海外製のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回は海外製その他(1)編として、雑多な海外メーカー
のレンズ7本を紹介する。
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今回は、レンズ個々の長所短所等の詳細は最小限と
して、とりまく周辺事情等の話を中心とする。
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ではまず、今回最初の海外製レンズ。
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レンズは、アルセナール MIR-1 37mm/f2.8
(МИР-1)(中古購入価格 14,000円)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
旧ソビエト連邦時代の「アルセナール(アーセナル)
国営工場」(現在はウクライナの首都「キエフ」に
ある光学・電子機器メーカー)製のレンズである。
本レンズは勿論フルサイズ対応で、M42マウント品だ。
(他にL39マウント版があったと聞く)
同工場における、ソビエト崩壊後のレンズ銘は、
「ARSAT」(アルセナール製という意味の略語)と
なっているという話も聞くが、詳細は不明だ。
まあ、旧ソ連時代での「MIR」(ミール)の方が、
(国内)マニア層には知名度が高いであろう。
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MIRとはロシア語で「平和」または「世界」の意味
である。写真用レンズの他、宇宙ステーションの
名前にもなった。(1986年~2001年に使われた)
MIRの後の番号(数字)は、焦点距離とかの仕様とは
無関係であり、製品番号(開発番号)であろうか?
例えば、旧ソ連製の戦闘機MiG(ミグ、あるいは
ミコヤン&グレヴィッチ)も、MiG-21,MiG-25、
MiG-29,MiG-31,MiG-35等、古い時代の順からの
開発番号である。(しかし飛び飛びの番号だ)
まあ旧ソ連の技術関連分野では、比較的普遍的な
考え方(型番体系)であるのだろう。
さらに余談だが、「鉄人28号」とか初代「ガンダム」
のジオン軍のモビルスーツも、同等な順次連番とする
型番体系だと思うのだが、ガンダムでの地球連邦軍の
型番体系は、そうでは無い。(いきなり「RX-75」
ガンタンクから始まる、等)
現実の世界では、米ソ冷戦時代の米国戦闘ヘリの型番も
AH-1(コブラ)の後は、AH-64(アパッチ)と飛び、
これも任意の型番であろう。
そして、近代(ここ50年程)の国産カメラやレンズの
型番体系も、任意の型番とする場合が多い。
(例:いきなり「α-7000」や「Z7」から始まる等)
本レンズも、その「連番タイプ」の型番体系なのか?
それと、MIR-1で1番だから、一番最初に開発された
レンズか否か?・・は、良くわからない(汗)
と言うのも、連番開発番号であれば、MIR-1の後に、
MIR-2,3,4・・ というレンズがあっても良さそう
なのだが、それらの型番のレンズは聞いた事が無く、
かろうじて流通していたものとしては、MIR-20
(20mm/F3.5、未所有)や、MIR-24(35mm/F2、
多数の記事で紹介済みの名レンズ)くらいしか
知らない。ずいぶんと番号が飛びすぎていないか?
(例:MiG戦闘機は奇数番号で正式化されるが、番号
が抜けていても、2つ3つ程度が抜けるのが最大だ)
それから、MIR-24は、似た構成や描写の過去レンズ
を発見できず、アルセナール社のオリジナル設計
である可能性も高い、と私は分析しているのだが・・
本レンズMIR-1は、ツァイス(イエナ、東独)の
フレクトゴンをベースにしている、という噂もある。
これは、「コピー品」というよりは、第二次大戦
でのドイツの敗戦により、カール・ツァイス社は
東西に分断されてしまい、東独側(イエーナ)から
光学技術(技術のみならず設備や人材等も)が、
共産圏に流出したから、と考察するのが妥当である。
(参考:ツァイス技術の完全東側流出を阻止しようと
した米軍により、一部の人材や設備を米軍が確保し、
西独側オーバーコッフェンに移した為、ツァイスは
東西分断された。(注:現在は再統一されている)
また、東独ツアイスの設備が接収され、移送された
先の旧ソ連の国営工場が「アルセナール」である)
それ故、もし本レンズMIR-1が、「アルセナール
国営工場」の最初期/最初(1950年代)の製品で
あれば、ツァイスの設備や設計を流用したと考えて
も不思議では無い。
ただ、アルセナール(工場)は、MIR-24あたりの
時代(1980年代頃?)においては、相当に描写力の
高いレンズを設計していたと思うので、
「国営工場でコピー品を製造しているだけ」という
範疇には留まらず、独自に技術力を高めていったの
ではなかろうか?(だからこそ、ソビエト崩壊後に
国営工場からメーカーに転進できているのでは?)
歴史の分析の話が長くなったが、本MIR-1の話に進む。
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まず、構造が古臭い。準プリセット型で復帰スイッチ
が付いている仕様だが、これは絞り操作性が良く無い。
また、描写力も、ボケ質破綻が頻発し、その回避も
困難であるので、この点でもかなり古い時代のレンズと
同等の技術水準であり、完全なる「オールドレンズ」だ。
まあ、たとえベースとなった設計が、世界に冠たる
ツァイスのものだったとしても、それは第二次大戦前
の時代の設計、あるいは戦後1950年代の設計なので
現代から見れば、70年~90年も古い時代のものだ。
描写力や構造が古臭くても、やむを得ないであろう。
ただ、幸いにしてボケ質以外の弱点は、あまり
見当たらない。あえて言えば周辺減光が僅かに出る
程度であり、むしろ逆光耐性や解像感は高い。
よって、本レンズの特性が分析できているのであれば、
後は、その長所を活かし、弱点を回避して使うだけ
である。古いレンズだろうが、性能の低いレンズで
あろうが、それを使いこなすのも、あるいは逆に
使いこなせずに「レンズの言うがまま」の性能でしか
撮れないのであろうとも、いずれもユーザー側の責任だ。
銀塩時代であれば、オールドレンズを銀塩一眼レフや
レンジファインダー機で使わざるを得ず、それでは
たとえ中上級マニア層であろうが、「レンズの言うが
まま」にしか撮れず、弱点を回避できるような技法を
使う術もなかったのだが、現代においては母艦の環境も
ミラーレス機が使え、オールドレンズの弱点の多くは
撮影者のスキル(技能、知識、経験、技術等)で
回避可能だ。
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まあ、本レンズに限らず、殆どのロシアンでは、
そのように、使いこなしに高いスキルが必要だ。
旧ソ連崩壊後(1990年代)の銀塩時代であれば
ロシアンレンズは新品・中古相場が、とても安価で
あったので、お試し的に買う事も出来たのだが、
近年では希少価値で、やや高価になっているし、
殆どが設計が古く、使いこなしが困難であるから、
上級マニア層のみに、かろうじて推奨できる。
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では、次の海外製レンズ。
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---05 E-M5
レンズは、Docooler 35mm/f1.6
(中古購入価格 9,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited
(μ4/3機)
発売年不明、その他全く詳細不明の、恐らくは中国製と
思われるミラーレス(μ4/3)用の単焦点MFレンズ。
(注:FUJIFILM Xマウント版等も存在した模様だ)
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詳しい情報が無いので、この購入価格が妥当などうかも
不明であった。恐らくは新品流通価格と同等くらいか、
むしろ、やや高価に買ってしまったかも知れない(汗)
ただまあ、幸いにして、コスパ感覚は持っているので、
この購入価格に見合う性能があれば、コスパ評価的
には及第点と見なす事も出来るであろう。
で、実際の本レンズの仕様や性能だが・・
まず、イメージサークルはAPS-C機対応である。
Cマウント(監視カメラや工業用等)の小型センサー
対応のレンズでは無いので、ミラーレス機で普通に
使用する事ができる。
長所としては、実焦点距離35mmのレンズとしては、
異常に寄れる最短撮影距離18cmの近接性能だ。
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マクロを除き、このレベルの35mmレンズは、チラリ
と前述した東独ツァイスのフレクトゴンがあるが、
レアものオールドで入手性が悪い。また本レンズは
フルサイズ対応では無いし、入手性も良く無い。
したがって、本ブログでは、35mmレンズで最強の
近接性能は、一眼レフ用ではTAMRON SP35mm/F1.8
(F012)としていた。(注:2019年のミラーレス機用
「TAMRON 35mm/F2.8 Di Ⅲ OSD M1:2 F053」
(フルサイズ可)は、さらに寄れる最短15cmとなった。
現在では、これが最強だが、まあ、「ほとんどマクロ
レンズだ」とも言える→未所有)
近接性能のみならず、本Docooler 35/1.6の
描写力はさほど悪く無い。(ただし、ボケ質破綻が
発生しやすいので、ボケ質破綻回避技法の適用は
必須となる)
そして、品質(作り)も、近代の新鋭中国製レンズと
同様の金属鏡筒で、悪く無い。
したがって、トータルで考えると「価格よりも性能が
勝る」と評価していて、「コスパ」の個人評価点は
5点満点で4点、と悪く無い。また総合評価も3.5点
で、これも優秀な類であるから、結構お気に入りの
レンズとなっている。
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最大の課題は、「入手性が極めて悪い」事であろう。
まず中古市場等では見かける事は無い、とは思うが、
偶然見かけるような事があれば、上級マニア層に
対しては推奨できるレンズだ。
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さて、3本目の海外製レンズは、光学系(Optic)
交換型システムである。
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レンズは、LENSBABY MUSE + Double Glass Optic
(中古購入価格3,000円。ただしOptic単体価格)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
2009年発売のMFティルト型トイレンズが「MUSE」
であるが、それまでの「3G」から、光学系(Optic)
交換型の仕様に変化した。(それ以降のComposer系
も同様である)
MUSE(専用)のOpticは4種類が存在するが、その内、
3つしか所有していない。現代では入手性が極めて
低いのも理由だ。ZonePlate/Pinholeの特殊Opticは、
本シリーズ第5回「LENSBABY編」等で紹介済みで
あるので、今回は残りの2つのOpticを紹介していく。
こちらは、MUSEの交換光学系(Optic)の中では、最も
しっかりと写る「ダブルグラス」タイプだ。
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ただ、ちょっと本Opticの購入は失敗であった。
従前の機種、LENSBABY 3G(2007年)と、全く同じ
写りにしか思えず、恐らくは同一のレンズ構成だろう
から、購入する必要が無かった訳だ(汗)
まあ、唯一考えられる用法としては、3Gを持ち出した
場合は、その日1日は、ずっとそれで撮るしか無いの
だが、本MUSEであれば、Double Glass Opticで
3Gと同様の写りを得つつ、作画上の必要に応じて、
出先でも他のOpticに交換ができる、というメリット
がある点だ。
しかしながら、Opticの交換は、Opticを収納する
専用ケースの「底蓋」を工具として用いないと
交換不能(注:他の一般的工具での交換を試したが、
今のところ全て失敗している)なので、やや面倒だ。
結局、本Opticに関しては、3Gを持っていれば不用
という感じである。(3Gは、本シリーズ第5回記事
で紹介済み)
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では、4本目のシステムは上記のOpticを交換してみよう。
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レンズは、LENSBABY MUSE + Plastic Optic 50mm/f2
(新品購入価格 6,000円、ただしMUSE本体込みの価格)
カメラは、同じくSONY NEX-7 (APS-C機)
こちらは「ユルい」描写が得られるOpticだ。
で、本システムの購入価格が安価であったのは、
2010年代初頭に4/3(フォーサーズ)システムが
終焉を迎えていて、本MUSEは、その4/3マウント版
での新品在庫処分価格であったからだ。
この為、母艦カメラは、必要に応じてOLYMPUS等の
4/3機を利用できるのだが、ピーキング機能が無く、
一眼レフの光学ファインダーでは、ティルト型レンズ
におけるスイートスポット(=俗語:画面内でピント
が合う場所の事)を探すのが困難である。
よって、4/3マウント用の「簡易アダプター」等を
用いて任意のミラーレス機で、本4/3機用MUSEを使う
のが簡便だ。
なお、4/3用「電子アダプター」(例:OLYMPUS製
MMF-1~3等)では、全ての4/3用レンズにおいて、
AF/MF/絞り制御等が可能であるが、電子部品を持たない
「簡易アダプター」では、4/3用レンズでの、AF/MF/
絞り操作が効かず、普通は使用できない。
ところが、本MUSEのようなトイレンズ系であれば、
4/3用と言っても、AF/MF/絞りは、全てレンズ側での
操作となるので、電子アダプターを使わずとも
簡易アダプターで利用が可能である。この用法では
母艦はμ4/3機で無くとも、SONY Eマウント機で
あっても4/3用(トイレンズ)が使用可能となる。
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ちなみに、本Plastic Optic、およびDouble Glass
(前述)、Single Glass(未所有)(加えて、
LENSBABY 3G)での、絞り操作だが、これは、
Optic内部に磁石で貼り付いている絞りプレートを、
Optic前面から磁石のついた工具で取り出し、別の
プレートを挿入する、という面倒な方式である。
したがって、撮影中に頻繁に絞り値(プレート)を
交換するというスタイルには向かず、殆どのケース
では、もう、その日の天候(照度)や、撮りたい写真
の意図や、Opticの特性に合わせて、外出前に決めた
絞りプレートで固定で撮る、という用法になる。
Opticの特性に合わせて、というのは、例えば前述の
Double Glass は最もシャープに写るOpticであるが、
これをさらにシャープにしたい場合は、F8やF11と
いった小絞りプレートを装着する。
であれば、本Plasticは、最も「ユルく」写るOptic
であるから、それはF2.8等の絞りプレートにするか?
と言えば、そういう用途(ユルく写したい)であれば、
そうすれば良いし、逆に「ユルさ」を多少なりとも
緩和して使いたいと思えば、本Plastic Opticに、
小絞りプレートを組み合わせれば、そのユルさは
控えめとなる、まあつまり、撮影者がどう撮りたいか?
次第で、絞り値(プレート)は好きに決めれば良い。
その日の天候に応じて絞り値を決める・・ と言うと
以下余談だが、1960年代位の銀塩カメラでは、露出計
を内蔵していないカメラもまだ多く、その際、当時の
カメラマンは、フィルムの箱に書かれていた推奨の
露出値があり、それを参考にして撮っていた。
例えば、ISO(注:当時はASA規格だ)100のネガ
フィルムであれば、カメラ側のシャッター速度を
1/250秒程度に固定し、快晴=F11、晴れ=F8、
曇り=F5.6・・という感じにカメラを設定すれば、
ほぼ正しい露出で写真は撮れるし、多少差異があった
としても、ネガフィルムのラティチュード(露出寛容度)
は広い為、DPE(現像・プリント)時に調整範囲に収まる。
他の語呂合わせでは「感度分の16」「Sunny Sixteen」
等と呼ばれるものと同じであり、これらはいずれも
「快晴時には絞りをF16にし、シャッター速度をASA
(ISO)感度と同じにしなさい」という意味であり、
例えば、ASA100のフィルムで、快晴=F16、1/125秒
(注:1/100秒の近似値)という露出設定となる、
これは前述のフィルムの箱に書かれた露出でASA100
で、快晴時にF11、1/250秒という露出値と同じだ。
ただまあ、これらは単に「そうすれば露出が合う」
というだけの話であり、あくまで古い時代の技法だ。
絞り値やシャッター速度を撮影者の意のままに、任意に
設定する近代の撮影技法では、殆ど意味の無い事である。
まあ、それは露出計がカメラに内蔵された1970年代
以降においては、当然の変化であろう。
ところが、この1960年代までの露出設定技法を、その後
50年から60年が過ぎた現代においても、まだそれに
拘る(準じようとする)ビギナー層の比率がかなり多い。
これはつまり、1960年代くらいに初級カメラ撮影技法
を学んだ、主に団塊の世代層(当時20歳前後)が、
その後、1970年代~1990年代の、銀塩AE/AF時代、
そして2000年代からのデジタル時代になってさえも
「露出の基本原理」あるいは「何故、絞り値や
シャッター速度を変えて撮る必要があるのか?」を
理解できないまま、写真を撮り続けていて、その古い
概念を周囲の(若い)入門層等に、誤まったまま伝え
続けていた事が原因になっていると思われる。
それらの団塊の世代層や、そこらから伝え聞いた初級層
の人達から、新たな入門層が聞く「露出の話」とは、
「天気が晴れていたらF8かF11に絞りを設定しなさい。
曇っていたら、F5.6に設定するのだ」
という感じである。この誤まった話が50年も60年間も
ずっとビギナー層の間で伝えられている状態だ。
だから、近年にいたっても、ビギナー層あたりから
初「今日は(今日の天候では)絞りをいくつに設定
したら良いのですか?」という質問を受けて
面食らう事がある。
匠「そんなの、自分が撮りたいように決めてください」
としか答えようがないが、それらのビギナー層は、
絞り値を変えたら写真がどう変わるか?という知識や
経験を持たないから、どの絞り値にすれば良いのか
さっぱりわからない。
せめて、絞り値を変えたら被写界深度がどう変化
するか?を実践してアドバイスしようと思っても、
ビギナーが手にしているカメラが、例えばμ4/3機で、
14~42mmの暗い標準ズームとのキットであったり
すれば、そういうシステムでは、絞り値や焦点距離を
いくら変えたとしても、目に見えるほどの顕著な
被写界深度の変化はわからないので、説明のしようが
ない。やむなく、私がたまたま付けていた大口径
レンズ等で、絞り値を変えて何枚か撮影し、それを
モニターで表示をすれば、ビギナー層であっても
初「なるほど、背景のボケが違いますね」
・・と、理解はできるのだが、自身のカメラでは
その再現ができないから「高いカメラ(レンズ)を
買わないと、それは実現できないのだ、自分の
システムでは、それは無意味な知識や技法だ」と
解釈してしまい、原理を覚えないし、実践もしないので
またここで最初の思考法に逆戻りだ。
初「ボケの件はわかりましたが、で、結局のところ
今日の天気では絞りをいくつにすれば良いのですか?」
・・・本当にがっかりする話だが、架空の話ではなくて
これは実話である。しかも1度や2度では無く、何度も
恐らくは十数回も、様々なビギナー層との間で、この
やりとりが発生している。
まあ、本LENSBABY MUSE Plastic Opticの話とは
関係の無い余談となってしまった、「天候に応じて
絞り値を決める」という誤解を解く意味で・・
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さて、5本目の海外製レンズ
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レンズは、SAMYANG(サムヤン)85mm/f1.4 AS IF UMC
(新品購入価格 30,000円)(以下、SAMYANG85/1.4)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
2010年発売の韓国製MF大口径中望遠レンズ。
フルサイズ対応であるから、まあつまり初級中級層が
憧れる85mm/F1.4級、ボートレートレンズの類である。
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いきなり余談だが、ビギナー層が憧れる商品は、
多くの場合、異名が付くケースが多い。
例えば、300mm/F2.8は「サンニッパ」、それから
デジタル一眼レフが広まりかけた2000年代初頭では
「デジイチ」「イチデジ」「ガンデジ」という異名。
個別製品では、各時代のTAMRON製90mmマクロ
レンズの事は「タムキュー」と呼ばれる事も多い。
それと、85mm/F1.4は、あまり異名が無いが、稀に
「パーゴイチヨン」という風に呼ばれる事もあった。
しかし、いずれも場合も、そう呼んでいる人達は、
たいてい、当該商品を所有しておらず、単に憧れて
いるだけの状態である事が、ほぼ全てであろう。
実際にそれらを所有できるようになると、そうした
異名では呼ばなくなる。そうなると、所有者は
それを具体的な「製品名」で呼ぶ訳だ。
だから、デジタル一眼レフが一般層に普及したら、
「ガンデジ」等の俗称は全て消滅、あっと言うまに
死語となった。つまり、それらの異名は、その商品
を買いたくても買えない、という若干卑屈な心理から
来る事が常であり、その願望がかなったら、そんな
心理は無くなるから、異名を使う事も無くなる訳だ。
「EOS 5Dを買ったぞ!」等と叫ぶのは当然であろう。
「パーゴイチヨン」は、人物撮影等に汎用性の高い
レンズであるから、現代においては、中級者以上の
層には良く普及しているレンズであろう、だからまあ
既に持っている人達の比率も多いから、そうした
異名で呼ばれる事も、あまり無い訳だろう。
さて、という訳で、本SAMYANG 85mm/f1.4
であるが、発売当初は、新品価格約3万円と、その
ビギナー層憧れの「パーゴイチヨン」が、過去の
どの85/1.4級レンズの中古価格すらも下回る安価な
新品価格により、それなりにセンセーショナルな
ニュースとなっていた。
だから、これを買ったビギナー層も多かったとは
思うが、残念ながら、そこからは地獄だ・・(汗)
まず、本レンズは、使いこなしがとても困難なレンズ
であり、従前のレンズマニアックス第11~第12回
「使いこなしが難しいレンズ特集」で、本レンズは
当時所有の三百数十本のレンズの中から、ワースト
8位にランクインしてしまったという、いわくつきだ。
これは本レンズがMFだから難しい、という事では無い。
ちゃんとした撮影スキルを持っていないと、いや
スキルを持っていたとしても「上手く撮れる確率が低い」
という話である。
![_c0032138_16114764.jpg]()
まあ、上手く条件が決まれば悪い写りでは無いのだが
ともかく難しい為、私も閉口してしまっていて、
それがトラウマとなり(汗)それ以降「SAMYANG製の
レンズを1本も購入していない」という状況に陥った。
本レンズのどこが難しいか? は、ここで述べると
冗長になる為に割愛する。
詳細は、前出の「レンズマニアックス第11回記事」を
参照していただく事としよう。
まあ、興味があれば・・ とは言え「怖いもの見たさ」
という条件つきのレンズであろうから、上級マニア層
以外には、基本的には非推奨である。
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では、次は6本目の海外ブランドレンズ。
![_c0032138_16115416.jpg]()
レンズは、Carl Zeiss Touit 32mm/f1.8
(中古購入価格 55,000円)(以下、Touit32/1.8)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
2013年発売のAPS-C型ミラーレス機(FUJI X,SONY E)
専用、AF準広角(標準画角)レンズ。
![_c0032138_16115589.jpg]()
ツァイスとしては珍しいAFかつAPS-C型ミラーレス機
専用レンズである。まあ、それもその筈、本レンズは
製造メーカー名は非公開であるが、日本製であろう。
カール・ツァイスは、世界に冠たる一流光学機器
メーカーではあるが、日本製のカメラやレンズの台頭に
より、1970年代に写真分野から撤退してしまっていて、
以降の時代のツァイス銘レンズは、ヤシカ、京セラ、
コシナ、SONY等の国内メーカーにより製造されている。
そして、ツァイスのブランドは、非常に著名である為、
国内メーカーは、高性能レンズを作って売りたい際には、
ツァイスからブランド銘を借りて販売するのだ。
この仕掛けがわかってしまえば、別に「ツァイス」
だからと言って無闇に「神格化」する必要は無い。
ただまあ、あまりに低い性能のレンズでは、ツァイス
側もブランド銘を貸すのに難色を示すだろうから、
一応、ツァイス銘のついている国産レンズは、どれも
高性能である。
本Touit32/1.8に関しては、悪い写りのレンズでは
無いのだが、逆光耐性に若干の課題を持ち、また
作りもどうにも安っぽい。まあすなわちツァイスの
ブランド銘を借りて販売するには、価格帯が安価な
類なので、あまり、レンズそのものの性能や品質を
高める事ができなかったのだろう、と推測できる。
すると、どうにもコスパが悪く感じるレンズとなる、
同等仕様(30mm級、F2以下級)で、本Touit32/1.8
より高性能なレンズは、フルサイズ用、APS-C機用
取り交えて、何本か存在しているし、それらの
価格は、本レンズよりも安価だ。
(参照:最強35mm選手権、B決勝~決勝戦記事)
結局、ツァイスのブランド銘を借りるのであれば、
もう少し高価な価格帯のレンズで無いと、「暖簾料」
とのバランスが悪い、という事なのであろう。
![_c0032138_16115516.jpg]()
最後にもう1つ、本シリーズ記事では海外製のレンズ
を色々と取り上げているが、もう、現代においては
だんだんと「製造国」とか「メーカー」という概念が
希薄になりつつある。それは、このツァイスレンズ
でもそうだが、日本製のレンズを海外製と称して
いる訳だ。
また、その逆に近年のNIKON製高級(25万円以上
もする)レンズでは、今度は「MADE IN CHINA」と
はっきりレンズに記載されている。
「Made in ・・」とは最終的に、「その製品が
組みあがった国」を示すものだが、たとえ全てが
日本製の部品であっても、NIKONのように、それが
中国で組み立てられれば「Made in China」であるし、
1970年代の京セラCONTAXにおいても、日本製のレンズ
部品を、西独のツァイス関連工場で組み立てれば、
それは「Made in West Germany」であった訳だ。
グローバル化が進んだ現代においては、生産国の
概念も、さらに曖昧となっている。
例えば、ほぼ完成している海外製品を日本に持ってきて
最終検査を行って、それを「Made in Japan」と称する
等は、”非常にグレーな表記である”と言えるだろうが、
もうそのあたりは各製品市場分野における各メーカーの
モラルやコンプライアンスにまかせるしか無い。
そして、ユーザーの立場では、そのような「Made in」
の表記には惑わされる必要は無い、という事も言える。
中国製製品の品質が悪かったのは、もう昔の話だ。
本シリーズ記事で述べてきたように、近年の中国製
レンズは、恐ろしく品質が向上していて、むしろ
日本製のコストダウン型レンズよりも遥かに高品質だ。
まあ、考えてみれば日本製品だって、高度成長期以前の
時代では、世界には、なかなか通用し難い製品を作って
いた訳であり、時代とともに、様々な状況は変化する
のは当然であろう。
海外製とか無名レンズだから「性能が低い」やら
「品質が悪い」とか、逆に有名ブランドのレンズだから
「良く写る」とか、そういう風に思っている事は、
もう完全に時代錯誤である、という訳だ。
特にこの事は、カメラ分野のビギナー層においては
良く認識する必要があると思う。
何故ならば、もう何十年もの間、カメラのビギナー層
は皆、同様な事(思い込みのブランド信奉等)を、
繰り返し、言い続けているからである・・
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では、次は今回ラストの海外製レンズ。
![_c0032138_16115500.jpg]()
レンズは、銘匠光学 TTArtisan 35mm/f1.4 C
(新品購入価格 9,000円)(以下、TT35/1.4)
カメラは、CANON EOS M5(APS-C機)
2020年末に発売された、中国製のAPS-C型以下
ミラーレス機専用、MF準広角(標準画角)レンズ。
上記、「中国製レンズも捨てたものでは無い」
という話を地で行くような、ハイコスパレンズである。
レンズ側面に構成図が印字されていて、それを
見ると、6群7枚構成だ。
メーカーでは、これを「Sonnar(ゾナー)型だ」と
称していたが、貼りあわせ面の多いSonnar型には、
見えずに、変形ダブルガウス型(Planar型)のように
思われる。
(追記:当初「Sonnar(ゾナー)型だ」と言われて
いたが、発売翌年の2021年頃には、商品紹介Web等
で、その記載は外されて「ダブルガウス型」という
表記に改められていた。まあ、つまり「Sonnarと
Planarを勘違いしていた!」という話なのだろう)
ただ、何々型、というものは、ある意味どうでも良く、
問題は良く写るか否か?であろう。
![_c0032138_16120046.jpg]()
その視点においては、本レンズは、僅かな弱点がある。
すなわち、絞り開放近く、かつ近接撮影での解像感が
低下する(注:ちょっと開放F1.4は、欲張りすぎな
スペックであろうか? 開放F1.7位に留めておけば
もう少し描写力が向上したとも推測されるが、
近代の消費者層は、「開放F値が明るいレンズが良い
レンズ」という大きな誤解を持ってしまっている為、
こういう製品企画になっても、やむを得ない)
それと、逆光耐性の若干の低さ、ボケ質破綻の発生、
それから、φ39mmの小径フィルターは入手が難しい
事だ。
(注:今回は、φ39mm→φ46mmのステップアップ
リングを噛まして、保護あるいは減光フィルターを
装着している。(後日φ39mm減光フィルターを入手)
フィルター径φ39mmの仕様のレンズは、かなり少ない。
私が所有している範囲では、七工匠60mm/F2.8 Macro、
FUJIFILM XF60mm/F2.4 R MACROと、本レンズのみだ。
もっとも、いずれもミラーレス機用のレンズであり、
レンジ機用では、φ39mmのレンズも、色々とあるとは
思うが、個人的にはあまり興味の無いジャンルだ)
まあ、だいたいこれくらいしか弱点が無く、肝心の
描写力は、少し絞り込むと解像感も増し、なかなか良い
描写となる。(注:この為、減光フィルターの装着は
あまり好ましくなく、明るい開放F値を犠牲にしても
常に絞り込み気味で使用する。その際は、フィルター
無しか、または保護フィルター程度の利用で十分だ)
ただし、Sonnar型(と称された。実際にはPlanar型
である)このレンズ構成と描写力は、現代的な視点から
は、多少の物足りなさはあるだろう。
少し絞る事で描写力が向上するとは書いたものの、
絞り指標はF1.4~F4あたりまでが無段階で、回転角も
適正だが、それ以上、F5.6よりも絞ると指標が近接して
廻し難く、ごちゃごちゃしていて、やや使い難い。
![_c0032138_16120013.jpg]()
そして長所は、金属鏡筒で高級感もあり、円錐形状
鏡筒デザインもクラシカルで悪く無い。鏡筒にレンズ
構成が書いてあるところも含め、COSINA Voigtlandar
HELIAR Vintage Line 50mm/F3.5(別途紹介予定)の
高級レンズを彷彿させる。
おまけに、何より価格が安価な点は良い。
実売約9000円で、この品質と性能であれば、
もう基本的には、あまり文句が無い。
新品販売も、カメラ量販店で行っているので、
入手性や修理対応についても、特に問題は無い。
描写性能も含め、クラシカルな設計を元にした場合は、
もう、このあたりが性能限界点かも知れない。
これ以上、描写力を良くしようとすれば、現代的な
コンピューター光学設計や新硝材の採用等で、コスト
アップするのは否めないであろう。(注:中国製の
安価なレンズ群では、本レンズ発売時点まで、非球面
レンズの採用例は無い。が、LAOWA等では、2021年
頃から非球面を採用した製品を発売している。
さらに追記:今回紹介の銘匠光学も、ごく最近より
非球面レンズを搭載した交換レンズの発売を開始)
まあ、これはこれで良し、という事にしておこう。
ちなみに、個人レンズ評価DBの得点では、3.5点と、
海外製(中国製)レンズにしては、悪く無い総合得点
が得られている。
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では、今回の「海外レンズ・その他(1)編」は、
このあたり迄で、次回記事に続く。
今回は海外製その他(1)編として、雑多な海外メーカー
のレンズ7本を紹介する。

して、とりまく周辺事情等の話を中心とする。
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ではまず、今回最初の海外製レンズ。

(МИР-1)(中古購入価格 14,000円)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
旧ソビエト連邦時代の「アルセナール(アーセナル)
国営工場」(現在はウクライナの首都「キエフ」に
ある光学・電子機器メーカー)製のレンズである。
本レンズは勿論フルサイズ対応で、M42マウント品だ。
(他にL39マウント版があったと聞く)
同工場における、ソビエト崩壊後のレンズ銘は、
「ARSAT」(アルセナール製という意味の略語)と
なっているという話も聞くが、詳細は不明だ。
まあ、旧ソ連時代での「MIR」(ミール)の方が、
(国内)マニア層には知名度が高いであろう。

である。写真用レンズの他、宇宙ステーションの
名前にもなった。(1986年~2001年に使われた)
MIRの後の番号(数字)は、焦点距離とかの仕様とは
無関係であり、製品番号(開発番号)であろうか?
例えば、旧ソ連製の戦闘機MiG(ミグ、あるいは
ミコヤン&グレヴィッチ)も、MiG-21,MiG-25、
MiG-29,MiG-31,MiG-35等、古い時代の順からの
開発番号である。(しかし飛び飛びの番号だ)
まあ旧ソ連の技術関連分野では、比較的普遍的な
考え方(型番体系)であるのだろう。
さらに余談だが、「鉄人28号」とか初代「ガンダム」
のジオン軍のモビルスーツも、同等な順次連番とする
型番体系だと思うのだが、ガンダムでの地球連邦軍の
型番体系は、そうでは無い。(いきなり「RX-75」
ガンタンクから始まる、等)
現実の世界では、米ソ冷戦時代の米国戦闘ヘリの型番も
AH-1(コブラ)の後は、AH-64(アパッチ)と飛び、
これも任意の型番であろう。
そして、近代(ここ50年程)の国産カメラやレンズの
型番体系も、任意の型番とする場合が多い。
(例:いきなり「α-7000」や「Z7」から始まる等)
本レンズも、その「連番タイプ」の型番体系なのか?
それと、MIR-1で1番だから、一番最初に開発された
レンズか否か?・・は、良くわからない(汗)
と言うのも、連番開発番号であれば、MIR-1の後に、
MIR-2,3,4・・ というレンズがあっても良さそう
なのだが、それらの型番のレンズは聞いた事が無く、
かろうじて流通していたものとしては、MIR-20
(20mm/F3.5、未所有)や、MIR-24(35mm/F2、
多数の記事で紹介済みの名レンズ)くらいしか
知らない。ずいぶんと番号が飛びすぎていないか?
(例:MiG戦闘機は奇数番号で正式化されるが、番号
が抜けていても、2つ3つ程度が抜けるのが最大だ)
それから、MIR-24は、似た構成や描写の過去レンズ
を発見できず、アルセナール社のオリジナル設計
である可能性も高い、と私は分析しているのだが・・
本レンズMIR-1は、ツァイス(イエナ、東独)の
フレクトゴンをベースにしている、という噂もある。
これは、「コピー品」というよりは、第二次大戦
でのドイツの敗戦により、カール・ツァイス社は
東西に分断されてしまい、東独側(イエーナ)から
光学技術(技術のみならず設備や人材等も)が、
共産圏に流出したから、と考察するのが妥当である。
(参考:ツァイス技術の完全東側流出を阻止しようと
した米軍により、一部の人材や設備を米軍が確保し、
西独側オーバーコッフェンに移した為、ツァイスは
東西分断された。(注:現在は再統一されている)
また、東独ツアイスの設備が接収され、移送された
先の旧ソ連の国営工場が「アルセナール」である)
それ故、もし本レンズMIR-1が、「アルセナール
国営工場」の最初期/最初(1950年代)の製品で
あれば、ツァイスの設備や設計を流用したと考えて
も不思議では無い。
ただ、アルセナール(工場)は、MIR-24あたりの
時代(1980年代頃?)においては、相当に描写力の
高いレンズを設計していたと思うので、
「国営工場でコピー品を製造しているだけ」という
範疇には留まらず、独自に技術力を高めていったの
ではなかろうか?(だからこそ、ソビエト崩壊後に
国営工場からメーカーに転進できているのでは?)
歴史の分析の話が長くなったが、本MIR-1の話に進む。

が付いている仕様だが、これは絞り操作性が良く無い。
また、描写力も、ボケ質破綻が頻発し、その回避も
困難であるので、この点でもかなり古い時代のレンズと
同等の技術水準であり、完全なる「オールドレンズ」だ。
まあ、たとえベースとなった設計が、世界に冠たる
ツァイスのものだったとしても、それは第二次大戦前
の時代の設計、あるいは戦後1950年代の設計なので
現代から見れば、70年~90年も古い時代のものだ。
描写力や構造が古臭くても、やむを得ないであろう。
ただ、幸いにしてボケ質以外の弱点は、あまり
見当たらない。あえて言えば周辺減光が僅かに出る
程度であり、むしろ逆光耐性や解像感は高い。
よって、本レンズの特性が分析できているのであれば、
後は、その長所を活かし、弱点を回避して使うだけ
である。古いレンズだろうが、性能の低いレンズで
あろうが、それを使いこなすのも、あるいは逆に
使いこなせずに「レンズの言うがまま」の性能でしか
撮れないのであろうとも、いずれもユーザー側の責任だ。
銀塩時代であれば、オールドレンズを銀塩一眼レフや
レンジファインダー機で使わざるを得ず、それでは
たとえ中上級マニア層であろうが、「レンズの言うが
まま」にしか撮れず、弱点を回避できるような技法を
使う術もなかったのだが、現代においては母艦の環境も
ミラーレス機が使え、オールドレンズの弱点の多くは
撮影者のスキル(技能、知識、経験、技術等)で
回避可能だ。

そのように、使いこなしに高いスキルが必要だ。
旧ソ連崩壊後(1990年代)の銀塩時代であれば
ロシアンレンズは新品・中古相場が、とても安価で
あったので、お試し的に買う事も出来たのだが、
近年では希少価値で、やや高価になっているし、
殆どが設計が古く、使いこなしが困難であるから、
上級マニア層のみに、かろうじて推奨できる。
---
では、次の海外製レンズ。

レンズは、Docooler 35mm/f1.6
(中古購入価格 9,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited
(μ4/3機)
発売年不明、その他全く詳細不明の、恐らくは中国製と
思われるミラーレス(μ4/3)用の単焦点MFレンズ。
(注:FUJIFILM Xマウント版等も存在した模様だ)

不明であった。恐らくは新品流通価格と同等くらいか、
むしろ、やや高価に買ってしまったかも知れない(汗)
ただまあ、幸いにして、コスパ感覚は持っているので、
この購入価格に見合う性能があれば、コスパ評価的
には及第点と見なす事も出来るであろう。
で、実際の本レンズの仕様や性能だが・・
まず、イメージサークルはAPS-C機対応である。
Cマウント(監視カメラや工業用等)の小型センサー
対応のレンズでは無いので、ミラーレス機で普通に
使用する事ができる。
長所としては、実焦点距離35mmのレンズとしては、
異常に寄れる最短撮影距離18cmの近接性能だ。

と前述した東独ツァイスのフレクトゴンがあるが、
レアものオールドで入手性が悪い。また本レンズは
フルサイズ対応では無いし、入手性も良く無い。
したがって、本ブログでは、35mmレンズで最強の
近接性能は、一眼レフ用ではTAMRON SP35mm/F1.8
(F012)としていた。(注:2019年のミラーレス機用
「TAMRON 35mm/F2.8 Di Ⅲ OSD M1:2 F053」
(フルサイズ可)は、さらに寄れる最短15cmとなった。
現在では、これが最強だが、まあ、「ほとんどマクロ
レンズだ」とも言える→未所有)
近接性能のみならず、本Docooler 35/1.6の
描写力はさほど悪く無い。(ただし、ボケ質破綻が
発生しやすいので、ボケ質破綻回避技法の適用は
必須となる)
そして、品質(作り)も、近代の新鋭中国製レンズと
同様の金属鏡筒で、悪く無い。
したがって、トータルで考えると「価格よりも性能が
勝る」と評価していて、「コスパ」の個人評価点は
5点満点で4点、と悪く無い。また総合評価も3.5点
で、これも優秀な類であるから、結構お気に入りの
レンズとなっている。

まず中古市場等では見かける事は無い、とは思うが、
偶然見かけるような事があれば、上級マニア層に
対しては推奨できるレンズだ。
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さて、3本目の海外製レンズは、光学系(Optic)
交換型システムである。

(中古購入価格3,000円。ただしOptic単体価格)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)
2009年発売のMFティルト型トイレンズが「MUSE」
であるが、それまでの「3G」から、光学系(Optic)
交換型の仕様に変化した。(それ以降のComposer系
も同様である)
MUSE(専用)のOpticは4種類が存在するが、その内、
3つしか所有していない。現代では入手性が極めて
低いのも理由だ。ZonePlate/Pinholeの特殊Opticは、
本シリーズ第5回「LENSBABY編」等で紹介済みで
あるので、今回は残りの2つのOpticを紹介していく。
こちらは、MUSEの交換光学系(Optic)の中では、最も
しっかりと写る「ダブルグラス」タイプだ。

従前の機種、LENSBABY 3G(2007年)と、全く同じ
写りにしか思えず、恐らくは同一のレンズ構成だろう
から、購入する必要が無かった訳だ(汗)
まあ、唯一考えられる用法としては、3Gを持ち出した
場合は、その日1日は、ずっとそれで撮るしか無いの
だが、本MUSEであれば、Double Glass Opticで
3Gと同様の写りを得つつ、作画上の必要に応じて、
出先でも他のOpticに交換ができる、というメリット
がある点だ。
しかしながら、Opticの交換は、Opticを収納する
専用ケースの「底蓋」を工具として用いないと
交換不能(注:他の一般的工具での交換を試したが、
今のところ全て失敗している)なので、やや面倒だ。
結局、本Opticに関しては、3Gを持っていれば不用
という感じである。(3Gは、本シリーズ第5回記事
で紹介済み)
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では、4本目のシステムは上記のOpticを交換してみよう。

(新品購入価格 6,000円、ただしMUSE本体込みの価格)
カメラは、同じくSONY NEX-7 (APS-C機)
こちらは「ユルい」描写が得られるOpticだ。
で、本システムの購入価格が安価であったのは、
2010年代初頭に4/3(フォーサーズ)システムが
終焉を迎えていて、本MUSEは、その4/3マウント版
での新品在庫処分価格であったからだ。
この為、母艦カメラは、必要に応じてOLYMPUS等の
4/3機を利用できるのだが、ピーキング機能が無く、
一眼レフの光学ファインダーでは、ティルト型レンズ
におけるスイートスポット(=俗語:画面内でピント
が合う場所の事)を探すのが困難である。
よって、4/3マウント用の「簡易アダプター」等を
用いて任意のミラーレス機で、本4/3機用MUSEを使う
のが簡便だ。
なお、4/3用「電子アダプター」(例:OLYMPUS製
MMF-1~3等)では、全ての4/3用レンズにおいて、
AF/MF/絞り制御等が可能であるが、電子部品を持たない
「簡易アダプター」では、4/3用レンズでの、AF/MF/
絞り操作が効かず、普通は使用できない。
ところが、本MUSEのようなトイレンズ系であれば、
4/3用と言っても、AF/MF/絞りは、全てレンズ側での
操作となるので、電子アダプターを使わずとも
簡易アダプターで利用が可能である。この用法では
母艦はμ4/3機で無くとも、SONY Eマウント機で
あっても4/3用(トイレンズ)が使用可能となる。

(前述)、Single Glass(未所有)(加えて、
LENSBABY 3G)での、絞り操作だが、これは、
Optic内部に磁石で貼り付いている絞りプレートを、
Optic前面から磁石のついた工具で取り出し、別の
プレートを挿入する、という面倒な方式である。
したがって、撮影中に頻繁に絞り値(プレート)を
交換するというスタイルには向かず、殆どのケース
では、もう、その日の天候(照度)や、撮りたい写真
の意図や、Opticの特性に合わせて、外出前に決めた
絞りプレートで固定で撮る、という用法になる。
Opticの特性に合わせて、というのは、例えば前述の
Double Glass は最もシャープに写るOpticであるが、
これをさらにシャープにしたい場合は、F8やF11と
いった小絞りプレートを装着する。
であれば、本Plasticは、最も「ユルく」写るOptic
であるから、それはF2.8等の絞りプレートにするか?
と言えば、そういう用途(ユルく写したい)であれば、
そうすれば良いし、逆に「ユルさ」を多少なりとも
緩和して使いたいと思えば、本Plastic Opticに、
小絞りプレートを組み合わせれば、そのユルさは
控えめとなる、まあつまり、撮影者がどう撮りたいか?
次第で、絞り値(プレート)は好きに決めれば良い。
その日の天候に応じて絞り値を決める・・ と言うと
以下余談だが、1960年代位の銀塩カメラでは、露出計
を内蔵していないカメラもまだ多く、その際、当時の
カメラマンは、フィルムの箱に書かれていた推奨の
露出値があり、それを参考にして撮っていた。
例えば、ISO(注:当時はASA規格だ)100のネガ
フィルムであれば、カメラ側のシャッター速度を
1/250秒程度に固定し、快晴=F11、晴れ=F8、
曇り=F5.6・・という感じにカメラを設定すれば、
ほぼ正しい露出で写真は撮れるし、多少差異があった
としても、ネガフィルムのラティチュード(露出寛容度)
は広い為、DPE(現像・プリント)時に調整範囲に収まる。
他の語呂合わせでは「感度分の16」「Sunny Sixteen」
等と呼ばれるものと同じであり、これらはいずれも
「快晴時には絞りをF16にし、シャッター速度をASA
(ISO)感度と同じにしなさい」という意味であり、
例えば、ASA100のフィルムで、快晴=F16、1/125秒
(注:1/100秒の近似値)という露出設定となる、
これは前述のフィルムの箱に書かれた露出でASA100
で、快晴時にF11、1/250秒という露出値と同じだ。
ただまあ、これらは単に「そうすれば露出が合う」
というだけの話であり、あくまで古い時代の技法だ。
絞り値やシャッター速度を撮影者の意のままに、任意に
設定する近代の撮影技法では、殆ど意味の無い事である。
まあ、それは露出計がカメラに内蔵された1970年代
以降においては、当然の変化であろう。
ところが、この1960年代までの露出設定技法を、その後
50年から60年が過ぎた現代においても、まだそれに
拘る(準じようとする)ビギナー層の比率がかなり多い。
これはつまり、1960年代くらいに初級カメラ撮影技法
を学んだ、主に団塊の世代層(当時20歳前後)が、
その後、1970年代~1990年代の、銀塩AE/AF時代、
そして2000年代からのデジタル時代になってさえも
「露出の基本原理」あるいは「何故、絞り値や
シャッター速度を変えて撮る必要があるのか?」を
理解できないまま、写真を撮り続けていて、その古い
概念を周囲の(若い)入門層等に、誤まったまま伝え
続けていた事が原因になっていると思われる。
それらの団塊の世代層や、そこらから伝え聞いた初級層
の人達から、新たな入門層が聞く「露出の話」とは、
「天気が晴れていたらF8かF11に絞りを設定しなさい。
曇っていたら、F5.6に設定するのだ」
という感じである。この誤まった話が50年も60年間も
ずっとビギナー層の間で伝えられている状態だ。
だから、近年にいたっても、ビギナー層あたりから
初「今日は(今日の天候では)絞りをいくつに設定
したら良いのですか?」という質問を受けて
面食らう事がある。
匠「そんなの、自分が撮りたいように決めてください」
としか答えようがないが、それらのビギナー層は、
絞り値を変えたら写真がどう変わるか?という知識や
経験を持たないから、どの絞り値にすれば良いのか
さっぱりわからない。
せめて、絞り値を変えたら被写界深度がどう変化
するか?を実践してアドバイスしようと思っても、
ビギナーが手にしているカメラが、例えばμ4/3機で、
14~42mmの暗い標準ズームとのキットであったり
すれば、そういうシステムでは、絞り値や焦点距離を
いくら変えたとしても、目に見えるほどの顕著な
被写界深度の変化はわからないので、説明のしようが
ない。やむなく、私がたまたま付けていた大口径
レンズ等で、絞り値を変えて何枚か撮影し、それを
モニターで表示をすれば、ビギナー層であっても
初「なるほど、背景のボケが違いますね」
・・と、理解はできるのだが、自身のカメラでは
その再現ができないから「高いカメラ(レンズ)を
買わないと、それは実現できないのだ、自分の
システムでは、それは無意味な知識や技法だ」と
解釈してしまい、原理を覚えないし、実践もしないので
またここで最初の思考法に逆戻りだ。
初「ボケの件はわかりましたが、で、結局のところ
今日の天気では絞りをいくつにすれば良いのですか?」
・・・本当にがっかりする話だが、架空の話ではなくて
これは実話である。しかも1度や2度では無く、何度も
恐らくは十数回も、様々なビギナー層との間で、この
やりとりが発生している。
まあ、本LENSBABY MUSE Plastic Opticの話とは
関係の無い余談となってしまった、「天候に応じて
絞り値を決める」という誤解を解く意味で・・
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さて、5本目の海外製レンズ

(新品購入価格 30,000円)(以下、SAMYANG85/1.4)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
2010年発売の韓国製MF大口径中望遠レンズ。
フルサイズ対応であるから、まあつまり初級中級層が
憧れる85mm/F1.4級、ボートレートレンズの類である。

多くの場合、異名が付くケースが多い。
例えば、300mm/F2.8は「サンニッパ」、それから
デジタル一眼レフが広まりかけた2000年代初頭では
「デジイチ」「イチデジ」「ガンデジ」という異名。
個別製品では、各時代のTAMRON製90mmマクロ
レンズの事は「タムキュー」と呼ばれる事も多い。
それと、85mm/F1.4は、あまり異名が無いが、稀に
「パーゴイチヨン」という風に呼ばれる事もあった。
しかし、いずれも場合も、そう呼んでいる人達は、
たいてい、当該商品を所有しておらず、単に憧れて
いるだけの状態である事が、ほぼ全てであろう。
実際にそれらを所有できるようになると、そうした
異名では呼ばなくなる。そうなると、所有者は
それを具体的な「製品名」で呼ぶ訳だ。
だから、デジタル一眼レフが一般層に普及したら、
「ガンデジ」等の俗称は全て消滅、あっと言うまに
死語となった。つまり、それらの異名は、その商品
を買いたくても買えない、という若干卑屈な心理から
来る事が常であり、その願望がかなったら、そんな
心理は無くなるから、異名を使う事も無くなる訳だ。
「EOS 5Dを買ったぞ!」等と叫ぶのは当然であろう。
「パーゴイチヨン」は、人物撮影等に汎用性の高い
レンズであるから、現代においては、中級者以上の
層には良く普及しているレンズであろう、だからまあ
既に持っている人達の比率も多いから、そうした
異名で呼ばれる事も、あまり無い訳だろう。
さて、という訳で、本SAMYANG 85mm/f1.4
であるが、発売当初は、新品価格約3万円と、その
ビギナー層憧れの「パーゴイチヨン」が、過去の
どの85/1.4級レンズの中古価格すらも下回る安価な
新品価格により、それなりにセンセーショナルな
ニュースとなっていた。
だから、これを買ったビギナー層も多かったとは
思うが、残念ながら、そこからは地獄だ・・(汗)
まず、本レンズは、使いこなしがとても困難なレンズ
であり、従前のレンズマニアックス第11~第12回
「使いこなしが難しいレンズ特集」で、本レンズは
当時所有の三百数十本のレンズの中から、ワースト
8位にランクインしてしまったという、いわくつきだ。
これは本レンズがMFだから難しい、という事では無い。
ちゃんとした撮影スキルを持っていないと、いや
スキルを持っていたとしても「上手く撮れる確率が低い」
という話である。

ともかく難しい為、私も閉口してしまっていて、
それがトラウマとなり(汗)それ以降「SAMYANG製の
レンズを1本も購入していない」という状況に陥った。
本レンズのどこが難しいか? は、ここで述べると
冗長になる為に割愛する。
詳細は、前出の「レンズマニアックス第11回記事」を
参照していただく事としよう。
まあ、興味があれば・・ とは言え「怖いもの見たさ」
という条件つきのレンズであろうから、上級マニア層
以外には、基本的には非推奨である。
----
では、次は6本目の海外ブランドレンズ。

(中古購入価格 55,000円)(以下、Touit32/1.8)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)
2013年発売のAPS-C型ミラーレス機(FUJI X,SONY E)
専用、AF準広角(標準画角)レンズ。

専用レンズである。まあ、それもその筈、本レンズは
製造メーカー名は非公開であるが、日本製であろう。
カール・ツァイスは、世界に冠たる一流光学機器
メーカーではあるが、日本製のカメラやレンズの台頭に
より、1970年代に写真分野から撤退してしまっていて、
以降の時代のツァイス銘レンズは、ヤシカ、京セラ、
コシナ、SONY等の国内メーカーにより製造されている。
そして、ツァイスのブランドは、非常に著名である為、
国内メーカーは、高性能レンズを作って売りたい際には、
ツァイスからブランド銘を借りて販売するのだ。
この仕掛けがわかってしまえば、別に「ツァイス」
だからと言って無闇に「神格化」する必要は無い。
ただまあ、あまりに低い性能のレンズでは、ツァイス
側もブランド銘を貸すのに難色を示すだろうから、
一応、ツァイス銘のついている国産レンズは、どれも
高性能である。
本Touit32/1.8に関しては、悪い写りのレンズでは
無いのだが、逆光耐性に若干の課題を持ち、また
作りもどうにも安っぽい。まあすなわちツァイスの
ブランド銘を借りて販売するには、価格帯が安価な
類なので、あまり、レンズそのものの性能や品質を
高める事ができなかったのだろう、と推測できる。
すると、どうにもコスパが悪く感じるレンズとなる、
同等仕様(30mm級、F2以下級)で、本Touit32/1.8
より高性能なレンズは、フルサイズ用、APS-C機用
取り交えて、何本か存在しているし、それらの
価格は、本レンズよりも安価だ。
(参照:最強35mm選手権、B決勝~決勝戦記事)
結局、ツァイスのブランド銘を借りるのであれば、
もう少し高価な価格帯のレンズで無いと、「暖簾料」
とのバランスが悪い、という事なのであろう。

を色々と取り上げているが、もう、現代においては
だんだんと「製造国」とか「メーカー」という概念が
希薄になりつつある。それは、このツァイスレンズ
でもそうだが、日本製のレンズを海外製と称して
いる訳だ。
また、その逆に近年のNIKON製高級(25万円以上
もする)レンズでは、今度は「MADE IN CHINA」と
はっきりレンズに記載されている。
「Made in ・・」とは最終的に、「その製品が
組みあがった国」を示すものだが、たとえ全てが
日本製の部品であっても、NIKONのように、それが
中国で組み立てられれば「Made in China」であるし、
1970年代の京セラCONTAXにおいても、日本製のレンズ
部品を、西独のツァイス関連工場で組み立てれば、
それは「Made in West Germany」であった訳だ。
グローバル化が進んだ現代においては、生産国の
概念も、さらに曖昧となっている。
例えば、ほぼ完成している海外製品を日本に持ってきて
最終検査を行って、それを「Made in Japan」と称する
等は、”非常にグレーな表記である”と言えるだろうが、
もうそのあたりは各製品市場分野における各メーカーの
モラルやコンプライアンスにまかせるしか無い。
そして、ユーザーの立場では、そのような「Made in」
の表記には惑わされる必要は無い、という事も言える。
中国製製品の品質が悪かったのは、もう昔の話だ。
本シリーズ記事で述べてきたように、近年の中国製
レンズは、恐ろしく品質が向上していて、むしろ
日本製のコストダウン型レンズよりも遥かに高品質だ。
まあ、考えてみれば日本製品だって、高度成長期以前の
時代では、世界には、なかなか通用し難い製品を作って
いた訳であり、時代とともに、様々な状況は変化する
のは当然であろう。
海外製とか無名レンズだから「性能が低い」やら
「品質が悪い」とか、逆に有名ブランドのレンズだから
「良く写る」とか、そういう風に思っている事は、
もう完全に時代錯誤である、という訳だ。
特にこの事は、カメラ分野のビギナー層においては
良く認識する必要があると思う。
何故ならば、もう何十年もの間、カメラのビギナー層
は皆、同様な事(思い込みのブランド信奉等)を、
繰り返し、言い続けているからである・・
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では、次は今回ラストの海外製レンズ。

(新品購入価格 9,000円)(以下、TT35/1.4)
カメラは、CANON EOS M5(APS-C機)
2020年末に発売された、中国製のAPS-C型以下
ミラーレス機専用、MF準広角(標準画角)レンズ。
上記、「中国製レンズも捨てたものでは無い」
という話を地で行くような、ハイコスパレンズである。
レンズ側面に構成図が印字されていて、それを
見ると、6群7枚構成だ。
メーカーでは、これを「Sonnar(ゾナー)型だ」と
称していたが、貼りあわせ面の多いSonnar型には、
見えずに、変形ダブルガウス型(Planar型)のように
思われる。
(追記:当初「Sonnar(ゾナー)型だ」と言われて
いたが、発売翌年の2021年頃には、商品紹介Web等
で、その記載は外されて「ダブルガウス型」という
表記に改められていた。まあ、つまり「Sonnarと
Planarを勘違いしていた!」という話なのだろう)
ただ、何々型、というものは、ある意味どうでも良く、
問題は良く写るか否か?であろう。

すなわち、絞り開放近く、かつ近接撮影での解像感が
低下する(注:ちょっと開放F1.4は、欲張りすぎな
スペックであろうか? 開放F1.7位に留めておけば
もう少し描写力が向上したとも推測されるが、
近代の消費者層は、「開放F値が明るいレンズが良い
レンズ」という大きな誤解を持ってしまっている為、
こういう製品企画になっても、やむを得ない)
それと、逆光耐性の若干の低さ、ボケ質破綻の発生、
それから、φ39mmの小径フィルターは入手が難しい
事だ。
(注:今回は、φ39mm→φ46mmのステップアップ
リングを噛まして、保護あるいは減光フィルターを
装着している。(後日φ39mm減光フィルターを入手)
フィルター径φ39mmの仕様のレンズは、かなり少ない。
私が所有している範囲では、七工匠60mm/F2.8 Macro、
FUJIFILM XF60mm/F2.4 R MACROと、本レンズのみだ。
もっとも、いずれもミラーレス機用のレンズであり、
レンジ機用では、φ39mmのレンズも、色々とあるとは
思うが、個人的にはあまり興味の無いジャンルだ)
まあ、だいたいこれくらいしか弱点が無く、肝心の
描写力は、少し絞り込むと解像感も増し、なかなか良い
描写となる。(注:この為、減光フィルターの装着は
あまり好ましくなく、明るい開放F値を犠牲にしても
常に絞り込み気味で使用する。その際は、フィルター
無しか、または保護フィルター程度の利用で十分だ)
ただし、Sonnar型(と称された。実際にはPlanar型
である)このレンズ構成と描写力は、現代的な視点から
は、多少の物足りなさはあるだろう。
少し絞る事で描写力が向上するとは書いたものの、
絞り指標はF1.4~F4あたりまでが無段階で、回転角も
適正だが、それ以上、F5.6よりも絞ると指標が近接して
廻し難く、ごちゃごちゃしていて、やや使い難い。

鏡筒デザインもクラシカルで悪く無い。鏡筒にレンズ
構成が書いてあるところも含め、COSINA Voigtlandar
HELIAR Vintage Line 50mm/F3.5(別途紹介予定)の
高級レンズを彷彿させる。
おまけに、何より価格が安価な点は良い。
実売約9000円で、この品質と性能であれば、
もう基本的には、あまり文句が無い。
新品販売も、カメラ量販店で行っているので、
入手性や修理対応についても、特に問題は無い。
描写性能も含め、クラシカルな設計を元にした場合は、
もう、このあたりが性能限界点かも知れない。
これ以上、描写力を良くしようとすれば、現代的な
コンピューター光学設計や新硝材の採用等で、コスト
アップするのは否めないであろう。(注:中国製の
安価なレンズ群では、本レンズ発売時点まで、非球面
レンズの採用例は無い。が、LAOWA等では、2021年
頃から非球面を採用した製品を発売している。
さらに追記:今回紹介の銘匠光学も、ごく最近より
非球面レンズを搭載した交換レンズの発売を開始)
まあ、これはこれで良し、という事にしておこう。
ちなみに、個人レンズ評価DBの得点では、3.5点と、
海外製(中国製)レンズにしては、悪く無い総合得点
が得られている。
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では、今回の「海外レンズ・その他(1)編」は、
このあたり迄で、次回記事に続く。