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価格別レンズ選手権(11)1万円級レンズ(Part2)

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本シリーズでは写真用交換レンズ(稀に例外あり)を
価格帯別に数本づつ紹介し、記事の最後にBest Buy
(=最も購入に値するレンズ)を決めている。
今回は、1万円級(Part2)編とする。

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では、早速1万円級レンズ7本の対戦を開始する。
まず、最初のエントリー(参戦)。
_c0032138_15114791.jpg
レンズは、PANASONIC LUMIX G 20mm/f1.7Ⅱ ASPH.
(型番:H-H020A)
(中古購入価格 23,000円)(実用価値 約15,000円)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G6 (μ4/3機)

2013年発売のμ4/3専用薄型単焦点AF準標準(相当)
レンズ。
PANASONIC DMC-GX7(初代)のキットレンズとして
発売(DMC-GX7C)された物だが、単品販売も勿論ある。

小型(薄型)軽量、明るい開放F値、そこそこの高描写力
レンズであり、普段使いレンズとして推奨できる。
_c0032138_15114719.jpg
開放F1.7を有効活用する為には、初代GX7が希少な
最高シャッター速度1/8000秒機であったので、
企画的コンセプト(GX7Cの販売)からはマッチングが
良かったのだが・・
他のμ4/3機(1/4000秒機が多い)で利用する場合は、
日中ではシャッター速度オーバーのリスクがある為
ND2~ND4の減光フィルターを装着しておくのが良い。

こうしておくと、PANASONIC機の高めのベース感度
(ISO125とかISO160機も多い)であっても、日中の
多くの被写体光線状況において、絞り値を開放F1.7
から、(自身の)手ブレ限界シャッター速度に達する
絞り値まで(またはAUTO ISOが頭打ちしない範囲まで)
自在にコントロールできる。つまり「絞り値の汎用性が
高い」という状態となる。

本レンズ(の初期型)は、2010年代初頭に初級層の
間で「安価でとても良く写るレンズ、神レンズだ!」
として「神格化」されてしまい、投機層が動いて
(=組織的に買い占めて)高額相場となってしまった。

だが、恐らく、それを購入した初級ユーザーの大半は、
2009年にPANASONIC DMC-GF1とG20/1.7(初期型)
をセットした、GF1C型セットが発売されていたのが、
GF2C型(2010年、DMC-GF2とG14/2.5のセット)の
発売以降での、GF1Cの、およそ定価の半値程度
(4万円以下等)の格安新品在庫処分品を買った人達で
あろう。まあ、完全なエントリー層であり、正直言えば、
レンズ評価能力(スキル)を持っていたものかどうかは、
極めて疑問だ。そもそも「神レンズ」といった曖昧な流行
用語で評価をしている時点で完全なビギナー評価であろう。

GF1CがGF2Cに代替された際、キットレンズがG20/1.7
からG14/2.5に変わったのは、初代GF1の貧弱な
コントラストAF性能(ミラーレス・クラッシックス
第3回記事参照)では、G20/1.7との組み合わせでは
ピント歩留まり(精度)とシャッター速度オーバーの
課題が回避しずらかったからだと思われる。
(当該記事や、特殊レンズ第15回記事で検証済み)
(注:加えてセルフィー対応の企画意図もあっただろう)

だからつまり、G20/1.7の「神格化」は、事の本質が
わかっていない初級層での話だ。
しかし、G20/1.7が高コスパレンズである事は、
上級マニア層からも聞いていたので、神格化の騒ぎが
収まって、中古流通価格が正常化した2014~2015年
頃に、本Ⅱ型を入手した次第である。

何故、神格化が収まり正常化したかの理由は簡単であり
2013年に、GX7CとしてG20/1.7がⅡ型に変更された
からである。G20/1.7の初期型を抱えていた投機層は
(注:個人とは限らず、流通やチェーン店舗もある)
「新型が出たならば、旧型を早く手放さなければ」
という判断に至ったのであろう。

下手をすれば、「神格化うんぬん」の騒ぎすらも、
G20/1.7初期型の値段を吊り上げ、売買利益を出す為に
意図的にネット上にバラまかれた流言(噂話)なの
カも知れない、と、うがった見方も出来てしまう。
_c0032138_15114775.jpg
さて、上写真は、珍しい気象現象である「幻日」
(げんじつ)である。
太陽光が空気中で反射して、2つまたは3つの太陽が
あるように見える。
この時、丁度「普段使いレンズ」として、本G20/1.7Ⅱ
をμ4/3機に装着して持ち歩いていた。
被写体汎用性の高い本レンズであるから、こんな場合でも、
すぐさま対応ができる。こうした珍しい気象現象は、ほんの
数分後には、もう見えなくなってしまう事も良くある訳だ。

母艦がDMC-G6であったので、強力なデジタルズーム機能が
利用可能だ。設定変更不要、又はごく簡単な設定操作で、
本レンズの20mmという画角は、換算40~320mmの範囲で
デジタル拡大を利用する事が容易である。

この「被写体汎用性」の高さが、本レンズの最大の特徴
であり、暗所から明所まで大抵の被写体に対応可能だ。

ただし、弱点もいくつかある、
*AF精度
*近接撮影能力の不足
*MF操作性の悪さ
*上記に関連して、背景ボケを意図した撮影が困難
などである。

また実用的には、本レンズの画角では「人物集合写真が
撮れない」という点が、DMC-GF2で、キットレンズが
14mm/F2.5に変更された理由の1つであろう。

ビギナー向けというよりは、中級層以上向けのレンズだ。
だからこそ、ビギナー層が本レンズを「神格化」して
しまう理由が全く理解できず、相場高騰を狙って、意図的に
広められた流言(またはデマ)であったように思えてならない。

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では、次のシステム。
_c0032138_15114750.jpg
レンズは、TOKINA AT-X124 PRO DX (12-24mm/f4)
(中古購入価格 15,000円)(実用価値 約12,000円)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)

2004年発売のAPS-C機専用AF超広角ズーム。

発売時点では、各社デジタル一眼レフが市場に出揃った
時代であったが、ほぼ全てがAPS-C機であった為に
旧来の(銀塩時代からの)所有レンズでは、広角画角が
不足してしまう。そうした中上級ユーザー層に向けて、
高性能(高画質、高品質)仕様として発売されたのが
本レンズであり、「無かったものが実現されている」から
当然ながら中上級層において好評価が得られた。
_c0032138_15115674.jpg
まあただし、本レンズには良いところばかりでも無く、
弱点も多い、具体的には以下である。
*大きく重いレンズである。
*発売時点では価格もやや高価で、三重苦レンズだ。
*逆光耐性がやや低い。
*初期型ではレンズ内モーターが搭載されておらず、
 NIKON用マウント品の場合は、後年の、NIKON初級機
(D3000系列、D5000系列)では、AFが動かず、使用困難。
(注:MFでは動作するが、D3000/5000系列等の機体は、
 酷い「仕様的差別化」により、MFでのピント合わせは
 事実上不可能とも言える低性能だ)

AF問題は、本レンズのⅡ型以降ならば、モーター内蔵と
なったので、全てのNIKON機(デジタル一眼レフ)で
利用が可能だ。またⅡ型では、コーティングの改良に
より、逆光耐性も向上していると聞く。(注:Ⅱ型は
未所有につき具体的な比較は不明。恐らくは大差無いと
想像されるので、あえて初期型を購入している)

実用上の最大の課題は、「大きく重い事」である。
レンズ内モーター無し問題を回避する為、本レンズは
現状では、NIKON上級機で使用するしかない。
すると、レンズ(やフード)を装着した状態では、
カメラバッグの通常の仕切りでは入らない。


レンズフードを使わないか、収納状態に逆付けすれば
かろうじてカメラバッグに入るが、逆光耐性が弱い
本レンズであるから、フードは必須だ、仮に逆付けで
持ち歩いたとしても、フードを装着しなおす為に、
すぐに撮れないのでは課題が大きい。

なお、ビギナー層でのかなりの確率(個人的調査では
30%ほど)は、レンズフードを逆付け(収納位置)に
したまま撮影してる。これは「百害あって一利無し」の
用法である為、非推奨である事は勿論、そういう撮り方
をしている時点で、ビギナー層である事がまるわかりだ。
(匠の写真用語辞典第21回、第39回記事参照)

で、この「ハンドリング性能の悪さ」が、本レンズの
最大の弱点である。
ハンドリング性能が悪いと、持ち出す頻度が減ったり、
あるいは「エンジョイ度」の評価が低くなってしまう。
つまり、「あまり使いたく無いレンズ」となるので、
せっかく購入したレンズが活用できなくなってしまうのだ。

事実、本レンズはそうなりそうな雰囲気があるので、
こういう風に記事で紹介等の機会を意図的に作って、
なんとか持ち出そうとしている次第である。
_c0032138_15115626.jpg
描写力とかの大きな課題は無く、仕様(超広角、F4通しで
ある事)的にも優れている。
だから悪いレンズでは無い。どうしてもこの仕様のレンズ
が必要であり、かつハンドリング性能も気にしなくて良い
状況であれば、悪く無いレンズだ。

なお、ハンドリング性を少しでも上げる為に、本レンズ
のⅡ型を購入し、それをNIKON初級機で使う、あるいは
別マウント品(例:EOS EF)で購入し、当該マウントの
初級機で用いるならば、総合的にハンドリング性の
課題は、だいぶ減ると思われる。

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では、3本目のシステム。
_c0032138_15115644.jpg
レンズは、TAMRON SP AF 90mm /f2.8 MACRO[1:1]
(Model 172E)
(中古購入価格 20,000円)(実用価値 約12,000円)
カメラは、PENTAX K-5(APS-C機)

1999年に発売された、AF等倍中望遠マクロレンズ。

言わずと知れた「90マクロ」シリーズの製品である。
勿論、銀塩時代の製品であるからフルサイズ対応だ。
この172E型は、銀塩期の最終のバージョンである。
この後継機の272E型(2004年)からは、Di(デジタル)
対応型となり、後玉のコーティングが改良されている。
(レンズマニアックス第59回記事で紹介)
_c0032138_15115688.jpg
ただ、Di型で無い場合でも、デジタル一眼レフでの
利用は特に問題は無いし、描写力が大きく異なる訳でも
無い。この点は、ユーザー側からは要注意であり、
2000年代初期のレンズ製品は、デジタル変換期において
「デジタル対応」を謳った新製品が各社でとても多い。
けど、それにより新品価格が値上げされたり、中古相場
が高価になっているならば、それらを無理をして買う
必要は無く、銀塩時代のレンズを使えば安上がりな訳だ。

中古流通市場では、稀に銀塩時代のレンズに「デジタル
非対応」と称している場合もある。ただし、ごく一部の
特定の組み合わせを除いて、デジタル一眼レフにデジタル
非対応レンズを装着しても、問題なく動作する。
その「特定の組み合わせで動かない」ケースは、個々に
知る(調べる)しかない。どのカメラと、どのレンズの
組み合わせが不可なのかは、誰も纏めていないと思う。

それよりも、デジタル一眼レフの方を換えれば動作する
場合もある。概ね、時代の近いカメラとレンズが相性が
良いのは当然であり(=もし、同時代のカメラとレンズ
で動作不能となると、市場での評判に悪影響が大きい為)
すなわち、古いレンズには古いカメラをあてがうのが、
問題点を回避する1つの手法となる。

この為、新機種を購入した場合でも、できるだけ旧機種
を残して置く事が、マニア的観点からは必須の措置だ。
旧機種でないと、上手く動作しないレンズもあるからだ。


まあ、デジタル機の場合、旧機種を下取り売却しても、
どうせ二束三文だ、であれば、ずっと苦楽を共にしてきた
(?)古い愛機は、残しておくのも機材に対する愛着と
して、当然のマニア的思想であろう。

現代のデジタルカメラは消耗商品であり、数年で古く感じ
発売後10年もしたら、もう「仕様使用老朽化寿命」が
来てしまい、周囲の新機種に比べて性能・機能的な見劣り
が酷くなり、動作していても使いたく無くなってしまう。

だから、ビギナー層に対しては、「どうせ元を取るまで
使いつぶす事などは出来ないのだから、高価な新製品を
買うな」と、常々アドバイスしているのだが、その話を
聞くビギナーは皆無であり、皆、新製品を買ってしまう。

何故ならば、ビギナー層は、全員が自身の撮影スキルに
自信を持っていないからであり、その状態では、
「手ブレ補正」「高速連写」「超高感度」「高画素数」
「大面積センサー」「高精度AF」などの、機材側の高性能
に頼らないと、「上手く撮れない」と思ってしまうからだ。
(さらには、「中古品等では、壊れたらどうしよう?」と
心配してしまうビギナー層も非常に多い模様である)

よって、近年のカメラ(レンズ)市場においては、
上記のような「高付加価値化」(=凄い性能を搭載して
機材の価格を上げる)型の商品を購入するのは、ビギナー
層ばかりであり、中上級層は、高価すぎる新製品を
買い控えしている。だって、別に超高感度や超高速連写
の性能が無くても、十分に撮れる被写体が大半だからだ。
その為、近年では、見事なまでに「持っている機材の
価格と腕前は反比例する」という不自然な状況となって
しまっている。 
業務上での用途はともかく、ピッカピカの高価な新製品を
持っているのは、ほぼ間違いなく初級層である。

なお、業務上であっても一部は同様だ、高価すぎる新製品
を次々に買っていたら、収支が間違いなく赤字となるので、
できるだけ旧機材または安価な機材で撮影を行う。
同等の品質の写真をクライアントに納品して、収益を得る
のであれば、できるだけ原価(撮影機材や撮影全般に
かかるコスト)を下げた方が利益率が上がるので、事業
(ビジネス)としては好ましいからだ。

高いカメラを使っている職業写真家は、もはやメーカーの
広告塔としての立場であるとか、あるいは、使用機材が
老朽化したので、たまたま新機種に買い換えたタイミング
での話だけである。

余談が長くなったが、これは重要な事だ。
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TAMRON「90マクロ」シリーズは、ロングセラー商品
であるから、時代毎に様々なバージョンが存在する。

そしてその性能は、バージョン毎に緩やかに向上は
しているものの大差は無い。
だから、コスパを考えると、自身の写真の用途や目的に
合致する範囲で、できるだけ古い時代の安価な製品を
使う方が望ましい訳だ。
「超音波モーターや手ブレ補正が入っていないと撮れない」
と言うならば、もう完全にビギナー層であろう。
マクロ(近接)撮影での、それらの機能の実際の必要性に
ついて理解していない、という事に他ならないからだ。

「それでも中遠距離の撮影時には、超音波モーターや
 手ブレ補正が入っていれば楽だろう?」
と思うのであれば、マニアまたは上級層視点では、それも
ちょっと違う発想だ。
TAMRON「90マクロ」シリーズは、等倍化された製品
(72E型、1996年)からは、近接撮影に重点を置いた
設計に変更され、中距離撮影ではボケ質破綻が起こり
やすく、遠距離撮影では、やや解像感が落ちるという
特性を持つ。つまり「近接撮影に特化した専用レンズ」
という訳だ。
それは設計上、どちらかを取れば、もう一方が犠牲に
なる「トレードオフ関係」であるから、弱点とは言い難く
単に「そういう特性がある」というだけだ。

だから、72E型以降の「90マクロ」を、中遠距離撮影を
主体として使う、という発想は、上級層や上級マニア層
的には有り得ない話だ。
そういう撮り方(中遠距離撮影)をするならば、各社の
マクロでは無い(大口径)中望遠レンズを使うのが、勿論
効果的である。

よって「90マクロ」を持ち出す以上、必ず近接撮影に
用いるのが、機材の性能を最大限に引き出す為の必須の
用法となる。
つまり、「わざわざ、苦手な土俵(分野)で勝負して、
どうするのか?」という話である。

その為に沢山の機材(レンズ)を使うのが、レンズ交換が
出来る一眼レフ(や、ミラーレス機)の、最大の特徴で
あって、レンズ交換をしないとか、レンズを数本しか持って
いない、という時点で、それそのものが、ビギナー的な
発想となってしまう訳だ。

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では、4本目のシステム。
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レンズは、VS Technology SV-1214H
(新品購入価格 18,000円)(実用価値 約10,000円)
カメラは、PENTAX Q(1/2.3型機)

2010年代後半に発売されたと思われる、2/3型対応
Cマウント、マシンビジョン(FA)用単焦点汎用レンズ。

当該市場分野での新鋭レンズであり、高解像力、
低歪曲、高い近接撮影能力(最短10cm)を誇っている。

マシンビジョン用レンズとしては、非常に優れており、
ほぼ理想的なスペックであるのだが・・・
まあでも、これは一般撮影用(写真用)レンズでは無い。

個人での入手も不可能に近いし(ほぼ必ず、法人名義で
代理店等を通して購入する)値引き販売も殆ど無い、
また、この手のレンズの中古市場も、まず存在しない。
仮に、うまく入手できたとしても、適切な組み合わせと
なる母艦は限られているし、撮影技法もかなり高難易度
である。
上級マニアを含む、全ての層に非推奨のレンズではあるが、
まあ、「世の中にはこんな世界もある」という参考まで。
_c0032138_15120322.jpg
私は、このレンズの高スペックに大きく魅かれ、少々
無理をして、なんとか入手。以降、機嫌よく使っている。

ちなみに2010年頃だったか? KENKO(TOKINA)社が、
産業用Cマウントレンズを使えるミラーレス機の試作品
を、どこかのカメラショーで参考出品した模様だ。
まあ「FA用レンズは巨大マーケットである」という
点での同機の企画コンセプトであろう。

事実はそうだが、残念ながらFA用レンズ(またはシネレンズ)
のCマウントは、一般カメラユーザーとの接点は皆無に近い。
だから、当然、その産業用Cマウント機は、お蔵入りと
なってしまい、カメラとして発売される事は無かった。

恐らくだが、展示会への来場者の反応も、例え
マニア層の客であったとしても、
客「Cマウント? 何それ? 昔のコンタックスとか
  ニコンのレンジ機のレンズが使えるの?
  ・・え?使えない? じゃあ、いらないです」
と、冷淡な反応しか無かった事であろう。

「業界」の感覚では、産業(工業、監視等)CCTV分野
は超巨大マーケットであろうが、一般写真ユーザーから
したら、まったく未知の分野である訳だ。

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では、次のシステム。
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レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL 45mm/f1.8
(中古購入価格 16,000円)(実用価値 約16,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

2011年に発売された中望遠画角AF単焦点レンズ。
OLYMPUSのWEBでは「ママのためのファミリーポートレート
レンズ」として紹介されているので、入門層向けという
印象があるかと思うが、その実態は、かなりの本格派の
高描写力を持つレンズである。
_c0032138_15121270.jpg
スペックからは、銀塩時代の(MF)小口径標準レンズ、
つまり完成度の極めて高い5群6枚変形ダブルガウス型
構成を想像し、「そのジェネリックか?」という予想も
つくかも知れないが、実態はさにあらず。
8群9枚、内2枚はE-HR(低分散高屈折率ガラス)レンズ
を含んだ現代的な新設計である。

エントリー層向けという印象は、本レンズの価格が安い
(新品で35,000円、中古は1万円台)事から来る要素
も大きい事であろう。だが、この高描写力と小型軽量
そして作りの良さ(高品質)である事を鑑みると、
「とてもコスパの良いレンズ」と評価するのが自然だ。

良い点ばかりでは無く、弱点も存在する。
まず、これはミラーレス機の多くの純正レンズで同様
であるが、MF時に無限回転式ピントリングである事だ。
この結果、高度なMF技法が使えず、大きなストレスとなる。

知人の上級マニア氏は、本レンズを入手はしたが、
マ「MFがやりにくい。これだったら銀塩MF時代の、
 (完成度が高い)MF50mm/F1.8級レンズを使った
  方がずっとマシだよ、スペックも殆ど同じだし、
  写りもあまり変わらないよ」
と言っていた。

まあ、半分程度は私も同意できる意見だ。
ただまあ、同意できない部分としては、少しだけ本レンズ
の方が、銀塩MF50mm/F1.8級レンズよりも、描写力に
優れる点である。

その僅かな差異を求める為に、(マニア層において)
本レンズを購入するか否か?の判断は微妙なところだ。

ただまあ、マニア層以外の初級中級層においては、
本レンズは十分に推奨できる、高コスパレンズになり得る
と思う。特に、ズームレンズしか持っていない(使った
事が無い)ビギナー層では、あまりの写りの差に驚愕
してしまう可能性も高い。

それこそ、冒頭のG20/1.7のように「神レンズだ」と
ビギナー層に神格化されても不思議では無いレンズであろう。
逆に言えば、同じμ4/3機用レンズであっても、本レンズ
の方が、G20/1.7よりも神格化されるべきレンズだ。

だが、G20/1.7は、安価な在庫処分キット品としてビギナー
層でも買えたが、本レンズは単品発売しか無いので、
明確な購入意思が無い限り、絶対に買えないレンズである。
そこがビギナー層の持つ問題点、すなわち交換レンズを
買わない(買えない)、何故ならば・・
「どれを買って良いかわからないから」「高価だから」
の、前者の理由にひっかかってしまっている。
_c0032138_15121390.jpg
本MZ45/1.8を買って良いのかどうかは、ビギナー層では
自力で判断がつかない。だから「誰かが良いと言ったから」
という理由でも無い限りは、本MZ45/1.8を買うビギナー
は居ない。よって、知らないので、「神格化」などは
出来ない。在庫処分品で買ったG20/1.7の場合は、たった
1本の、そのレンズだけを見て、「ズームレンズとは
次元が違う」と、思い込んだだけの話であろう。
まあ、そんな状態で評価をする方が不自然な話だ。

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では、6本目のシステム。
_c0032138_15121396.jpg
ミラーは、TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
(中古購入価格 18,000円)(実用価値 約15,000円)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)

2012年発売のMF超望遠ミラー(レンズ)である。
μ4/3機専用であり、換算600mmとなる。
新鋭ミラーだけあって、電子接点にも対応している。
_c0032138_15121352.jpg
個人的には「トンボ等の昆虫の撮影専用レンズ」
として、有益に活用している。
近づくと逃げる小さい昆虫、といった中距離撮影に
抜群の対応力があるレンズである。
換算600mmの超望遠で、しかも最短撮影距離80cmは
短く、こういった自然観察用途には最適である。

ただし、様々な弱点も存在するレンズだ。
まずMFレンズであり、しかもピント合わせが難しい。
回転角が微妙であり、かつガラスレンズのピント変化の
感覚(感触)と、ミラー(レンズ)のそれは異なるのだ。
加えて、本レンズには「ピントリング」というものが
ちゃんと存在せず、ツルツルの鏡筒を持って廻して
あげる必要がある。

一応電子接点は対応しているので、自動拡大とか、
MF距離指標は出るし、ピーキング機能も勿論有効である。
ただ、どれも精度的にはイマイチ、本レンズの被写界深度
は想像以上に浅く、かつ、明確なコントラスト差分が
出るような解像力の高いレンズでも無い。
被写界深度を増やして対応したいと思っても、ほぼ全ての
ミラー(レンズ)には絞り機構が無い為に、被写界深度
調整が不可能に近い。
この課題は、同時にボケ質(破綻)の調整が出来ない、
という事と、ほぼ等価である。
特にミラー(レンズ)では、特徴的な「リングボケ」が
出る為、これをコントロールする事が、大変困難だ。

個人的には、これら、被写界深度とボケ質調整の為、
「撮影距離を変え(後ろに下がる)ながら、デジタル
 ズーム機能を併用して画角を調整する」という裏技を
使う場合が多い。

まあ、トリミングと等価とは言える撮影技法ではあるが、
トリミングと違う点は、1つは、撮影時点でその画角調整
が行えるので、後の編集コスト(手間)が減少する事がある。
また、このシステムにおいては無関係ではあるが、他社の
センサー・クロップ方式のデジタル拡大システムの場合は、
変化した画角での輝度分布に露出計(値)が追従するので、
露出が正確である(トリミング方式だと、画面全体で露出が
決定されている)という利点がある。
_c0032138_15122056.jpg
本レンズの総括であるが、使いこなしがやや難しいが、
あまり細かい事を言わなければ、中級層以上であれば、
特に問題なく使用できるであろう。
「唯一無二」という長所を持つレンズであり、それは
現代においては希少だ。

何故ならば、カメラ・レンズ市場が縮退してしまった
現代においては、誰もが欲しがるレンズでないと
売れないからであり、あまりに特殊なスペックのレンズ
は、メーカーにとっても「売れないリスク」があるから
そう簡単に企画が通るものでは無いからだ。

高価な(高価すぎる)レンズに反応するのは、初級中級層
ばかりになってしまい、結局、有名で良く売れて儲かる
レンズしかメーカーや流通市場は注力しない。
だから結局、初級中級層では「大三元レンズ」といった
話しかしない訳であろう。

結局、他のレンズの事など、何も知らないから、そういう
風に有名なものばかりしか欲しいと思わない訳だ。
別に、それで市場が潤っている(初級層が高額レンズに
投資してくれる)から、それでも良いとは思うが・・
マニア的視点からは、そういう風に「メーカーや流通が
売りたい」レンズばかりが市場に出回ってしまうと、
マニアックな視点から魅かれるレンズが皆無になってしまう。

本レンズを発売したTOKINAですらも、本レンズの後は、
このようなユニークなコンセプトのレンズは1本も発売
していない、恐らくは本レンズも売れなかった訳であり、
(注:すでにディスコン(生産終了)となっている)

ちょっと「懲りた」のかも知れない。

だけど、売れないのは何故か? それはレンズの事を何も
知らないビギナー層ばかりが、購買者層(コンシュマー)に
なってしまった事が最大の原因であろう。
だけど、ここは「鶏が先か、卵が先か」の問題だ、
ありきたりのスペックのレンズばかりしか無いから、
その市場に興味を持つのはビギナーばかりとなってしまう、
マニア層が興味を持つような新機材はいっさい登場せず、
マニア層としては、この「荒波の時代」が過ぎるまでは、
しばらくは水面下でじっと潜んでおくしか無いであろう。

カメラ界の歴史では、過去何度もあった事だが、市場が
慢性化・マンネリ化して冷え込んでいくと、必ずそれを
打開する新カテゴリーの製品群が現れる、何故ならば、
そうしないと商品が売れずに、メーカーは事業を維持
できなくなるからだ。

ただまあ、2010年代末の、ミラーレス機のフルサイズ化
は、そのブレイク・スルーを狙ったものの、不発であった
事であろう。単純に言えば、価格が高すぎるのである。
「高価なもの=良いもの」という公式が、もはや成り立って
いない事は、ちょっと賢いユーザーであれば、もう十分に
知っている。よって、そうした「子供だまし」の市場戦略は、
もう通用しない訳だ。

「鶏が先か、卵が先か」の課題は、まずメーカー側で
正当性のある回答(商品)を提案しなくてはならない、
その後ユーザー層が、その答えについて評価する訳だ。
回答が間違っていたり、お茶を濁すような製品群しか
なければ、ユーザー(消費者)側は全く購買意欲が沸いて
来ない。悪い意味でのプレミアム価格化(=無駄に高価)
は、もうこりごりな訳だ。

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では、今回ラストのシステム。
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レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN100mm/f2 N
(新古購入価格 19,000円)(実用価値 約13,000円)
カメラは、NIKON D5300(APS-C機)

2018年頃(?)に発売された、フルサイズ対応AF中望遠
レンズ。

CANON製EFレンズの光学系の完全コピー品であり、
オリジナルは、CANON EF100mm/F2 USM(1991年)
である。
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ただし、YONGNUOのレンズにはUSM(超音波モーター)は
搭載されていない。だがDC(直流)モーター内蔵であるから、
NIKON Fマウント版レンズでは、初級機(D3000系、D5000系
あるいは2000年代Dフタ桁機、等)の機体でもAFが効く。

カメラ・レンズ市場の縮退が進み、全ての新機材が
不条理に高価格化してしまった日本市場に向け、
中国を初めとする海外陣営が、低価格帯商品が空洞化した
日本市場に向け、続々と参入してきたのは、2010年代
後半の話であった。

本レンズも、基本的にはその類の商品ではあるのだが、
これについては、CANONの海外生産中止等の、裏事情が
関係していると推測している。
ただ、その話は、ダークな部分もあろうから、あまり
そこを細かく詮索しても始まらない。

マニア的視点からすれば、単純に、出てきた製品が、
ある種の撮影目的に合致するか? コスパは良いのか?
それにより購入するに値するレンズなのか?
そおあたりを判断するのみである。

さて、本レンズの長所短所であるが、長所は2点、
まず、本レンズの企画開発は、1980年代後半のCANON
によるものだ。この頃のCANONでは、初期(銀塩)EOS
の優位性を磐石にする為、交換レンズの性能を高める事に

注力していた。そして時代は、おりしもバブル期である、
「良いモノ」「凄いモノ」であれば、値段が高くても
売れるから、「イケイケ・ドンドン」で商品企画が進め
られていく。CANON EF100/2 USMは、そこまでは
エキセントリックでは無いが、良くまとめられた高性能
レンズである(注:銀塩時代に愛用、現在未所有)

その光学系を引き継いだ事で、本レンズは30年以上も
前のセミ・オールドレンズ相当ながら、比較的高描写力
である事が、最大の長所であろう。
実用上の不満点はあまり無く、私の個人評価DBには
描写表現力=4点(注:5点満点)が書き込まれている。
また、価格が安価であるから、コスパも当然良い。
惜しむらくは、新品では無く、中古で購入したならば
さらにコスパ点は上がるのだが、そこまでは中古品は
流通が潤沢では無い点が課題であろうか。

弱点だが、USMが搭載されていない事で、AF精度・速度
に不満がある事だ、速度はともかく、精度については
回避が難しいので困ってしまう。
というのも、MFに切り替えて使用するのは問題があって、
まず、DCモーターであるから、シームレスにMFに移行
する事が出来ず、必ずスイッチでMFに切り替えて使う
必要がある、これはかなり不便である。
それと、今回使用機(D5300)のような初級機の
ファインダーとスクリーンでは、MF性能は無いに等しく、
目視でのMF操作は大変困難か、不可能と言っても良い。

まあ、一眼レフでは無く、ミラーレス機に装着し、
MFオンリーで、高精細EVF+ピーキング機能で回避するのが
適正であろうが、「そこまでやるべきレンズなのか?」
という心理もまたある。
多少ピンボケがあっても問題が無い、趣味撮影用途専用の
レンズであろう。

また、一部のNIKON機では露出もバラつく。
でもこれは本レンズに限らず、多くのNIKON製デジタル一眼
レフの近代のものでは、NIKON純正レンズ以外の多くの
レンズで、露出がバラついたりアンダー露出になってしまう。
酷い「仕様的差別化」(=他社製レンズを、わざと使い
難くし、購入や使用を抑制する)という可能性が極めて
高いが、あまり公正な製品設計スタンスとは言えない話だ。
市場倫理、つまりコンプライアンスとか独占禁止法とか、
そのあたりにひっかかりそうなギリギリのグレイゾーン
であると思う、メーカーは当然そういう事は確信犯であるが
ユーザーが、そういう事に誰も気づかなければ、そういう
状態が普通になってしまうのだ。

事実、野鳥等を撮っているシニアのNIKON党のビギナー層の
間では、「TAMRONのレンズは暗く写る、だからTAMRONを
買わず、NIKON純正レンズを買え」という噂話(定説)が
広まっている模様だ(実際にその話を聞いている)
これについては、TAMRON側のレンズに問題点があるのだ、
とNIKON党のビギナー層は解釈しているのだろうが・・

実際には逆であり、これはNIKON機側の問題だ。
露出を制御するのはカメラ側である事は当然であり、
レンズには何も問題は無い。そのレンズを他機に装着
すれば、決して暗く写る事などは、有り得ない話である。
だからこれはプロトコルの問題であり、NIKON機側で
「あ、これは他社レンズだ」と解釈したのであれば、
意図的あるいは過失(バグ)により、正しい露出制御が
行われていない状態である。
それは、課題となる当該レンズを、様々な時代のNIKON機
に装着してみて実験すれば、容易に理解できる話である。

そして、露出アンダーになる事くらいは、適切な露出補正
操作の利用や、アフターレタッチで解決できる課題であり
上級層から見れば、重欠点には成り得ない話である。
つまり「TAMRONレンズは暗く写る」とか、あるいは
「このカメラは色味が悪い」とか言っている時点で、
それの回避手段(手法、技法)を、まるでわかっていない
完全なビギナー層での話だ。

シニア層だからといって、何十年も写真を撮っていて
何でも知っているベテランや上級層ばかりでは無い事は
明白であるし、そもそもデジタル時代に切り替わった時点
で、それまでのフィルム時代の知識の大半は役に立たなく
なってしまっている。だから、そういう点では、何十年
写真をやっていたとしても、デジタルの知識がなければ
それば「ビギナー層」と判断せざるを得ないであろう。

苦言はあまり言いたくは無いが、「間違った事を広める」
というスタンスには全く賛同できない。
自分が間違っていないと思うのだったら、何らかの実験を
して検証をすれば良いでは無いか、それをやらずして
思い込みだけで物事を語っているからNGだ、という訳だ。
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本レンズYN100/2の総括であるが、光学特性が優れて
る為、上手く使いこなせるのであれば有益なレンズだ。
だが、AF/MFや露出の弱点を回避できるスキルがあっての
話であり、中級マニア層以上向け、という事にしておこう。

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では、最後に各選出レンズの評価点を記載する。

1)G20/1.7 =3.3点
2)AT-X124 =3.2点
3)SP90/2.8 =3.7点
4)SV1214H =2.9点→非推奨
5)MZ45/1.8 =3.4点
6)MF300/6.3=4.1点
7)YN100/2 =3.7点

今回の1万円級対戦においては、「Best Buy」は
「TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO」で
決まりであろう。
小型軽量で超々望遠画角が得られ、近接撮影にも強い。
使いこなしはやや難しいが、ビギナー層以外には、
誰にでも推奨できるレンズである。

他の好評価レンズとしては、定番の「TAMRON SP
90/2.8 Macro(シリーズ)」がある。
初期のAF等倍バージョンでは、1万円前後と安価で
買い易い中古相場であり、コスパがとても良い。
後継型も色々とあるので、予算に応じて、よりどり
みどりである、まさしく全ユーザー層必携のマクロだ。

YONGNUO 100/2も好評価だが、これはマニア層向けだ。
一般層に向けては、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL 45mm
/F1.8が推奨できるレンズである。ズームを脱却し単焦点を

試してみたい初級層には特に推奨できる高性能レンズだ。

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さて、今回の「1万円級レンズ(Part2)編」記事は、
このあたり迄で、次回記事に続く。


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