本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に紹介している。
今回は「TOKINA ヒストリー編」という主旨で、
TOKINA(トキナー、現:KenkoTokina)社製のレンズで、
およそ1970年代頃から、2010年代前半頃迄の、主に
一眼レフ用(一部はミラーレス機用)の交換レンズを
10本紹介しよう。
なお、銀塩時代のTOKINA製レンズに関しては、現存する
情報が極めて少なく、発売年等は推測が多くなる。
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ではまず、最初のシステム
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レンズは、RMC TOKINA χ 80-200mm/f4
(中古購入価格 1,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
出自不明、発売年不明のMF望遠ズーム。
「RMC」とは、多層コーテイングの事だと思われる。
(レインボー・マルチ・コーティング?との説あり)
要は、PENTAXの多層コーティングSMC技術登場(1970
年代前半)のインパクトがとても大きく、各社、こぞって
多層コーテイング技術を開発し(又は、他社から技術を
導入し)それが市場に出てきた、1970年代後半頃の
製品だと推察される。
なお、型番「χ」は、エックスでは無く、ギリシャ文字の
「カイ」であろう。
SIGMA社でも、同時代のレンズでギリシャ文字型番とする
ケースがあったが、この時代ならではの感覚だろうか?
だが、ミノルタが1985年に「α」を使って以降は、
多社でのギリシャ文字型番は、殆ど見られなくなった。
α(カメラ)が社会現象的に大ヒットし、αはギリシャ
文字の最初だから、後からβ(ベータ)やγ(ガンマ)を
出しても二番煎じのように思われてしまうのかも知れない。
例外的には、1990年代、オリンパスの「μ」(ミュー)
シリーズコンパクト機があり、こちらはヒットシリーズと
なった。
![_c0032138_06543539.jpg]()
TOKINA社は、この時代よりもっと昔、1950年頃から存在
していたレンズメーカーであるが、2011年にKENKOと
合併し、現在では「ケンコー・トキナー」社となっている。
現在、自社製レンズを「TOKINA」ブランドで販売する他、
米LENSBABY社や韓国SAMYANG(サムヤン)社レンズ製品等
の輸入販売代理店を務める事も行っている。
また、銀塩時代には、良く他社レンズのOEM供給も行って
いた模様であり、公開されている範囲では、米VIVITAR社
のレンズの多くがTOKINA製である(但し、VIVITAR製品
は、日本の多数のメーカーがOEM生産に協力している)
国内製品では、あまりTOKINA製だとは公開はされていない
が、多社製品と全く同一のスペックのレンズも色々とあり、
OEM生産であると推察される。
また、銀塩時代にはCOSINA製品と同一スペックのレンズ
も多い、これは両社レンズメーカーなので、適宜協業して
レンズ開発を進めたのであろう。
つまり、昔からレンズは全てが単一メーカー内で設計製造
される訳では無く、多数のレンズメーカーが協業して
設計や製造を行っていた、という事実が良くわかる。
すなわち、「どこのメーカーのレンズが良く写るのだ?」
というビギナー層の質問は意味を持たず、実際にレンズを
作っているメーカーは様々なので、過剰な「ブランド信奉」
は禁物である。
さて、本レンズであるが、開放F値固定型の、使い易い
レンズである、この時代のTOKINAの、このクラスの望遠
ズームは極めて数が多く、いったいどれくらいの種類が
あるのか?は把握できない。これは中古買いの場合でも
結構課題となり、ジャンク等でTOKINA製望遠ズームを
見かけた際、「あれ? これは持っていたか?それとも?」
と、しばらく悩んでしまう事すら多々ある。
まだ、ぎりぎり記憶してはいられるが、レンズ所有本数が
数百本ともなると、もうそろそろ記憶量の限界に近い状況
であり、今後は、「所有レンズリスト」(データ)などを
持ち歩いて中古買いをせざるを得なくなるかも知れない。
本レンズに関しては、描写力はこの時代の望遠ズームの
中では、可も無く不可も無し。まあ、とは言うものの
時代(技術)の未成熟もあるオールドズームであるから、
多数の弱点は持っている。古いレンズ故に、現代において
それをネチネチと記載するのもフェアでは無いし無意味だ。
現代において必要とされるレンズでは無いが、TOKINA製
レンズの変遷の歴史を知る為の研究材料という感じだ。
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では、2本目のシステム
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レンズは、TOKINA SZ-X630 60-300mm/f4-5.6
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
発売年不明、1980年前後と思われるMF望遠ズーム。
恐らくだが、当時としては300mm級でズーム比5の望遠
ズームは珍しく(100-300mm,70-300mm等が一般的)
他社では、TAMRON SP60-300/3.8-5.4(Model 23A)
(1983年、ミラーレス・マニアック第58回参照)が
ライバルレンズという関係であろう。
TAMRON 23Aの方が、開放F値が僅かに明るいが、
本TOKINA版の方が、最短撮影距離が短い。
(TAMRON 1.9m、TOKINA 1.5m)
なお、TAMRON版の方が重量は重い。
(TAMRON 926g、TOKINA 約600g)
TAMRON版は、現代においては高画質を表す「SP」銘が
ついているが、SP初登場の1979年から1980年代初頭
にかけての「SP」は、私の研究においては、高画質を
示すものではなく、「他にあまり類を見ない特殊な仕様」
つまり「スペシャルな仕様=SP」であり、高画質である
保証は無い。本ブログでもこの時代のTAMRON SPレンズ
を数本紹介しているが、現代の感覚で「SP」の名称に
高画質を期待してしまうと、がっかりするものが多い。
そして、本TOKINA 60-300についても、TAMRON SP版
より、むしろ描写力上の優位点を多く感じる。
銀塩時代、先にTAMRON版を購入してあり、「SPと言えど
たいした事が無いなあ、この時代故の技術的未成熟か?」
と思っていたのだが・・ 後年に本TOKINA版を購入し、
「なんだ、この時代でも、高倍率望遠ズームをちゃんと
作れるではないか、結局、”名前”とかは意味が無く、
レンズ個々の設計の良否次第なのだなあ・・」と
認識を強くした次第である。
(注:TAMRONでSP銘が実際に高画質を現す称号として
使われ始めるのは、概ね1990年代後半以降である)
![_c0032138_06543593.jpg]()
本TOKINA 60-300であるが、この時代においては優秀な
描写力と操作性を持つ望遠ズームである。
ただし、本レンズだけが優秀な訳ではなく、1980年前後
には、他にも稀に優れた望遠ズームは存在する。それは
メーカーとか価格や仕様からは読み取れず、あくまで
個々の望遠ズームの設計次第だ。それがわかったのは、
近年に銀塩時代の望遠ズームをジャンク等で数十本購入し、
それらを色々と比較研究した事からの結論である。
そして、優れた(望遠ズーム)レンズとは言え、さすがに
この時代なので、まだ技術的な未成熟による欠点は個々に
存在する。その弱点を認識し、上手く回避して使うのは
なかなか困難な事だ。
(例:望遠端に近づくと解像力が低下する望遠ズームが
多く、その場合は、ズームを望遠いっぱいまでは使わず
適切な範囲までで留めて用いる、等)
そういったスキルアップの為の研究・練習用途に用いる
ならば、この時代の望遠レンズは悪く無い。
なお、本レンズに関しては、現代なお、ジャンクコーナー
等で稀に見かける事がある、殆どの場合、1000円程度
と安価であるので、見つけたら購入してみるのも十分に
有りだと思う。
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では、3本目のシステム
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レンズは、TOKINA AT-X240 24-40mm/f2.8
(中古購入価格 17,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機)
発売年不明、1980年代中頃と思われる、開放F値
固定型MF広角ズーム。
ズーム比(望遠端焦点距離÷広角端焦点距離)が、
2以下と、とても小さいが、開放F2.8固定が光り、
この為、AT-Xの型番が付いているのであろう。
「AT-X」とは「ADVANCED TECHNOLOGY-X」の略で
あるが、まあ、他社でも色々ある「高付加価値型型番」
であり、高性能を表す称号ではある。
ただし、TOKINA AT-Xに限らず、多社の高画質称号でも、
個人的には、「高画質かどうかを評価するのは、あくまで
ユーザー側次第、メーカーから”高画質だ”と言われて
その結果として価格が高価になっている場合、必ずしも
それは歓迎する事態では無い。そういう名称は、押し付け
がましく、好まない」という考え方である。
その根拠としては、各社レンズにおいて、AT-XやらSP
やらArtやら、L、G、PRO・・等の高画質称号が付かない
レンズでも、高画質版に勝るとも劣らない高描写力
レンズを多数所有しているからだ。勝るとも劣らない
どころか、明らかに「無印」の方が優れるケースすら
あり、そうなると、高画質称号版を買った事が、完全に
お金の無駄遣い(=コスパの著しい悪化)だ、と感じて
しまい、精神衛生上、極めて良く無い状況になるからだ。
![_c0032138_06544626.jpg]()
さて、本AT-X240も、同様な状況かも知れない。
高画質称号の根拠は全く感じられず、かつ購入時の
価格も若干高価であり、極めてコスパの悪いレンズ
である。本ブログでの登場も、およそ6年ぶりとなり、
つまり、利用価値も殆ど無く、使用頻度も極めて低い。
それでも処分せずに本レンズを残しているのは、
例えば本記事のように、TOKINAレンズの変遷を調べよう
とする際、研究用資料として役に立つ場合もあるからだ。
勿論、現代において、本レンズを指名買いする必要は
無く、また、中古で見かける事もまず無いと思われる。
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では、4本目のシステム
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レンズは、TOKINA AT-X M90 (MACRO) 90mm/f2.5
(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
発売年不明(1980年前後頃?)の、MF中望遠1/2倍マクロ。
正式名称も、情報が無くて不明。
このレンズ、故障品としての購入となった。とは言え
故障がわかっていての購入ではなく、目利きにおいて
珍しく「見落とし」をしてしまったのだ(汗)
ピントリングが無限遠まで完全に回らず、数mm程度
手前で何故か停止してしまう、この結果、5m以上の
距離の被写体が撮影不能だ。
「このレンズのジャンクとしては安価だ」と思っての
購入だった。「値付け間違いか?」とも考えて、さっさと
購入して、逃げるようにして帰ってきたのであったが、
故障品ならば、この価格は逆に、やや高価だ。
![_c0032138_06544717.jpg]()
でも、試写して結構驚いた、なかなか良く写るのだ。
この描写力性能があれば、マクロ(近接撮影)専用
レンズとしても、むしろ2000円は安価であり、
コスパ点が高く評価される。
この故障は原因不明であり、無理をして直す、(つまり
もうメーカー修理非対応だから、高額な民間修理専門店
に預けるとか、成功率が低い自力修理を試みる)等は
やめておき、もうこのまま使う事としよう。
現実的な対応としては、このレンズは描写力が高い事が
保証されている為、今後仮に、どこかで本レンズの中古を
見かけたら、追加購入すれば良い、という事となる。
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では、5本目のシステム
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レンズは、TOKINA AF210 70-210mm/f4-5.6
(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)
本レンズは異マウントで2本所有している。NIKON(F)版
とCANON EF版だが、今回は、EOS機で用いてみよう。
何故2本所有しているのか?は、いずれも極めて安価で
あったからで、主に練習・研究用途である。
出自不明、恐らくは1980年代後半頃の発売と思われる、
AF望遠ズームである。
ジャンク品ながら、大きな瑕疵は無く、いずれもちゃんと
動作している、まあ要は「古くて人気が無い、売れない」
というだけの理由で安価となっているレンズだ。
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描写力は褒められたものでは無い。まあ時代的に
ズーム設計技術は未発達であったのは確かであるが、
この時代よりも前であっても前述のTOKINA60-300mm
のように高い描写力を持つ望遠ズームも存在している。
結局、個々のレンズ毎に設計の優劣による性能差は出て
くるのであろう。また、それは単に設計者の技能の差と
言うよりも、レンズの販売戦略上のコンセプトも強く
影響していると思われる。
この時代1980年代後半においては、各社の一眼レフは
AFへの転換期にあった。
で、ユーザーの立場で考えてみよう、「流行の新鋭の
AF一眼レフが欲しい」というニーズは強いが、そこで
消費者層はAFカメラ本体を買う事しか考えていない、
「αが先行しているので安心か? それとも新鋭EOSか?
はたまたNIKONは老舗メーカーなので、それが良いのか?」
まあ、そんな感じであろう、いつの時代でもビギナー層等
の視点は、極めて表面的かつ感覚的な要素でしか物事を
見られない。
まあ、どれかを買ったとしよう、でもAFレンズが無い。
中には、NIKON等のAF一眼レフでは、MF時代のレンズを
そのまま使用できるケースもあったが、そうだとしても、
「せっかくAFカメラが欲しくて買ったのに、いまさら
MFレンズなんか使えんよ、時代遅れで格好悪い!」と
思ってしまう事であろう。
その時代は、まさにその感覚だ。このあたりから世の中は
空前の「バブル景気」に突入し、「新しいモノ」「凄い物」
が珍重され、「古いもの」「安いもの」は、誰からも見捨て
られていたのだ。
そんな時代ではあるが、「AFレンズが無い」というのは
ユーザーにとって深刻な問題だ。本来、カメラ購入時に
十分なレンズ購入予算を準備しておくのはセオリーでは
あるが(匠の写真用語辞典第16回「1対4の法則」参照)
残念ながらそうした概念は、ユーザー層全般には無い。
そこで、慌てて「安いAFレンズ」を探す事となる。
CANONでは、この状況に対応する為、史上初のエントリー
レンズ、EF50mm/f1.8Ⅱ(1990年)を発売するが、
それはヒットしたものの、単焦点標準レンズである。
なので「AFズームレンズは無いか~?」「安いAFレンズ
は他に無いか~?」と、まるで”なまはげ”のように、
多くのユーザー層は、さまよっていた事であろう、
よって、レンズ・サードパーティーは、このニーズに
応える為、安価なAFズームレンズを沢山発売する、
本レンズも、恐らくはそうした中の1本である。
ここでは、ともかく安価で、そこそこの性能のものを
発売すればよい。ビジネスモデルは「売り切り型」で
良く、後に自社高額製品の購入に誘導する「囲い込み型」
では無い。(まあ、現代の中国製廉価版レンズと同じだ)
よって、開発(設計)に求める企画コンセプトも、
「ともかくローコストで作れ」という事になるだろう。
安価であれば、それだけ売れて、他社を圧倒し、事業が
有利となる。写りの良し悪し等は余り関係ない、どうせ
多くのユーザー層は、その辺りの絶対評価感覚を持たない。
・・まあ、であれば設計者(開発者)にとっては不幸な
話であろう。たとえどんなに設計能力(技能・技術)に
優れたエンジニアであっても、高性能で贅沢なレンズ設計
をする事が許されない訳だからだ。
ここまでは、あくまで想像の話だが、当たらずとも遠からじ、
さほど間違った状況分析では無いと思う。
だとすると、現代において、このレンズを評価するに当たり
「写りが悪い、ダメレンズだ」という評価は的外れだ。
正しい評価手法は、「当時の設計者は、いかなる手法で
レンズのコストダウンを実現したのか?」という視点と
なる。それはレンズの弱点を見ていけばわかる、そうした
弱点は、設計側としては当然、性能解析作業中に把握して
いる訳であり、泣く泣くそれを犠牲にしても、他のメリット
(コスト等)を優先した、という「トレードオフ」なのだ。
その弱点等の詳細は長くなるので本記事では割愛する、
興味があれば本レンズ紹介記事「レンズ・マニアックス第3回」
「レンズ・マニアックス第41回」を参照していただきたいが
ここで注意するのは「本レンズの性能がどうのこうの」という
話では無く、「設計上、何を優先し、何を犠牲にするのか?」
という点を理解できるようになるのが望ましい、という事だ。
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では、6本目のシステム
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レンズは、TOKINA AT-X AF 17mm/f3.5
(中古購入価格 17,000円)
カメラは、SONY α65(APS-C機)
例によってTOKINAレンズの詳しい情報は殆ど残っておらず
出自は、推測を多く交える事となる。
本レンズは、1990年代頃に発売された、フルサイズ対応
AF単焦点超広角レンズである。
ミノルタの銀塩αシステム(1985年~2000年代初頭)に
20mm未満の単焦点超広角レンズが存在していなかった
事から、本レンズは銀塩時代には、α用超広角として
重宝して使っていた。
あまりスペシャルな描写力は持たないが、超広角の用途
もあまり無く、常用するというレンズでも無い訳なので
まあ、本レンズで十分だ、という考えもあった。
![_c0032138_06545914.jpg]()
この銀塩AF時代、各社において単焦点AF超広角レンズは
存在しないか、又は、あったとしても非常に高額である。
何故ならば、本数が売れるレンズでは無いので、開発や
製造に係わる多大な費用を、少ない販売本数で負担する
からである。(=大量生産ができない)
その弱点に目をつけたのは、レンズ・サードパーティー
(レンズ専業メーカー)であり、この時代、TOKINAの
他にもSIGMAやTAMRONからも14mm級の超広角単焦点が
発売されていた。(正確には、MF時代ではSIGMAは14mm、
TAMRONは17mm。AF時代では両社14mmを発売している)
これらのレンズは各AFマウント(注:TAMRON 17mmは
アダプトール2による、各MFマウント交換式)で
発売されていたので、メーカー純正品よりも確実に
多く売れ、結果的に、量産効果で価格を下げれる事から
さらに売れる数が増える仕組みだ。(まあ、とは言っても
大ヒットする類のレンズでは無いので、そこそこ高価だ)
銀塩時代では、こうしたレンズ専業メーカーのレンズが
メーカー純正品よりも安価であった事から、初級中級層に
おいては、「レンズメーカー製は安物だ、メーカー純正の
レンズ方が高価なので性能が優れているに決まっている」
という「思い込み」(決め付け)が広まってしまっていた。
だが、その理由は上記の通りで、単純な生産上の仕組みで
ある。同じ性能のレンズを作っても、レンズ専業メーカー
の方が安価に売る事が出来る訳だ。
そして、安価で無いと、メーカー純正に太刀打ちできない。
この時代であれば、多くのユーザーが「メーカー純正品は
優れている」と勘違いをしていたので、純正品より高価な
サードパーティ製レンズなど、売れる訳が無かったのだ。
その常識がひっくり返るのは、デジタル時代に入って
からである。レンズサードパーティーは、ブランド力等の
高付加価値化戦略を行った。その具体例としては、
COSINAの「フォクトレンダー」や「カール・ツァイス」、
SIGMAの「ART LINE」、TAMRONの「SP」、そしてTOKINA
の「FiRIN」や「OPERA」等があり、これら高付加価値レンズ
は、メーカー純正の同等仕様のレンズよりも、はるかに
高価なケースすらある。
それらの高付加価値レンズは、さほど多く所有している
訳でも無いし、TOKINA製の「OPERA」等も、まだ所有に
至っていないので、本記事では、TOKINAの歴史を追うと
言っても、残念ながらその新鋭レンズの紹介は出来ない。
何故買わないのか? は、当然高価であるからだ。
たしかに、それら高付加価値型レンズは高性能である。
本ブログでも、十数本のそれら新鋭のサードパーティ製
高付加価値型レンズを購入後に紹介しているが、どれも
描写・表現力の評価は非常に高得点だ。けど、コスパの
評価は、どれも振るわない、つまり、「性能に比べ、
値段が高価すぎる」という判断となっている。
(なお、これらの高付加価値レンズ群は、実際にユーザー
が購入して評価した情報はとても少ない。レビュー記事等
の多くは市場関係者が販売促進の為に書いた、「褒める」
だけの内容である。それらの偏った情報を単純に信じては
ならないのは勿論であろう。何故一般レビューが少ないのか
は明白であり、高価すぎて誰も欲しいとは思わないからだ。
もし無理をして買ったとしても、「高価だから良い性能だ」
と思い込んでしまい、冷静に評価ができるケースは皆無だ)
で、TOKINA新鋭製品も、そうした理由で、まだ購入に至って
いない状況だ、ただし年月が経過して、中古相場が安価に
なってくるのであれば、コスパの「見込み点」が高く
なるので、購入検討の余地はあると考えている。
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では、7本目のシステム
![_c0032138_06550812.jpg]()
レンズは、TOKINA AF 100mm/f3.5 MACRO
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
発売年不明、恐らくは1990年代と思われる、小型軽量
AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
正式名称も例によって不明、本記事での各TOKINAレンズ
の型番はレンズ上に記されている物を順次記載しており、
バラバラの位置に書かれているので、その順序は不明だ。
恐らくはCOSINAの同スペック(MF/AFあり)製品と同じ
光学系だと推測される、描写傾向がそっくりだからだ。
COSINAによるOEMというより、この時代(1980年代~
1990年代)TOKINAとCOSINA製品は、協業して設計や
製造を共通化する事も良くあったと思われる。また、
これらはOEMメーカーであるので、他社製品の中にも、
TOKINA/COSINA製と思われる、同一仕様のレンズも
良くあった。
![_c0032138_06550841.jpg]()
なお、前述のように、この時代の多くのユーザー層は、
「メーカー純正品が(レンズメーカー製より)高性能で
ある、だから高価なのだ」という、間違った論理を
思い込んでいた。だから、「メーカー純正品の一部は
レンズメーカーで作っている」という事実は、隠して
おかないと、市場倫理が崩壊して、皆が困った事となる。
だから、こういう情報(どのレンズが、どこ製)という
ものは、一切出回っていない。では、どうやってその
事実を知るか?という点だが、例えば、当時の関係者や
工場見学者等からの証言、海外に残っている記録や情報、
あるいは、それらのレンズを入手し、ユーザー側での
徹底的な検証、などにより、だいたいレンズの出自は
推測できる。
けど、秘密をあばくような、そんな事をしても基本的には
無意味だ。実際のところ、メーカー間での性能や品質の
差異は存在しない、あるのは「レンズ販売上のコンセプトと
それを満たすための設計・製造上の差異」だけである。
少し前述したが、安いレンズを売る必要があれば、そういう
設計をする、高価なレンズを売りたいならば、それに見合った
設計をする。そこはカメラメーカーでもレンズメーカーでも
同じであり、最終的には、「このブランドで、この性能や
仕様のレンズであれば、ユーザーは、いくらなら買うか?」
という視点でレンズの企画開発は進む。
これはレンズ以外でも、カメラであっても、あるいは世の中の
他の分野の製品・商品であっても、全て同じ理屈である。
それが現代の工業製品の産業(市場)構造であるからだ。
ここがわかっていないと、単に有名だから、流行っているから、
誰かが良いと言ったから、などの根拠の無い理由で購買行動に
走ってしまう。これはユーザーにとって非常に損をしている
事となり、本ブログでは、この状態を「ユーザーの負け」と
称している。
で、「ユーザーの負け」であっても、その事に気づかない
ユーザーが大多数だ。別に気にしていないのかも知れないし
流行の商品を入手した事で満足したり、周囲に自慢したり
する様相も、かなり大きい事であろう。
だから、別にそれを否定するつもりは無い、それで世の中
(経済)は上手く廻るからだ。
でも、「ユーザーの負け」状態に気づき、それを好ましくは
思わないユーザーも多いであろう。そんな場合はどうする
べきか? と言えば、ユーザーにおいては「絶対的価値感覚」
を身につける必要がある。それは簡単な事では無いが、経験や
研究、修練を繰り返していけば、だんだんとそれがわかって
くる。それはすなわち「マニア道」ではあるが、時間も費用も
手間隙もかかる事なので、誰にでも薦められるものでは無い。
結局、世の中的には「ユーザーの負け」状態に気づかない、
またはそれを容認するユーザーが多い方が良いのであろう、
それで世の中は上手く廻るし、誰も損はしない。
まあでも、そうは思わないユーザー(マニア)も居るとは
思うし、結局、私も、あるいは本ブログの読者層もまた、
そういう志向性が強い状態だと思う。
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では、8本目のシステム
![_c0032138_06550849.jpg]()
レンズは、TOKINA AT-X 840 80-400mm/f4.5-5.6(Ⅱ)
(中古購入価格 19,000円)
カメラは、CANON EOS 7D (APS-C機)
詳細不明、このレンズの系譜は、1990年代より
2000年代にかけ、初期型、Ⅱ型(AFⅡ型)、D型と
進化している模様だが、いずれも光学系は同一だ。
(注:D型では、コーティングの差異があるかも知れない)
本レンズは(固定)の三脚座が付いているので、Ⅱ型だと
思われる。(初期型ではそれは無かった模様だ)
初期型では400mmレンズとしては稀な1kgを切る軽量かつ
小型なレンズであり、そこそこインパクトがあったと聞く。
ライバルにTAMRON 75D型(200-400/5.6、1994年、
過去記事で多数紹介)があり、これの登場に触発されて
本レンズ(の初期型)が発売されたのだ、という話も
聞いた事がある。
本レンズ(Ⅱ型)の重量は1kg強であるが、これは依然、
400mm級望遠ズームとしては軽量の類。これを下回る
物は、記憶を辿れば、MINOLTA版APO100-400mm
(未所有)位しか無かったかも知れない。
![_c0032138_06550845.jpg]()
描写力はイマイチ。フレアっぽく、望遠端で解像感が低く
絞ってもあまり改善されない事から、すなわち超望遠ズーム
でありながら、超望遠域が実用レベル(性能)では無い。
この結果、私の場合は、屋外スポーツイベント撮影に
おいては、本レンズでは無く、もっぱらTAMRON 75D型を
愛用する事となり、それは銀塩時代を過ぎてデジタル時代
の2010年代前半に至る迄、ずっとそんな調子であった。
何故ならば、2000年代~2010年代にかけ、優秀な
400mmズームが1本も登場しなかったからである
(注:メーカー純正品は存在したが、高価すぎてコスパが
悪いのみならず、重量級でハンドリング性能が悪かった為、
屋外で実用目的で酷使するには向かない)
2017年になって、ようやくSIGMAとTAMRONから極めて
優秀な100-400mmズームが発売され、(本シリーズ
第6回「超望遠ズーム」編参照)、その後はようやく
こうした旧世代400mmズームと代替できる状況になった。
なお、言うまでも無いが、本ブログにおいては、
こうした重量級(超)望遠ズームであっても、100%手持ち
撮影である。三脚を利用した場合の用法・用途、あるいは
評価は、一切行っていないので念の為。
本レンズの総括だが、今や「古すぎて用途無し」である、
軽量な利点はあるが、2017年からのSIGMA/TAMRON製品
も、本レンスより僅かに重い程度の軽量級であるから、
現代では実用上において、それら新鋭超望遠ズームを
用いた方が断然有利である。
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さて、9本目のシステム
![_c0032138_06551583.jpg]()
レンズは、TOKINA AT-X124 PRO DX (12-24mm/f4)
(中古購入価格 15,000円)(以下、AT-X124)
カメラは、NIKON D70 (APS-C機)
2004年発売、TOKINA初のAPS-C機専用のレンズであり、
開放F値固定型の超広角ズームである。
後年に改良されⅡ型となり、コーティング性能等が
向上した他、NIKONマウント版ではレンズ内モーター
搭載となって、近代のNIKON初級一眼レフでもAFが
動作するが、本初期型はモーター無しだ。
今回、古いNIKON D70(2004年発売)を用いているのは、
AFが動作する理由もあるが、当時での雰囲気や性能を
体感(検証)する目的がある。
まあ、現代機を使う場合でもNIKON高級機で使えばAFは
動作するので問題無いし、ミラーレス機に装着して
MFで使っても何ら問題は無い。(注:絞り環は存在する)
大型のレンズであり、逆光耐性が怪しい為、フードの
装着も必須となる。結果、カメラバッグには入り難く、
ハンドリング性能がやや悪い。
![_c0032138_06551539.jpg]()
発売時には高解像力(解像感)が高く評価されたレンズ
であるが、現代の視点においては、まあ、それについては
依然、その傾向はあるが、現代機の高画素/ローパスレス
機等で使うには、やや物足りなさを感じるであろう。
そういう点でも、今回は、ピクセルピッチが約8μmと、
現代機の2倍程広い、NIKON D70を使用している次第だ。
こういう低画素(広いピクセルピッチ)機であれば、
当時の高解像力仕様のレンズとは相性的に優れると思う。
本レンズは、2000年代における人気高性能レンズでは
あるが、現代の視点からは、やや古い。
だから、現代において「指名買い」の必然性は少ないが、
中古相場が1万円台と安価であるので、そこそこの高性能
広角ズームが欲しいならば、まだ趣味撮影等では十分に
実用範囲内の性能だと言えると思う。そういう用途であれば、
コスパはなかなか良い。
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では、今回ラストのシステム
![_c0032138_06551576.jpg]()
レンズは、TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
(中古購入価格 18,000円)
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-GX7(μ4/3機)
ミラーレス名玉編第13位、ハイコスパ名玉編第12位に
ランクインした名玉だ。
2012年発売のμ4/3専用MF超望遠ミラー(レンズ)
であり、現代において、ミラー(レンズ)は希少で
ある事と、旧来のミラー(レンズ)の弱点の多くを
解消している事からの好評価となっている。
![_c0032138_06551598.jpg]()
「どこが旧来のミラー(レンズ)からの改良点か?」
と言えば、以下の特徴的性能が本レンズにはある。
1)最短撮影距離80cmと、超望遠マクロとして利用可。
2)μ4/3機で、600mmの超望遠画角。デジタル拡大
機能を併用すれば、1200mm相当以上の超々望遠
画角を得る事も容易。
3)その超望遠レンズであるのに、極めて小型軽量。
4)開放F値が、ミラーレンズとしては明るいF6.3。
5)通常の前玉用フィルターを装着できる。
6)電子接点を備え、MFアシスト機能の利用が容易、
また、μ4/3機のボディ内手ブレ補正の利用も容易。
・・という感じだ。
用途としては、野鳥、中遠距離の小さい昆虫(トンボ等)
のフィールド(自然)撮影全般等に特に向く。
使いこなしはやや難しいが、私の場合は、本システムを
自然観察撮影用に持ち出すケースが多い。
(DMC-GX7との組み合わせが主、又は母艦をOLYMPUS機に
する場合も稀にある。本記事ではラストの掲載写真は
OM-D E-M5Ⅱ Limitedとの組み合わせで撮影)
まあ極端に言えば「トンボ撮影専用レンズ」とも言える
ほど、この被写体との相性が良い。
すなわち近寄ると逃げるトンボ(または他の昆虫類)を
数mの距離から、600mm/1200mm(以上可)相当の
望遠画角で、画面いっぱいにまで大きく写す事が出来る。
近接した被写体であっても、80cmまでは撮影可能で
ある為、ほとんど目の前の全ての距離の小さい被写体に
対応可能である。
![_c0032138_06551988.jpg]()
実は、自然観察フィールド撮影においては、適正な撮影
機材と言うものが殆ど存在しない。自然観察員等の専門家
層は、その殆どが高ズーム比ロングズーム機を使用していて
これは、広角から超望遠(だいたい700mm前後)までの
画角が自在に得られる事と、マクロモードで近接撮影も
可能だから、現場全景、植物やキノコ、中遠距離の昆虫、
遠距離の野鳥まで、全てに対応でき、合理的であるからだ。
ただ、ロングズーム機は、AFが合わない、MF性能が低い、
速写性が低いと、色々と課題があり、完璧な自然観察用
機材とは言い難い。
また、アマチュア層では、一眼レフまたはミラーレス機に
中望遠マクロ又は望遠ズームを持ち込む事が自然観察会等
においては良く見かけるが、これも完璧な機材とはいえず、
中望遠マクロは遠距離被写体に弱く、望遠ズームは近距離
被写体に弱い。かつAFでは、やはり小さい被写体にピント
を合わせるのは困難であるし、ましてや飛び回るトンボや
昆虫では、こうした機材では偶然以外では撮影不能だ。
私の場合、本システムがまず主力だが、他の機材として
有益なのは、SONY製デジタル一眼レフ(APS-C機)に、
135mm望遠で最短撮影距離の短いものをあてがう。
具体的には、
MINOLTA/SONY STF135/2.8(最短87cm)や
SONY ZA135/1.8(最短72cm)である。
このシステムの場合、SONY機内蔵のデジタルテレコンで、
200mm、300mm、400mm相当の画角が断続的に得られ、
撮影倍率は、最大0.75倍と、マクロレンズ並みとなり、
中遠距離の小さい被写体に無類の強さを発揮する。
(なお、MFで使う事が必須となる)
これらのレンズは、ボケ質が良く「ポートレート用だ」
と思い込んでいるユーザーがとても多いと思われるが、
一度自然観察用途に使ってみれば、その高い実用性を
認識できる事になると思う。
(注:近年では180mm級望遠マクロとSONY機の相性の
良さも感じているが、これはこれで色々課題がある。
課題の詳細は長くなるので、別記事で説明しよう)
28mm=風景、35mm=スナップ、50mm=汎用、
中望遠=人物という図式は、銀塩時代の1970年代前後に、
交換レンズの販売・普及を促進する為に、意図的に作られた
常識であるから、現代においては、それに従う必然性は無く、
ユーザーは個々に「用途開発」を行い、レンズ、あるいは
カメラを含めたシステムにおける最高のパフォーマンスを
発揮できる被写体や用途を探していく必要がある。
本ミラーは安価な超望遠であるので、初級中級層でも
安易に買ってしまう事もあるだろうが、「これで何を
撮るのだ?」と、用途開発には困ってしまっているかも
知れない。そんな場合、一度自然観察撮影に持ち出して
みると良い、その圧倒的とも言える利便性には、驚きを
隠せないかも知れないからだ・・
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では、今回の「TOKINA ヒストリー」編は、この辺り迄で。
ヒストリーと言いながら完璧にTOKINAレンズの歴史を網羅
できている訳では無いが、まあ、ちゃんとそれをやろうと
したら、30本や50本のレンズを検証する必要がある(汗)
それは困難なので、今回は、このあたり迄に留めておく。
次回記事に続く。
別に紹介している。
今回は「TOKINA ヒストリー編」という主旨で、
TOKINA(トキナー、現:KenkoTokina)社製のレンズで、
およそ1970年代頃から、2010年代前半頃迄の、主に
一眼レフ用(一部はミラーレス機用)の交換レンズを
10本紹介しよう。
なお、銀塩時代のTOKINA製レンズに関しては、現存する
情報が極めて少なく、発売年等は推測が多くなる。
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ではまず、最初のシステム

(中古購入価格 1,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)
出自不明、発売年不明のMF望遠ズーム。
「RMC」とは、多層コーテイングの事だと思われる。
(レインボー・マルチ・コーティング?との説あり)
要は、PENTAXの多層コーティングSMC技術登場(1970
年代前半)のインパクトがとても大きく、各社、こぞって
多層コーテイング技術を開発し(又は、他社から技術を
導入し)それが市場に出てきた、1970年代後半頃の
製品だと推察される。
なお、型番「χ」は、エックスでは無く、ギリシャ文字の
「カイ」であろう。
SIGMA社でも、同時代のレンズでギリシャ文字型番とする
ケースがあったが、この時代ならではの感覚だろうか?
だが、ミノルタが1985年に「α」を使って以降は、
多社でのギリシャ文字型番は、殆ど見られなくなった。
α(カメラ)が社会現象的に大ヒットし、αはギリシャ
文字の最初だから、後からβ(ベータ)やγ(ガンマ)を
出しても二番煎じのように思われてしまうのかも知れない。
例外的には、1990年代、オリンパスの「μ」(ミュー)
シリーズコンパクト機があり、こちらはヒットシリーズと
なった。

していたレンズメーカーであるが、2011年にKENKOと
合併し、現在では「ケンコー・トキナー」社となっている。
現在、自社製レンズを「TOKINA」ブランドで販売する他、
米LENSBABY社や韓国SAMYANG(サムヤン)社レンズ製品等
の輸入販売代理店を務める事も行っている。
また、銀塩時代には、良く他社レンズのOEM供給も行って
いた模様であり、公開されている範囲では、米VIVITAR社
のレンズの多くがTOKINA製である(但し、VIVITAR製品
は、日本の多数のメーカーがOEM生産に協力している)
国内製品では、あまりTOKINA製だとは公開はされていない
が、多社製品と全く同一のスペックのレンズも色々とあり、
OEM生産であると推察される。
また、銀塩時代にはCOSINA製品と同一スペックのレンズ
も多い、これは両社レンズメーカーなので、適宜協業して
レンズ開発を進めたのであろう。
つまり、昔からレンズは全てが単一メーカー内で設計製造
される訳では無く、多数のレンズメーカーが協業して
設計や製造を行っていた、という事実が良くわかる。
すなわち、「どこのメーカーのレンズが良く写るのだ?」
というビギナー層の質問は意味を持たず、実際にレンズを
作っているメーカーは様々なので、過剰な「ブランド信奉」
は禁物である。
さて、本レンズであるが、開放F値固定型の、使い易い
レンズである、この時代のTOKINAの、このクラスの望遠
ズームは極めて数が多く、いったいどれくらいの種類が
あるのか?は把握できない。これは中古買いの場合でも
結構課題となり、ジャンク等でTOKINA製望遠ズームを
見かけた際、「あれ? これは持っていたか?それとも?」
と、しばらく悩んでしまう事すら多々ある。
まだ、ぎりぎり記憶してはいられるが、レンズ所有本数が
数百本ともなると、もうそろそろ記憶量の限界に近い状況
であり、今後は、「所有レンズリスト」(データ)などを
持ち歩いて中古買いをせざるを得なくなるかも知れない。
本レンズに関しては、描写力はこの時代の望遠ズームの
中では、可も無く不可も無し。まあ、とは言うものの
時代(技術)の未成熟もあるオールドズームであるから、
多数の弱点は持っている。古いレンズ故に、現代において
それをネチネチと記載するのもフェアでは無いし無意味だ。
現代において必要とされるレンズでは無いが、TOKINA製
レンズの変遷の歴史を知る為の研究材料という感じだ。
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では、2本目のシステム

(中古購入価格 3,000円)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
発売年不明、1980年前後と思われるMF望遠ズーム。
恐らくだが、当時としては300mm級でズーム比5の望遠
ズームは珍しく(100-300mm,70-300mm等が一般的)
他社では、TAMRON SP60-300/3.8-5.4(Model 23A)
(1983年、ミラーレス・マニアック第58回参照)が
ライバルレンズという関係であろう。
TAMRON 23Aの方が、開放F値が僅かに明るいが、
本TOKINA版の方が、最短撮影距離が短い。
(TAMRON 1.9m、TOKINA 1.5m)
なお、TAMRON版の方が重量は重い。
(TAMRON 926g、TOKINA 約600g)
TAMRON版は、現代においては高画質を表す「SP」銘が
ついているが、SP初登場の1979年から1980年代初頭
にかけての「SP」は、私の研究においては、高画質を
示すものではなく、「他にあまり類を見ない特殊な仕様」
つまり「スペシャルな仕様=SP」であり、高画質である
保証は無い。本ブログでもこの時代のTAMRON SPレンズ
を数本紹介しているが、現代の感覚で「SP」の名称に
高画質を期待してしまうと、がっかりするものが多い。
そして、本TOKINA 60-300についても、TAMRON SP版
より、むしろ描写力上の優位点を多く感じる。
銀塩時代、先にTAMRON版を購入してあり、「SPと言えど
たいした事が無いなあ、この時代故の技術的未成熟か?」
と思っていたのだが・・ 後年に本TOKINA版を購入し、
「なんだ、この時代でも、高倍率望遠ズームをちゃんと
作れるではないか、結局、”名前”とかは意味が無く、
レンズ個々の設計の良否次第なのだなあ・・」と
認識を強くした次第である。
(注:TAMRONでSP銘が実際に高画質を現す称号として
使われ始めるのは、概ね1990年代後半以降である)

描写力と操作性を持つ望遠ズームである。
ただし、本レンズだけが優秀な訳ではなく、1980年前後
には、他にも稀に優れた望遠ズームは存在する。それは
メーカーとか価格や仕様からは読み取れず、あくまで
個々の望遠ズームの設計次第だ。それがわかったのは、
近年に銀塩時代の望遠ズームをジャンク等で数十本購入し、
それらを色々と比較研究した事からの結論である。
そして、優れた(望遠ズーム)レンズとは言え、さすがに
この時代なので、まだ技術的な未成熟による欠点は個々に
存在する。その弱点を認識し、上手く回避して使うのは
なかなか困難な事だ。
(例:望遠端に近づくと解像力が低下する望遠ズームが
多く、その場合は、ズームを望遠いっぱいまでは使わず
適切な範囲までで留めて用いる、等)
そういったスキルアップの為の研究・練習用途に用いる
ならば、この時代の望遠レンズは悪く無い。
なお、本レンズに関しては、現代なお、ジャンクコーナー
等で稀に見かける事がある、殆どの場合、1000円程度
と安価であるので、見つけたら購入してみるのも十分に
有りだと思う。
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では、3本目のシステム

(中古購入価格 17,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機)
発売年不明、1980年代中頃と思われる、開放F値
固定型MF広角ズーム。
ズーム比(望遠端焦点距離÷広角端焦点距離)が、
2以下と、とても小さいが、開放F2.8固定が光り、
この為、AT-Xの型番が付いているのであろう。
「AT-X」とは「ADVANCED TECHNOLOGY-X」の略で
あるが、まあ、他社でも色々ある「高付加価値型型番」
であり、高性能を表す称号ではある。
ただし、TOKINA AT-Xに限らず、多社の高画質称号でも、
個人的には、「高画質かどうかを評価するのは、あくまで
ユーザー側次第、メーカーから”高画質だ”と言われて
その結果として価格が高価になっている場合、必ずしも
それは歓迎する事態では無い。そういう名称は、押し付け
がましく、好まない」という考え方である。
その根拠としては、各社レンズにおいて、AT-XやらSP
やらArtやら、L、G、PRO・・等の高画質称号が付かない
レンズでも、高画質版に勝るとも劣らない高描写力
レンズを多数所有しているからだ。勝るとも劣らない
どころか、明らかに「無印」の方が優れるケースすら
あり、そうなると、高画質称号版を買った事が、完全に
お金の無駄遣い(=コスパの著しい悪化)だ、と感じて
しまい、精神衛生上、極めて良く無い状況になるからだ。

高画質称号の根拠は全く感じられず、かつ購入時の
価格も若干高価であり、極めてコスパの悪いレンズ
である。本ブログでの登場も、およそ6年ぶりとなり、
つまり、利用価値も殆ど無く、使用頻度も極めて低い。
それでも処分せずに本レンズを残しているのは、
例えば本記事のように、TOKINAレンズの変遷を調べよう
とする際、研究用資料として役に立つ場合もあるからだ。
勿論、現代において、本レンズを指名買いする必要は
無く、また、中古で見かける事もまず無いと思われる。
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では、4本目のシステム

(ジャンク購入価格 2,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)
発売年不明(1980年前後頃?)の、MF中望遠1/2倍マクロ。
正式名称も、情報が無くて不明。
このレンズ、故障品としての購入となった。とは言え
故障がわかっていての購入ではなく、目利きにおいて
珍しく「見落とし」をしてしまったのだ(汗)
ピントリングが無限遠まで完全に回らず、数mm程度
手前で何故か停止してしまう、この結果、5m以上の
距離の被写体が撮影不能だ。
「このレンズのジャンクとしては安価だ」と思っての
購入だった。「値付け間違いか?」とも考えて、さっさと
購入して、逃げるようにして帰ってきたのであったが、
故障品ならば、この価格は逆に、やや高価だ。

この描写力性能があれば、マクロ(近接撮影)専用
レンズとしても、むしろ2000円は安価であり、
コスパ点が高く評価される。
この故障は原因不明であり、無理をして直す、(つまり
もうメーカー修理非対応だから、高額な民間修理専門店
に預けるとか、成功率が低い自力修理を試みる)等は
やめておき、もうこのまま使う事としよう。
現実的な対応としては、このレンズは描写力が高い事が
保証されている為、今後仮に、どこかで本レンズの中古を
見かけたら、追加購入すれば良い、という事となる。
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では、5本目のシステム

(ジャンク購入価格 1,000円)
カメラは、CANON EOS 8000D (APS-C機)
本レンズは異マウントで2本所有している。NIKON(F)版
とCANON EF版だが、今回は、EOS機で用いてみよう。
何故2本所有しているのか?は、いずれも極めて安価で
あったからで、主に練習・研究用途である。
出自不明、恐らくは1980年代後半頃の発売と思われる、
AF望遠ズームである。
ジャンク品ながら、大きな瑕疵は無く、いずれもちゃんと
動作している、まあ要は「古くて人気が無い、売れない」
というだけの理由で安価となっているレンズだ。

ズーム設計技術は未発達であったのは確かであるが、
この時代よりも前であっても前述のTOKINA60-300mm
のように高い描写力を持つ望遠ズームも存在している。
結局、個々のレンズ毎に設計の優劣による性能差は出て
くるのであろう。また、それは単に設計者の技能の差と
言うよりも、レンズの販売戦略上のコンセプトも強く
影響していると思われる。
この時代1980年代後半においては、各社の一眼レフは
AFへの転換期にあった。
で、ユーザーの立場で考えてみよう、「流行の新鋭の
AF一眼レフが欲しい」というニーズは強いが、そこで
消費者層はAFカメラ本体を買う事しか考えていない、
「αが先行しているので安心か? それとも新鋭EOSか?
はたまたNIKONは老舗メーカーなので、それが良いのか?」
まあ、そんな感じであろう、いつの時代でもビギナー層等
の視点は、極めて表面的かつ感覚的な要素でしか物事を
見られない。
まあ、どれかを買ったとしよう、でもAFレンズが無い。
中には、NIKON等のAF一眼レフでは、MF時代のレンズを
そのまま使用できるケースもあったが、そうだとしても、
「せっかくAFカメラが欲しくて買ったのに、いまさら
MFレンズなんか使えんよ、時代遅れで格好悪い!」と
思ってしまう事であろう。
その時代は、まさにその感覚だ。このあたりから世の中は
空前の「バブル景気」に突入し、「新しいモノ」「凄い物」
が珍重され、「古いもの」「安いもの」は、誰からも見捨て
られていたのだ。
そんな時代ではあるが、「AFレンズが無い」というのは
ユーザーにとって深刻な問題だ。本来、カメラ購入時に
十分なレンズ購入予算を準備しておくのはセオリーでは
あるが(匠の写真用語辞典第16回「1対4の法則」参照)
残念ながらそうした概念は、ユーザー層全般には無い。
そこで、慌てて「安いAFレンズ」を探す事となる。
CANONでは、この状況に対応する為、史上初のエントリー
レンズ、EF50mm/f1.8Ⅱ(1990年)を発売するが、
それはヒットしたものの、単焦点標準レンズである。
なので「AFズームレンズは無いか~?」「安いAFレンズ
は他に無いか~?」と、まるで”なまはげ”のように、
多くのユーザー層は、さまよっていた事であろう、
よって、レンズ・サードパーティーは、このニーズに
応える為、安価なAFズームレンズを沢山発売する、
本レンズも、恐らくはそうした中の1本である。
ここでは、ともかく安価で、そこそこの性能のものを
発売すればよい。ビジネスモデルは「売り切り型」で
良く、後に自社高額製品の購入に誘導する「囲い込み型」
では無い。(まあ、現代の中国製廉価版レンズと同じだ)
よって、開発(設計)に求める企画コンセプトも、
「ともかくローコストで作れ」という事になるだろう。
安価であれば、それだけ売れて、他社を圧倒し、事業が
有利となる。写りの良し悪し等は余り関係ない、どうせ
多くのユーザー層は、その辺りの絶対評価感覚を持たない。
・・まあ、であれば設計者(開発者)にとっては不幸な
話であろう。たとえどんなに設計能力(技能・技術)に
優れたエンジニアであっても、高性能で贅沢なレンズ設計
をする事が許されない訳だからだ。
ここまでは、あくまで想像の話だが、当たらずとも遠からじ、
さほど間違った状況分析では無いと思う。
だとすると、現代において、このレンズを評価するに当たり
「写りが悪い、ダメレンズだ」という評価は的外れだ。
正しい評価手法は、「当時の設計者は、いかなる手法で
レンズのコストダウンを実現したのか?」という視点と
なる。それはレンズの弱点を見ていけばわかる、そうした
弱点は、設計側としては当然、性能解析作業中に把握して
いる訳であり、泣く泣くそれを犠牲にしても、他のメリット
(コスト等)を優先した、という「トレードオフ」なのだ。
その弱点等の詳細は長くなるので本記事では割愛する、
興味があれば本レンズ紹介記事「レンズ・マニアックス第3回」
「レンズ・マニアックス第41回」を参照していただきたいが
ここで注意するのは「本レンズの性能がどうのこうの」という
話では無く、「設計上、何を優先し、何を犠牲にするのか?」
という点を理解できるようになるのが望ましい、という事だ。
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では、6本目のシステム

(中古購入価格 17,000円)
カメラは、SONY α65(APS-C機)
例によってTOKINAレンズの詳しい情報は殆ど残っておらず
出自は、推測を多く交える事となる。
本レンズは、1990年代頃に発売された、フルサイズ対応
AF単焦点超広角レンズである。
ミノルタの銀塩αシステム(1985年~2000年代初頭)に
20mm未満の単焦点超広角レンズが存在していなかった
事から、本レンズは銀塩時代には、α用超広角として
重宝して使っていた。
あまりスペシャルな描写力は持たないが、超広角の用途
もあまり無く、常用するというレンズでも無い訳なので
まあ、本レンズで十分だ、という考えもあった。

存在しないか、又は、あったとしても非常に高額である。
何故ならば、本数が売れるレンズでは無いので、開発や
製造に係わる多大な費用を、少ない販売本数で負担する
からである。(=大量生産ができない)
その弱点に目をつけたのは、レンズ・サードパーティー
(レンズ専業メーカー)であり、この時代、TOKINAの
他にもSIGMAやTAMRONからも14mm級の超広角単焦点が
発売されていた。(正確には、MF時代ではSIGMAは14mm、
TAMRONは17mm。AF時代では両社14mmを発売している)
これらのレンズは各AFマウント(注:TAMRON 17mmは
アダプトール2による、各MFマウント交換式)で
発売されていたので、メーカー純正品よりも確実に
多く売れ、結果的に、量産効果で価格を下げれる事から
さらに売れる数が増える仕組みだ。(まあ、とは言っても
大ヒットする類のレンズでは無いので、そこそこ高価だ)
銀塩時代では、こうしたレンズ専業メーカーのレンズが
メーカー純正品よりも安価であった事から、初級中級層に
おいては、「レンズメーカー製は安物だ、メーカー純正の
レンズ方が高価なので性能が優れているに決まっている」
という「思い込み」(決め付け)が広まってしまっていた。
だが、その理由は上記の通りで、単純な生産上の仕組みで
ある。同じ性能のレンズを作っても、レンズ専業メーカー
の方が安価に売る事が出来る訳だ。
そして、安価で無いと、メーカー純正に太刀打ちできない。
この時代であれば、多くのユーザーが「メーカー純正品は
優れている」と勘違いをしていたので、純正品より高価な
サードパーティ製レンズなど、売れる訳が無かったのだ。
その常識がひっくり返るのは、デジタル時代に入って
からである。レンズサードパーティーは、ブランド力等の
高付加価値化戦略を行った。その具体例としては、
COSINAの「フォクトレンダー」や「カール・ツァイス」、
SIGMAの「ART LINE」、TAMRONの「SP」、そしてTOKINA
の「FiRIN」や「OPERA」等があり、これら高付加価値レンズ
は、メーカー純正の同等仕様のレンズよりも、はるかに
高価なケースすらある。
それらの高付加価値レンズは、さほど多く所有している
訳でも無いし、TOKINA製の「OPERA」等も、まだ所有に
至っていないので、本記事では、TOKINAの歴史を追うと
言っても、残念ながらその新鋭レンズの紹介は出来ない。
何故買わないのか? は、当然高価であるからだ。
たしかに、それら高付加価値型レンズは高性能である。
本ブログでも、十数本のそれら新鋭のサードパーティ製
高付加価値型レンズを購入後に紹介しているが、どれも
描写・表現力の評価は非常に高得点だ。けど、コスパの
評価は、どれも振るわない、つまり、「性能に比べ、
値段が高価すぎる」という判断となっている。
(なお、これらの高付加価値レンズ群は、実際にユーザー
が購入して評価した情報はとても少ない。レビュー記事等
の多くは市場関係者が販売促進の為に書いた、「褒める」
だけの内容である。それらの偏った情報を単純に信じては
ならないのは勿論であろう。何故一般レビューが少ないのか
は明白であり、高価すぎて誰も欲しいとは思わないからだ。
もし無理をして買ったとしても、「高価だから良い性能だ」
と思い込んでしまい、冷静に評価ができるケースは皆無だ)
で、TOKINA新鋭製品も、そうした理由で、まだ購入に至って
いない状況だ、ただし年月が経過して、中古相場が安価に
なってくるのであれば、コスパの「見込み点」が高く
なるので、購入検討の余地はあると考えている。
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では、7本目のシステム

(中古購入価格 3,000円)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
発売年不明、恐らくは1990年代と思われる、小型軽量
AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
正式名称も例によって不明、本記事での各TOKINAレンズ
の型番はレンズ上に記されている物を順次記載しており、
バラバラの位置に書かれているので、その順序は不明だ。
恐らくはCOSINAの同スペック(MF/AFあり)製品と同じ
光学系だと推測される、描写傾向がそっくりだからだ。
COSINAによるOEMというより、この時代(1980年代~
1990年代)TOKINAとCOSINA製品は、協業して設計や
製造を共通化する事も良くあったと思われる。また、
これらはOEMメーカーであるので、他社製品の中にも、
TOKINA/COSINA製と思われる、同一仕様のレンズも
良くあった。

「メーカー純正品が(レンズメーカー製より)高性能で
ある、だから高価なのだ」という、間違った論理を
思い込んでいた。だから、「メーカー純正品の一部は
レンズメーカーで作っている」という事実は、隠して
おかないと、市場倫理が崩壊して、皆が困った事となる。
だから、こういう情報(どのレンズが、どこ製)という
ものは、一切出回っていない。では、どうやってその
事実を知るか?という点だが、例えば、当時の関係者や
工場見学者等からの証言、海外に残っている記録や情報、
あるいは、それらのレンズを入手し、ユーザー側での
徹底的な検証、などにより、だいたいレンズの出自は
推測できる。
けど、秘密をあばくような、そんな事をしても基本的には
無意味だ。実際のところ、メーカー間での性能や品質の
差異は存在しない、あるのは「レンズ販売上のコンセプトと
それを満たすための設計・製造上の差異」だけである。
少し前述したが、安いレンズを売る必要があれば、そういう
設計をする、高価なレンズを売りたいならば、それに見合った
設計をする。そこはカメラメーカーでもレンズメーカーでも
同じであり、最終的には、「このブランドで、この性能や
仕様のレンズであれば、ユーザーは、いくらなら買うか?」
という視点でレンズの企画開発は進む。
これはレンズ以外でも、カメラであっても、あるいは世の中の
他の分野の製品・商品であっても、全て同じ理屈である。
それが現代の工業製品の産業(市場)構造であるからだ。
ここがわかっていないと、単に有名だから、流行っているから、
誰かが良いと言ったから、などの根拠の無い理由で購買行動に
走ってしまう。これはユーザーにとって非常に損をしている
事となり、本ブログでは、この状態を「ユーザーの負け」と
称している。
で、「ユーザーの負け」であっても、その事に気づかない
ユーザーが大多数だ。別に気にしていないのかも知れないし
流行の商品を入手した事で満足したり、周囲に自慢したり
する様相も、かなり大きい事であろう。
だから、別にそれを否定するつもりは無い、それで世の中
(経済)は上手く廻るからだ。
でも、「ユーザーの負け」状態に気づき、それを好ましくは
思わないユーザーも多いであろう。そんな場合はどうする
べきか? と言えば、ユーザーにおいては「絶対的価値感覚」
を身につける必要がある。それは簡単な事では無いが、経験や
研究、修練を繰り返していけば、だんだんとそれがわかって
くる。それはすなわち「マニア道」ではあるが、時間も費用も
手間隙もかかる事なので、誰にでも薦められるものでは無い。
結局、世の中的には「ユーザーの負け」状態に気づかない、
またはそれを容認するユーザーが多い方が良いのであろう、
それで世の中は上手く廻るし、誰も損はしない。
まあでも、そうは思わないユーザー(マニア)も居るとは
思うし、結局、私も、あるいは本ブログの読者層もまた、
そういう志向性が強い状態だと思う。
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では、8本目のシステム

(中古購入価格 19,000円)
カメラは、CANON EOS 7D (APS-C機)
詳細不明、このレンズの系譜は、1990年代より
2000年代にかけ、初期型、Ⅱ型(AFⅡ型)、D型と
進化している模様だが、いずれも光学系は同一だ。
(注:D型では、コーティングの差異があるかも知れない)
本レンズは(固定)の三脚座が付いているので、Ⅱ型だと
思われる。(初期型ではそれは無かった模様だ)
初期型では400mmレンズとしては稀な1kgを切る軽量かつ
小型なレンズであり、そこそこインパクトがあったと聞く。
ライバルにTAMRON 75D型(200-400/5.6、1994年、
過去記事で多数紹介)があり、これの登場に触発されて
本レンズ(の初期型)が発売されたのだ、という話も
聞いた事がある。
本レンズ(Ⅱ型)の重量は1kg強であるが、これは依然、
400mm級望遠ズームとしては軽量の類。これを下回る
物は、記憶を辿れば、MINOLTA版APO100-400mm
(未所有)位しか無かったかも知れない。

絞ってもあまり改善されない事から、すなわち超望遠ズーム
でありながら、超望遠域が実用レベル(性能)では無い。
この結果、私の場合は、屋外スポーツイベント撮影に
おいては、本レンズでは無く、もっぱらTAMRON 75D型を
愛用する事となり、それは銀塩時代を過ぎてデジタル時代
の2010年代前半に至る迄、ずっとそんな調子であった。
何故ならば、2000年代~2010年代にかけ、優秀な
400mmズームが1本も登場しなかったからである
(注:メーカー純正品は存在したが、高価すぎてコスパが
悪いのみならず、重量級でハンドリング性能が悪かった為、
屋外で実用目的で酷使するには向かない)
2017年になって、ようやくSIGMAとTAMRONから極めて
優秀な100-400mmズームが発売され、(本シリーズ
第6回「超望遠ズーム」編参照)、その後はようやく
こうした旧世代400mmズームと代替できる状況になった。
なお、言うまでも無いが、本ブログにおいては、
こうした重量級(超)望遠ズームであっても、100%手持ち
撮影である。三脚を利用した場合の用法・用途、あるいは
評価は、一切行っていないので念の為。
本レンズの総括だが、今や「古すぎて用途無し」である、
軽量な利点はあるが、2017年からのSIGMA/TAMRON製品
も、本レンスより僅かに重い程度の軽量級であるから、
現代では実用上において、それら新鋭超望遠ズームを
用いた方が断然有利である。
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さて、9本目のシステム

(中古購入価格 15,000円)(以下、AT-X124)
カメラは、NIKON D70 (APS-C機)
2004年発売、TOKINA初のAPS-C機専用のレンズであり、
開放F値固定型の超広角ズームである。
後年に改良されⅡ型となり、コーティング性能等が
向上した他、NIKONマウント版ではレンズ内モーター
搭載となって、近代のNIKON初級一眼レフでもAFが
動作するが、本初期型はモーター無しだ。
今回、古いNIKON D70(2004年発売)を用いているのは、
AFが動作する理由もあるが、当時での雰囲気や性能を
体感(検証)する目的がある。
まあ、現代機を使う場合でもNIKON高級機で使えばAFは
動作するので問題無いし、ミラーレス機に装着して
MFで使っても何ら問題は無い。(注:絞り環は存在する)
大型のレンズであり、逆光耐性が怪しい為、フードの
装着も必須となる。結果、カメラバッグには入り難く、
ハンドリング性能がやや悪い。

であるが、現代の視点においては、まあ、それについては
依然、その傾向はあるが、現代機の高画素/ローパスレス
機等で使うには、やや物足りなさを感じるであろう。
そういう点でも、今回は、ピクセルピッチが約8μmと、
現代機の2倍程広い、NIKON D70を使用している次第だ。
こういう低画素(広いピクセルピッチ)機であれば、
当時の高解像力仕様のレンズとは相性的に優れると思う。
本レンズは、2000年代における人気高性能レンズでは
あるが、現代の視点からは、やや古い。
だから、現代において「指名買い」の必然性は少ないが、
中古相場が1万円台と安価であるので、そこそこの高性能
広角ズームが欲しいならば、まだ趣味撮影等では十分に
実用範囲内の性能だと言えると思う。そういう用途であれば、
コスパはなかなか良い。
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では、今回ラストのシステム

(中古購入価格 18,000円)
カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-GX7(μ4/3機)
ミラーレス名玉編第13位、ハイコスパ名玉編第12位に
ランクインした名玉だ。
2012年発売のμ4/3専用MF超望遠ミラー(レンズ)
であり、現代において、ミラー(レンズ)は希少で
ある事と、旧来のミラー(レンズ)の弱点の多くを
解消している事からの好評価となっている。

と言えば、以下の特徴的性能が本レンズにはある。
1)最短撮影距離80cmと、超望遠マクロとして利用可。
2)μ4/3機で、600mmの超望遠画角。デジタル拡大
機能を併用すれば、1200mm相当以上の超々望遠
画角を得る事も容易。
3)その超望遠レンズであるのに、極めて小型軽量。
4)開放F値が、ミラーレンズとしては明るいF6.3。
5)通常の前玉用フィルターを装着できる。
6)電子接点を備え、MFアシスト機能の利用が容易、
また、μ4/3機のボディ内手ブレ補正の利用も容易。
・・という感じだ。
用途としては、野鳥、中遠距離の小さい昆虫(トンボ等)
のフィールド(自然)撮影全般等に特に向く。
使いこなしはやや難しいが、私の場合は、本システムを
自然観察撮影用に持ち出すケースが多い。
(DMC-GX7との組み合わせが主、又は母艦をOLYMPUS機に
する場合も稀にある。本記事ではラストの掲載写真は
OM-D E-M5Ⅱ Limitedとの組み合わせで撮影)
まあ極端に言えば「トンボ撮影専用レンズ」とも言える
ほど、この被写体との相性が良い。
すなわち近寄ると逃げるトンボ(または他の昆虫類)を
数mの距離から、600mm/1200mm(以上可)相当の
望遠画角で、画面いっぱいにまで大きく写す事が出来る。
近接した被写体であっても、80cmまでは撮影可能で
ある為、ほとんど目の前の全ての距離の小さい被写体に
対応可能である。

機材と言うものが殆ど存在しない。自然観察員等の専門家
層は、その殆どが高ズーム比ロングズーム機を使用していて
これは、広角から超望遠(だいたい700mm前後)までの
画角が自在に得られる事と、マクロモードで近接撮影も
可能だから、現場全景、植物やキノコ、中遠距離の昆虫、
遠距離の野鳥まで、全てに対応でき、合理的であるからだ。
ただ、ロングズーム機は、AFが合わない、MF性能が低い、
速写性が低いと、色々と課題があり、完璧な自然観察用
機材とは言い難い。
また、アマチュア層では、一眼レフまたはミラーレス機に
中望遠マクロ又は望遠ズームを持ち込む事が自然観察会等
においては良く見かけるが、これも完璧な機材とはいえず、
中望遠マクロは遠距離被写体に弱く、望遠ズームは近距離
被写体に弱い。かつAFでは、やはり小さい被写体にピント
を合わせるのは困難であるし、ましてや飛び回るトンボや
昆虫では、こうした機材では偶然以外では撮影不能だ。
私の場合、本システムがまず主力だが、他の機材として
有益なのは、SONY製デジタル一眼レフ(APS-C機)に、
135mm望遠で最短撮影距離の短いものをあてがう。
具体的には、
MINOLTA/SONY STF135/2.8(最短87cm)や
SONY ZA135/1.8(最短72cm)である。
このシステムの場合、SONY機内蔵のデジタルテレコンで、
200mm、300mm、400mm相当の画角が断続的に得られ、
撮影倍率は、最大0.75倍と、マクロレンズ並みとなり、
中遠距離の小さい被写体に無類の強さを発揮する。
(なお、MFで使う事が必須となる)
これらのレンズは、ボケ質が良く「ポートレート用だ」
と思い込んでいるユーザーがとても多いと思われるが、
一度自然観察用途に使ってみれば、その高い実用性を
認識できる事になると思う。
(注:近年では180mm級望遠マクロとSONY機の相性の
良さも感じているが、これはこれで色々課題がある。
課題の詳細は長くなるので、別記事で説明しよう)
28mm=風景、35mm=スナップ、50mm=汎用、
中望遠=人物という図式は、銀塩時代の1970年代前後に、
交換レンズの販売・普及を促進する為に、意図的に作られた
常識であるから、現代においては、それに従う必然性は無く、
ユーザーは個々に「用途開発」を行い、レンズ、あるいは
カメラを含めたシステムにおける最高のパフォーマンスを
発揮できる被写体や用途を探していく必要がある。
本ミラーは安価な超望遠であるので、初級中級層でも
安易に買ってしまう事もあるだろうが、「これで何を
撮るのだ?」と、用途開発には困ってしまっているかも
知れない。そんな場合、一度自然観察撮影に持ち出して
みると良い、その圧倒的とも言える利便性には、驚きを
隠せないかも知れないからだ・・
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では、今回の「TOKINA ヒストリー」編は、この辺り迄で。
ヒストリーと言いながら完璧にTOKINAレンズの歴史を網羅
できている訳では無いが、まあ、ちゃんとそれをやろうと
したら、30本や50本のレンズを検証する必要がある(汗)
それは困難なので、今回は、このあたり迄に留めておく。
次回記事に続く。