本シリーズ記事では、所有している、やや特殊な
交換レンズを、カテゴリー別に紹介している。
今回は「望遠系マクロ」という主旨で記事を進める。
「望遠系マクロ」とは、やや定義が曖昧であるが、
「120mm以上の実焦点距離で1/2倍以上の撮影倍率を
持つフルサイズ対応レンズ」、としたいところだが、
本記事においては上記要件を少し緩和して、その条件に
当てはまるレンズを4本と、条件は完全には満たさない
が、それに準ずるレンズを4本の、計8本を取り上げる。
なお、望遠マクロ(系)レンズは、どれも使いこなしが
とても難しい。本記事では各レンズの紹介のラストに、
普段は行わない評価項目として、
【(使いこなしの)困難度】を、最大★5つの評価で
行っておこう。ここで「★★★★★」(5.0点)は、
最高の難易度であり、上級層以上で無いと手に負えない、
という意味だ。
----
ではまず、最初の望遠マクロシステム
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レンズは、TAMRON SP AF 180mm/f3.5 Di LD [IF]
MACRO 1:1 (Model B01)(中古購入価格 30,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2003年に発売された単焦点AF望遠等倍マクロレンズ。
TAMRONと言えば「90マクロ」シリーズが著名であり、
マニア層や上級層であれば、いずれかの「90マクロ」
を所有している事であろう。
しかし、90マクロでは無いTAMRONのマクロ、つまり
SP60mm/F2(Model G005)(本シリーズ第8回記事)
や、本レンズSP180/3.5(B01型)も、マクロレンズ
として極めて優秀な描写力を持つ。
まあ、それもその筈、1979年のSP90/2.5(52B)
より脈々と続く、「ブランド化」されたTAMRON製の
マクロの評判を貶めるような低性能マクロレンズを
新発売する筈も無く、必ず「気合の入った設計」に
せざるを得ないから、必然的に派生機種(マクロ)も、
高描写力である事が保証されていた。
(注:派姓機種の60mmも180mmのマクロも
現在では生産終了となっている)
ただ、そういったメーカーにおけるブランドイメージ
の事情を抜きにしても、本SP180/3.5は、なかなか
の描写力を魅せてくれる名マクロであろう。
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2003年から2016年迄の長きに渡って生産を継続。
でも、販売期間中は、私は、このレンズを「大きく
重く高価」な「三重苦」レンズと見なしていて、
正直、敬遠していた節もあった。
だが、生産終了後に中古相場が大きく下落した為、
「そろそろ買い頃か?」と、重い腰を上げて購入に
至った次第である。
使用を始めると、やはり大きく重い、しかし
中古相場は安価になっていたので、「三重苦」では
無いであろう(笑)
初回の試写の段階から、高画質である事に驚いた。
匠「あちゃ~! 失敗したよ・・」
何が失敗か?と言えば、このレンズを発売後10年間
以上も敬遠しつづけて、入手しなかった事である。
ここまで優秀な描写力を持つ(望遠)マクロであれば、
もっと早く入手しておくべきだった。
「三重苦」という、自分勝手な「思い込み」により
本レンズのパフォーマンスを見抜けなかった訳だ。
しかし、短所も勿論ある。レンズ駆動量の極めて
大きい望遠マクロ故に、近接撮影から遠距離までを
高速に変化させたいような撮影シーンにおいては、
AFの速度・精度が”壊滅的”に酷い。
まあでも、これは本レンズに「超音波モーターが内蔵
されていないから」という理由よりも、望遠マクロで
あるが故の、構造上の宿命であろう。
本記事では150mm以上の(正規の)AF望遠マクロを
3本紹介するが、いずれもAF速度・精度の弱点は持って
いて、一般的な(望遠)レンズの感覚でAF合焦を
期待すると、いずれの望遠マクロも、とんでもなく
「ドン臭い」レンズに感じてしまう事であろう。
回避方法はシンプルだ。MFを主体として使えば殆ど
問題は無い。その為に今回は母艦として、DMF機能や
AF/MFの切換の操作系に優れるSONY α77Ⅱを用いている。
ちなみに、母艦をDMFの無いα65にして使ってみたが、
その機体では常時MFとしないと使い物にならなかった。
AFが使い難い原因は他にもあって、幅広のピントリングが
AF時に廻ってしまい、手持ちで、重いレンズを重心位置で
ホールドする際、ピントリングの動作と、レンズを支える
手指が干渉する点が大きな課題だ。よってまあ、常にMFを
主体とする事が課題回避の上では適正な手段であろう。
(注:レンズ前玉「だけ」は、回転する事がなく、
これにより、PLフィルター等を装着時における利点と
している。ただ、PL使用時を優先させて、AF時の
課題を解決していないのは、どうなのだろうか?)
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なお、MFにすれば課題の全てが解決する訳でも無い。
αフタケタ機に備わるピーキング等のMFアシスト機能を
駆使したとしても、元々、望遠マクロでは被写界深度が
浅いので、すぐ目の前にある被写体がMF距離によっては
(ピンボケで)”全く見えない”状況に陥ってしまう。
まあ、幸いにして本レンズは従来タイプの有限回転式
ピントリングと距離指標が付いているので、手指の
感触で撮影距離を判断できるように熟練していけば良い。
それと、ここから以下は重要な話だが・・
先年、知人より、
「望遠マクロと、最大撮影倍率の高い望遠ズームは
どこが違うのだ? 同じように撮れるのでは?」
という質問を受けたのだが、私は
「望遠マクロは、WDが短いから、撮影アングル等の
空間処理の自由度が高い」と答えたのだが・・
「ふ~ん、そういう撮り方も有るのかも知れないが
オレの撮り方とは違う」と、納得して貰えなかった。
多分、「空間的な撮影概念」を理解できないのだろう。
すなわち、昔から長く写真をやっている人ほど、
「カメラやレンズを構えた、その位置から、肉眼で
見えるものしか”被写体”とは見なせない」
という固定的な概念にハマってしまっている。
その状態では被写体は「二次元的・平面的なモノ」で
しかなく、そういう状況では誰が撮っても同様だから
どんどんと、「綺麗な、または珍しいもの」という
いわゆる「写真映え(ばえ)」を目指す方向にしか
考え方が行かなくなってしまう。
写真(や映像)は、そうした自分の目線(アイレベル)
だけで撮るとは限らない。その事で近年では、わかり
易い実例があり、それは「ドローン」による映像だ。
それを見て貰えれば、自分の目線以外の「空間的な
あらゆる場所から自在に映像を撮る事」が、いかに
有益な事か、その理解が容易であろう。
だから、写真(や映像)は「三次元的な空間の中から
三次元的な被写体を、自在に撮影する事」である訳で、
平面的・固定的な視点で撮る「だけ」の、状況や概念
では無い。そこを撮影者が、工夫や表現を行う事で
「真の構図」というものにも繋がって行く。
(=「構図」とは、決して平面的なものでは無い)
「望遠マクロ」は、その空間的な自由度を、望遠ズーム
よりも高める事を可能とする、そこが大きな相違点だ。
望遠ズームでは、一般的に横からアイレベル(自分目線)
でしか撮れない訳であるが、望遠マクロでは、例えば
真上から、ドローンのように撮る事も可能である。
本SP180/3.5の発売時、TAMRONは特設サイトを開設し
(現在でも残っている)そこにキャッチコピーとして、
「望遠マクロでなければ、撮れないものがある」
と記載した。
これはまさしく、その「空間撮影技法の自由度の高さ」
から来る優位点を説明しているのであろう。
このキャッチコピーを誤解して「珍しい昆虫や草花が
撮れるのか?」と思うようでは、残念ながら、平面的・
二次元的な写真撮影技法から一歩も抜け出せていない。
総括だが、いずれにしても使いこなしは、そう簡単な
レンズでは無いし、望遠マクロにおける「用途開発」も
難しい事であろう。
(=いったい何をどのように撮りたいのか? その
「用途」が決まっていかないと、宝の持ち腐れとなる)
まあつまり、上級層向けレンズである。
【困難度】★★★★(4.0点 かなり難しい)
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では、次の望遠マクロシステム
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レンズは、SIGMA AF MACRO 180mm/f2.8
(中古購入価格 37,000円)(以下、SIGMA180/2.8)
カメラは、OLYMPUS E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
出自等の詳細情報は今や不明、1990年代発売と思われる
フルサイズ(銀塩)対応1/2倍AF望遠マクロレンズ。
本レンズは、正規に使用する事が出来ない。
まず、本レンズはCANON EFマウント版であるが、
CANONにおける2000年頃の「プロトコル変更」により、
それ以前の時代のSIGMA製EFマウントレンズは、
銀塩/デジタルEOSの2000年以降の機種では使用不能と
なってしまっている。(注:当時、CANONとSIGMAは
協業していたような節もあり、この事件は「排他的」
ではなく、双方合意の上での話だったかも知れない。
しかし、いずれにしても、困るのはユーザー層だ!)
よって、現代ではEFマウントアダプターを用いて
他社機で使うのだが、電子アダプターを用いたと
しても、動作する保証は無い。(私の所有範囲の
電子アダプターでは、完全には動作しない)
結局、絞り羽根内蔵の機械式EF(→μ4/3)アダプター
を使用する事になる。
ここで、レンズ後群以降の絞り機構は「視野絞り」と
言い、光束を遮り、露出調整の効能はあるのだが、
レンズ内部にある通常の「開口絞り」とは、光学的な
効能が異なる。すなわち「被写界深度の調整」「ボケ質
(破綻)の調整」の用途には、このアダプター内蔵の
絞り羽根は、殆ど効果が無い。
よって、本レンズ自体の、ボケ質やら解像感等の評価
は、システム構成的に不可能である。
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まあ、「とりあえず写る」という状態でしか無い訳だ。
そして、非常に大きく重いレンズである。
不完全で、かつハンドリングが悪いシステムを持ち出し
ても、「エンジョイ度」が低まり、好ましく無い。
今更、こうした古いレンズの情報を欲しがる人も居ないと
思うので、本レンズの紹介は早々に終了しよう。
【困難度】★★★★☆(4.5点 かなり難しい)
---
さて、次のシステムは準望遠マクロである。
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レンズは、Voigtlander APO-LANTHAR 180mm/f4 SL
Close Focus(新品購入価格 54,000円)
(注:独語上の変母音の記載は便宜上省略している)
カメラは、OLYMPUS E-410(4/3機)
2003年発売のMF単焦点小口径望遠レンズ(近接可)
OLYMPUS OMマウントでの購入だったので、今回は
4/3(フォーサーズ)機を母艦としてみよう。
最短撮影距離は1.2mと、通常の180~200mm級
単焦点望遠レンズとしては、トップクラスの近接能力だ。
最短1.2mでの撮影倍率は1/4倍、ただしフォーサーズ機
で使用している為、換算1/2倍相当の撮影倍率となり、
ほぼ望遠マクロと言えるが、画角も360mm相当と、
かなりの望遠画角である為、被写体の選択はそれなりに
難しくなる。まあ、中距離の昆虫等が主な被写体として
適正であろう。
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システムの「用途開発」としては、そうした「自然観察
撮影」に向く訳なのだが、その場合、勿論4/3機よりも
μ4/3機の方が適している。何故ならば、μ4/3機の
多くは、デジタル拡大機能(ズーム、テレコン)を
備えている為、本レンズであっても容易に等倍以上の
撮影倍率を得る事が出来、フィールド(自然)撮影に
おける被写体汎用性が高い。
(注:「トリミングと同じだよ!」とは言うなかれ。
自然観察撮影等では1日の撮影が数千枚に及ぶ事すら
多々ある。それを、一々後編集していたら、手間が
かかりすぎる次第だ。出来れば、全ての写真は、
撮影時において、「無編集でも使える程度」の状況に
仕上げておきたい訳だ)
加えて、本レンズはMFレンズであるから、ここもまた
μ4/3機(等のミラーレス機)に備わる、ピーキング等
のMFアシスト機能が利用できる方が望ましい。
また、μ4/3機(等のミラーレス機)の一部では、
内蔵手ブレ補正機能の手動焦点距離設定が出来る為、
本レンズを360mm相当以上の望遠画角で使う際には
(内蔵)手ブレ補正が有効である方が望ましい。
ただし、換算720mm以上もの超望遠画角で使用する際
には、例え新鋭μ4/3機の優秀な手ブレ補正でも精度が
かなり怪しくなる事は、念の為注意する必要がある。
(その際、「AUTO ISOの低速限界設定機能」を持つ
μ4/3機(2016年発売以降の高級機)であれば、
それを正しく設定すれば、手ブレ補正よりも有効だ)
それから、本レンズのような単純構成の望遠レンズに
おいては、設計上、諸収差の補正が行き届いておらず、
周辺画質が低下する場合があるので、それを回避する
意味でも、APS-C機以下(4/3、μ4/3含む)のセンサー
サイズで用いる方が、画面全般の画質向上には望ましい。
(注:一応「APO」仕様であるから、異常低分散ガラス
レンズを1枚使用している)
いずれにしても、フルサイズ機では使用しない方が
賢明だ、撮影倍率の不満や周辺画質の弱点をフルサイズ
機では解消できない。
カメラとレンズによる「システム」の構築は、両者の
特徴を活かし、総合パフォーマンスを最適化する事が
基本中の基本である。
デタラメな組み合わせは、外から見て格好悪い。
本レンズAPO-LANTHAR 180mm/f4 であるが、販売
本数が少なく、現在レア物となっている。
だが、無理をしてまで探すべき超高性能レンズでは
無く、ありふれた性能の望遠レンズで、ちょっとだけ
近接性能が高いくらいだ。
あまり褒めると、また下手に「投機対象」とかになって
しまう恐れがあるので、ほどほどにしておこう。
(追記:残念ながら、既に「投機対象」となってしまい、
2020年頃からは、発売時価格の約2倍の10万円以上だ。
だが、そんな高価すぎる中古品が売れる筈も無く、ずっと
在庫を抱えたままだ。結局、単に「高く売りたい」という
販売側での「希望小売価格」に過ぎない)
ちなみに、本シリーズ第11回、「マクロアポランター・
グランドスラム」編では、マクロアポランターおよび
アポランターの全5機種を比較紹介しているが、その
5本の中では、本レンズが最も総合評価点が低かった。
【困難度】★★★☆(3.5点 やや難しい)
---
さて、次のシステムはマシンビジョン用である。
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レンズは、VS Technology VS-LD50(焦点距離50mm)
(発売時定価28,000円)
カメラは、PENTAX Q (1/2.3型機)
発売年不明(2000年代?)の、FA用低歪曲望遠マクロ
(近接専用)、初期メガピクセル対応、MF単焦点手動絞り
マシンビジョンレンズ。
開放F値は「露出倍数」に応じ、F2.7~F3.1程度となる。
工業用の2/3型センサー迄、対応可能であるが、それよりも
ずっとセンサーサイズの小さいPENTAX Qで今回は使用する。
なお、Q系で無い機種の場合、例えばμ4/3機での常時2倍
テレコン使用の場合でも、4/3÷2=2/3(型)となり、
使用可能だ。
画角は、PENTAX Qで使用時には、フルサイズ換算で
275mm相当となる。
最大撮影倍率は、正確な値は不明だが、計算上では、
およそ10倍(フルサイズ換算)にも達する。
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本レンズによる屋外での近接手持ち撮影は、極めて
高難易度であり、万が一撮れても偶然であり奇跡的だ。
勿論、本レンズの用途は工業用(主に製品検査用等)で
あるので、写真用に用いる、というのは想定外の用法だ。
また、一般ユーザーが(個人で)入手できるレンズでも
無いので、紹介は早々に打ち切っておく。
【困難度】★★★★★+(5.0点+ 非常に困難、専門家向け)
---
では、次は準望遠マクロ・トイレンンズである。
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レンズは、NIKON おもしろレンズ工房
ぐぐっとマクロ (120mm/f4.5)
(中古購入価格 7,000円相当)
カメラは、NIKON D2H(APS-C機)
1995年発売、2000年再生産の「おもしろレンズ工房」
の内の1本である。
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本レンズの出自について述べると極めて長くなる。
詳細は、本シリーズ第13回「おもしろレンズ工房」編
を参照していただくとして、本記事ではごく簡単に・・
NIKON一眼レフ用交換レンズ(NIKKOR)の販売促進を
目的とした、お試し版、すなわちエントリーレンズで
あり、20mm魚眼風、120mmmマクロ兼90mmソフト、
400mm望遠、の3本セットが「おもしろレンズ工房」
である。
当時の一般的銀塩一眼レフユーザーでは、まず持って
いないだろう特殊な交換レンズ群を安価(セット価格
約2万円)で販売し、レンズ交換の楽しさを知らしめ、
そうしたユーザー層が、正規のマクロや望遠、超広角等、
高価なNIKKORレンズを買って貰うように誘導する為の
市場戦略(商品)である。
現代でこそ、ありとあらゆる分野の製品で「お試し版」
が存在するが、この当時(20世紀)としては、なかなか
先進的な発想だ。
だが、この発想を理解できない典型的な「昭和の人達」の
お偉いさんもきっと多かった事だろう。
「そんな安物のレンズを売ったら、天下のニコンの名に
傷がつく」とか、
「これを買ったユーザーが、それで満足したら、
もうNIKKORを買ってくれないじゃあないか・・」
と、まあ、そんな反論は、当然ながら出ていただろう。
正論ではあるが、いずれも目先の損得にしか着目していない。
”損して得取れ”、といった時間軸上での販売促進効果や、
ユーザー層の心理、さらには、ユーザーの周囲を含めた
コミュニティでの波及効果など・・ 現代のネット時代での
マーケティング感覚では当たり前の「常識」的な戦略は、
その当時の”経済新聞しか読まない”お偉いさん達には
理解不能であろう。まあ、見ている世界がまるで違う訳だ。
その結果、この「おもしろレンズ工房」は、一応発売に
漕ぎ付けた(後に再生産された人気商品だ)のだが、
発売時に、ありとあらゆる”意地悪”や”制限”を
掛けられてしまった不遇の製品となった・・
もうその内容はここでは書くまい、過去何度も様々な
記事に書いているし、そもそも書いているだけで不愉快な
気持ちとなる、読者が読んでいてもきっと同様であろう。
ガンダムの名セリフ、「偉い人にはそれがわからんのです」
を、まさしく地で行く出来事ではあるが、まあ、あくまで
時代の未成熟だろう。
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ちなみに、エントリーレンズは本「おもしろレンズ工房」
が史上初では無い。本レンズに遡る事5年前、1990年に
CANON EF50/1.8Ⅱが発売されている。
そちらは、その後25年間のロングセラーとなり、商品単体
での収支も勿論黒字だろうが、そういう目先の損得よりも
1990年代から2000年代にかけ、長期間、CANON EOS機
の普及や、EOSエントリーユーザー層におけるEFレンズの
訴求に多大な功績があったレンズである。
1995年、バブル崩壊後にユーザー心理が大きく変わり、
かつ、EF50/1.8Ⅱのような好例がすでに存在していた
にも係わらず、本「おもしろレンズ工房」の企画上の
コンセプトが、仮にメーカー側でも理解できなかった
のであれば・・ まあ、ある意味残念な話である。
【困難度】★★★(3.0点 普通の難易度)
---
では、次のシステムは望遠ミラー(レンズ)である。
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ミラーは、TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
(中古購入価格 18,000円)(以下、MF300/6.3)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のMF望遠ミラー(レンズ)である
μ4/3機専用で換算600mm、最短撮影距離80cm(撮影
倍率1/2倍)は非常に優秀なスペックで、μ4/3機に備わる
デジタル拡大機能(ズーム、テレコン)と組み合わせれば
簡単に等倍以上の撮影倍率を得られる。
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数m先の小さい被写体を撮影するのに最適であり、
具体的には「トンボ」等の昆虫の撮影に最も向くレンズだ。
本レンズであれば、トンボ等が人の気配に驚いて逃げる事の
無い”アウトレンジ”から、まんまと(笑)撮影が可能だ。
ミラー(レンズ)は、銀塩時代に少し流行したのだが、
現代においては、新製品のミラー(レンズ)は、メーカー
純正品はなく、レンズメーカー(特にKENKO TOKINA)
から数機種が発売されるのみの状況だ、なかなか希少な
製品が、ミラー(レンズ)であると思う。
本レンズは、旧来のミラー(レンズ)の弱点の多くを
解消している優秀でユニークなミラー(レンズ)であり、
個人的な評価点も高い。
過去記事「ミラーレス・マニアックス名玉編」では、
当時300本程の所有レンズ中、第13位にランクインして
いる。ただし、ピント合わせや、リングボケの処理、
被写界深度が一般的手法では調整不可(注:デジタル
ズームを併用して擬似的に被写界深度を調整するという
高度な技法が存在する)・・とまあ、それらに若干の
使いこなしの難しさもあるので、誰にでも薦められる
という訳ではなく、中級者以上向けとしておく。
【困難度】★★★★(4.0点 やや~かなり困難)
---
さて、次の望遠マクロシステム。
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レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
(読み:フォクトレンダー マクロ アポランター
注:スペル上の変母音の記載は便宜上省略している)
(新品購入価格 79,000円)(以下、MAP125/2.5)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)
2001年頃に発売されたフルサイズ対応MF等倍望遠マクロ
レンズ。
保有約20年と、長期に渡り使用しつづけ、過去記事で
何度も紹介しているレンズであるので、だいたいの長所
短所等は書きつくしている。
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最大の課題は、現在、本レンズが「投機対象」と
なってしまっていて、15万円~20万円という不条理な
までに法外な高額中古相場となっている事である。
近年の関連記事としては、以下を参照されたし。
*レンズ・マニアックス第12回「使いこなしが難しい
レンズ特集(後編)」(注:ワースト第1位)
*レンズ・マニアックス第22回「高マニアック編(2)」
*レンズ・マニアックス第32回「新旧マクロアポランター
対決」編
*特殊レンズ・スーパーマニアックス第11回
「アポランター・グランドスラム」編
いずれの記事でも述べているが、本レンズは描写力は
悪く無いが、使いこなしがとても難しい(最悪とも言える)
「修行」(苦行)レンズである。
好んでこのレンズを持ち出したいとも、そう思えないし、
ましてや20万円も出して買うべき実用価値はまるで無い。
せいぜい、3~4万円というあたりが妥当な相場であろう。
「投機対象品」である為、高額で入手したユーザーも
まず、本レンズで撮影を行う事は無いであろう。
「使うとキズがついたりして価値が下がる」と思う
ようでは、もう「骨董品」や工芸美術品と同様であり、
「正当な撮影機材だ」と言う事も、残念ながらできない。
本レンズに関わる詳細は、ばっさりと割愛する。
【困難度】★★★★★(5.0点 非常に困難)
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さて、次は今回ラストの望遠マクロシステム。
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レンズは、SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG OS HS
(中古購入価格 58,000円)(以下、APO150/2.8)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)
2011年に発売されたフルサイズ対応AF等倍望遠マクロ。
手ブレ補正(OS)内蔵となった新型モデルである。
このレンズの発売後2年程して、SIGMAは製品ラインナップ
の見直しを計ったが、本レンズはART LINEに編入される
事は無く、旧型(EX DG)として細々と併売されていた。
以降、ART LINEには、2018年発売のArt70mm/F2.8
(注:新型”カミソリマクロ”と呼ばれる)まで、
マクロレンズは存在しなかった事となる。
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本レンズは、大きく重く高価な三重苦レンズであるが、
中古購入で価格の課題は、ほぼ解消しており、描写力に
対する入手価格、すなわち「コスパ」は許容範囲である。
ただ、重さの課題はいかんともしがたく、本レンズでは
一応三脚座を外せるが、その措置をしても、1kg強もの
重さがある。冒頭のTAMRON SP180/3.5 が、1kgを少し
切る値であり、ほぼ同等であるが、SP180mmはレンズ
が長いので密度感が薄く、感覚的に軽く感じるのが、
本APO150/2.8は、SP180/3.5より小さくても、
ずっしりとした凝縮感があって、とても重く感じる。
SONY α(A)マウント版で欲しかったのだが、あいにく
中古が見当たらず、次善の策としてNIKON Fマウントを
選択した。本レンズを今回使用のD500を母艦とすれば、
等倍x1.5(APS-C機)x1.3(クロップ機能)により
最大2倍までの撮影倍率が得られるからだ。
(参考:α(A)マウントのAPS-C機、α77Ⅱ等であれば、
最大3倍までの撮影倍率が得られ、かつ記録画素数の
低下も最小限となる→常に600万画素で撮れる)
描写力は、さほど悪く無い。いや「良好」と言うべき
レベルであるが、冒頭のTAMRON SP180/3.5と比較
したら、若干だが見劣りするように思える。
で、最短撮影距離38cmで、フルサイズの等倍撮影時、
被写界深度は計算上では、1mm程度しか無い。
ここまでの被写界深度の浅さであると、さしものD500
の高性能AFでも、AF精度が性能的に追いついていない。
すなわち例えば、昆虫の、とても小さな目にピント
を合わせたいと思っても、一般的なAFの性能では、
とてもそこまで精密なピント合わせは出来ない訳だ。
そんな場合は、当然ながらMFに頼る事となるのだが、
本レンズでは無限回転式ピントリング+HSMにより、
一応シームレスにAFからMFに移行が可能だ。
しかし、無限回転式ピントリングでは、最短と∞での
停止感触が無いと、MF撮影には全く向かない。
でも、本レンズの場合、距離指標が存在していて、
一応わずかながら、最短と∞でのひっかかりがある。
これを「ハイブリッド方式」と個人的に呼んでいて、
いちおう現代のレンズ設計常識では、これが最上・
最適なAF/MF構造として、高級レンズに与えられる
仕様なのであるが・・
個人的にはこれでも、MF操作性としては不満足である。
何が気に入らないのか? といえば、ピントリングの
回転角と、ピント位置の相対関係(変化率)である。
銀塩MF時代のMFマクロレンズの場合、近距離になれば
なる程、ピントリングの回転角は大きく、遠距離の
被写体ではその回転角は狭い。
この変化量は「exponential」(エキスポネンシャル)
つまり、「指数関数的」に変化し、この変化率が、
近接撮影になればなるほど、精密なピント合わせが
必要になる、という現実的なマクロ撮影技法にマッチ
している為、とても使い易い。
ところが、シームレスMFの無限回転式ピントリングの
場合、この「指数関数」の比率(つまり関数の係数)が
MFのヘリコイドの場合とは異なるのだ。
つまり、違和感があり、MFが使い難く、操作性が悪化
している。
(参考:近年、2021年末にPanasonic社の高級機に
対して行われたファームアップでは、特定のレンズ
において、フォーカスリングにおける「リニア」と
「ノンリニア」の切り替え機能が初めて搭載された。
これがすなわち、上記で述べた回転角の比率の話だ)
それでも、ミラーレス機での高精細EVFを用いて、
かつ、優秀な演算アルゴリズムを持つピーキングと
組み合わせ、画面拡大機能等を駆使するならば、
MFでのピント操作性は、さほど気になる酷さでは無い。
ところが、D500のような一眼レフでは、現状では
どんなにファインダーやスクリーンが優れているような
高級機であっても、ミラーレス機のMFアシスト程の
ピント精度は出ない。
(注:フォーカスエイド機能を用いれば若干マシだが
測距点が限定される為、操作系的に効率的では無い)
まあ、銀塩時代の一眼レフ、具体的にはCANON New F-1
PENTAX LX、MINOLTA α-9の3機種であれば、超絶的な
MF性能を持つのだが、その後の時代のAF/デジタル
一眼レフでは、どんなに高価な高級機であっても、
上記の銀塩時代のトップ3を上回る事は皆無である。
つまり、ファインダーやスクリーンが改悪されて
いる事になり、これは好ましく無いが、そういう事
よりも、「精密ピント合わせ母艦としては、一眼レフ
は好ましく無く、ミラーレス機に軍配が上がる」
という事を意味している。
まあ、今時の一眼レフの初級中級ユーザー層は、
被写界深度が1cmを下回るレンズやシステムなどは
まず所有していないだろうから、こういう話は、
それこそ「ピンと来ない」かも知れない。
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ただ、ユーザー側はやむを得ないが、メーカーの開発側
や技術者まで「ピンと来ない」状況は好ましく無い。
まあ、とても忙しい開発業務の合間で、写真なんぞ撮って
いる暇もないのだろうが、そもそも、そこが問題点だ。
メーカーの技術者も、必ず「精密ピント合わせ」を
体感してみる必要がある。被写界深度が1cmどころか
1mmを下回るレンズというものも、世の中には色々と
存在しているのだ。そういうレンズで、自身が開発
したカメラで10万枚程、写真を撮ってみると良い。
「なんとかAFシステム」とかの名前がつく、自慢の
最新技術が、そうした限界状況では全くと言っていい
程に役に立たない事に、きっと気がつく事であろう・・
【困難度】★★★☆(3.5点 やや困難)
----
では、今回の「望遠系マクロ」編は、このあたり迄で。
次回記事に続く。
交換レンズを、カテゴリー別に紹介している。
今回は「望遠系マクロ」という主旨で記事を進める。
「望遠系マクロ」とは、やや定義が曖昧であるが、
「120mm以上の実焦点距離で1/2倍以上の撮影倍率を
持つフルサイズ対応レンズ」、としたいところだが、
本記事においては上記要件を少し緩和して、その条件に
当てはまるレンズを4本と、条件は完全には満たさない
が、それに準ずるレンズを4本の、計8本を取り上げる。
なお、望遠マクロ(系)レンズは、どれも使いこなしが
とても難しい。本記事では各レンズの紹介のラストに、
普段は行わない評価項目として、
【(使いこなしの)困難度】を、最大★5つの評価で
行っておこう。ここで「★★★★★」(5.0点)は、
最高の難易度であり、上級層以上で無いと手に負えない、
という意味だ。
----
ではまず、最初の望遠マクロシステム
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MACRO 1:1 (Model B01)(中古購入価格 30,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2003年に発売された単焦点AF望遠等倍マクロレンズ。
TAMRONと言えば「90マクロ」シリーズが著名であり、
マニア層や上級層であれば、いずれかの「90マクロ」
を所有している事であろう。
しかし、90マクロでは無いTAMRONのマクロ、つまり
SP60mm/F2(Model G005)(本シリーズ第8回記事)
や、本レンズSP180/3.5(B01型)も、マクロレンズ
として極めて優秀な描写力を持つ。
まあ、それもその筈、1979年のSP90/2.5(52B)
より脈々と続く、「ブランド化」されたTAMRON製の
マクロの評判を貶めるような低性能マクロレンズを
新発売する筈も無く、必ず「気合の入った設計」に
せざるを得ないから、必然的に派生機種(マクロ)も、
高描写力である事が保証されていた。
(注:派姓機種の60mmも180mmのマクロも
現在では生産終了となっている)
ただ、そういったメーカーにおけるブランドイメージ
の事情を抜きにしても、本SP180/3.5は、なかなか
の描写力を魅せてくれる名マクロであろう。
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でも、販売期間中は、私は、このレンズを「大きく
重く高価」な「三重苦」レンズと見なしていて、
正直、敬遠していた節もあった。
だが、生産終了後に中古相場が大きく下落した為、
「そろそろ買い頃か?」と、重い腰を上げて購入に
至った次第である。
使用を始めると、やはり大きく重い、しかし
中古相場は安価になっていたので、「三重苦」では
無いであろう(笑)
初回の試写の段階から、高画質である事に驚いた。
匠「あちゃ~! 失敗したよ・・」
何が失敗か?と言えば、このレンズを発売後10年間
以上も敬遠しつづけて、入手しなかった事である。
ここまで優秀な描写力を持つ(望遠)マクロであれば、
もっと早く入手しておくべきだった。
「三重苦」という、自分勝手な「思い込み」により
本レンズのパフォーマンスを見抜けなかった訳だ。
しかし、短所も勿論ある。レンズ駆動量の極めて
大きい望遠マクロ故に、近接撮影から遠距離までを
高速に変化させたいような撮影シーンにおいては、
AFの速度・精度が”壊滅的”に酷い。
まあでも、これは本レンズに「超音波モーターが内蔵
されていないから」という理由よりも、望遠マクロで
あるが故の、構造上の宿命であろう。
本記事では150mm以上の(正規の)AF望遠マクロを
3本紹介するが、いずれもAF速度・精度の弱点は持って
いて、一般的な(望遠)レンズの感覚でAF合焦を
期待すると、いずれの望遠マクロも、とんでもなく
「ドン臭い」レンズに感じてしまう事であろう。
回避方法はシンプルだ。MFを主体として使えば殆ど
問題は無い。その為に今回は母艦として、DMF機能や
AF/MFの切換の操作系に優れるSONY α77Ⅱを用いている。
ちなみに、母艦をDMFの無いα65にして使ってみたが、
その機体では常時MFとしないと使い物にならなかった。
AFが使い難い原因は他にもあって、幅広のピントリングが
AF時に廻ってしまい、手持ちで、重いレンズを重心位置で
ホールドする際、ピントリングの動作と、レンズを支える
手指が干渉する点が大きな課題だ。よってまあ、常にMFを
主体とする事が課題回避の上では適正な手段であろう。
(注:レンズ前玉「だけ」は、回転する事がなく、
これにより、PLフィルター等を装着時における利点と
している。ただ、PL使用時を優先させて、AF時の
課題を解決していないのは、どうなのだろうか?)
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αフタケタ機に備わるピーキング等のMFアシスト機能を
駆使したとしても、元々、望遠マクロでは被写界深度が
浅いので、すぐ目の前にある被写体がMF距離によっては
(ピンボケで)”全く見えない”状況に陥ってしまう。
まあ、幸いにして本レンズは従来タイプの有限回転式
ピントリングと距離指標が付いているので、手指の
感触で撮影距離を判断できるように熟練していけば良い。
それと、ここから以下は重要な話だが・・
先年、知人より、
「望遠マクロと、最大撮影倍率の高い望遠ズームは
どこが違うのだ? 同じように撮れるのでは?」
という質問を受けたのだが、私は
「望遠マクロは、WDが短いから、撮影アングル等の
空間処理の自由度が高い」と答えたのだが・・
「ふ~ん、そういう撮り方も有るのかも知れないが
オレの撮り方とは違う」と、納得して貰えなかった。
多分、「空間的な撮影概念」を理解できないのだろう。
すなわち、昔から長く写真をやっている人ほど、
「カメラやレンズを構えた、その位置から、肉眼で
見えるものしか”被写体”とは見なせない」
という固定的な概念にハマってしまっている。
その状態では被写体は「二次元的・平面的なモノ」で
しかなく、そういう状況では誰が撮っても同様だから
どんどんと、「綺麗な、または珍しいもの」という
いわゆる「写真映え(ばえ)」を目指す方向にしか
考え方が行かなくなってしまう。
写真(や映像)は、そうした自分の目線(アイレベル)
だけで撮るとは限らない。その事で近年では、わかり
易い実例があり、それは「ドローン」による映像だ。
それを見て貰えれば、自分の目線以外の「空間的な
あらゆる場所から自在に映像を撮る事」が、いかに
有益な事か、その理解が容易であろう。
だから、写真(や映像)は「三次元的な空間の中から
三次元的な被写体を、自在に撮影する事」である訳で、
平面的・固定的な視点で撮る「だけ」の、状況や概念
では無い。そこを撮影者が、工夫や表現を行う事で
「真の構図」というものにも繋がって行く。
(=「構図」とは、決して平面的なものでは無い)
「望遠マクロ」は、その空間的な自由度を、望遠ズーム
よりも高める事を可能とする、そこが大きな相違点だ。
望遠ズームでは、一般的に横からアイレベル(自分目線)
でしか撮れない訳であるが、望遠マクロでは、例えば
真上から、ドローンのように撮る事も可能である。
本SP180/3.5の発売時、TAMRONは特設サイトを開設し
(現在でも残っている)そこにキャッチコピーとして、
「望遠マクロでなければ、撮れないものがある」
と記載した。
これはまさしく、その「空間撮影技法の自由度の高さ」
から来る優位点を説明しているのであろう。
このキャッチコピーを誤解して「珍しい昆虫や草花が
撮れるのか?」と思うようでは、残念ながら、平面的・
二次元的な写真撮影技法から一歩も抜け出せていない。
総括だが、いずれにしても使いこなしは、そう簡単な
レンズでは無いし、望遠マクロにおける「用途開発」も
難しい事であろう。
(=いったい何をどのように撮りたいのか? その
「用途」が決まっていかないと、宝の持ち腐れとなる)
まあつまり、上級層向けレンズである。
【困難度】★★★★(4.0点 かなり難しい)
----
では、次の望遠マクロシステム
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(中古購入価格 37,000円)(以下、SIGMA180/2.8)
カメラは、OLYMPUS E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
出自等の詳細情報は今や不明、1990年代発売と思われる
フルサイズ(銀塩)対応1/2倍AF望遠マクロレンズ。
本レンズは、正規に使用する事が出来ない。
まず、本レンズはCANON EFマウント版であるが、
CANONにおける2000年頃の「プロトコル変更」により、
それ以前の時代のSIGMA製EFマウントレンズは、
銀塩/デジタルEOSの2000年以降の機種では使用不能と
なってしまっている。(注:当時、CANONとSIGMAは
協業していたような節もあり、この事件は「排他的」
ではなく、双方合意の上での話だったかも知れない。
しかし、いずれにしても、困るのはユーザー層だ!)
よって、現代ではEFマウントアダプターを用いて
他社機で使うのだが、電子アダプターを用いたと
しても、動作する保証は無い。(私の所有範囲の
電子アダプターでは、完全には動作しない)
結局、絞り羽根内蔵の機械式EF(→μ4/3)アダプター
を使用する事になる。
ここで、レンズ後群以降の絞り機構は「視野絞り」と
言い、光束を遮り、露出調整の効能はあるのだが、
レンズ内部にある通常の「開口絞り」とは、光学的な
効能が異なる。すなわち「被写界深度の調整」「ボケ質
(破綻)の調整」の用途には、このアダプター内蔵の
絞り羽根は、殆ど効果が無い。
よって、本レンズ自体の、ボケ質やら解像感等の評価
は、システム構成的に不可能である。
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そして、非常に大きく重いレンズである。
不完全で、かつハンドリングが悪いシステムを持ち出し
ても、「エンジョイ度」が低まり、好ましく無い。
今更、こうした古いレンズの情報を欲しがる人も居ないと
思うので、本レンズの紹介は早々に終了しよう。
【困難度】★★★★☆(4.5点 かなり難しい)
---
さて、次のシステムは準望遠マクロである。
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Close Focus(新品購入価格 54,000円)
(注:独語上の変母音の記載は便宜上省略している)
カメラは、OLYMPUS E-410(4/3機)
2003年発売のMF単焦点小口径望遠レンズ(近接可)
OLYMPUS OMマウントでの購入だったので、今回は
4/3(フォーサーズ)機を母艦としてみよう。
最短撮影距離は1.2mと、通常の180~200mm級
単焦点望遠レンズとしては、トップクラスの近接能力だ。
最短1.2mでの撮影倍率は1/4倍、ただしフォーサーズ機
で使用している為、換算1/2倍相当の撮影倍率となり、
ほぼ望遠マクロと言えるが、画角も360mm相当と、
かなりの望遠画角である為、被写体の選択はそれなりに
難しくなる。まあ、中距離の昆虫等が主な被写体として
適正であろう。
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撮影」に向く訳なのだが、その場合、勿論4/3機よりも
μ4/3機の方が適している。何故ならば、μ4/3機の
多くは、デジタル拡大機能(ズーム、テレコン)を
備えている為、本レンズであっても容易に等倍以上の
撮影倍率を得る事が出来、フィールド(自然)撮影に
おける被写体汎用性が高い。
(注:「トリミングと同じだよ!」とは言うなかれ。
自然観察撮影等では1日の撮影が数千枚に及ぶ事すら
多々ある。それを、一々後編集していたら、手間が
かかりすぎる次第だ。出来れば、全ての写真は、
撮影時において、「無編集でも使える程度」の状況に
仕上げておきたい訳だ)
加えて、本レンズはMFレンズであるから、ここもまた
μ4/3機(等のミラーレス機)に備わる、ピーキング等
のMFアシスト機能が利用できる方が望ましい。
また、μ4/3機(等のミラーレス機)の一部では、
内蔵手ブレ補正機能の手動焦点距離設定が出来る為、
本レンズを360mm相当以上の望遠画角で使う際には
(内蔵)手ブレ補正が有効である方が望ましい。
ただし、換算720mm以上もの超望遠画角で使用する際
には、例え新鋭μ4/3機の優秀な手ブレ補正でも精度が
かなり怪しくなる事は、念の為注意する必要がある。
(その際、「AUTO ISOの低速限界設定機能」を持つ
μ4/3機(2016年発売以降の高級機)であれば、
それを正しく設定すれば、手ブレ補正よりも有効だ)
それから、本レンズのような単純構成の望遠レンズに
おいては、設計上、諸収差の補正が行き届いておらず、
周辺画質が低下する場合があるので、それを回避する
意味でも、APS-C機以下(4/3、μ4/3含む)のセンサー
サイズで用いる方が、画面全般の画質向上には望ましい。
(注:一応「APO」仕様であるから、異常低分散ガラス
レンズを1枚使用している)
いずれにしても、フルサイズ機では使用しない方が
賢明だ、撮影倍率の不満や周辺画質の弱点をフルサイズ
機では解消できない。
カメラとレンズによる「システム」の構築は、両者の
特徴を活かし、総合パフォーマンスを最適化する事が
基本中の基本である。
デタラメな組み合わせは、外から見て格好悪い。
本レンズAPO-LANTHAR 180mm/f4 であるが、販売
本数が少なく、現在レア物となっている。
だが、無理をしてまで探すべき超高性能レンズでは
無く、ありふれた性能の望遠レンズで、ちょっとだけ
近接性能が高いくらいだ。
あまり褒めると、また下手に「投機対象」とかになって
しまう恐れがあるので、ほどほどにしておこう。
(追記:残念ながら、既に「投機対象」となってしまい、
2020年頃からは、発売時価格の約2倍の10万円以上だ。
だが、そんな高価すぎる中古品が売れる筈も無く、ずっと
在庫を抱えたままだ。結局、単に「高く売りたい」という
販売側での「希望小売価格」に過ぎない)
ちなみに、本シリーズ第11回、「マクロアポランター・
グランドスラム」編では、マクロアポランターおよび
アポランターの全5機種を比較紹介しているが、その
5本の中では、本レンズが最も総合評価点が低かった。
【困難度】★★★☆(3.5点 やや難しい)
---
さて、次のシステムはマシンビジョン用である。
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(発売時定価28,000円)
カメラは、PENTAX Q (1/2.3型機)
発売年不明(2000年代?)の、FA用低歪曲望遠マクロ
(近接専用)、初期メガピクセル対応、MF単焦点手動絞り
マシンビジョンレンズ。
開放F値は「露出倍数」に応じ、F2.7~F3.1程度となる。
工業用の2/3型センサー迄、対応可能であるが、それよりも
ずっとセンサーサイズの小さいPENTAX Qで今回は使用する。
なお、Q系で無い機種の場合、例えばμ4/3機での常時2倍
テレコン使用の場合でも、4/3÷2=2/3(型)となり、
使用可能だ。
画角は、PENTAX Qで使用時には、フルサイズ換算で
275mm相当となる。
最大撮影倍率は、正確な値は不明だが、計算上では、
およそ10倍(フルサイズ換算)にも達する。
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高難易度であり、万が一撮れても偶然であり奇跡的だ。
勿論、本レンズの用途は工業用(主に製品検査用等)で
あるので、写真用に用いる、というのは想定外の用法だ。
また、一般ユーザーが(個人で)入手できるレンズでも
無いので、紹介は早々に打ち切っておく。
【困難度】★★★★★+(5.0点+ 非常に困難、専門家向け)
---
では、次は準望遠マクロ・トイレンンズである。
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ぐぐっとマクロ (120mm/f4.5)
(中古購入価格 7,000円相当)
カメラは、NIKON D2H(APS-C機)
1995年発売、2000年再生産の「おもしろレンズ工房」
の内の1本である。
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詳細は、本シリーズ第13回「おもしろレンズ工房」編
を参照していただくとして、本記事ではごく簡単に・・
NIKON一眼レフ用交換レンズ(NIKKOR)の販売促進を
目的とした、お試し版、すなわちエントリーレンズで
あり、20mm魚眼風、120mmmマクロ兼90mmソフト、
400mm望遠、の3本セットが「おもしろレンズ工房」
である。
当時の一般的銀塩一眼レフユーザーでは、まず持って
いないだろう特殊な交換レンズ群を安価(セット価格
約2万円)で販売し、レンズ交換の楽しさを知らしめ、
そうしたユーザー層が、正規のマクロや望遠、超広角等、
高価なNIKKORレンズを買って貰うように誘導する為の
市場戦略(商品)である。
現代でこそ、ありとあらゆる分野の製品で「お試し版」
が存在するが、この当時(20世紀)としては、なかなか
先進的な発想だ。
だが、この発想を理解できない典型的な「昭和の人達」の
お偉いさんもきっと多かった事だろう。
「そんな安物のレンズを売ったら、天下のニコンの名に
傷がつく」とか、
「これを買ったユーザーが、それで満足したら、
もうNIKKORを買ってくれないじゃあないか・・」
と、まあ、そんな反論は、当然ながら出ていただろう。
正論ではあるが、いずれも目先の損得にしか着目していない。
”損して得取れ”、といった時間軸上での販売促進効果や、
ユーザー層の心理、さらには、ユーザーの周囲を含めた
コミュニティでの波及効果など・・ 現代のネット時代での
マーケティング感覚では当たり前の「常識」的な戦略は、
その当時の”経済新聞しか読まない”お偉いさん達には
理解不能であろう。まあ、見ている世界がまるで違う訳だ。
その結果、この「おもしろレンズ工房」は、一応発売に
漕ぎ付けた(後に再生産された人気商品だ)のだが、
発売時に、ありとあらゆる”意地悪”や”制限”を
掛けられてしまった不遇の製品となった・・
もうその内容はここでは書くまい、過去何度も様々な
記事に書いているし、そもそも書いているだけで不愉快な
気持ちとなる、読者が読んでいてもきっと同様であろう。
ガンダムの名セリフ、「偉い人にはそれがわからんのです」
を、まさしく地で行く出来事ではあるが、まあ、あくまで
時代の未成熟だろう。
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が史上初では無い。本レンズに遡る事5年前、1990年に
CANON EF50/1.8Ⅱが発売されている。
そちらは、その後25年間のロングセラーとなり、商品単体
での収支も勿論黒字だろうが、そういう目先の損得よりも
1990年代から2000年代にかけ、長期間、CANON EOS機
の普及や、EOSエントリーユーザー層におけるEFレンズの
訴求に多大な功績があったレンズである。
1995年、バブル崩壊後にユーザー心理が大きく変わり、
かつ、EF50/1.8Ⅱのような好例がすでに存在していた
にも係わらず、本「おもしろレンズ工房」の企画上の
コンセプトが、仮にメーカー側でも理解できなかった
のであれば・・ まあ、ある意味残念な話である。
【困難度】★★★(3.0点 普通の難易度)
---
では、次のシステムは望遠ミラー(レンズ)である。
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(中古購入価格 18,000円)(以下、MF300/6.3)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のMF望遠ミラー(レンズ)である
μ4/3機専用で換算600mm、最短撮影距離80cm(撮影
倍率1/2倍)は非常に優秀なスペックで、μ4/3機に備わる
デジタル拡大機能(ズーム、テレコン)と組み合わせれば
簡単に等倍以上の撮影倍率を得られる。
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具体的には「トンボ」等の昆虫の撮影に最も向くレンズだ。
本レンズであれば、トンボ等が人の気配に驚いて逃げる事の
無い”アウトレンジ”から、まんまと(笑)撮影が可能だ。
ミラー(レンズ)は、銀塩時代に少し流行したのだが、
現代においては、新製品のミラー(レンズ)は、メーカー
純正品はなく、レンズメーカー(特にKENKO TOKINA)
から数機種が発売されるのみの状況だ、なかなか希少な
製品が、ミラー(レンズ)であると思う。
本レンズは、旧来のミラー(レンズ)の弱点の多くを
解消している優秀でユニークなミラー(レンズ)であり、
個人的な評価点も高い。
過去記事「ミラーレス・マニアックス名玉編」では、
当時300本程の所有レンズ中、第13位にランクインして
いる。ただし、ピント合わせや、リングボケの処理、
被写界深度が一般的手法では調整不可(注:デジタル
ズームを併用して擬似的に被写界深度を調整するという
高度な技法が存在する)・・とまあ、それらに若干の
使いこなしの難しさもあるので、誰にでも薦められる
という訳ではなく、中級者以上向けとしておく。
【困難度】★★★★(4.0点 やや~かなり困難)
---
さて、次の望遠マクロシステム。
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(読み:フォクトレンダー マクロ アポランター
注:スペル上の変母音の記載は便宜上省略している)
(新品購入価格 79,000円)(以下、MAP125/2.5)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)
2001年頃に発売されたフルサイズ対応MF等倍望遠マクロ
レンズ。
保有約20年と、長期に渡り使用しつづけ、過去記事で
何度も紹介しているレンズであるので、だいたいの長所
短所等は書きつくしている。
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なってしまっていて、15万円~20万円という不条理な
までに法外な高額中古相場となっている事である。
近年の関連記事としては、以下を参照されたし。
*レンズ・マニアックス第12回「使いこなしが難しい
レンズ特集(後編)」(注:ワースト第1位)
*レンズ・マニアックス第22回「高マニアック編(2)」
*レンズ・マニアックス第32回「新旧マクロアポランター
対決」編
*特殊レンズ・スーパーマニアックス第11回
「アポランター・グランドスラム」編
いずれの記事でも述べているが、本レンズは描写力は
悪く無いが、使いこなしがとても難しい(最悪とも言える)
「修行」(苦行)レンズである。
好んでこのレンズを持ち出したいとも、そう思えないし、
ましてや20万円も出して買うべき実用価値はまるで無い。
せいぜい、3~4万円というあたりが妥当な相場であろう。
「投機対象品」である為、高額で入手したユーザーも
まず、本レンズで撮影を行う事は無いであろう。
「使うとキズがついたりして価値が下がる」と思う
ようでは、もう「骨董品」や工芸美術品と同様であり、
「正当な撮影機材だ」と言う事も、残念ながらできない。
本レンズに関わる詳細は、ばっさりと割愛する。
【困難度】★★★★★(5.0点 非常に困難)
----
さて、次は今回ラストの望遠マクロシステム。
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(中古購入価格 58,000円)(以下、APO150/2.8)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)
2011年に発売されたフルサイズ対応AF等倍望遠マクロ。
手ブレ補正(OS)内蔵となった新型モデルである。
このレンズの発売後2年程して、SIGMAは製品ラインナップ
の見直しを計ったが、本レンズはART LINEに編入される
事は無く、旧型(EX DG)として細々と併売されていた。
以降、ART LINEには、2018年発売のArt70mm/F2.8
(注:新型”カミソリマクロ”と呼ばれる)まで、
マクロレンズは存在しなかった事となる。
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中古購入で価格の課題は、ほぼ解消しており、描写力に
対する入手価格、すなわち「コスパ」は許容範囲である。
ただ、重さの課題はいかんともしがたく、本レンズでは
一応三脚座を外せるが、その措置をしても、1kg強もの
重さがある。冒頭のTAMRON SP180/3.5 が、1kgを少し
切る値であり、ほぼ同等であるが、SP180mmはレンズ
が長いので密度感が薄く、感覚的に軽く感じるのが、
本APO150/2.8は、SP180/3.5より小さくても、
ずっしりとした凝縮感があって、とても重く感じる。
SONY α(A)マウント版で欲しかったのだが、あいにく
中古が見当たらず、次善の策としてNIKON Fマウントを
選択した。本レンズを今回使用のD500を母艦とすれば、
等倍x1.5(APS-C機)x1.3(クロップ機能)により
最大2倍までの撮影倍率が得られるからだ。
(参考:α(A)マウントのAPS-C機、α77Ⅱ等であれば、
最大3倍までの撮影倍率が得られ、かつ記録画素数の
低下も最小限となる→常に600万画素で撮れる)
描写力は、さほど悪く無い。いや「良好」と言うべき
レベルであるが、冒頭のTAMRON SP180/3.5と比較
したら、若干だが見劣りするように思える。
で、最短撮影距離38cmで、フルサイズの等倍撮影時、
被写界深度は計算上では、1mm程度しか無い。
ここまでの被写界深度の浅さであると、さしものD500
の高性能AFでも、AF精度が性能的に追いついていない。
すなわち例えば、昆虫の、とても小さな目にピント
を合わせたいと思っても、一般的なAFの性能では、
とてもそこまで精密なピント合わせは出来ない訳だ。
そんな場合は、当然ながらMFに頼る事となるのだが、
本レンズでは無限回転式ピントリング+HSMにより、
一応シームレスにAFからMFに移行が可能だ。
しかし、無限回転式ピントリングでは、最短と∞での
停止感触が無いと、MF撮影には全く向かない。
でも、本レンズの場合、距離指標が存在していて、
一応わずかながら、最短と∞でのひっかかりがある。
これを「ハイブリッド方式」と個人的に呼んでいて、
いちおう現代のレンズ設計常識では、これが最上・
最適なAF/MF構造として、高級レンズに与えられる
仕様なのであるが・・
個人的にはこれでも、MF操作性としては不満足である。
何が気に入らないのか? といえば、ピントリングの
回転角と、ピント位置の相対関係(変化率)である。
銀塩MF時代のMFマクロレンズの場合、近距離になれば
なる程、ピントリングの回転角は大きく、遠距離の
被写体ではその回転角は狭い。
この変化量は「exponential」(エキスポネンシャル)
つまり、「指数関数的」に変化し、この変化率が、
近接撮影になればなるほど、精密なピント合わせが
必要になる、という現実的なマクロ撮影技法にマッチ
している為、とても使い易い。
ところが、シームレスMFの無限回転式ピントリングの
場合、この「指数関数」の比率(つまり関数の係数)が
MFのヘリコイドの場合とは異なるのだ。
つまり、違和感があり、MFが使い難く、操作性が悪化
している。
(参考:近年、2021年末にPanasonic社の高級機に
対して行われたファームアップでは、特定のレンズ
において、フォーカスリングにおける「リニア」と
「ノンリニア」の切り替え機能が初めて搭載された。
これがすなわち、上記で述べた回転角の比率の話だ)
それでも、ミラーレス機での高精細EVFを用いて、
かつ、優秀な演算アルゴリズムを持つピーキングと
組み合わせ、画面拡大機能等を駆使するならば、
MFでのピント操作性は、さほど気になる酷さでは無い。
ところが、D500のような一眼レフでは、現状では
どんなにファインダーやスクリーンが優れているような
高級機であっても、ミラーレス機のMFアシスト程の
ピント精度は出ない。
(注:フォーカスエイド機能を用いれば若干マシだが
測距点が限定される為、操作系的に効率的では無い)
まあ、銀塩時代の一眼レフ、具体的にはCANON New F-1
PENTAX LX、MINOLTA α-9の3機種であれば、超絶的な
MF性能を持つのだが、その後の時代のAF/デジタル
一眼レフでは、どんなに高価な高級機であっても、
上記の銀塩時代のトップ3を上回る事は皆無である。
つまり、ファインダーやスクリーンが改悪されて
いる事になり、これは好ましく無いが、そういう事
よりも、「精密ピント合わせ母艦としては、一眼レフ
は好ましく無く、ミラーレス機に軍配が上がる」
という事を意味している。
まあ、今時の一眼レフの初級中級ユーザー層は、
被写界深度が1cmを下回るレンズやシステムなどは
まず所有していないだろうから、こういう話は、
それこそ「ピンと来ない」かも知れない。
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や技術者まで「ピンと来ない」状況は好ましく無い。
まあ、とても忙しい開発業務の合間で、写真なんぞ撮って
いる暇もないのだろうが、そもそも、そこが問題点だ。
メーカーの技術者も、必ず「精密ピント合わせ」を
体感してみる必要がある。被写界深度が1cmどころか
1mmを下回るレンズというものも、世の中には色々と
存在しているのだ。そういうレンズで、自身が開発
したカメラで10万枚程、写真を撮ってみると良い。
「なんとかAFシステム」とかの名前がつく、自慢の
最新技術が、そうした限界状況では全くと言っていい
程に役に立たない事に、きっと気がつく事であろう・・
【困難度】★★★☆(3.5点 やや困難)
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では、今回の「望遠系マクロ」編は、このあたり迄で。
次回記事に続く。