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特殊レンズ・スーパーマニアックス(72)24~28mmマニアックス(後編)

本シリーズ記事では、やや特殊な交換レンズを、
カテゴリー別に紹介している。
今回は「24~28mmマニアックス」という主旨で、
前編記事に引き続き、一眼レフ用(稀にミラーレス機用)
の実焦点距離が24mm~28mmの、マニアックな単焦点
レンズを10本取り上げよう。

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、NIKON Ai AF NIKKOR 28mm/f2.8S
(中古購入価格 12,000円)
カメラは、NIKON Df(フルサイズ機)

まず最初に注意点、NIKKORレンズ(注:全て大文字推奨)
におけるAi型番は、昔から「Ai」と書かれるのが普通で
あったのが、近年のNIKONのサイトでは「AI」と全て
大文字で書かれている。古今東西、全ての書籍、文献、
マニアのサイト等では、必ず「Ai」と書かれているので、
NIKONのサイト上の記載には、物凄く違和感を感じる。

どこかで「AIに変更しましょう」と決めたのか?(注:
そういうアナウンスは記憶に無い)、はたまた、サイト
を作った人や確認した人達が、全て間違ってしまったか、
そのどちらかであろう。(まさか、写真分野とは関係無い
門外漢や入門層のユーザーに、”AI(人工知能)が搭載
されたレンズだ”と勘違いさせる為の意図的な変更では
無い事を願うが・・)

なお、元々の「Ai」の意味(由来)は、最大絞り値を
情報伝達する「Automatic Maximum Aperture Indexing」
という意味だと聞く。しかし、これとて、この略語の
出自が広まったのは比較的近年であり、従来は「Ai」
の意味や、何を省略したものか?は、不明であった。
で、「Ai」(絞り値連動)方式が出来た時(1977年頃)
から、ずっと「Ai」と呼ばれているし、世間一般的にも、
その呼び名が定着している。

まあ今時の人は、そんな半世紀近くも前の構造や用語は
何も知らないのかも知れない。でも、マニア層は、ずっと
正しく「Aiと呼ぶものだ」と歴史を継承しつづけている
のに、本家本元のNIKONが、そう書かないのは変な話だ。
(Webのみならず、カメラ等の説明書もAIとなっているが
NIKON Dfのカメラ上のアイコンは、「Ai」のままだ)
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さて、余談が長くなったが、本レンズの紹介に移る、
1986年発売のAF広角単焦点レンズだ。
前編記事で登場したAi NIKKOR 28mm/f2.8(1977年)
のAF版という訳では無い。

NIKONでは1970年代から1980年代にかけ、28mm/F2.8
レンズの変更が数回あり、それらはマイナーチェンジ
ではなく、まるっきり別物とも言える変更も多かった。

その理由は、この時期、一眼レフではMFからAF化が
推進された訳であり、それにともなう変更(例:旧来
の構造のままでのAF化は困難等)であった可能性が高い。

私は旧来、シニアのマニア層等が、Ai、Ai~S、AiAF~S、
AiAF~D等の型番の差を、あまりに気にする事に対して
「型番が違っても、レンズ光学系は同じである場合が多い、
 現代においては、多くのNIKON一眼レフでは、あまりに
 古い時代のレンズは使用できないし、他社ミラーレス機
 で使うならば、絞り環があれば、どの型番を使っても
 同じ。だから、細かい型番の差異は気にしないで良い」
と、伝えてきたのだが・・

この時代の28mm/F2.8だけは例外的である。具体的には
1974年:New NIKKOR 28mm/f2.8 (非Ai、未所有)
1977年:Ai NIKKOR 28mm/f2.8  (前記事で紹介)
1981年:Ai NIKKOR 28mm/f2.8S (現在未所有)
1986年:Ai AF NIKKOR 28mm/f2.8S (本記事)
1991年:Ai AF NIKKOR 28mm/f2.8S(New)(未所有)
1994年:Ai AF NIKKOR 28mm/f2.8D (未所有)
・・となる。

ここで個々のレンズの細かい差異を述べていくと際限なく
文字数が増えるし、そういう細かい差異を記載したWEB等
は他にいくらでもある。本ブログで実用性や実用価値等を
検証して書く事ならば意味があるが、残念ながら未所有の
レンズが多く含まれている為、ここでユーザーとしての
意見を書く事は出来ない。

レンズの評価は、「必ず自身が所有しているもので無いと
やってはならない」という持論だ、そうでなくて「ここが
こう変わりました」というだけの情報は、あまり有益では
無い、と思っているからだ。(そして、そういう前後比較
の記事は、実機を所有していなくても容易に執筆できる為、
個人的には「単なる宣伝、単なるアクセス増加狙い」の
記事だとみなしていて、参考にはしないようにしている)

さて、本AiAF28/2.8であるが、既に本シリーズ第29回
AiAFニッコール編でも紹介している。その記事でも書いたが
特徴があまり無く、個人的には好きなレンズでは無い。
購入理由は、銀塩時代に、単にNIKONのAF機に付ける
28mm広角を必要としただけの話である。

実用性としては、NIKON製28mmレンズとしては最短撮影
距離が20cmと最も優秀な、Ai NIKKOR 28mm/f2.8S
(1981年、後に再生産。譲渡により現在未所有)が
有力だ。そのレンズであれば、その後の時代においても
NIKONデジタル一眼レフの高級機や、各社ミラーレス機で
高い汎用性と実用価値を得る事が出来る。

また、現代においてNIKONのデジタル一眼レフ用の単焦点
レンズを揃えるならば、純正では無く、2010年代後半
よりの他社新鋭単焦点、具体的には、TAMRON SP単焦点
シリーズ、またはSIGMA Art Line単焦点シリーズが向く
と思う。私はNIKON機用には、TAMRON SPシリーズを
充当しているが、現状、SPには35mm,45mm,85mmしか
無く、広角単焦点が無い。SIGMA Art Lineには広角が
あるが、そちらは、個人的にはCANON EFマウントで
揃えているので、ちょっとごっちゃにするのは好まない。


あるいは、少し古いが2000年代の「SIGMA広角3兄弟」
(本シリーズ第52回記事)を充てるのも良いかも知れない。
これらは、いずれも最短撮影距離、開放F値、描写力等で
「一芸に秀でた」レンズであるからだ。

まあつまり、現代においては、28mm広角は標準ズーム等
にも含まれる画角であり、いまさら古い時代のAF単焦点
28mmが必要とされたり、売れる、という状況では無い。
あえて単焦点を買うならば、何らかの個性的な、つまり
そのレンズで無いと得られないような特徴を持つものしか
買う必要が無い訳だ、そして前述のSIGMA製品が、
そうした目的には良く合致する、という事となる。

少し説明が長くなった、以下はペースアップして行こう。

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では、2本目のシステム
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レンズは、MINOLTA AF 28mm/f2 (初期型)
(中古購入価格 18,000円)
カメラは、SONY α700(APS-C機)

1980年代後半頃と思われる、α用AF大口径AF広角レンズ。

前編記事でも書いたが、28mm/F2というスペックで
長鏡筒(長焦点)型のレンズは、個人的に描写力が
好みでは無い。では何故そうしたレンズを複数持って
いるか?と言えば、長鏡筒28mm/F2が実用的か否か?
という点を検証する為に、各社の28mm/F2を買い続け
数本買った段階で「もういい、わかった!」となった
次第なのだ。「わかった」というのは、「残念ながら
好みでは無い」と言う意味であり、ぶっちゃけ言えば
「実用的な描写性能に到達していない」という事だ。
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結局のところ、実用的かつ、性能的にもコスパ的にも
許容範囲である大口径広角が登場するのは、銀塩末期
2000年代初頭の「SIGMA広角3兄弟」以降の時代だ。

まあ、いまさら、この古い時代の設計の「28mm/F2級」
レンズを指名買いする必然性は殆ど無い、それがあると
したら、レンズの歴史を研究する意味での資料として
のみの目的、という雰囲気となっている。

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さて、3本目のシステム
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レンズは、VIVITAR 28mm/f2.8
(中古購入価格 8,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G1(μ4/3機)

VIVITAR(ビビター)は、米国の企業であり、戦後に
日本等の各国から、カメラ関連製品の輸入販売を行う
商社として発展した。

1960年代には、自社ブランド「VIVITAR」を立ち上げ、
交換レンズの販売に関しては主に日本の各レンズメーカー
にOEM生産を委託した。

以降、1970年代~1980年代では、OEM生産を行う日本の
レンズメーカーは増え、公開されている範囲においては、
現代にまで続くTOKINA、COSINA、OLYMPUS、SIGMAや
過去に交換レンズを発売していたKIRON(キノ精密工業)、
小堀製作所(TEFNON)、KOMINE(コミネ)(注:日東光学
の事であろうか?) そして、日本製以外では、SAMYANG

(サムヤン、韓国製)等がある。

また、VIVITARは、交換レンズのみならず、フラッシュや
トイカメラのブランドとしても良く知られている。

2000年代、創業者の死去により「VIVITAR」のブランドは
宙に浮き、様々な企業を転々とした模様だが、2008年に
米国の家電メーカー「Sakar」が、そのブランドを取得、
以降は、低価格帯デジタルコンパクトカメラ等を販売
していた。なお、依然、交換レンズも販売されている
模様だが、2010年前後から以降は、韓国SAMYANG製の
OEM製品が多いと聞く。
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さて、そういう歴史を踏まえて、本VIVITAR 28mm/f2.8
であるが・・・恐らくはTOKINA製である。
前述のように、多くの日本メーカーがVIVITAR製品の製造
に係わっていた様子であるし、その製品ラインナップは
数十種類もある、また、生産メーカーは個々のレンズ毎に
バラバラの状態である。

この様子だと、VIVITAR銘レンズの性能や描写力は、
「十把一絡げ」に語る事はできず、個々のレンズ毎に、
個別に判断するしか無いであろう。

まあでも、私の場合は、銀塩時代に本VIVITAR28/2.8
のみを入手し、安価ではあったが平凡な性能は個人的に
あまり好きになれず、以降、VIVITAR銘製品を購入する
事は無かった。だからまあ、個々のVIVITARレンズの
性能差などは、良くわからない。

本VIVITAR28/2.8であるが、特筆すべき性能を持たない
平凡なMF広角レンズである、写りは可も無く不可も無し。
まあ、今時、(逆輸入品である)本レンズや、他の
VIVITARレンズを国内で購入する事は困難だと思われるし
指名買いをする意味も無いであろう。

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さて、4本目のシステム
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レンズは、Argus Cintar 28mm/f2.8
(中古購入価格 4,000円)
カメラは、SONY NEX-3(APS-C機)

ARGUS(アーガス)も、前項VIVITARに引き続き米国の
カメラメーカーである、ARGUSのカメラというと、
戦前1939年から戦後1966年頃まで大量に(約200万台)
生産された、普及版コンパクトカメラ「ARGUS C3」が
良く知られていると思う。
この「ARGUS C3」のレンズは交換が可能な為、これを
他のマウントに改造して使うマニアも居ると聞く。

(注:2021年より、中国メーカーの「LAOWA」が、
「LAOWA Argus」ブランドでの新型レンズを数機種
発売しているが、このArgus銘が、ここで言う米国の
カメラメーカーと関係があるかどうか?は不明だ)

さて、本レンズ Argus Cintar 28/2.8であるが、
M42マウントでの交換レンズで、発売年は不明だが、
M42という事から推察するに、1970年代頃では
なかろうか? なお、他の情報としては、
*本レンズは、各種MFマウント用のバージョンがあった。
(この点からすると、1970年代後半頃の製品という
 可能性もある)
*本レンズは、富岡光学製である。
・・の2つがあるが、いずれも確証が持てない。

「富岡光学」と言えば、YASHICAや、かの国産CONTAX
のレンズを製造していた伝説的なレンズメーカーである。
上級マニアの間では「神格化」されるほど(=つまり、
CONTAXレンズを作っていたから)のメーカーである。

ただまあ、メーカー名だけ聞いて、レンズの良し悪しを
判断するのは早計である。富岡光学によるOEM供給だと
しても、ARGUS社側が、例えば「5000円位で作ってくれ」
とか言われたら、その価格に見合うようにコストダウン
したレンズしか作りようが無いからだ。

事実、本レンズは経年劣化からか、ヘリコイド等の各部の
動きが相当に怪しい。なんでも内部構造はかなり複雑な
模様で、修理マニアですら難儀すると聞く。
でも複雑な事と、壊れ易い(または壊れ難い)事も等価
では無いので・・ 動作不調は、古いレンズ故に、やむを
得ない節もある。
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描写力は、凡庸、あるいは正直に言えば標準以下だ。
解像感が低く、逆光耐性も低い。
逆光に関しては、どうもこのレンズは多層コーティング
されている気配が無い、まあ、そうであればしかたない。
最短撮影距離も40cmと長目であり、全体的に性能が低く
実用的水準に達していない。

まあ、やはり富岡光学製(?)と言っても、設計上の
コンセプトや、制限事項(例:コスト制限等)により、
常に優れた性能のレンズを製造できる訳では無いのだろう。

そういえば、かのコシナだって、銀塩時代にはブランド力が
全く無く、ローコストだが低性能なレンズを販売していたが
フォクトレンダーやツァイスのブランドを取得したとたん、
恐ろしく高性能なレンズを販売するようになったでは
ないか、これはつまり「ローコストなレンズを作る必要が
無くなったから」であり、ブランドバリューさえあれば、
製造コストを考えず、思い切り贅沢な設計で、高価に売る
事ができる、という市場の仕組みだ。

まあ、基本、どのOEMメーカーであっても客先の要望により、
安価なレンズも高価なレンズも作れる、それだけの技術力が
無いとOEMメーカーなんてやっていられないのだろう。

結局、製品の値段を決めるのは、ブランド力であるとか、
実際の性能にはあまり関係しない部分が大半なのだ。
ARGUSだから写りが悪いとか、富岡光学だから写りが良い、
とか、そんな事はまるで無い。 

総括だが、本Argus Cintar 28/2.8も、現代の視点では
実用的視点からは推奨できるレンズだとは言えない。
まあ、「マニア向け研究用途」、そんな感じであろう。

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では、5本目のシステム
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レンズは、安原製作所 MOMO 100 28mm/f6.4 Soft
(新品購入価格 21,800円)
カメラは、PANASONIC DMC-GF1(μ4/3機)

2016年発売の単焦点MF広角ソフトフォーカスレンズ。
広角のソフト(軟焦点)レンズは希少である。

ハイコスパ名玉編第4回記事等、多数の記事で紹介して
いるレンズであり、重複する為、説明は最小限としよう。
(注:2020年の、安原製作所の創業者、安原氏の
逝去により、現在、このレンズの新品入手は困難だ)
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ソフトフォーカスレンズは、銀塩時代には流行していて、
サードパーティのみならず、メーカー純正品もいくつか
あったのだが、AF化が困難であったり、撮影技法上での
流行の要素もあり、1990年代頃からだんだんと減少、
2010年代以降においては、サードパーティ製のMF版が
数機種販売されているのみである。

しかし「デジタルではソフト加工(編集、エフェクト)も
容易だから、ソフトレンズは不用になった」と考えるのは
ちょっと認識が異なる。それは、実際のソフトレンズを
用いたソフト描写と、その他の代替の用法(エフェクト、
レタッチ編集、ソフトフィルター使用)等とは、描写傾向
が、かなり異なるからだ、つまり、厳密に言うならば、
「ソフトレンズの描写は、ソフトレンズでしか得られない」
という事となる。

その他、ソフトレンズについて説明しだすと膨大な文字数
を必要としてしまう。さらなる詳細については、本シリーズ
第7回「ソフトレンズ編」を参照していただければ幸いだ。

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さて、6本目のシステム
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レンズは、PENTAX SMC TAKUMAR 28mm/f3.5
(中古購入価格 12,000円)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)

1970年代のMF単焦点広角レンズ、M42マウントである。
SMCは多層コーティングの意味であり、レンズ上の
表記では、「Super-Multi-Coted」となった物も多いが、
これはさすがに長いので、一般的には、この仕様は
SMCと記載(or後述)する。記載する場合は、レンズ上
表記の頭文字を取って「SMC」と大文字で綴る。
(この時代のPENTAXのレンズ名は、SMCT/SMC-T/SMC T
等と、省略して記載される場合が多い。
それと、TAKUMARは、この時代から全て大文字表記だ)

この「SMC」技術は、当時、他社レンズに対しての性能
優位性があったので、一種の「ブランド」として扱われ、
その後の時代では、PENTAXのレンズ全般で「smc PENTAX」
という商品名となる。
ただし、この場合では「smc」(smc)と、小文字に
見えるロゴデザインを採用している。

この商品名は、そこからおよそ40年近くも続き、
PENTAXがRICOHの傘下となった2010年代前半より、
新型コーティング技術の採用により、順次「HD PENTAX」
名称のレンズに置き換わっている。

さて、M42マウントのPENTAX一眼レフの代表的機種
「ASAHI PENTAX SP」シリーズは、累計350万台とも
言われる大ヒットカメラである。

PENTAXのM42マウントレンズはTakumar、Auto-Takumar
Super-Takumar、そしてSMC TAKUMARと変遷したのだが、
Auto-Takumar以前のPENTAX M42レンズには、28mm
(以下)の広角レンズはラインナップされていないか、
または殆ど普及していない(恐らく高価であったのだろう)

状態であった。 

よって、1970年代位まででは、広角と言えば、35mmの
焦点距離のレンズの事であり、1970年代になって、やっと
「広角と言えば28mm」の意識が市場に広まっていったと
思われる。事実、私の知人で、この1970年代に映像業務
に係わっていた方(まあ、専門家だ)が「ワイドレンズだ」
と言いながら譲渡してくれたレンズが35mmであったので。
”え? ワイドと言えば、最低でも28mmとかじゃあ??”
と思った、という事例もあった。 

こうしたユーザーの認識である為、Takumar系レンズで
28mmは、後年の中古市場でやや入手しずらく(すなわち
流通数が少ない)、さらに24mm(F3.5)は、もっとレア
となっている。(よって、中古相場も高価であった)
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さて、本レンズ固有の話になるが、凡庸な性能の
レンズである、開放F値は、この後の時代の28/2.8より
半段暗いF3.5、ただまあ、ここは大差無いのではあるが
最短撮影距離は、この後の時代の平均(水準)30cmよりも
だいぶ長い40cmであり、焦点距離10倍則を満たしていない。

ただ、SMC仕様により、描写力や逆光耐性における不満は
あまり無い。

なお、本レンズは数年後には、Kマウント版にリニューアル
されている。そちら(smc PENTAX 28mm/f3.5)も
一応所有しているが、私はこれまで「単なるマウント変更
製品である」と誤解していて、紹介記事でもどちらかのみを
取り上げる事が多かった(事実、このシリーズ記事でも、
Kマウント版の紹介は割愛している)
だが、実はKマウント版では、最短撮影距離が30cmまで
短縮されている。これは、当時の市場水準に合わせたので
あろうか? そして、この為による変更か? レンズ構成
も、M42版とKマウント版では異なる事がわかった。

まあ、本SMC T28/3.5は、場合により、「広角と言えば
28mm」という概念を世間に定着させたレンズであったの
かも知れない、当時のユーザー心理の詳細は、もう調べ
ようも無いのだが、もし、そうであれば本レンズの
歴史的意義は大きいかも知れない。

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では、7本目のシステム
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レンズは、SIGMA Z 28mm/f2.8
(中古購入価格 6,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5Ⅱ Limited(μ4/3機)

出自不明、詳細不明のMF広角レンズ。
滅多に本ブログで登場する事はなく、ミラーレス・
マニアックス第44回記事以来、5年以上ぶりとなる。

恐らくは、1970年代後半頃のレンズ。OMマウント版
である。(注:Zは単なる型番であり、勿論、NIKON
Zマウント等とは何の関係もない)
最短撮影距離は、40cmまでは目盛りがあるが、さらに
もう少し寄れ、30cm台前半だと思われる。

銀塩当時のOMシステムの28mmレンズには、F2版、
F2.8版、F3.5版の3種類が存在する、これはつまり
ちょっと前述したが、1970年代に28mm広角レンズの
需要が急増したからではなかろうか? さもなければ
ここまで多くの28mmはメーカー側としてもラインナップ
しないと思う。

では何故、本レンズが市場に存在するのか?という点だが、
まあ、本レンズはOMマウント版だけでは無い事が1つ、
そして、ここも推測だが、各メーカー純正品よりも、
SIGMA製品の方が安価であるからだ。つまり、流行の(?)
28mmを買おうにも、メーカー純正品はやや高価だ、なので、
SIGMA又は他のレンズ・サードパーティ製の28mm(又は
それ以下の広角)製品が市場で受け入れられる余地はある。
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本レンズは、凡庸な性能・仕様であり、特に秀でた点は
見受けられない。まあ、なので、殆ど使わないレンズと
なってしまい、現在なお保有している理由は、レンズの
歴史的な変遷の研究用でしか無い。

弱点だが、大柄なレンズである、という点が大きいだろう。
特に同じOMマウントにおいては、小型軽量(かつ優秀)な
OLYMPUS純正OM28/3.5に比べて、相当に大きく感じる。

ただし、この点も、現代の感覚では、小型軽量で高性能な
レンズは、歓迎すべき長所となりうるのだが・・
その当時は、もしかするとそうでは無かったかも知れない。

つまり、1970年代では、まだ多くの一眼レフには、AFは
おろかAEすら搭載されていなく、一般層が使う撮影機材
としては敷居が高かった状態だ。また、当時の所得水準を
考慮すると、当然、高価な贅沢品である一眼レフを所有
している人は、周囲に対して、その価格的にも技能的にも
「ステータス」をアピールする事が出来る。

つまり「一眼レフだぞ、どうだ、凄いだろう?」と周囲に
自慢できる、という意味である。

そうした志向性が強いユーザーにおいては、「大きい
カメラやレンズの方が、さらにそのステータスを強調
できる」と考える人も多かった。だから、小型軽量の
レンズは、むしろ「貧相で格好悪い」と思われる要素も
当時はあった模様なのだ。
 
不思議な(変な)話に感じるかも知れないが、まあその
当時のみならず、現代でも、まだその感覚を持っている
ベテラン層は残っていると思われ、観光地や撮影スポット
等で、別に写真を撮る訳でもなく、大型の望遠レンズ等を
三脚につけて、周囲の視線を集めたい(注目されたい)と
(意識的にも無意識的にも)思っているアマチュア層は
とても多い。 これらのユーザー層の中では、例えば
70歳代のシニア層・団塊世代層であれば、勿論、この
1970年代前後の時代を実際に生きてきている、ただし
当時まだ20代~30代の年齢であれば、高価な高級一眼
レフや大型(望遠や大口径)レンズは、収入的にも所有
する事がまず不可能に近い。だからまあ、現代になって、
その若い頃の憧れを実現する為に、現代の高級カメラや
高価なレンズを買ってしまうのだと思われる。

その事も、現代において、ビギナー層ばかりが高額な
システムを志向する原因の1つになっているのだと
思われるが、ちなみに現代において、そのような大型
システムを使っていても、周囲へのアピールにはなり難い
であろう。むしろ逆に「写真も殆ど撮らないのに、そんな
大きく重く高価なシステムを使うなど、なんて無駄だ!」
という印象にも繋がってしまう訳だ。

余談が長くなったが、これらは重要な事だ、つまり、
「機材を購入する理由は、その機材を使う目的があって
 の事であり、周囲への自慢の意味では決して無い」
という意識がとても重要である、という意味だ。

本レンズの話がちっとも出来なかったが、現代となっては
実用的に必要とされるレンズではない、そして、そもそも
もはや中古市場でも入手困難であろう。

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さて、8本目のシステム
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レンズは、RICOH XR RIKENON 28mm/f2.8
(中古購入価格 5,000円)(以下、XR28/2.8)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

発売年不明、恐らくは1970年代末頃と思われる
単焦点MF広角レンズ。

この頃になると、28mmレンズも市民権を完全に得た
模様であり、開放F値も、F2.8が普及し、最短撮影
距離も、30cm程度で各社横並びとなっている。
まあつまり、本レンズは平凡なスペックである。

ただ、本レンズと同じ、28mmのXRリケノンには、
極めて貴重な、28mm/F3.5パンケーキ版薄型レンズ
(アースブロンズ版)が存在している。広角では当時
唯一と思われるパンケーキであるが、これは本レンズ
よりも、やや後の時代だったかも知れない
(未所有につき、詳細不明)

同じくRICOH製パンケーキとしては、XR RIKENON
45mm/f2.8が存在する。こちらは一時期所有していたが
譲渡につき現在未所有。重量55g(注:初期型では45g)
は、長らく、一眼レフ交換レンズ中の最軽量レンズで
あったと思われる。


ちなみに、現在における一眼レフ最軽量AFレンズは、
smc PENTAX-DA 40mm/f2.8 XSの52gであろう。
また、ミラーレス機用最軽量レンズは、ボディキャップ
風のPENTAX 07 MOUNT SHIELD LENS の僅かに8gだ。
(いずれも過去記事で紹介済み)
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さて、本レンズXR28/2.8だが、無個性なレンズであり
現代において指名買いの必然性は少ない。
ただし、この後の時代、RICOHの28mmレンズは、
1990年代からのGR1シリーズに受け継がれ、その機種が
高級コンパクトブームを巻き起こした他、「RICOHと
言えば28mm広角」といった、信頼とブランドを構築した。

さらに、デジタル時代になっても、GR DIGITAL/GR
シリーズでは、ずっと28mm相当の画角が「GRの標準
レンズ」として現代に至るまで定番化されている為、
本XR28/2.8を、その「GRの源流」として、研究対象
とする事は悪く無いであろう。
まあ、あくまでマニア的な視点であるが、参考まで。

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では、9本目のシステム
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レンズは、7artisans(七工匠) 25mm/f1.8
(新品購入価格 12,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)

2018年に発売された、中国製の各社ミラーレス機マウント
用のMF広角(準広角画角)単焦点レンズ(APS-C型以下対応)
「七工匠」は、日本おいては「しちこうしょう」と読む。

本シリーズ第54回「ジェネリックレンズ編」等でも紹介
しているので、本記事での説明は最小限としよう。

かいつまんで言えば、銀塩時代に完成度の高かった、
50mm/F1.8小口径標準を、1/2程度にスケールダウンし、
フランジバック長やイメージサークルをミラーレス機用に
調整した設計だと推察されるレンズだ。
(注:1/2倍設計だと、APS-C機では、僅かにイメージ
サークルが足りていない理屈だが、それによる気になる
程の周辺減光は出ていない)

つまり完成度の高いレンズ設計をベースとした事で、
安価で高性能のレンズが出来上がる、これは極めて
コスパが良い状況だ。

まあ、そういう意味では、銀塩時代の50mm小口径標準を
そのままミラーレス機で使っても良いのだが、APS-C機
以下では、中望遠画角となってしまうので、用途に
よっては、標準(50mm)や準広角(35mm)程度の換算
画角が必要とされる場合もあるだろう。
そんな際に、その用途・目的を安価に満たしてくれる
のが、こうした海外新鋭レンズ群である。
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ただジェネリックと言えども、元となった高性能レンズは
数十年も前の設計のものが殆どだ。当時は非球面レンズも
無ければ、異常低分散ガラスも使っていない。
(=まあ、”故にコストダウンできる”とも言える)
だから、各ジェネリックには元となったレンズの弱点が
殆どそのまま、引き継がれてしまっている場合も多い。
その弱点は個々のレンズで異なるので、詳細はやむなく
割愛するが、その弱点を理解し、回避して使う必要性が
あるだろう。
そういう意味では、価格が安価だからと言って、あまり
初級中級層が使いこなせるレンズ群では無いかも知れない、
弱点回避技能の習得用には向くとは思うが、基本的には
ジェネリックは、マニア向けレンズと言えるかもしれない。

ただまあ、本レンズ七工匠 25/1.8においては、弱点も
少ない為、初級中級層にも推奨できるレンズとなっている。

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、CONTAX Distagon T* 25mm/f2.8(AEG)
(中古購入価格 45,000円)
カメラは、EOS 6D (フルサイズ機)

1975年、CONTAX RTS(銀塩一眼第5回記事)の発売に
合わせて開発されたMF広角レンズ。
25mmという焦点距離は当時としては珍しく、28mmの
ディスタゴンも2機種存在してはいたが、若干広角の
こちらを志向するユーザーも多かったと思われる。

なお、後年1985年頃にはCONTAX 159MM(銀塩一眼
第12回記事)に合わせてMM化(マルチモード、つまり
シャッター優先AEやプログラムAEの実現)が行われて
いるが、その際の光学系の変更は無い。すなわち初期型
から十分に完成度の高い設計である、と推察できる。

なお、現代において、マウントアダプター利用で、
この手のY/Cマウントレンズを使用する場合は、AE型
でもMM型でも実用上の差異は無い為、レンズ構成が
同一の場合は、AE/MMの差に拘る必要は無い。

むしろ注意するべき点は、Y/C(RTS)マウントレンズの
一部を(薄い)マウントアダプターを介してフルサイズ
EOS一眼レフの一部に装着する場合、その組み合わせに
よっては内部構造が干渉し、「破壊」等の、重大な課題に
直結する危険性が高い事である。

本レンズとEOS 6Dの組み合わせでは大丈夫なのだが、
他のY/Cレンズでは、その状態に陥る事も経験があり、
製造固体差も、あるかも知れないから、各自が自身の
システムで慎重に確かめるしかない。また「慎重に」と
言ったところで、装着してシャッターを切った瞬間に壊れて
しまう危険性もある為、できるだけ、こういう組み合わせ
では使わず、安全なミラーレス機で使う事を推奨する。
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描写力だが、解像感や歪曲収差を優先的に補正した設計
と推測され、それとトレードオフ関係にあるボケ質等には
あまり優れない、また、逆光耐性もあまり強く無い。


ただまあ、それらは細かい話であり、重欠点にはなり得ず、
発売当時としては高性能なレンズであった事だろう。
しかし、高価すぎる、という弱点は無視できず、一種の
「ブルジョアレンズ」であっただろう事は否めない。

他の弱点として、これは私の持論だが「ディスタゴン構成
のレンズは、MF時にピントの山が掴み難い」がある。
それが何故か?の光学的検証は、まだ行っていないが、
関連する検証ソフトウェア等の自作開発も進んでおり、
長い時間をかけて解明したいとは思ってる。

総括だが、今回紹介分の24~28mmレンズの中では、
新鋭のソフトレンズMOMO100と、本Distagon 25/2.8
のみが、かろうじて現在の視点でも実用価値を持つレンズ
だと思われる。


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では、今回の「24~28mmマニアックス(後編)」は、
このあたり迄で。次回記事に続く。


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