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海外レンズ・マニアックス(10)LAOWA マニアックス

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海外製のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回はLAOWA(ラオワ)製レンズを4本を紹介する。
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LAOWA(ラオワ)は、中国・安徽省(あんきしょう)の
合肥(ごうひ/がっぴ)市にある新鋭レンズメーカーだ。
LAOWAはブランド名(創業者のハンドルネーム?)で
あり、企業名は「Venus Optics」(安徽長庚光学)だ。

2014年頃から、一眼レフ・ミラーレス機用の高級
レンズを開発・製造・販売しているが、日本国内
での流通が活性化したのは、概ね2016年頃から
であり、その頃から、国内輸入代理店(サイトロン
ジャパン社)がつき、同時に大手量販店等の店頭でも
購入できるようになっていた。
(注:2020年頃では、KenkoTokina社も販売代理店
となっていたが、現在は商品を取り扱っていない模様)

上に「高級」と書いたのは、他の中国製レンズのように
安価なものはLAOWA製レンズには殆ど無く、あった
としても、ドローン搭載用小型軽量レンズ等の特殊な
タイプであり、多くの交換レンズは、他に類を見ない
非常に特殊な仕様(スペック)を持つ、高付加価値型
(高価格帯)レンズのメーカーである。

どうやらLAOWAの創業者は、日本のカメラメーカーで
長年、光学設計に携わった経験を持つらしく、国内
メーカーでは、なかなか実現できなかった(すなわち、
レンズ等は、大量に販売しないと、大企業においては
その事業を維持できない)ユニークでマニアックな
スペックのレンズを、マニア層や、特殊なニーズを
持つユーザー向けに少量多品種生産を行う事を主眼
として独立創業した企業である模様だ。

その結果として、LAOWAは急成長し、上記の本社の
所在する合肥市は内陸部だが、そこにピカピカの
巨大な社屋を建て、海沿いの上海(しゃんはい)
にも新工場を建設、そこで製造を行っている模様だ。

近年の中国での製造品質は恐ろしく向上している、
それは、この時代(2010年代後半)に、様々な
中国企業の新鋭レンズが日本市場に参入したので
それらの製造品質を見れば、いわずもがなであろう。
まあ、そういう事実を伝える為にも、本シリーズ
「海外レンズ・マニアックス」を開始した訳だ。
つまり、いつまでも「しょせん、中華レンズだ!」
といった評価は成り立たず、あなどれない実力値を
持つ、という事だ。

さて、本記事では、LAOWA製のレンズ4本を紹介する。
記事執筆時点では、この4本しか所有していないが、
LAOWAは次々にユニークな仕様の新製品を発売して
来るので、今後、所有数は増えていくであろう。
まあ既に、国内外でも「LAOWA党」なるユーザーが
増えていて、「リピーター」として多数のLAOWA製
レンズを所有している状況があると聞く。

----
ではまず、今回最初のLAOWAレンズ。
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レンズは、LAOWA 105mm/f2 The Bokeh Dreamer
(LAO0013) (新品購入価格 90,000円)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)

2016年に発売された、史上3本目のアポダイゼーション
光学エレメント搭載MFレンズ。
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本レンズは、その発売前年、どこかの展示会で、
「Smooth Trance Focus」(=STF)の名称で
試作品が展示されていた模様だ。


なお、STFとは、1998年にMINOLTAより発売された
史上初のアポダイゼーション(搭載)レンズであり、
私も、20年以上に渡り愛用している傑作レンズだ。

私はその記事を見て、
「お! 新しいSTFが発売されるのか? これは興味深い」
となって記憶していて、発売直後に新品で購入した
次第なのだが・・

実際に発売されたレンズの名称は、「The Bokeh
Dreamer」となっている。まあ、前記MINOLTA版の
STFは、その後2006年に、αの事業一式がSONYに
引き継がれた後にも継続生産されている現行レンズ
であり、それとの名前被りを避けたのであろう。

しかし、それにしても、日本のカメラメーカーで
さえも、なかなか開発する事が困難であっただろう
アポダイゼーションレンズが、失礼ながら中国の
新鋭メーカーで、簡単に出来てしまうのだろうか?

発売当初はそう思っていたのだが、後日、LAOWAの
創業者であり企画や光学系設計を担当する社長さん
が、日本のカメラメーカーのレンズ設計者出身という
話を聞いて納得がいった。勿論詳しい経歴などは
知らないが、恐らくはMINOLTA又は、その関連会社
において、長年技術者として働いていて、初代STFの
設計開発にも係わった経験があるのだろうか・・?
だからアポダイゼーションの設計もできたし、その
試作品名もMINOLTA時代の「Smooth Trance Focus」
にしたに違い無い、と思った。


さて、であれば、ベテラン技術者の設計という事で
安心して本レンズを使用する事が出来る。
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客観的に長所短所をまとめてみよう。

まず長所としては、以下がある。

*汎用的な複数の一眼レフおよびミラーレス機用
 マウントで発売されていて、例えばNIKON F版を
 購入しておけば、およそあらゆるカメラで
 アポダイゼーションを使用する事が出来る。

 他に存在する3本のSTF/APDレンズは、いずれも
 ほぼ専用マウント品(SONY A、FUJI X、SONY E)
 であり、それらを多くの他社カメラ(例、NIKONや
 CANONの一眼レフ)で使用する事は困難であったのだ。
(注:CANON DSコーティングレンズはSTF類似であるが
 ここには含めていない。又、それを含めたとしても、
 そのレンズはCANON RFマウント専用品である)

*T値、F値の独立調整構造であり、アポダイゼーション
 効果のコントローラビリティが高い。 

 ただし、この機構の光学的な効能は極めて微妙であり
 私はまだ、これの有効な使い道を用途開発できていない。

 恐らくは、両絞りは、その位置が異なり、T値絞りは、
 アポダイゼーション光学エレメントに入射する光束を
 制御し、これはボケ質の調整効果が大きいのであろう。
 対してF値絞りは通常レンズ同様の「開口絞り」として
 レンズ主点付近に位置し、露出値は勿論、被写界深度
 調整や収差低減(MTF向上)に役立つのだと思われる。

(注:一部の説明/レビュー等では、T値絞りが無段階、
 すなわち「デ・クリック機構」であるので、これを
 動画撮影用とし、通常のF値絞りは静止画撮影用と
 分類しているが、そういう単純な話ではなく、両者は
 光学的効能が異なる筈である)

 だが、仮にそういう原理だとしても、それを実際の
 撮影において、極めて微妙な操作や作画表現に結び
 つける事は、非常に高度なスキルを要求される。
 そう簡単では無いが、テクニカル的なマニアック度は
 かなり高いレンズであると言えると思う。

*4本のアポダイゼーションレンズの中では、定価が
 最も安価である。
 現在の実勢価格で新品10~11万円は、勿論高価では
 あるが、これでも、他のアポダイゼーションと
 比較すれば、新品の定価としては最も安価だ。
 まあでも、中古が殆ど出回っていないのが課題であり、
 最安値でSTF/APDを入手しやすいのは、旧MINOLTA版の
 STFかも知れない。(7万円前後からある)
(注:CANONの「DSコーティング」も、アポダイゼーション
 と原理的には類似している。これを含めればSTF/APD
 レンズは5機種となるが、CANON製は非常に高価なので
 未所有の状態だ)
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対して、弱点だが。

*描写力がスペシャルという程では無い。
 
 本LAOWA105/2の、個人レンズ評価データベース
 での「描写表現力」得点は、5点満点で4.5点だ。

 勿論このレベルであれば、数多ある交換レンズ中で
 トップクラス(上位1割には十分入る)ではあるが、
 アポダイゼーションというレンズでは、極度に描写
 表現力が高い事を期待される。MINOLTA/SONYの
 新旧STFは描写表現力評価が5点満点であるので、
 本レンズも、あと、もう一声だけ頑張って貰えれば
 否の打ち所が無い名玉となった事であろう。

まあでも、目につく弱点は殆ど無く、大変優れた
レンズである。さすがにベテランの設計者の作品だ。
私が、最初にLAOWA製のレンズを入手したのが本レンズ
であったので、その企画力(アイデア)や技術力は
とても好評価であり、他の中国レンズメーカーとは
一線を画す印象が強かった。

----
では、次のLAOWAシステム
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レンズは、LAOWA 17mm/f1.8 MFT (LAO0049)
(新品購入価格 19,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)

2019年発売のμ4/3機専用広角(準広角相当)単焦点
MFレンズ。
型番の「MFT」とはμ4/3(Micor Four Thirds)の意味だ。
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さて、「μ4/3規格」は2008年に発表、すぐさま
PANASONIC、そしてOLYMPUSからμ4/3機が発売され、
2010年前後では、新規の「ミラーレス機」の市場開拓
の牽引役として高い功績があった。

他社、特に「デジタル一眼レフ陣営」では、当初は
ミラーレスの市場に懐疑的であったのだが、2010年代
前半に、一眼レフよりもミラーレス機の販売台数の方が
上回る勢いを見せる市場状態になると、もう無視は
出来ない。

一眼レフ陣営も、それぞれ独自のミラーレス機を
開発して対抗しようとしたが、なかなかその戦略は
上手くいかない。まあ、それもその筈、優れた一眼
レフ製品が存在するカメラメーカーであれば、低価格
(→低付加価値、儲けが少ない)な、ミラーレス機は
あまり力を入れた魅力的な仕様の商品を展開できない。
(もし、安価な、それらが売れてユーザーが満足して
しまうと、本来儲けを出すべき高価格な一眼レフが
売れなくなってしまうからだ)

そこで2010年代前半から一眼レフ陣営が取った
戦略は、「フルサイズ化」を始め、ミラーレス機では
実現困難な様々な「超絶性能」を一眼レフに搭載し、
スペックの差でミラーレス機を圧倒しようとした。

2010年代後半には、その戦略が功を奏し、フルサイズ
一眼レフの人気が復活。ただし、その裏には、スマホ
等の普及によりカメラ市場が大きく縮退してしまって
いた為、販売数が少ないならば、高額な(利益の大きい)
カメラを売らないと事業が継続できなかった、という
理由もある。(人気はあるが、販売数は増えなかった)
その後、各社は、2010年代末にはミラーレス機もまた
フルサイズ化し、そこでも「高付加価値商品」の展開を
目指す事となる。

こうなると、μ4/3陣営は厳しい、すなわち、この
時代では「フルサイズ機は良いものだ」という理屈を
メーカーも流通も、市場全体が、そのように言い続けて、
そうユーザーに思い込ませる戦略を取ったからだ。

まあ、高価なフルサイズ機が売れてくれないと、
メーカーも問屋も販売店も潰れてしまうから、当然の
アピールであろう。だから、特にビギナーユーザーは
その市場戦略に乗せられて、何の疑問も無く、高価な
フルサイズ機を買うようになった。

だが、「フルサイズ機が良い」と洗脳されてしまった
ビギナーユーザー層は、今度は、μ4/3機を見ると、
「なんだ、フルサイズの4分の1の小さいセンサーでは
 ないか! こんなもの、良く写る筈が無い!」と、
酷い誤解による思い込みで、μ4/3機を敬遠するように
なってしまった。
今度は、μ4/3陣営が危ない。

ただまあ、こうした市場での競争(下手をすれば
敵対陣営の足のひっぱり合い)は、昔からいつの時代
でも繰り返し行われてきた歴史がある、それが市場
競争原理そのものであるからだ。


消費者として肝心な事は、そのように、市場では情報
の操作が日常茶飯事的に行われている、という事実を
良く認識した上で、ユーザー個々の正当な価値観を
持って購買行動を起こす、というただその1点だ。

私の場合には「コスパ至上主義」であり、その製品の
実際の価値と、販売(購入)価格を、いつも天秤にかけ
市場での評判や情報を一切無視し、その都度、適正と
思われる「コスパの良い製品」だけを購入しつづけている。

勿論、μ4/3機も、それはそれで使い道が存在している。
今回母艦としているOM-D E-M1は高性能なハイエンド機
ながら、μ4/3機の不人気で、2~3万円という格安
相場で入手できた機体である。小型軽量で望遠画角に
強い高性能機は、たとえフルサイズの1/4しかセンサー
面積が無くとも、その用途においては何ら障害にならない。

(注:OM-D E-M1は、性能が良いが相場が安すぎるので
2021年ごろからは、中古市場に殆ど流通していない。
これの中古品を店頭に並べてしまうと、他のμ4/3機が
割高に感じて、売れなくなってしまうのかも知れない。
余った機体はどうするのか?多分、海外市場行きだろう。
OM-D E-M1は、13ヶ国語メニュー対応機体だ)
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さて、μ4/3機(システム)は、その小型軽量を生かし
写真用カメラ以外の分野への進出を始めた。
具体例としては、宇宙ロケットのカメラ、ロボット搭載
カメラ、そして数が多いのはドローン用カメラである。

2010年代後半から一般化したドローンにおいては、
空撮のみならず様々な用途があり、当然ながらカメラを
搭載しているが、小型軽量で消費電力も低いカメラで
無いと搭載できない。また、撮影目的に応じて様々な
画角や仕様のレンズが無くてはならないし、そういう
ものを特注すると非常に高額となる為、一般的に
量販店等で売っているμ4/3機用レンズがそのまま使える
のであれば、レンズの入手性は全く問題が無い訳だ。

μ4/3機用の広角レンズであれば、センサーサイズが
小さい事が逆に利点となり、短い焦点距離では極めて
深い被写界深度を得る事ができる(パンフォーカス状態)
したがって、パンフォーカス設定のレンズをドローン上に
搭載しておけば、ピント合わせ(AFの機構、AFの操作)
が一切不要となり、ドローンの軽量化、消費電力低減、
地上等からのAF操作不要、等のメリットが大きい。

前置きが長くなったが、近年発売のLAOWA製レンズの
一部は、そうしたドローン搭載を意図した小型軽量
レンズである。何処で見分けるか?は簡単であり、
μ4/3マウント版でしか発売されていないものがそれだ。
(注:一部のLAOWA製ドローン用レンズは、μ4/3機用
以外のマウント版が後年に追加発売されたものもある)
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本LAOWA 17mm/f1.8 MFTも、その類である。
一般的な写真用レンズとしての利用時には、その
小型軽量が光り、これにLAOWAでは「C-Dreamer」
(Cはコンパクト=小型軽量の意味)という愛称を
与えている。

小型軽量(7群8枚、172g、フィルター径φ46mm)
(注:一部のサイトでの7群21枚という表記は誤りだ)
で安価(実売2万円程度)ながら、描写力は手を
抜いていない。
まあ、それもその筈、成長市場であるドローン用に
向けて、もし「安かろう、悪かろう」などという
酷いレンズを販売してしまったら、一瞬で「LAOWAの
レンズは写りが悪い」という悪評判が流れ、市場参入
が、おじゃんに(失敗に)なってしまう。
そんな愚行は、今や全世界、どのメーカーも犯す筈が
無く、手を抜いた製品などは一切作れないのだ。

いまだにシニア層などでは、安価な製品を見ると、
「安物、まがいもの、良い筈が無い」という思い込み
を持つのだが、それは確かに以前は、国内外の製品で
そういう時代はあっただろうが、もう半世紀程度も
昔の時代の話である。今時の情報社会、そして製造
技術が国際分業で発達した世情においては、どこの
国のどの製品でも、総合的に見れば品質の悪いものは
存在せず、個々の商品(製品)レベルで差異があると
すれば、それは品質では無く、企画設計思想の差異だ。

まあつまり、高く売りたい商品は、派手なスペックや
美辞麗句を並べ立てて高価に売ろうとするだろうし
安価な製品は、華美なスペックや付加価値を廃して、
開発・生産コストを下げて、低価格製品を求める市場や
消費者に向けて売っている、ただそれだけの事である。

だからこそ、「価格」と「パフォーマンス」(仕様や
性能)の比である「コスパ」が最も重要な時代となって
きている。高価であっても、その値段に見合う仕様や
性能が無ければ(例えば有名ブランド品等)それは
コスパ評価は最低点に近くなる。
では何故、そうしたブランド製品のビジネスが成り立つ
のか?は、「ブランドに付加価値を感じる」消費者層が
居るからだ、つまりユーザーニーズが異なる訳だ。

逆に言えば、現代ではそのようにユーザーニーズが
多様化しているが故に、個々のコンシュマー(消費者)
は、個々に自身の価値感覚、価値観に基づいて消費行動
を起こす必要がある。
何も考えずに消費行動をしていたら、それは市場に
踊らされている事に他ならない。

さて、本LAOWA 17/1.8 の話がちっと出来なかったが、
過去記事で紹介済みであるし、詳細は割愛しょう。

長所は勿論、小型軽量、ハイコスパである事だ。
短所は特に無い。上記のコンパクトさを武器にした
用法であれば、描写力等で重箱の隅をつつくように
して弱点を探すのは、全くの無意味であるからだ。

---
では、3本目のLAOWAレンズ。
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レンズは、LAOWA 100mm/f2.8 CA-Dreamer
(Ultra) Macro 2X (APO) (LAO0042)
(新品購入価格 58,000円)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)

2019年に発売された、中望遠MF2倍マクロレンズ。
上記型番はレンズ上に記載されているものであり、
括弧()内は直接的には書かれてはいないが、WEB等
の記述によっては「Ultra」Macro等の機種名になって
いる場合もある。
なお「CA-Dreamer」の「CA」の意味は不明、他の
LAOWAレンズ(C-Dreamer等)とは違い、何故か
ここは詳しい情報が無い。

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LAOWAには初期のレンズ製品群(2015年頃~)から、
特殊マクロ製品が多く、(フルサイズ換算)2倍の
最大撮影倍率を持つ機種を複数発売している他、
超広角マクロ(後述)や、プローブマクロ(先端が
とても長い昆虫観察等用の特殊2倍マクロ、未所有)
等も発売している。

さて、本レンズは、例によって、複数の一眼レフや
ミラーレス機用マウントでの販売である。ここも例に
よってNIKON Fマウント版を購入しているので、
今回のようにCANON製一眼レフとか、およそあらゆる
ミラーレス機へも(マウントアダプターで)装着可能
な為、利用する上での汎用性・利便性が高くなる。

例えばμ4/3機に装着すれば、基本性能のままで
(フルサイズ換算)最大撮影倍率4倍の「超マクロ」
(匠の写真用語辞典第3回記事参照)レンズとなるし、
さらに、μ4/3機の多くに備わる、デジタルテレコンや
デジタルズーム機能を併用すれば、最大撮影倍率は
実用範囲を遥かに上回る過剰な程のスペックを得る事は
可能である。(注:あくまで「仮想的」な撮影倍率だ)

実際に、本レンズの過去紹介記事では、μ4/3機に装着
して使用していたが、撮影倍率が過剰な程に大きく、
むしろ使いにくく感じた為、本記事では、大人しく
フルサイズ機(クロップ機能なし)で使っている次第だ。
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描写力に関しては、これもまた冒頭のLAOWA105/2と
同様に「悪くは無いが、もう一声」という感じである。

なにせ、100mm級中望遠マクロは超激戦区であり、
近代においては、他社からも超高描写力のレンズが
目白押しで販売されている。
具体的には、TAMRON SP90/2.8(系列)、SIGMA
105/2.8(系列)、TOKINA 100/2.8系列、さらに
フォクトレンダー110/2.5(や、旧125/2.5)等
である。これらの高性能レンズ群の個人レンズデータ
ベースでの「描写表現力」の評価点は、おおむね
4.5~5点(満点)に達し、いずれもトップクラスの
高描写力(マクロ)レンズである。

その中には、あるいは、より望遠の(150~180mm)
マクロでは、APO(アポクロマート)仕様を謳って
高画質(=優秀な色収差補正設計仕様)をアピール
している。元々優れた素養があるマクロレンズをさらに
APO銘でアピールしているレンズは、流石に超高描写力
であり、その殆どは「5点満点」の評価点である。

で、本レンズもAPO仕様であるのだから、5点満点と
なるだろう事を期待してしまうのだが、ここも何故か
冒頭のLAOWA105/2と同様に、若干だが最上級レベル
には届かない4点の評価点だ。
解像感はさほど悪く無いが、周辺減光およびボケ質の
破綻が若干発生するし、全般的に、フルサイズ機では
周辺収差が僅かに目立つ状態だ。

なんで、「もう一声」の設計が出来ないのであろうか?
まあそれはLAOWAの技術力や生産設備の不足では無い、
なにせ、20年間以上も日本(日系)メーカーで光学
設計を行っていた設計者だ、やりかたもノウハウも
十分に良くわかっている事であろう。

そして工場設備も最先端だ、本社には(他の中国系の
レンズメーカーには、恐らく殆ど無いであろう)
非球面レンズ掘削研磨機とかも導入していると聞く。

まあ多分、そうした非球面レンズ等を導入した設計と
するには、ほんの数年間だけ時期尚早なタイミングなの
だろう。上記の非球面レンズ製造マシーンは2018年頃
の導入だと思われるので、それが無い時代に設計された
レンズ(本レンズや、それ以前のレンズ)では、そうした
非球面等を用いた先端設計が出来ない。いや、設計自体は
出来るだろうが、中国の何処ででも作れないならば、
日本のメーカーに頼んで作らざるを得ない。それでは
価格が高価になりすぎてしまい、日本製高級レンズと
同等で、価格メリットが無くなってしまう。


まさか本レンズに15万円とかの値段がついていたら、
誰も買わない事であろう。(参考:CANON EF100/2.8L
Macro IS USMの定価が12万円で税別。
NIKON製Micro 105/2.8も同等の定価。コシナ製
MACRO APO-LANTHER 110/2.5の定価が約15万円税別)

(追記:2021年頃から、ついにLAOWA製のレンズでも
非球面レンズを搭載したものが発売されるようになったの
だが、やはり若干高価であり、今のところ未購入だ)

そして、他の中国製レンズでは、異常低分散ガラスを
採用したものはあるが、恐らく非球面使用は殆ど無い。
また、AFレンズはあるが、超音波モーターを搭載した
ものは存在しない(注:2020年時点)
つまり、非球面レンズ加工や超音波モーター技術は
日本独自のものとして、国際競争における参入障壁
と(日本が)しているのであろう。(しかし、もう
その戦略も通用し難くなっている。現代での工業用
小型STM(ステッピングモーター)は、ほぼ中国製だ。
STMを搭載した中国製レンズは、ポツポツと発売が
され始めている)

でもまあ、部品そのものは、日本から中国に供給して
いないかも知れないが、独自に中国がそれを開発する
事は可能であろう。事実、LAOWAにおいても、まだ
AF技術は無いものの、本レンズで初めてCANON EF用
マウント版製品では、電子接点からの自動絞り制御
機構に対応している。(注:EF版は未所有につき、
どこまでカメラ側の機能に対応できているか?は不明)

まあつまり、LAOWAあるいは中国製レンズの技術は
発展途上であり、しかも、日進月歩で恐ろしく進化して
いる状態だ。
_c0032138_07441426.jpg
そして、本ブログの記事は、シリーズ記事では、その
構成の便宜上、掲載時点よりも1~3年程度前の時点で
執筆している。(さもないとシステマチックなシリーズ
記事群を構成する事ができない。それをしないと一般的な
他のマニア層等のSNSのように、新たに買って来たレンズ
等を、都度、順不同に紹介するだけになってしまうからだ。
---
レンズを「研究」するならば、発売の時系列とか同一の
カテゴリーとかで分類して論理的に評価する必要がある。
また、記事を書き進めながら試写を繰り返す為、どうしても
最低限1~2年間は、レンズ性能について検証が必須だ。
1週間やそこら使っただけでは見えて来ない要素が多数ある)

だが、この時間スパンだと、中国製あるいはLAOWAの
レンズ等においては、記事掲載後に、どんどんと新技術が
開発されていってしまうのだ。それほどまでに、中国の
技術の進歩は速く、これはもう、記事掲載の都合等は、
ある意味、どうでも良い話となっている。

「昨日のLOWAと今日のLAOWAは、もう違う」という事だ。
(注:前述の「非球面レンズ搭載」の話もしかり)

----
では、次は今回ラストのLAOWAシステム
_c0032138_07441545.jpg
レンズは、LAOWA 15mm/f4 (LAO006)
(新品購入価格75,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2016年に発売された特殊MFレンズ。
シフト機能に加え、超広角ながら、等倍マクロ仕様
となっている。この特殊性から本ブログでは過去に
複数回紹介済みである。
(追記:2021年初頭に発売された、後継型の
「LAOWA 15mm/F4.5 Zero-D Shift」は、非球面
等の搭載で高画質化されたと思われるが、近接撮影
機能が失われてしまい、かつ高価になった為、未購入)
_c0032138_07441559.jpg
LAOWAの企業としてのスローガンは、
「New Idea,New Fun.」であると聞く。
新しいアイデアにより、新しい楽しみ方を提案すると
いう事なのであろう。

まあ、それは確かにLAOWAのレンズ群の商品企画に
強く反映されている。その多くは、他に類を見ない
特殊なスペックであり、本レンズの仕様も勿論、他に
同様な前例は無い。

創業者の方も、日系のメーカーで働いていたならば
恐らくは日本のメーカーにおける製品企画には疑問点を
感じていたのではなかろうか?
まあ、それはユーザーの立場でも、簡単に推察できる。

日本のメーカーは巨大すぎるのだ。その企業全体の様々な
運営経費や利益構造を維持する為には、高価で沢山売れる
レンズやカメラを作って販売しないとならない。
で、ライバル他社が何か、そういった製品を出せば、自社
でも同等の製品を出す必要がある。

製品企画に失敗すると、悪評判となりメーカーのブランド
イメージを低下させる他、膨大な研究開発費が全て赤字
となり、下手をすれば、企業での経営や事業継続にすら
危機感や破綻が出てきてしまう。

過去のカメラ界の歴史を見ても、一眼レフ、AE、AF、
デジタルへの転換期への各々で、多数のカメラメーカー
が事業撤退をしていて、現代では国内カメラメーカーは
数える程しか残っていないし、海外ではほぼ皆無だ。

個性的なカメラやレンズが発売できず、結局のところ
フルサイズ機と大三元レンズ(開放F2.8通しのズーム群)
のような、一般層ウケをする商品企画しかできなくなり、
勿論、それらは高く売れる(高く売りたい)商品だから
高額だ。

「ユニーク(個性的)でコスパの良い商品」を期待する
マニア層は、どんどん、それらの「優等生的」商品への
興味が持てなくなり、市場に残るコンシュマー(消費者)
は、全てビギナー層か、あるいは、実際に実務的に
そうした高性能機材を必要とする職業写真家層のみだ。

おまけに、高付加価値化が行き過ぎて、新鋭機材の
価格が、我慢の限度を超えるほどに高価になりすぎれば、
職業写真家層ですら、そうした新鋭機材を買わないように
なって行く。
何故ならば、写真を職業(商売)とする以上、高価な
設備(機材)投資で収支が赤字になる事は有り得ない。

だから、少し古い時代の機材でも撮影技能(スキル)が
あればある程、特に問題なく撮影業務が継続できてしまう
から、新鋭機の不要なまでの超絶性能(例えば、ISO感度
が何百万もある)には、拘りやニーズが無くなっていく。

かくして、2010年代後半頃からのカメラ市場の消費者
層は、見事なまでにビギナー層ばかりになってしまった。
何故ならば「フルサイズ、手ブレ補正、超音波モーター
高速連写、超高感度、4K動画」などが、本当に自分の
用途において必要かどうか?(いや、不要である)は、
中上級層やマニア層であれば、誰もが皆、わかっている。


だから「不要なまでの機能や性能にお金は出せない」
と感じるから、それらの性能が本当に実務上で必要な
ケースの他は、それらを買う事は、まずない。

結局「スペックに憧れるだけのビギナー層」あるいは
「手ブレ補正や超音波モーターが入っていないと、
 上手に撮れる自信が持てないビギナー層」だけが、
新規機材の主力の購買層になってしまった訳だ。

で、現代においては製品企画は、市場調査を主体に
行われている、つまり「マーケット・イン」型の
製品企画である。
インターネットおよびSNSの発展により、情報発信者は
専門的素養がない誰にでも行う事ができる世情である。
しかし、カメラ機材のユーザー層が前述のようにビギナー
層ばかりになってしまっている為、ごく一部の、生き残り
マニア層以外による機材評価内容は、恐ろしくレベルが
低いものとなってしまった。

いわく「このレンズはF1.8だから低性能だ、できれば
F1.4にして欲しい」とか、「これまでの連写性能が
秒8コマだったから、次は秒10コマにして欲しい」とか
そんな、子供のような無いものねだりの評価情報ばかり
が蔓延する状況だ。まあ、ネットやスマホの普及により
情報提供者も低年齢化していて、下手をすれば学生等が
そんな評価をしているに過ぎないかも知れず、
マニア層や上級層、職業写真家層は、自らのノウハウ等
を無償で公開する意味も意義も殆どない為、ますます
ネット上の評価は、レベルが低くなり続けてしまう。

で、そうした情報を収集して製品企画に反映するメーカー
側の方でも、そんな情報しか世の中に存在しなければ、
もう、それをそのまま、まとめるしか無いではないか。
こうして「お客様からの要望が高かったので、この新型
カメラでは連写性能を強化し、秒8コマを実現しました」
などの、面白味の無い企画製品が出てきてしまう。

何が面白味が無いか? と言えば、高速連写が必要な
ユーザーであれば、もうすでに秒10コマ以上出る
高性能機を所有している筈だ。だから中級機等では、
サブ機として、軽量であったりハンドリング性能が高い
事を要求する訳だから、なにもそうした軽量機に無理に
高速連写機能を搭載して、重量増などを招く必要性が
全く感じられない訳だ。

レンズもまたしかり、内蔵手ブレ補正機能の補正段数を
競ったり、超音波モーター等の合焦速度を競ったりして
いるが、中上級者以上であれば、手ブレやピント合わせは
利用者のスキルに大半が依存する事は、経験上良く知って
いる訳であり、機材側の性能に頼りきる事は有り得ない。

まあ、元々耐手ブレの技量が高い上級者が、高性能手ブレ
補正機能を使えば、「鬼に金棒」状態となるから、そういう
点で新技術を求めるケースもあるが、それは少数派であり
大多数のビギナーは「手ブレ補正が無いと、シャッター速度
やらの意味は良くわからないから、手ブレする事が怖い」
となって、そうした機材の性能だけに頼ってしまう状態だ。
_c0032138_07441521.jpg
で、こんな状況であるから、国産新鋭機材の仕様は
どんどんと魅力が薄まっていく。この状況は、むしろ
国内に居るよりも、海外から見て顕著であろうから、
2010年代後半から、そのように「空洞化してしまった」
国内レンズ市場に向けて、非常に多数の海外(中国等)
のレンズメーカーが参入してきた訳だ。

LAOWAは、その急先鋒だ。日本市場を長年見てきた
企業エンジニアが、日本の現在のレンズ市場に対して
ユーザー・消費者層が魅力を感じていない事実を良く
分析している。
だから、LAOWA製のレンズの企画は、日本製レンズでは
不満なところ、物足り無いところ、それらに向けての
仕様を重点的に突いてくるわけだから、ビギナー層以外
のユーザー(中上級層、マニア層)あたりに対しては、
物凄いインパクトと訴求力がある。

そして、本レンズLAOWA 15/4 も勿論同様である。
かつて無い超広角等倍マクロ、そしてシフト機能、
これに対して好奇心を持たないマニア層など、居るの
だろうか? でも、その割にはあまり売れているという
話を(少なくとも日本では)聞かない、もしかすると
もう日本のマニア層の多くも、この2010年代のカメラ
市場縮退期において、平凡な製品企画に魅力を感じず、
マニアとしての活動を辞めてしまっているのかも知れない。

まあ、そうだとしたら、LAOWA製品には、マニア道の
スピリッツ(精神)が感じられるので、もう1度、
LAOWA製品からマニアに復帰するのも悪く無い選択かも
知れない。それは確かな事実だとは思うのだが・・・
欲を言えば、LAOWA製品は、もうほんの少しだけ安価
であるか、あるいは、もっと製品が売れて中古市場に
多くの玉数があると嬉しい、いずれも新品で買って
いたのでは、若干だがコスパが悪く感じるのだ・・
_c0032138_07441926.jpg
あるいは、前述してきたように、もうほんの少しだけ
描写性能が向上し、どのレンズも「5点満点」評価と
なるならば、今の価格帯でも、満足が行くコスパ点と
なるだろう。こちらは、LAOWAの技術の革新次第だと
思うので、今後もビジネスを発展させて、日本製品を
上回る程の完璧な描写性能のレンズを作って貰いたい
と思う。そういうレンズ群が、この価格帯で出来てくる
のであれば(追記:2021年ごろから、超高描写力と
思われるレンズがLAOWAよりいくつか発売されつつあるが、
生憎、製造原価や設備投資の償却費が上がり、高価だ)
・・そうなれば、日本企業も、うかうかしていられない、
より高性能なレンズを、より低価格で発売せざるを
得なくなるという「企業努力」を要求されるようになる。

現状の日本企業のように「売れないから値上げする」
では、あまりに安直、かつユーザーフレンドリーとは
言えない市場戦略だ。(下手をすれば超絶スペックを
提示して騙して売っているという悪印象がある。例えば
超高感度などは、実用上、使い物にならない仕様だ)

で、そうなってくれば、中上級層やマニア層等も、
現状と比べて、国産品への興味が復活し、しいては
それが縮退したカメラ・レンズ市場の復活にも繋がる
シナリオになるのではなかろうか・・・?

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では、今回の「LAOWA マニアックス編」は、
このあたり迄で、次回記事に続く。


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