2015年7月19日、大阪を流れる大川の八軒屋浜(天満橋)
で行われたドラゴンボート日本選手権大会の模様より、後編。
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オープン準決勝、本大会8連覇を狙う「磯風漕友会」(写真奥)と、
先月の堺泉北大会で、初めて決勝で「磯風」を破り、勢いに乗る
「bp」(写真手前)の一騎打ちがあった。
前大会に続き、ここでも「bp」の勝利。これはいよいよ新時代の
到来であろうか? ただ「磯風」にしても、8年間も、あるいは
それ以上もの長い年月においてドラゴン界の頂点に君臨し続けて
きた訳であり、それは実際容易なことではあるまい。磯風も数々の
修羅場をくぐってきて今のポジションを作り上げたのだ、1度や2度
の敗戦で時代が変わるといった話は磯風に失礼だろう。
そしてbpのメンバーにおいては、一部は「磯風に勝った」と
盛り上がり、また、一部からは「あれは、たまたまだ、磯風をあまり
甘くみないほうが良い」と慎重な意見も聞こえてくる。
実力はもとより、チームのメンタル面が微妙に結果に影響する究極
のチームスポーツがドラゴンボートだ、他のスポーツ競技においても、
これだけの多人数(20人)が息を合わせ同じ動作をするというものは
他に類をみない、あえて言えば「綱引き」がそれであるが、競技の
綱引きは8人編成が基本であると聞く。
「勝負は決勝戦だな」と私は見ていた、確かに、今上り調子のbpは
一騎打ちならば、多少磯風に対しての有利があるかもしれない、だが、
今回は世界レベルのフィリピンが両者の勝負に割って入っている。
bpとて、世界の超強豪の実力を知らない訳ではない、
しかし、直接対決となると、やはり肩に力が入る事であろう。
それに、先ほどの予選で、磯風がフィリピンに僅か100分の1秒差で
同等に渡り合った様子を見ている。いや、見ているどころかビデオで
何度も見返しているのだ、世界ランカーと同等の磯風の底力を見せ
付けられ、あまつさえ、もしbpがその両者を同時に破ることになれば、
一挙に大金星を上げることができるのだ。
「これは、気合が入りすぎるシチュエーションだなあ」と、
私はちょっと危惧していた。
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オープンの部の準決勝から決勝では、私が予想していた「海猿火組」と
「池の里」の決勝枠争いは不発に終わり、タイム順位によりダークホース
相生の「ヤンググリーン」が決勝戦の残り枠を手に入れることができた。
まあヤンググリーンは、日本選手権はわずか2度目の出場なので
基礎データがあまり知られていなかった、ただ相生ペーロンで揉まれており
磯風やスーパードルフィンの母体である相生看護学校の出身者も含まれて
いるということで、ダークホースとはいえない実力派だったのかもしれない。
まあしかし、仮に私が「ヤンググリーンに注意しろ」と池の里や海猿火組に
伝えていたとしても、結局のところタイム順の冷徹な実力勝負であった事
には変わりはないが。
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この準決勝戦あたりから、少し体調が悪くなってきた。いつもの大会撮影
よりも疲労度が大きい。恐らく午前中はあまり暑くないという理由で、
水分塩分補給をあまりしなかった事や、昼にお腹がすいて短時間の内に
天神カレーをたてつづけに3杯食べたこと、など、飲食の不自然さが
原因ではなかろうか・・(ちなみに、4杯目のカレーも狙っていたが、
配給所に行ってみると今日は売り切れていて余ってなかった)
まあ、ちょっと休憩をはさみたいところであるが、これから先はずっと
各カテゴリーの決勝戦だ、見逃すわけにもいかない。なので、建物の多い
本部側の川岸に戻り、レースの合間は室内など涼しいところで休憩を
とるとするか。
さて、という事で、これより各カテゴリーで決勝戦が行われる。
まずはシニアの部だ。
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写真は、ディフェンディングチャンピオンの「FUJIYAMA ALL STARS」
静岡の「海猿火組」東京の「TAITAM X」や「BON OYAGE」のメンバー
による、珍しい”異地区コラボ”チームだ。
本日本選手権では、シニアの部の出場チーム数は、4~5であることが
普通だ。そのため、トーナメント戦はできず、2回戦制、すなわち2レースの
各順位で勝敗を決める。ただ2回戦制の大会は、一般的には、2レースの
各順位が変動することは稀であり、各レース1位&1位で優勝というケースが
殆どである。
しかし、昨年の本大会では、1回戦で「関西龍舟」が1位、「FUJIYAMA」が
2位だったのが、2回戦では「FUJIYAMA」が1位、「関西龍舟」が3位となり、
「FUJIYAMA」が逆転優勝、と、かなり珍しい展開になった。
(結果FUJIYAMAは、今年の世界大会のシニアの部代表チームとなった)
そして、今年の大会でも1回戦の順位は「東京龍舟マスターズ」
「FUJIYAMA ALL STARS 」「琵琶湖竜舟」「ALL EEER'S(坊勢)」という
順位だ。順当にいけば「東京龍舟」が2回戦も1位でそのまま優勝、
しかし、もしFUJIYAMAが2回戦で1位となり、さらに東京龍舟の順位
次第では、昨年と同様な奇跡的な逆転劇が生まれることとなる。
実は、現在この日本選手権でのシニアの部は他のカテゴリー以上の激戦区だ、
各チームの実力が完全に拮抗しており、ほんのわずかな条件の差で順位が
変動する、そういう意味では混合やオープン以上にシビアなカテゴリーだ。
来年2016年の本大会は、シニアに出ようか?と言っていた「池の里」に、
もう一度その意思を確認してみた
池「実は、まだふんぎりがつかなくて・・」
匠「まあ、実際のところ現在のシニアは異常なまでの激戦区ですよ、
なにせ、毎試合順位がひっくりかえるし、そこで苦労するくらいなら、
まだしばらくオープンでやっていた方が良いかも知れませんね」
池「そうですねえ・・」
ということで、まだ「池の里」のシニア参戦は保留であるとのことだ。
さて、シニアの2回戦がスタートした。
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匠「おっとFUJIYAMA が1位だよ・・で、2位は?ん、坊勢ALL BEER'Sか
こりゃあ、また昨年同様にレース毎に順位がメチャクチャだなあ・・
すると?ああ、結局FUJIYAMAが優勝かあ。これは凄いことだよね!」
昨年同様の大波乱で、シニアの部は「FUJIYAMA ALL STARS」が2連覇、
またしても、翌年の海外遠征代表権を手に入れたことになる。
主力メンバーの「海猿火組」「TAITAM X」「BON OYAGE」いずれも
レギュラーのオープンや混合では決勝に残れず終わっていた。
特に「TAITAM X」は、本大会混合の部にダブルエントリーで、いずれも
準決勝に進出したものの、準決勝で同じ組にあたってしまい、しかも、
その組には「東京龍舟」x2「関西龍舟」の「龍舟」強豪軍団が居て、
対するTAITAM X軍団は、4位5位で敗退という、屈辱の結果があった
だけに、シニアの部での雪辱は嬉しかったであろう。
シニアの部の結果は
優勝「FUJIYAMA ALL STARS」準優勝「東京龍舟」3位「琵琶湖龍舟」
となった。
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さて、次なるカテゴリーは女子だ。
女子の部は今年は3チームが参加とちょっと寂しい、だがここには
2強の「スーパードルフィン」と「TEAM 河童」が居る。
「ドルフィン」は、なんとこの日本選手権(旧:天神)大会10連覇中、
および13回の優勝回数を誇る。
「河童」は11年前にドルフィンの連覇を止めた形で優勝しているが、
はたしてそのときにドルフィンがエントリーしていたのかどうか?
2004年は、私も天神大会の撮影をしていたはずだが、昔のことなので
さすがに細かいことは覚えていない。
「TEAM 河童」は、「ドルフィン」のよきライバルではあったが、その後、
結婚や出産などメンバーの改編期を迎え、ドルフィンとの差が開いていた。
ドルフィンは「磯風」同様に、母体の相生看護学校から、順次新メンバー
を補充しつつ、ローテーションをかけることができる。システマティックに
実力の維持が可能なドルフィンと比べ、一般的な募集形態を持つ「河童」
は多少の不利があったと思う。
しかし「河童」も約3分の1ほとのメンバーは、ドラゴンを漕ぎ続け、
「河童」の伝統を守り続けたと聞く、その結果が出てきたのか、昨年の
本大会では「河童」は、2回戦(決勝)で「ドルフィン」に2秒差まで
詰めていたのだ。
そのときの事を、今日も「河童」のメンバーと話をしていた
匠「昨年は、2秒差、つまり、ドルフィンのしっぱにかぶっているくらい
でしたね、今年はどんな感じでしょうか?」
河「匠さん、よく覚えてますねえ・・はい、だいぶ詰まってきましたよね、
今年は同着くらいにならないかなあ、まあ、ドルフィンさん次第かな?」
匠「レーン割りが1、2回戦ともに、2、4で、真ん中が桃色吐息さんで、
実質的に開いています。ドルフィンの返し波も無いでしょうし、今回は
公平な条件で勝負できますね」
河「レーンまでご存知とは、さすが・・はい、まさしく実力勝負ですね」
ちなみにドルフィンにも勿論話を聞いているが、彼女達は、基本的に
ライバルチームの話をしない、まあトップの地位にいれば、それはそういう
ものであろう、相手はあくまで自分自身なのだ、ただ、ドルフィンも10連覇
(相生ペーロンではそれ以上の回数勝ち続けている)ともなれば、そういう
セルフコントロールに多大な労力を使っていることは容易に想像できる、
むしろライバルが居たほうが、話がわかりやすいのだ。
ライバル不在でモチベーションを維持するなど、ドラゴンに限らず、
どのジャンルにおいても、それはしんどい事だと思う。
女子1回戦(上写真)では、ドルフィンと河童の差は、半艇身以下、
約0.6秒であった。
今の段階で、順位の逆転はまだ無いとは思われるが、2回戦でこれと同等
あるいはさらにドルフィンに肉薄できれば、河童としては十分な結果を
出せていると思う。
さて、女子の2回戦(決勝戦)
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匠「うわ~、ずいぶんと迫っているなあ、これは、またコンマ差勝負だな、
でもドルフィンが優勝か、しかし、河童としては大満足だろうなあ」
2回戦の結果は、コンマ4秒差(1.5m程度)であった。
ドルフィンは14回目の優勝で11連覇、河童は2位となったが、ここまで
迫れれば来年に繋がる手ごたえは十分であろう。、、
桃色吐息は3位、勿論もっと多くの参加チームの中で3位を取りたかった所。
ドルフィンと河童の直接対決は年間でもあまり多くはなく、この日本選手権か
あっても、9月のスモール選手権くらい、また、河童は、他の大会にも良く
出場しており、積算ポイントをもって来年度の海外派遣女子代表権を獲得した。
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さて、続くは、混合の部の決勝。
時刻は16時過ぎごろ、先ほど迄は疲労感が強く体調が芳しくなかったが、
大会本部にあったスポーツドリンクなどで水分と塩分の補給、さらに
レースの合間の短時間だが休憩をしたことで、だいぶ疲労感は取れてきた。
残り2試合、しかもどちらも面白いレースである、多少疲れているからと
言って、これを見逃すわけにはいくまい。
激戦の混合カテゴリーであるが、決勝進出は「東京龍舟」x2、「INO-G」
「関西龍舟シンバ」そして「東海龍舟」と、極めて順当な結果となった、
そして実力伯仲の5チームだ、ラストまでもつれる激戦が予想される。
ただ、今日の調子からすると、連覇中の「INO-G」が若干有利なよう
にも思える。数年前の本大会では混合の部は完全なる実力伯仲の状態で、
1位から5位まで、ほんの数秒の差というケースもあったのだが、
近年では少し差が開いてきている。
レース前・・
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「東海龍舟」が円陣を組み、気合を入れている。
東「皆、思い出せ~!この2年間、われわれは決勝に進んだが、
いずれもダントツのビリだった~!今年こそ頑張るぞ~!」
なんだか不思議な気合の入れ方だ、だいたい、日本選手権で毎年決勝に
進めているのならば、それだけでも大きな実績ではなかろうか?
私は本ブログ記事でも「東海龍舟」を紹介する際に「安定した実力を誇る
名古屋の名門チーム」と書いている、まあ名門と呼ぶには、若干歴史が浅い
かもしれないが(確かまだ7年程度だ)それでも、ほほ全てのメジャー大会で
確実に決勝に残ってくるし、優勝や入賞の実績が多数ある。日本選手権での
優勝経験はさすがに無いが、国内屈指の強豪チームであることは間違いないし
名門と呼ぶに値すると思っている。
それに昨年の混合決勝は激戦で、確かに「東海龍舟」は5位だったとは記憶
しているが、僅か1秒差くらいで「ダントツのビリ」というわけではあるまい。
まあ、他チームの選手達も同様に奇妙に思ったのか、ちょっとクスクスと笑い
声が聞こえてくる、確かに悲観することはない状況ではあろう。
さあ、混合の部の決勝戦がスタートした。
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注目は2レーンの「INO-G」、やはり速い、特に中盤以降ぐいぐいと艇速を
伸ばし、先頭に立つ、そのままさらに独走体制に持っていこうとする、
3連覇が見えてきたか?
しかし、4レーンの「関西龍舟シンバ」が5年ぶりの本大会優勝を狙って
必死に食い下がる。また、3レーンの「東京龍舟」も負けじと喰らいつく、
「東京龍舟」も天神大会2006年~2008年の3連覇の実績を持っている。
優勝経験のある3チームでの激戦だ。本大会での優勝の無い「東海龍舟」は、
わずかに出遅れているが、ダントツのビリではない、なんとか3位入賞を
果たしたいところだが、上位3チームは1艇身程度の差を後続につけている。
結果、「INO-G」1分1秒で優勝、3連覇、
「シンバ」が2位、1分2秒、「東京龍舟」は僅差の3位となった。
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帰ってきた「INO-G」のメンバーが言う
I「匠さん、やりましたよ!」
匠「まあ、だいたい予想はしていましたよ、でも凄い接戦でしたね」
I「各チーム、ウチをターゲットに狙ってきてますからね、
また来年も頑張ります!」
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さあ、次は最終レース、いよいよ大注目の「オープンの部」決勝だ。
ポイントは、「フィリピン」がどこまで速いか?
「磯風」と「BP」の決着はいかに?
そして、フィリピンに喰らいつくのは、磯風なのかBPなのか?
というところだ。場合により磯風の3着という結果もありうる、
あるいはダークホースの「bpジュニア」が、この大舞台で下克上を
果たすかもしれない。
私の横で、顔見知りの磯風の選手(元カメラ店店長)が、今日の為に
新調した高価な機材でレース撮影の準備に入る。
匠「決勝は漕がないんですね?で、それ、ちょっとオーバースペックでは?」
磯「そうなんです、高い機材なので取り扱いが少し緊張します」
匠「以前の、SIGMA150-500mmの方が気軽に振り回せたのでは?」
磯「ええ、そうなんですが、少々重いので一脚がいるし、AFが遅いので・・」
匠「貴方くらいの技術があれば、手持ちでMFだけで十分撮れるでしょうに」
磯「まあ、置きピンでも良いんですけどね、ちょっと楽してます・汗」
匠「150-500mm、いらなくなったら下さい・笑」
お気楽な会話なのだが、これはむしろ緊張感の裏返しかもしれない、
注目のレースの前なので、会場の空気全体には、異様な重圧がある。
時刻は午後5時、今日の大会進行はとてもスムースで、ほぼオンタイムだ、
天候は晴れから曇り、雲の様子から、夕立が来そうな雰囲気もある、
そして風が出てきている、逆風だ、潮は満潮に近く、大川の流れは逆流でほぼ
止まっている状態、観光船は来ない・・さあ、決勝戦をやるなら今でしょう!
予想タイムは54秒~55秒、さしものフィリピンでもこの条件で51秒は
出せまい。
問題のレーン割りは、1レーンから、bpジュニア、フィリピン、bp、
磯風、ヤングリーンの順。
返し波は、1艇身以上の差の時、速いチームの隣のレーンを走る艇に
影響が出る。
序盤で2~4レーンの3強、つまり、フィリピン、bp、磯風が先行
するならば、2秒差以上をつけられると1レーンのbpジュニアと
5レーンのヤンググリーンは先行艇の波の影響で遅くなるということだ。
予選や準決勝などのタイムを考慮すると3強の三つ巴戦になることは、
ほぼ明白だ、ではその中から何処が勝つか? それはわからない・・
さあ、艇が揃った、いよいよスタートだ、静まる会場。
Are You Ready? Attention Go!!
太鼓の音が鳴り響くと同時に、ワーという歓声が会場を埋める、
空気が一瞬で熱くなる、ドラゴンで最も好きな瞬間だ。
私の撮影ポイントはスタートから200m地点、残り50mのここで、
大勢が判明するとの判断だからだ。
最初の100m迄は撮影はしない、ここで望遠でカシャカシャと撮って
いても、いかせん遠いし、それではレースの全体像が見えてこないから、
面白くないのだ。
ん? 3レーンのbpが出遅れた、スタート失敗か、どうした?
50m地点、この状況だと1レーンのbpジュニアの方が速いくらいだ、
2レーンのフィリピンが凄い水しぶきで先行、角度的にbpの様子は不明、
4レーンの磯風は順調な出足、まさかのフィリピンと磯風の一騎打ちか?
100m地点、
1レーンのジュニアがフィリピンの返し波を喰らう、少しペースダウンか?
3レーンのbpも、2レーンフィリピンと4レーン磯風の波の影響を受け、
さらに遅れそうだが、むしろ、ここから少し巻き返しの気配を見せている。
すなわちこれは波の影響の無い、1艇身以内の差というところだろうか?
5レーンのヤンググリーンは、かなり出遅れた・・
4レーン磯風が、ぐいぐいと出る、今のところフィリピンより速い!
まさかの磯風完全勝利か?いや、世界(フィリピン)はそんなに甘くない!
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150m地点、
フィリピンがぐいぐいと追い上げる、さすがに強い!
まだ、磯風が僅かに先行か?でも、フィリピンの方が伸びがある、
加速を見ていれば数秒後の状況が予測できる、追いつかれるのは必至だ、
磯風はここで最後に踏ん張れるか?
bpは1艇身差、約2秒の遅れ、残念ながらここからの挽回は難しい。
bpのドラマー「謎の美少女」も、太鼓を叩く動作に覇気が無い。
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200m地点、
フィリピンが磯風をとらえ、抜きにかかる、
磯風のドラマーがフィリピンを凝視する、ああ、これが出ると
”不利だ”という事なんだよね・・勝つ時の磯風であれば、横は見ない。
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ゴール直前、
フィリピンのドラマーはお互いの位置関係をチェックし勝利を確信、
水しぶきはあいかわらず凄い、この漕ぎ方で速いのが不思議だが、やっぱり
パドルが揃っているし、ピッチ漕法に見えても力強い、これが世界の実力か。
磯風ドラマーは「完敗です」という表情。
bpは磯風から半艇身まで追い上げてきたが、1秒差というところか。
結果は、
優勝「フィリピンアーミー」56秒
2位「磯風」57秒
3位「bp」58秒
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世界の実力を見せつけ、フィリピン勝利、わざわざ日本まで遠征に来て
いただいたのだから、ここで負けることは許されなかったであろう、
まあ、結果オーライだ。
で、これは磯風にとっては悔しいよりも、嬉しい結果ではなかろうか?
磯風が国内大会で勝ち続けるのは、彼らにとっては喜ばしい、というより、
むしろ「やりにくい」事も多いと思われるのだ。
ただ、覇者の誇りは捨てられない、だから、勿論簡単には負けたくはない。
で、ドラゴン界全体に目を向けても、世界の強さは、皆に理解してもらいたい、
だから、もっと日本チームが頑張れる糧になる経験を皆にも積んでもらいたい、
磯風は、ほぼ理想的な形で本大会を終えた。
対して悔しいのは「bp」であろう、高石(堺泉北)大会で磯風を破り、
さらに、今日の準決勝でも磯風を破っている。磯風に追いついた、と大半の
メンバーが思っていたに違いない。結成から約3年、日本一をめざし厳しい
練習に耐えてきた。神戸の山奥に水槽を作り、真夏の急坂で走り込みをし、
蒸し風呂のような暑さの中で水をぶっかけられながら水槽で漕いだ、自分
達の専用の艇も購入した、昼間の仕事を終えてから真っ暗な夜に艇に乗った、
忘年会では大きな手製の旗を作り、そこには「日本一になるぞ」と書かれて
いたと聞く。
彼らの望む最良の結果は、フィリピン優勝をやむなしとしても、それを追い
詰め、磯風をも破り、これからの日本代表は俺たちだ、とチームにも観衆にも
印象づけることであったのだが、結果はスタートミスの3位に終わった・・
ただ、この敗戦は、私の直感では彼らにとって大きなプラスになったと思う、
これで、下手をすれば慢心していた気持ちに水を差し、さらに勝つための
モチベーションを得ることが出来るからだ。
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磯風が帰ってきた、「負けちゃいました」という磯風のドラマー、
しかし、面白いことに、満面の笑みだ、堺泉北大会でbpに負けた時の
悲壮感は微塵もない、やはり、磯風には最良の結果であったのだろう。
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艇上の磯風のメンバー達に聞かれる、
磯「匠さん、今のレース、どう分析しますか?」
匠「レースというより、磯風さん、前回よりも、2位のウイニングランが
ずいぶんと板についてきましたねえ!」
全「アハハハ・・・!」 全員が爆笑であった。
そう、磯風は、恐らくこの10年弱くらい2位のウィニングランをやった事が
なかったのだ。だから堺泉北では、喜んでいいのか、悔しいのか、悲しいのか、
2位がどうやってウィニングランをするのかわからず途方にくれていたのだった、
でも今回は、堂々と会場を一周した、世界レベルのフィリピンに対し善戦したの
だから恥ずべきところは何も無い。皆がすがすがしい表情であった。
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対する「bp」は、堺泉北で負けた「磯風」の時のような悲壮な表情ではない、
「う~ん」「おかしいなあ」「何が悪かったのかな?」という、疑問の表情
であった、あとで何人かのメンバーから話を聞くことができたのだが、
ある主力メンバーいわく
b「たぶんメンタル面だろうね、だいぶ緊張してた・・」
スタートの時点で失敗したという事は、だいぶプレッシャーが大きかった
のであろう、でも、まあ、それは非常によい経験だったと思うので、
悪い傾向ではない。
そして、別のメンバー
b「艇の構造がいつも乗っているのと違って(足置きが無い)
それでスタートの時に、踏ん張れなかったのですよ・・」
匠「ふうむ、でも、それは、皆同じ条件だし、世界を目指すのだから
どんな艇に乗るかわからないし、そんな事は言ってられないのでは?」
b「ぐっ、まあ、そういう事でしょうか・・」
さらに別のメンバー
b「匠さん、叱ってくださいよ!
磯風に追いついたと勘違いしていたのですよ!」
匠「いや、私が叱っても・・(笑) それよりも、もうbpさんも、こうして
日本を代表する立場なんだから、目の前の勝ち負けよりも、ドラゴン全体
の為の、プロ化とか、魅せるドラゴンとか、そういうのをお願いしますよ、
例の道頓堀大会構想も進めてもらって・・」
b「う~ん、まあ、そうですね・・」
まあ、ということで、色々とドラマはあったが、最後は、全てが比較的丸く
収まる形となって、日本選手権大会は無事終了。
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フィリピンチームは、約1週間の日本滞在と聞く、台風や雨の影響もあった
模様だが、ゆっくり観光なり、買い物、日本食など満喫して帰ってください、
お疲れ様でした。
次回大会記事(高島ペーロン)に続く・・