本シリーズ記事は、所有しているトイレンズ
および特殊レンズでの最強レンズの決定戦を
行っているが、今回が最終記事の「決勝戦」だ。
今回で、このカテゴリーでの「最優秀」(優勝)
レンズが決まるのだが、必ずしも高画質や高性能
のレンズが優勝できるとは限らない。
本決勝戦では、8本のレンズがノミネートされて
いる。早速始めよう。
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まず最初は、超広角シフト・マクロレンズだ。
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レンズは、LAOWA 15mm/f4 (LAO006)
(新品購入価格75,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2016年に発売された特殊MFレンズ。
フルサイズ対応の超広角レンズながら、なんと
等倍マクロ仕様(世界初)であり、さらにシフト
機能も、超広角レンズでは世界初だ。
![_c0032138_17132930.jpg]()
シフト機能を使う場合には、一応、APS-C機での
利用が推奨されている。フルサイズ機のままで
シフトすると、大きく「ケラれる」からだ。
(注:広義での「口径食」である)
ただまあ、フルサイズ機でも、クロップ機能や
デジタル拡大機能を用いれば、ケラれは防げるし、
ケラれたままでも、それはそれで絵的には面白い。
真の問題点はケラれでは無く、シフト機能使用時の
露出のズレだ。本レンズをNIKON Fマウント版で
購入した場合(注:そうしておくと、多くの
カメラで汎用的に使用できるからだ)だが、
「非Ai仕様のFマウント」なので、これを現代の
NIKON(デジタル)一眼レフで使う場合には、
NIKON Dfの、ただ一機種でしか無理だ。
他のNIKON機(一眼レフ)では、非Ai仕様の
レンズでは、露出がバラケて(狂って)しまい、
使い物にはならない。
しかし、そのNIKON Dfですらも、本レンズを
通常使用時では、絞り値の二重操作(設定した
絞り環の値と同じになるまで、電子ダイヤルを
廻して露出を合わせる)が煩雑である程度で、
露出値は問題無いが、いざシフト機能を用いると
光量が大きく変わる為、露出が合わなくなる。
この「露出のズレ」は、その「程度」が不明な為、
「カン」で電子ダイヤルを廻すしか回避の手段が無い。
また、露出補正機能は、まず正しい露出値が出ない
ので、実質的には使用できない。
(注:NIKON Dfでの露出補正は、ダイヤルにロック
が常に掛かった状態であり、このロックを片手だけで
外す事は非常に困難な為、カメラを両手で持ったり、
何処かに置く、三脚に乗せる等が強要されてしまう。
--
このように「操作性の設計に非常に劣る」という、
重欠点を持っているカメラがNIKON Dfだ。
まあ、設計思想自体が三脚使用前提等で、とても
古臭く、まるで現代的なカメラとは言えない。
--
根源的には、デジタル機にアナログ機の操作概念を
加えた事で、操作性・操作系がごちゃごちゃに混乱
してしまった典型的な失敗作だ。
--
何故そうなったか? 何故改善が出来なかったのか?
何故こうした機体が検討会を通過して発売されたのか?
は、理由は、だいたい想像も分析もできているのだが、
多分にNIKON内での「政治的」問題なので言及はしない。
外部の人達が、とやかく言う問題では無いのだろうが、
それでも、ユーザー(購入者)側に負担や不満を生じ
させてしまう事は、とても大きな課題であろう。
・・でもまあ、デザインが格好良いので、問題点は
問題として認識した上で、処分せずに愛用している)
これらの課題を回避するには、NIKON Dfではなく
SONY α7系等の、任意の(フルサイズ)ミラーレス
機で(アダプター経由で)用いる事だ。
そうすれば、露出値は、絞り込み(実絞り)測光と
なる為、シフトをしようが、常に正しい値が得られる。
![_c0032138_17132958.jpg]()
本LAOWA15/4には、他にも書きたい事が多いが、
この特殊な仕様から、過去記事で何度も紹介して
いる為、今回は詳細は割愛する。
(追記:2021年に、非球面レンズ搭載の後継型が
発売されている。恐らくは、描写力は改善されて
いるだろうが、近接性能が失われて、かつ高価に
なってしまった為、現状では未購入だ)
LAOWAレンズ全般に興味があれば、過去記事
「海外レンズマニアックス第10回LAOWA編」
が参考になるであろう。
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では、2本目はソフト・マクロレンズである。
![_c0032138_17133086.jpg]()
レンズは、LENSBABY Velvet 56mm/f1.6
(中古購入価格 30,000円)(以下、Velevet56)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ(μ4/3機)
2015年に発売された米国製単焦点MF中望遠レンズ。
これは特殊な仕様を併せ持つ個性的なレンズであり、
「1/2倍ハーフマクロ」「ソフトフォーカス描写」
「(僅かな)グルグルぼけ傾向」という特徴を持つ。
![_c0032138_17133842.jpg]()
他のVelvetシリーズ(85mm/F1.8、28mm/F2.5)も
同様にソフト+マクロの希少な特徴を持つのだが
これらは高付加価値(=高額。6~7万円台)商品
な故に、何本も所有する機会は、まだ無い。
まあいずれ、適価な中古等を偶然見かけたら購入
するかも知れないが、新品では高価すぎると思う。
(→ソフトマクロだけでは、コスパが見合わない)
本Velevet56であるが、いわゆる「ヴェス単フード
外し」型の1群2枚メニスカス(例:清原光学VK70R
や、安原製作所MOMO100等)の構成では無く、
3群4枚の光学系となっている。
この光学系は、「球面収差の発生による軟焦点化」
および「非点収差と像面湾曲による、ぐるぐるボケ」
の2つの収差特性を合わせ持つ。
*球面収差(ソフト効果)は、レンズ有効径の三乗に
反比例して減少する。
*非点収差・像面湾曲(ぐるぐるボケ効果)は、
画角の二乗に反比例して減少する他、レンズ有効径
にも反比例して減る。
したがって、「ソフト効果」を増やしたければ、
使用する母艦(カメラ)に関わらず、絞りを開放に
近づければ良い。ソフト効果を減らしたい場合は、
絞りを絞ると、その比率の三乗に従って、急激に
ソフト効果は減る。
また、「ぐるぐるボケ効果」を増やしたければ、
まずフルサイズ機を用いて画角を広げる。
さらに絞りを開ける事で、ぐるぐるボケ効果は増加
するが、元々、本Velvet56は、その効果を謳い文句
にはしていない為、得られる「ぐるぐるボケ量」
(=マニア層の一部では「回転数」と呼ばれる)
は、さほど大きくは無い。
「ぐるぐるボケ」を減らすならば、まずAPS-C機や
μ4/3機に装着し(または、クロップ機能やデジタル
拡大機能を用い)画角を狭めると同時に、絞りを
絞り込んであげれば良い。
「マクロ機能」は、フルサイズ機で1/2倍である。
撮影倍率を高めたければ、小センサー機を母艦と
したり、クロップやデジタル拡大、トリミング編集
等で、撮影倍率を仮想的に高める事ができる。
よって、本Velvet56の使いこなしとしては、想定
する(必要な)表現効果に応じて、まず母艦を
慎重に選択し、かつ、必要であれば、クロップ機能
又はデジタル拡大機能を用い、加えて、絞り値の
厳密な調整が必須だ。ここまでが、まず初級編。
で、本レンズは開放F1.6と大口径なのでカメラ側
の最高シャッター速度が1/8000秒であれば、
まあ、そのまま使えるが、1/4000秒機または
ベースISO感度がISO100ではなく、ISO160~
ISO200と高目の機体の場合では、日中明所に
おいて、絞り値のコントローラビリティが低く
なってしまう(=各種効果量の調整の為に、
絞りを調整する際、シャッター速度オーバーに
なりやすい)ので、この時は、レンズ側に
ND2/ND4の減光フィルターを装着して使用する。
これで日中でも絞り値を、ほぼ自由に設定できる。
ここまでが中級編だ。
そして、絞り値の設定はソフト(やぐるぐるボケ)
効果のコントロールと、被写界深度の制御の両者を
兼ねている為、例えば「ソフト量は、このままで
良いのだが、もう少し被写界深度を深くしたい」
等の要望が出る場合もあるだろう。
--
こういう場合は、連続デジタル拡大(デジタルズーム)
を搭載しているカメラ(ミラーレス機)を母艦とし、
上記の状態で絞り値をキープしたまま、撮影距離を
離していき、同等の構図となるようにデジタルズーム
で拡大する。そうすると、被写界深度が増加するが、
ソフト量、および構図は、元の状態と同じだ。
--
なお、この措置をすると、記録画素数が減少する
タイプのカメラ(いわゆる、スマートズーム方式)
もあるし、そうで無い機種もあるので、画素数減少が
問題になる場合(例:大伸ばしする等)では、自身の
使うカメラでのデジタルズーム(拡大)機能の、画像
処理的な原理に精通しておく必要がある。
(注:SONY機では、複数の動作(画像処理)原理が
異なるデジタルズームを切り替えて使える機種もある)
このあたりは、上級編の使いこなしである。
本Velvet56の固有の話は、他記事でも紹介済みで
ある為に割愛する。
LENSBABY製品に興味があれば、
「海外レンズマニアックス第5回LENSBABY編」
を参照されたし。
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さて、3本目はボディキャップ型収差レンズだ。
![_c0032138_17133901.jpg]()
レンズは、PENTAX 07 MOUNT SHIELD LENS 11.5mm/f9
(中古購入価格 4,000円)
カメラは、PENTAX Q7(1/1.7型センサー機)
2013年に発売された、固定焦点薄型トイレンズ。
1群1枚、つまり凸レンズが1つ入っているだけの
製品であり、「虫メガネで見たような」周辺が流れる
独特の描写(収差)が強く発生する事が特徴である。
![_c0032138_17133920.jpg]()
典型的な「Lo-Fi」レンズであり、本レンズの発売
時には、「Lo-Fi」の概念や必要性を理解していない
初級中級層からは、「何でこんなレンズを作るのか?」
という疑問の声が多数上がっていた。
中には「価格が安いから酷い写りなのだ!」という
意見もあったが、それも全く事の本質がわかっていない。
また、ビギナー層の意見に限らず、ある程度権威の
あるニュース系記事等でも、こうしたLo-Fiレンズ
の存在意義が全くわかっておらず、歯切れの悪い
新製品紹介内容になっていた事すらもあった。
「Lo-Fi」の概念については、本ブログでは何度も
何度も説明しているので、詳細は割愛する。
(匠の写真用語辞典第5回、項目「ローファイ」や、
特殊レンズ第16回「PENTAX ユニークレンズ」編を参照)
注意する点は、Lo-Fiあるいは「写真表現」の概念の
意味や意義がわかっていなければ、その時点で
「ビギナーだ」と見なされてもやむをえないという事だ。
「写真は目で見たものを再現する行為では無い」、この
ごくごく基本がわかっていなければ、ビギナーであるし
それを理解する事で、やっと中級層にステップアップ
する事が出来る。ビギナーから脱却したい、と真剣に
考えているならば、「Lo-Fi」や「写真表現」について
勉強するのが良いであろう。ただ、そんなに難しい話
ではなく「写真は、人間が目で見ているままには絶対に
撮れないのだから、撮り手がどう感じるか、どう見える
のかを映像として再現する事が写真なのだ」という事だ。
・・で、本07レンズの収差発生を強調しようとすれば、
母艦は今回使用しているようにPENTAX Q7(1/1.7型機)
が望ましく、センサーが心持ち小さい、1/2.3型機の、
PENTAX QまたはPENTAX Q10(未所有)の場合は、
画角が少し狭くなり、周辺が流れる効果がやや減少する。
又、本レンズでの収差の発生状況と、その使いこなし
においては、本ブログでの独自概念として、
「野球で言うところの、ストライクゾーンがある」
という例を良く用いている。
簡単に言えば、目の前数m(2~3m)の空間に、
立方体のストライクゾーンがあると仮定(想像)する。
(例:大リーグでの野球中継で、ストライクゾーン
をCG合成して放映しているようなイメージ)
そのストライクゾーンに主要被写体を収めれば、
そこは、あまり変な写りにはならない。
対して、ストライクゾーンから外れた「ボール玉」
の空間領域は、収差の発生により、大きく流れた
描写となる訳だ。
これにより、主要被写体と、その周囲を含めた
構図および作画表現の「基本線」が出来上がる。
なお、わざと主要被写体を「ボール領域」に置いて
しまうのも、写真表現的には十分に「アリ」だ。
加えて、PENTAX Qシステムに備わる優秀な
エフェクト(デジタルフィルターおよびスマート
エフェクト)機能を用いる。スマートエフェクト
は、Qシリーズの前面ダイヤルにアサインしておく。
(この用法の場合、ユーザー独自のエフェクトを
作る事も可能だ、私の場合は、そういう独自の
エフェクトも数種類設定し、登録してある)
また、他種のエフェクト(デジタルフィルター)は、
メニューから選択したり、その効果パラメーターを
調整する事も出来る。
ただし、ごく一部の種類のエフェクトは、メニュー
からは選べず、前面ダイヤルにしか、アサイン
できない(スマートエフェクト専用)のものもある。
で、何故エフェクトを掛けるか?は、当然ながら
「描写表現力を得る」為だ。
PENTAX Qシリーズの最大の特徴であるエフェクト
(と、その優れた操作系)を使わないのは勿体無い。
また、いつも同じエフェクト種を掛けるビギナーも
見た事があるが、これも勿体無い。
何故ならば、被写体は写真1枚を撮る度に千差万別
であるし、同じ被写体、同じ構図ですらも、そこから
何を表現したいか?は、撮影者の感情や表現により
千差万別である。
だから、エフェクトは毎回(極端に言えばシャッター
1枚を切るたびに)変えて掛ける訳だ。
こういう用法に優れているカメラは他社を見渡しても
希少であり、仮にPENTAX機であっても、一眼レフは
後掛けであるからほぼ全滅。PENTAX K-01は、まあ
及第点だが、メニュー選択の操作性が、あと一歩だ。
結局、PENTAX Qシリーズしか、PENTAX機の中では、
エフェクト(関連:Lo-Fi技法)使用に適した
(操作系の)機体が見当たらない状態である。
なお、さらなる表現力の増長の為には、カメラ内部
のエフェクトだけでは物足りない場合もあるだろう。
そういう時は、勿論「画像編集」を行うのが適正だ。
何も、「写真は撮ったままで使うのが王道だ」
などという古い概念をいつまでも持つ必要は無い。
そういう概念は、フィルムからデジタルへの転換期に
「PCが使えない、画像編集も出来ない」という人達が、
妬んで言い出した事である。
(→情報ヒエラルキーが存在していた時代の話)
勿論、その当時(2000年代前半)でも、商業写真
において、画像編集をしないで使う事は、既に
あり得ない話であったし、そこから20年近くが
経過した現代においては、アマチュア層のビギナー
に至るまで、画像編集なしで写真を利用する事は
全くあり得ない話となっている。
(注:本ブログでは、レンズやカメラの描写力等の
紹介を主眼としている事と、多大な編集の手間を
省略する為、過度な画像編集を行わないルールと
している。(RAW撮影・現像も行わない)
ただし、カメラ内に存在するエフェクトやデジタル
拡大機能等は、全て自由に使えるルールだ)
「画像編集」よりも、さらに表現力を増強したい
場合は、「画像処理」という手段も一応存在する。
本ブログでは別途「(画像処理)プログラミング」
シリーズ記事を展開している。そこでは、他に
一切前例の無い、特殊な画像処理を施し、写真の
加工(や、検出、抽出、変換等)を行う事を主眼と
している次第だ。
画像処理プログラミングについては、誰にでも出来る
話では無いとは思うが、興味があれば参照されたし。
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では、4本目は超望遠ミラー(レンズ)だ。
![_c0032138_17133990.jpg]()
ミラーは、TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
(中古購入価格 18,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のミラー(レンズ)である。
μ4/3機専用であり、換算600mm、電子接点にも対応
している。
今回のDMC-GX7との組み合わせでは、焦点距離を手動
入力する必要も無く、内蔵手ブレ補正機能が使用可能
となる。ただし、600mm相当あるいはデジタル拡大
機能を組み合わせた1200mm以上の超々望遠画角とも
なると、ボディ内手ブレ補正も精度不足で、ほとんど
まともには動作しない。
ミラー(レンズ)であるから、ガラスレンズに比べ
画質や解像感が落ちてしまう事は普通だ。
旧来、銀塩時代から、ミラーレンズは存在したが、
超望遠域を写すレンズとしての、小型軽量化の
代償としての低画質化は、悩みどころではあった。
ただ、本ミラーは、さすがに近代設計だけあって、
従前の時代のミラーほど迄には低画質では無い。
(注:ミラーの蒸着処理には、経年劣化があり、
古いミラーレンズや、その保管状況によっては、
画質が、さらに劣化していく場合もある)
そして、リングボケが発生する事は、全てのミラー
(レンズ)での特徴だが、これは長所にも短所にも
なり得る話なので、写真表現的にリングボケをどう
扱うか?は、良く意識する必要があるだろう。
![_c0032138_17135045.jpg]()
本ミラーの最大の特徴は600mm換算の超望遠ながら
最短撮影距離が80cmと短い事であり、これで1/2倍
相当ではあるが、本ミラーはμ4/3機専用であり、
μ4/3機の、現行機の(ほぼ)全てにはデジタル
拡大機能が搭載されている為、簡便に、等倍
マクロ以上の最大撮影倍率を得る事は可能だ。
ただし、MFであり、それにも増してピント合わせ
が難しい、という課題を持つレンズである。
撮る写真の半数くらいはピンボケやブレが発生
してもやむなし、という位の軽い気持ちで趣味的
な撮影に使うのが良く、いくら「超望遠だから」
と言って、このミラー(レンズ)で、業務用途の
スポーツ撮影などは出来ないと思う(歩留まりが
悪いからだ)
趣味撮影専用として、最も有益な撮影分野は
「自然観察撮影」であろう。
数m先の小さい被写体(特に、近寄ると逃げる
トンボ、蝶、その他の昆虫類)の撮影において
無類の適合性を持つ。
ほとんど「トンボ撮影専用ミラー(レンズ)」と
考えても、差し支えない位である。
望遠レンズやマクロレンズを使っても、中距離の
小動物・昆虫等は、なかなか撮り難い被写体では
あるが、本ミラーであれば、それらがバシバシと
撮れてしまう。この面白さは、撮影(被写体)の
趣向すらも変えてしまうかも知れない訳だ。
価格もそう高価では無い、μ4/3機ユーザーには
必携のミラー(レンズ)だといえるかも知れない。
(注:現在では生産終了となっている)
---
では、次はLo-Fiトイレンズである。
![_c0032138_17135001.jpg]()
レンズは、HOLGA LENS 60mm/f8 HL-O
(新古品購入価格1,000円)
カメラは、OLYMPUS E-520 (4/3機)
2010年代前半の発売と思われるトイレンズ。
ここでHOLGA(ホルガ)について説明しだすと冗長
になってしまう。ばっさりと、そのあたりは割愛し、
興味があれば、以下の2記事を参照されたし。
*特殊レンズ第3回「HOLGA LENS」編
*海外レンズマニアックス第8回「HOLGA」編
![_c0032138_17135028.jpg]()
HOLGAは、正真正銘の「Lo-Fi」レンズである。
Lo-Fiレンズでは、Lo-Fi撮影技法を用い、かつ
それがアンコントローラブル(=撮影者の、意の
ままにはならない偶然的要素)でなくてはならない。
どうしてもコントローラブル(=事前の想定通りの
必然的な撮り方)になってしまう場合は・・
1)意図的に、破綻するかしないかのギリギリの
カメラ設定で撮影する。
2)設定や条件を変えた写真を非常に多数(数千枚
以上)撮影し、その中から意図にあった写真を選ぶ。
3)エフェクトをランダムまたは半自動(例:OLYMPUS
のミラーレス機にある「アートフィルターブラケット」
や、PENTAX機の「クロス・プロセス」機能等)で掛け、
そこから表現に合った写真を選ぶ。
の概ね3種類の技法により、偶然性を得る事が出来る。
ただし、いずれも難易度が高かったり、手間の掛かる
事である。これであれば、一般的なHi-Fi写真を撮る
方が、ずっと容易な位だ。
で、今回の母艦は、4/3(フォーサーズ機)の
E-520(2008年)であるが、時代的に、エフェクト
(アートフィルター)が、ぎりぎり搭載されていない。
・・であれば、μ/3機等で本HOLGAを使えば済む話
なのだが、ちょっと試したかったのは、E-520の
特徴的機能である「パーフェクト・ショット・
プレビュー」(以下、PSP)(これは、ライブビュー
撮影時に、露出補正や、ホワイトバランスが異なる
複数の画像群をプレビューし、そのどれか、適切と
思われる設定を撮影者が事前に選ぶ機能である)が、
上記のアンコントローラブル技法に応用できないか?
という検証であった。
ただ、PSPは、操作系が、ちょっと煩雑になるのが
難点であり、これを使うなら、事後の編集の段階で、
PSPの概念を応用拡張し、画像処理部を自作した、
「オリンパスブルー」生成ソフトウェア
(プログラミングシリーズ第12回、下写真)を
使うのが良さそうだ、と思った次第だ。
![_c0032138_17135149.jpg]()
「Lo-Fi」については、非常に奥が深く、また
それは「表現」という要素を含む為、ただ単に
機材(レンズやカメラ)、あるいは編集ソフト等を
選んで用いれば解決する、という問題では無い。
要は、「何をどう撮りたいか?」であるから、いくら
高機能で高価なカメラを買ったところで、そうした
意識が無ければ、表現写真は撮りようが無い訳だ。
---
さて、6本目は「ぐるぐるボケ」レンズである。
![_c0032138_17135909.jpg]()
レンズは、Lomography New Petzval 55mm/f1.7 MKⅡ
(新品購入価格 41,000円)
カメラは、SONY α7S(フルサイズ機)
2019年に発売された、MF標準「ぐるぐるボケ」レンズ。
ミラーレス機用だが、フルサイズ対応品である。
![_c0032138_17135911.jpg]()
2019年、本レンズを発売直後に新品購入し、
散歩撮影をしていると、近所の初級カメラマニアの
オジサンに出会った。名前等は全く知らないが、良く
出会う顔見知りであり、会うと、必ずカメラに関する
マニアックな話をして、彼の機材購入の相談に乗る事も
何度かあった。
で、そのオジサンいわく、
オ「おや、変わったレンズを使っていますね~
なんだか、廻すところも沢山あるみたいだし」
匠「前から、PLフィルター、絞り値、BC環(ぐるぐる
ボケの発生量調整)、MFのピントリング、と、
4つも廻すところがありますよ」
オ「ひえ~、そんな難しいレンズ、使えないわ!」
匠「難しくないですよ、それぞれ廻す意味があるので
自分が撮りたいように調整すれば良いだけです」
オ「その”意味”が、わからんのですよ。難しすぎる」
・・ううむ、何が難しいのであろうか? そこが
疑問には思える。個々の機能はごく初歩的なものだし、
それに、撮影をする際での表現力を増強する機能が
いくつもついているならば、それを細かく調整して
自分が撮りたいように自在に撮れる訳だから、それは
むしろ歓迎すべき方向性ではなかろうか?
要は「何をどう撮りたい」という意識を何も持って
いない訳であろう、だからカメラもフルオートの設定
のままで撮る(そうしか、撮りようが無い)、それが
典型的なビギナー層の習性だ。
で、その状態で撮って、「このカメラは連写が速い」
だの「このレンズは爆速AFだ!」とか、そういう類の
”初級評価”だけをする人達が世の中の大半である。
「何をどう撮りたいか?」等の高度な意識は全く無い為、
被写体は、家の中に置いてあるヲタクなフィギュア等
だったり、あるいは、1つの記事で同じような写真が
ズラリと並んでいるだけの試写結果だったりする訳だ。
(カメラ設定を変えるならば、被写体も変わるべきだ。
「撮影機材の物理的な試験をする」、という感覚から
早く抜け出さないと、いつまでたってもビギナーの
ままになってしまう。また、そういう類の評価手法しか
示さない市場の評論家層にも問題は多々あるだろう。
例えば、ボケ質に優れたレンズで、遠距離のビルを撮って
窓が写っているか、いないか?などは、そもそも
そういう特徴があるレンズでは、そういう被写体は絶対に
撮りたく無い訳だから、全く無意味な試験手法であろう)
さて、本 Petzval 55mm/f1.7Ⅱであるが、
あまり、あれこれと説明するのも無意味かも知れない。
近年での、カメラ・レンズ市場の大幅な縮退により、
本レンズに関する情報は、機材を売りたいが為の記事
しか検索されず、ユーザーレポート(レビュー)等は
極端に少ない状況である。
まあつまり、誰も買っていない、という状態であろう。
従前の本レンズの紹介記事では、変形ペッツヴァール
構成での非点収差や像面湾曲収差を増強する構造、
とか、そんな話を書いていたが、ビギナー層ばかりが
主要なカメラ(レンズ)ユーザー層となってしまった
現代の市場状況においては、難しい話を書いても、
それこそ、前述の「オジサン」のように、チンプン
カンプンとなるだろうし、そういう、自分には理解
できない事を「難しいから」と、拒否してしまう
ような風潮すらも現代人には強くある。
マニア層ならば、未知のものに強い知的好奇心や
探究心を持つ事は当然だと思われるのだが・・
カメラおよびレンズ市場が、従来の1/10以下まで
壊滅的に縮退している現代においては・・
”もうマニアなど誰も居ないのではなかろうか?”
「製品を売る為の記事」と「何もわかっていない
ビギナー層のレビュー記事」ばかりを見るたびに、
そう思えてならない。
---
では、7本目はLED照明付きマクロレンズだ。
![_c0032138_17135965.jpg]()
レンズは、CANON EF-S 35mm/f2.8 Macro IS STM
(中古購入価格 30,000円)
カメラは、CANON EOS M5(APS-C機)
電子アダプターは、CANON EF-EOS M
2017年頃発売のAPS-C機専用AF準広角(標準画角)
等倍マクロレンズ。
希少なLED照明内蔵マクロレンズ(交換レンズ)である。(コンパクト機等の固定レンズ商品を除き)交換レンズ
でのLED付きはCANON製以外の製品は無く、CANON
製では、本レンズを含み2機種ある。
ただ、本レンズに搭載されているLED照明は、
屋外明所では殆ど効能が無い、暗すぎるのだ。
![_c0032138_17135917.jpg]()
購入前には、例えば「葉っぱの裏側の暗い所に
居る小さい昆虫」とか、「カメラやレンズの影が
被る花や小動物の近接撮影で、影を消す」とかの
用途を色々と想定していたのが、全て無理であった。
このLEDは、屋内や弱暗所でしか効能が無い、
その程度の光量しか得られない訳だ。
で、LEDを光らせるには、レンズ前方に装着して
ある、ねじ込みのフード(保護)部品(上写真)を
外さないとならない。
そして、フード状部品を外すと、LED部がむき出し
となり、近接撮影等で間合い(距離感)を間違えると、
LED部が被写体に接触し、破損や汚損等の危険性が
生じる。(注:保護フィルター等は、フード状部品
側にしか装着できない、LEDは完全にむき出しだ)
なので最近では、屋外撮影においてはLED照明を、
もう使わず、通常はフード部品を装着したままに
しておき、故障リスクを減らすようにしている。
屋外弱暗所等で、LEDを使った方が有効な状況を
見つけた場合のみフードを外すようにしているが・・
まあ、早く撮らないと被写体が逃げる(トンボや蝶、
その他昆虫類)場合では、その都度のフードの着脱は
いかにも煩雑だ。
購入前に想定していた用途と、実際の実用性が乖離
(=かけ離れる)してしまって、なんとも良くない
機材購入であった。機材を買うならば、完璧にその
用途を想定してから買う事が本来ならば望ましい。
しかし、LED付き交換レンズは、その前例も皆無に
等しく、購入前に経験則がなかったのでやむを得ない。
まあ、全く用途が無い、という訳でも無いし、
こうしたレンズを開発発売する意欲と、その歴史的
価値の高さを鑑みて、所有は続ける(処分はしない)
方針ではあるが、まあ、それくらいのものだ。
ちなみに、個人的にはデジタル時代に入った頃
(2000年代前半くらい)に、非常に多数の銀塩機材
を処分(譲渡が大半、一部売却、ごく一部が廃棄)
してしまったのだが、後年にやや、その事を後悔して
いた。「実用性」という観点からは、古い銀塩機材を
いつまでも保有している事は意味が無いのだが・・
近年、私が行っているのは、機材の「歴史的研究」
が増えてきている、その際、「ああ、あの機材を
今でも持っていれば、比較や検証ができたのに」
と思う事が多々ある訳だ。
・・まあ、なので、2010年代に入った頃からは、
「やむなくの故障廃棄」のケースを除き、購入した
機材を、全く処分しなくなった。結果、際限なく
機材が家に溜まっていくが、まあ、どれも「研究材料」
なので、その事はやむなし、としている。
---
では、今回のラストはアポダイゼーション・レンズだ。
![_c0032138_20165020.jpg]()
レンズは、MINOLTA STF 135mm/f2.8[T4.5]
(新品購入価格 118,000円)
カメラは、SONY α99(フルサイズ機)
1998年発売のMF望遠アポダイゼーションレンズ。
型番STFは「Smooth Trans Focus」の略であり、
この世界初のアポダイゼーション光学エレメント
内蔵レンズを発売時の、MINOLTAによる造語だ。
この部品を入れると、実効F値(=T値)が低下
してしまう為、本レンズには[T4.5]と仕様併記
されている(注:後継のSONY FE100/2.8STFには
T値併記が無い。ちなみに、その値はT5.6なので、
初級層等から「F値が暗いから低性能レンズだ!」
と思われるのが嫌だった為であろう。
そんな勘違いをする初級層が買うレンズでは無い
から、どうでも良い話だとも思うが・・)
で、本レンズに関しては、本ブログの最初期から
何度も何度も説明・紹介をしている。
発売後20年を軽く超えてまで、今なお、最上級
(全所有レンズ中、トップクラス)の描写表現力
を誇る、紛れも無いレジェンド名玉である。
これ以上、詳細を説明する必要も無いであろう。
中上級マニア層で、本レンズに注目しない方が、
むしろ不自然な状況だ。
マニア必携の高描写表現力レンズだとも言える。
![_c0032138_20165049.jpg]()
ただ、「描写力が高すぎる」という、僅かな問題点
を抱えるレンズでもある。それの何がまずいのか?
と言えば、「同じ被写体状況であれば、誰が撮って
も(超ビギナーが撮っても)同様に綺麗に撮れて
しまう」という状況であり、スキルがあれば、ある
人なほど、つまり上級層(ハイアマチュア層)や、
実践派上級マニア層、職業写真家層など、全般に
おいて、ビギナー層が撮った写真と同等であれば
「差別化」が出来ない。(つまり、自身の写真に
高い付加価値を提示できない。場合により、それは
名誉や収益とか、様々な優位性に影響を及ぼす)
という課題である。
---
さて、最後に各レンズの個人レンズ評価データベース
からの評価点(5点満点)を引用し、さらに特別加点
(最大1点)を加えて最終順位を決定する事としよう。
1位:総合4.6点:Lomography Petzval 55/1.7
2位:総合4.5点:MINOLTA STF 135/2.8
3位:総合4.1点:LENSBABY Velvet 56/1.6
3位:総合4.1点:TOKINA MF 300/6.3
5位:総合3.9点:LAOWA 15/4
5位:総合3.9点:PENTAX 07
7位:総合3.4点:CANON EF-S 35/2.8
8位:総合2.9点:HOLGA 60/8
優勝(最優秀)レンズは、2019年発売の
「Lomography New Petzval 55mm/f1.7 MKⅡ」
となった。
ぐるぐるボケの発生と、そのコントローラビリティ
さらには、高いマニアック度、高いテクニカル的
エンジョイ度、そして、あまり高価で無いコスパ
の良さ、と、総合的に加点が多かったレンズだ。
![_c0032138_17140622.jpg]()
ただまあ、あまり現代の消費者層が欲しいとは
思わないレンズであろう。「MFである」という
ただそれだけで「爆速AFでなくちゃ撮れない!」等
と言う軟弱なビギナー層においては、選択肢からは
外れるレンズとなってしまう。
・・けど、今、初めて気づいたが、本決勝戦に出場
したレンズは、CANON EF-S 35/2.8を除き、全てが
MFレンズであった。
・・まあ、であれば、ビギナー層では、これらの
特殊レンズを、どれも扱う事は出来ないであろう。
情けない話だが、それがカメラ市場の大幅縮退の
結果としての、現代の一般ユーザー層のレベルだ。
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では、本シリーズ記事は、これにて終了。
何かまた、カテゴリーを思いついたら補足編の
最強レンズシリーズを開催するかも知れない。
および特殊レンズでの最強レンズの決定戦を
行っているが、今回が最終記事の「決勝戦」だ。
今回で、このカテゴリーでの「最優秀」(優勝)
レンズが決まるのだが、必ずしも高画質や高性能
のレンズが優勝できるとは限らない。
本決勝戦では、8本のレンズがノミネートされて
いる。早速始めよう。
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まず最初は、超広角シフト・マクロレンズだ。

(新品購入価格75,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2016年に発売された特殊MFレンズ。
フルサイズ対応の超広角レンズながら、なんと
等倍マクロ仕様(世界初)であり、さらにシフト
機能も、超広角レンズでは世界初だ。

利用が推奨されている。フルサイズ機のままで
シフトすると、大きく「ケラれる」からだ。
(注:広義での「口径食」である)
ただまあ、フルサイズ機でも、クロップ機能や
デジタル拡大機能を用いれば、ケラれは防げるし、
ケラれたままでも、それはそれで絵的には面白い。
真の問題点はケラれでは無く、シフト機能使用時の
露出のズレだ。本レンズをNIKON Fマウント版で
購入した場合(注:そうしておくと、多くの
カメラで汎用的に使用できるからだ)だが、
「非Ai仕様のFマウント」なので、これを現代の
NIKON(デジタル)一眼レフで使う場合には、
NIKON Dfの、ただ一機種でしか無理だ。
他のNIKON機(一眼レフ)では、非Ai仕様の
レンズでは、露出がバラケて(狂って)しまい、
使い物にはならない。
しかし、そのNIKON Dfですらも、本レンズを
通常使用時では、絞り値の二重操作(設定した
絞り環の値と同じになるまで、電子ダイヤルを
廻して露出を合わせる)が煩雑である程度で、
露出値は問題無いが、いざシフト機能を用いると
光量が大きく変わる為、露出が合わなくなる。
この「露出のズレ」は、その「程度」が不明な為、
「カン」で電子ダイヤルを廻すしか回避の手段が無い。
また、露出補正機能は、まず正しい露出値が出ない
ので、実質的には使用できない。
(注:NIKON Dfでの露出補正は、ダイヤルにロック
が常に掛かった状態であり、このロックを片手だけで
外す事は非常に困難な為、カメラを両手で持ったり、
何処かに置く、三脚に乗せる等が強要されてしまう。
--
このように「操作性の設計に非常に劣る」という、
重欠点を持っているカメラがNIKON Dfだ。
まあ、設計思想自体が三脚使用前提等で、とても
古臭く、まるで現代的なカメラとは言えない。
--
根源的には、デジタル機にアナログ機の操作概念を
加えた事で、操作性・操作系がごちゃごちゃに混乱
してしまった典型的な失敗作だ。
--
何故そうなったか? 何故改善が出来なかったのか?
何故こうした機体が検討会を通過して発売されたのか?
は、理由は、だいたい想像も分析もできているのだが、
多分にNIKON内での「政治的」問題なので言及はしない。
外部の人達が、とやかく言う問題では無いのだろうが、
それでも、ユーザー(購入者)側に負担や不満を生じ
させてしまう事は、とても大きな課題であろう。
・・でもまあ、デザインが格好良いので、問題点は
問題として認識した上で、処分せずに愛用している)
これらの課題を回避するには、NIKON Dfではなく
SONY α7系等の、任意の(フルサイズ)ミラーレス
機で(アダプター経由で)用いる事だ。
そうすれば、露出値は、絞り込み(実絞り)測光と
なる為、シフトをしようが、常に正しい値が得られる。

この特殊な仕様から、過去記事で何度も紹介して
いる為、今回は詳細は割愛する。
(追記:2021年に、非球面レンズ搭載の後継型が
発売されている。恐らくは、描写力は改善されて
いるだろうが、近接性能が失われて、かつ高価に
なってしまった為、現状では未購入だ)
LAOWAレンズ全般に興味があれば、過去記事
「海外レンズマニアックス第10回LAOWA編」
が参考になるであろう。
---
では、2本目はソフト・マクロレンズである。

(中古購入価格 30,000円)(以下、Velevet56)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 MarkⅡ(μ4/3機)
2015年に発売された米国製単焦点MF中望遠レンズ。
これは特殊な仕様を併せ持つ個性的なレンズであり、
「1/2倍ハーフマクロ」「ソフトフォーカス描写」
「(僅かな)グルグルぼけ傾向」という特徴を持つ。

同様にソフト+マクロの希少な特徴を持つのだが
これらは高付加価値(=高額。6~7万円台)商品
な故に、何本も所有する機会は、まだ無い。
まあいずれ、適価な中古等を偶然見かけたら購入
するかも知れないが、新品では高価すぎると思う。
(→ソフトマクロだけでは、コスパが見合わない)
本Velevet56であるが、いわゆる「ヴェス単フード
外し」型の1群2枚メニスカス(例:清原光学VK70R
や、安原製作所MOMO100等)の構成では無く、
3群4枚の光学系となっている。
この光学系は、「球面収差の発生による軟焦点化」
および「非点収差と像面湾曲による、ぐるぐるボケ」
の2つの収差特性を合わせ持つ。
*球面収差(ソフト効果)は、レンズ有効径の三乗に
反比例して減少する。
*非点収差・像面湾曲(ぐるぐるボケ効果)は、
画角の二乗に反比例して減少する他、レンズ有効径
にも反比例して減る。
したがって、「ソフト効果」を増やしたければ、
使用する母艦(カメラ)に関わらず、絞りを開放に
近づければ良い。ソフト効果を減らしたい場合は、
絞りを絞ると、その比率の三乗に従って、急激に
ソフト効果は減る。
また、「ぐるぐるボケ効果」を増やしたければ、
まずフルサイズ機を用いて画角を広げる。
さらに絞りを開ける事で、ぐるぐるボケ効果は増加
するが、元々、本Velvet56は、その効果を謳い文句
にはしていない為、得られる「ぐるぐるボケ量」
(=マニア層の一部では「回転数」と呼ばれる)
は、さほど大きくは無い。
「ぐるぐるボケ」を減らすならば、まずAPS-C機や
μ4/3機に装着し(または、クロップ機能やデジタル
拡大機能を用い)画角を狭めると同時に、絞りを
絞り込んであげれば良い。
「マクロ機能」は、フルサイズ機で1/2倍である。
撮影倍率を高めたければ、小センサー機を母艦と
したり、クロップやデジタル拡大、トリミング編集
等で、撮影倍率を仮想的に高める事ができる。
よって、本Velvet56の使いこなしとしては、想定
する(必要な)表現効果に応じて、まず母艦を
慎重に選択し、かつ、必要であれば、クロップ機能
又はデジタル拡大機能を用い、加えて、絞り値の
厳密な調整が必須だ。ここまでが、まず初級編。
で、本レンズは開放F1.6と大口径なのでカメラ側
の最高シャッター速度が1/8000秒であれば、
まあ、そのまま使えるが、1/4000秒機または
ベースISO感度がISO100ではなく、ISO160~
ISO200と高目の機体の場合では、日中明所に
おいて、絞り値のコントローラビリティが低く
なってしまう(=各種効果量の調整の為に、
絞りを調整する際、シャッター速度オーバーに
なりやすい)ので、この時は、レンズ側に
ND2/ND4の減光フィルターを装着して使用する。
これで日中でも絞り値を、ほぼ自由に設定できる。
ここまでが中級編だ。
そして、絞り値の設定はソフト(やぐるぐるボケ)
効果のコントロールと、被写界深度の制御の両者を
兼ねている為、例えば「ソフト量は、このままで
良いのだが、もう少し被写界深度を深くしたい」
等の要望が出る場合もあるだろう。
--
こういう場合は、連続デジタル拡大(デジタルズーム)
を搭載しているカメラ(ミラーレス機)を母艦とし、
上記の状態で絞り値をキープしたまま、撮影距離を
離していき、同等の構図となるようにデジタルズーム
で拡大する。そうすると、被写界深度が増加するが、
ソフト量、および構図は、元の状態と同じだ。
--
なお、この措置をすると、記録画素数が減少する
タイプのカメラ(いわゆる、スマートズーム方式)
もあるし、そうで無い機種もあるので、画素数減少が
問題になる場合(例:大伸ばしする等)では、自身の
使うカメラでのデジタルズーム(拡大)機能の、画像
処理的な原理に精通しておく必要がある。
(注:SONY機では、複数の動作(画像処理)原理が
異なるデジタルズームを切り替えて使える機種もある)
このあたりは、上級編の使いこなしである。
本Velvet56の固有の話は、他記事でも紹介済みで
ある為に割愛する。
LENSBABY製品に興味があれば、
「海外レンズマニアックス第5回LENSBABY編」
を参照されたし。
---
さて、3本目はボディキャップ型収差レンズだ。

(中古購入価格 4,000円)
カメラは、PENTAX Q7(1/1.7型センサー機)
2013年に発売された、固定焦点薄型トイレンズ。
1群1枚、つまり凸レンズが1つ入っているだけの
製品であり、「虫メガネで見たような」周辺が流れる
独特の描写(収差)が強く発生する事が特徴である。

時には、「Lo-Fi」の概念や必要性を理解していない
初級中級層からは、「何でこんなレンズを作るのか?」
という疑問の声が多数上がっていた。
中には「価格が安いから酷い写りなのだ!」という
意見もあったが、それも全く事の本質がわかっていない。
また、ビギナー層の意見に限らず、ある程度権威の
あるニュース系記事等でも、こうしたLo-Fiレンズ
の存在意義が全くわかっておらず、歯切れの悪い
新製品紹介内容になっていた事すらもあった。
「Lo-Fi」の概念については、本ブログでは何度も
何度も説明しているので、詳細は割愛する。
(匠の写真用語辞典第5回、項目「ローファイ」や、
特殊レンズ第16回「PENTAX ユニークレンズ」編を参照)
注意する点は、Lo-Fiあるいは「写真表現」の概念の
意味や意義がわかっていなければ、その時点で
「ビギナーだ」と見なされてもやむをえないという事だ。
「写真は目で見たものを再現する行為では無い」、この
ごくごく基本がわかっていなければ、ビギナーであるし
それを理解する事で、やっと中級層にステップアップ
する事が出来る。ビギナーから脱却したい、と真剣に
考えているならば、「Lo-Fi」や「写真表現」について
勉強するのが良いであろう。ただ、そんなに難しい話
ではなく「写真は、人間が目で見ているままには絶対に
撮れないのだから、撮り手がどう感じるか、どう見える
のかを映像として再現する事が写真なのだ」という事だ。
・・で、本07レンズの収差発生を強調しようとすれば、
母艦は今回使用しているようにPENTAX Q7(1/1.7型機)
が望ましく、センサーが心持ち小さい、1/2.3型機の、
PENTAX QまたはPENTAX Q10(未所有)の場合は、
画角が少し狭くなり、周辺が流れる効果がやや減少する。
又、本レンズでの収差の発生状況と、その使いこなし
においては、本ブログでの独自概念として、
「野球で言うところの、ストライクゾーンがある」
という例を良く用いている。
簡単に言えば、目の前数m(2~3m)の空間に、
立方体のストライクゾーンがあると仮定(想像)する。
(例:大リーグでの野球中継で、ストライクゾーン
をCG合成して放映しているようなイメージ)
そのストライクゾーンに主要被写体を収めれば、
そこは、あまり変な写りにはならない。
対して、ストライクゾーンから外れた「ボール玉」
の空間領域は、収差の発生により、大きく流れた
描写となる訳だ。
これにより、主要被写体と、その周囲を含めた
構図および作画表現の「基本線」が出来上がる。
なお、わざと主要被写体を「ボール領域」に置いて
しまうのも、写真表現的には十分に「アリ」だ。
加えて、PENTAX Qシステムに備わる優秀な
エフェクト(デジタルフィルターおよびスマート
エフェクト)機能を用いる。スマートエフェクト
は、Qシリーズの前面ダイヤルにアサインしておく。
(この用法の場合、ユーザー独自のエフェクトを
作る事も可能だ、私の場合は、そういう独自の
エフェクトも数種類設定し、登録してある)
また、他種のエフェクト(デジタルフィルター)は、
メニューから選択したり、その効果パラメーターを
調整する事も出来る。
ただし、ごく一部の種類のエフェクトは、メニュー
からは選べず、前面ダイヤルにしか、アサイン
できない(スマートエフェクト専用)のものもある。
で、何故エフェクトを掛けるか?は、当然ながら
「描写表現力を得る」為だ。
PENTAX Qシリーズの最大の特徴であるエフェクト
(と、その優れた操作系)を使わないのは勿体無い。
また、いつも同じエフェクト種を掛けるビギナーも
見た事があるが、これも勿体無い。
何故ならば、被写体は写真1枚を撮る度に千差万別
であるし、同じ被写体、同じ構図ですらも、そこから
何を表現したいか?は、撮影者の感情や表現により
千差万別である。
だから、エフェクトは毎回(極端に言えばシャッター
1枚を切るたびに)変えて掛ける訳だ。
こういう用法に優れているカメラは他社を見渡しても
希少であり、仮にPENTAX機であっても、一眼レフは
後掛けであるからほぼ全滅。PENTAX K-01は、まあ
及第点だが、メニュー選択の操作性が、あと一歩だ。
結局、PENTAX Qシリーズしか、PENTAX機の中では、
エフェクト(関連:Lo-Fi技法)使用に適した
(操作系の)機体が見当たらない状態である。
なお、さらなる表現力の増長の為には、カメラ内部
のエフェクトだけでは物足りない場合もあるだろう。
そういう時は、勿論「画像編集」を行うのが適正だ。
何も、「写真は撮ったままで使うのが王道だ」
などという古い概念をいつまでも持つ必要は無い。
そういう概念は、フィルムからデジタルへの転換期に
「PCが使えない、画像編集も出来ない」という人達が、
妬んで言い出した事である。
(→情報ヒエラルキーが存在していた時代の話)
勿論、その当時(2000年代前半)でも、商業写真
において、画像編集をしないで使う事は、既に
あり得ない話であったし、そこから20年近くが
経過した現代においては、アマチュア層のビギナー
に至るまで、画像編集なしで写真を利用する事は
全くあり得ない話となっている。
(注:本ブログでは、レンズやカメラの描写力等の
紹介を主眼としている事と、多大な編集の手間を
省略する為、過度な画像編集を行わないルールと
している。(RAW撮影・現像も行わない)
ただし、カメラ内に存在するエフェクトやデジタル
拡大機能等は、全て自由に使えるルールだ)
「画像編集」よりも、さらに表現力を増強したい
場合は、「画像処理」という手段も一応存在する。
本ブログでは別途「(画像処理)プログラミング」
シリーズ記事を展開している。そこでは、他に
一切前例の無い、特殊な画像処理を施し、写真の
加工(や、検出、抽出、変換等)を行う事を主眼と
している次第だ。
画像処理プログラミングについては、誰にでも出来る
話では無いとは思うが、興味があれば参照されたし。
---
では、4本目は超望遠ミラー(レンズ)だ。

(中古購入価格 18,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のミラー(レンズ)である。
μ4/3機専用であり、換算600mm、電子接点にも対応
している。
今回のDMC-GX7との組み合わせでは、焦点距離を手動
入力する必要も無く、内蔵手ブレ補正機能が使用可能
となる。ただし、600mm相当あるいはデジタル拡大
機能を組み合わせた1200mm以上の超々望遠画角とも
なると、ボディ内手ブレ補正も精度不足で、ほとんど
まともには動作しない。
ミラー(レンズ)であるから、ガラスレンズに比べ
画質や解像感が落ちてしまう事は普通だ。
旧来、銀塩時代から、ミラーレンズは存在したが、
超望遠域を写すレンズとしての、小型軽量化の
代償としての低画質化は、悩みどころではあった。
ただ、本ミラーは、さすがに近代設計だけあって、
従前の時代のミラーほど迄には低画質では無い。
(注:ミラーの蒸着処理には、経年劣化があり、
古いミラーレンズや、その保管状況によっては、
画質が、さらに劣化していく場合もある)
そして、リングボケが発生する事は、全てのミラー
(レンズ)での特徴だが、これは長所にも短所にも
なり得る話なので、写真表現的にリングボケをどう
扱うか?は、良く意識する必要があるだろう。

最短撮影距離が80cmと短い事であり、これで1/2倍
相当ではあるが、本ミラーはμ4/3機専用であり、
μ4/3機の、現行機の(ほぼ)全てにはデジタル
拡大機能が搭載されている為、簡便に、等倍
マクロ以上の最大撮影倍率を得る事は可能だ。
ただし、MFであり、それにも増してピント合わせ
が難しい、という課題を持つレンズである。
撮る写真の半数くらいはピンボケやブレが発生
してもやむなし、という位の軽い気持ちで趣味的
な撮影に使うのが良く、いくら「超望遠だから」
と言って、このミラー(レンズ)で、業務用途の
スポーツ撮影などは出来ないと思う(歩留まりが
悪いからだ)
趣味撮影専用として、最も有益な撮影分野は
「自然観察撮影」であろう。
数m先の小さい被写体(特に、近寄ると逃げる
トンボ、蝶、その他の昆虫類)の撮影において
無類の適合性を持つ。
ほとんど「トンボ撮影専用ミラー(レンズ)」と
考えても、差し支えない位である。
望遠レンズやマクロレンズを使っても、中距離の
小動物・昆虫等は、なかなか撮り難い被写体では
あるが、本ミラーであれば、それらがバシバシと
撮れてしまう。この面白さは、撮影(被写体)の
趣向すらも変えてしまうかも知れない訳だ。
価格もそう高価では無い、μ4/3機ユーザーには
必携のミラー(レンズ)だといえるかも知れない。
(注:現在では生産終了となっている)
---
では、次はLo-Fiトイレンズである。

(新古品購入価格1,000円)
カメラは、OLYMPUS E-520 (4/3機)
2010年代前半の発売と思われるトイレンズ。
ここでHOLGA(ホルガ)について説明しだすと冗長
になってしまう。ばっさりと、そのあたりは割愛し、
興味があれば、以下の2記事を参照されたし。
*特殊レンズ第3回「HOLGA LENS」編
*海外レンズマニアックス第8回「HOLGA」編

Lo-Fiレンズでは、Lo-Fi撮影技法を用い、かつ
それがアンコントローラブル(=撮影者の、意の
ままにはならない偶然的要素)でなくてはならない。
どうしてもコントローラブル(=事前の想定通りの
必然的な撮り方)になってしまう場合は・・
1)意図的に、破綻するかしないかのギリギリの
カメラ設定で撮影する。
2)設定や条件を変えた写真を非常に多数(数千枚
以上)撮影し、その中から意図にあった写真を選ぶ。
3)エフェクトをランダムまたは半自動(例:OLYMPUS
のミラーレス機にある「アートフィルターブラケット」
や、PENTAX機の「クロス・プロセス」機能等)で掛け、
そこから表現に合った写真を選ぶ。
の概ね3種類の技法により、偶然性を得る事が出来る。
ただし、いずれも難易度が高かったり、手間の掛かる
事である。これであれば、一般的なHi-Fi写真を撮る
方が、ずっと容易な位だ。
で、今回の母艦は、4/3(フォーサーズ機)の
E-520(2008年)であるが、時代的に、エフェクト
(アートフィルター)が、ぎりぎり搭載されていない。
・・であれば、μ/3機等で本HOLGAを使えば済む話
なのだが、ちょっと試したかったのは、E-520の
特徴的機能である「パーフェクト・ショット・
プレビュー」(以下、PSP)(これは、ライブビュー
撮影時に、露出補正や、ホワイトバランスが異なる
複数の画像群をプレビューし、そのどれか、適切と
思われる設定を撮影者が事前に選ぶ機能である)が、
上記のアンコントローラブル技法に応用できないか?
という検証であった。
ただ、PSPは、操作系が、ちょっと煩雑になるのが
難点であり、これを使うなら、事後の編集の段階で、
PSPの概念を応用拡張し、画像処理部を自作した、
「オリンパスブルー」生成ソフトウェア
(プログラミングシリーズ第12回、下写真)を
使うのが良さそうだ、と思った次第だ。

それは「表現」という要素を含む為、ただ単に
機材(レンズやカメラ)、あるいは編集ソフト等を
選んで用いれば解決する、という問題では無い。
要は、「何をどう撮りたいか?」であるから、いくら
高機能で高価なカメラを買ったところで、そうした
意識が無ければ、表現写真は撮りようが無い訳だ。
---
さて、6本目は「ぐるぐるボケ」レンズである。

(新品購入価格 41,000円)
カメラは、SONY α7S(フルサイズ機)
2019年に発売された、MF標準「ぐるぐるボケ」レンズ。
ミラーレス機用だが、フルサイズ対応品である。

散歩撮影をしていると、近所の初級カメラマニアの
オジサンに出会った。名前等は全く知らないが、良く
出会う顔見知りであり、会うと、必ずカメラに関する
マニアックな話をして、彼の機材購入の相談に乗る事も
何度かあった。
で、そのオジサンいわく、
オ「おや、変わったレンズを使っていますね~
なんだか、廻すところも沢山あるみたいだし」
匠「前から、PLフィルター、絞り値、BC環(ぐるぐる
ボケの発生量調整)、MFのピントリング、と、
4つも廻すところがありますよ」
オ「ひえ~、そんな難しいレンズ、使えないわ!」
匠「難しくないですよ、それぞれ廻す意味があるので
自分が撮りたいように調整すれば良いだけです」
オ「その”意味”が、わからんのですよ。難しすぎる」
・・ううむ、何が難しいのであろうか? そこが
疑問には思える。個々の機能はごく初歩的なものだし、
それに、撮影をする際での表現力を増強する機能が
いくつもついているならば、それを細かく調整して
自分が撮りたいように自在に撮れる訳だから、それは
むしろ歓迎すべき方向性ではなかろうか?
要は「何をどう撮りたい」という意識を何も持って
いない訳であろう、だからカメラもフルオートの設定
のままで撮る(そうしか、撮りようが無い)、それが
典型的なビギナー層の習性だ。
で、その状態で撮って、「このカメラは連写が速い」
だの「このレンズは爆速AFだ!」とか、そういう類の
”初級評価”だけをする人達が世の中の大半である。
「何をどう撮りたいか?」等の高度な意識は全く無い為、
被写体は、家の中に置いてあるヲタクなフィギュア等
だったり、あるいは、1つの記事で同じような写真が
ズラリと並んでいるだけの試写結果だったりする訳だ。
(カメラ設定を変えるならば、被写体も変わるべきだ。
「撮影機材の物理的な試験をする」、という感覚から
早く抜け出さないと、いつまでたってもビギナーの
ままになってしまう。また、そういう類の評価手法しか
示さない市場の評論家層にも問題は多々あるだろう。
例えば、ボケ質に優れたレンズで、遠距離のビルを撮って
窓が写っているか、いないか?などは、そもそも
そういう特徴があるレンズでは、そういう被写体は絶対に
撮りたく無い訳だから、全く無意味な試験手法であろう)
さて、本 Petzval 55mm/f1.7Ⅱであるが、
あまり、あれこれと説明するのも無意味かも知れない。
近年での、カメラ・レンズ市場の大幅な縮退により、
本レンズに関する情報は、機材を売りたいが為の記事
しか検索されず、ユーザーレポート(レビュー)等は
極端に少ない状況である。
まあつまり、誰も買っていない、という状態であろう。
従前の本レンズの紹介記事では、変形ペッツヴァール
構成での非点収差や像面湾曲収差を増強する構造、
とか、そんな話を書いていたが、ビギナー層ばかりが
主要なカメラ(レンズ)ユーザー層となってしまった
現代の市場状況においては、難しい話を書いても、
それこそ、前述の「オジサン」のように、チンプン
カンプンとなるだろうし、そういう、自分には理解
できない事を「難しいから」と、拒否してしまう
ような風潮すらも現代人には強くある。
マニア層ならば、未知のものに強い知的好奇心や
探究心を持つ事は当然だと思われるのだが・・
カメラおよびレンズ市場が、従来の1/10以下まで
壊滅的に縮退している現代においては・・
”もうマニアなど誰も居ないのではなかろうか?”
「製品を売る為の記事」と「何もわかっていない
ビギナー層のレビュー記事」ばかりを見るたびに、
そう思えてならない。
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では、7本目はLED照明付きマクロレンズだ。

(中古購入価格 30,000円)
カメラは、CANON EOS M5(APS-C機)
電子アダプターは、CANON EF-EOS M
2017年頃発売のAPS-C機専用AF準広角(標準画角)
等倍マクロレンズ。
希少なLED照明内蔵マクロレンズ(交換レンズ)である。(コンパクト機等の固定レンズ商品を除き)交換レンズ
でのLED付きはCANON製以外の製品は無く、CANON
製では、本レンズを含み2機種ある。
ただ、本レンズに搭載されているLED照明は、
屋外明所では殆ど効能が無い、暗すぎるのだ。

居る小さい昆虫」とか、「カメラやレンズの影が
被る花や小動物の近接撮影で、影を消す」とかの
用途を色々と想定していたのが、全て無理であった。
このLEDは、屋内や弱暗所でしか効能が無い、
その程度の光量しか得られない訳だ。
で、LEDを光らせるには、レンズ前方に装着して
ある、ねじ込みのフード(保護)部品(上写真)を
外さないとならない。
そして、フード状部品を外すと、LED部がむき出し
となり、近接撮影等で間合い(距離感)を間違えると、
LED部が被写体に接触し、破損や汚損等の危険性が
生じる。(注:保護フィルター等は、フード状部品
側にしか装着できない、LEDは完全にむき出しだ)
なので最近では、屋外撮影においてはLED照明を、
もう使わず、通常はフード部品を装着したままに
しておき、故障リスクを減らすようにしている。
屋外弱暗所等で、LEDを使った方が有効な状況を
見つけた場合のみフードを外すようにしているが・・
まあ、早く撮らないと被写体が逃げる(トンボや蝶、
その他昆虫類)場合では、その都度のフードの着脱は
いかにも煩雑だ。
購入前に想定していた用途と、実際の実用性が乖離
(=かけ離れる)してしまって、なんとも良くない
機材購入であった。機材を買うならば、完璧にその
用途を想定してから買う事が本来ならば望ましい。
しかし、LED付き交換レンズは、その前例も皆無に
等しく、購入前に経験則がなかったのでやむを得ない。
まあ、全く用途が無い、という訳でも無いし、
こうしたレンズを開発発売する意欲と、その歴史的
価値の高さを鑑みて、所有は続ける(処分はしない)
方針ではあるが、まあ、それくらいのものだ。
ちなみに、個人的にはデジタル時代に入った頃
(2000年代前半くらい)に、非常に多数の銀塩機材
を処分(譲渡が大半、一部売却、ごく一部が廃棄)
してしまったのだが、後年にやや、その事を後悔して
いた。「実用性」という観点からは、古い銀塩機材を
いつまでも保有している事は意味が無いのだが・・
近年、私が行っているのは、機材の「歴史的研究」
が増えてきている、その際、「ああ、あの機材を
今でも持っていれば、比較や検証ができたのに」
と思う事が多々ある訳だ。
・・まあ、なので、2010年代に入った頃からは、
「やむなくの故障廃棄」のケースを除き、購入した
機材を、全く処分しなくなった。結果、際限なく
機材が家に溜まっていくが、まあ、どれも「研究材料」
なので、その事はやむなし、としている。
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では、今回のラストはアポダイゼーション・レンズだ。

(新品購入価格 118,000円)
カメラは、SONY α99(フルサイズ機)
1998年発売のMF望遠アポダイゼーションレンズ。
型番STFは「Smooth Trans Focus」の略であり、
この世界初のアポダイゼーション光学エレメント
内蔵レンズを発売時の、MINOLTAによる造語だ。
この部品を入れると、実効F値(=T値)が低下
してしまう為、本レンズには[T4.5]と仕様併記
されている(注:後継のSONY FE100/2.8STFには
T値併記が無い。ちなみに、その値はT5.6なので、
初級層等から「F値が暗いから低性能レンズだ!」
と思われるのが嫌だった為であろう。
そんな勘違いをする初級層が買うレンズでは無い
から、どうでも良い話だとも思うが・・)
で、本レンズに関しては、本ブログの最初期から
何度も何度も説明・紹介をしている。
発売後20年を軽く超えてまで、今なお、最上級
(全所有レンズ中、トップクラス)の描写表現力
を誇る、紛れも無いレジェンド名玉である。
これ以上、詳細を説明する必要も無いであろう。
中上級マニア層で、本レンズに注目しない方が、
むしろ不自然な状況だ。
マニア必携の高描写表現力レンズだとも言える。

を抱えるレンズでもある。それの何がまずいのか?
と言えば、「同じ被写体状況であれば、誰が撮って
も(超ビギナーが撮っても)同様に綺麗に撮れて
しまう」という状況であり、スキルがあれば、ある
人なほど、つまり上級層(ハイアマチュア層)や、
実践派上級マニア層、職業写真家層など、全般に
おいて、ビギナー層が撮った写真と同等であれば
「差別化」が出来ない。(つまり、自身の写真に
高い付加価値を提示できない。場合により、それは
名誉や収益とか、様々な優位性に影響を及ぼす)
という課題である。
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さて、最後に各レンズの個人レンズ評価データベース
からの評価点(5点満点)を引用し、さらに特別加点
(最大1点)を加えて最終順位を決定する事としよう。
1位:総合4.6点:Lomography Petzval 55/1.7
2位:総合4.5点:MINOLTA STF 135/2.8
3位:総合4.1点:LENSBABY Velvet 56/1.6
3位:総合4.1点:TOKINA MF 300/6.3
5位:総合3.9点:LAOWA 15/4
5位:総合3.9点:PENTAX 07
7位:総合3.4点:CANON EF-S 35/2.8
8位:総合2.9点:HOLGA 60/8
優勝(最優秀)レンズは、2019年発売の
「Lomography New Petzval 55mm/f1.7 MKⅡ」
となった。
ぐるぐるボケの発生と、そのコントローラビリティ
さらには、高いマニアック度、高いテクニカル的
エンジョイ度、そして、あまり高価で無いコスパ
の良さ、と、総合的に加点が多かったレンズだ。

思わないレンズであろう。「MFである」という
ただそれだけで「爆速AFでなくちゃ撮れない!」等
と言う軟弱なビギナー層においては、選択肢からは
外れるレンズとなってしまう。
・・けど、今、初めて気づいたが、本決勝戦に出場
したレンズは、CANON EF-S 35/2.8を除き、全てが
MFレンズであった。
・・まあ、であれば、ビギナー層では、これらの
特殊レンズを、どれも扱う事は出来ないであろう。
情けない話だが、それがカメラ市場の大幅縮退の
結果としての、現代の一般ユーザー層のレベルだ。
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では、本シリーズ記事は、これにて終了。
何かまた、カテゴリーを思いついたら補足編の
最強レンズシリーズを開催するかも知れない。