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レンズ・マニアックス(68)補足編~35mmマクロマニアックス

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今回は補足編として「35mm(級)マクロマニアックス」
という主旨とする。

この定義であるが「実焦点距離が35mm前後で、
最大撮影倍率1/2倍以上のマクロレンズ」としておく。

なお、AF、MFの区別は問わず、フルサイズ対応か
APS-C機以下専用のレンズかも問わない。

この条件に合致する所有しているマクロレンズは9本。

(これは、概ね2017年頃までの発売の範囲の、
ほぼ全ての35mm級マクロレンズだと思われる。
本記事執筆時点の2020年では、他に新しい35mm級
マクロとして、Panasonic μ4/3用G30/2.8と、
CANON RF35/1.8、TAMRON 35/2.8が存在している。
全てミラーレス機用であり、いずれも未所有だ。
なお、LENSBABY BURSIDE35は最短15cmの仕様だが
これは最短WD表記であり、最大撮影倍率は非公表だ。
恐らく1/2倍に満たないと思われ、紹介対象から外す)

それら9本に加え、準マクロとも言える、最短撮影距離
がトップクラスの通常35mmレンズ(フルサイズ対応)
を1本、計10本を本記事で紹介する。

なお、全て過去記事で紹介済みのレンズにつき、
個々のマクロの特徴は、できるだけ違う視点で説明する。

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ではまず、今回最初の35mmマクロレンズ。
_c0032138_06461244.jpg
レンズは、HD PENTAX-DA 35mm/f2.8 Macro Limited
(中古購入価格 26,000円)(以下、HD35/2.8)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)

2013年に発売された、DA型(APS-C専用)AF等倍
マクロレンズ。新型のHDコーティングが施されていて、
Limited銘では初のマクロレンズであった。
_c0032138_06461279.jpg
さて、35mmマクロというスペックのレンズは、
記憶によれば、銀塩時代には存在していなかった。

まあつまり、銀塩時代(~2000年頃まで)では、
・標準マクロ=50~60mm程度の焦点距離
・中望遠マクロ=90~105mm程度の焦点距離
・望遠マクロ=180~200mm程度の焦点距離

の、いずれかの製品しか無かった訳であり、
内、望遠マクロは大きく重く高価な三重苦レンズで
あるから、あまり普及もしていなかった。

35mm、あるいはより広角のマクロ(最大撮影倍率
が1/2倍以上)の製品が存在しなかった理由は、よく

分からない。恐らくだが、技術的な何らかの理由で
設計が困難だったのだと思われる。

2000年代、デジタル時代に入ると、初期のデジタル
一眼レフは、殆どがAPS-C型機であった為、上記の
銀塩時代のマクロレンズの焦点距離はAPS-C機では
少々長すぎる(=画角が狭すぎる)様相もあった。

そこで、例えばTAMRONでは銀塩時代から続く著名な
名レンズ「90マクロ」を、60mmのAPS-C機専用と
して発売したり(SP AF60mm/F2 G005、2009年、
特殊レンズ第8回記事等で紹介済み)または、
TOKINAでは、APS-C機専用の35mmマクロ(後述)
を発売するに至ったのだが、こうしたAPS-C機専用
の(短縮された焦点距離の)マクロレンズは、
いずれも2000年代後半の時代からの発売であった。

現代、2020年代では、市場でのデジタル一眼レフや
ミラーレス機は、フルサイズ機が人気である。
よって、現代において、APS-C機専用マクロレンズ
(例えば35mm級)は、殆ど新発売されておらず、
35mm級マクロレンズの新発売は、2000年代後半~
2010年代後半頃の、概ね10数年間に留まっている。

銀塩時代の50mm級レンズをAPS-C型対応35mm級に
縮小設計する、と言うと、近年の中国製レンズの
「ジェネリック設計」の手法を連想するかも知れない
が、前述のように35mm級マクロレンズは、比較的
近代での発売なので、単純に銀塩50mm級マクロを
ダウンサイジングしたものでは無く、新設計の物が
多いと思う。
例えば、本HD35/2.8は、8群9枚構成であり、
同じPENTAX製の銀塩時代の50mm級マクロ、例えば
MF時代のM50/4(3群4枚)、A50/2.8(4群6枚)、
AF時代のFA50/2.8(7群8枚)等よりも、設計が
複雑化されている。
まあつまり、銀塩時代のマクロのダウンサイジング
版では無い、という事だ。

・・そうした地道な改良を続けて来たからか?
本HD35/2.8の描写力は、なかなか悪く無い。
Limited仕様で、作り(品質)も高く、しかも、
価格もあまり高価では無い。
この結果、本HD35/2.8は、好評価が得られ、
個人レンズDB総合評価点3.7点(5点満点)および
「最強35mm選手権」ではB決勝1回戦第2位の
好成績が得られている。


多くの撮影条件で高描写力が得られる事で、逆に
少々安直なイメージがあり、マニアック度がやや低い
レンズではあるが、ビギナー層から上級層まで
満遍なく推奨できる優秀なマクロレンズだと思う。

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では、次の35mmマクロレンズ。
_c0032138_06461264.jpg
レンズは、OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 35mm/f3.5 Macro
(中古購入価格 8,000円)(以下、ZD35/3.5)
カメラは、OLYMPUS E-410(4/3機)

2005年発売のフォーサーズ用の軽量AF等倍マクロレンズ。
4/3(フォーサーズ)システムは、現代では終焉して
しまっている為、4/3機が無い場合には、例えば、
OLYMPUS製4/3→μ4/3電子アダプター(MMF-1~3)
を用いれば、μ4/3機でAF動作が可能である。
(注:稀に、恐ろしくAF速度が遅くなる、特定の
母艦との組み合わせも存在するので要注意だ)

電子アダプターでは無い場合、例えばマウント形状
だけを揃える4/3レンズ用機械式アダプターも存在
するのだが、4/3レンズでは、カメラ側から通電を
しないと、ピントリングも絞り設定も動かないので、
実質的には使用できない。
あくまで、電子アダプターか4/3機かの2択となる。
_c0032138_06461220.jpg
本レンズは、他の35mm級マクロレンズに比べて
やや早い時代の発売だ、でも、本レンズは4/3機
専用であり、他のAPS-C機対応35mmマクロとは、
ちょっと様相や状況が異なるかも知れない。

特徴としては、シャープな描写のイメージがある
レンズであるが、銀塩MF時代のOM50/3.5マクロ
のような、「カリカリマクロ」では無く、現代的な

バランスが取れた描写特性である。

まあ、銀塩時代より、OLYMPUSは、医療分野等に
強く、マクロレンズも優秀である、というブランド
イメージがあった為、久しぶりの、4/3機での一眼
レフ市場参入の際、あまり低い性能のマクロレンズ
を出してしまうと、ブランドイメージを損なう為、
ある程度気合が入った設計だったと思われる。

まあでも、OLYMPUSのマクロレンズは、医療用等の
特殊なものを除くと、銀塩時代から現代まで通して
見ても、意外にその機種数は多く無い。
(その多くは、特殊レンズ第2回「OLYMPUS MACRO」
編で紹介している)
マニアであれば、OLYMPUS製のマクロレンズの数本を
所有しておくのも、悪く無い選択だと思われる。

課題としては、現代4/3システムが既に終焉している
事であり、本レンズは中古相場が安価ではあるものの
これをちゃんと使える母艦が無い事だ。
電子アダプター経由でμ4/3機で用いるのが、賢明な
措置だとは思うが、本レンズに拘らずに、後述の
μ4/3機専用のOLYMPUS MZ30/3.5 MACROを購入
した方が、実用性は高いと思われる。

----
では、3本目の35mm級マクロ。
_c0032138_06461844.jpg
レンズは、NIKON AF-S DX Micro NIKKOR 40mm/f2.8G
(中古購入価格 約20,000円)(以下、DX40/2.8)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)

2011年に発売されたDX(APS-C機)専用準標準(標準画角)
AF等倍マクロ・エントリーレンズ。
_c0032138_06461841.jpg
このレンズは35mmではなく、40mmとやや長めだ。
恐らくは、銀塩時代のNIKKOR 60mm/F2.8系マクロ
(AF版)のレンズ構成を2/3程度にダウンサイジング
し、APS-C機専用(DX)とした、という出自が
本レンズが40mmの焦点距離である理由だと思われる。

なお、本レンズではMicroとNIKKORの間にはハイフン
は入らない。ただしAi時代のMicroにはハイフンが有る。

銀塩AiAF60/2.8をベースにしたからだろうか?
やや古臭い描写傾向を持つマクロである。
特に、ボケが固く、ボケ質破綻の頻発が目立つ。

これの理由は、いつも述べているような、1970年代
頃のマクロ(マイクロ)レンズが、資料等の複写
(アーカイブ)の用途に主に使われた事であり、
この時代の代表的なマクロ(例:NIKON Ai55/3.5、
OLYMPUS OM50/3.5等)が、「平面マクロ」的な
特性を強く持つ事に端を発している。

NIKONでは、その後55mmマイクロを60mmに設計変更、
その際、平面マクロ特性を少し緩和したのであるが、
旧来からのユーザー層から「新型を買ったら、なんだか
解像感が弱く感じる」等のクレームが来る事を避ける
為にか? 60mmマイクロも他社の同等品のマクロより
若干の「カリカリ描写」「平面マクロ」特性を
持たせる事となってしまっていた。

このあたりの製品企画コンセプトは、ブランドイメージ
を重視するNIKON故にの措置だと思われる。まあつまり
旧来からのユーザー層の存在やその意見を無視できず、
その結果、新製品のコンセプトも、やや保守的な物と
なってしまう、という状況だ。

で、その銀塩60mmマイクロを、スケールダウンした
設計が、本DX40/2.8マイクロであるから、そうした
古い時代の描写特性が受け継がれてしまっている訳だ。

ただまあ、本レンズは、2010年代初頭に、スマホや
ミラーレス機の台頭があった事で・・ 一眼レフへ
ユーザー層の興味を引き戻す目的で作られた、いわゆる
「エントリーレンズ」でもある。

「エントリーレンズ」では、品質や性能に手を抜く事は
許されないのであるが(もし、そうしたらユーザー層を
「囲い込む」事が出来ないから)かと言ってコスト高も
容認できるものでは無い。高価な「エントリーレンズ」は
戦略的に有り得ないし、逆に安く売りすぎて、原価割れして
赤字になるような製品戦略も、勿論有り得ない事であろう。

・・そこで、本レンズでは、銀塩時代のレンズ設計を
スケールダウンした「ジェネリック設計」にしたのだと
思われる。その手法では、製品の部材/部品代、製造経費
等の直接的原価は下げれないが、製品設計、試作、改良設計、
性能検証、等の人件費/間接コストを大幅に削減できる。

まあ、という訳で、本レンズについては、フルサイズ
対応NIKKOR 60mm/F2.8マイクロを所有しているので
あれば、あまり必要性の無いレンズであろう。

ただまあ、本レンズの発売以降、2010年代後半頃では
NIKONデジタル一眼レフは、フルサイズ機が主にビギナー
層やシニア層に人気となり、2010年代末頃からは、
NIKON製APS-C型デジタル一眼レフの新発売も殆ど無い
状態であるから、現代においては、NIKON APS-C型機
およびAPS-C機専用交換レンズ(=いわゆる「DX」型
システム)は、不人気で中古相場が大きく下落している。

よって、「安価にNIKONマクロシステムを構築する」
という理由や目的があるならば、本レンズを含めた
DXシステムを購入する事は、コスパ面でのメリットは
大きいと思われる。

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さて、4本目の35mm級マクロ。
_c0032138_06461874.jpg
レンズは、SONY DT 30mm/f2.8 Macro SAM (SAL30M28)
(中古購入価格 11,000円)(以下、DT30/2.8)
カメラは、SONY α65 (APS-C機)

2009年に発売された、APS-C機(α Aマウント)専用
準広角(標準画角)AF等倍マクロ・エントリーレンズ。

典型的なエントリーレンズだ。性能や仕様は妥協して
いないのだが、何とも作りが安っぽい。
プラスチック外装に、スカスカのピントリングは、
これがDT50/1.8や、DT35/1.8(いずれも同時代の
SONY製エントリーレンズ。全SONYエントリーレンズ
については、特殊レンズ第51回記事を参照の事)
・・(DT50/1.8等)であれば、まあ通常レンズである
から、AF中心の用法において、ピントリングの操作性
は、さほど課題とはならないのだが、本DT30/2.8は、
あくまで等倍マクロである。

_c0032138_06461824.jpg
近接撮影では相当に浅くなる被写界深度において
AF精度ならびにAF測距点選択の厳密性は期待出来ない。
そもそも、今回の母艦α65との組み合わせでは、近接
撮影時にAFが迷って「ガタピシ」と言う。これは勿論
正常動作なのだが、うるさいし、壊れそうなくらいに
ガタピシ動くので鬱陶しい。

これは本レンズのAF駆動がSAM(スムースAFモーター。
一種の直流モーターであろう。本エントリーレンズ
でのコストダウンの為、超音波モーター系を採用して
いないと思われる)・・SAMであるが故の課題だろう。
(この件については、いずれ別記事で各種AFモーター
の動作比較検証を行ってみる予定だ)

なので、SONY αフタケタ機の優秀なEVFとピーキング
機能を頼りにMF合焦を多用する事になるのだが・・
まずピーキングを出すのは今回のα65との組み合わせ
においては、DMF機構が無い為(注:α65には無いが
他のαフタケタ機の一部には存在する)MFに切り替える
必要があるが、カメラ本体側のAF/MF切換ではMF時の
ピーキングが出ず、レンズ側のAF/MF切換スイッチを
利用しなくてはならない。まあ、そういう動作仕様
(レンズ側からのAF/MF情報を元にカメラが作動する)
であれば、やむを得ないが、無意識的にカメラ側の
AF/MF切換を行ってもピーキングが出ないので混乱する。

そして、他機も含め、どのような操作(本体側AF/MF
ボタン、本体側SAF/AAF/CAF/MFダイヤル、レンズ側
切換スイッチ、DMF機能利用等)でMFに切り替えたと
しても、ピントリングの操作性がスカスカで回転角も
大きいとなれば(注:AF速度を重視した設計だ)
マクロ域での精密なMFピント合わせには向かない。

まあ、そんな状況であるから、本DT30/2.8は、
あまり専用のマクロ(近接)レンズであるとは考えず、
気軽な(小型軽量)標準画角レンズとして、いざと
なれば、いくらでも寄れる(APS-C機専用レンズであり、
2倍デジタルテレコン併用時には、約3倍マクロとなる)
という特性を活かすのが良いであろう。

ただまあ、姉妹エントリーレンズのDT35/1.8も、
同じく標準画角で、口径比も明るく、おまけに最短
撮影距離23cmと、極めて優秀な近接性能。さらには
銀塩時代の非常に完成度が高い小口径標準(50mm/F1.8
級)の2/3スケールダウン・ジェネリックであるから、
描写性能的にも、そちらも、あまり不満は感じ難い。

まあ、「エントリーレンズ」であるならば、もう一声
凄い性能を期待してしまう。(注:エントリーレンズは、
ビギナー層が驚く程の高性能を搭載し、レンズ交換の
楽しさを知ってもらい、より高価なレンズの購買に誘導
する狙いがあるから、低性能なレンズを発売するのは
市場戦略的に矛盾が出てくる。よって、全てのエントリー
レンズには、価格をはるかに超えた高性能や高機能が
搭載されている事が常識である)

SONY α(Aマウント)用の エントリーレンズ群の中では、
本レンズは、ちょっとイマイチな雰囲気もあったが・・
近年では、本レンズDT30/2.8の、極めて短かい最短WD
(=ワーキング・ディスタンス。レンズ前から被写体
までの撮影距離)を活用し、特殊アタッチメントの
「Soratama 72」を装着する母艦として利用するケース
も多々ある。

まあつまり、どのレンズにも、活用できる被写体や
用途がある訳であり、それが何も見出せずにいて、
レンズを死蔵させたり処分してしまうのは勿体無い、
という話だ。(必ず「用途開発」を行うのが望ましい)

----
さて、5本目の35mmマクロレンズ。
_c0032138_06462380.jpg
レンズは、CANON EF-S 35mm/f2.8 Macro IS STM
(中古購入価格 30,000円)(以下、EF-S35/2.8)
カメラは、CANON EOS 7D(APS-C機)

2017年頃発売の、APS-C機専用準広角(標準画角)
LED照明付きAF等倍マクロレンズ。

白色LED照明を内蔵した交換(マクロ)レンズは、
本レンズとCANONミラーレス機用EF-Mマウントの
「EF-M 28mm/F3.5 Macro IS STM」の2本しか
市場に存在しない。

_c0032138_06462348.jpg
ただまあ・・ 完全暗所等では無く、一般的な屋外
撮影では、実はLED照明の効果は、さほど大きいもの
では無い。まず通常(晴天時)の太陽光は、LED照明
とは比べ物にならない程の明るさがあるので、
あまりLEDの照明効果は無い訳だ。

LEDの光量は、OFF→全灯→半灯→OFF・・ の順に
レンズ側の単一のスイッチで制御される、ON/OFF
型では無いので、1度押して消したつもりが、半灯で
ついたまま、という凡ミスも多い。ファインダーを
覗いた状態で日中屋外の場合、ファインダーでLEDの
ON/OFFの光量差は、ほとんど確認できない。
まあでも、LEDの光量も小さいが、消費電力もさほど
多くは無いだろうから、バッテリーの消耗を気にする
程では無いであろう。

また、LED照明を利用するには、レンズ先端のフード
状のキャップを外す必要がある。このフードには
保護フィルターが装着できるが、LED使用時は
レンズ前玉とLED部がむき出しとなる。
最短WDが短い本レンズであるから、被写体との
衝突等は、レンズやLEDへのダメージとなるから
慎重に扱わなければならない。

なお、LED前に保護フィルターがつけられる構造に
すれば良かったのだろうが、恐らくその構造だと
保護フィルターで内部光源反射が起こるケースが
ありうるのであろう、だからLEDは、むき出しで
使用するしか無いのだと思われる。

LED照明利用かレンズ(LED)保護かは二者択一だ、
カメラバッグに入れての移動時等で、この選択は
迷う。フードをつけて保護保管している状態から
カメラを取り出してすぐLED照明を使いたい場合、
ねじ込み式のフードを外すのに、やや時間がかかる
為、撮影機会を失うリスクがあるからだ。

まあ、前述のように、日中屋外ではLED照明の
効果が得られるケースは少ないので、屋外では
フード有り、室内等ではLED照明を使用する為に
フード無し、という使い分けが良いと思われる。

仕様、性能、描写力等は、他社近代マクロと
そう大きく変わるものでは無い、まあつまり、
そこそこ良く写り、大きな不満は無いであろう。
APS-C機専用であるが、CANON EFフルサイズ対応の
LED照明付きマクロは存在しないので、LED搭載の
ギミック(仕掛け)が欲しければ、これを選ぶ
しか無いであろう。(同時に母艦もAPS-C機となる)

なお、ミラーレス機EOS M用の同等のLED搭載マクロ
については、そのレンズを所有していないので
詳細の言及は避けるが、店頭で試した範囲においては、
像面位相差AF搭載型の母艦の使用が最低限必須であり、
コントラストAF型の旧機種では、AF性能に強い不満を
感じた事を述べておく。

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では、6本目のシステム。
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レンズは、TOKINA AT-X M35 PRO DX (35mm/f2.8)
(中古購入価格 18,000円)(以下、AT-X M35)
カメラは、NIKON D2H (APS-C機)

2007年発売のAPS-C機専用準広角(標準画角相当)
AF等倍マクロレンズ。

4/3機専用のOLYMPUS ZD35/3.5を除き、銀塩時代
から続くAF/デジタルマウント(NIKON F、CANON EF、
MINOLTA/SONY α、PENTAX Kaf)において、恐らく
本レンズが初の35mm級(標準画角)マクロであろう。
_c0032138_06462404.jpg
まあ、それ以前、2003年~2005年頃、初期デジタル
一眼レフが一般層にも普及し始めた際、その多くが
APS-C型センサー搭載機であった為、「銀塩時代の
標準画角(50mm相当)が得られなくなる」という
「無いものねだり」のユーザーニーズが発生し、
その為、APS-C機で50mm相当画角となる、35mm
レンズのフィーバーが起こっていた。


それは、まさしく「取り合い」であり、流通関連企業
による組織的な「買占め」まで起こり、35mmレンズが
AF版はもとより、デジタル機では使い難い/使えない
MF版35mmレンズまで、買占めの対象となってしまい、
中古市場から完全に一掃されてしまった歴史がある。

私は、その当時、既に各マウントでの35mm級レンズ
を所有していたし、そもそも銀塩50mmレンズが
デジタルで、75~80mmの中望遠画角となる事に、
殆ど不満を持っていなかったので、幸いにして、
この「35mm戦争」に巻き込まれる事は無かった。
不幸なのは、流通・販売業者により不条理に吊り上げ
られた、高価格な35mm級レンズを購入した当時の
ユーザー層であろう。

ただ、そのフィーバーも、2005年頃には収まる。
1つは、新規デジタルユーザー層も、銀塩50mmが
APS-C機で中望遠画角となる事に慣れてきたし、
デジタル専用標準ズーム(例:広角端18mm~)も
色々発売され、さらにはSIGMAよりAF30mm/F1.4EX
(2005年、本シリーズ第55回記事等)も発売され
50mm標準画角を得る事が難しくなくなったからだ。

このフィーバーは「少々馬鹿馬鹿しい」と、私は
冷淡な視線で見ていたので、その後数年が経ち、
本レンズAT-X M35が(2007年に)新発売された際、
当初は「なんだ? 銀塩50mm標準マクロがAPS-C機で
中望遠画角となるから、今度はデジタル専用35mmマクロ
を作って、銀塩時代の50mmマクロと同等にしたいのか?」
と思い、ちょっと前述の35mmレンズフィーバー時と似た、
懐疑的または否定的な印象を持ってしまったのだ。

よって、実は本記事で紹介している35mm級マクロ
(APS-C機専用が殆どである)は、その後数年が経過した
2010年代後半以降に入手したものばかりである。
まあつまり「市場の様子を見計らっていた」訳であり、
加えて、2010年代前半からのフルサイズ一眼レフ機の
普及により、APS-C機専用レンズの中古相場が下落した
事も、これら35mm級APS-C機専用マクロの購入を開始
した理由にもなっている。

まあ、その一環として「初の35mmマクロである、
本レンズの性能はどうか?」という歴史的価値または
研究対象としての興味から、本レンズの購入に至った
次第である。

総括だが、描写力は並み程度。TOKINA製マクロは、
あまり著名では無いが、中には描写表現力に優れる
ものも含まれてはいるが、本レンズは、そこまでには
至らない。
また、NIKON Fマウント版でもAFモーターが内蔵されて
おらず、使用する母艦に制限が出る。
(例:初級機、NIKON D3000/D5000系では使用困難)

まあ、あくまで高い歴史的価値からの研究用レンズと
言えるであろう、あまり一般層に推奨できるものでは無い。

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さて、7本目の35mm(級)マクロレンズ。
_c0032138_06463090.jpg
レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm/f3.5 Macro
(中古購入価格 22,000円)(以下、MZ30/3.5)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機)

2016年発売の4/3機専用のAF1.25倍マクロレンズ。

ZD35/3.5のところで前述したように、「マクロに
強いオリンパス」というイメージ(印象)があるが、
実のところ銀塩OM時代から現代のμ4/3機に至る迄、
さほど多数のマクロレンズが発売されていた訳では無い。
医療用の特殊マクロを除き、一般的なマクロ(交換)
レンズとしては、7機種くらいのみであろうか? 
μ4/3機用としては、本レンズとED60mm/F2.8(未所有)
の2機種が存在しているだけの状態だ。
_c0032138_06463037.jpg
本マクロの長所であるが、まず小型軽量な事、
描写力も悪く無く、価格も比較的安価なので、
コスパが良い事である。(上写真は、エフェクト
(アートフィルター)を利用)


課題としては、無限回転式ピントリングの為、マクロ
撮影で必要なMF技法が殆ど役に立たない点がある。
撮影倍率が高く、被写界深度も浅い本MZ30/3.5で
あるから、MFが有効に使えないのは、重欠点に近い。

ただまあ一部のμ4/3機、例えば今回使用のOM-D E-M5Ⅱ
等では、「フォーカスブラケット」や「被写界深度合成」
という機能が使える。フォーカスブラケットによりMFの
課題は相殺できそうな気もするのだが、この機能は簡単
には呼び出す事が出来ず、操作系に劣る事が難点だ。

総合的には、MFの弱点が大きいので、あまり推奨し難い
レンズである。ただ、無理に近接撮影に持ち込もうと
せず、「いざとなれば寄れる標準レンズ」のような
感覚で使うならば、MFの課題は欠点には成り難い。

----
さて、8本目の35mm級マクロレンズ。
_c0032138_06463085.jpg
レンズは、SONY E30mm/f3.5 Macro (SEL30M35)
(中古購入価格 14,000円)(以下、E30/3.5)
カメラは、SONY NEX-7(APS-C機)

2011年発売のEマウントAPS-C機専用AF等倍マクロレンズ。
_c0032138_06463034.jpg
(注:上写真はエフェクト使用)

本レンズは「何でこんな変な特性にしたのだろうか?」と
疑問を感じてしまう程の「平面マクロ」「カリカリマクロ」
的な、エキセントリックな描写特性を持っている。

すなわちピント面は、そこそこシャープなのだが、ボケ質
が壊滅的に悪い。
まあ、もしかすると、この時代(2010年~2012年)の
SONYミラーレス機(NEXの時代、αとなる前)においては、
SONYミラーレス機が、まだ、どんなユーザー層を主要な
ターゲットにするか? 決まっていない時代であったから、
(注:この時代のNEX機は機種毎に仕様やコンセプトが
バラバラであるが、どの機体が、どのユーザー層にウケる
のかを探っていた「テスト・マーケティング」の時代で
あったのだろうと分析している)・・そんな状況において
ビギナー層でのマクロの用途(平面的な小物や料理等を
近接撮影する)において、解像感を重視しすぎた設計
だったのかも知れない。

まあ、「平面マクロ」が、どのような被写体条件に
適合するか?等の、マニア層における研究対象としては
有益であろうとは思うが、一般的なマクロ撮影(例:
草花等)の用途には、やや適合しないレンズだ。
他にマクロレンズを所有する中級層等では、少し
驚いてしまうだろうエキセントリックな味付けだ。

この特性を理解して、自身の用途も意識して買うので
あれば、価格も安価であるので悪く無い。

----
では、9本目のシステム。
_c0032138_06464123.jpg
ユニットは、RICOH GR LENS A12 50mm/f2.5 MACRO
(中古購入価格 20,000円)(以下、A50/2.5)
カメラは、RICOH GXR (中古購入価格 10,000円)

2009年発売の、GXRシステム専用APS-C型AF1/2倍
マクロユニット(撮像センサー内蔵型)


焦点距離表記は50mmであるが、RICOHのGXRシステム
では、フルサイズ換算焦点距離が記載されている為、
本ユニットの実焦点距離は33mmである。

本システムは、故障代替購入品であり、従前の記事で
紹介していた入手価格よりも2割程安価となっているが
これは勿論、数年間で中古相場が下落したからである。
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GXRシステムは、もう「仕様的老朽化寿命」が来て
しまっている古い時代の、最初期の(準)ミラーレス・
システムである。
最大の課題としては、AF精度が壊滅的に低く、殆ど
まともにピントが合わない。MFに切り替えようにも、
MF操作系の悪さ、低い背面モニター解像度、効いている
かわからない程に低精度のピーキング等、お手上げだ。

まあ要は、2009年当時の技術水準では、そこまでが
限界であった訳で、今更そこを責めても意味が無い。

それでも本ユニットを長年使い続け、故障しても、同じ
ユニットを買い換えてまで使うのは、本マクロユニット
の描写表現力が、只者では無い程の高レベルだからだ。

撮影中、何をしても合わないピントは、大変ストレスと
なるが、近年はむしろ自虐的に、滅多に合わないピント
が合った際、「やった!」と、まるで抽選の「くじ」を
当選させた時のような喜びがある、とも思っている。
そうした屈折した心理がある人には(汗)推奨できるが
一般的には、もう完全非推奨だ。要は古すぎるのである。

なお、近年、このA12 50mm/F2.5 MACROユニットの
中古流通をめっきり見なくなった、流通数が少ない
状態だと思われるのだが、この「感じ」(感覚)は、
本ユニットが買占め等による「投機対象」となって
しまいそうな嫌な予感がある。

(参考:コロナ禍以降、余剰資金の使い道が無いから
だろうか?様々な市場分野での「投機」が盛んである。
カメラ界では、旧来からの、希少カメラの投機転売に
加え、希少レンズ中古品等も非常に値上がりしている。
他分野ではスポーツカー(自動車)、スポーツバイク
等の投機が酷く、大きな中古価格上昇を見せている。
個人的には、株式や骨董品等の投機対象商品は、まあ
やむないが、カメラ等の実用的製品での投機は無意味だ
と思っているので、その防衛策としては、不条理な迄に
高額になっている商品を買わないし、投機転売はしない、
というスタンスしか無いか、と思っている)

ちなみに、本ユニットを投機対象とするのは無駄だ。
何故ならば、他の一般的な「レンズ」であれば、
中身はガラスと金属の塊だから、あまり経年劣化は
起こらず、一般的に、30年や40年間は、問題無く
実用に適するのだが・・・
本A12 50/2.5 MACROは、電子部品の塊である。
中身がわからないので推察だが、恐らくはコンデンサー
系の部品の寿命(経年劣化)により、このユニットの
耐久性はさほど高く無い。
私の所有範囲でも、既に1台が電気故障で廃棄処分、
代替購入品も、稀に誤動作して極めて危ない状態だ。

これでは仮に投機層が投機対象として買い占めても
いずれ故障品の山の在庫を抱えるだけになるであろう。
ちなみに、メーカー修理はもう効かない、そして電子
基板だから、専門業者による修理も相当に厳しい。

結局、使いつぶすしか無い訳であり、私はその点は
重々承知して本ユニットを使っている。「次に壊れたら
もう終わり」であろう、残念ではあるが、それが製品の
物理的な寿命と仕様的老朽化寿命であり、やむを得ない。

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では、今回ラストの35mmレンズ。
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レンズは、TAMRON SP 35mm/f1.8 Di VC USD(Model F012)
(中古購入価格 41,000円)(以下、SP35/1.8)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)

2015年に発売された高描写力単焦点AF準広角レンズ。
フルサイズ対応であり、最短撮影距離は20cmと、
35mm通常AFレンズとしてはトップクラスに短い。

APS-C機に装着して使用する場合の最大撮影倍率は、
0.6倍となり、マクロレンズ相当であるので、
本記事では、本SP35/1.8は「準マクロレンズ」だと
見なしている。
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さて、本レンズはマクロでは無い通常レンズだが、
「寄れる」という性能の素晴らしさを感じさせて
くれる希少な(通常型)レンズである。

初級層では、焦点距離、開放F値とか、超音波モーター
や手ブレ補正の有り無しでしかレンズの性能を類推
できず、それらのスペックばかりを気にしてレンズ
の購入検討をするのだが・・・
私の場合、最も注目するのは、最短撮影距離であり
これが「焦点距離10倍則」を、いかに下回っている
かがポイントだ。35mmの焦点距離のレンズの場合、
基準は35mmx10で35cm、まあつまり焦点距離の
mmをcmに変えて判断するだけだ。

本レンズは、35cmよりもずっと寄れる20cmだから
合格となる。ちなみにこの判断基準はマクロレンズ
では意味が無い、マクロは寄れて当たり前だし、
近接撮影を主体にするから、MF性能(仕様)等、
別の観点での事前判断となる。

最短撮影距離が合格であれば、次いでチェックする
のはレンズ構成である、複雑な構成で非球面レンズ
や異常低分散ガラスを使っていれば、概ね現代的な
設計で、描写力上の不満点は少ないであろう。
ただし、複雑になりすぎてしまうと、重量や
大きさ、価格への影響が強すぎる。そうして
「三重苦」になってしまう場合は、買い難いレンズ
であろう。
適宜バランスが取れた企画コンセプトに基づいた
レンズでないと、実用には適さなくなる訳だ。

本SP35/1.8は、全ての点で合格なレンズである、
このレンズの購入時点では、SIGMA ART 35/1.4が
購入後では、後継機のSP35/1.4が出たので、
それらとの比較検討、または追加購入検討を
行ったのだが、現状ではSP35/1.8だけで十分、
という判断で、他のライバルレンズは購入して
いない。
まあ、実際に本SP35/1.8は「最強35mm選手権」
の記事で、決勝戦進出し、3位にランクインした
優れたレンズである、その実力値は伊達では無い。

しかも、開放F値が、F1.8と暗い目である、という
ただそれだけの理由で、初級中級層から不人気に
なってしまい、新品在庫処分等で、価格が大幅に
下落した不幸な経緯を持つレンズだ、しかしこれは
ユーザーから見ればコスパが相当に良い。

本SP35/1.8は、マニア層以外の一般層にも推奨
できる、高性能&ハイコスパレンズである。

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では、今回の「35mm(級)マクロマニアックス編」
記事は、このあたりまでで・・ 次回記事に続く。


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