実用的システムである事を
市場に強くアピールし、それを成功させた訳だ。

交換レンズ側でのポイントとしては、それ以前の
MF時代(1980年頃迄)では、ズームレンズはまだ
技術的に未発達であり、性能(描写力)の面からも、
単焦点レンズ群を、広角から望遠、マクロまで、
ずらりとユーザー側でラインナップし、それらを
使う事が中上級層でのセオリーであったのを・・
カメラシステムのAF化とともに、ズームレンズも
また実用レベルに達した事を知らしめる戦略を
取った事が重要だったと思う。

ただ、後のCANON(1990年頃)のように、ズーム
レンズの展開を主力とした訳では無く、MINOLTAは
旧来からの単焦点レンズ群も、20mmから600mm
まで、この時代(1980年代後半)にAF化を行い、
画質に拘る中上級層のニーズを十分に満足させていた。

まあつまり、初期αシステムにおいて、既に「死角」
は無く、これ故に初期αの、市場からの支持は
圧倒的であり、だから「αショック」と呼ばれる
ようになった訳だ。

MINOLTA初期α(1980年代後半)における
ズームレンズ群であるが、焦点距離範囲が異なる
標準ズーム数機種、同様に望遠ズーム数機種から
なるラインナップであり、まだこの時代では
(超)広角ズームや、高倍率(高ズーム比)
ズームは登場していない。

で、本AF100-300は、恐らくだが、その初期α
のズームレンズ群の中では、最大の望遠端
焦点距離(300mm)、という位置づけだったと
思われる。
「望遠に憧れる時代であった」という風潮から
本レンズは、恐らくだが人気があった事であろう。
そして、ズーム化とともに、300mm級望遠レンズ
として大幅に小型軽量化している事も特徴だ。

例えば、それ以前のMF単焦点時代であると、
300mmの(単焦点)レンズを買おうとしても、
相当に、大きく重く高価な「三重苦」であった。

一般層で購入可能な、開放F4.5級の例として
Ai NIKKOR 300mm/F4.5系(注:時代により
様々なバージョンあり)の重量は、およそ
1kg前後(990~1200g程度)もあるし、
フィルター径もφ72mmもあって大柄だ。

私も銀塩時代に、どれだったか?のAi300/4.5を
使っていたが、その重さに閉口し、数回の撮影
で使っただけで「重い、もう無理!」と思って
それを譲渡処分してしまっていたのだ。

ところが、本AF100-300の重量は、私の実測値
で406gしか無い。MF単焦点300mmの半分から
1/3程度の重量は、ハンドリング性能が格段に違い、
しかもズームだから画角汎用性も高い。
これはもう、画質うんぬんを言う前に、その
圧倒的利便性を、市場・ユーザー層は高く評価
したと思われる。
_c0032138_06460139.jpg
さて、その問題の「画質」であるが・・
解像感がやや低く感じられ、しかも望遠端側で
それは顕著である。ただし、この課題は、当時
(1990年前後)の他社300mm級AF望遠ズーム
のいずれもに共通する弱点であり、これが若干
改善されるのは、1990年代後半以降での話だ。

(参考:それ以降の時代では、300mmズーム
の望遠端も、実用範囲の画質となっている。
しかし、2000年代や2010年代で、望遠ズーム
の望遠端が400mm、500mmや600mmにまで
伸びていくと、それにつれ、どの時代の望遠
ズームも、望遠端の解像感が甘い。つまり、画質
よりもカタログ・スペックを優先させて、望遠端
の焦点距離を伸ばしていった様相が見られる)

よって今回は、この課題への対処の為、APS-C機を
母艦とし、あまり光学ズームの望遠端を使わずに
望遠画角を稼ぐ。必要に応じてSONY αフタケタ機
に備わる画質無劣化の(スマート)テレコン機能
を併用して、さらなる撮影倍率を得ても良い。
_c0032138_06460149.jpg
周辺収差に関しては、APS-C機を使った時点で
目立たなくなるので、あまり意識する必要は無い。
逆光時でのコントラスト低下は、光線状況に留意
して撮影する。

ボケ質破綻は、本システムでは回避が難しいかも
知れない。どうしても気になるならば、SONY一眼
レフでは、一々のプレビュー操作でEVF上で確認
するか、その操作が鬱陶しい(非効率的)ならば、
α(A)→SONY Eの絞り込みレバー連動アダプターで
SONY α EマウントAPS-C機で、MFで実絞り測光で
使っても良いであろう、そうすれば、どうせあまり
AFの精度や速度が高くない本AF100-300の課題
を回避する事もできる。

まあでも、そこまであれこれと工夫して使うような
価値の高いレンズであるとも言えず、全般的には
「お散歩望遠ズーム」という感じだ。
上記に挙げた各種の工夫(弱点回避の為の対策)は、
(準)オールドズームレンズ等、性能の低いレンズ
を使う場合に、それを「レンズの言うがまま」には
撮らず、弱点を回避できるシステム構成や撮影技法
を用いる、という意味での参考まで。

本レンズを指名買いする必要は無いが、高価な
現代レンズと比較してみる、という研究用には
最適であろう。まあつまり、30年以上も前の
準オールドズームでありながら、あまり不満を
感じずに使える、という点の確認・検証の意味だ。

----
では、次のシステム。
_c0032138_06460949.jpg
レンズは、CANON (New) FD100-200mm/f5.6
(中古購入価格 2,000円)(以下、NFD100-200)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

1979年に発売された開放F値固定型ワンハンド式
MF望遠ズーム。
_c0032138_06460931.jpg
本レンズは、New FD方式だが、全く同じ仕様の
旧FD(スピゴットマウント/締め付け式マウント)
版を別途所有している(1971年発売、ミラーレス・
マニアックス第61回記事参照)

今回、あえて重複所有になるかもしれない(FDと
New FDでは中身は同じかも知れない)本レンズを
購入したのは、ちょっとした研究の為であり・・

それは、本レンズの時代に「New FD70-210mm/F4」
という、なかなか優れたレンズ(1980年発売、
ハイコスパ名玉編で第7位入賞)が存在していて、
そのレンズが何故優秀なのか?という研究を進める
為に、この時代のCANON製のNew FD開放F値固定型
MF望遠ズームを、かたっぱしから入手し、その謎を
解明しよう、という目的があったからだ。

本レンズの入手で、だいたい、そのあたりの研究は
目処がついたので、近いうちに、それらのレンズを
纏めて紹介し、その差異を述べていこうと思う。
(本シリーズ第88回記事に予定)

で、簡単に言えば、本NFD100-200/5.6は、従前の
(旧)FD100-200/5.6と全く同じ中身であり、
マウント構造が変更されただけの製品だ。
しかも、その旧FD版は、さらに古い、FLマウント
時代のFL100-200/5.6(1966年、未所有)とも
中身が同じである可能性が高く、そのFL版は
CANON最初期の望遠ズームであった。

すなわち、これらの100-200mm/F5.6ズーム群は、
とてつもなく古い時代の設計であり、大柄で、
当然ながら性能(描写力も口径比も最短撮影距離
等も)が、全般的にとても低い。

それなのに、本レンズの時代まで、十数年間も
マウントを替えつつ、引き継がれて継続販売されて
いる。いったいこれは何故なのだろう? 
_c0032138_06460929.jpg
ちょっと前述した「NFD望遠ズームまとめ記事」は、
もう執筆を完了しているが、そこでは本レンズの
性能が低い事は書いたが、何故、そんな出来の悪い
レンズが販売継続されているか?迄は、研究しきれて
いない。
まあ、ここでちょっと無茶な推測をするが、例えば、
「政治的な理由」で販売を中止する事ができなかった
とか??

以下は、まったくの仮説であるが、何か特定の工業用
等の目的で、どうしても、この仕様のレンズを、特定の
市場分野に向けて供給しつづけなくてはならなかった
とか・・?
はたまた、このレンズを設計した人が、後年に
昇進して、「お偉いさん」になったので、その方の
メンツもあるから、このレンズを生産中止に出来ず
作り続けなければならなかったとか・・?

もう40数年も前の話だから、そのあたりの真相は
不明だし、外から見ても、わかりようが無いのだが、
それにしても、本レンズの時代には他に類似の
仕様の望遠ズームが5~6機種も、同時に併売
されていた訳であり、どうみても不自然だ。

その中でも特に、最も性能が低い(設計が古い)
本レンズは、真っ先に製造中止にするべきでは
なかったのでは、あるまいか?
さもないと、消費者も、どの望遠ズームを買ったら
良いか?迷うだろうし、万が一、間違えて本レンズ
を選んでしまったら、それによりメーカーの
ブランドイメージを落としてしまう。

技術的理由からも、商業的理由からも、継続生産の
必然性は無く、つくづく不思議な話だ。
ここまで非合理的で不条理な話は、やはり「政治的
な理由」があった可能性が高い。

なにせ、この話が関係しそうな、FLからFD版に
変わった1971年という年には、CANONは丁度
(旧)F-1(銀塩一眼第1回記事参照)を
発売したのだが、その際、NIKON F2(1971年、
銀塩一眼第2回記事参照)への対抗意識からか?
はたまた、「次の機種はF-2になるのか?」と
記者から質問された事を不愉快に思ったからか?

その新製品発表の場で「このF-1は、ずっと名前を
変えない」と、マスコミ等に対して不自然な宣言を
してしまったのだ。この為に、後年1976年に
F-1が改良された際(F-1N、F-1改、F-1後期)でも、
1981年に全面モデルチェンジされた際にも
(NF-1、New F-1)(銀塩一眼第9回記事参照)
ずっと名前を変えられず、F-1のままであったのだ。

この事に関連して、この時代(1970年代末)に
FDレンズを改良した際にも、「New FD」とは公式
には名乗れず、やむなくFDレンズのままであった。
(だから、本ブログでも、これらのカメラや
レンズの型番記載の際には、(New)等と、括弧書き
としている)

だが、こんな状態ではメーカーの製造現場、在庫管理、
営業販売、広告宣伝、そして、流通市場、消費者、
ユーザー層、中古市場等の全ては大混乱である!

勿論、そんな風に「誰かが口を滑らした宣言」には、
現場等は誰も従わず、F-1改、New F-1、New FD
レンズ等と、明確に区別していた。(区別しないと
現場は仕事が出来ないから、当たり前の話だ)

なんだか、現場の事とか、国民の事とかが、まるで
わかっていない「政治家の発言」のような話だ。
現代であれば、あらゆる方面からバッシングの嵐に
なるのかも知れないが、これは、今から半世紀も
前の話なので、「偉い人」の話や意見は、「下々」の
者達は「へへ~っ」と頭を下げて従うしかなかった
のではなかろうか? まあ、あらゆる不条理が、上下
関係で通されてしまう時代であったのかも知れない。

こんな時代であるから、前述のように、「本レンズ
が性能が低いのに、いつまでも継続販売されている」
原因が、もしかすると、何か「政治的(上下関係的)
な理由」があったのではなかろうか?と推測した訳だ。
_c0032138_06460962.jpg
総括だが、本レンズは購入する必要は全く無い。
同時代の他の類似仕様のズームレンズの中では
最低の性能であるので、わざわざ本レンズを選ぶ
事は、あり得ない話だ。

----
さて、次のシステムは再掲レンズだが、レンズ自体
の話ではなく、銀塩時代のアクセサリーである
「マクロテレプラス」を使ったケースの検証だ。
_c0032138_06461840.jpg
レンズは、OLYMPUS OM-SYSTEM Zuiko 50mm/f1.4
(中古購入価格 11,000円)(以下、OM50/1.4)
アタッチメントは、KENKO Macro TELEPLUS MC7
(新品?購入価格 8,000円)(以下、MC7) 
カメラは、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)

レンズ自体は、1970年代~1980年代頃の
ごく一般的な大口径(F1.4級)MF標準レンズだ。
_c0032138_06461848.jpg
この時代は、各社MF一眼レフを購入する際、
F1.4級(又は、F1.8級)標準レンズをキット
(セット)として入手する事が普通であった。
これら標準レンズは、各社の「顔」であったから
その性能が低いとカメラ自体の売り上げにも響く。

よって、この時代のMF標準レンズは各社とも
細かい小改良が重ねられ、ほぼ完成の域にまで
達していたので、メーカー間での性能差は殆ど
無い。(参考:最強50mm選手権シリーズ記事)

つまり、この時代の銀塩MF一眼レフユーザー層は、
たいてい50mm/F1.4(または50mm/F1.8級)
レンズを持っていた訳だ。
こうしたユーザー層に向けての別売アクセサリー
(アタッチメント/付属品)として、1980年代
前後の時代に人気があったのが「マクロテレプラス」
である。

そもそも、これ以前にKENKO TELEPLUS(テレプラス)
という商品群が存在している。
「TELEPLUS」自体は、KENKOでの商品名(商標?)
であり、これはレンズ後部と、カメラマウント部
の間に装着するアタッチメント(付属品)である。

(注:市場の一部で、レンズ前部に装着する部品
のみの事を「アタッチメント」と呼び、その呼称を
「フィルター径」と等価だ、と見なす風潮があるが
このように、レンズ後部に装着するアタッチメント
も極めてポピュラーな為、フィルター径そのものと
アタッチメントという概念を混同してはならない)

・・で、これを使うと、マスター(主)レンズの
焦点距離を1.4倍~2倍~3倍程度に伸ばす
(画角を狭める)事ができるようになる。
標準レンズが中望遠に、望遠レンズが超望遠に
なる為、この時代での「望遠レンズへの憧れ」
のニーズと合わせ、人気のアタッチメントであった。

ただし、これを使うと、伸びた焦点距離の分、
レンズの入射瞳(有効径)が減り、すなわちF値
が暗くなる。その割合は、伸びた焦点距離の倍率
の二乗であり、すなわち例えば、開放F値F1.4
のレンズを2倍伸ばすと、露出値で2段、これは
F2.8にまで(1/4倍に)暗くなってしまう。
同様に1.4倍伸ばすと、1段(半分に)暗くなる。
(例:開放F1.4→開放F2)

また、これらは、この時代ではMFレンズのみの
対応であったが、1990年代頃からは、AF対応の
ものも存在するし、KENKO以外にも、各カメラ
メーカーからも純正品が存在している。

これらを総称して「テレコンバーター」と呼ぶ
が、稀に「リアコンバーター」とも呼ばれる
事もあり、後者の用語を用いる場合には、レンズ
前部に装着する「フロントコンバーター」との
対比で呼ばれる場合が多い。

「リアコンバーター」の多くは、「テレ(望遠)
コンバーター」であるが、他に近接撮影を行う
為の延長鏡筒(エクステンション・チューブ)
も良く普及していた。

そして、MF→AFの転換期(1990年前後)においては、
リアコンバーター内部に、AF駆動機構を持たせ、
MFレンズをAF化してしまう「AFコンバーター」
が、NIKONやPENTAX(注:いずれも、MFとAFの
マウント形状が共通)等のカメラメーカーから
発売されていた。

また、デジタル時代(2000年代)になってから
は、APS-C型センサーの画角をフルサイズ相当に
広げる為の、リアコンバターも存在し、これは
一般に「レデューサー」とも呼ばれている。
(注:この場合、F値は明るくなる)

またレンズ前部に装着する「フロントコンバーター」
では、望遠、広角、魚眼、近接用のものが各々存在
している(いた)と思う。

で、そうした「リアコンバーター」において、
テレコンバーター(望遠画角変換)の機能と
エクステンション・チューブ(近接撮影用)の
要素を合わせ持たせ、ヘリコイド(螺旋構造)
を搭載し、連続的に近接撮影性能を可変させる
ようにしたものが「マクロテレプラス」である。

同様な構造(仕様)のものは、銀塩時代の
KENKO製のものの他は、あまり見た事が無い。

ミラーレス時代(2010年代)に入ってから、
マウントアダプターにヘリコイドを持たせた
「近接撮影用アダプター」が発売され、
例えばライカL39/Mや、NIKON/CONTAX S/C等の
レンジファインダー機用のレンズをミラーレス
機で使う際、最短撮影距離が長い(70~90cm)
という不満を解消する為のアタッチメントとして
人気があるが、これは、マクロテレプラスの
製品仕様とは、ちょっと内容が異なっている。
_c0032138_06461835.jpg
さて、では、本Macro TELEPLUS MC7であるが
発売年は不明、恐らくは1980年代~1990年代
にかけて流通していたものである。
各MFマウント版(例:Ai、FD、PK、OM、MD、
Y/C等)が販売されていたのは知っているが、
稀にAFマウント(MINOLTA α)版が存在した
との情報もある(真偽不明)

私はMFマウント版を4つくらい所有していたと
思う。(何処かに仕舞いこんで詳細不明・汗)
価格は、記憶に頼れば、新品で1万円弱程度、
中古で4000~5000円程度だったと思う。

MC7は、基本的には50mm/F1.4級レンズを
使用する事に特化した仕様である。
まあ50mm/F1.8級レンズでも問題無く使えるが、
他の焦点距離(広角や望遠)のレンズの場合では、
周辺減光、最大撮影倍率、描写性能等は、全く
保証されない(使えないかも知れない)

50mm/F1.4とMC7との組み合わせにおいては、
100mm/F2.8、最大撮影倍率等倍(1:1)の
性能仕様が得られる。

描写力は当然落ちるが、MC7内にも本格的な
補正光学系が内蔵されていて、まあ、普通に想像
するよりも悪い描写力では無い。

描写力の低下よりも、銀塩時代においては、
暗くなるF値と、低感度のフィルム使用、そして
近接撮影という複合要因により、手ブレ、被写体
ブレ、ピンボケを回避する事の方が難しかった
だろうと想像できる。この為、MC7を使用時には
三脚使用を推奨する向きもあったとは思うが、
デジタル時代の現代であれば、高感度性能や
ミラーレス機でのMFアシスト機能を駆使する事で
銀塩時代にあった課題の多くは回避が出来る。

今回使用のDMC-G6を母艦とし、MC7を介して
OM50/1.4を装着した場合は、基本設定のままで、
200mm/F2.8(望遠画角)最大2倍マクロとなる。

ここに、デジタル拡大機能を併用した場合は、
現実的な実用範囲を超えてしまう位に迄、いくら
でも撮影倍率を高める事は可能だ。

実写例においては、正直言うと、今回のシステム
仕様は少々過剰であった。画質劣化はともかく、
撮影倍率が高すぎるのだ(汗)

(近接)撮影が非常に疲れるので(汗)普通の
望遠レンズとしても使ってみよう。
_c0032138_06461824.jpg
少し絞り込む事で、解像感もあまり損なわれず
マクロでは無い通常のテレプラス(テレ(望遠)
コンバーター)として使っても、あまり問題は
無さそうだ。

つまり、MC7の(現代のミラーレス機での)
使いこなしとしては、50mm標準レンズ1本だけ
で、それをμ4/3機と組み合わせる事で、
望遠画角(800mmくらいまでは実用範囲)から
超近接撮影(4倍程度までは実用範囲)まで、
なんでも貪欲に撮れる、別の言い方をすれば
屋外における自然観察系撮影の全般を、たった
1本のMF標準レンズだけでカバーするシステムと
しては適するであろう。(まあ、「撮るものが
決まっていない状態」とも言えるかも知れない)

ただ、個人的な好みを言えば、その撮影用途で
あれば、DMC-G6+MF70-200mm級望遠ズームの
方が自然観察撮影における利便性は高いように
思うし、MF標準レンズ+MC7よりも、MF望遠
ズームの中古相場の方がむしろ安価だ。

総括だが、「マクロテレプラスであれば、一応、
現代において、こういう使い方も出来るよ」
という参考まで。

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次は、今回ラストのレンズ
_c0032138_06462684.jpg
レンズは、Voigtlander ULTRON 40mm/f2 SLⅡS
(注:変母音記載省略)(新古購入価格 38,000円)
カメラは、NIKON Df(フルサイズ機)

2017年に発売されたMF準標準(フルサイズ対応)
レンズである。
外観は、1970年代のNIKKOR MFレンズを彷彿させる。
_c0032138_06462616.jpg
本レンズは買いなおし品(2度目の購入)だ。
とは言え、前回所有のレンズは最初期(2002年頃)の
ULTRON 40mm/F2 SL(Aspherical)というバージョン
であったが、それは訳あって譲渡してしまっていた。

当該レンズの系譜だが、光学系を維持したままで、
*SL版(2002年 ドームフード又はストレートフード
 が選択可能であった。各種MFマウント有り)
*SLⅡ版(2008年 レンズ情報伝達版。ドームフード
 とクローズアップレンズが付属、各種AFマウント)
*SLⅡN版(2012年、外装デザイン変更、クローズ
 アップレンズが付属) 
*SLⅡS版(2017年、本レンズ、Aspherical表記なし、
 クローズアップレンズ/フード付属なし、最短25cm、
 NIKKOR風意匠、カニ爪あり、NIKON Aiマウント版のみ)

と変遷している。

2012年頃であったか? 知人の上級マニア氏が、
マ「匠さん、ULTRON 40/2って、いいですよ」
と言ってきたのだが・・

匠「ああ、昔、初期型を使っていましたよ。
  確か光学系は変更されていない筈・・
  良く写るレンズだと思いますよ。新しいのは
  外観デザインが変更されているみたいですね」

・・と、ありきたりの返答をしたのみであり、ちょっと
これを買おう、という風には、食指が動かなかった。

フォクトレンダーのSLシリーズ(2000年代初頭~)
は、確かに色々な機種が売られていた。
望遠のものは興味があったが、本レンズ(40mm)や、
それ以下の広角系(かつて28mm/F2.8、20mm/F3.5、
それと準特殊レンズとして15mm/F5.6、12mm/F5.6が
存在していた)のレンズは、あまり興味が持てなかった。

まあつまり、広角であれば(高性能である事で著名な)
フォクトレンダー製ではなくても、他社の広角でも大差
は無いであろうし、それから2000年代ではデジタル機は
ほぼAPS-C機であった為、画角変化を最大に活用する
ならば、「望遠系のレンズの方が(より望遠として使え)
効果的だ」と思っていたからである。

20mmの超広角を買っても、APS-C機では30mm相当の
平凡な広角画角にしかならない。
40mmは・・ まあ、銀塩時代から、そのあたりの
準標準レンズは沢山あって、代替できるレンズは多い。

では何故、本レンズに興味が出たか?といえば、
まずは、これの最新型が1970年代NIKKOR風デザイン
になった事は知っていたし、さらにシルバーリムと
ブラックリムを選べる、というマニアックな仕様は
気にはなっていた。
「まあ、いつか機会があれば買うかあ・・」
とは思っていたが、単なるデザイン変更だけでは、
さほど強い購入動機にはならない。

そんな状態で数年が過ぎ、Webで本レンズのスペック
を見ていると、ふと、「最短撮影距離25cm」
「最大撮影倍率1/4倍」という表記に気がついた。

匠「何?最短25cmだと?? いつのまに、そんなに
  短くなった・・??」

確か、これまでのバージョンの最短撮影距離は、40cm
程度であった筈だった・・
(注:正確には最短38cm、但しSLⅡ版以降では、最短を
25cmに迄短縮するクローズアップレンズが付属していた)

それが、本レンズでは、ヘリコイドの繰り出し量が
大きくなり、レンズ単体で25cmの最短撮影距離を
実現している。

例えば、他の40mm級レンズでの最短撮影距離は、

29cm:TAMRON SP 45mm/f1.8 Di VC USD
30cm:CANON EF40mm/f2.8 STM
40cm:smc PENTAX-DA 40mm/f2.8 XS(APS-C機専用)
40cm:SIGMA 40mm/f1.4 DG HSM | Art
45cm:smc PENTAX-FA 43mm/f1.9 Limited
45cm:NIKON Ai NIKKOR 45mm/f2.8P
45cm:KONICA HEXANON AR 40mm/f1.8
60cm:smc PENTAX-M 40mm/f2.8

・・となっている。

上記記載のレンズは全て所有しているが、マクロ
レンズを除き、本ULTRON 40mm/f2が40mm級レンズ
では、トップの最短撮影距離になるではないか(!)

(注:SIGMA 45mm/f2.8 DG DN Contemporary
(未所有)は、さらに寄れる最短撮影距離24cmだ。
また、35mmレンズでは、色々と寄れるものも存在
している→説明が長くなる為、詳細は省略)

という訳で、私は「唯一無二」という製品はとても
好みである為、これが強い購入動機となった訳だ。

コロナ禍第1波明けの頃に、本ULTRON40/2を購入。
準標準レンズとして使う他、最短撮影距離の短さ
を生かした、準マクロレンズとしても有益である。
_c0032138_06462624.jpg
描写力だが、光学系は、変形ダブルガウス型の
5群6枚構成レンズの最後部を非球面としたもの
であり、銀塩時代に小口径標準レンズとして、
ほぼ完成の域にあった光学系を、小改良した形と
なっている為、まあ、特に不満は見当たらない。

「開放からシャープだ」、という、ありきたりの
レビュー(情報)は良く見掛けるのだが、そんな事は
近代設計の単焦点レンズは、全てが開放からシャープ
な描写力を持っているから、有益な情報にはならない。

私の感覚では、むしろ「ボケ質破綻の少なさ」に
着目するべきであろう。
銀塩小口径MF標準(50mm前後/F1.7~F2級)は、
その時代から既に、解像感の高さは長所であった
のだが(注:大口径F1.2~F1.4級標準は、開放
で甘々の描写傾向なので、比較すれば、なおさらだ)
しかし小口径標準においては、ボケ質のコントロール
が若干難しい弱点があったのだ。(銀塩一眼レフで
使うならば、なおさら高難易度で、ほぼ不可能だ)

本レンズでは、そのあたりを、あまり気にせず
使うことができる。この為、高精細EVF搭載の
ミラーレス機で、ボケ質破綻回避に神経を払って
使う必要が無く、今回使用のNIKON Dfといった
デジタル一眼レフ(開放測光および光学ファインダー
であるから、ボケ質破綻回避技法が、ほぼ使えない)
であっても、特に問題が無く使えてしまう。

NIKON Dfは操作系の重欠点を抱える問題児カメラだが、
格好良い、という大きな特徴を持ち、特に、本レンズ
のような、オールドNIKKOR風デザインのレンズとの
デザインマッチングは最適である。

ただまあ、Dfは1/4000秒シャッター機であり、
本レンズの開放F2との組み合わせでは、これを屋外で
自在に絞り値を制御する為には、ND4(減光)フィルター
の使用が必須だ。この場合、NDフィルターには銀色枠の
製品は無いので、本レンズの「シルバーリム」との
組み合わせは、ややデザイン的に格好悪い。
まあでも、些細な事、かつマニアックな話だ・・

さらにマニアックな話をすれば、NIKON Dfでは、
カスタムメニューf7番で、レンズの絞り環操作を有効
にする事ができる。本レンズのデザインで、レンズ側
での絞り値操作は、銀塩機ライクで、なかなか楽しい。
(逆に言えば、本レンズでの、電子ダイヤルでの絞り
操作は、なんだか、やる気が起こらない操作性だ。
また、「撮影前に絞り値を決定し、調整する事で
速写性を高める」という上級撮影技法も、絞り環で
やる方が効率的である)
_c0032138_06462656.jpg
総括だが、悪くないレンズである。
初期型の同時代(2000年代初頭)に発売された
同社SLシリーズレンズ群は、ほぼ全てが、レア感から、
現代では不条理なプレミアム相場(=投機的価格)
となってしまっている状況において、本レンズは
当時から生産が継続されている現行製品であるが故、
投機的相場にならずに購入できるのが良い点である。

まあでも、いつの間にか生産終了になってしまい、
後年になって「あのULTRON40/2が、どうしても欲しい」
と言われても、もう手遅れだ。
優秀だと判断したレンズは、なんとしても発売期間中
に入手しておく必要がある。特に、レア物になり易い
コシナ・フォクトレンダー銘レンズは、なおさらである。

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さて、今回の第84回記事は、このあたり迄で・・
次回記事に続く。

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