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最強マクロレンズ選手権(12) 望遠マクロ・予選(2)

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最強のマクロレンズを決定するシリーズ記事。
「望遠マクロ」カテゴリーでの、予選第2組だ。

では早速、望遠マクロの予選(2)を始めよう。

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まずは最初の望遠マクロレンズ。
_c0032138_07125342.jpg
レンズ名:TAMRON SP AF 180mm/f3.5 Di LD [IF]
MACRO 1:1 (Model B01)
レンズ購入価格:30,000円(中古)(以下、SP180/3.5)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ (APS-C機)

2003年に発売されたAF望遠等倍マクロレンズ。
_c0032138_07125375.jpg
この時代ではまだ、手ブレ補正機能(TAMRONではVC)も、
超音波モーター(TAMRONではUSD等)も、搭載されて
いない古い時代のレンズであるが、毎回述べている
ように、マクロレンズでの近接撮影時には、そうした
付加機能は不要であったり、時に弊害にすら成り得る
ので、それら余計な機能が入っていない本レンズは、
むしろ実用的には適正だとも思っている。

そして、本レンズは2016年には生産終了となって
いて後継レンズは存在しない。だから、ますます
TAMRONの望遠マクロが欲しい場合は、本レンズしか
選択肢が無い状態だ。

で、ご存知のようにTAMRONは90mmのマクロレンズを
1979年から発売し、その系譜は「定番マクロ」として
市場に定着している。「マクロのタムロン」という
ブランドイメージを崩さない為にも、この時点で新たに
追加された180mmのマクロは、それなりに高性能である
事を、各方面からも期待されていた事だろう。

ただ、ちょっとタイミングが悪かったかも知れない。
本レンズが発売された2003年は、銀塩時代の終焉期
であり、翌2004年には、各社からアマチュア層でも
買える価格帯(20万円以下)のデジタル一眼レフが
出揃った時代である。本ブログでは、その2004年を
「デジタル一眼レフ元年」と称している。

その時代の普及版デジタル一眼レフは、全てAPS-C型
機であり、本レンズは一応、NIKON F、CANON EF
それと(KONICA)MINOLTA αマウントで発売された
が、いずれの(APS-C型)機体に装着時であっても、
換算270~288mm相当の、かなりの望遠画角の
マクロとなってしまう。

この状態だと、たとえ中上級者層であっても・・
中「300mm弱のマクロだと? そんなもので撮る
  被写体は無いよ。それに手ブレするだろう?」
・・と、かなり、引いて(敬遠して)しまうのでは
なかろうか・・?
だから、「本レンズが飛ぶように売れた」等の話は
一切聞かなかったし、周囲でも所有している人は
皆無であった。

私も、ほぼ同等の理由で、このレンズの購入を
躊躇っていた。高価(発売時約10万円)でもあるし、
使い道が無いならば、コスパも悪いのではなかろうか?
・・と、まあ、そんな感じであった。

で、発売から10年以上を過ぎた2010年代、巷では
フルサイズ機も一般的になってきたし、本レンズは
後継型も出ずに、古くなり生産中止になった事で、
10万円もしていた価格は中古で3万円台という
安価なものも見かけるようになった。
「そろそろ買い頃か・・」と思って、これを入手。

というのも、2010年代、私は結構「自然観察撮影」
というジャンルも行うようになっていて、中距離の
小さい昆虫(トンボや蝶等)を撮るのに、適正な
レンズが無い(中望遠以下のマクロでは、撮影倍率を
稼ぐには寄る必要があるが、近寄ると昆虫は逃げる。
また、望遠系レンズでは、最短撮影距離が長すぎる)
・・ので、そういうピンポイントでの用途として、
「望遠マクロ」は最適だろう、と思ったからだ。

まあ一応そういう類のレンズも所有してはいたが、
重量が非常に重かったり、設計が古かったりと
適正なものが、やはり無かったのだ。
本SP180/3.5であれば、1kgを切るスペックで
あるし、どうせ100%手持ち撮影(注:元々、
三脚は一切しないスタイルだが、昆虫等の撮影では、
あちらこちらにレンズを向けて、数秒以内に撮らないと
逃げてしまう事もあるので、ますます三脚は使えない。
三脚では速写性が無く、まず間に合わないからだ)

・・(三脚は使わないので)レンズに備わる三脚座を
取りはずすと、さらに軽量化できると踏んだ。
三脚座を外すと、保護フィルター込みの装備重量が
実測で874gしか無く、これであれば手持ち撮影での
ハンドリング性能(持ち運び。そして、どこへでも
すぐに向けられる取りまわし)は及第点である。

今回使用の母艦SONY α77Ⅱとの組み合わせでは、
バッテリー等を含む「装備総重量」は、約1.6kgだ。
このあたりならば何ら問題無い。

システム(カメラ+レンズ)の限界重量という物は、
利用者各々の体力や撮影スタイルに依存するのだが、
私の場合では、およそ2.3kg~2.5kgだ。
それ以下であれば、丸一日そのシステムを使っていても、
さほど、その重量は負担には感じない。
_c0032138_07125335.jpg
余談が長くなりそうなので、簡単に本SP180/3.5の
長所と短所をまとめておこう。

<長所>
*非常に高い描写表現力(=個人評価5点満点、
 このレベルは多数の所有レンズ中、上位5%しか無い)
*望遠マクロとしては軽量であり、ハンドリング性能
 が高い。
*中古相場が安価で、かなりコスパが良い。

<短所>
*AFもMFもピント合わせが極めて困難。

ピント合わせの件だが、まずAFは駆動域が広すぎて極めて
遅い。これはもう完全に実用範囲以下ではあるが、たとえ
超音波モーターを入れたところで、劇的に改善されるとは
思えず、今度はシームレスMFの課題が出てきたりするので、
これはもう、このまま「AFを使わない」で、課題回避する
しか無いであろう。

MFで使う場合は、 開放測光の母艦では被写界深度が
浅すぎて、たとえ目の前にある被写体でも、ピントが少し
でもずれたら、もうボケてしまって何も見えない。
同様に画角(撮影範囲)も極めて狭いから、距離と角度を
同時に見積もって被写体にピタリと向けるのは至難の業だ。

また、AFでもMFでも屋外撮影では、被写体との距離は
常に細かく変動している。
つまり、被写体は風で揺れたり、昆虫等では動いている
事もある。そして、撮影者自身の「距離ブレ」も要因だ。
で、例え三脚を立てようが、前者の被写体ブレは防げない。

この課題への対応は、「連写MFブラケット」が有効で
あろう。通常、この技法は「高速連写中にピントリング
を廻す」事で、ピント位置が異なる写真を大量に撮り、
後で、最もピント位置が適正なカットを探し出すのだが
(=通称「下手な鉄砲も数撃てば当たる方式」)
本レンズの場合では、極薄の被写界深度で、かつ被写体
ブレも手持ち撮影での撮影者の距離ブレも発生している
から、ピントリングは廻す必要も無く、そのまま連写を
するだけで、微妙に距離の異なる写真が沢山撮れる。
今回は、その技法を前提に、高速連写機能に優れた
(最大秒12コマ可能)SONY α77Ⅱを母艦としている。
_c0032138_07125343.jpg
あれこれと課題を回避しながら用いれば、本レンズ
SP180/3.5の高い描写表現力を活用する事が出来る。
もう自然観察撮影では、本レンズを手放す事は出来ず
「必要度」の個人評価点が極めて高いレンズである。

本シリーズ記事の決勝リーグにノミネートされる事は
まず間違いないであろう。

---
では、次のレンズ。
_c0032138_07130385.jpg
レンズ名:MINOLTA STF 135mm/f2.8 [T4.5]
レンズ購入価格:118,000円(新品)(以下、STF135/2.8)
使用カメラ:SONY α65 (APS-C機)

1998年に発売された、MF望遠「アポダイゼーション
光学エレメント」内蔵レンズ。
_c0032138_07130312.jpg
本レンズはマクロでは無いが、135mm単焦点レンズ中、
ベスト5に入る最短撮影距離87cmを誇り、その際の
最大撮影倍率は、フルサイズ時1/4倍(0.25倍)
APS-C機使用デジタルテレコン2倍時で最大3/4倍
(0.75倍)にも到達する。

例えば前述のSP180/3.5は、最短撮影距離47cm
であり、まあそれで、等倍(フルサイズ時)と
なるのだが、逆に言えば、「望遠マクロレンズで
WD(ワーキング・ディスタンス)が稼げる」とは
言え、実質約25cmのWDというのは、意外に短い
距離であり、トンボや蝶、昆虫等では、そこまで
寄る事が出来ない(逃げる)場合も多々ある。

動きが鈍そうな昆虫(例:テントウムシ等)であれば、
寄れそうな気もするのだが、実際に近寄っていくと
テントウムシは、その名前(お天道様)の由来の通り、
「(正の)走光性(そうこうせい)」という性質を持ち、
ちょっとでも(撮影者や機材の)の影がかかると、
明るい所に向けて、動くか飛んでいってしまうのだ。

だから、できるだけ遠くから撮影するしか無い。
WDや最短撮影距離が25~47cmという望遠マクロでは
(多くの昆虫等では)実際にそこまで寄るのは困難な
場合もあり、もう少し遠くから昆虫等を撮る事が
望ましいケースも多々ある。
_c0032138_07130388.jpg
そこで、「どうせ80cm位までしか寄れないならば・・」
という観点だと、「近接135mm単焦点レンズ」も又、
自然観察撮影に適したレンズに成り得る訳だ。
つまり、あまり大きな撮影倍率は稼げないが、
大口径135mmの寄れる単焦点であれば、それはそれで
望遠マクロとはまた若干異なる撮影環境適正を持つ。

この話は、さまざまな記事でも記載しているので
重複する為に、これ以上は割愛するが、まあともかく
「アポダイゼーションレンズだから、人物撮影に
最適である」などの「思い込み」を捨てて、様々な
「用途開発」(そのレンズ、またはカメラを含めた
システムがパフォーマンスを発揮できる、最適な
被写体や用途を探し出す事)を進める事が大事だ。

参考関連記事:(掲載予定)
レンズマニアックス第66回「望遠マクロvs近接135mm」編

---
では、3本目は特殊レンズだ。
_c0032138_07130434.jpg
レンズ名:VS Technology VS-LD50
レンズ価格:28,000円(販売時定価)(以下、VS50)
使用カメラ:PENTAX Q (1/2.3型機)

2000年代(?)に発売のFA用低歪曲望遠マクロ
(近接専用)MF単焦点手動絞りレンズ。
2/3型センサー対応、Cマウントのマシンビジョン用
レンズである。
_c0032138_07130974.jpg
PENTAX Qに装着時では、焦点距離275mm相当。
最大撮影倍率は、システムが複雑すぎて詳細不明
だが、概算によると、センサー換算で約0.38倍。
フルサイズ換算では約2倍に到達する。

最短撮影距離は28cm程度、これは中望遠マクロ
レンズ並みの距離感覚値ではあるが、ただでさえ、
このシステムでは使用する事自体が恐ろしく困難な
特殊レンズであるし、超望遠画角にもなっているので、
ブレもピンボケも「ローリングシャッター歪み」も
非常に大きく、あまりに近接した撮影は不可能とも
言える。

よって、あくまで望遠マクロの感覚で、50cm以上の
被写体との間合いを取った撮影をする事が賢明だ。
その場合、換算で等倍を下回る撮影倍率となるので
ほとんど一般的な望遠マクロレンズと同様な環境と
感覚で使用できる。(しかし、依然、恐ろしく困難な
撮影だ)

まあ、望遠マクロ等、大型の機材であれば、それを
使う側も、ちょっとは身構えて、気合を入れて使おう
とする事だろう。
でも、本システムは、極めて小型軽量だ、
「こんなオモチャみたいなシステム、片手でヒョイ
 ヒョイだ!」などと、舐めてかかると酷い目に合う。
まず絶対と言っていいほど、まともには撮れない。

「これだったら、望遠マクロの方がヒョイヒョイだ」
と絶対に思うであろう。それほどまでに高難易度だ。

でもまあ、本レンズは、そもそも一般層が普通に
入手する事は出来ない(通常は、法人売買専用だ)
だから極めて特殊なシステムであり、かつ、これを
一般写真撮影に使うのは極めて難易度が高いので、
すべてのカメラマン層には非推奨のシステムだ。

これを使うのは、専門家層(これは「写真」の専門家
の話ではなく、FA、CCTV、マシンビジョン等といった
産業光学分野での「専門家」層という意味)のみだと
思っておくのが良いであろう。

---
では、4本目はミラー(レンズ)だ。
_c0032138_07130993.jpg
レンズ名:TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
レンズ購入価格:18,000円(中古)(以下、MF300/6.3)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)

2012年発売のMF超望遠ミラー(レンズ)である。

μ4/3機専用であり、換算画角は600mmとなる。
今回使用のDMC-GX7との組み合わせでは、ボディ内蔵
手ブレ補正が有効になり、かつ、AUTO-ISO時での、
低速限界速度も(手動設定不可ではあるが)自動的に
高めとなる。(つまり、手ブレは起こり難い)
_c0032138_07130947.jpg
換算600mmの超望遠ながら、最短撮影距離は80cmと
極めて寄れる。最大撮影倍率は1/2倍であり、
フルサイズ換算では等倍、さらに必要に応じて
DMC-GX7に備わるデジタルテレコン、デジタル
ズームを併用すれば、最大(換算)8倍相当までの、
超望遠・超マクロ・システムとして使用する事が
出来る。

まあでも、こういうのは数値スペックで遊んでいる
だけの話であり、実用的には、そこまで撮影倍率を
上げる事はまず有り得ない。普通は換算で等倍~2倍
の範囲で使うのが望ましいであろう。
撮影距離は、1m前後程度迄は稼げるので、これは
中距離にあって寄れない小さい被写体、具体的には
「トンボ」等の昆虫撮影に最適なレンズである。

昆虫等小動物は、ちょっと近づいただけでも逃げて
しまう事が多いので、一般的な標準・中望遠マクロ
では撮る事が難しい。まあ可能なのは、本カテゴリー
での「望遠マクロ」に属するレンズのみであろう。

ちなみに、初級中級層の憧れの大三元望遠ズーム
(例:各社70-200mm/F2.8級)であれば代用
できるか?と言うと、それらの最短撮影距離は、
1.1~1.5m位、最大撮影倍率は、0.13~0.2倍
(1/5倍)程度でしか無いので、そのまま、素の
スペックでのマクロ代用は少々苦しい。
(注:SONY SEL70200GMは、最大0.25倍)
まあでも、高解像力の新鋭高性能レンズならば
トリミング自由度が高いから、スペック上の
最大撮影倍率は、あまり気にする必要がなく、
画素数と解像力の関係が許す限り、いくらでも
拡大すれば良いと思う。

しかし、大三元は、さすがに高価すぎるから、
このような目的には、オーバースペックかつ、
あまり仕様的な適正もよろしく無い。

他のレンズで代用するならば、各社135mm/F1.8
級大口径単焦点が、なかなか使えると思う。
近接できる物では最短撮影距離が72cm~87cm
最大撮影倍率は0.25倍(1/4倍)程度なので、
これをAPS-C機(+デジタルテレコン)で使えば、
何とか、望遠マクロの代用となる。
その際、F1.8級であるから、F2.8級以下の
望遠マクロや大三元・小三元よりも、2倍以上
も明るく、手ブレ限界が有利で、近接時の露光
倍数の掛かり方も少ない、加えて被写界深度も
浅くする事もでき、おまけに大三元よりも軽量
(800g~1.1kg程度、望遠マクロも同様)である。

これについては前述のレンズマニアックス第66回
「望遠マクロvs近接135mm」編で、両者の得失
を詳しく解説する(予定)。
_c0032138_07131022.jpg
余談が長くなったが、そういう高級(高額)な
レンズを使わずとも、本MF300/6.3であれば、
僅か中古1万円台で、望遠マクロ、近接135mm、
大三元望遠ズームなどでは、足元にも及ばない
長望遠・超拡大撮影を可能とする訳だ。

「絞りが無いから被写界深度の調整が出来ない」
とか「MFしか無いのでピントが合わせられない」
とか、ビギナー層のような泣き言は必要無いで
あろう。撮影スキルがあれば、被写界深度もMFも
なんとでもなる。

ちなみに以下は、毎回の本レンズの紹介の際に
書いている事だが、重要な技法なので、何度でも
説明する。(また余談となる・・)

あくまで裏技だが、被写界深度を深めたければ、
撮影距離を後退させて、同時にデジタルズームで
被写体を同じ大きさにまで拡大すれば、原理上、
「絞りの無いレンズで被写界深度を深める事」が
可能となる訳だ。

「トリミングしているのと同じだろう?」とか
中級クラスでの理屈のような事は言うなかれ。
これは被写体に対峙しながらリアルタイムに被写界
深度を擬似的に調整しているのだから、その時点で
撮影意図を反映させる事が可能となるので、後編集
で出来る事とは全く異なる訳だ。

(一応詳細を述べておけば、前述の撮影位置後退と
デジタル拡大の組み合わせパターンは無数にあるの
だから、あくまで、撮影時にしか調整出来ない。
後からトリミング編集が出来るのは、その無数ある
組み合わせの中の、たった1つか、または、せいぜい
2~3カットの撮影結果でしか無い訳だ)

さらに言えば、後編集コスト(手間)を削減でき
上手く撮影時に調整できれば、その写真は無編集
で、納品や実用が可能となる訳だ。

業務撮影は勿論の事、たとえ趣味撮影であっても、
なるべくレタッチの手間はかけたくない、それは
当然の話であろう。であれば、できるだけ撮影時に
「後で触る必要の無い」写真が撮れればベストだ。
(注:その為に、本ブログではRAWで撮影する事も
まず無い)

あれこれと頭の中で考えているだけで無く、ともかく
実際のレンズで、実際の撮影シーンを体感してみる事が
望ましい。そういう状況になれば、何が効率的な
システム(カメラ+レンズ)で、何がそうで無いかの
理解は早い事であろう。

---
では、5本目のレンズ。
_c0032138_07131574.jpg
レンズ名:CONTAX Sonnar T* 180mm/f2.8(AE)
レンズ購入価格:70,000円(中古)(以下、S180/2.8)
使用カメラ:CANON EOS 6D(フルサイズ機)

1982年発売のMF単焦点望遠レンズ。
RTS(Y/C)マウント品である。
_c0032138_07131553.jpg
本レンズはマクロでは無いが最短撮影距離が1.4mと、
銀塩用MF単焦点180mmレンズでは、トップクラスに
短い。前記事で紹介の「Voigtlander APO-LANTHAR
180mm/f4 SL Close Focus」が、恐らくは180mm
(非マクロ、MF)レンズ中トップの最短1.2mで、
最大撮影倍率は0.25倍(1/4倍)だ。

本レンズS180/2.8も、それに準ずる程に寄れるが、
撮影倍率は、そこまでは及ばない(仕様情報が無く、
撮影倍率の計算は難しい。一応、概算1/6~1/7倍
程度としておこう)

ただ、本レンズの場合は、「近接135mmレンズ」の
ように、望遠マクロと異条件で代用できるものには
成り得ない。何故ならば、望遠マクロと同等の
焦点距離、同等の開放F値であれば、望遠マクロの
方が圧倒的に(およそ1m差程度も)寄れるので、
そちらを使った方が被写体対応性が遥かに高いから
である。

「じゃあ、本レンズをどんな用途に使うべきか?」
そう、そこが課題であり、本レンズの「用途開発」
は、本レンズ購入後、20年間以上も止まったまま
になっている(汗)

1990年代の銀塩時代に、最初に本レンズを使った
場所は「菖蒲園」であった。その被写体に対しては
距離感(桟橋(と言うのか?)の上から撮るので)も、
撮影倍率も描写力(なかなか優れている)もバッチリで、
「何て使い易いレンズだ!」と感想を持ったのだが・・
その後、あまりそういった、誰でもが撮りたがる被写体
(季節の花等)を撮る事自体、ありきたりで、あまり
好まなくなってしまったので、どうにも適正な被写体が
見当たら無い状態だ。

現代においては、大口径望遠ズーム(70-200/2.8等)
に含まれるスペックであり、この手の180-200mm級
単焦点は不人気なので、現行の販売機種数も極めて
少ない。まあ、だからこそ本レンズも不人気であり、
中古相場が暴落していて、およそ2万円台で購入する
事が可能だ。

歴史だが、かつてのベルリンオリンピック(1936年)で、
ヒトラーの命を受け、国威を発揚する為に作られたのが、
本レンズの祖先である「オリンピアゾナー」だ。

独CONTAXの市場戦略を踏襲していたNIKONも1970年
頃に、同様に、札幌/ミュンヘンオリンピックに向けた

レンズとしてNIKKOR-P AUTO 180/2.8を開発した。
(当初、報道機関向けの限定販売)
(後継レンズは、最強200mm選手権記事等で紹介)

「オリンピアゾナー」の名前は、1970年代頃から
マニア層等で著名だった為、本レンズの発売直前の
1980年代初頭では、京セラCONTAXにおいても、
「オリンピアゾナー」のキャッチコピーが使われていた、
という記録もあるが、その後、言われなくなった。

恐らくだが、京セラ側で「オリンピアゾナー」の
呼び名の出自を調べたところ、戦争や独裁者という、
あまり好ましく無い歴史が見当った為、その愛称の
使用を辞めたのだと推察できる。
_c0032138_07131582.jpg
総括だが、現代においては、必要性があまり無いレンズ
ではある。ただまあ、その、歴史的に著名とは言える
元祖「オリンピアゾナー」の、約半世紀ぶりの正統な
後継レンズである、という歴史的価値は大きいレンズ
ではなかろうか? 
ピントリング操作が重くて「修行レンズ」には近いが、
写りは悪く無く、中古相場も下がってきているので、
「コスパ」は、さほど悪く無い。
マニア的観点であれば、入手しても損は無いと思う。

----
次は本記事ラストの望遠マクロレンズとなる。 
_c0032138_07131550.jpg
レンズ名:SIGMA (AF) MACRO 180mm/f2.8
レンズ購入価格:37,000円(中古)(以下、SIGMA180/2.8)
使用カメラ:PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)

詳細不明、恐らくは1990年代に発売と思われる
銀塩用1/2倍AF望遠マクロレンズ。

今回のようにμ4/3機に装着時には、360mm相当
最大撮影倍率1倍(等倍)の、超望遠マクロとなる。
_c0032138_07132135.jpg
本レンズは、「SIGMA製の1990年代、EFマウント用」
レンズであるから、2000年以降のCANON EOS機
(銀塩、デジタルの一眼レフ)には、装着しても
エラーとなって使用できない。
CANON(あるいはSIGMAも含め?)が、この時代(2000年)
にレンズとの通信プロトコルを変更したからだ。


超裏技での「電子アダプター「EF-EOS M」を用いて
EOS M機に装着してみる」も、一応試してみた。
これは嬉しい事に、多くの場合、エラーにはならない。
だが、残念ながら、100%大丈夫、という訳ではなく、
稀に上手く動作しないケースがある。

・・まあ、それならば、という事で、今回は、
「機械式絞り羽根内蔵型EF-μ4/3アダプター」
を用いて使用する。
この用法では、絞りの効能が得られない(本来の
レンズ内での「開口絞り」ではなく「視野絞り」に
なるからだ)のだが、そこは気にするまい。
被写界深度調整やらボケ質破綻の調整は利かないが
普通に露出を合わせて写真は撮れる。

また、レンズ自体の弱点としては、コントラストが
低く感じる点がある。もっともこれは経年劣化が
生じているかも知れない。この時代(1990年代)の
SIGMA製レンズは、レンズ内面等のコーティングが
劣化しやすく、他の同時代のSIGMA製レンズも
3~4本が同じ症状となってしまっている。

さて、あれこれと使う為の工夫が必要なレンズだし
かつ、大きく、重い(重量1,568g実測値)
おまけに古い、できれば後継型のAPO 180mm/f3.5
(2000年代、重量1kg弱)に買い換えたいのだが、
望遠マクロ自体にさほどの用途がある訳では無く、
「2~3本持っておけば十分」という事で入手に
至っていない。また、さらに後継型としての
「APO MACRO 180mm/f2.8 EX DG OS HSM」
(2012年)が存在するが、さらに重量級(1640g)
であり「持っていられないようなレンズは買わない」
という基本ルール(持論)に抵触してしまう為、
この新F2.8版の購入はまず無いと思う。

そう考えると、やはり2000年代のF3.5版が
ベストチョイスになるか? HSM仕様がMF操作性を
損ねていないのか? そこが気になる点だが・・ 
まあ、所有もしていないレンズの事をあれこれ語る
のは反則なので、このあたりまでにして置こう。
_c0032138_07132125.jpg
ともかく、本SIGMA180/2.8に関しては、現代に
おいては、殆ど実用価値の無いレンズである。
「指名買い」をする類のレンズでも無いし、
そもそも望遠マクロ自体、あまり用途のある機材
とも言い難い、本レンズに限らず、ここまで述べて
来た、あらゆる「望遠(系)マクロ」においても、
業務用途等で、この手のレンズが専門的な自然観察
撮影として必要な場合を除き、趣味撮影全般において
「機会があれば、1本程度所有していても悪く無い」
と、そのレベルのレンズだと思われる。

----
さて、今回の記事で、望遠マクロ編は終了。
次回の本シリーズ記事は「最強マクロ選手権・B決勝戦」
を予定している。


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