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レンズ・マニアックス(78)補足編~高マニアック度B級編(5)

今回記事は補足編として「高マニアック度B級編(5)」
とする。
「B級」とは、「一級品では無いが、それなりの良さが
あるもの」という意味である。ここでの「B級」とは、
レンズ本体に対してではなく「マニアック度合い」に
関しての話だ。
今回の第5回記事でも「それなりにマニアックな」
レンズ(内1つは特殊カメラ)を9本取り上げる。

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まず、今回最初のB級マニアックレンズ。
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レンズは、CANON (New) FD 200mm/f2.8(IF 後期型)
(中古購入価格 30,000円)(以下、NFD200/2.8)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)

1982年頃の発売と思われる、MF単焦点望遠レンズ。
この時代(New FD)のCANON製レンズは、MF単焦点
でのラインナップは、性能的にほぼ完成の域に近づいて

いるものが多いと思う。
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この後の時代では、AF化、およびズーム化により、
(MF)単焦点レンズの改良研究の優先度は低くなるか、
又は、ディスコン(生産完了)になってしまっている。

ただし、本レンズのクラス(200mm/F2.8)は
小改良が、本レンズ以前も、以降も続いている。
具体的には・・

1960年代 FLレンズの時代は200mmはF3.5が最大口径
1975年 FD 200/2.8 S.S.C
1979年 New FD 200/2.8 (前期型 テレフォト構成)
1982年 New FD 200/2.8 (光学系変更、本レンズ)
1991年 EF 200/2.8L USM (現在未所有)
1996年 EF 200/2.8LⅡ USM

となっている。
 
この後は、200mmは、普及ズーム、および高性能ズーム
の焦点域に含まれる事となり、各社とも、特殊な仕様
のもの(マクロや大口径)を除き、単焦点200mmは、
殆ど見なく(発売されなく)なってしまった。

ただ、個人的には、これらの単焦点200mm(F2.8級)
が販売されていた時代においては、高性能200mm級

望遠ズーム(例:80-200/2.8)よりも、単焦点版の
方が小型軽量で、かつ描写力にも優れていたと思う。

そして1990年代末頃には、市場のニーズが高性能な
70-200/2.8級の望遠ズームにシフトしていた為、
これらの200/2.8単焦点は人気が無く、中古相場の
下落が大きかった事は、個人的にはコスパの面からは
大きなメリットを感じていた。

現代においても、「大三元望遠ズームに含まれる
スペックだから(200/2.8は)不要だよ」と、初級中級
層は思うかも知れないが、機会があれば、一度この
クラスのレンズを安価に入手し、使ってみたら良いと思う。
思いの他の、ハイ・パフォーマンスや、高コスパには
ちょっとした驚きがあるかも知れない。

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では、次のシステム
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レンズは、7artisans(七工匠) 55mm/f1.4
(新品購入価格 16,000円)(以下、七工匠55/1.4)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

2018年頃発売の中国製ミラーレス機(APS-C機以下)
専用、MF大口径標準(中望遠画角)レンズ。
本レンズはμ4/3マウント版であるが、簡単な
マウントアダプターで、Eマウント機(APS-C以下)と
共用する事ができる。

他のミラーレスマウントに迄は変換はできないが、
本レンズは非常に優秀なレンズである為、FUJIFILM X
マウント品も別途購入している。
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何故、複数の同型レンズを買うか? と言えば、
ものすごくコスパが良いレンズのみならず、実用性が
高いからだ。
私は、数百本の所有レンズ中、数組(5~6組)で
同型レンズを異マウントで所有しているが、いずれも
同様な理由(利用価値が高い)からだ。

まず、本レンズ七工匠55/1.4の高コスパの理由だが、
これは銀塩時代(1970年代~1980年代)での、
プラナー系85mm/F1.4レンズの2/3スケールダウン
設計の「ジェネリック・レンズ」である事だ。

銀塩MFプラナー系85/1.4は、写りがキマった時は
爆発的な高描写力を発揮できるが、そうなる確率
(歩留まり)は、かなり低い。
何故ならば、「MFでのピント精度」「焦点移動」
「ボケ質破綻」の三大課題を持ち、これの回避が
銀塩MF一眼レフシステムでは非常に困難または不可能
であったからであり、結局、偶然でないとプラナー系
85/1.4で、気にいった写真は撮れなかった訳だ。

ところが、この構成や特性をほぼそのままミニュチュア
化した本七工匠55/1.4では、ミラーレス機用レンズと
した事で、「MFアシスト機能によるピント精度の向上」
「絞り込み測光で焦点移動が発生しない」「高精細EVFで
ある程度、ボケ質破綻の事前回避が可能」となって、
銀塩用プラナー系85/1.4の弱点が、見事に、ことごとく
解消されている。

おまけに価格は銀塩用プラナー85/1.4の発売時の
定価の1/6程度だ。その間の物価上昇を考慮すると
当時と比較して1割以下の価値感覚で買える事となる。
・・これはもう、買うしか無いではないか。

他にも新鋭・激安の中国製レンズは色々とあれど、
少なくとも本七工匠55/1.4は、ホンモノである。
購入を躊躇する理由は何も無い。
(追記:2021年に後継のⅡ型が発売されている。
近接撮影能力が失われてしまった為、現状未購入だ)

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さて、3本目のシステム
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レンズは、SIGMA 40mm/f1.4 DG HSM | Art
(新古品購入価格 100,000円)(以下、A40/1.4)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)

2018年発売の高描写力AF単焦点大口径準標準レンズ。

あまりに本格派すぎて、使用を躊躇ってしまう、
という類のレンズである。

まあ、焦点距離から言って「標準レンズ」に
カテゴライズされるとは思うのだが、その重量は
1200g越え(注:発売マウント毎によりけりだが、
これは最軽量値)であり、フィルター径はφ82mm、
おまけに定価は16万円(税別)である。

すべての点で、いままでの標準レンズの常識を
超えたモンスター級レンズだ。
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「大きく重く高価」という典型的な三重苦レンズで
ある事を考えると、屋外(フィールド)撮影には
全く向いていない。
一般的な使用シーンは、職業写真家層等において
屋内でのスタジオ等、または室内イベントにおける
三脚または手持ち併用の高精細な動画および静止画
撮影用途であろう。

この場合、室内イベントでもパブリック(一般公開)
のケースには、やや適さない。理由は40mmの画角
では、ステージ等へやや近接して撮影する必要があり、
多くの場合、観客・観衆等の邪魔になるからだ。
よって、プライベート・イベントに近いものとか、
あるいは公開舞台等では、リハーサル/ゲネプロ時の
撮影に限る事となるだろう。

ただ、こうした、あまりに「職業的な」用途は、
あまり「楽しい」撮影でも無い事であろう。
このレンズの持つ高描写力を、一般的な「趣味撮影」
でも使えるようにしたい、と、私はそう考えていて、
「用途開発」(どんな被写体用途・状況に最適か?を
考えて・試して、それを探す事)をずっと試みて
いるのだが・・ 購入後数年になるが、正直言って
まだそれは見つかっていない(汗) 何故ならば、
そもそもハンドリングが悪すぎて、屋外趣味撮影等
には、あまり持ち出したく無いレンズだからだ。

・・まあ、たとえば屋外人物撮影等の用途は
考えられるかも知れないが、同じSIGMA ART LINE
であれは、Art 85mm/F1.4とかの方が人物撮影での
汎用性は高いかも知れず、そして、1本あたりで
1kgを超えるART LINEレンズを何本も持ち歩くのは
ハンドリング的に、殆ど不可能だ。
さらに言えば、近年のコロナ禍ではソーシャル・
ディスタンスの概念が定着していて、40mmとか
のレンズで、あまり近接した人物撮影はやり難いし、
そもそも、イベントそのものが激減しているので、
人物撮影を行う機会も少ない。

なんとも困ったレンズである。
まあ、「使い道が無い」と切り捨てて(処分して)
しまう事は簡単かも知れないが、せっかくの超高描写力
レンズだ。(個人評価DB:描写表現力5点満点)
色々と有益に使いたいのだが、それが難しいという
点が非常にストレスになるレンズだ。

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では、4本目のB級マニアックレンズ
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レンズは、Neewer 85mm/f1.8
(中古購入価格 6,000円)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

詳細不明、2010年代中頃から後半頃に発売と思われる
中国(香港)製、MF単焦点中望遠レンズ。

その後、2010年代後半ごろから国内市場に参入して
いる「Meike(メイケ)」と、同一メーカーであると
いう説が巷では一般的なのだが、私の感覚では
「Meike」は高品質で、ちゃんと実用的に使えるレンズ
が多いが、本Neewer85/1.8に関しては、品質が劣悪
で、およそ実用的で無い点で、両者が同一メーカー
という説を疑わざるを得なくなっている。
(注:あるいは、近代の、深センや香港地区での
レンズ製造は、一種の「複合体」のような形態であり
メーカーやブランド銘には、大きな意味が無いのかも
知れない。その事を確かめに、一度現地に行きたかった
のだが、コロナ禍により渡航が困難になってしまった)
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本レンズの低品質のあれこれを語ってもあまり意味は
無いと思う。オーナーにとっては、がっかりする話で
あろうし、個人的にも「レンズの弱点を回避しながら
使うのは利用者の責務」とも考えているからだ。

しかし、本レンズで、正直「懲りて」しまったので、
その後のNeewerレンズの購入は意図的に避けており、
また、Meikeも「もしかして、たまにハズレがあるかも」
という理由で、購入は慎重かつ控えめにしている。

まあ、本レンズは、レンズの弱点に色々と文句を
つける事が無い「上級マニア」向けという事にしておく。

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さて、次は特殊カメラである
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YASHICA EZ Digital F537 IR
(新品購入価格 7,000円)(以下YASHICA IR)

2010年発売の近赤外線投射型単焦点(パンフォーカス)
特殊トイ・デジタルカメラ。

監視カメラでは「デイナイト」構造(昼間は可視光、
夜間では近赤外線カメラとなる)は、普通であるが、
その構造をコンパクト・デジカメに応用した例は
本カメラが唯一であると思う。
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1990年代には、SONYがビデオカメラの一部に
「ナイトショット・モード」という同様な近赤外線
撮影機能(注:近赤外線を投射しない製品も多い)
を搭載した製品を販売していたのだが・・
「水着が透けて写る」というデマが流れて、これら
の中古製品を高価で売買するなどで市場が混乱して
しまった為、これらは生産中止となってしまった。

ただまあ・・
赤外線には様々な種類があり、それを駆使したと
しても、水着が透けたり、健康に良い、とかの嬉しい
効能は得られない。つまり完全なる俗説やデマの類で
あるのだが、市場では、その分野の技術知識を持つ
人達は皆無である為、そういう事になってしまった
訳であろう。

注意しなければならない事は、デマは単なる愉快犯
だけではなく、そういう風な流言を流す事で、
「所有品を高価に転売する」等の、商売にしようと
する人達が出てくる事である。賢い消費者であれば、
そんなデマに踊らされて無駄な出費をしてしまう事は
無いとは思うが、まあ、そうやって儲けようとする輩も
悪いし、無知により、それらを高価に買ってしまう
方にも責任の一端はあるだろう。

どうしても、そうした実験がしたいならば、近年では
安価な近赤外線監視カメラ等で同じ事は出来るし、
熱(中)赤外線カメラ(サーモグラフ)も、近年では
一般に手の届く価格帯で(数万円程度から)ある。
(特に、コロナ禍での体温判定で普及が加速した)
遠赤外線(テラヘルツ、サブミリ波)は、まだ一般
用途では浸透していないが、空港等のセキュリティ検査
では既に実用化されていると聞く(例:ペットボトル
の中の液体がガソリンか水かを分別できる)

さて、本カメラは希少な近赤外線投射型カメラだ。
(注:近赤外線は一種の光である為、夜間等では
それを発する被写体は殆ど無く、何も写らない。
暗所では、あくまでカメラ自身から近赤外線を発し、
それを反射した被写体しか写らない訳だ)

だが、小型赤外線LED 6個での光量は小さく、これは
完全暗所では、数m程度しか届かない。
おまけにセンサー感度は、近赤外線領域では極めて
低く、可視光換算概算でISO100以下でしか無い。
初級者では、間違いなく手ブレしてしまう状況だ。

よって、IR(赤外線)カットフィルターを外せる
事を利点とした、日中遠距離での可視光+近赤外線の
MIX撮影(注:モノクロ撮影となる)が主流な使い方
ではあるが、本格的な(近)赤外線撮影とは言えない
状態なので、あまり本カメラの利用価値は無いかも
知れない。もし、本格的な近赤外線撮影を試して
みたいならば、超高感度一眼レフを使うのが適正だ。
(参考:匠の写真用語辞典第24回 近赤外線撮影、
 同第38回、近赤外線マクロ撮影)

ちなみに、本カメラにはYASHICA銘が入っているが・・
YASHICAは、国内老舗カメラ・レンズメーカーであるが、
1975年に、西独カールツァイス社からCONTAXのブランド
を購入した時点で、経営破綻してしまう。
その後、京セラの完全子会社となってカメラ・レンズ
事業を継続していたが、30年後、2005年の京セラ
CONTAXのカメラ事業撤退に伴いYASHICAブランドは
宙に浮いてしまい、その後、海外の商社等で、その
使用権が転々としている状況だ。2010年頃の本カメラ
や2018年頃のヴィレッジバンガード製のトイカメラ
(未所有)で、YASHICA銘が使われた事があるのだが
実質的には「流浪のブランド」となってしまっている。

「ヤシカと言う名前は聞いた事があるので買って
 みたが、とんでもないオモチャのカメラだった」
という初級レビュー等もいくつも見た事があるが、
それはまあ、トイカメラを買ったのだから、玩具で
ある事は、当たり前の話であろう。
カメラは、その仕様やコスパや用途を考えて買う
べきであり、「ブランド銘だけを聞いて買う」という
購買論理は有り得ないと思う。

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さて、6本目のシステム
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レンズは、NIKON AF-S NIKKOR 58mm/f1.4 G
(中古購入価格 110,000円)(以下、AF-S58/1.4)
カメラは、NIKON Df(フルサイズ機)

2013年発売の高付加価値仕様大口径AF標準レンズ。
初の「3D(三次元的)ハイファイ」レンズである。

「三次元的ハイファイ」とは、そうした特殊な部品や
ソフトウェアが搭載されている新技術では無く、
「設計コンセプト(思想)」の一環である。

ここは技術の内容に造詣が浅いユーザー層では理解が
困難な為、「新しい三次元的ハイファイという
技術ができたから、どんなに良く写るのだろうか?」
と期待して本レンズを買うユーザー層では、ほぼ100%
「肩透かし」を喰らってしまう事であろう。

「三次元的ハイファイ」は、ボケの遷移を良好に
する設計コンプトだ。よって、ピント面からボケ面に
段階的に移行する立体的被写体を、そのような状況が
得られるような条件で撮影し、かつ、その遷移が良好
である事が写真表現的に意味がある状況を作り出さない
限り、全く効能の無い設計思想である。
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この設計思想を実現するには、コマ収差、球面収差、
像面湾曲等の諸収差をバランス良く補正していかなければ
ならず、一般的なHi-Fiレンズに要求される
「開放からシャープ」などの特性はむしろ控えめな
状態になる。(=どれかを優先すれば、他の何かは
犠牲になる、というトレードオフ関係)

(注:本レンズの話に限らず、「開放からシャープ」
といった、あまりに、ありきたりな表現の評価が見られた
場合では、そうしたレビュー記事等の内容は、個人的には
参考にしないようにしている)


よって、本レンズを買って、平面的な風景などの
被写体を撮ったら「あれ? なんだか解像感が低いよ」
などという状態となってしまい、高価なレンズで
あるのに上手く使いこなせないから、初級中級マニア
層などでは「このレンズは、クセ玉である」という
評価が蔓延している。

ちなみに「クセ玉(癖のあるレンズ)」のマニア用語
の定義ははっきりしていないが、普通に解釈すれば
「弱点を持つレンズ。その詳細ははっきりしておらず
 上手く使えば弱点が消えるかも知れないが、難しくて
 良くわからん・・」という場合に「クセ玉だ」と
レンズの責任として呼ばれるケースが多い模様である。

これ以上の説明は冗長になるので、本シリーズ第63回
「三次元的ハイファイ」特集記事等を参照されたし。

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では、7本目のシステム
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レンズは、Телеар-Н 200mm/f3.5
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)

旧ソビエト連邦製、詳細不明なレンズ。
キリル文字を英字アルファベットに直すと「TELEAR-N」
となる。
「TELE」の部分は望遠レンズという意味で、最後のNは
ニコン風マウントの意味だが、実はKIEV(キエフ)-19
等向けの独自マウントである。

そういったロシアンレンズなので、例によってニコン風の
Fマウントだからといって、直接、近代のニコン製一眼レフ
に装着するのは危険である。

レンズが嵌らない、外れない、装着したらエラーとなる、
撮影したらミラー等が壊れる、などの深刻な危険性が伴う。
原因は、当時のロシア製レンズは、いくつかの国営工場で
分散されて製造されていたと推察でき、それらの工場毎で
微妙に製造規格や製造精度等が異なっていたからだろう。

(かつてはマニア層の間で「ロシアン・ルーレット」とも
呼ばれた。買ってみるまでわからない、とか、いつ暴発
するかわからない、というものであり、言い得て妙だ。
ちなみに、誰か別のマニアが試して「使えた」という
情報があっても安心できない。状況は個体毎に様々で
あったりするからだ。問題が発生した際に、「自己責任」
として、笑ってやりすごせるくらいのマニア層でないと、
実質的には使う事ができなかったのがロシアンレンズだ)

この課題の回避の為には、この時代のロシアンの場合は、
必ずマウントアダプターを介して、近代のミラーレス機で
用いるのが安全である。

なお、近代(2010年代後半以降)の、Lomograhpy製
(実はロシア製)の、Petzvalシリーズレンズ等では、
NIKON Fマウント版は、比較的安全にNIKON製一眼レフに
装着可能となっている。(それでも、製造精度の個体差は
あるかもしれず、慎重な対応が必要だ)
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さて、本レンズだが、残念ながら経年劣化で絞りが
粘ってしまっているので、現状、絞り開放でしか撮影
する事ができない。

しかし、ロシア製の望遠レンズは、比較的高性能なものが
多いのも特徴だ、その理由は良くわからないが推測すれば
第二次大戦後のツァイスの東西分離などで、一部の
ツァイスの技術や設備がロシアを含む東側陣営に流れ、
JUIPTER(ジュピター/ユピテル)等の、ツァイスレンズ
コピー品が戦後のロシアで良く製造されていたが・・
それらは、元々がレンジファインダー機用だった事も
あって、レンジ機では構造的に望遠撮影が苦手な故に、
概ね中望遠レンズまでしか、ツァイスコピー品は無い。
それ以上の望遠レンズ(200mm級、あるいはそれ以上の
望遠では、ミラーレンズ(500~1000mm級)もあった)
においては、恐らくだが、軍事用途も意図しての旧ソ連
独自開発品も多かったのではなかろうか?
国土が広大なロシアでは、あらゆる軍事または一般用途
でも望遠レンズは必須だからだ。

それと、200mm/F3.5級は、5~6枚のシンプルな
レンズ群からなるテレフォト構成等で、比較的高性能な
レンズを設計する事が可能だ。この為、国内メーカーに
おいても、(200mm/F2.8が出てくる前の)1970年代
頃の200mm/F3.5級レンズには大変良く写るものが多い。
(本ブログでも、MINOLTAやKONICAでの同スペックの
レンズを紹介している)
ただ、より一般的な200mm/F4級単焦点望遠に比べ、
僅かに半段明るいだけの200mm/F3.5級レンズは、
その大きさや重量が、200mm/F4級よりも遥かに大きく
重くなってしまう事が、ハンドリング性能的な弱点だ。

本レンズも大きく重い、そういう理由であまり出動機会
が多く無かった為、結局、油分が固化したりして、絞りが
粘って故障してしまった訳である。
ずっと使い続けていれば、こういう故障は起こらなかった
かも知れず、まあ、あくまで自分自身の責任なのだが
ちょっと惜しい話だ。
まあ、こうやって、ごく稀に使ってあげる事にしよう。
運が良ければ、絞りを廻しているうちに復活するケース
も無きにしもあらずだ(そうやって、復活したレンズも
何本かだが、実際にある)

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さて、8本目のシステム
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レンズは、CANON EF-S 18-55mm/f3.5-5.6 USM
(中古購入価格 2,000円)(以下、EF-S18-55)
カメラは、CANON EOS 8000D(APS-C機)

2003年に発売された、APS-C機専用AF標準ズーム。

初代EOS Kiss Digital(2003年)のキットレンズと
しての発売である。
(注:レンズ単体での発売は2004年となった)

なんの変哲も無い標準ズームだ、しかしこうして
「B級マニアック編」に取り上げているのは、本レンズが
初のEF-S型レンズであり、かつ、デジタル一眼レフを
一般層に普及するきっかけとなった初代Kiss Digitalの
標準キットズームであったが故での歴史的価値の高さだ。
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Kiss Digital発売前夜、2000年代初頭では既に
デジタル一眼レフは世の中には存在はしたが、どれも
概ね業務用途機であり、非常に高価であった。
かろうじてアマチュア層でも買えた機種は、
CANON EOS D30(2000年、デジタル一眼レフ
クラッシックス第23回記事で紹介、約35万円)や
NIKON D100(2001年、約30万円、未所有)
SIGMA SD9(2002年、約20万円、未所有)
あたりに留まる。

そんな状況において、CANONからの一般向けの低価格
(約12万円)なデジタル一眼レフ(EOS Kiss Digital)
の新発売は、センセーショナルなニュースとなった。

これを脅威とみたNIKONでは、翌年(2004年)発売
予定のNIKON D70(デジタル一眼レフ第4回記事)
の発表を前倒しとして、その高性能を事前アピール、
さらには、D70は中級機ながらも上級機を超える超絶
性能(最高シャッター速度1/8000秒、シンクロ速度
1/500秒。連写可能枚数49枚。ただし事前プレス発表
時には、連写は144枚ないし無限、と”盛った”スペック
を謳っていた。しかしこの点は、デジタルに無知な当時
の記者達による、誤解の報道であった可能性も高い。
例:144枚というのは、中画素で撮影時に256MBの
CFカードに最大に記録できる画像枚数の事であった)
・・を搭載して、おまけに価格も、Kiss Digitalを強く
意識して、15万円に留めていた。
まあつまり、2003年から2004年にかけ、デジタル一眼
レフ普及の為の「前哨戦」が行われた訳である。

この状態で、本EF-S15-55キットレンズの役割は
極めて重要である。もしこのレンズの写りに手を抜いて
しまうと、何も本質がわかっていないエントリー(入門)
ユーザー層は、「やはりCANONよりNIKONのデジイチの
方が良く写るよ」などという単純な評価を下してしまう。

だから、本EF-S18-55(初代)は、性能を一切妥協せず
下手をすればコスト度外視(赤字覚悟)で、CANON製
デジタル一眼レフの一般販売戦略を軌道に乗せる為に
投入された、重責を担ったレンズとなった。

まあでも、それは今から20年近くも前の話である。
現代においては、本レンズの後継型も多数出ており
最初期の本レンズは、二束三文の中古相場である。
おまけに誰からも注目もされず、中古店のジャンク
コーナーなどにひっそりと置かれているケースもある。

ある意味、不遇なレンズなのかも知れないが、それでも
その後の時代、CANON製デジタル一眼レフは市場において
磐石な地位を築けた歴史がある訳だから、目立たない
ながらも本レンズの果たした功績はとても大きいと思う。

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では、今回ラストのB級マニアックシステム
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レンズは、MINOLTA AF 35mm/f1.4(G)
(中古購入価格 75,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ(APS-C機)

1990年代に発売と思われるMINOLTA α用AF大口径レンズ

あまり記事に登場しないレンズである。その理由だが
コスパが悪く、個人的には好みでは無いレンズだからだ。

まず高価である。MINOLTA時代での定価は記憶によれば
15万円程だ(本レンズは「半額で」と値切って購入した)

その後(KONICA)MINOLTAがカメラ事業から(2006年に)
撤退すると、一時期本レンズは投機対象となって高騰
したのだが、追ってSONYより同レンズが再生産される
ようになると(SAL35F14G)、その相場高騰も収まった。
(推測だが、αのSONYへの移管時、本レンズのみ
すぐに再発売ができなかったのは、非球面レンズの製造
体制の移管が上手くいってなかったのではなかろうか?
そして、SONY版では、定価も18,8000円(+税)へと
25%も値上げされてしまっている)
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ただまあ、高価なレンズであり、MINOLTA時代、
SONY時代を通じて、本レンズを購入した中級マニア層

あたりからは「がっかりする性能」などという厳しい
評価を良く聞く事となる。

まあ、それもその筈、設計が古いのだ。
確か本レンズには前期型が存在していて、それは多分
1980年代後半頃の設計・製造である、そこからレンズ
構成を変えずに本レンズ(あるいはNew型を挟んだか?
詳細は今となっては不明)となった訳だから、SONY
への移管時で既に設計後20年の準オールドレンズで、
現代に至っては、設計後35年以上の完全なるオールド
レンズである。一応、非球面を1枚搭載してはいるが
それが高描写力に繋がる程に、光学設計や製造技術が
練れていた時代では無い。

近代的な、コンピューター設計+非球面や異常低分散
ガラスを贅沢に使い、手ブレ補正や超音波モーターで
武装している最新35mm/F1.4(F1.8)級レンズには
敵(かな)うはずも無い、という事である。

ただまあ、全然ダメダメなレンズという訳では無い。
古い設計である事を理解した上で、本レンズの描写力
が良く発揮されるような使い方をしてあげれば良い。

そういう技法面のみならず、「用途開発」では重要な
事例がある。
2004年、KONICA MINOLTA α-7 DIGITAL(デジタル
一眼レフ第3回記事参照)が発売された時代の話だが、

当該α-7 DIGITALは、史上初の手ブレ補正内蔵一眼
レフであり、他機に比べて実用的な高感度ISO3200
も搭載されていた。

他社では、銀塩末期の1990年代末頃から手ブレ補正
内蔵レンズが発売されてはいたが、どれも高価であり、
かつ、それらの最大口径もF2.8止まりであった。
MINOLTA αレンズには、35mm、50mm、85mmの
3本で、開放F1.4の大口径レンズが存在していた。

内、最も広角な35mm/F1.4(本レンズ)を、初の
手ブレ補正内蔵機α-7 DIGITALに装着すると、
その当時の機材環境全般において、「最も手ブレ
耐性の高いシステム」が組みあがった次第である。

このシステムを初期の本ブログ(2005年頃)では、
「夜間戦闘機」と呼んでいて、夜景イベント撮影等
では、もっぱら、このシステムが有効である旨を
紹介していた。

この話は、まあすなわち、レンズの絶対的な性能が
(新鋭レンズに比べて)多少低かったとしても、
その時代、時代に応じて、色々と広い視点での
使い道は存在する、という事を示している。
現代では、もうその「夜間戦闘機」の用法は無効
であるが(=超高感度搭載のカメラや、より高性能
な手ブレ補正機能に進化しているから)まあ、それでも
時代に応じて、適正な用法を「用途開発」する事は
可能であろうと思う、それは本レンズに限らず
どの時代の、どのレンズであっても同じ事だ。

そうした「用法」を開発・開拓をする事をせず、
単にスタティック(静的な、固定的な、条件を固定した)
な被写体を撮影して、描写力が良いだの悪いだのと
言っているようでは、中級マニアの域を超えられない
事となってしまう。スキルアップを目指すならば、
どんな弱点があるレンズであっても、それを有益に
活用する「使い道」を考える事であり、それが「マニア
道」において、非常に重要なポイントとなるだろう。

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さて、今回の補足編「高マニアック度B級編(5)」記事は、
このあたり迄で。次回記事に続く。


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