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レンズ・マニアックス(80)

新規購入等の理由で過去の本ブログのレンズ紹介記事では
未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズ3本と、再掲レンズ1本を取り上げる。

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まず、今回最初のレンズ
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レンズは、SIGMA (AF) MACRO 50mm/f2.8 EX DG
(中古購入価格 9,000円)(以下、EX50/2.8)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)

2004年に発売されたフルサイズ対応AF等倍マクロレンズ。

正式型番は例によって不明、SIGMAの旧製品は、もう
ほとんど情報が残っておらず、レンズ上での順不同の
記載を拾い集めると、上記のような型番となる。
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本レンズは、旧型(1990年代の製品)を同じCANON
EFマウントで所有しているが、CANONが2000年頃に
情報伝達プロトコルを(意図的に?)変更して
しまった為、銀塩末期のEOS(例:EOS 7、2000年、
銀塩一眼第26回記事)や、デジタル最初期のEOS
(例:EOS D30、2000年、デジタル一眼第23回)
以降のEOS機では、旧型レンズは使えなくなって
しまった。(装着し、撮影するとエラーとなる)

非常に腹立たしい話だが、そういう既成事実なので、
もうやむを得ない。絞りの制御が効かない機械式
マウントアダプターで旧型レンズを、たまに使う
状態(注:写りは悪く無いから、使いたい訳だ)が
10数年も続いていたが、近年、新型の本レンズの
中古を安価な相場で見つけたので、これを購入した
次第である。
この新型であれば、EOSでの変更されたプロトコル
に対応しているので、現代のEOS機(一眼レフ)でも
難なく使用可能だ。
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描写力は、旧型譲りで悪く無い。
(特殊レンズ第42回「伝説のSIGMA MACRO」編で
様々な新旧SIGMA製マクロレンズを紹介している)

で、2013年からのSIGMAのラインナップ整備により
ディスコン(生産中止)となってしまったのが、
とても残念なレンズである。
(まあ、本レンズの定価は安価であったので、
「安いこれを売っていても、儲からない」という
判断なのであろう)

この時代(2000年代)のEX銘がついているSIGMA
のマクロは、どれも優秀な描写力が持ち味だ。
人気のTAMRON製マクロの影に隠れてしまって
全く目立たないが、TAMRON製マクロにも勝るとも
劣らない。
そして、これで2000年代EXマクロは全て揃ったので、
近いうちに「EXマクロ・グランドスラム」記事を
書いて掲載する事としよう。
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弱点だが、
今回使用機のEOS 8000Dとの組み合わせにおいては、
AF性能(速度、特に精度)が非常に厳しい状態となる。
MFに切り替えて使おうにもEOS 8000Dの低性能な
ファインダー/スクリーンでは、それは無理だ。

母艦を選ぶならば、AF性能が高いEOS上級機
(例:EOS 7D系機体)あるいは、MF性能が高い
EOS機(例:MF用スクリーンへの換装を施した
EOS 6DまたはEOS 5D MarkⅡ(未所有))にて
使うしか無い。(参考:EOS 5DⅡ/6Dより後の
後継機では、スクリーンの交換ができない)
また、裏技ではEOS M/Rシリーズのミラーレス機に、
純正マウントアダプター経由で装着し、それらの
ピーキング機能頼りで、MFで使う方法論もある。

AFの全般的な課題を抜きにすれば、本EX50/2.8は、
描写力に優れ、おまけに価格も安価であったので
コスパ面での文句は何も無い。
詳しくは、また「SIGMA EX MACRO編」で紹介する
事としよう。

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さて、次のシステム、
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レンズは、smc PENTAX-FA (ZOOM) 28-80mm/f3.5-5.6
(ジャンク購入価格 1,500円)(以下、FA28-80)
カメラは、PENTAX K-30(APS-C機)

カメラがびしょ濡れだが、K-30は防滴構造なので
問題は無い。

レンズは、1990年代に発売と思われるAF標準ズーム。
防滴では無いが、ジャンクなので、まあ良いであろう。
ありふれたスペックのレンズであるが、これは
「研究用途」としての購入だ。
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研究の内容としては、第一に、本レンズの時代の
PENTAXにはスペックが微妙に異なる標準・望遠ズーム
が色々と存在していたし、本レンズ自体においても、
前機種や後継型があれこれと販売されていた模様だ。
・・で、その差異や、市場背景を探る興味がある。
ただしこれは、相当に多数のレンズを入手しないと、
なかなか見えて来ない為、まだ現段階では、その
研究の成果は何も無い。
でも、急に色々と集めるのは無理なので、ジャンク等
で見かけたら、ポツポツと購入している次第だ。

もう1つの研究内容は、近年ではいつも行っている
「ワンコイン・レッスン」である。
これの意味は、だいたい500円~1000円程度で
買える古い時代(1970年代~1990年代頃)の
レンズをジャンク等で買ってきて、その弱点を探り、
それを回避する手段を考案する為の教材としての
利用である。これは非常に役に立つ練習であり、
できるだけ古い、低性能なレンズの方が、弱点が
はっきりしているので、それを見つける事も容易
であるし、弱点回避技法を考察し、それを適用した
際の効果も顕著に現れる。

これまで数十本の、そうした(オールド)ジャンク
を買って練習をしているのだが、平均購入価格が
500円~1000円程度なので、多数買ったとしても
高性能レンズ1本の中古価格にも満たない金額だ。
で、これまでは、買ったジャンクレンズの殆どは、
数回の使用とか千数百枚程度を撮影した時点で、
「もうよし、だいたい練習は済んだ」と、ある意味
”使い捨て的”な扱いであったのだが、さすがに
安価だ、とは言っても、”勿体無い”と思うように
なって来た。
そこで、研究目的に、これらジャンク品を使用する
事とした訳だ。たとえば時系列に沿って、同一
モデル(機種)の変遷を辿る場合もある。
(例:本シリーズ第77回「SIGMA APO望遠ズーム」編、
本シリーズ第79回「新旧TAMRON 90Macro」編等)

また、同時代での類似スペックで、異なる仕様の
レンズを集めて、それらを比較するとか・・・
(後日、CANON New FD望遠ズーム編を掲載予定)
そんな風に「システマチック」(体系的、系統的)
にジャンクレンズを扱う事とした訳だ。

いままでのように、(たとえ練習目的であっても)
ランダムに各時代の各メーカーのレンズをバラバラに
買っていたのでは、結局、詳しい事は何もわからない。
だから、何らかの条件を揃えた上でジャンクレンズを
収集する方針に変えていっている最中だ。

特に、前述(前出記事)の「SIGMA APO望遠ズーム」
編等では、時代とともに、同じレンズがどのように
進化していったのか?(まあ、稀に、進化では無く
後退してしまうケースもあるだろう)という事が
大変良くわかって、ものすごく興味深いし、とても
面白く、おまけに、他のどこにも存在しない情報も
そこから色々とわかってくる。
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本レンズFA28-80の話がちっとも出ないが、まあ
今の時点でわかっている事は「非常にありふれた
標準ズームである」という、それだけだ。
AL(非球面)型番のバージョンもある模様だが、
それは未所有なので、差異は不明だ。
だが、ここで「AL版との比較は?」とか、そういう
風に特定の意図を持って、特定のレンズを探すので
あれば、それもまた楽しい訳だ。

本レンズの最短撮影距離は50cm、他の仕様(性能)
的にも「並み」であるし、描写力も「並み」だ。
本レンズが、どの時代に、どのカメラとセットで
売られ、どのようなユーザー層が買ったのか?
そして、それらのユーザー層は、どう評価したのか?
同時代のライバルシステムはどれであり、どういう
差があったのか? はたまた本レンズの前機種や
後継機種は、どう変化していったのか?

まだまだ調べたり、研究したり、仮説を立てたり
する事が山積みである(汗)本来は、個人のユーザー
が、そういう研究をするには、資金も手間も膨大な
ものとなってしまうので、絶対に無理な話だ。
普通ならば、大学や企業等の研究機関でやる「仕事」
であろうが、そういう話(レンズの歴史的研究)は、
殆ど聞いた事は無いし、そもそも、そうした研究を
組織的に行ったとしても、依然、大変困難な事かも
知れない訳だ。
だが、幸いにして私は既に多数の機材を所有して
いるし、それらを実際に使って来た経験や知識も
持っている。だから「個人で出来る範囲などは
たかが知れている」とは言っても、それが可能な
レベルに近い位置までは来ている訳だ。
・・であれば、もうこういう研究はライフワーク
的に続けていくのも良い、とも思っている次第だ。

マニアであるからには、他者では到達が困難な
何か高い目標を持たないとならないと思っている。
それを目指す事、あるいは探求心を持つ事が、
「真のマニア道だ」とも思っている。

世間一般層が思うような「マニア」のイメージでは、
「金にモノを言わせ、希少で高価なモノを平気で
 買ってしまうような人達」という認識があるかも
知れないが、私はそういった状態は、マニアだとは
思っていない。マニアとは「モノの真の価値が
わかる人達」であり、それを判断する価値観を極める
為に、または好奇心や探究心を満たそうとするが為に、
それに見合う投資を行う人達を指す、と定義するべき
だと思っている。無駄な予算を使ってしまうのでは
それは単なる「金満家」か「浪費家」だ。
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で、本FA28-80の詳細評価は「保留」としておく。
これ単品だけを見ても「平凡な性能の標準ズーム」
としか、現段階では思えないからだ。

しかし、これから多数の類似商品等と詳細な比較
検討を行う事で・・(時代や世情を含めた2次元や
3次元での調査検討を行う事で・・ この手法について
は、匠の写真用語辞典第17回「時代の見極め方」の
項目を参照)単体の製品を見ているだけの状態では
わからなかった、詳しい情報や隠れた事実が、沢山
見えてくる訳だ。

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さて、次のシステムは、ヘリコイドアダプターの
検証を再掲レンズにて行う。
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レンズは、Jupiter-9 85mm/f2 (M42版)
(新品購入価格 5,000円)
アダプターは、M42→SONY E ヘリコイド付き
カメラは、SONY NEX-7(APS-C機)

使用レンズについては、過去記事で何度も紹介している
非常に著名なロシアンレンズ、Jupiter-9である。
本レンズに関する説明は不要であろう。必要であれば、
過去の多くのロシアンレンズ関連記事等を参照の事。
(例:特殊レンズ第4回、ハイコスパ第24回、
 レンズマニアックス第61回、等)

Jupiter-9(M42版)の最短撮影距離は、およそ80cm
である。焦点距離10倍則からは、まあ妥当な性能だ。
だが、「ちょっと物足りない」とも思う。その際、
ヘリコイド付き(マクロ)アダプターを用いる事で
その不満が解消される。
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どこまで寄れるようになるか?は、レンズおよび
アダプターの仕様に応じて、まちまちだと思われるが、
今回使用のシステム構成では、これで、レンズおよび
アダプターのヘリコイドを一杯に繰り出した状態で、
最短撮影距離を80cm→約22cmに、大幅に短縮できる。
(これは実測値であるが、最大に使った場合だ)

撮影範囲はAPS-C機NEX-7で約4.5cmx約3cmである。
(これも実測値だが、あくまで最大値である)
ここでフルサイズ換算での撮影倍率は、約0.8倍で
殆どマクロレンズ並みの近接性能となる。

ただし、現代のミラーレス機では、色々なデジタル
拡大機能等が備わっている。今回のNEX-7においても、
デジタル・プレシジョン・ズーム機能があり、この
システムでも有効な為、さらに最大10倍のデジタル
拡大(つまり、フルサイズ換算8倍マクロとなる)を
行う事が可能だ。

しかし、数倍を超えるレベルのデジタル拡大処理は
画質劣化が甚だしく、また、手ブレ補正機能が無いし、
被写体ブレも起こる為、屋外撮影等では、こうした
「超マクロ」撮影は、手に負えない高難易度となる。

よって、あまり撮影倍率を欲張らずに、光学と
デジタルをあわせて、1/2倍程度から最大で2倍
程度迄の換算撮影倍率に留めておいたとしても、
実用近接撮影システムとしては十分だ。
(注:非常に高倍率の撮影を行いたい場合は、
高画素からのトリミング処理の併用を推奨する)
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まあここで、ついに「Macro Jupiter(-9)」が
実現した事になる。
旧ソ連のジュピター(ユピテル)シリーズには、
確かマクロレンズは存在していなかったと思うので、
マニア的観点からは、「マクロジュピター(-9)」の
実現は、痛快な出来事だ。

ただ、実は銀塩時代でも、これを実現する裏技が
存在していた。

それは、(京セラ)CONTAX AX(1996年、銀塩一眼
第20回記事参照)を用い、そこにM42→Y/C(RTS)
マウントアダプター(注:銀塩末期でも、かろうじて
存在していたアダプターである)を介して、
本Jupiter-9を装着する。
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次いで、CONTAX AXに備わるMACROモードをONと
すると、フィルム面が10mm程後退する。
これで「接写用中間リング」をかましているのと
同等の状態となり、ジュピターがマクロジュピター
となり、タクマーはマクロタクマーとなる!

ただ、この用法では、CONTAXにおける画質面から
の保証的な意味で、無限遠ピント距離での使用が

推奨されていたし、露出(露光)倍数もかかり、
見かけ上のF値も暗くなる。(=ブレ易い)
また、10mm程度の繰り出し量では、さほどの強烈な
高(撮影)倍率も得られない。
(ちなみに、今回使用のヘリコイドアダプターの
繰り出し量は、最大20mm程度の仕様となっている)

また、銀塩時代でのY/C(RTS)用マウントアダプター
の種類はかなり少なく、M42用位しか無かったかも
知れない。だからこの用法はM42よりも、むしろ
オリジナルのCONTAX Y/C(RTS)レンズが主だ。
その場合、テッサーがマクロテッサーに、ゾナー
がマクロゾナーになるなど、これもまた痛快だ。

そして、CONTAX AXでは別の用法も可能であり、
MACROモードから切換え、ABF(オートマチック・
バックフォーカスの略であったか?)を用いた
SAF/CAFモードとすれば、こうしたJupiter-9の
ようなMFレンズでもAF化ができてしまう(!)
つまり、AFのJupiter-9が成立していた訳だ。

まあ、CONTAX AXの話は余談である。マニアックで
希少なカメラだし、現代においての実用価値も低い。
あまり無駄な情報を広めて投機層が動いて高額相場に
なっても面白くないので、このあたり迄に留めておく。

・・で、M42ヘリコイドアダプターの話に戻るが、
殆ど全てのM42レンズ(世の中に非常に多数ある)
を近接撮影可能にしてしまう事で、エンジョイ度が
高まるアイテムである。

M42レンズ用の他に一般的なヘリコイドアダプターは
ライカM、ライカL(L39)用のもの等が存在する。
また、稀にNIKON S/旧CONTAX C用のものもあった
と思う。(注:存在したとしても高価だ)
で、これらレンジファインダー機用のレンズの場合
レンジ機の距離計連動の構造上、最短撮影距離が
70~90cmまでに制限されてしまっている。
(注:距離計非連動型レンジ機用レンズであれば、
最短30~50cmというものも、稀に存在していた)

最短90cmとかで、しかも「広角レンズ」であると
寄れない不満が大きく、旧世代技法での「風景写真」
や「スナップ撮影」を行うしかなく、これらは
あまり現代的な撮影技法とは言えない。

以下参考だが、何故レンジ機で広角レンズを使うか?
については、まずレンジ機では、望遠レンズにおいては
「距離計の基線長の精度」という構造的な問題により、
ピント精度が落ちてしまう為、広角系レンズの使用が
セオリーだ。


加えて、フランジバック長の短いマウントだから、
広角レンズを、面倒なレトロフォーカス(逆望遠)型
に設計する必要性が無く(注:一眼レフでは、ミラー
ボックスの存在で、そうせざるを得ない)ビオゴン構成
等の対称型設計により、収差を相殺して高画質を得る
事が出来た為、その意味でもレンジ機では広角レンズを
使う事が必須であった。

まあ、ただし、それは銀塩時代での旧来技術でのケース
であり、近代的な非球面レンズや異常低分散ガラス等
を用いれば、対称型設計でなくてはならない理由は
減少する。まあ、稀に、そういう新世代のレンジ機用
レンズも新発売されてはいるが、販売数が少ない為、
開発費や製造費の償却で、非常に高価になっている
のが難点であろう。

ちなみに、対称型設計(構成)を、レンジ機用では無く、
現代のミラーレス機用に転用した例は、安原製作所の
ANTHY35(2019年、本シリーズ第67回記事)等がある。
非球面レンズ等を使う必要性が少ないので、安価で
高画質な、コスパの良いミラーレス機用レンズとなる。
(追記:安原製作所は、2020年の経営者の逝去により
以降の操業は停止している。当該レンズは、数ヶ月間
しか販売されていない為、投機対象にならない事を
願うばかりだ。それは故人の望むところではないだろう。
実例が悪かったかも知れない。他にも類似の設計思想の
レンズは、あれこれと存在している。「他を知らない」
という原因で、特定のレンズが投機対象となってしまう
世情には、個人的には全く賛同していない次第だ)

余談が長くなったが、元の論旨に戻ると、
つまり、ライカMやライカL39等用の広角系レンズは、
最短撮影距離が長すぎて、現代的な撮影技法には
向いていない。そこで、それらのマウント用での
ヘリコイドアダプターを用いれば、数十cm位は
最短撮影距離を短縮できるので、ストレスが解消
できるという訳だ。

ただまあ、この使い方は「弱点を補う」という意味で
やや消極的であろう。積極的にヘリコイドアダプター
を用いるならば、一眼レフ用の通常レンズ(名玉)を
全てマクロレンズに変えてしまう方がはるかに楽しい。
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なお、「近接撮影をすると画質が落ちるのでは?」
などと、細かい心配をする必要は余り無いと思う。
確かに光学原理上では、この用法は画質劣化を招くし
露光(露出)倍数もかかって、細かいブレ等を誘発
するリスクもある。ただ、その画質低下は微々たる
ものであろうし、その為にも高描写力の「名玉」を
用いて、課題を目立たなくする訳だ。

また、当然ながら要求画質等は、被写体状況や条件、
カメラの選択と設定、撮影技能、編集技能、写真の
利用目的、さらに最も重要なのは「写真で何を表現
したいのか?」に、よりけりである。
常に「Hi-Fi」写真を撮る事を目指すのは、だいたい
中級層クラスまでの発想であり、それでは不十分だ。
写真には、必ず「それを撮る目的」があるのだから、
画質などは、ある意味、必要によりけりな要素である、
画質を高める事を狙っているだけでは、それは単なる
「映像記録」であり、それは「写真」とは、イコール
であるとは限らない。

さて、ヘリコイドアダプターであるが、最後に1点
だけ注意点を。それは、アダプター側のヘリコイド
(リング)の回転角は、結構大きい為、これを
繰り出すには、多数の持ち替え動作が必要となる。
加えて、レンズ側のピントリングも廻す必要がある。

よって、遠距離撮影と近接撮影をいったり来たりする
ような用法には全く向かない、時間がかかりすぎるし、
手指の疲労も誘発するからだ。
これを使う以上、「近接撮影専用」と考えておくのが
無難だと思う。

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次は、今回ラストのレンズ
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レンズは、NIKON AiAF (Zoom) NIKKOR ED 80-200mm/f2.8S
(中古購入価格 8,000円)(以下、AiAF80-200)
カメラは、NIKON D300(APS-C機)

1988年に発売された、開放F値固定型AF望遠ズーム。
同クラスAFでは最初期型であり、「ワンハンド方式」
ズームだ。(注:もしかして、最後のワンハンド
ズームだろうか? MF時代に多かったワンハンド
方式は、AF時代に入って絶滅してしまっている。
他には、CANON EF70-210/4があるが、これは
1987年発売と、本レンズより1年早い)

ちなみに、これはズーミングを鏡筒長の変化で行う
「直進式」ズームとは定義や構造が異なっている。
「ワンハンド式」では、ズーム環がピントリングを
兼ねていて、同時操作が出来る利点が非常に大きい。


単なる「直進式」では、ズーミングを行った後で
ピント調整を別途行う必要がある。これはAFレンズ
ならば良いが、MFレンズでは操作性の悪化や速写性の
低下を招く。

加えて、本レンズや、多くのワンハンド式MFズーム
では、鏡筒長の変化が無く、ズーミング操作で重心の
バランスを崩す事が無い。
(全然違う物なので、両方式を混同してはならない。
それと、本レンズでは、AF時ではワンハンド用法は
出来ない、やるならば、あくまでMFでの使用に限る)
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本レンズの発売時定価は、恐らくだが12万円程と、
その当時としては、非常に高価だ。
現代においての中古品は、まさしく二束三文であるが、
「高コスパである」と見なしての購入だ。

後年、1992年のD型ではフォーカシング時に前玉が
回転しなくなり、1996年のNew D型では、回転式の
ズームリングとなった。

それ以降では、焦点域が70-200mmとなり、手ブレ
補正や超音波モーターが内蔵され、どんどんと高額
になっていく。2016年発売の、最新型の
「AF-S NIKKOR 70-200mm/f2.8E FL ED VR」
では、なんと定価33万2500円+税と、極めて高額だ。

開放F値固定型ズームは、使用利便性が高い為、
職業写真家層や実用派上級層の定番機材である。
メーカーとしても「顔」となる製品である為に
高性能、高付加価値化して、高額な商品となる。

何故(ゆえ)に開放F値固定型ズームが優れるのか?
あるいは、そういう仕様のレンズで何をどう撮るのか?
そのあたりが良くわかっていない初級中級層でも、
これらの高級レンズに憧れて、それを買う事を夢見る。

F2.8の開放F値固定ズームを、広角、標準、望遠で
3本揃える(コンプリートする)事を、初級中級層に
おいては「大三元」と俗称で呼び、定価でおよそ
100万円にもなる、そのセットに憧れる次第だ。

まあ、さすがに3本を揃える予算捻出は初級中級層
では厳しいので、いつのまにか、それらの1本だけ
を称して「大三元ズーム」と呼ばれるようになって
しまっている。(1本買うのがやっと、という状況)

でも、それは本来の「大三元」の状態では無い。
語源となった麻雀の役においても、白、發、中
(ハク、ハツ、チュン)を3つとも刻子(コーツ)
で揃えないと「大三元」(役満貫)にはならない。
望遠ズームを1本買うだけでは、中(チュン)を
ポンしただけの状態と同様で、それでは1飜
(イーハン)の役にしかならない訳だ。

ちなみに、これと類似の状態は、テニスやゴルフ
での4大大会を「全て制する」(優勝する)状態を
「グランド・スラム」と本来は呼ぶのだが、それも
非常に困難な事なので、いつの間にか1つの大会に
勝っただけで「グランドスラムだ」という誤まった
認識が広まって、元々の用語の意味が混迷して
しまっている。

で、業務撮影に使わない限りは「大三元」は、
コスパ的にあまり有益な機材群とは言えないし、
たとえ業務撮影であっても、撮影機材への投資負担が
大きいケースではビジネスとして赤字になってしまう。
(撮影機材が、所属する組織等から提供されるとか、
経費としての償却が可能であれば、このあたりの課題は
緩和するが、そのように恵まれた環境の人達ばかりでも
無いであろう。また、同等品質の写真を納品して、同じ
報酬額を得られるならば、使用機材は安ければ安いほど、
利益率は高まり、ビジネス的には好ましい訳だ)

したがって、初級中級層において、単に憧れの意識
だけで、「大三元」を志向する事は、コスパ効率的に
好ましく無いし、趣味撮影の範疇では、その利点を
活かす事も難しい。だから基本的には本ブログでは
初級中級層においては大三元は非推奨だ。
(匠の写真用語辞典第9回記事参照)

しかし、近代において、カメラ・レンズ市場が縮退
してしまっている現状においては、レンズ消費者層に
向けては、大三元のような高付加価値(=高利益率)
の商品を販売していかないと、メーカーや流通市場は
ビジネスの継続が難しい。だから、初級中級層に
本来のスキルや用途的には不要なまでの高額商品を
買って貰う事で、業界は潤う訳だから、それを否定
する気はまるで無い。私自身は、その業界とは全く
関係は無いが、市場が縮退すると、製品の価格が皆
高価になりすぎてしまい、欲しい機材も買えなく
なってしまうので、業界には潤って貰いたい訳だ。

で、まあ、具体的には、初級中級層の皆が最新型の
手ブレ補正や超音波モーターで武装した高付加価値
(だが、高額な)レンズを志向してくれるのであれば
本レンズAiAF80-200のような古い時代のレンズが
不人気となり、8000円という格安相場で買えるように
なる訳であり、とても喜ばしい訳だ。
(注:一般的な中古相場は1万円台半ばくらい。
本レンズは、レンズ内ゴミありのB級品だ)
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さて、実際の本AiAF80-200の性能はどうだろうか?

まず手にして思うのは、大きく(フィルター径φ77mm)
非常に重い(実測、約1292g)である事だ。
これで高価ならば、私が嫌う「三重苦」レンズとなるが
幸いにして価格は安価なので、ぎりぎりでセーフだ(?)

母艦は、2007年発売と古いが、発売当時ではAF性能
に優れていたD300を使ってみよう。この機体でAFが
実用性能以下であれば、本レンズは絞り環を備えて
いるので、任意のミラーレス機でMFで使えば、その
弱点は相殺できる。(これは「弱点相殺型システム」
の典型例であり、マニア層では必修の概念だ)

実際のAF性能だが、中遠距離撮影でAF駆動(相対)
距離が短い場合は、AF速度的には及第点である。
しかし、無限遠から近接撮影迄を行き来する撮影では
AFが遅くてかったるい。FULLモードにしておけば、
最短撮影距離1.8mを下回り、およそ1.5mまで近接
可能となるが、近接域ではAFがガタピシと言って
ピント精度が恐ろしく悪くなる。

近接時の課題を防ぐには、AF距離制限SWをFULLでは
無く3m~∞、5m~∞のいずれかにしておけば良いが
近接域まで行ける自由度が無くなるのと引き換えだ。

近距離と遠距離を行ったり来たりする撮影条件では
こういう場合の回避方法として、次に撮るだろう
撮影距離の近辺に、あらかじめMFでピントを合わせて
おく上級技法がある。
しかしながら、本レンズは後年のNIKKORのように
M/A(シームレス)位置を持たず、MFかAFの二者択一
であるので、AFモードのままでは、ピントリングが
回転せず(空廻りする)、この技法が使えない。
(→AF時ではワンハンド方式にはならない)

だが、この幅広のピントリングと、ワンハンド方式
は魅力的である、1980年頃の各社MF望遠ズームでは
この非常に便利な方式の製品が多かったが、1980年代
後半にAF時代に入ると、何故かこの構造は廃れて
しまったのだ。

本レンズの発売年は1988年、恐らくだが、当時の
旗艦NIKON F4(1988年、銀塩一眼第15回記事参照)
での利用が前提なのであろう。


当該記事でも書いたが、F4のAF性能はたいした事が
無い、しかし、MFで使うと銀塩最強の機体となる。
つまり、設計側としても、F4のAF性能があてに
ならない事はわかっていて、本レンズもMFで使う
事を前提に、1980年代前半でのMF望遠ズームの
構造を採用したのであろう。なかなか賢い選択だ。
当時のNIKONは「写真を撮るという行為」を良く
わかってカメラやレンズを設計していたと思われる。
(注:近年の各社の製品の仕様は「写真を撮る事を
わかって設計しているのか?」と強い不満を持つ事が
極めて多い。まあ、近年のデジタル技術者等が写真
撮影技法等に深い造詣を持っているとは思い難いので、
残念ではあるが、やむを得ない状況であろう)

しかし、F4と本AiAF80-200との組み合わせでは、
総重量は(機種や電源仕様によりけりだが)およそ
2.5kg~2.9kgと、重量級システムとなってしまう。
撮影者のスキルや体力にも依存するが、この重量では
長時間の手持ち撮影は厳しいと思う。(持論では、
私の場合でのシステム限界重量は2.3kg前後だ)
(なので、1996年のNew D型からは三脚座が付いた)

銀塩時代には「重量級レンズには重量級カメラを
あてがうと良い」とか言われていたが、それに伴う
「慣性質量うんぬん・・」の話は、どこから、どこに
向かう力の話をしているのか?が一切不明であり、
物理学的な根拠に非常に乏しい話だ。
恐らくは、重いカメラや重いレンズ(いずれも高価だ)
を売りたいが為に(市場振興の為に)意図的に流された
流言(デマ)の類であった、と推測している。

それを言うならば、むしろ重量バランスが重要であり、
MFシステムの場合は、全体の重心をホールドした際に、
ピントリングや絞り環の操作時に、「持ち替え」が
発生する組み合わせは、疲労を誘発して苦しいのだ。

余談だが、現代の入門層等が、非常に重いシステムを
志向して欲しがるケースがある。
そんな話を聞くと「重たいので、やめておくのが良い」
とアドバイスするのだが・・
「2kgとか3kgとかなら、なんとかなるでしょう」
と言って、そういう機材をそのまま購入してしまうが、
結局重すぎて、外に持ち出すのが面倒で嫌になり、
死蔵してしまうか、売却してしまうか、二者択一だ。

まあそれは「経験則を持たないから、わからない」
という事なのであろう。普通の「モノ」を持ち上げる
ならば、2kgや3kgは成人男性とかであれば簡単だ。
だが、写真撮影は、その機材を持って、1日中
それをあちらこちらと振り回して使わないとならない。

(注:「三脚を使えば大丈夫」とかは言うなかれ、
三脚自体も重いので、ますます機動力が低下して
しまい、無理に持ち出したとしても、殆ど一箇所の
撮影地点から動けず、またレンズの向きも容易には
変えられずに、結局何も撮れずに、丸1日を無為に
過ごしてしまう羽目になる。・・そういう状態は
私も実際に沢山見て来た事実だ)

まあ、ちょっとしたボウリングのボール位の重さ
(およそ2.7kg~7.2kg)があるものを、1日中
振り回すのだから、そんな事は容易では無い事は
事前に想像できてもおかしく無い訳だ。

さて、本題に戻るが、重量とAF速度に課題がある
本AiAF80-200を快適に使う手段として、これを
ミラーレス機に装着し、MFに特化してしまうという
解決方法を思いついた。絞り環が存在する時代の
レンズである為、マウントアダプター利用で
何も問題は無い。以下がその例である
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カメラは、PANASONIC DMC-G6(μ4/3機)

こちらは、私が「望遠母艦」と呼んでいる機体だ、
オールドレンズ、特にMF望遠ズームとの組み合わせ
において無類の使い易さを誇る。

ちなみに、これ以降の時代のDMC(DC)-Gシリーズでは、
MFレンズ使用時の操作性/操作系が悪化してしまって
いるので、この機体(DMC-G6)が最良の選択だ。

このシステムだと、NIKON D300との組み合わせの
場合での装備総重量、実測約2,254gに対して、
DMC-G6での装備総重量は実測約1,800gとなり、
約450g減、約20%の軽量化が実現できる。
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_c0032138_16550455.jpg
μ4/3機なので換算160~400mm/F2.8ズームとなり、
各種デジタル拡大機能を容易に呼び出せるので
常用で160~800mm/F2.8ズーム、いざとなれば
手持ち限界の1600mmあたりまでF2.8で使える。
撮影倍率も1/4倍以上(さらに拡大可)と高く、
フィールド(屋外)における野鳥撮影や自然観察
用途に適したスペックに化ける事となった。

重心バランスにおけるピントリング位置も及第点、
ワンハンドズーム方式である為に、重心変動も
ほぼ皆無であり、ピントリングのトルク感も良好、
回転角も適正であり、ピーキングも良く出るので
MF操作がなかなか快適だ。

(注:本レンズは、ズーミングによる合焦距離の
変化がある模様で、80mm広角端に近づいて行くと、
若干だがオーバーインフ状態となる。AFなら良いが
MFでのオーバーインフは撮影技法上望ましく無い。
だが、実際、その状態はあまり顕著では無いので、
”実用上での問題点にはならない”という評価だ)

ただし、重心位置をホールドすると、残念ながら
絞り環の操作が苦しい、カメラの持ち替えが発生
すると同時に、重量バランスが大きく崩れるからだ。

ただ、幸いにして、本レンズAiAF80-200の
絞り開放での描写性能は、さほど悪く無い。
この手の仕様の望遠ズームでは、解像感を高めよう
とするが余り、ボケ質破綻が頻発するケースが多く、
その点が気に入らずに、これまでF2.8望遠ズームを
積極的に導入しない理由としていたのだが・・
まあ、本レンズも同様だが、破綻の頻度はさほど
多くは無い模様だ。

で、そうであれば、絞り環の操作は殆ど不要であり
大半の撮影をF2.8の開放のままで行えば良い。
絞りを操作するのは、作画表現上で被写界深度を
深めたい場合、晴天明所で最高シャッター速度が
オーバーする際、そしてボケ質破綻の回避を行う際、
の3パターンであるから、あまりその操作頻度を
高めなくても、ギリギリでなんとか行ける。
(追記:後日、重心位置をホールドしながら、
「絞り環を左手小指で操作する」技法を開発した。
やや難しいが、これに習熟すれば課題は解消する)
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で、結局これらから、本レンズはミラーレス機で
MFで使うのが、まあまあ快適である事がわかった。
これもまた「用途開発」であるし、広義での
「弱点相殺型システム」でもある。

勿論、現代のF2.8級望遠ズームと比べて、描写力等
は劣るだろうが、もとより業務撮影に使えるレンズ
では無いので、趣味撮影においては、この描写力で
十分であり、なんと言ってもコスパが最強だ。
この値段(8000円)で、色々と遊べれば、十分では
なかろうか。
まあ、とても重たい事が最大の欠点だが・・

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では、今回の第80回記事は、このあたり迄で・・
次回記事に続く。

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