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最強マクロレンズ選手権(14)決勝戦

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最強のマクロレンズを決定するシリーズ記事。
今回は「決勝戦」となり、最強マクロが決定する。
なお、本記事をもって本シリーズ(マクロ編)は
最終回となる。

この決勝戦に進出できたマクロレンズは以下の
5本だ。(それらを簡略名表記で示す)

*TAMRON SP180mm/F3.5
*COSINA MACRO APO-LANTHAR 110mm/F2.5
*RICOH GXR A50mm/F2.5
*TAMRON SP90mm/F2.8 USD
*SIGMA EX150mm/F2.8

レンズ個別の評価点は記事の最後で付ける。
個人評価DBからの引用の他、特別加点を予定している。
それで最強マクロの最終順位が決まる事となる。

----
では、まずは最初の決勝進出マクロレンズ。
_c0032138_12264286.jpg
レンズ名:TAMRON SP AF 180mm/f3.5 Di LD [IF]
MACRO 1:1 (Model B01)
レンズ購入価格:30,000円(中古)(以下、SP180/3.5)
使用カメラ:SONY α99 (フルサイズ機)

2003年に発売されたAF等倍望遠マクロレンズ。

本シリーズの予選記事では、APS-C機に装着したが
やや換算画角が過剰に長く感じた事もあり、今回は
フルサイズ機に装着して、控え目に使用する。

画質の良いレンズであるから、フルサイズ機装着時の
周辺画質低下(画面周辺収差の発生)は、あまり気に
する必要は無い。
_c0032138_12264217.jpg
本レンズの特徴は、予選記事でも説明しているので
今回は、できるだけ違う視点からの紹介としよう。

「望遠マクロ」を必要とする理由だが、色々とある。
1)WD(ワーキング・ディスタンス)を稼ぐ為
2)望遠圧縮効果を出す為(遠近感を減少させる為)
3)背景の取り込み(撮影)範囲を狭くする為
4)被写界深度を浅くする為

まあ、簡単に言えば、標準マクロや中望遠マクロと
最大撮影倍率(例:等倍)は、同等なのだが、
「望遠マクロであれば、より遠くから撮れる」
という特徴が得られる訳だ。

なお、「そんなもの、中望遠マクロで遠くから撮って
トリミングしたらいいじゃん!?」と思う初級層も
居る事であろう。

だが、上記2)3)4)の遠近感、取り込み範囲、被写界深度、
は中望遠マクロとは全く異なる訳だから、トリミング
編集を用いても、望遠マクロと同じ写りにはならない。

まあ、このあたりは、例えば中級層以上であれば、
「標準レンズで撮った写真をトリミングしても、
 望遠レンズと同じ写りになる訳では無い」という事で
良くわかっているであろう。

本レンズ発売時(2003年頃)に、TAMRON社では、
Web上に特設製品紹介ページがあったのだが(今でも
残っているかも)、そこでのキャッチコピーが・・
”望遠マクロでなければ、撮れないものがある。”
であった。

まあ、まさしくその通りだと思う、望遠マクロを代用
できる他の種別のレンズは殆ど無い。
(無理矢理やった例としては、レンズ・マニアックス
第66回記事「望遠マクロvs近接135mm」編がある)

で、一般的に望遠マクロの用途として、「花壇等に
おいて、近づけない花を撮る」等と、良く言われて
いるのだが・・ それは、ちょっとどうだろう?

まず「望遠マクロ」とは言っても、さほどには遠距離
から撮る事は出来ないのだ。
具体的には例えば、TAMRON製の同時代(2000年代)
の等倍マクロレンズ3機種で比較してみよう。
(焦点距離、Model名、最短撮影距離)

*TAMRON製2000年代等倍マクロの最短撮影距離

60mm:G005:23cm
90mm:272E:29cm
180mm:B01 :47cm

となっている。つまり、中望遠マクロと望遠マクロ
の最短撮影距離の差は、僅か18cmに過ぎない。
また、仕様表にはWDの値は書かれていないが、まあ
それが最も長い、本(望遠)マクロでも25cm程度だ。
_c0032138_12264275.jpg
すなわち、一般に良く言われるような
「花壇で近づけない花を撮る」という状況においては
「それは1~2m離れたところから小さい花を撮れる」
とカン違いしやすいのだが、実際にはそれは困難だ。

良く、植物園等で、撮影距離感覚とかレンズの仕様が
わかっていないシニアのビギナー層等が、花壇等の
外に三脚を立て、なにかしらの望遠レンズを装着
したが、レンズの仕様上で寄れなかったり、または
レンズの性能上で撮影倍率が稼げず、何だかわからない
ままで、結果的に三脚のまま花壇等に入り込んで土壌を
荒らし、(飛んできた)園芸担当係員等に、こっぴどく
注意されているケースを、大変良く見かける。

まあつまり、レンズの性能・仕様を良く理解し、かつ、
どう撮りたいか?が事前に想定できていて、それを元に、
その被写体状況(花壇等)において、その構想が実現
できるか否か? を、あらかじめ撮影前に考えておく
必要がある訳だ。

それができていないから、あるいは何も理解していない
から、花壇等の前で、あたふたと「撮れる?撮れない?」
を試行錯誤する羽目になってしまう。
ましてや三脚使用だ、日中晴天時に必要な機材では無い。
要はレンズや撮影技法に対する知識や経験が、完全に不足
している状態であり、加えて社会的なマナーやルールに
配慮する余裕すら無い。・・まあ、だからビギナーな訳だ。

経験不足への対策だが、望遠やマクロを持って、いきなり
植物園等には行こうとはせず、家の近所等で、徹底的に
練習を重ね、撮影距離感覚やレンズの性能・仕様等を掴んで
からで無いとならないと思う。何もわかっていない状態で、
いきなり、公(パブリック)な場所に出向くのは、まるで
自動車免許の取りたてで混雑した公道を走るようなもので、
経験不足から、周囲への迷惑が甚だしい。

それと、望遠マクロは、大きく重く高価な「三重苦」
レンズである。価格の面と用途の面からして、ビギナー
層が買うようなものでは無いが、まあ、値段については
裕福な人達等であれば買う事も出来るであろう。
その際、「大きく重いから」と言って、三脚を使うのは
推奨できない。ハンドリング性が落ち、速写性や被写体
汎用性が失われ、かつマナー面で周囲へ大迷惑だ。

本シリーズ記事では、どのような難しいマクロレンズ
(例:超高倍率マクロ、超望遠マクロ等)であっても
100%手持ち撮影である。これは本シリーズ記事に限らず
「業務上での花火撮影」といった特殊なケースを除き、
本ブログでは、99.9%が手持ち撮影となっている。
(→手持ち100万枚vs三脚1000枚、といった比率)
_c0032138_12264284.jpg
さて、余談が長くなったが、本SP180/3.5は、
「望遠マクロ」として、かなりのパフォーマンスを誇る
レンズであると思う。
弱点は殆ど無く、「手ブレ」やら「AF速度・精度」やら
の課題は、いくらでも回避の手段がある為、何も問題は
無い(注:まあでも、ピント合わせは結構高難易度だ)
おまけに、中古相場も、さほど高額では無いので
申し分が無い。
個人評価点は4点を超え、「名玉」に値する得点が
得られているし、最終評価における「特別加点」も
期待できる。
本決勝戦での最終順位は、かなりの上位にランクイン
するのではなかろうか・・

---
では、次のマクロレンズ。
_c0032138_12265315.jpg
レンズ名:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
(注:原語綴りにある変母音は省略)
レンズ購入価格:138,000円(新品)(以下、MAP110/2.5)
使用カメラ:SONY α6000 (APS-C機)

2018年発売の、フルサイズ対応MF等倍望遠マクロ。

何度も本ブログでは取り上げているため、もはや
新たに書き加える事も無い感じだ(汗)
_c0032138_12265339.jpg
まあ、新鋭の高付加価値型マクロだけあって、
さすがに描写表現力は高い(個人評価5点満点)


しかし、たいていの、他の近代マクロレンズでも、
【描写表現力】の評価点は、概ね4点以上となって
いて、3.5点とかになると、もうマクロとしては
下位のレベルの(描写)性能と見なされてしまう。
一般レンズの場合では、「4点を超えたら御の字」
の評価となるので、まあつまり、マクロレンズは
全般に描写表現力が高い事が普通な訳だ。

そういう状況では、本レンズの描写表現力5点満点
は、本シリーズ「最強マクロ選手権」における、
大きなアドバンテージだとは言えない、そのクラス
の強豪が他にゴロゴロしているカテゴリーだからだ。

そうなると、本レンズの弱点である「高価な事」
が、コスパ評価点を下げ、総合評価点にも影響が
出てきてしまう。
最後に(特別加点を加えて)集計をしてみないと
わからないが、どうも本MAP110/2.5は、この
決勝戦で優勝できそうにもなさそうだ。


ただまあ、ここで「優勝できたから」と言っても、
誰でも推奨できる名レンズであるか否かは、微妙な
ところであろう。例えば、MF操作が全く出来ない
ビギナー層に本レンズを勧めても意味が無い。
その状態で高価な本レンズを買うのでは、私が
評価する以上に「コスパ」の減点は厳しいであろう。

ちなみに、全レンズで行っている個人評価は、以下の
5項目を各5点満点(0.5点刻み、3点が標準)である。

【描写・表現力】
 レンズの絶対的性能(描写力)のみならず写真表現力の高さ
(例:ボケ表現力、超望遠や超広角・魚眼等の特殊性等)も評価。
【マニアック度】
 レア(希少)度や一般的に注目されていない度。
 また、極めて特殊な他に類を見ない仕様等である事。
 あるいは、使いこなしが極めて難しいが描写力は悪く無い等。
【購入時コスパ】
 総合的なレンズ性能と価格(または中古相場)との比。
 基本的には私の購入時点での価格で評価するが、場合により
 現代における中古相場等を鑑み、若干の加減を行う。
【エンジョイ度】
 撮影していて楽しいかどうか?「奥が深い」レンズかどうか。
 特殊な用途に向くか。テクニカル(技術的)な面で使いこなし
 の楽しみがあるかどうか等。
【必要度】
 個人的な用途において、必携のレンズであるか否か?
 あるいは、そのマウントにおいて、利用者側ラインナップを
 構成する上で、必須のレンズに成り得るか否か。

全所有レンズ(400数十本)において、この評価を行っている。
ただ、これはあくまで私個人の視点であり、本来こういう
評価は、各ユーザーが、自身がレンズに対して求める要素で
行うべきだ。(例:ビギナー層であれば「AF速度・精度」
や「手ブレ補正の性能」等の項目を追加し、それを重要視
しないとならないかも知れない。また、私は好まない志向だが
コレクター層や投機層では「所有満足度」「周囲に自慢できる
度」「将来での値上がり期待度」などどいう評価項目も
有り得るかも知れない。要はユーザー個々にレンズに求める
要素(ニーズ)は異なる、という訳だ)

で、5項目の平均点(総合評価点)が4.00点以上となると、
そのレンズを「名玉」と称するようにしているが、その条件
での「名玉」の数は、全所有レンズ中約30本であり、
これは全体の7%以下程度の割合でしか無い。

(注:旧来は5%以下程度の比率だったのだが、私が言う
「2016年断層」以降、超高描写力のレンズが増えて来たり、
同時代から、中国製等の超格安レンズも流通が活性化し、
それらの「大きな特徴を持つレンズ群」を所有してみると
なかなかの好評価となった為、結果的に所有レンズ中の
「名玉の比率」が2%程度、上乗せされてきている状況だ)
_c0032138_12265321.jpg
ちなみに、本MAP110/2.5は非常に優秀なレンズではあるが、
総合評価3.9点で、僅かに「名玉」の点数に届いていない。
ただし、減点は「コスパ」のみなので、中古購入等で
私の取得価格よりも安価に入手できるのであれば、コスパ
評価の減点が減り、簡単に「名玉」にノミネートされる
状態となるだろう。
ただまあ、前述のように個々の項目の評価点は、ユーザー毎に
異なる訳だから、例えばビギナー層でMFが全然できずにいたら、
本レンズの「エンジョイ度」や「必要度」は大きく下がって
しまう事である。
_c0032138_12265381.jpg
さて、本MAP110/2.5の総括であるが・・
ある程度のMFスキルを持つ中上級層であれば、
本レンズの高い描写表現力は役には立つと思う。

課題は値段だけだ。まあ、中古流通もたまに見かけるので、
中古購入等で入手コストを下げれるならば、前述のように
「名玉」「名マクロ」の称号を、ぎりぎりで得られる
可能性が高い。

---
では、3本目のマクロレンズ(ユニット)
_c0032138_12270034.jpg
ユニット名:RICOH GR LENS A12 50mm/f2.5 MACRO
レンズ購入価格:20,000円(中古)
使用カメラ:RICOH GXR(A12 ユニット使用時APS-C機)

2009年発売の、AF単焦点標準画角相当、1/2倍
マクロユニット。

ここで50mm表記はフルサイズ換算画角であり、
レンズの実焦点距離は33mmとなっている。
_c0032138_12270014.jpg
個人的には好みのマクロであるし、それゆえに、
本決勝戦にノミネートされているのだが・・
ともかくピントが合わないという重欠点を抱えている。

GXRは最初期のミラーレス機風の特殊な構造を持つ
カメラ+ユニットであり、初期コントラストAFの技術
水準であれば、AFが合焦しないのもやむを得ない。
MFに切り替えて課題を回避しようにも、MF操作系や、
背面モニターの解像度から、それも厳しい。

まあつまり、時代の古さを起因として、何をしても
ピントが合わないシステムだ。
この重欠点を、容認できるか否か?が、本システムの
購入時に検討すべきポイントであろう。
でも、基本的には推奨しない、やはりピントが合わない
のは、カメラとしての実用性に大きく劣るからだ。
_c0032138_12270009.jpg
それに、古い(発売後10数年)ので、内部電子部品の
経年劣化もヤバい。私の所有ユニットは最初のものが
2018年頃に電気的故障で廃棄処分、現在使っている
のは二台目なのだが、これも、どうもたまに写りが
おかしくなる(酷寒の撮影環境でモニター映像の乱れ
が1件発生。また、通常使用時にもAWB処理等が不安定
となり、写真の色味が緑がかる現象が頻発している)
_c0032138_12270098.jpg
本ユニットは、個人評価点が高いので、本決勝戦での
最終順位も、悪い位置にはならないとは思うのだが、
様々な課題があるユニットだけに、やはりまあ、
「非推奨」としておかざるを得ないか・・・

---
さて、4本目のマクロレンズ。
_c0032138_12270724.jpg
レンズ名:TAMRON SP AF 90mm/f2.8 Di MACRO 1:1

USD(Model F004)

レンズ購入価格:25,000円(中古)(以下、SP90/2.8USD)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ(APS-C機)

2012年に発売されたAF中望遠等倍マクロレンズ。
_c0032138_12270768.jpg
本来、この決勝戦に進出すべきは、この現行品の
光学系のF004/F017系列ではなく、1つ前の光学系の
72E系(72E、172E、272E)の、TAMRON90マクロが
適正であった事だろう。

・・すなわちF004系での光学系の改善など、わかるか
わからないか?微妙なレベルでしか無いし、旧型の
72E系の方が、圧倒的にMF性能(MF操作性)に優れて
いる。

じゃあ、なんで72E系を決勝に進出させないのか?
という点であるが、ぶっちゃけ言えば、この
最強マクロの決勝戦で、TAMRON90マクロ系が優勝
出来ない事は、評価や順位決定作業をやる前の時点から
だいたい、わかっている事だ。

・・と言うのも、最も有名なマクロレンズは、TAMRON
90マクロである事は、間違いの無い事実ではあるが、
実は、他にも、世の中には、初級中級層が知らない
「名マクロレンズ」はいくらでも存在する。
・・まあ、その実証の為に、本シリーズ記事を執筆した
ようなものであるし、このシリーズで紹介(対戦)した
およそ80本のマクロレンズの中で考えても、
TAMRON90マクロ系より優れるマクロは、色々と存在
する訳だ。

で、最も実用的な272E型等を決勝戦にノミネートし、
それが優勝できない場合、世の初級中級層では、
以下のように思うだろう。
初「マクロレンズと言えば”タムキュー”に決まっている。
  名マクロと評判があるし、皆が良いと言っている。
  それが何故優勝できないのだ? さては古い型の
  タムキューを持ち出したから、そのせいだな?」

・・勿論、そんな理屈は通らない。
初級層や初級マニア層が「神格化」する”タムキュー”は、
悪いレンズでは無いが、「最高のマクロレンズ」という
訳でも無いのだ。
だから、最新の(現行品と同じ)光学系を持つ、F004
型を決勝戦にあえてエントリーさせよう。
これで負けたならば、「古い光学系」とは言わせない。
もう、それは「そこまでの実力値」という事になる訳だ。

なお、毎回書いているように「タムキュー」の俗称も
非推奨である。40年以上もの長い歴史を持ち、多数の
Model(製品)バリエーションがあるTAMRON SP90mm
マクロ系列を、”ざっくり”と括って話をする事は出来ない。

どのModelの事を言っているか?を明示する事が重要だ。

参考記事:
レンズマニアックス第79回「新旧TAMRON90MACRO」
編にて、過去の全光学系のTAMRON90MACROをまとめて
比較している。(注:掲載予定記事)
_c0032138_12270770.jpg
で、勿論、全て自身で所有しているレンズ群であり、
中には25年以上の長期に渡って使用しているModel
も複数あるので、それらの特性は熟知している。
自分が所有もしていないレンズを、どこかから借りて
きて短期間だけ試写したようなレビュー記事では無い
点が、とても重要だ。

・・で、仮に本F004型が本決勝戦で好順位を獲得
できたとしても・・ まあ、個人的には旧型の72E系
のマクロを強く推奨する。

1996年: 72E型:等倍&F2.8版の初代マクロ
1999年:172E型:上記72E型の機構等の小改良版
2004年:272E型:Di型、上記172E型に反射防止処置追加

これら72E系であれば、本F004型(やF017型)の
ように、超音波モーター搭載でMF操作性が悪化している
事は無く、本来のMF技法を用いて近接撮影を楽しむ事が
出来る訳だ。

----
次は、本決勝戦ラストのマクロとなる。 
_c0032138_12271199.jpg
レンズ名:SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG OS HSM
レンズ購入価格:58,000円(中古)(以下、EX150/2.8)
使用カメラ:NIKON D500 (APS-C機)

2011年に発売された、フルサイズ対応AF等倍望遠マクロ。
_c0032138_12271710.jpg
描写力は悪くないが、大柄で、ハンドリング性能に劣る
レンズである。
もう少しだけ小型軽量で、かつ価格や中古相場が安価で
あれば、申し分の無いレンズと成り得るのだが・・

その為(小型化)には、開放F値をF3.5やF4に下げて
貰っても全然問題は無いのだが、現代での、ビギナー層
ばかりになってしまった新品機材購入(消費者)層に
向けては、そういった風に開放F値を下げる製品戦略は、
残念ながら成立しないであろう。

ビギナー層がカタログスペックを見た状態で分かる、
レンズの良し悪しでは、「開放F値が小さいレンズが、
高性能で高描写力で、だから高価なのだ」という、
そういう誤まった判断基準しか持っていないからだ。

・・という事で、本APO150/2.8は、軽量化等の措置
が施されていない為、やや「三重苦」の傾向を持つ
レンズである。
まあ、大きさや価格と言うよりも、「重さ」が最大の
課題であろう。

重量1,150g(注:SIGMAマウント版のカタログ値)は、
同じSIGMA製の「ART LINE」の高性能大口径レンズと
同等か、むしろ、やや上回るくらいの重さである。

焦点距離等のスペック的には、自然観察撮影とか、
植物園等に向くのであるが、この重さによるハンドリング
性能の悪化が課題となり、長時間においての、手持ち
撮影が厳しい。(注:まあ、言うまでも無いが、「だから
三脚を使う」という対策は推奨しない。それでは、被写体
制限が大きく、撮れるものも撮れなくなってしまうからだ)

よってまあ、できるだけ小型軽量の機体を母艦とし
トータル重量を削減するのが望ましい訳なのだが・・
その為に、母艦を当初、NIKON D5300(本体480g)
の使用を画策していたのが、(以前の記事で書いた
通り)何故か、その機種と本レンズとの組み合わせは
(ピンポイントで、その組み合わせのみで)AFが
動作しない。

まあ、そこで通常撮影では、やむなくNIKON D500を
母艦とする場合が多い。本体760gであり、装備重量
(バッテリー、カード、ストラップ、レンズ本体、
レンズフード、保護フィルター等を全て含む)において
は、計2kgを超えるくらいの重量になってしまうが、
まあ、多少の重さは、やむを得ない。

これで実用性はギリギリのラインであり、「2.3kg~
2.5kgを超えるシステムでは丸一日の撮影は出来ない」
というのが個人的な経験則である。
(注:この「限界重量」は、利用者毎で差異がある
かも知れず、ユーザーは各々、「何kgまでだったら
長時間(丸一日等)の撮影が可能になるか?」の
限界値を、練習等において、知っておく必要がある)

まあ、それがわかっていないと、ビギナー層等で
超望遠ズームや、大型(大口径)ズームレンズ等に
憧れて、大枚を叩いて、それを買ったは良いが・・
重すぎる為に、実用的に殆ど使う機会が無く(または
使いこなせず)、それらを手放してしまうケースが
大変多くなっている模様だ。
事実、中古市場には、そうした「持ち歩けない程に重い」
レンズの中古品が、大量に流通している。
まあ、(初級層が)憧れて買ったは良いが、うまく使い
こなせないままになってしまった、という事であろう。
_c0032138_12271793.jpg
本レンズEX150/2.8も、ちょっとそのあたりが
ヤバいレベルにある。利用者(ユーザー)毎の、体力や
機材環境によっては、「限界重量」に達しそうである。

この「(やや)大きく、重く、(やや)高価な」、という
「プチ・三重苦」を、どう判断するか? そこが本レンズ
の購入検討におけるポイントとなるだろう。

繰り返すが、他の課題は殆ど無い。
買うか否か?は、利用者が必要とするか否か?だけで
あり、望遠マクロが必要ならば、買うしか無いのが・・
基本的には、望遠マクロの選択肢は、あまり多くは無く、
本レンズは、その少ない選択肢の中では高いポジション
(=有力な候補)に、入ってくるとは思われる。
上級層、あるいは実践派マニア向けのレンズだ。
_c0032138_12271720.jpg
では、ここからは「最強マクロ選手権」での最終順位
の決定だ。

順位は、個人評価DB(データベース)での「総合平均点」
とするが、特別加点として「歴史的価値」と「用途開発」
(用途適正)を、最大0.4点まで加算する事とする。

決勝戦最終順位は以下の通り。(省略表記)

1位:4.2点+加点0.4:TAMRON SP180/3.5
2位:3.9点+加点0.2:COSINA MAP110/2.5
2位:3.7点+加点0.4:RICOH GXR A50/2.5
4位:3.7点+加点0.0:SIGMA EX150/2.8
5位:3.2点+加点0.0:TAMRON SP90/2.8USD

優勝は、望遠マクロの
「TAMRON SP AF 180mm/f3.5 Di LD [IF] MACRO 1:1」
となった。(最強200mm編に続く、2冠)

ダントツの得点差ではあるが、まあ、高い描写力を持ち、
軽量でもあり「用途開発」(用途適正)にも優れている。
発売から年月が経ち、中古価格も安価でコスパに優れ
後にも先にもTAMRONの180mmマクロレンズは、
他には無いので、「歴史的価値」も高い。

使いこなしがやや難しいが、その分「マニアック度」
および「(テクニカル的)エンジョイ度」が高く評価
される事となった。

準優勝は2本ある。
まずは、望遠マクロの
「Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5」
だが、これの弱点は高価な事であり、結果的に
コスパ点が低く評価されてしまっただけだ、
他の弱点は何も無いが、価格の高さや、若干の
使いこなしの難しさもある為、中上級層向けの
MFマクロレンズである。

もう1本の準優勝
「RICOH GR LENS A12 50mm/f2.5 MACRO」
は、もはやオールド(デジタル)システムではあるが、
年月を過ぎても色あせない高描写力が持ち味だ。
ただ、さすがにもう「古い」。これは非推奨としておく。

4位の望遠マクロ、
「SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG OS HSM」
は、高性能・高描写力のレンズであり、もう少し上位に
入れるか?と予想の上での本決勝戦へのノミネートだが、
「このレンズでなくてはならない」という「用途開発」が
何もなく、加点が得られなかった事が敗因だろうか?
あるいは、コスパ評価が若干低い事も課題としてある。

5位は、超定番マクロである
「TAMRON SP AF 90mm/f2.8 Di MACRO 1:1 USD」
(Model F004)となった。
まあ前述した通り、TAMRON90マクロ系レンズは
勿論悪いマクロでは無いが、最高のマクロレンズ
という訳でも無いのだ、「世の中、上には上がある」
とか「知らなければ、わかりようも無い」という事で、
「マクロと言えば”タムキュー”」といった、
条件反射的な評価や、その、何だか意味が良くわからない
俗称の「タムキュー」とやらも、忘れたらどうだろうか?

----
では、これにて「最強マクロ選手権」記事は全て終了だ。

こういうシステマチックな記事(つまり、特性や仕様、
年代、メーカー等を揃えて、複数のレンズを試写し、
比較する等)を執筆するのは、準備の時間がかかる為、
次回選手権シリーズ記事の開催時期は未定だが、まだ若干
カテゴリーのテーマは残っている為、引き続き本シリーズ
を継続する予定である。


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