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最強マクロレンズ選手権(13)B決勝戦

最強のマクロレンズを決定するシリーズ記事。
今回から決勝リーグとなり、まずは「B決勝」
すなわち「下位決勝、または順位決定戦」である。

このB決勝戦に進出できた所有マクロレンズは
以下の6本だ。(それらを簡略名表記で示す)

*COSINA MACRO APO-LANTHAR 65mm/F2
*SIGMA EX105mm/F2.8
*TAMRON 20mm/F2.8
*PENTAX HD35mm/F2.8
*OLYMPUS OM90mm/F2
*TOKINA 300mm/F6.3

レンズ個別の評価点は記事の最後で付ける、
それで「最強マクロ」の順位が決まる事となる。

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まずは最初のB決勝進出マクロレンズ。
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レンズ名:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/f2
(注:独語綴りの変母音記載省略。本ブログで全て同様)
レンズ購入価格:122,000円(新品)(以下、MAP65/2)
使用カメラ:SONY α6000 (APS-C機)

2017年に発売されたフルサイズ対応大口径MFマクロ
レンズ。最大1/2倍仕様である。

本「決勝リーグ」に進出したレンズ群は、全て
この「最強マクロ選手権」の予選リーグにおいても
対戦(紹介)をしているので、重複する内容になって
しまうので、個別のレンズ毎の長所短所等の説明は、
できるだけ最小限とする。
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本MAP65/2は、近代レンズらしく、コンピューター
光学設計による高度なレンズ構成により、描写力が
高い特徴を持つが、反面、高付加価値化により高価
な点が弱点だ。

だがまあ、同じ「高付加価値化」と言っても、
マクロレンズには不要と思われる「手ブレ補正機能」
や「超音波モーター」を搭載していないところは、
消費者側からの納得感は高い。すなわち
「余計な機能は不要だから、純粋に描写性能だけを
 高めて欲しい、それだったらお金を出すぞ」
という硬派なニーズに対応できている、という意味だ。

MF専用である事も、潔くて良いであろう。
もっとも、この点に関しては、コシナの生産ライン
はMFレンズ製造に特化していると思われるので、
変にAFで無い事は、製造側にとっても利点であろう。


その昔、1980年代頃、コシナは数機種であるがAFの
レンズを製造し、自社ブランドで販売した事がある。
私は、そのうちの1本しか現有レンズは無いが、
さほど高性能なAFレンズでは無かったという認識だ。
(特殊レンズ第53回「COSINA レンズ」編記事参照)
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総括として、特に大きな課題は見当たらない優秀な
マクロレンズである。高価格と、やや使い難い点が
許容できるマニア層向けレンズであろう。

現在、中古玉数も多く、入手性は悪く無いと思う。

---
では、2本目のマクロレンズ。
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レンズ名:SIGMA AF MACRO 105mm/f2.8 EX DG
レンズ購入価格:5,000円(故障品)(以下、EX105/2.8)
アダプター:CANON EF-EOS M
使用カメラ:CANON EOS M5(ASP-C機)

2004年に発売されたフルサイズ対応AF等倍マクロ。

入手価格が安価なのは、AF故障品を購入したからである。
当時、既にNIKON Fマウント版の同型レンズを所有していて、
それの写りが良かった為、CANON EFマウントで同型レンズ
を追加購入。入手価格は、NIKON F版の中古が25,000円に
対し本AF故障品は1/5の価格であったので、これは満足だ。

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なお、AFが動作しないのは、もしかすると数年前(2000年)
での、「CANONとSIGMAのプロトコル変更」(その時代に、
CANONはSIGMAの旧型レンズを新型EOS機で使えなくした)
の影響も無きにしもあらずか? との懸念もあった為、
今回、電子アダプターEF-EOS Mを用いて再確認を行った。
電子アダプターでは、あまり強い「プロトコルの縛り」
(=排他的仕様)が施されていない可能性もあるからだ。

だが、残念ながら、やはりAFは動作せず。一応AF動作の
コマンド(命令)は、カメラ側からレンズに向かって
発せられている模様で、「ウーン」とモーターの駆動
らしき機械音が僅かに聞こえるが、ピントリングは廻って
くれない為、これは純粋に、レンズ側のAF機構(メカ)の
故障である事が確認できた。

まあ、そうならばそれで良い。そうであろう事を予想し、
今回は母艦としてミラーレス機EOS M5を使用している。
この機体であれば、レンズ側をMF設定にした際にも、
「常時」ピーキング表示を出す事が出来る。
(注:一部の他社ミラーレス機では、常時ピーキングを
出す事ができないケースもある)

「EFマウントのレンズだから」と言って、これをEOSの
一眼レフで使用すると、たいていの近代EOS機では、
光学ファインダーおよびスクリーンの性能が低くて、
MF合焦操作に、「イマイチ確証が無い」状態だ。

この課題を鑑みて、所有EOS 6DのみMF用スクリーンの
Eg-Sに換装してあるが、それは抜群の効果をもたらす
ものではなく、かつ、フルサイズでしか使えない。
(注:2010年代前半までのEOS一眼レフでスクリーン
交換が出来る機体はフルサイズ機が中心で希少であり、
2010年代後半からのEOS機では、殆どの機体で交換不可
となっている。この為、EOS 6Dを、後継のMarkⅡに
アップデートも出来ない→MarkⅡはスクリーン交換不可)

「EOS APS-C機で、撮影倍率を高められないものか?
EOS APS-C機で、MF性能の優れたものは無いのか?」
と思っていたところ、ミラーレス機のEOS M5を母艦として
使用すれば、その課題が解決できる事に気づき、今回は
その用法を実践している。

案の定、本(故障)レンズを、非常に快適に使用する事が
出来る。近接撮影では、どうせAFも超音波モーターも殆ど
役に立たないのだから、「MF+ピーキング」で十分だ。
APS-C機なので、撮影倍率も高められ、レンズ周辺収差を
カットして画面平均画質を高める事も出来る。
結果、申し分の無いシステムに成り得る訳だ。

もっと早く、この方法に気づくべきであったが(汗)
まあ、「用途開発」とか「弱点相殺型システム」というもの
の発見は、一種の「研究」である為、そう一朝一夕には
実現できるものでは無い。何年、あるいは十数年もかけて
成り立つものなのだ。(なので「ちょっと借りてきた」
だけの機材を評価する等は、有り得ない話だと思っている)
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本レンズの性能(描写力)であるが、過去、多数の記事で
紹介・評価している通り、申し分の無い実力値を持つ。

SIGMAとしても、製品ラインナップ上での主力マクロで
あろう。それは、SIGMAが2013年に製品ラインナップを
「アート、コンテンポラリー、スポーツ」に整備した際、
EX50/2.8や、EX70/2.8の旧来のマクロを生産終了に
してもなお、本EX105/2.8は、OS(手ブレ補正)や、
HSM(超音波モーター)を搭載して(2011年に)後継機
とし、「Others(その他)」の製品カテゴリーに押し
込めてまで生産継続した事からも、このEX105/2.8の
製品系列が、SIGMAから見ても、捨て難いものであった
だろう事が類推できる。
(追記:2020年より、光学系を変更した同仕様の
マクロが、ミラーレス機用にも発売されている)

OSやHSMは、個人的には「マクロには不要」と考えて
いる付加機能であるから、ますます本EX105/2.8(旧)
の存在意義が高まり、コスパの良さが光る状態である。

総括だが、このレンズは「買い」であろう。
仮に、TAMRON SP90/2.8系マクロを既に所有して
いたとしても、重複購入する意味は十分にある。

---
では、3本目のマクロレンズ。
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レンズ名:TAMRON 20mm/f2.8 Di Ⅲ OSD M1:2
(Model F050)
レンズ購入価格:30,000円(新古)(以下、F050)
使用カメラ:SONY α7S(フルサイズ機)

2020年に発売されたミラーレス機用、フルサイズ
対応AF超広角ハーフ(1/2倍)マクロレンズ。
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初の超広角マクロ、と言うべきレンズであろうか?
それか、”一応前例は有る”と言うべきか・・?
本レンズ以前の時代での、フルサイズ対応の20mm以下
の(超)広角マクロは、例えば下記のようなものがある。
(注:焦点距離、最短撮影距離、最大撮影倍率、
 発売年代、レンズ型番簡易表記、の順で記載)

15mm:12cm:1.00倍:2010年代:LAOWA 15/4
20mm:20cm:0.2?倍:1990年代:COSINA MC20/3.8
20mm:20cm:0.25倍:2000年代:SIGMA EX20/1.8
20mm:11cm:0.50倍:2020年代:TAMRON 20/2.8(本レンズ)
20mm:数mm:4.50倍:2010年代:中一光学 FW20/2

いずれのレンズも、本シリーズ第5/6回記事で紹介済み
ではあるが、未所有のレンズで抜けがあるかも知れない。
でもまあ、他に超広角マクロと言うものは、あまり聞いた
事が無いので、だいたい、これくらいか?

ちなみに「中一光学 FreeWalker20/2」は1970年代の
「OLYMPUS OM20/2医療用特殊マクロ」の復刻版であり、
これは一般無限遠撮影が出来ない特殊な製品である。

なお、AFレンズは、この内SIGMA EX20/1.8と本レンズ
TARMON 20/2.8(F050型)のみである。
ただし、「AFでもMFでも、被写体に接近した撮影は
非常に難しい」という事は確かである。

本レンズの最大の課題は、AF精度が低い事に加えて、
MFでは無限回転式ピントリング仕様で、極めて使い難い
弱点があり、「重欠点」に等しいとの認識を持っている。
(注:AF速度・精度に関しては、SONY機の母艦を、
より新しく、かつ像面位相差AF搭載の機体にする事で
僅かに改善されるが、顕著に良くなる状態では無い)

前述のように「超広角マクロ」は、世に殆ど存在しない
が故に、この製品のコンセプトや仕様は非常に好みだ。
だが、その実用性が低いのであれば、せっかくの優れた
製品コンセプトも役には立たない事となってしまう。

超音波モーターとか距離指標を省略して、総合的に
コストダウンした事が課題なのであろう。

数年前(2010年代中頃)のSP F1.8単焦点シリーズ
が、「価格の高さ(9万円~11万円台)という事から、
不人気であったと」メーカー側では推測しているの
かも知れないが、個人的な視点からすれば、9万円
以上であっても、そこまでの性能が伴っているならば、
コスパが悪いと思う事は無いし、事実、SP F1.8系は、
どれも極めて高性能で、悪いレンズでは無い。

(参考:最強レンズ選手権シリーズ記事において、
SP45/1.8(F013)=最強50mm選手権、優勝
SP35/1.8(F012)=最強35mm選手権、第3位
SP85/1.8(F016)=最強85mm選手権、暫定優勝
と、いずれも立派な成績を上げている)

SP F1.8単焦点シリーズが不人気であったのは、現代
における主力消費者層がビギナー層ばかりになって
いる為、「開放F1.8は、開放F1.4のレンズに比べて、
低性能の廉価版だ!」というビギナー評価しかして
こなかった事が主たる原因であり、それでいて
価格が9万円台以上と高額であったのが問題点だ。

主原因は開放F1.8であり、副次的に価格の課題が
あった訳だから、価格の高さは主原因では無い。
(ちなみに、もう1つの理由を挙げれば、35mm、
45mm、85mmという他社レンズは、マニア層ならば
誰でも所有している。だからこそ、このスペック
のレンズを欲しがるのはビギナー層以外には無い。
中上級者で無いとSP F1.8系の凄さは理解不能だ)
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・・で、本レンズ、あるいは、M1:2シリーズは、
SP F1.8単焦点シリーズの営業的失敗の反省から、
ビギナー層向けに「かつて見た事の無いスペック
(広角マクロ)を、安価に提供する」という
企画意図があったのだろう、と推測できる。

価格帯は、SP F1.8系の半額程度で、定価でも
46,000円(+税)となっている(全Model同一)

しかし、この「半額」というコストダウンの為に
ローコストの直流モーター(OSD)を使用し、
シームレスMF実現の為に距離指標を廃止してしまった
事から、「近接撮影において、AFピントでは合わず、
MFでは困難な操作性を強いられる」という重欠点が
生じてしまったわけだ。

「せっかくのユニークな製品コンセプトが活かせず、
まことに惜しい限りだ」とも言えるが・・

なんだか、近年のTAMRONでの、製品企画思想が、
どうも、ちぐはくなように思えてならない。
とても良い性能のレンズ(SP F1.8系)を作っても
マーケティング(市場調査・市場分析)の甘さで
売れないし、ユニークな仕様のレンズ(M1:2系)
は、コストダウンの為に実用性能を満たしていない。
結果的に、非常にちぐはくで「市場の流れに乗れて
いない」ように思えてならないのだ・・・

(参考:とは言え、本レンズ発売以降、2021年頃
より、各社(カメラ・レンズメーカー)においても
性能を削って低価格化した新製品が増えて来ている。
根本原因として「市場縮退で高価格化されてしまった」
近代の新製品の状況を打開したいという要素や戦略が、
各社に存在するのであろう。ただし、市場縮退により、
マニア層等も激減してしまったので、これらの新鋭
低価格帯レンズを直ちに入手し、速やかに適正なレベル
でのユーザーレビューを行える人達も皆無となったので
実際の新鋭低価格帯レンズの実力値は、現状では不明だ)

---
では、4本目のマクロレンズ。
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レンズ名:HD PENTAX-DA 35mm/f2.8 Macro Limited
レンズ購入価格:26,000円(中古)(以下、HD35/2.8)
使用カメラ:PENTAX KP (APS-C機)

2013年に発売されたDA型(APS-C専用)準広角
(標準画角相当)AF等倍マクロレンズ。
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簡単に言えば「弱点の殆ど無い優秀なマクロ」
である。

APS-C機専用である事は、PENTAX機は、K-1系以外
は、全てAPS-C機なので、何ら問題にならない。
描写力は優秀だし、新鋭HDコーティングもそれに
寄与している。
ちゃんと有限回転式ピントリングと距離指標を持ち
上級MF技法にも対応できる、勿論近接撮影では、
MFの比率と重要性が高まるので、こうした仕様で
無い(例:超音波モーター+無限回転式)近代の
マクロレンズは、その時点で、「失格」に等しい
扱いになってしまっている。

絞り環こそ持たないが、変な電磁絞り対応では
無く、機械式絞り動作連動方式であるから、これは
機械式絞り込みレバーを備えたマウントアダプター
を用いれば、任意のミラーレス機で用いる事も出来、
(ミラーレス機側の)各種MFアシスト機能を併用し、
さらに近接ピント性能を高める事が出来る、という
母艦汎用性がある。
作りも良く、外観は、ほとんど金属製と見間違う
ような高品質な仕上げだ。
おまけに、比較的安価であり、コスパは極めて良い。

いったい、このレンズの何が不満なのであろうか?
まあ、思うに、PENTAXは、旧来の銀塩時代から
一定ファン層(PENTAX党)を抱えてきたのだが、
2010年前後での、HOYA-PENTAX時代において、
極端な「エントリー戦略」を行ってしまっていた。

ここでエントリー戦略とは、一眼レフでは低価格帯
機の性能充実と、ファッショナブル化、それから
特殊ミラーレス機(Qシリーズ、K-01)の発売。
両者に共通するオーダーカラー制度の実施。
販売戦略における、アニメ、ゆるキャラ、他企業
とのコラボ実施、あるいは特殊仕様カメラの発売
(例:エヴァンゲリオン・モデル等)などがあり、
この戦略により、HOYA-PENTAX時代のカメラ事業は
黒字化したそうなのだが・・

これらの措置で、しっちゃかめっちゃかに製品企画を
いじくり廻し過ぎたのだろうか?この時代において
旧来からのマニア層を中心とした「PENTAX党」の
比率は激減してしまったように思えてならない。

「なんだか、初心者向けの浮ついた企画のカメラ
 ばかりになってしまったよ。FA-Limitedの高性能
 レンズや、SP/MX/LXのような優れたカメラは、
 もう二度と出してくれないのだろうか・・?」
と、PENTAX党のマニアであれば思った事だろう。

HOYA-PENTAXの黒字化戦略は、数年続いただけで
さっと撤退、事業を丸々今度はRICOHに売却する。
RICOHは新規技術を中心に据え、そこまでのHOYA
時代に開発がほったらかしであったPENTAX上級機に、

新機能を搭載して巻き返しを図るが・・

残念ながら、PENTAX機のユーザー層は、すでにHOYA
時代にかき回された入門層や初級層ばかりとなって
しまっていた。従来機と比較して素晴らしく操作系が
改善された「PENTAX KP(2017年)」を見て初級層は
「高感度性能が付いただけで、旧来機の2倍も高価に
 なったので、がっかりだ」
のようなビギナー評価(操作系の価値がわからない)
をしているのだから、結局のところ、2010年代中頃
からのRICOH版設計思想のPENTAXデジタル一眼レフ
の上級機の「超絶性能」は、ビギナー層ばかりに
なってしまったPENTAX機のユーザー・消費者層からは
全く理解されない。

哀れ、2017年以降は、PENTAXでは新型機(レンズ交換
型カメラ=一眼レフとミラーレス機)を何も発売
する事が出来ていない。
まあつまり「ターゲット層(消費者)が見えなく
なってしまった」訳である。
(追記:ようやく2021年に、新型機K-3 MarkⅢが
発売されたのだが、ターゲット層が見え難い製品だ)

「PENTAXは、フルサイズ機も少ないし、フルサイズ
 用で評判が高いレンズも少ないから、いらないよ」
等と考えてしまうビギナー層ばかりでは、もうさすがに
商売は厳しい。そう考える消費者層は、最終的には
PENTAX機を買う事はなく、SONY α、CANON EOSに
走ってしまう(シニア層ならばNIKONに行く)だろう
からだ。
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まあだから、本レンズHD35/2.8のような、優れた
レンズであっても正当な評価を受ける術(すべ)も無く、
きっと、このまま時代とともに忘れ去られてしまう
のであろう。


まあ、極めて惜しい話ではあるが、これは消費者側の
問題だけ、とも言い切れない。時代や世情、環境の変化に
メーカー側の企画や技術開発も追いついていけなかった、
という要素もあるだろう。

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さて、5本目のマクロレンズ。
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レンズ名:OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO 90mm/f2 Macro
レンズ購入価格:50,000円(中古)(以下、OM90/2)
使用カメラ:OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)

1980年代後半頃に発売と思われる、MF1/2倍中望遠
マクロレンズ。
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優秀なマクロであり、描写表現力上の弱点は無い。
加えて、μ4/3機に装着する事で、自然観察撮影
用途において、無類の適合性を発揮する為、
殆ど「軽量で大口径の仮想望遠マクロ」のような
実用的な特性に変貌する事が魅力となっている。

惜しむらくは、OM-SYSTEMの企画開発時点において
「宇宙からバクテリアまで(何でも撮れる)」と
「21mmから250mmまで、開放F2で揃えられる」
など、OM ZUIKOの交換レンズラインナップを
「充実しすぎた」事が課題になったのではなかろうか?

まあ勿論、交換レンズがずらりと揃っていないマウント
は消費者層から見て魅力を感じない為、上記の企画の
意図や戦略は間違いでは無い。

ただ、問題は販売台数だ。当時のOM機(銀塩一眼)は、
さほど大きなシェアを持った訳では無い。だから交換
レンズも沢山売れるものでは無い。そこにラインナップ
充実の為に、数が売れないレンズ群を用意すると、
開発費や製造費の原価の償却の為、非常に高価な
レンズとなる。ますます売れないし、そういう特殊な
仕様のレンズは大型化してしまう事もあるから、
小型軽量なOMシリーズの一眼レフへ装着するのは、
明らかにアンバランスだ。


さらにまずい事に、1980年代後半のAF転換期に
OM-SYSTEMはAF化に失敗。そのまま1990年代を通じて
OM-SYSTEMが販売されるが、数度の「値上げ」の措置
があって、OM一眼レフやZUIKOレンズは「マニア層や
好事家向けの、高価な贅沢品」となってしまっていた。
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本OM90/2も同様な立場だ。高価すぎて、あるいは大型
すぎて殆ど売れておらず、後年には極めてレア(希少)
なレンズとなる。その結果「投機的」な観点から、
本レンズの中古相場は「時価」となり、8万円、10万円
あるいはそれ以上の価格で売られている状況となった。

「性能に比例している価格」では無い製品は、すなわち
「コスパが極めて悪い」という状態になるから、
残念ながら本OM90/2を現代において、推奨できる
理由は何も無い。

「どうしても欲しい」などとは決して思わない事が
賢明であろう。たとえば、マクロ・アポランターの
65mm/F2を買ってきて、APS-C機につけて写した方が、
(約100mm画角、F2、最大撮影倍率0.75倍以上)
本OM90/2をフルサイズ機で使うより、よほど良く写る。

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次は本記事ラストのミラー(レンズ)となる。 
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レンズ名:TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
レンズ購入価格:18,000円(中古)(以下、MF300/6.3)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)

2012年発売のMFミラー(レンズ)である。

μ4/3機で換算600mm相当、最短撮影距離は80cmで、
最大撮影倍率は1/2倍仕様であるが、まずは
μ4/3機専用なのでフルサイズ換算等倍相当、加えて
μ4/3機に備わる各種デジタル拡大機能と組み合わせれば
実用範囲を超えた超マクロ撮影も可能だ。

過去のランキング系記事においては、
*ミラーレスマニアックス名玉編=第13位
*ハイコスパレンズBETS40=第12位
*最強超望遠レンズ選手権=優勝

・・の好成績を上げている「強豪レンズ」である。
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本来は、本「最強マクロ選手権」においても、決勝進出
マクロレンズにノミネートされても、おかしくは無いが、
ただ、本レンズは「ちゃんとしたマクロレンズ」だとは
言い難い点もあるから、そのあたりは、他の本格派マクロ
レンズに少しだけ配慮をして、決勝戦では無く、B決勝戦
に進出とした経緯もある。

でも、そうしたとしても「B優勝」または、「B準優勝」
あたりの高い位置にランクインするとは思うが、もうそこは
本レンズの実力値であるから、これ以上、あれこれと忖度
(そんたく)する必要は無いであろう。

用途はやはり「自然観察撮影」がベストであろう。
600mmの換算画角から、遠距離の野鳥撮影等にも
向くし、普通そのようなシステム(カメラ+レンズ)
を一眼レフで組むと、数kgという、持ち上げられない
程の重量級システムとなってしまうのだが・・

本システム(DMC-GX7+MF300/6.3)であれば、
装備重量(付属品含む)でも、およそ700gしか
無い、これはハンドリング性能(持ち運び、構え)
において抜群の優位性を発揮できる事となる。

まあ「片手でひょいひょい」と撮るのは超望遠画角
であるから不可能とは言えるが「片手で持ち歩く」
事については、まるで負担は無い。

MFなので、遠距離(無限遠)撮影における、ピント
合わせの負担も少ない。純粋に無限遠撮影ならば、
ピントリング(有限回転式)を、いっぱいに廻して
おくだけでピントが合うから、遠距離を飛ぶ野鳥
等の撮影において「合焦時間=ゼロ秒」の理想的な
システムとなる。ただし、ミラーレンズの常として
無限遠からやや近づいていく、20m~∞あたり
の距離域においては、通常のガラスレンズよりも
ピント合わせの精密性が要求される点がある。
つまり、数十mという中途半端な距離にある
野鳥等においては、飛行中のピント合わせは、やや
難しいという事になる。これはPANASONIC μ4/3機
の優秀な精度のピーキング機能を持ってしても同様で
あり、MF操作自体が困難なのだから、MF精度は
そこに依存してしまう訳だ。

また、開放F6.3は、やや暗いので、日中晴天時なら
何も問題は無いが、雨天、夕景、室内等の弱暗所と
なると、シャッター速度の低下は、動体被写体ブレ、
利用者の手ブレ、の両方に留意しなければならない。

で、遠距離撮影のみならず、そのまま視点を近くに
寄せると、最短撮影距離80cmは、中距離にある
小動物や小型昆虫(トンボや蝶など)を全て
ターゲット(被写体)とできる、無類の被写体汎用性
を持つ。その際の注意点であるが、
1)近距離のピント合せは、なかなかシビアである
2)絞りが無いので、被写界深度調整が困難
3)露光倍数で、やや暗くなり、ブレリスクが発生
4)リングボケ発生の是非を意図する事
がある。

近接撮影は、結構高難易度となるので上級層や
実践派マニア層向けであろう。
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やや使いこなしが難しい点を除けば、仕様、性能、
入手性、コスパ等において不満は無い事であろう。
μ4/3機の上級ユーザーであれば、必携のレンズだ。

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さて、ここから以下はB決勝戦の順位である。

順位は、個人評価データベースでの「総合平均点」
とするが、特別加点として「歴史的価値」、「用途開発」
(用途適正)を合計最大0.4点まで加算する事とする。

B決勝最終順位は以下の通り。

1位:4.1点+加点0.2:TOKINA 300/6.3
2位:4.2点+加点0.0:OLYMPUS OM90/2
3位:3.9点+加点0.2:COSINA MAP65/2
4位:3.8点+加点0.0:SIGMA EX105/2.8
5位:3.7点+加点0.0:PENTAX HD35/2.8
6位:2.9点+加点0.4:TAMRON 20/2.8

・・という結果となった、以下は寸評である。

B優勝(決勝順位を含めて、総合6位相当)は、
「TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO」
となった。まあ本文で前述した通り、非常にユニーク
な特徴を持つマニアックな超望遠マクロであるから、
このあたりの順位にランクインするのは当然であろう。

2位、「OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO 90mm/f2 Macro」
は、OM-SYSTEMの範疇に留まらず、銀塩時代を代表する
名マクロレンズではあるが、現代における入手性が
極めて低い事が最大の課題だ。これは非推奨。

3位、「Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/f2」
は、現代において入手性が高い最善のマクロであろう。
ただし価格が高価すぎるので、中古買い等で適宜、
入手価格を下げないと、コスパ評価が低すぎる。
幸いして中古市場での玉数は比較的豊富ではあるが、
例によってコシナ製品は、いつのまにか生産完了し
入手不能となって、投機的要素がついて高額化する
危険性が高いので、必ず流通期間内に入手する必要が
ある。

4位、「SIGMA AF MACRO 105mm/f2.8 EX DG」
は、思ったよりも順位が伸びていない。
本シリーズ記事執筆前の時点での予想(構想)においては
”このレンズ(EX105/2.8)がB優勝というのが妥当か?”
という感覚値ではあったが、やや意外な結果だ。
(他のマクロレンズが十分に個性的な為、基本評価点が
やや高目に付けられていた事が原因であろう・・)
ここでの順位とかに拘らず、安価な個体を見つけたら
入手しておくのが望ましいマクロレンズだと思う。

5位、「HD PENTAX-DA 35mm/f2.8 Macro Limited」
は、PENTAX機(デジタル一眼レフ)ユーザーならば
必携のマクロであろう、特に目につく弱点は無い。
ただまあ、記事本文中に記載したように、既に
PENTAX機のユーザー層も激変し、かつ、市場縮退の
まっただ中のレンズであるから、将来性については
全く期待できない事は重要なポイントだ。

6位、「TAMRON 20mm/f2.8 Di Ⅲ OSD M1:2」
は、最新鋭(2020年発売)、かつ非常に特殊な仕様
(フルサイズ対応超広角マクロ)であるので、本B決勝
戦にノミネートされたのだが、残念ながら評価点が全く
伸びていなかった。まあ、マクロとしての実用的な面
での使い難さが、大きな課題となった訳だ。

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次回の本シリーズ記事は、最終回となる。
「最強マクロ選手権・決勝戦」
を予定している。


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