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価格別レンズ選手権(10)7万円級レンズ

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本シリーズでは写真用交換レンズ(稀に例外あり)を
価格帯別に数本づつ紹介し、記事の最後にBest Buy
(=最も購入に値するレンズ)を決めている。
今回は、7万円級編とし、7本のレンズで対戦する。

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では、早速7万円級レンズの対戦を開始する。
まず、最初のエントリー(参戦)。
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レンズは、smc PENTAX-FA 77mm/f1.8 Limited
(新品購入価格 74,000円)(実用価値 約68,000円)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)

2000年発売の、変則焦点距離AF中望遠レンズ。
本ブログでの通称は「ナナナナ」である。

「PENTAXレンズの最高傑作」あるいは
「2000年代以前の交換レンズの最高傑作」
とも呼べる超名玉である。
(追記:ごく最近、HDコーティングと円形絞り仕様と
なった後継版が、およそ20年ぶりに発売されている)

故に、本ブログの過去のランキング系記事において
ミラーレス名玉編:優勝
ハイコスパ名玉編:第24位
最強85mm選手権:B決勝優勝(決勝ノミネート辞退)

と、全てのランキング記事で高い順位を獲得した
超名玉である。(注:購入時価格が高価であった為
コスパ評価のランキングは若干不利であった)
_c0032138_09405311.jpg
今更、本レンズについて特徴を述べる必要も無いで
あろう、本ブログでは多数の記事で紹介しているし、
どの紹介記事でも「必携のレンズ」と述べている。
よって、本レンズ自体についての詳細説明は割愛する。

さて、本記事は「7万円級編」であるが、こうして
価格別のシリーズ記事を組んでみると、この7万円級
に実用的で優れたレンズが集中している事がわかった。

面倒なのでやってはいなのだが、もし、レンズ価格を
横軸に取って、縦軸に、個人評価点を入れてグラフを
作れば、7万円あたりにピークが来るのではなかろうか?
それより安価なレンズでは、何らかの性能上の妥協が
見られるから評価点が下がっていく傾向となるだろうし、
より高価なレンズは、コスパ点や必要度評価が低まって
どんどんと総合評価点が悪くなっていくと思われる。

まあつまり、7万円級レンズ(購入価格が6万円~
10万円程度と見なしても良い、勿論中古でも良い)
・・を、実用上の主力レンズとすれば良い話となる。

「レンズは、値段が高ければ良いというものでも無い」
とは、本ブログでは何十回と書いて来た事であるが、
「では、いくらまでならば良いのか?」という点には
答える事は難しい、まあ、レンズによりけりだからだ。
でも、本シリーズ「価格別レンズ選手権」を続けて
いくうちに、だいたいその適正価格帯は、7万円級
というあたりにピークがあるのでは? と思えて来た
次第である。

だが、実のところ、一般ユーザーは、あまりこの価格帯
のレンズを買わない。恐らくは、とても安価なものか、
「どうせ買うならば、一番高いものを」と、両極端に
分散してしまうであろう。何故ならば、初級層等では
レンズに関する知識が殆ど無く、「どれを買って良いか
わからない」という課題を抱えているからであり、
こうした中間価格帯のレンズには、なかなか目が行かない。

これは、他の商品分野でも同様の傾向があるだろうか・・
例えば、オーディオ用のイヤホンも、数百円の安価な
物を買うか、または「音に拘る」とか言って、数万円の
高価なものを買う、という、いずれかに分散すると思う。
だが、それも「音の良し悪しが、よくわからない」とか、
「どれを買って良いかわからない」という課題から来る
事であり、写真用レンズの場合と同様ではあるまいか?

ちなみに、私は60本以上のイヤホンを所有しているが、
最もお気に入りのものは1500円程度の安価な製品だ。
(注:1500円のイヤホンならどれでも良い、という話
ではなく、あくまで特定の機種だ)
それと次いで、3000円級、7000円級に、それぞれお気に
入りが数本づつある、ここでも、写真用レンズと同様に、
値段と音質は比例しない。(より高価なものが必ずしも
高音質という訳では無い)
_c0032138_09405341.jpg
さらにちなみに、レンズに当てはめると、仮に、およそ
10倍の値段を掛けて換算すれば、1500円のイヤホンは、
15000円級のエントリーレンズとなる。勿論、写真用の
レンズもエントリーレンズには優秀なものが目白押しだ。

それと、3万円台級、7万円台級の交換レンズも、それぞれ
名玉が多数存在している。(本シリーズ各記事参照)
イヤホンの価格帯も、そうして考えてみれば、納得の行く
話であろう。「価格と性能のバランス点」というものが、
いくつか存在している訳であり、そこがコスパが良い。
高価な数万円のイヤホン、つまりレンズで言えば
数十万円ものレンズが、必ずしも高音質、高画質である
保証は、まるで無い。

----
では、次のシステム。
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レンズは、CONTAX Planar T* 100mm/f2 MMJ(Y/C版)
(新品購入価格 106,000円)(実用価値 約65,000円)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)

1980年代後半頃に発売された、MF中望遠レンズ。

「最強100mm選手権」記事で、近代レンズに混じって
(セミ)オールドレンズの中で、唯一決勝戦進出に
ノミネートされた、強者(つわもの)レンズである。
_c0032138_09410495.jpg
だが、CONTAX(RTS)マウントでの、人気レンズの、
Planar 85mm/F1.4とMAKRO-Planar 100mm/F2.8
の間に挟まれて、本レンズは銀塩時代には不人気であった。
その結果、現代、本レンズはセミレア品になりつつある、
希少なレンズを、あまり褒めると、また投機層が動いて
不条理に高額なプレミアム相場になってしまう恐れもある。

個人的には、本レンズは必要度が高いので、もし故障した
場合では、再購入しなければならなくなる。その際に
中古相場が高騰していると困った事になるのだ。
例えば、上記実用価値の65,000円以下で買いたい訳だが、
まあ、誰も注目しない状態であれば、恐らくは5万円
程度の中古相場となるであろう、そうであれば、実用価値
の絶対値よりも、入手(可能)価格が低くなる訳であり、
コスパが良い、と見なす事すらできる。

何故、かろうじて相場高騰を免れているかは、恐らく
本レンズを購入した銀塩時代のCONTAXユーザーは極めて
少なく、誰からも評価・評判が上がって来なかったので
あろう。まあ、つまり「知らない」というだけの話だ。


ただ、必要以上に本レンズを崇め奉るのも禁物だ、
100mm単焦点レンズは、銀塩時代から現代に至るまで
名玉が目白押しであり、それは「最強100mm選手権」
記事のB決勝や決勝戦の記事を参照してもらえれば良く
わかる事であろう。


ましてやだが、「CONTAX(ツァイス)だから良く写る」
などという理屈もまるで通らない。
まあ、今から40年も前であれば、国産CONTAXレンズ
の中には、他社よりも若干の性能優位性を持つものも
いくつかは存在していたと思うが、もう時代が違い、
当時の設計では、現代の視点では古過ぎる訳だ。

だから、例えば本ブログの「ハイコスパ名玉編」では
CONTAXのレンズは、1本もランクインしていない、
つまり全て予選落ちしてしまっていた次第である。

また、焦点距離別選手権記事や、この価格別選手権
記事でも、CONTAXのレンズがノミネートされる事は
極めて稀である。
まあ、現代における「CONTAXレンズ」の立ち位置
は、そんなものであり、現代のレンズに対しては全く
勝ち目が無い、という事実を如実に表している。
_c0032138_09410477.jpg
ただまあ、そんな状況でも、本Planar 100/2だけは
CONTAX (RTS)レンズ群の中で、唯一、現代レンズに
立ち向かえる訳だ。
まあ、CONTAX(RTS)レンズ、特にPlanar系レンズ
の中では、最大のオススメであろう。
(参考記事:特殊レンズ第48回CONTAX PLANAR編)

----
では、3本目のシステム。
_c0032138_09410498.jpg
レンズは、LAOWA 15mm/f4 (LAO006)
(新品購入価格 75,000円)(実用価値 約55,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2016年に発売された中国製MF特殊広角レンズ。

LAOWA (Venus Optics)は、他の中国メーカーとは
少々異なる製品コンセプトのレンズを作ってくる。
具体的には、

*他に無い特殊な仕様、機能
 例:アポダイゼーション、超広角マクロ、超大口径

*極めて高い性能
 例:歪曲収差ゼロ、2倍マクロ

*超小型軽量
 例:μ4/3用17mn/F1.8、4mmm円周魚眼

といった、やや特殊な仕様を持つレンズ群を発売して
いるのが、LAOWAの特徴であろう。
ただし、これらは「高付加価値化」レンズである。
つまり値段が高い。その価格は他の激安中国製レンズ
と比較すると、およそ5倍から10倍以上にも達する
ものもある。
_c0032138_09410558.jpg
だから、ユーザーから見れば、上記のような「唯一無二」
の特別なスペックのレンズが欲しいならば、高価格を
甘んじて買うしか無いし、あるいは逆にそうしたスペック
のレンズはいらない、又は「何が凄いのか理解できない」
と言うのであれば、それらを買う事は無いであろう。
他の激安中国製レンズのように、「値段が安いから、
ちょっと試しに買ってみようか?」という選択肢は
LAOWAのレンズには、まるで無い訳だ。

まあ、LAOWAの製品企画コンセプトが、他の中国製等の
海外新鋭レンズとはまるで違う事が理解できるであろう。

さて、では本レンズLAOWA 15mm/F4の特殊性は何か?
それは以下の2点となる。

1)フルサイズ対応の15mm超広角レンズとしては、
 唯一無二の等倍マクロ仕様。
2)同、超広角としては唯一のシフト機能搭載。

使用上の注意点もある。
A)等倍マクロ時、WD(ワーキング・ディスタンス)
 は、僅かに5mm以下となる。その為、まずフードを
 装着していると被写体等に当たる事、それと、
 レンズの影が出る場合ある事、さらには、そこまで
 寄って写すのはピント合わせや、被写体の衝突防止
 等で結構難しい。
B)シフト機能は、縦方向きにしか動かない。
C)シフト機能利用時、大幅に画面周辺がケラれるので
 フルサイズ対応レンズではあるが、APS-C機や
 APS-C(クロップ)モード、トリミング等で対応する
 必要がある。
D)NIKON Fマウント版を買った場合、非Ai仕様なので、
 大半のNIKONデジタル一眼レフでは使用が困難となる。
 非Aiレンズ対応のNIKON Dfでさえも、シフト時の露出
 ずれについては、対応が殆ど不可能である。
(まあ、それでもNIKON F版を買うのは、NIKON一眼レフ
 以外の、一部の他社一眼レフや、多くのミーラレス機
 で利用が容易だからである)
_c0032138_09411817.jpg
本レンズの総括だが、超広角等倍マクロとシフト機能は、
撮影のエンジョイ度を高めるのに効果的だ。
また、描写力的な不満も、ほとんど無い。
ただ、使いこなしが、やや難しいので、中級層以上向け
としておこう。買うか買わないかは、前述のように
「唯一無二」の特徴が必要であれば買うし、そういうった
類の性能や機能が自分に無関係だと思えば買う必要は
まったく無い。

----
では、4本目のシステム。
_c0032138_09411869.jpg
レンズは、MINOLTA HI-SPEED AF APO (TELE) 200mm/f2.8
(中古購入価格 44,000円)(実用価値 約55,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ(APS-C機)

1990年代のAF単焦点望遠レンズ。
_c0032138_09411872.jpg
本レンズの紹介の際には毎回書いている事だが、
型番の一部「HI-SPEED AF」が、レンズ鏡筒デザイン
上で続けて書かれている為、「AFが速い」とカン違い
してしまう購入検討者が多い。

ここで「HI-SPEED」とは、主に海外での写真用語で
あり、「シャッター速度が速い」、つまり日本語に
おいては「大口径である」という意味である。
「AF」は、単にMINOLTA α用レンズの型番であり、
続けて書く事で、意図的に「AFが速い」とカン違い
してもらう為の確信犯ではなかろうか? とも
思ってしまう。

本レンズの時代では、各社のレンズには超音波モーター
等は搭載されておらず、さほど「AFが速い」訳では無い。
ただ、1990年代のミノルタ機、具体的には「α-9」
(銀塩一眼第23回記事)等では、同時代の他社機に
比べ、AF精度が高かった事は確かであろう。

さて、現代において本レンズを使う上では、AFの
速度や精度はどうでも良い話だ。

ビギナー層等では、現代レンズのAF速度等の性能を、
過剰なまでに気にし、それが良いレンズは「爆速AF」
などの”初級評価”をしてしまうのだが・・
基本的にレンズというより、カメラを含めたシステム
において、AFの速度や精度は決まって来るし、その
レンズを、どのような被写体を、どのような技法で
撮るのかによっても、必要なAF性能は異なる。

AFが遅いシステムにおいても、被写体条件によっては
MFで撮れば良い訳だし、そもそも本レンズは、現代
ではSONY αフタケタ機(Aマウント)で使用する
ケースが大半であろう。236万ドット以上もある
高精細EVFに加え、精度の高いピーキング機能や
伝統的なDMF(ダイレクト・マニュアル・フォーカス)
機能や、AF/MF切換ボタンも機種によっては使える。

この恵まれたシステム環境では、AFが合い難い
被写体状況であっても、極めて容易にMFに移行し
MFで簡便に合焦が可能だ。そうしたシステムの利点
や技法を理解できず、レンズのAFの弱点だけを
気にしているようでは、それはもう完全にビギナーだ。
_c0032138_09411852.jpg
で、AFの話よりも重用な事は、本レンズの描写力
である。個人用レンズ評価DBにおける、本レンズの
「描写表現力」評価は、5点満点である。
およそ400本強の所有レンズ中、「描写表現力」の
評価で満点をマークするレンズは十数本しか無く、
これは全所有レンズ中、上位の5%以内の位置となる
ハイレベルな描写性能である。

本レンズは、銀塩MINOLA α時代には、そこそこの
人気レンズであり、後年の時代まで中古流通は豊富
であった。しかし、2006年にαの事業をSONYが
引き継いだ際、恐らく「AF70-200/2.8レンズの
望遠端と同じスペックなので、本AF200/2.8は不要」
と思われてしまったのであろう、本レンズはSONY α
には引きつがれず、その時点でディスコン(販売中止)
に追い込まれてしまった。 

だが、では何故、(KONICA)MINOLTA時代に、本レンズ
が望遠ズームと併売されていたのか?それを考えれば
本レンズには、生産を辞めるには惜しいだけの多数の
長所があるだろう事は想像できると思う。

生産中止以降、本レンズの中古相場は若干上昇し、
7~8万円程度まで上がっていた、それでもまあ、
発売時点での定価が15万円程であったと記憶して
いるので、定価の半額であれば、不条理なプレミアム
相場にはなっていない。そして、2010年代中ごろ
からは、SONYはAマウントでは無く、ミラーレス機
のEマウントに注力しているので、本レンズの中古
相場は下落、私が銀塩時代に入手した4万円台に
まで落ちてきた。しかし、発売後20数年、生産中止
後10年を超える2010年代後半ともなると、
本レンズの中古流通は激減、現代ではセミレア品
となってしまっている。

この状況は「ヤバい」状態であり、今後稀に出て
くる中古は、かなりのプレミアム相場になって
しまう恐れもある。
悪いレンズでは無いのは勿論であるが、必要以上に
高価な中古相場となっている場合には購入は推奨
できない、その実用価値は上記の通り、55,000円
程度だ、それよりも高いとコスパ評価が低下する。
_c0032138_09413672.jpg
用途もまた課題だ、本レンズは私の場合、暗所の
ステージ等での長距離人物撮影、それから自然
観察用途が大半だ。いずれの用途でもAPS-C機で
使うのが、画角、撮影倍率、周辺収差低減等の
目的で有効だと思われる。
利用目的は個々のユーザー毎に異なるとは思うが、
そういった「用途開発」が出来ない場合には、
本レンズのような「単用途レンズ」は、あまり
買う必要は無いであろう。
あくまで良くわかっている中上級層向けレンズだ。

----
では、次のシステム。
_c0032138_09413661.jpg
レンズは、CANON EF 85mm/f1.2 L USM(初期型)
(中古購入価格 94,000円)(実用価値 約50,000円)
カメラは、CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)

1989年発売の、EOS EFマウント用大口径AF中望遠レンズ。
_c0032138_09413684.jpg
正直言って、「嫌いなレンズ」である。
L(高画質)仕様ながら、他社85mm大口径と同等以下
の描写表現力しかなく、おまけに高価である。

このレンズと(後継のⅡ型)のUSM(超音波モーター)
は、やや特殊であり、(後年のSTMレンズのように)
モーターに電源を供給しないと、ピントがMFでは
廻ってくれない。したがって、電子アダプターを
用いない限りは、本レンズは、EOS(EF)以外の
他マウントで使用する事が出きず、そういった
汎用性に欠ける製品仕様は、個人的には賛同できず
好みでは無いのだ。

他の同時代(や以降の)CANON EF USMレンズでは、
このように、電源を通さないと使えないレンズは
ほぼ皆無だと思うので、余計に本レンズの弱点が
目だってしまう。

したがって、本レンズの実用価値は、約5万円と
厳し目の評価だ、定価が20万円前後もする高額な
レンズとは言え、他社AF85/1.4級と同等以下の
性能であれば、5万円でも甘い価値かも知れない。

他社の同等スペックの85mmAF大口径では、
時代によりけりだが5万円前後で入手可能だ。
中には本レンズよりも時代が新しいものも多いと
思うので、旧来設計(プラナー系)大口径85mm
を志向するならば、それら安価なもので十分だし、
より高性能、高描写力の85mm大口径が欲しいので
あれば、近年2010年代以降の、コンピューター
光学設計の、非球面レンズや異常低分散ガラスを
用いた複雑な設計の85mm大口径の方が高描写力だ。
ただ、近代の複雑な85mm大口径は、大きく重く
高価である「三重苦」なので、それを受け入れる
必要がある。

個人的には、85mmレンズは、実用的なものは、
小口径(F1.8~F2級)が様々な撮影シーンで有利
である、という持論であり、大口径(F1.2~F1.4級)
で、あまり推奨できるものは無い。

----
さて、6本目のシステム。
_c0032138_09413617.jpg
レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm/f1.8
(中古購入価格 59,000円)(実用価値 約55,000円)
カメラは、OLYMMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)

2012年に発売されたμ4/3機専用中望遠AF単焦点レンズ。
_c0032138_09415047.jpg
高描写力のレンズである事は確かである。
ただ、これをちゃんと使える環境や目的被写体が
難しい。

具体的には、まず、μ4/3機で換算150mmの単焦点
画角となる事だ、これにぴったりとハマる被写体は
かなり限られていて、ステージ等での中距離人物
撮影くらいしか思い当たらない。

開放F値の明るさから、屋内スポーツや演劇舞台等も
用途として考えられるのだが、AF精度・速度的な
弱点を持つ、これは像面位相差AF機能を持つ母艦でも
同様であり、おまけにMFは無限回転式ピントリング
仕様により、快適に利用する事は出来ない。よって、
動体や準動体といった「動きもの」の撮影には適さない。

最短撮影距離が短ければ準望遠マクロとして自然観察
撮影用途に適するのだろうが、本レンズの最短は
84cmと、「焦点距離の10倍則」を下回る性能の為、
近接撮影には適さない(最大撮影倍率1/10倍)

まあ、その点、多くのμ4/3機には、デジタル拡大
(デジタルテレコン、デジタルズーム)が備わって
いるので、撮影倍率の不満はやや解消できるが、
それらを使ったとして、等倍撮影までのレベルには
至らないし、そもそもWDが大きすぎるので、自在な
撮影アングルやレベル(高さ)を選択できない。

よって、本レンズの最大の弱点は「用途開発の
難しさ」である。いったい何を撮るべきレンズで
あるのだろうか? そこが課題なのだ。
_c0032138_09415010.jpg
ただまあ、描写表現力に大変すぐれたレンズで
ある事も確かであり、個人DBの評価点は、その
項目で4.5点(5点満点)である。描写力の観点
からは、まず不満は無い事であろう。

ぴったりとハマる用途がユーザー側にあるならば
これは、買って損は無いレンズだ。
だが、そうした何らかの目的が無い場合は、やや
高価なレンズでもあるから、あまり推奨は出来ない。

----
では、今回ラストのシステム。
_c0032138_09415066.jpg
レンズは、NIKON AiAF DC-NIKKOR 105mm/f2D
(中古購入価格 70,000円)(実用価値 約60,000円)
カメラは、NIKON D500(APS-C機)

1993年発売のAF大口径中望遠レンズ。

型番のAiとAFの間にスペースがあるかどうかは不明、
DCとNIKKORの間にはハイフン有り、NIKKORは大文字
であろう、これらはレンズ上の表記からの引用だ。
_c0032138_09415006.jpg
DCは、デフォーカス・コントロールの意味であり、
DC環を設定絞り値と同等の値に手動設定する事で、
前ボケまたは後ボケのいずれかを良好な品質とする
事ができる希少な仕様のレンズである。

ただし、上記原理は一般的(一般層)おいては、
理解が難しく、効能もわかりにくい。(少なくとも
光学ファインダー上では、その差は一切現れない)
そして操作性も良く無い。(絞りとDC環の二重操作)

したがって、DC機構はNIKONの2機種(3モデル)
だけに搭載されただけで、他社あるいは他の時代
においては、DCと類似の機構を持つレンズは存在
していない。
すなわち、わかり難い、使い難い、売れ難い、という
レンズになってしまった訳だ。

ただまあ、そうした「唯一無二」のレンズが好きな
私ではあっても、そうした贔屓目無しに、本レンズ
は優秀である、という評価だ。
(なお、この優秀な描写特性がある為、巷でよく
言われる「DC環を過剰に設定すると軟焦点化する」
という用法は非推奨だ。なにも、優れた特性のレンズを
わざわざ収差まみれの状態にして使う必要は無い。
軟焦点描写が必要であれば、専用のソフトレンズを
使うのが簡便だし、それらの中古品は比較的安価だ)

価格が高いので、ハイコスパ系記事では、あまり
取り上げる事は無いが、「最強100mm選手権」では、
B決勝進出で優勝(総合6位相当)となっている。

現代においても中古玉数は豊富、場合により
在庫品が継続販売されている状況かも知れない。
(追記:ついに2020年に販売終了。27年間もの
長きに渡り販売されたレンズであった。
しかし、今後は相場高騰の危険性もある。でも
27年間も販売されていたのに、その間、本レンズの
優秀さに気付かない方が悪い、とも言えるであろう)

DC環の二重操作性を厭わないのであれば・・
あるいは本レンズでのボケ質破綻は出にくいので
常に絞り開放のF2で使い、DC環をR2(背景ボケ
優先で、絞り値F2に適合)に固定しておいても
何とか使えると思う。
なお、これは精密な描写コントロール性よりも、
操作性の簡便さを優先した設定である。
NIKON一眼レフで開放測光で使うならば、もとより
ボケ質のコントロールは無理だ。

ただ、本レンズは、まだかろうじて物理絞り環が
存在していた時代のレンズであるから、ミラーレス
機で用い、どうせ絞り環とDC環の頻繁な設定操作
が必要となるならば、操作性よりも厳密な描写性
コントロールを優先としたシステムも組めるで
あろう。AF速度等は遅いので、開き直ってMFに
特化してしまう選択肢も悪くは無い。
(注:その際、DC環を廻すとピント位置が変わって
オーバインフ状態となるので、MFはやや使い難い)
_c0032138_09415352.jpg
近年のNIKON(Fマウント)製品には、AF-S 105/1.4
(最強100mm選手権総合第5位)も存在するから、
NIKONで105mm級レンズが欲しい場合は迷う事もある
だろう。ただ、両者の中古相場は2倍ほど異なるので、
ここは予算によりけりだとも思う、そして両者は
異なる特性を持つので、その点でもユーザーの求める
用途や目的によりけりだ。

まあ、価格の安価な、本レンズDC105/2の方が、
高価なAF-S105/1.4よりも推奨しやすい点も多い。
とは言え、依然、中古相場はやや高額であるから、
NIKON機(一眼レフ)で、純正品を求める場合以外に
おいては、コスパ(注:ユーザーの用途によりけり)
を良く意識して、選択する必要があると思う。

----
では、最後に各選出レンズの評価点を記載する。

1)FA77/1.8 =4.5点
2)P100/2 =3.9点
3)LAOWA15/4=3.3点
4)AF200/2.8=4.0点
5)EF85/1.2L=2.8点
6)ED75/1.8 =3.5点
7)DC105/2 =4.1点

今回の7万円級対戦においては、「Best Buy」は
「smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limited」で
間違いない。
マニア層において、この超名玉「ナナナナ」を
持っていない、という選択は無いと思う。
(注:後継型のHD PENTAX-FA 77/1.8 Limited
でも良いと思う)

ただ、今回については他にも高得点のレンズが
複数ある。

*NIKON AiAF DC-NIKKOR 105mm/F2 D

*MINOLTA HI-SPEED AF APO 200mm/F2.8

*CONTAX Planar T* 100mm/F2

このクラスの得点(4点前後以上)の「名」レンズは、
たとえ、そのマウントの機体を所有していなかったと
しても、その、たった1本のレンズを使う為に、当該
マウントのボディ(カメラ)(又はマウントアダプター
でも良い)を新たに買っても惜しく無い。
それだけ、レンズ側には高い価値がある訳だ。
(1対4の法則:匠の写真用語辞典第16回参照)

----
さて、今回の「7万円級レンズ編」記事は、
このあたり迄で、次回記事に続く。


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