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レンズ・マニアックス(56)補足編~35mmマニアックス(2)

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今回は補足編として「35mm(級)マニアックス(2)」
という主旨とする。

さて、前記事「35mm(級)マニアックス(1)」は、
1990年代~2010年代における、35mm(級)AFレンズ
の辿った歴史を全て解説する、という壮大な記事と
なり、その記事文字数も過去最長を記録した。

本記事においては、そのAF時代に至る前の
銀塩MF時代(主に1970年代~1980年代)の
マイナーな(マニアックな)35mmMF単焦点レンズ
を7本紹介し、それとともに、取り巻く世情等を
解説する。
加えて、2000年代以降の特殊35mm(級)MFレンズ
も3本紹介、合計10本のMFレンズ紹介としよう。

いずれもマイナーレンズであり、あまり世間一般に
知れらていたり、人気のあるレンズでは無いが、
レアものというよりは、単にマイナーなだけだ。

なお、紹介レンズ数が多い為、実写掲載は、
各レンズ1枚づつを基本とする。

----
ではまず、今回最初の35mm(MF)レンズ。
_c0032138_06442980.jpg
レンズは、MINOLTA MC W. ROKKOR-HG 35mm/f2.8
(中古購入価格 12,000円)(以下、MC35/2.8)
カメラは、PANASONIC DMC-G1(μ4/3機)

1970年前後?に発売の単焦点MF準広角レンズ。
絞り環が銀色のバージョンと黒色のバージョンが
ある模様だが、どっちがどうだとか、詳しい事は
良くわからないし、そうした事を、ちゃんと調べ
ようという気にもなれないほどのオールドレンズで
ある。何かスペシャルな特徴や性能を持つような
レンズでも無く、オーソドックスすぎる。
まあ「その時代」の典型的なレンズでもある。

銀塩時代の古くから使っているレンズではあるが
特徴が無いどころか、写りが優れている訳でも
無いので、昔からあまり好きなレンズでは無かった。
_c0032138_06443042.jpg
一応、型番の読み方だが、「W.」(ピリオド付き)
は、WIDEの略語であろう。つまり、この時代
1970年代前後では、35mmレンズは「広角である」
と見なされていた状況を如実に表している。

ちなみに、その走りは、1950年代後半~において
ヒットカメラとなった「オリンパスワイド」シリーズ
(35mm単焦点を搭載したレンズ固定式コンパクト機)
であろうか・・

だが、勿論この時代(1970年代前後)において、
一眼レフには、35mmよりも広角は存在していた。
MINOLTAでは、MC(露出計連動)型以前の
オートロッコールの時代(1960年代、SRマウント
とも呼ばれる)においても、28mmとか21mmが
存在していたし、特殊用途だが18mmも存在して
いた模様だ。

MCの時代(1970年代前後)では、魚眼を除き、
17mm,20mm,21mm,24mmのラインナップが
あった模様だが、販売数が少ないそれらは高価だった
とも推察され、一般的では無い。

この時代では、せいぜいが28mmが、ユーザーが
一般的に買える最広角レンズであっただろうし、
それもまた、35mmを買うか28mmを買うかの二択だ。
その両方を買って(買えて)しまうユーザーは
当時の世情、物価等から考察すると少なかったと
思われる。

なお、この時代の傾向(28mmか35mmかの二択)
は、意外な事に、1990年代位に至るまで、単焦点派
における好みの「焦点距離系列」として残っている。

この話は長くなるので本記事では割愛するが、
匠の写真用語辞典第16回記事に「焦点距離系列論」
の項目で詳しく説明している。
なお、当該記事では、「2つの好みの系列がある」
と記載していて、何故そうした好みが出来たのか?
迄については言及していない(理由が不明だからだ)

しかし、思うに、もしかすると、この1970年前後に
おける広角レンズの選択肢において、28mmを
選ぶか、35mmを選択するか?という、その心理が、
後の時代にまで(本人に)残った、あるいは後輩層
等にも引き継がれていったのではなかろうか?
という推測も、ここに来て出てきたようにも思える。

さて、また際限なく記事が長くなりそうな予感も
するので、レンズ紹介は、早目早目に切り替えて
いく事とする。

----
では、次の35mmレンズ。
_c0032138_06443055.jpg
レンズは、OLYMPUS OM-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-W 35mm/f2.8
(中古 譲受品)(以下、OM35/2.8)
カメラは、OLYMPUS E-410 (4/3機)

1970年代の単焦点MF準広角レンズ。
レンズ名は、レンズ上に書かれている正式名称なので、
ちょっと長いが、普通は、マニア間においても、
ここまでダラダラと正式名を記載する事は無く、
OM(ZUIKO)35mm/F2.8で十分だ。

何故ならば、OLYMPUS OMシステムは、天才と称された
米谷技師が、当初からシステマチックな仕様を綿密に
決めて展開されたカメラ群であり、その交換レンズ群
ZUIKOも同様に仕様的に極めてシステマチックである。
他社のように細かいマイナーチェンジで、頻繁に
レンズ名が変わっていくという事も無く、35mm/F2.8
と言えば、恐らくは派生機種も無く、オンリーワンで
あろうから、細かい型番で区別する必要も無い。

で、今回あえて、フルネームで記載しているのは
正式名称中の、「AUTO-W」の文字列に注目して貰い
たかったからである。
つまり、この-Wは、ここでもWIDE、すなわち広角の
意味である。特にオリンパスにおいては、前述の
ように、1950年代後半での「オリンパスワイド」
の35mm搭載カメラのヒットにあやかり、ワイド=
35mmの公式を崩す事は、市場におけるブランド
イメージの確保の為にも、したくなかったのだと
思われる。
_c0032138_06443095.jpg
ちなみに、このレンズは、2010年代に知人から
譲渡して貰ったものだ。その男性は、元TV局の職員
であったが定年でリタイアし、現在、定年後も依然、
映像関連の仕事をしていらっしゃる。

その方の家で、「動画編集用のパソコンが不調に
なった」という事で、私が様子を見に行ったのだが、
無事治った後、お礼がてらか、「昔のオリンパスの
ワイドレンズが余っている、もう使う事も無いだろう
から、持って行くか?」と言われて、それを見ると、
本OM35/2.8であった、これは持っていなかったので、
ありがたく頂戴して帰ったのであった。

で、男性は「ワイドレンズ」と言ったが、映像関係の
仕事だから「もしかすると21mm位の特殊レンズか?」
と、一瞬、過剰な期待をしてしまったのだが(汗)
考えてみれば、OMの時代であれば、35mmは立派な
広角レンズであった訳だ。

----
では、3本目の35mmレンズ。
_c0032138_06443792.jpg
レンズは、OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO MC AUTO-W 35mm/f2
(中古購入価格 19,000円)(以下、OM35/2)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

1970年代の単焦点MF準広角レンズ。

OMシステムのZUIKOレンズには、各焦点距離で、
大口径版と小口径版が併売されているケースが多い。

内、大口径版は標準レンズを除き、全て開放F2で
システマチックに統一されている。
20mm/2特殊医療用マクロは例外的だが、21mmから
250mmまで、順次開放F2級がラインナップされている
事は、「OM党」のマニア層において自慢であり、
マ「OMならば、21mmから250mmまでF2で揃えられる」
とは、何度も聞かされた話ではあるのだが・・

実際には、それらはかなり高額なレンズ群で
あるから、憧れではあっても、それを実現し、
F2レンズをコンプリートする事は、よほどの金満家
以外では不可能な話だ。
仮に、後年になって、安価になった中古でそれらを
揃えようとしても、今度は、F2級のZUIKOは、極めて
レアものであり、とても全ては探しきれない。

事実、私も4本のF2級OM ZUIKOを所有するのみであり、
それは「特殊レンズ第33回OLYMPUS OM F2編」で
所有している全4本を紹介している。
_c0032138_06443730.jpg
さて、その同一焦点距離において、異なる開放F値
のレンズが並行ラインナップされているケース
であるが、「たいてい、小口径版の方が良く写る」
とは、様々な記事で述べた通りだ。

銀塩時代であれば、同じメーカーの同じ焦点距離の
レンズで開放F値違いのものを同時に所有する、
などと言う事は、極めて贅沢な話であり、そんな事を
している人は誰も居なかっただろうし、さらに言えば
「高価な大口径版の方が良く写って当たり前」という
思い込みもユーザー側には極めて強かった事であろう。

しかし、後年において、安価になった銀塩用レンズを、
かたぱっしから中古で買ってしまうマニアも多い。
そんな場合には、銀塩時代ではありえなかった、
同一焦点距離重複所有も、よくある話となってきた。
私も、十数組のそうした重複ペアを所有している
のだが、たいていの場合小口径の方が高性能だ。

まあでも、良く考えてみれば、大口径版レンズが
全ての点で優れているならば、わざわざ小口径
版を並行してラインナップする必要がない、
現代の高性能レンズ(例:SIGMA ART LINE等)
では、そういう感じで大口径版のみだ。

それでもあえて小口径版が並存している理由は、
考えられる限りでは3つであり・・
1)実は小口径版の方が高描写力であるから。
2)小口径版をエントリーレンズ戦略に用いる為。
3)大口径版と小口径版は特性が異なり、それぞれ
 向く用途や被写体が異なるから。

となる。

1)の典型例は、銀塩MF時代の1970年代頃の
 標準(50mm)レンズである。この理由は、
 この時代の設計技術においては、大口径版で
 より大きく発生する収差の補正がまだ技術的に
 解決されていなかったからだ。小口径版では
 発生する収差の量も少なく、補正が容易な為、
 大口径版より早い時代に、設計は、ほぼ完成の
 域に近づいていた。

2)の典型例は、1990年のCANON EF50mm/F1.8Ⅱ
 である。大口径版は後年1993年のCANON
 EF50mm/F1.4 USMであるが、EF50/F1.8Ⅱに
 エントリーレンズの役目を与え、その後25年間
 の超ロングセラーレンズとなった。

3)の典型例は、OLYMPUS OM-SYSTEMではなかろうか?
 ただ、私もOM ZUIKOで開放F値違いの組を
 いくつも持っている訳では無い。
 所有している55mm/F1.2→50mm/F1.4→50mm/F1.8
 の組み合わせでは、→の方向で画質が高いが
 これは、上記1)の理由が大きい。
 OM35/2.8と、OM35/2については、「方向性の
 違い」を感じるのだが・・
 他にこれを試せる組み合わせを持っていない為、
 この件については明言を避けて置こう。

----
さて、4本目の35mmレンズ。
_c0032138_06443731.jpg
レンズは、KONICA HEXANON AR 35mm/f2.8
(中古購入価格 10,000円)(以下、AR35/2.8)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)

詳細不明、恐らくだが、1970年代前後の
MF準広角レンズである。

本レンズは「ヘキサノン」ではあるが、ベテラン
のマニア層が良く言う「ヘキサノンは良く写る」
という話は、あまり根拠が無い。
ヘキサノンというのはコニカのレンズ総称で
数十年間という長きに渡り使われていた名称
だから、個々のヘキサノンレンズにおいて、
または、どの時代の話か?、によって、大きく
状況は変わってくるのだ。

本レンズは「量産ヘキサノン」である、だから
特にその名前を聞いただけで良く写るかどうかは
判断できる筈も無い、ダメダメな写りのヘキサノン
も中には存在しているのだ。
(特殊レンズ第34回、KONICA HEXANON AR編参照)

まあでも、本AR35/2.8の写りは、さほど悪く無く
同時代の35mm級レンズの中では良い方だと思う。
_c0032138_06443758.jpg
そして、この時代(1970年代前後)では、まだ、
それぞれの交換レンズは、メーカーにより、あるいは
個々のレンズの仕様等に応じ、はたまた設計者毎に応じ、
レンズの描写力は、結構な差異があった。

しかし、この時代であっても、50mm小口径標準は
既にメーカー間での描写力の差異は殆ど無く、
1980年代にもなれば、50mm大口径標準の差異も
無くなっていく。
他の焦点距離のレンズも、1990年代後半あたり
にはメーカー間の差異は、さほど無いのだが、
この時代、正直言えば、単焦点レンズの進歩は
殆ど無くて止まっていた。(ズームレンズの
改良開発を優先していた為であろう)

その後、2000年代となると、今度はカメラ
自体がデジタル化してしまった。
銀塩時代では、一眼レフは、悪い言い方をすれば
「フィルムを入れるただの箱」である。
同じフィルムを入れて、同じ露出値とすれば、
レンズの性能の差は、モロに出た訳である。
しかし、デジタルとなると、センサーの差や
画像処理エンジンの差、そしてそれらに与える
パラーメーター(≒カメラ設定)により、
描写力は大きく変わってしまう、時にその差は
レンズを換えるよりも、ずっと強力だ。

まあだから、1970年代くらいであれば、
「良く写る(35mm)レンズは、どこのメーカー
 ですか?」というビギナー層等からの質問も
かろうじて意味を持つ質問ではあったのだが・・

現代、2020年代において、ビギナー層等から
「良く写るレンズは、どのメーカー?」
と聞かれても、答えようが無い。

まず、「良く」というのが、そのユーザーにとって
何を意味し、何を求めているのか不明だからだ。

そして、レンズ側にも個々に設計コンセプトが
存在し、例えば解像感を優先するレンズや、ボケ質
を優先するような設計手法が存在している。

さらには、現代のデジタル時代では、カメラの
パラメーターの設定、撮影技法、エフェクト、
さらには、アフターレタッチ(撮影後のPC等による
画像編集作業の全般)等によっても、得られる映像
の品質は、大きく異なってくる。


そして、これはまだ現代では一般的では無いが、
高度な画像処理技術やAI技術を用いて、画像に様々な
特定の意味を持つ加工を施してしまう事も可能だ。
(参考:本ブログでの「プログラミング・シリーズ」
では、まだ世の中のどこにも無い特殊なアルゴリズム
による、独自の画像処理技術を紹介している)

結局の所、「良く写るレンズは、どのメーカー?」
などという質問が愚問なのであって、現代の情報
社会においては、そういう風に他人の価値感に頼るの
ではなく、全てのユーザーは自分自身の絶対的な
価値・評価感覚を持っていかなくてはならない。
さもないと、世の中に、多々ある(多すぎる)
情報に振り回されるだけであるし、そうした情報の
中には、ユーザー層を、ある考え方に誘導する為に
意図的に偏った情報も残念ながら沢山あるからだ。

----
さて、5本目の35mm(級)レンズ。
_c0032138_06450783.jpg
レンズは、smc PENTAX-M 40mm/f2.8
(中古購入価格 12,000円)(以下、M40/2.8)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)

1970年代後半の、小型化されたPENTAX-Mシリーズ
のパンケーキ(薄型軽量)レンズ。

パンケーキの出自、種類、存在意義などについては
長くなるので本記事では割愛する。例えば、
「特殊レンズ第14回記事 パンケーキ編」等に
詳しいので適宜参照されたし。

なお、近年においては、一般向けレンズカタログ
等でも「パンケーキ」の記述が見られる場合も
ある為、この用語は「常識」として定着した、
という事であろう。 
初級層あたりでも「パンケーキ」を知らないと
格好悪い、という事だ。

しかし、逆に「パンケーキ」の存在意義は
「格好良い事」の、ただそれだけである。
で、1970年代においては、まだ、カメラは高価
な贅沢品であり、それを入手できる人は、
(高度成長期で、成功者が尊敬された時代で
あったから)、「お金持ち」として、周囲に対し
ステータスをアピールできた訳だ。

まあ、今時高いカメラを持っていても何の自慢にも
ならないが、高度成長期を支えた団塊の世代等が
現代ではシニア層になっていて、その古い時代の
価値感のまま、彼らの独自のコミュニティの中で
高価なカメラやレンズを所有する事を自慢する訳だ。


たまに、やや下の世代の人達が、そういうコミュニティ
(例えば、写真サークル等)に入ってしまうと、
色々と価値感覚の違いに苦労するそうである。
「さっさと、そういうグループからは抜けるべきだ」
と、そういうハメに陥っている人には毎回アドバイス
をするようにしている。

さて、で、そのステータスの主張(金持ち自慢)
については、1970年代であれば、鼻に付くほど
酷かった訳であり、例えば、「カメラやレンズは
堂々と大きいもので無いといけない、小さいものは
安っぽく見えてしまうではないか」という価値感覚
がごく普通であった、勿論現代の感覚では正反対
であり、写真を撮る上で同じ性能であれば、機材は
小さく軽ければ、そうであるほど望ましい。

まあつまり、そういう大型カメラを欲しがる人達は
高価なカメラを買える経済力を自慢したいので
あって、写真なんぞ、殆ど撮っていなかった訳だ。
まあ、それはそうであろう、24時間、会社の為に
働いて、日本を成長させてきた世代だ、たまの
休日は、バタンキューであり、写真など撮る暇は
無いに違い無いからだ。
_c0032138_06444256.jpg
で、そういう状況の中で、パンケーキレンズが
世の中に生まれて来ていたのだが、どれも非常に
不人気であった、「大きなカメラが格好良い」
という時代であるから、やむを得ない。


殆どのパンケーキは、1980年頃には生産中止と
なり、さらにカメラがAF化された1980年代後半
以降では、薄型レンズにAF機構が入る筈も無く、
ほぼ完全に絶滅してしまっていた。

パンケーキのブームが起こるのは、バブル経済が
崩壊した1990年代前半からだ、旧来の価値感が
バブルとともに崩れ、その後は、まるで変貌し、
多様化した新しい価値感が世の中に広まった。

そうした中で、「パンケーキが格好良い」という
新たな価値感が創生され、それに多くのマニア層
が賛同したため、1990年代後半の中古カメラ
ブームと、ほぼ被る形で「パンケーキブーム」
が起こったのである。

だが、そのブームもほどなく終焉、その最大の
理由は、マニア層の好む「実用価値」が、どの
パンケーキにも備わってなかったからだ。
使い難い、性能も高く無い、おまけにブームで
レアで高価になっているのならば、マニアは簡単に
そっぽを向く。

不運、といえば不運な歴史ではあるのだが、
個人的には嫌いなジャンルの製品では無い、
事実、パンケーキブームが起こる直前くらいには
レア品を除き、ほぼすべてのパンケーキを所有
していた訳なのだ。だからパンケーキブームでの
中古相場高騰には巻き込まれずに済んだ。


しかし、パンケーキブームの終焉の頃になると
なんだか市場にはしらけたムードが漂う、
「無意味に踊らされた」と、皆が思ったのであろう。
私は、大半のパンケーキを、デジタル時代に入る
頃に知人等に譲渡してしまっていた。
やはり、冷静に考えてみれば「実用価値無し」
だった訳だ。

----
では、6本目の35mmレンズ。
_c0032138_06451068.jpg
レンズは、CONTAX Distagon T* 35m/f2.8 AEJ
(中古購入価格 15,000円)(以下、D35/2.8)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

1975年発売の、単焦点MF準広角レンズ。

CONTAXという事で、名前だけで「良く写る」と
カン違いされてしまう不遇なレンズであるが、
実際のところは、特に特徴も無い、平凡な
レンズであり、ボケ質破綻も出るし、最短撮影
距離も長い。

個人的には、サブ・ブランドの、YASHICA LENS
ML 35mm/f2.8の方を遥かに好むくらいだ。
_c0032138_06444212.jpg
ただ、世の中における、カール・ツァイスの
ブランドへの信奉や神格化は異常なレベルで
あって、特にこの時代1975年では、ほんの数年
前まで、ツァイスは写真用レンズを実際に製造
していたので、なおさらなのだが、実のところ
もうこの1975年時点では、ツァイスレンズは
日本製である。(YASHICAが、ツァイスのブランド
を取得したからだ→銀塩一眼第5回CONTAX RTS
記事参照)

まあ、そんな事実は、当時の一般ユーザーは誰も
知らない訳であるから、「世界のツァイス」を
「たいした事が無い」などと言う事は、誰にも
許されておらず、専門的評価者や評論家でさえも、
「さすがツァイス、大変良く写る」と、鸚鵡返し
のような同じ感想を言う事しか許されなかった。
_c0032138_06452844.jpg
まあ、いまになって、もう一度、当時の評論家
等に評価をしてもらいたいようにも思う。
「実は・・ たいした事なかったです・汗」
という発言が聞ければ、痛快では無いか!

なにせ、そういう「提灯記事」(今時で言えば、
”忖度”(そんたく)して、持ち上げる記事)を
読んで、高価すぎるツァイスレンズを買わされた
「被害者」は、いくらでもいるだろうからだ・・

----
さて、7本目の35mmレンズ。
こちらは特殊(シフト)レンズである。
_c0032138_06454844.jpg
レンズは、NIKON PC NIKKOR 35mm/f2.8
(中古購入価格 40,000円)(以下、PC35/2.8)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

詳細不明だが、恐らくは、1960年代~1970年代
頃のMF準広角「シフトレンズ」である。

ここで「シフト」とか「ティルト」について説明
を始めると、限りなく記事文字数を消費してしまう。
本記事では、ばっさりと割愛する事として、
興味がある場合は、例えば・・
「特殊レンズ第26回、ティルト・シフト編」を
参照されたし。

まあ、簡単に言えば、光軸をずらす事で、写真
画像の遠近感を調整できる特殊レンズである。
_c0032138_06454934.jpg
本レンズの描写力上の特徴はあまり無い、
なにせ、古い(古すぎる)時代のレンズなのだ。
ただまあ、最短撮影距離が30cmと短いが、
近接撮影時の背景のボケ質は、意外に悪く無い。

シフト機能の特徴よりもむしろ、この時代のNIKKOR
としては、解像力優先ではなく、ボケ質に配慮して
いる事が、「信じられないほどレアな特徴」となる
レンズだ。
ただまあ、特殊レンズである為、それを実現する
設計にしたら、たまたまボケ質優先、という特徴
になったのだ、と考える方が無難であろう。
他にオールド・ニッコールでボケ質が良いレンズ
等は、ほとんど存在していないと思う。

----
さて、ここまで銀塩時代の35mmレンズを抜粋
して紹介したのだが、正直言って、どれもかなり
古い時代のもので、現代において探したり
使用したりする意味や価値があまり無い。

もし、この時代(1970年代前後)のオールド
35mmレンズの中で、(マニア層等に)有名な
ものがあったとしても、それはあくまで技術的
に未完成な時代の、本当のオールドレンズだ。
例えば、現代の新鋭35mmレンズ、具体的には、
TAMRON SP35mm/F1.8等と、比較してみれば、
笑っちゃうくらいに性能差がある事が容易に
理解できると思う。

マニア層の話の中には、40年も50年も前の
時代の話が、そのまま新世代のマニア層に引き
継がれているケースが良くある。
だが、そういう古い時代の話は、全く信憑性の
無いものだと、いったんクリアしてしまうのが
良いであろう。何度も書くが、絶対的価値感覚
を強く持つべきは、個々のユーザー側であり、
他人から価値感を押し付けられるものでは無い。

----
では、以降の3本の35mm(級)レンズは、デジタル
時代に入ってからの、かなりユニークな特徴を
持つものを紹介していこう。

では早速、8本目の35mmレンズ。
_c0032138_06454939.jpg
レンズは、Voigtlander SC SKOPAR 35mm/f2.5
(注:独語aの変母音の記号記載は省略する)
(新品購入価格 30,000円)(以下、SC35/2.5)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)

2002年発売の、レンジファインダーNIKON S
および旧CONTAX Cマウント兼用MF準広角レンズ。

出自の説明が面倒なレンズだ、多分にマニアック
な要素が多すぎる為、真面目にそれを書いても
現代のユーザー層にはチンプンカンプンで
あろうし、現代のマニア層が知っておくべき知識
でも無い。
まあ、特に興味があるのであれば、このあたりの
説明は、別シリーズ
「銀塩一眼第28回記事BESSA-R2C」に詳しい。
_c0032138_06455508.jpg
また、Voigtlander のレンジファインダー機用
レンズについては個人的な所有本数が4本と
かなり少ないが、一応
「特殊レンズ第22回、フォクトレンダーレンジ機」
記事にてまとめて紹介している。

一応35mmレンズとして本記事で紹介はしているが
極めて趣味性の高いレンズであり、かつ現代に
おいては超レアな為、入手が非常に困難だ。

下手に詳細を書いて、また相場が高騰したりでも
したらかなわない、本レンズの詳細の説明は
思い切って割愛しよう。

----
では、9本目の換算35mm(級)レンズ。
_c0032138_06455530.jpg
レンズは、FUJIFILM FILTER LENS XM-FL 24mm/f8
(中古購入価格 6,000円)(以下、FILTERLENS)
カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)

2015年に発売された、FUJI Xマウント専用、
ボディキャップ型、効果フィルター内蔵、
固定焦点型レンズ。

APS-C機専用レンズの為、換算画角は36mm相当となる。

ノーマル、ソフト、クロスの効果を切り替えて
使う事が可能な、近年では珍しいレンズだ。
_c0032138_06455592.jpg
ただまあ、固定焦点タイプだし、その被写界深度
は、近接から無限遠まで全てをカバーしている
訳では無い。
Hi-Fi描写は決して期待せずに、トイレンズ相当と
思っておくのが無難なレンズである。

それこそ「ボディキャップ」の名の通り、普段は
カメラに装着するボディキャップとして利用し
「いざとなれば写真も撮れる」程度に思っておく
のが良いであろう。

----
では、今回ラストの35mm(級)レンズ。
_c0032138_06455547.jpg
レンズは、GIZMON Utulens 32mm/f16
(新品購入価格 5,000円 マウントアダプター付き)
カメラは、OLYMPUS PEN Lite E-PL2 (μ4/3機)

2017年発売の「写ルンです」レンズ再利用品トイレンズ。

今回はμ4/3機で使用しているが、元々が銀塩の
「写ルンです」のレンズであるから、勿論フルサイズ
対応であり、銀塩L39マウント対応だ。
よって、マウントアダプターを選べば、フルサイズ
ミラーレス機(注:一眼レフは不可)で使用可能
である。
_c0032138_06460325.jpg
描写力は、銀塩「写ルンです」よりむしろ劣る、
「フィルムを曲げて装填してある」等の工夫を
ほどこした「写ルンです」のような小技は
デジタルの撮像センサーでは出来ないからだ。

あくまで「トイレンズ」相当とみなしておくのが
無難である。
ただまあ、カメラ・レンズ市場が縮退してしまって
いて、不要な機能が入った高価な新製品ばかりが
新発売される(注:そうしないとメーカー側が
事業を維持できない)現代において、遊び心を
もつ、こうした製品が出てくるのは好ましい状況
ではある。
高いだけで使い道の無い(=不要な機能が入って
いる)新製品を欲しがるのはビギナー層だけ、
というのが、現代における不条理な市場状況だ。

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さて、今回の「35mm(級)マニアックス(2)MF編」は、
このあたり迄で、次回記事に続く。


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