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レンズ・マニアックス(66)補足編~望遠マクロvs近接135mm

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マニアックなレンズを紹介するシリーズ記事であるが、
今回は補足編として「望遠マクロvs近接135mm編」と
銘打ち、望遠マクロ(ここでは焦点距離が150mm以上
で、最大撮影倍率が1/2倍以上のもの)レンズ2本と、
近接135mmレンズ(ここでは、焦点距離が135mmの
単焦点レンズで、最短撮影距離が90cm未満のもの)
2本を比較する記事とする。

なお、全て、一眼レフ用&フルサイズ対応レンズだ。
また、いずれも過去記事で紹介済みのレンズにつき
個々のレンズの説明よりも、望遠マクロや近接135mm
の用途、用法、機材の選択、両者各々の得失等の話を
主体に記事を進める。

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ではまず最初は望遠マクロだ。
_c0032138_07391461.jpg
レンズは、SIGMA APO MACRO 150mm/f2.8 EX DG OS HSM
(中古購入価格 58,000円)(以下、EX150/2.8)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)

2011年に発売されたフルサイズ対応AF等倍望遠マクロ。
これは、手ブレ補正(OS)内蔵の新型であるが、
旧型でも光学系は同一と思われるので、中古価格次第
では旧型の選択肢もあるだろう。

・・と言うのも、こうした望遠マクロは、いずれも
使いこなしが超困難であり、かつ近接撮影においては
手ブレ補正機能の効能は殆ど無い。
まあ、そのあたりの状況が良くわかっている上級層が
主要ユーザー層であろうから、結局、まるで子供だまし
のような「望遠マクロに手ブレ補正機能が入りましたから、
手ブレしません」等の、売り文句に簡単に乗ってしまう
事は、まず有り得ない訳だ。したがって、手ブレ補正
の有無は、まあ、どうでも良い話である。
_c0032138_07391453.jpg
さて、「望遠マクロ」を所有しているユーザー層は
少ないであろう。何故ならば、一般的には、あまり
使い道(用途)が思い当たらないだろうからだ。

「望遠」だけが欲しいのであれば、世の中には
例えば換算300mm級のズームであれば、初級層でも
持っているだろうし、中級層であれば400mm級以上
のズームを持っていても不思議では無い。

また「マクロ」レンズであれば、中級層以上ならば、
必ずと言っていい程、所有している事であろう。

だから「望遠」+「マクロ」というニーズは、あまり
起こらない(欲しく無い)と思われる。
_c0032138_07391488.jpg
簡単に言えば、この手の「望遠マクロ」の最大の特徴は、
「遠くからでも被写体を大きく写せる」である。
ただ、どれ位遠くか?と言うと、実はさほどでも無い。

具体的には、本レンズEX150/2.8の最短撮影距離は
38cmだ。一般的な中望遠マクロ(例:TAMRON SP
90/2.8Macro系列)では、最短30cm程度なので、
「なんだ、中望遠マクロと大差無いではないか」
という風にも思ってしまうだろう。

まあ、それでも「遠くから昆虫等を撮るのに、
逃げられずに良いかも知れない」などのニーズで、
本レンズや他の望遠マクロのカタログスペックを
調べたとする。
「何~!? 重量1150gだと? TAMRON 90マクロの
 2~3倍も重いでは無いか! こんなの使えないよ」

まあ実は、本レンズEX150/2.8は、特に重量級だ。
しかし、軽量なTAMRON SP180/3.5(後述)であっても、
重さはおよそ1kgもある、やはり90マクロの倍程度だ。

そして値段も驚きだ、本EX150/2.8の定価は13万円+税。
これはまさしく、大きく重く高価な「三重苦レンズ」と
なっていて、そう簡単に買おうと思えるレンズでは無い。
中古品を探そうにも、元々、これら「望遠マクロ」は
販売数が少ないだろうし、買った人は、よほどの必要性が
あって買ったのだろうから、そう簡単には手放したりしない。
まあつまり、中古はあまり玉数が潤沢では無い状態である。
(上手く見つければ、5万円台程度からあるだろう)

さて、では、望遠マクロを買う意味があるのだろうか?
・・そのあたりは微妙だ、勿論ユーザー毎の用途や目的に
よりけりだろうからだ。
_c0032138_07391506.jpg
私の場合の「望遠マクロ」の用途は、ほぼ100%が
「自然観察撮影」である。
これは、あくまで趣味撮影の分野ではあるが、何かの
資料として使う場合も無きにしもあらずなので、完全に
趣味の撮影だとは言い切れない。

で、特に、中近距離(1m以内程度)の小さい昆虫系の
撮影には、望遠マクロは無類の適合性を発揮する。

「三重苦レンズ」ではあるが、自然観察撮影で、一度
望遠マクロの便利さを体感すれば、もうなかなか他の
レンズでは、これに代替できるものは無いようにも
思えてしまうだろう。

ただまあ、その便利さ、快適さの裏腹として、かなり
高い撮影スキルを要求されるレンズである事も確かだ。

極薄の被写界深度は、AFとMFを随時併用しながらで
無いと、まずピントを合わせる事は困難であるし、
適正な被写界深度を得る為に絞り込めば、今度は、
露光倍数(後述)と合わせたシャッター速度低下の
問題が襲って来る。

これは、「超音波モーターと手ブレ補正が入って
さえすれば、なんとかなるだろう?」などと、安直に
機材の性能に頼ろうとする初級中級層においては、
まず、そういう機材の性能だけでは全く回避できない
問題である事を伝えておきたい。
少なくとも上級者クラスの撮影技能が無い限りは、
「望遠マクロ」は使いこなせない訳だ。

「じゃあ、他に用途(目的)を代替できるレンズは
 存在しないのか?」という疑問点が沸いてくるだろう。

そう、そこが本記事における主眼であり、本記事では
「近接撮影が可能な135mm単焦点レンズ」を用いる事て、
望遠マクロと同様な撮影用途への適合性があるのでは?
という観点で、記事を進めている。

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では、次のシステムは近接135mmレンズである。
_c0032138_07392548.jpg
レンズは、SONY Sonnar T*135mm/f1.8ZA

(SAL135F18Z)(中古購入価格 89,000円)

カメラは、SONY α65 (APS-C機)

2006年にSONYがKONICA MINOLAからカメラ事業(α)
を引き継いだ状況に合わせて新発売された高付加価値
型(ブランド銘付き)大口径単焦点AF望遠レンズ。

ブランド付与で高価であったので「ブルジョワ主義だ」
と、発売当初は敬遠していたが、後年に中古相場が
下落してしまえば、パフォーマンス(性能)と比較
して、不条理な迄に高価すぎる買い物では無くなった。
_c0032138_07392598.jpg
短い最短撮影距離(72cm、1/4倍相当)の特徴
を持ち、かつ、APS-C機、加えてSONY αフタケタ
Aマウント機に備わる画質無劣化の「スマート・
テレコンバーター」機能を併用すると・・
1/4倍x1.5(APS-C)x2(テレコン)=0.75倍
と、高い撮影倍率が得られる事が重要な長所だ。

これは、少し前の時代では、1/2倍程度のものが
多かった「望遠マクロ」を数値上では上回るので、
(注:現代では等倍の望遠マクロも多い)すなわち
「近接135mmレンズは望遠マクロの用途代替が可能」
という話にはなるのだが・・・

ただ上記のような「計算」は、単なる「数字の遊び」
でもある。実用上はトリミング編集等で、見かけ上の
最大撮影倍率は、必要解像度(画素数)が許す限り、
いくらでも高める事が可能な訳だ。
(注:背景の取り込み範囲や遠近感の差異は、勿論
出てくる。その件の詳細は割愛するが一部は後述する)

では実用上の近接135mmのメリットは? と言うと
まずは「シャッター速度を上げられる」という点が
大きい。(他のメリットについては後述する)

ここで重要になるのは、それらのレンズの開放F値と
もう1つは「露光倍数」(”露出倍数”とも)である。
露光倍数は、近接撮影時にレンズの口径比が見かけ上
減少し、暗くなってしまう比率を示す。
(=「井戸の底から見上げる」と、よく比喩される)

これはレンズの光学系のみのスペック(注:デジタル
拡大機能は無関係)に関連し、その(最大)撮影倍率
を元に計算ができる。具体的には以下の式だ、

露光倍数=(撮影倍率+1)x(撮影倍率+1)
であり、マクロの(最大)撮影倍率に応じた結果は、

1倍(等倍)マクロ=露光倍数4.00=約2段暗い
1/2倍マクロ(撮影)=露光倍数2.25=約1段暗い
1/4倍マクロ(撮影)=露光倍数1.56=約1/2段暗い

となる。

で、これに加えレンズ側の開放F値の差がある。
今回記事で紹介のレンズでの例をあげよう、

近接135mm =開放F1.8
望遠マクロ=開放F2.8~F3.5

では、絞り開放で、最も近接撮影をした場合での
露光倍数が掛った口径比を、便宜上F値(T値)で
表してみよう。


近接135mm =総合F値 約(T)2.4
望遠マクロ=総合F値 約(T)5.6~(T)7.0

まあつまり、「望遠マクロ」の方が、実質的には、
だいぶ暗い状態で撮影せざるを得ない。

すなわち、同様な撮影(照明)条件で撮るならば、
多くのケースで近接135mmレンズよりも、望遠マクロ
の方が、シャッター速度が、かなり(4~8倍程度)も
遅くなってしまう。
_c0032138_07392504.jpg
「手ブレ」および「被写体ブレ」を考えるならば、
ここまでの考察に加えて・・
1)ボディまたはレンズに手ブレ補正が入っているか
 否か? また、その精度や効能(性能)は?
2)焦点距離および換算焦点距離、露光倍数において、
 利用者の手ブレ限界シャッター速度を上回るような
 カメラ設定が出来ているか否か?
3)そのシャッター速度と、被写体撮影距離・移動方向
 での移動ベクトルが、被写体ブレを起こさないか?
を、総合的に判断しなければならない。

これらの「意味がわからない」、「予想が付かない」
「限界値がわからない」、というビギナー層等では、
何をどうやったとしても、望遠マクロでの手ブレ又は
被写体ブレは絶対に防げない。

ちなみに三脚を使っても無駄だ、場合によりこれらの
レンズでの被写界深度は、何と1mm台となるケースも
多々あり、1mmの範囲で微動だにしない静止平面
被写体撮影等は、相当に限られたケースであろう。
_c0032138_07392527.jpg
結局のところ、この手の近接望遠撮影においては、
近接135mmレンズを使おうが、望遠マクロを使おうが、
撮影者側に高いスキル(知識、技術、経験、技能等)
が要求される事は確かであり、ビギナー層等では、
何をどうやろうが、「お手上げ」に近く、逆に
上級層等では「機材は何を使っても同様」となる訳だ。

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では、3本目だが、こちらも近接135mmレンズだ。
_c0032138_07392966.jpg
レンズは、SIGMA 135mm/f1.8 DG HSM | ART
(新古品購入価格 100,000円)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)

2017年発売の高描写力AF大口径望遠レンズ。
こちらも「寄れる」135mmレンズである。
_c0032138_07392933.jpg
参考の為、私が知る範囲で、単焦点(大口径)
135mmレンズで寄れる(最短撮影距離が短い)ものを
あげておこう。(注:型番は簡略表記)

*SONY ZA 135/1.8 72cm
*SAMYANG 135/2 80cm(未所有)
*ZEISS MILVUS 135/2 80cm(未所有)
*MINOLTA STF135/2.8 87cm
*SIGMA ART 135/1.8 87.5cm

これらは最短撮影距離に微妙な差があるが、その際の
撮影倍率は、レンズ設計仕様にもよって微妙に異なり、
最短撮影距離が長いレンズの方が撮影倍率が低いとも
限らず、だいたい全てが最大撮影倍率1/4倍~1/5倍
となる。
なお、上記一覧には、マクロレンズは含まれていないが
私が記憶している限り、35mm判用交換レンズにおいて
実焦点距離が135mmのマクロは存在していなかった
と思う(近い焦点距離では125mm、150mmは存在)

撮影倍率の話はさておき、ここで1つの注目点は
一般的な望遠マクロの最短撮影距離が40~50cm程度
であるのに、近接135mmレンズは70~90cm程度と、
やや離れた場所から撮れる事がある。

この為、近づくと逃げる昆虫などでは、望遠マクロ
よりも、近接135mmレンズの方が、「アウトレンジ」
(被写体が気づかない程度の遠距離)からの撮影が
可能となる訳だ。これが、近接135mmレンズでの、
2番目の長所となる。(もう1つの長所は、前述の
「速いシャッター速度が得られる」事)

しかし、では、撮影倍率の方はどうか?
前述のように、近接135mmレンズでは1/4~1/5倍が
素の(何も細工をしていない)状態での仕様だ。
よって、これらの近接135mmレンズを、本格的な
近接撮影に用いるのは、撮ったまま(ノートリミング)
の状態では、僅かに物足りない。

ここの理由は、銀塩時代からの多くのユーザー層に
おける、近接撮影での「経験則」からの総意として、
「マクロ撮影では、1/2倍~等倍の仕様が使い易い」
というセオリー(これは間違っていない)があるからだ。

まあ、単にトリミングをしても良いのだが、後編集での
編集コスト(手間)の増加、撮影時に撮りたい作画意図、
ボケ質の制御や破綻のコントローラビリティ、そして
背景取り込み範囲の撮影時の確認とその意図、遠近感、
撮影時のAF測距点分布の違い、露出分布パターンの違い、
周辺減光や周辺収差をどの程度作画に活かしたいか?
エフェクトやレンズの持つ特殊効果の効き具合、関連して
レンズ周辺収差特性をどう意識するか? そして勿論だが、
記録画素数の減少・・・
といった、様々なトリミング編集での課題や差異により、
できれば撮影時に、きっちりと意図通りに撮りたい訳だ。

すると、撮影倍率を少し高める為の簡便な対策としては
以下がある。
*フルサイズ機では無くAPS-C(以下)型機を母艦とする。
*(撮像センサーの)クロップ機能を用いる。
*デジタルテレコン、デジタルズーム機能を用いる。

まあ、このあたりは必須の対応だ。近接135mmレンズを
近接撮影に用いるのに、フルサイズ機で、素のままの
レンズ仕様で使っていたら、目的にはそぐわない。

ただし、注意点としては、前記の「トリミング」に
おける課題や差異は、この上記の対策においても、
一部は、そのまま残ってしまう事だ。

簡単な例を挙げれば、クロップ機能では、トリミング
同様に記録画素数(解像度)の減少が甚だしい。
しかし、例えばNIKON機に備わるクロップ機能は、
AF測距点および露出分布パターンも変化するので、
その変化した結果が、撮影目的に合うかどうか?が
理解・判断できる上級ユーザー層であれば、クロップ
とトリミングを使い分ける事は出来る筈だ。

ごく簡単な例を挙げると、中央部の被写体が暗く、
画面周囲が全て明るい場合、多くの露出計や露出決定
アルゴリズムでは、被写体はアンダー露出となってしまい、
これはトリミング編集をしてもアンダー露出のままだが、
クロップ機能を用いて、被写体以外の周辺部の光源を
カットしてしまえば、被写体は適正な露出に成り易い。

よって、トリミング編集に比べて意図通りの適正な
露出の写真を撮り易く、場合により無編集のままで
使える可能性もあり、編集コストの低減、あるいは
納期/作品完成時期の短縮、報酬とか成果の効率化
等にも、とても有益である。
(注:本ブログではRAW現像を一切行っておらず、
全てJPEGでの撮影だ。「後でどうにかする」という
発想は個人的には好きでは無いし、そもそも撮影枚数が
一般的な感覚値よりも数十倍も多いので、一々、編集に
手間や時間をかける事は出来ない)

これは一例であるが、要は「色々考えて機材や設定を
選ぶ」という訳である。
初級中級層では、このあたりを理解する事は困難な為、
「カメラやレンズは、一番評判が良いものを1つ
 持っていれば良い」という安直な発想になりやすい。

「近接135mm vs 望遠マクロ」と言う、本記事での
テーマも、そうした話に密接に関連する。
つまり、下世話な比較情報(記事)のように、
「どっちが優れているか?」という結論を出したい
訳では無いのだ。
それぞれにおいて、撮影条件とか、ユーザーの目的、
あるいは組み合わせる母艦(カメラ)や、その設定
によっても、どちらの(どの)システムに優位点が
存在するかは変わってくる。

つまり、「撮影の(総合)目的に合わせて、適正な
機材(やその設定)を選べるか否か?」 そこが
利用者に求められる最大のポイントであり、それが
わかるかわからないか?、実践できるか否か?により、
だいたい、中級者と上級者の境目となる訳だ。

では、沢山の機材を所有しているマニア層ならば、
それがわかるか?というと、そこも少々危なっかしい。
マニア層の習性の一部として、「コレクター志向」や
「コンプリート願望」が存在しているから、多数の
機材は、ただ集めているだけで、それらの特徴の差異
くらいまでは把握しようとしているだろうが・・
それらの特徴(長所短所)を、どのような撮影目的に
どのように使おうか?まで考えているマニア層の
比率は少なく、場合により1台のα7系機体等の汎用性
の高いカメラに、あれこれとレンズを付け替えている
だけである。せっかく、そこまでの機材環境があるの
だから、撮影目的に合わせて、持ち出すシステムを
変えるべきなのだが、そもそも「撮影目的」が
あまり無く、ただ単にハードウェア(カメラやレンズ)
に興味があるだけのマニア層もとても多い。

結局ここも「(実践派)上級マニア」と「中級マニア」
の境目となっているかも知れず、まあつまり、機材
環境を撮影目的に合わせて自由に選択・活用できる
ようになれば、マニアであろうがなかろうが、もう
それは上級者(以上)である。

なお、職業写真家層だが、旧来は、このように、
複数の機材システムを有効活用する環境やスキルを
持っていたのであるが、近年においては撮影機材が
高額になりすぎていて、職業写真家が撮影を職業
(ビジネス、事業)にする上では、多額の設備投資
(つまり、沢山のカメラやレンズを買う)事が
難しくなってきている。趣味でのマニア層のように
収支を考えずに好きにカメラやレンズを買っていたら、
大赤字になってしまい、仕事にはならないからだ。
よって、職業写真家層においても、高性能で汎用性の
高い機材群を少数だけ保有し、それらをできるだけ
長く活用しようとする人達がとても増えているように
見受けられる。

なお、撮影した写真「そのもの」で収益を挙げる事に
限らず、例えば企業や組織等に所属していて、そこでの
業務上、例えば、広報、広告宣伝、商談、状況記録等で、
写真を撮る事が必要とされている人達の比率も大変多い
現代ではあるが、こうした場合、所属企業や組織が、
カメラやレンズを買ってくれるとしても、その予算は
10万円あたりが良いところである。一般的な常識から
考えても、そうした業務活動の経費として100万円もの
撮影機材関連予算は出せない。

だが、現代の機材(市場)環境では、新品価格で
10万円では、ビギナー向けの、とてもショボい機材
しか買う事が出来ないのだ。
で、会社や組織から、そうした撮影の業務を指示命令
される人は、当然、撮影スキルが高い人達であろう、
ちょっとはカメラ等についてもわかっている訳だ。

そういう人達に対し「会社が10万円の予算を出すから
仕事上で必要なカメラを買え」と言ったとしても、
「え~、そんな予算では、まともなカメラなんて
 買えませんよ。いいです、自分の機材を使います」
と言って、たいていの場合、そうした業務上撮影での
使用カメラは、自腹での私物機材となっている状態だ。
_c0032138_07392923.jpg
余談が長くなってきたが、要は、「撮影機材を自在に
選べる環境」という状況は、現代においては、どの
ユーザー層にとっても、非常に限られているという
話である。 
本ブログの読者層には、複数(多数)の機材を所有
するマニア層が多いと思われるが、まあ、つまり、
それは「相当に恵まれた環境だ」という事だ。

現代の、多くのユーザー層では、そのように複数の
機材を所有するケースは減ってきている。
だから、ある意味、その機材群を比較評価するスキル
も、残念ながら、どんどんと減ってきてしまっている。
所有する機材数や比較経験が少ないのだから、
どこが優れているのか?等がよくわからない訳だ。

この点については、職業評価家層でも同様であろう、
高価すぎる機材は、まさか評価の都度で自腹で買う
訳にはいかない。しかし、自身の所有物では無いから
短期でしか評価期間が無い、ましてや新製品レビュー
等では、できるだけ早く、締め切りに間に合わせなく
てはならない。

だが、現代の高機能化された、あるいは高性能化
された複雑な機材群では、正直、1週間や2週間程度
では、その良否や特徴を判断する事はできない。
本ブログにおいては、必ず自身で購入した機材を、
1年間あるいは数年間に渡って使用した後、やっと
記事において、その評価を行っている訳だ。

それと、レビュー記事のほとんどは、その新製品を
数多く売る為の目的がある。仮に弱点ばかりを書いて
しまったら、製品の売り上げとかにも影響が大きく、
レビュー記事には成り得ない。

まあ、したがって、専門(職業)評価者から
ビギナーユーザー層に至るまで、そのレビュー記事
の内容は、頭から信用する訳にはいかない。
_c0032138_07392936.jpg
結局のところユーザーは、必ず自分自身により機材の
評価を行えるようにする(出来る)事が必須であり、
その為には、できるだけ客観的で絶対的な価値感覚を
持つ事が重要だ。
特にいけないのは「皆が良いと言っているし、値段も
高いから、この機材は良いに決まっているのだ」
という「思いこみ評価」である。

スターウォーズ後期映画のルーク・スカイウォーカー
であれば、「素晴らしい。だが、全て間違っている!」
と、きっと言った事であろう。
周囲の多数意見を聞くのは一見して正論に見えるが
その全てが「思い込み」である事は極めて多い。

機材の値段と性能はまったく比例しないし、そもそも
利用者毎に用途や求める機材特性も異なるであろう。
そして、ネット上の多数意見は、単に「付和雷同」
(他人の意見に、訳もわからず賛同しているだけ)とか
何らかの市場的な意図を持った「情報操作」である
可能性も残念ながら良く有り得る話である。
(何らかの機材を、多く、又は高く売る為に、過剰な
 までの良い評判を広める、いわゆる「流言」等)

あくまで、自分自身が機材の価値を判断するしか無いのだ。

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さて次は、今回ラストの望遠マクロシステム
_c0032138_07393497.jpg
レンズは、TAMRON SP AF 180mm/f3.5 Di LD [IF]
MACRO 1:1 (Model B01)(中古購入価格 30,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)

2003年に発売されたAF望遠等倍マクロレンズ。
本レンズには手ブレ補正が内蔵されていない(他の
マウント版も同様)が、SONY機で使えば、ボディ内
手ブレ補正が使える。また、NIKON Fマウント版では
AFモーターが内蔵されていないのでNIKON低価格帯
機ではAFが効かずMF性能も低い為、実用的では無い。
_c0032138_07393425.jpg
さて、こちらも使いこなしがとても難しいレンズだ。
「望遠マクロ」である事を起因とした使い難さに
加えて、本レンズは、やや古い時代のものであり、
超音波モーター等で武装されている訳では無い。
まあつまり、AFは遅く、かったるくて、使い物には
なりにくい状態だ。

ただまあ、このシステム(カメラ+レンズ)の場合、
高精細EVF+ピーキング+DMF機能+AF/MF切換ボタン
等、多数の機能を備えている為、これらを駆使する
事により、AFの課題は殆ど問題にはならなくなる。
(しかし、上級者向けの用法だ)

AFの課題よりも問題なのは、望遠画角(本システム
で270mm相当。注:さらにデジタルテレコン使用可で
最大540mm相当)と、極薄の被写界深度においては、
MFで使おうにも、被写体を見失ってしまうケースが
多発する。つまり、レンズを被写体の方に向けても
距離(ピント)が正しくなければ、被写体はまるで
見えないし、仮にテレコンをかけて540mm相当まで
画角が狭くなっている状態では、近距離撮影において、
正確に被写体の方にレンズを向ける事も困難である。

つまり、被写体がどこにあるのか?が、さっぱり
わからなくなってしまう訳だ。
ここもまた「技能」で回避可能とは言えるのだが、
それにしても難しい撮影だ。

実は、この点も、近接135mmレンズでは課題と
なりにくい。つまり「望遠マクロ」の方が被写体を
捉えるのが難しいし、AF/MFの性能や使いこなしの
技能によっても影響が大きい。
まあつまり、「近接135mmの方が簡単に撮れる」
という意味である。これが3番目のメリットであろう。
_c0032138_07393440.jpg
では、ここまでを総合すると、近接135mmレンズが
望遠マクロレンズよりも優位な点として、
1)より速いシャッター速度が得られる。
2)より遠くから撮れる。
3)被写体探しや、ピント合わせが容易。

という事が言えると思う。
ただ、「だったら近接135mmの勝ちか?」というと
決して、そんな話にはならない。

ここで望遠マクロ側の優位点を挙げておこう。
A)より被写界深度を浅くする事ができる。
B)より背景の取り込み範囲が狭い、すなわち
 小さい被写体だけを主体とした構図が作り易い。
C)同一撮影距離では、より高い撮影倍率で撮れる。
D)近接撮影での画質に優れるレンズが多い。

という訳だ。
で、A)やD)の長所に対抗する為もあり、本記事で
使用している135mmレンズは、開放F1.8の大口径
であり、かつ、135mmとしてはトップクラスの
高描写力を持つ高性能レンズ群である。
まあ、そうでもしないと、望遠マクロに対しての
勝ち目が無いのだ。

なので結局、それら近接135mmレンズは高価だ、
もう1つ、望遠マクロの長所を追加しておこう。
E)より安価に入手できる可能性が高い。

仮に写りのレベルが同等だったとしても、
SONY ZA135/1.8やSIGMA ART135/1.8と比べ、
本SP180/3.5は、定価レベルで約半額であり、
中古ともなれば、約1/3程度もの相場の差がある。
同じ撮影目的で、同様の写真が撮れるのであれば
勿論、機材の価格は安価である程望ましく、それは
真に「コスパが良い」という結論になる。

なお、安価な135mm単焦点レンズでは、高い近接撮影
能力を持たない場合が殆どだ、また大口径望遠ズーム
等も同様に近接撮影能力は高く無い(1mを超える)し、
おまけに高価だ。
_c0032138_07393431.jpg
さて、総括であるが、以下のような結論であろうか
・望遠マクロの方が近接135mmよりもコスパが良いが、
 使いこなしがとても困難である。
・近接135mmレンズを望遠マクロの代用品として使う
 事は可能ではあるが、それなりに高価であるし、
 仕様的に物足りない点(例:撮影倍率)を緩和したい
 場合は、機材環境を整えたり編集作業が必須となる。

まあつまり、どちらを選んでも長所も短所もある
という結論だ。
・・それにしても、あまりに当たり前の結論だが、
こういう事は、自分で考えて、実際に試してみない
限り、わかりようも無い。
実際の検証もせずに、思い込みだけで語っていたり、
誰か他人が言った事を頭から信じてしまう事は禁物だ、
そこは大原則である。

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さて、今回の「望遠マクロvs近接135mm編」は、
このあたり迄で・・ 次回記事に続く。

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