最強のマクロレンズを決定するシリーズ記事。
今回からは「中望遠マクロ」カテゴリーとし、
本記事は、その予選第1組とする。
ここで「中望遠」とは、実焦点距離が70mm以上で
110mm未満の、フルサイズ対応マクロレンズか、
稀に、μ4/3機専用レンズ等で、換算画角が、
その焦点距離範囲に入るものを対象とする。
最大撮影倍率については、あまり制限をかけず
およそ、センサー換算で1/4倍以上のものを
選ぶとしよう。(=準マクロも対象)
この条件に当てはまる所有レンズは27本、
1予選記事あたり6~7本の紹介(対戦)数とし、
4記事(4予選)を連続して掲載する。
では早速、中望遠マクロの予選(1)を始めよう。
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まずは最初の中望遠マクロレンズ。
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レンズ名:TAMRON SP AF 90mm/f2.8 Di MACRO 1:1
(Model 272E)
レンズ購入価格: 8,000円(中古)(以下、272E)
使用カメラ:CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)
2004年に発売されたAF中望遠等倍マクロレンズ。
いわゆる「90マクロ」シリーズは、勿論、全てが
フルサイズ対応である。
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「定番」のマクロレンズであり、その描写力には
定評がある。いわゆる「マニア層」においては、
いずれかの時代の「TAMRON 90マクロ」を、所有
していない人を探す事の方が難しいかも知れない。
で、初級マニア層等では、これを「タムキュー」
と呼ぶ事が多いが、その名前を使う事は非推奨だ。
何故ならば、「タムキュー」と十把ひとからげの
呼称では、どの時代の、どのModelの事を指して
話をしているのか?さっぱりわからないからだ。
TAMRON SP90Macroシリーズは40年を超える歴史を
持ち、光学系だけを見ても4種類も変遷している。
本シリーズ記事の中望遠マクロ編では、これから
その全てのSP90Macroの光学系の機種群を、紹介
(対戦)していくのだが、勿論、個々に光学系が
異なるので、それらの写りは基本的には別物だ。
だから、90Macroシリーズのオーナー(所有者)
であれば、必ず「Model 52BB」とか「172E型」
のように、個別の型番で、あるいは開放F値や
機種名での特徴(F2.5型とか、USD型等)で、
それらを、明確に区分する筈である。
まあ、あえて許せるレベルは「タムキューの
F004型」といった表現であり、こう言うならば、
どのレンズの話をしているのかは明確だ。
単に「タムキュー」で終わっていたら、その
レンズを所有してもおらず、「ちょっと借りてきて
撮ってみただけ」とか、そんな状況すら想像できる。
他分野の話で言えば、乗用車での「スカG」という
愛称のようなもので、憧れとかで、そう呼んでいる
だけであり、実際のオーナーならば、勿論、そんな
「ざっくり」とした呼び方はしない。
さて、本272E型における、型番「Di」は、デジタル
対応の事だと思われるが、旧型172E型(1999年)
に対しての改良点は、レンズ後玉表面に反射防止
コーティングを施し、撮像センサーと後玉間での
乱反射によるゴースト等の発生を防ぐ措置がある。
本レンズの発売時には、
「レンズ後群での光学的なテレセントリック特性
(≒直進性)を改善し、撮像センサーに垂直に
光が当たるようにした」
・・との噂も、まことしやかに流れていたのだが、
それはどうやら、完全な”デマ”だった模様であり、
本レンズの光学系は旧172E型と同じであった。
ただまあ、旧172E型(異マウントで2本所有している)
でも、さんざんデジタル機で使ってきたが、後玉の
乱反射などは気にした事もなかった(=出ない)
結局のところ、メーカーあるいは評論家などから、
「こういう技術が搭載されて、良くなりました」
などと言われても、それを鵜呑みにする事は
良くない。むしろ、ユーザー視点からは、
「そんな話は、根拠が無く、全く当てにならない。
要は、その製品が、使えるか否か、だろう?」
という事になるのだと思う。
それに、何故、上記のような「デマ」が流れてしまう
のかも理解できない。まあ、デジタル時代に入った
ばかりの頃の話なので、ユーザー層等においても、
たとえ上級層やマニア層であっても、デジタルの原理
等は、さっぱり理解していないので、わかったような、
わからないような話に、皆が飛びついてしまった状況
だろうと思われる。
(そういう解説をした紹介記事があったかも知れない)
まあ、そのあたりは、もはやどうでも良い話だ・・
まずは歴史的に重要な事は、本272E型の発売から、
次なる90マクロのF004型が出るまでの間、
およそ8~9年間も、新型モデルへの更新が凍結
されてしまった事がある。
個人的な分析では、その「空白期間」が生じたのは
2つの理由があったと思われる。
1)2000年代初期デジタル一眼レフ時代では、
殆どがAPS-C機であり、172E型や272E型は
135mm相当の1.5倍マクロとなり、銀塩時代から
慣れ親しんだ「中望遠マクロ」とは違和感の
ある状況となり、人気(必要性)が落ちた。
(参考:この時代、他の焦点距離(50mm等)でも、
同様な課題が良く言われたが、APS-C機での画角の
変化は、利用者の感覚的なアジャストで対応できる。
だから、本来であれば、こういう事は、問題には
ならないし、後年にそれが言われなくなったのは
皆が、APS-C機での画角に慣れたからであろう)
なお、後継F004型が発売された2012年は、
「フルサイズ元年」であり、多数のフルサイズ機が
発売され、その時代から、本来の画角の90mmの
マクロとして、皆が、これを使えるようになった。
2)172E型、272E型で、光学設計上は既に完成の
域にまで達していて、これ以上の改良点が無かった。
→だから、F004型では、手ブレ補正や、超音波
モーターを内蔵する事を「付加価値」とした。
マクロレンズに、そうした機能は基本的には不要
だが、それしか改善の余地が無かった。
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総括だが、描写性能・操作系的には、172E型や
272E型で十分だ。既にこれらは完成されている。
また、別記事で述べるが、F004型になったからと
言って、全ての面での性能が改善されている訳では
無い。(→むしろ改悪もある)
172E型や272E型は、現代では中古相場も安価で、
コスパが良く、お買い得感も強いマクロだ。
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では、次のマクロ(マイクロ)レンズ。
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レンズ名:NIKON Ai Micro-NIKKOR 105mm/f4
レンズ購入価格:8,000円(中古)(以下、Ai105/4)
使用カメラ:OLYMPUS PEN-F (μ4/3機)
1977年発売のMF小口径中望遠1/2倍マクロレンズ。
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Ai対応レンズであるから、現代のNIKON一眼レフ
高級機(=手動レンズ情報設定機能のある機種)
で使う事は、さほど困難では無い。
ただ、今回はちょっと捻くれてμ4/3機で使い、
1/2倍までの性能制限を取り払い、
「210mm画角の等倍マクロ」
として、望遠マクロ風の用途に用いる事とした。
本Ai105/4は、「平面マクロ」的な特徴を持つが、
姉妹レンズの、Ai55/3.5程に顕著では無い。
むしろ、ピント面での解像感が高いという長所は、
現代においても十分に通用するほどであり、
入手価格も、たまたま安価であったので、
コスパが良く、結構「お気に入り」のレンズだ。
ただまあ、セミ(準)オールドレンズであるし、
3群5枚と、単準なレンズ構成でもあるから、
全ての(諸)収差が、良好に補正されている訳でも
無いだろう。解像感を重視した設計の代償からか?
いわゆる「ボケ質破綻」が頻発するレンズである。
それについては、「ボケ質破綻回避」の技法を
使う必要があり、その場合は、NIKON(デジタル)
一眼レフに装着するよりも、各社ミラーレス機で
使用した方が、技法を使い易い。
まあ、そういう意味もあり、今回はμ4/3機で
使っている次第である。
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上手く使いこなせるのであれば、悪いレンズ
では無い。ただまあ、このレベルで本シリーズの
B決勝や決勝戦に、残れるかどうかは疑問だ。
僅かにそこには届かないあたり(本シリーズでは
特に設けていないが、準々決勝かBEST16あたり)
のポジションのマクロ(マイクロ)になるのでは、
なかろうか・・
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では、3本目のマクロレンズ。
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レンズ名:七工匠 60mm/f2.8 Macro
レンズ購入価格:24,000円(新品)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2019年に発売された、各社ミラーレス機マウント用
APS-C機以下対応MF中望遠(相当)等倍マクロレンズ。
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本レンズは、ちょっと性能的に厳しい。
「ジェネリック・レンズ」(つまり、過去の名レンズ
の設計を、スケールダウンし、ミラーレス機用等に
微調整を施し、安価なレンズとして販売する事)
を非常に得意とする「七工匠」(7Artisans)では
あるが、本レンズにおいては、その「元となった
マクロレンズ」が、どれであるか?を特定できない。
まあ、「写りが良いジェネリック・レンズ」
であれば、過去の(名)レンズを引っ張り出して
描写傾向を比較し、レンズ構成図等も参考にして
「ふむふむ、このレンズのコピーだったのね」と、
納得する事が出来、宝探しのような知的ゲームを
楽しむような気分に浸る事も出来るのだが・・
が、何も、あまり写りが芳しく無いレンズにおいて、
そのルーツ(起源)を探るような事をしても
あまり楽しく無いし、そもそも、そういう確認作業を
するには膨大な手間がかかる訳だから、本レンズに
関しては、もう完全に、元レンズを探す事は諦めた。
本レンズは、予定されていた発売日から数ヶ月も
遅れて発売されたので、
「下手をすると、何らかの問題点が発見されて、
慌てて修正をしていたのでは?
そして、修正をしても、完璧に性能は改善されず、
やむなく、中途半端な状態で発売されたのでは?」
・・などという、あまり好ましく無い状況すらも、
想像してしまった次第だ。
実際には、そういう事は無かったのかも知れないが
本レンズが近年での「中国製(外国製)格安レンズ」
の中では珍しいマクロレンズであり、「七工匠」と
しても初のマクロレンズだ、色々と設計やノウハウ面
での未成熟はあったかも知れない。
なお、中国製マクロの全てが低性能という訳でも
無いとは思う。例えば、また他記事で紹介するが
LAOWA 100mm/F2.8(Ultra) Macro等は、なかなか
良く写る高性能マクロである。(ただし若干高価だし、
”完璧”という程の描写力には、やや届かない)
本レンズに関しては、「改良待ち」という事で
現状の(2019年)バージョンは、”非推奨”という
事にしておく。
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なお、本レンズ発売後に、同じく中国の「Meike」
からも新規にマクロレンズが発売されたが、
なんだか同様な課題を抱えているような、悪い
予感がしていて、ちょっと購入は保留している。
まあ、安価な中古品が出たら買うかも知れない。
要は「コスパ」が肝要であるから、仮にレンズが
若干見劣りする性能であったとしても、その性能に
見合うだけ値段が安ければ、文句は言わない訳だ。
本レンズだって、仮に8,000円くらいで購入
できていたとすれば、全然問題は無かった訳で、
それが24,000円も出すならば、例えばTAMRONの
高性能マクロ(SP60/2や、SP90/2.8系)を
中古で買ったとしても、お釣りが出る位だから、
それらと比べた価値感覚においては、「コスパが
悪い」と見なせる訳である。
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では、4本目の中望遠マクロ。
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レンズ名:COSINA (MC) MACRO 100mm/f3.5
レンズ購入価格:14,000円(新品)
使用カメラ:CANON EOS M5(APS-C機)
発売年不明、恐らくは1980年代~1990年代頃の
MF中望遠1/2倍(ハーフ)マクロ。
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まだ無名だった時代のCOSINA銘のレンズなので
新品購入価格は安価である。
その当時(1990年代頃)でも、COSINAは他社の
カメラやレンズを沢山生産しているOEMメーカー
ではあったが、さすがに一般消費者層にまでは
ブランド銘が知られておらず、自社ブランドの
レンズを販売する際には、
「定価4~5万円を、今ならば7割引」のような、
「叩き売り戦略」を取っていた。
これは勿論、「赤字覚悟」なのでは無く、OEM
メーカーとしての高い技術力や製造力を用いて、
7割引で売っても利益が出るような、ローコストな
レンズ設計をする事が出来た訳だ、つまりここでの
”定価”は、ただ単に「ダミー」である。
後年1999年には、コシナは「フォクトレンダー」
のブランドを入手、加えて、さらに2006年には、
「カール・ツァイス」のブランド使用権も入手し、
今や、「コシナは高級レンズメーカーだ」という
認識が、世間一般では常識であろうが・・
まあそれでも、「現代のマクロアポランターの
僅か10分の1の購入価格で、本レンズが買えた」
と言うべきなのか?
はたまた「マクロアポランターは、本レンズの
10倍の過剰なまでの高価(プレミアム価格)だ」
と考えるべきなのか?
まあ、どちらも正解なのだろうと思える。
でも、当然ながら、新鋭のマクロアポランターが、
本レンズよりも10倍も良く写る訳では無い。
さて、本レンズは、典型的な「平面マクロ」だ。
上記NIKKOR Ai105/4の描写に近いとも言えるが、
そこまでの設計の「エレガントさ」は無く、むしろ
「思い切りコストダウンしました」といった、
ぶっきらぼうな、(ある意味)潔さは感じる。
まあつまり、ボケ質が固かったりボケ質破綻が
頻発する訳であり、本レンズの場合は、いかに
そのあたりを制御あるいは回避するか?の作業に
時間を取られてしまう訳だ。
このあたりの技法は、現代のミラーレス機を
使ったところで容易では無い、ましてや銀塩時代
の一眼レフの光学ファインダーでは、まず実施が
出来ない撮影技法だ。
だから、本レンズを購入するような、その当時の
初級中級マニア層等においても、一眼レフを母艦
としたら、本レンズでは、コントローラビリティ
(制御する事)が殆ど無い為、たまたま良く写ったり、
あるいはボケ質が乱れてしまう事もあっただろう。
すなわち、ユーザー個々によっては、
A「安いけど、なかなか良く写るレンズだよ」
とか、
B「7割引だったから、試しに買ってみたけど、
やはり写りが悪いや、安かろう、悪かろう」
と、いったように、その評価は、個々でまちまちな
評価内容となった事が容易に想像できる。
でも、それらは、いずれも偶然での話だ、レンズ
の性能の本質の理解には至っていない。
あるいは、前述のNIKON Ai105/4と比較した
マニアも居たかも知れない。
C「NIKONのマイクロの方が、ずっとシャープだ、
さすがNIKKOR、高価なだけのことはある」
などと神妙に語っていたのかも知れないが・・
まあ、要は、Ai105/4の方が解像力重視で、
一見してビギナー層からは良く写るように見えて
しまうだろうが、立体被写体でのボケ質破綻は
Ai105/4が本COSINA 100/3.5よりも顕著だ。
ただ、ユーザーはAi105/4のシャープな描写に、
ある意味「誤魔化されてしまう」から、その
ボケ質破綻に言及することはまず無いだろうし、
そのユーザーは、きっと「平面被写体」等を
撮って解像感が高い状態で写っている写真しか、
他のマニア等には見せない事であろう。
まあ、こういう風に、Ai105/4の方が、全般的に
ビギナー層向けの特性だ。まあつまり、弱点を
見せないようにする点が「エレガントな設計だ」
と前述した点だ。(注:とは言え、Ai105/4は
1900年という古い時代に、旧フォクトレンダー社
(ドイツ)が開発した、「ヘリアー型」構成を
そのまま転用してる。つまり新しくオリジナルな
光学系設計では無い)
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対して、本COSINA100/3.5を上手くコントロール
して使うのは、銀塩時代であれば超A級難易度で、
現代でもA難易度級であろうから、これはもう、
実践派上級マニア向けに他ならない。
結局、コストダウン設計により、多くの撮影条件
でも良好な描写力を発揮できるようには作られて
いない。でも、もしかすると、上手く制御して
レンズの美味しい部分(長所)だけを活かせば、
そこそこ良く写るレンズにはなり得る。
まあ、皆が上手く使いこなす事ができないから
「安価」なのか。あるいは、そういう風に、
オーナー(撮り手)の撮影技能に依存するような
設計思想であるからこそ、コストダウンが出来た
のか・・? まあでも「手馴れた」設計手法だ。
でも、総論としては、「結局のところ、レンズの
性能を活かすも殺すもユーザー次第」という事
になるのだろう。
「レンズの言うがままに撮ってはいけない」とも
言い換える事もできる。
まあ、いずれも実践は難しい話ではあるが・・
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では、5本目のマクロレンズ。
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レンズ名:FUJIFILM FUJINON XF 60mm/f2.4 R Macro
レンズ購入価格:39,000円(中古)(以下、XF60/2.4)
使用カメラ:FUJIFILM X-T10(APS-C機)
2012年に発売された、FUJIFILM Xマウント専用の
AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
Xマウント機は、現状全てAPS-C機であるので、
換算画角は90mm相当となる。
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「コスパの悪いレンズだ」という認識である。
描写力はさほど悪くは無いのだが、”一般レンズ
に比べて、近接域での描写特性がとても優れる”
事が普通のマクロレンズにしては、「もう一声」
という印象が強い。
また、Xマウント用純正レンズは、生産数が少ない
からか?新品価格も中古相場もかなり高目であり
この値段を出すならば、他社の高性能マクロが
よりどりみどりの状態だ。
しかし、他にはXマウントで使用できる、適価な
(AF)マクロレンズが存在しない為、選択肢は
本レンズしか無い状態だ。
まあ、近年の中国製のマクロレンズの一部は
Xマウント用も存在しているが、それらはMFレンズ
であり、その状況であれば、過去の古今東西の
MFマクロをXマウントへアダプターで装着するのと
大差ない。
ここで課題となるのは、FUJIFILM Xマウント機
全般でのMF精度の低さであり、ピーキングや
各種MFアシスト機能の精度が優れておらず、
加えてMF用の画面拡大の操作系も練れていない。
よって、MF(マクロ)レンズや、AFマクロでの
MFでの使用は、Xマウント機では苦しい。
さらには、本レンズは「無限回転式ピントリング
+距離指標無し」の仕様であり、これも、いつも
言っているように、マクロレンズとしてのMF用途
には向かない仕様だ。
残るAF性能だが、精度が壊滅的に低い。
これは像面位相差AFを搭載しているXマウント機
を用いても同様である。
原因は、合焦距離の設定が、近接用と中遠距離用の
二重構造である事。まあここは、他社のマクロでも
同様な(電子的)構造になっている場合が多いが
その切換(オートマクロ)の判定アルゴリズムが
未成熟であり・・
(注:オートマクロは2015年頃からの搭載であり、
それ以前の機種、X-E1やX-T1(Ver.2まで)等
では、近接域の撮影では、一々「マクロボタン」
を手動で押して、切り替える必要があった)
それと、そもそも、AFの合焦アルゴリズム自体の
精度にも課題があると思われ、結果的にAFでの
合焦が、実用範囲以下の低精度となっている。
まあつまり「AFもMFも弱い」という事であり、
本レンズを購入後は、Xマウント機を、精密な
ピント合わが要求されるレンズ、すなわち、
「大口径、望遠、マクロ」を用いる為の母艦と
する事は完全に諦め、もっぱらその逆のレンズ、
例えば、AF広角系、パンフォーカス、トイレンズ等
の母艦としてXマウント機を用いる方針に変更した。
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でもまあ、AFやMFの性能は、いずれ改善されていく。
今は無理であっても、数年後か10年後の新鋭機で
あれば、現在所有しているXマウント用のレンズ
群も、より快適に使えるようになるかも知れない。
まあ、それを待てば良い訳であり、それまでは
現在所有している機体を使い潰してしまえば良い
とも思っている。
こういう事からも「レンズはずっと使えるが、
(デジタル)カメラは、仕様老朽化寿命(=
新鋭機に比べて性能が低い)があるので、長くは
使えない、よって、カメラにあまり金をかけず、
レンズの方に予算をつぎ込むのが良い」という
持論(1対4の法則、匠の写真用語辞典第16回)
に繋がる訳だ。
(追記:2021年夏より、TAMRONおよびCOSINA
から、ようやくFUJIFILM Xマウント用のレンズが
新規に発売される。Xマウント発売後9年を経過
しての「何故、今更?」という話なのだが・・
恐らくはFUJIFILMは、この時点までXマウントの
AFプロトコルを特定のメーカー(例:ツァイス銘の
Touit等を開発した非公開のメーカー)にしか
開示していなかったので、中国製等でのMFレンズしか
存在しなかったのだろう。その結果、サードパーティ製
交換レンズが少ない「孤高のXマウント」になりそうな
状況を避ける為、AFプロトコルを、多くのメーカーに
開示して、Xマウントの普及を目指したと思われる。
FUJIFILM製純正レンズは、生産量が少ないからか、
コスパが非常に悪い事が大きな課題であったので、
他社製レンズが普及してくれば、FUJI X機も若干
実用性が増えてくるだろうから、悪い話では無い)
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さて、次は本記事ラストのマクロとなる。
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レンズ名:SIGMA (AF) MACRO 70mm/f2.8 EX DG
レンズ購入価格:28,000円(中古)(以下、EX70/2.8)
使用カメラ:CANON EOS 8000D (APS-C機)
2006年に発売されたフルサイズ対応AF等倍マクロ。
正式型番は不明、上記は妥当と思われる型番を
推測で書いている。
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初出の際にインターネット上のレビュー記事で
「カミソリマクロ」と称されたレンズであり、
後継のART版(2018年)にも「カミソリマクロ」
というキャッチコピーが使われた事で、こちらが
「元祖カミソリマクロ」と呼ばれる場合もある。
ただ、1980年代頃の「TOKINA 90/2.5 Macro」
でも同様に「カミソリマクロ」の愛称がついた
記録もあり、わりと普遍的な呼び名だと思われ、
この呼称は、あまりマニア層の間には広まって
いないと思われる。
それと、この時代(2000年代)のSIGMA EX DG系
マクロ(50mm,70mm,105mm,150mm,180mm)
は、いずれもシャープな描写力を特徴とし、
全てがカミソリマクロ的な雰囲気を持っている。
本レンズEX70/2.8のみを「カミソリマクロ」と
呼ぶのは、どうだろうか?とも思っている。
そのEX DGマクロの多くは所有していて、
*特殊レンズ第42回「伝説のSIGMA MACRO」
*レンズマニアックス第87回「SIGMA EX DG MACRO」
(後者は掲載予定)の両記事に詳しい。
EX DG系の全般的な話では、完成度が高いマクロで
あり、描写力上の不満は殆ど無い。
ただし、AFの精度が低い場合が多いので、これらは
基本的にはMFで使用するのが望ましい。
その一部は、2010年代では、超音波モーターや
手ブレ補正が搭載された新型となったが、近接
撮影においては、各種モーター内蔵+無限回転式
ピントリングでの「シームレスMF」仕様のものは
非常に使い難いという課題があり、かつ、超音波
モーターや手ブレ補正は、「付加価値」であるから
それらの新製品の価格は高価になっている。
そうであれば、使い難いレンズを高額に購入する
必要性は全く無く(→コスパが悪すぎる)
私の場合は、中古価格が安価で、実用性も優れる
2000年代のEX DGマクロを中心に収集し、それらを
主力のマクロレンズとしている。
余談であるが、SIGMAでは、かつて1990年代頃
だったか? 90mmの焦点距離を持つマクロレンズが
販売されていた。そのレンズ(型番不詳)は所有
していたが、当時から一般的であった、TAMRON製
90mm系マクロ(F2.5型や、初期F2.8型)と
比較すると描写力に劣り、私は短期間で処分して
しまっていた。
「TAMRON(90mm)と同じ土俵で勝負するのは不利」
との、SIGMAでも同様な認識があったのか?
その後、SIGMAは、90mmの焦点距離のマクロの
開発を避けるようにして、70mmと105mmの2系統
に分類されるようになって行った。
前述のEX DG系の70mm/105mmのマクロは、その
流れによるものである。
また、恐らくだが、やはり、TAMRONの90mm系の
描写傾向を強く意識して(反発や差別化の為)
EX DGの70/105mmは設計されたと思われ、
TAMRONの90mm系マクロではあまり感じらない、
「強い解像感、シャープネス」を重要視して開発
されたものだと思われる。
まあつまり、この特性をもって、後にEX DG系列が
「カミソリマクロ」と呼ばれる所以になったので
あろう。
さらにちなみに、その「解像感」については、
例えば、本記事で紹介したNIKON Ai105/4の方が
より強く感じる場合もある。
また、焦点距離は異なれど、Ai55/3.5やOM50/3.5
いった「平面マクロ」も同様だ。
まあつまり、感覚的に言えば、SIGMA EX DGは
「平面マクロ」の設計テイストを僅かに取り入れて
いる製品群だとも言える。まあでも、あまりに
「平面マクロ」色を濃くしすぎると、その用途や
被写体汎用性が著しく限定されてしまうので、
あくまで、過剰すぎるようにまでは設計されては
いない。
食品の”カレー”で言えば、TAMRON 90マクロ系が
多くの消費者層に受け入れられる「中辛カレー」で
あるならば、SIGMAのEX DG系は、一部の消費者が
好む「辛口カレー」のような差異であると思う。
それらはもう、「どっちが良い、どっちが優れる」
とかの答えを出す事は、できないであろう。
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SIGMA EX DGとTAMRON 90 Macroの選択もしかり、
消費者やユーザー毎のレンズの用途、目的、あるいは
好みによって、どちらを選ぶかが決まってくる事に
なるからだ。
どうしても差異が気になるならば、もう「両方買う」
しか解決策は無いであろうし、そうする事で、より
両者の設計コンセプトの違いも明確に理解する事が
できるだろうと思う。
すなわち、世間でのビギナー消費者層が良く言う
ビ「どのレンズを買ったら良いのですか?」
という質問には、絶対に答えようが無い訳だ。
カレーの例で挙げれば、
「貴方は、”辛口カレー”を食べるのが良いです」
などとはアドバイスしようが無い訳であり、まあ、
レンズ等でも、だいたい、それと同じ状況だろう。
どんなカレーを食べるのか決めるのは、あくまで
消費者自身である。
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さて、次回の本シリーズ記事は、
「最強マクロ選手権・中望遠マクロ・予選(2)」
を予定している。
今回からは「中望遠マクロ」カテゴリーとし、
本記事は、その予選第1組とする。
ここで「中望遠」とは、実焦点距離が70mm以上で
110mm未満の、フルサイズ対応マクロレンズか、
稀に、μ4/3機専用レンズ等で、換算画角が、
その焦点距離範囲に入るものを対象とする。
最大撮影倍率については、あまり制限をかけず
およそ、センサー換算で1/4倍以上のものを
選ぶとしよう。(=準マクロも対象)
この条件に当てはまる所有レンズは27本、
1予選記事あたり6~7本の紹介(対戦)数とし、
4記事(4予選)を連続して掲載する。
では早速、中望遠マクロの予選(1)を始めよう。
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まずは最初の中望遠マクロレンズ。
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(Model 272E)
レンズ購入価格: 8,000円(中古)(以下、272E)
使用カメラ:CANON EOS 7D MarkⅡ (APS-C機)
2004年に発売されたAF中望遠等倍マクロレンズ。
いわゆる「90マクロ」シリーズは、勿論、全てが
フルサイズ対応である。
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定評がある。いわゆる「マニア層」においては、
いずれかの時代の「TAMRON 90マクロ」を、所有
していない人を探す事の方が難しいかも知れない。
で、初級マニア層等では、これを「タムキュー」
と呼ぶ事が多いが、その名前を使う事は非推奨だ。
何故ならば、「タムキュー」と十把ひとからげの
呼称では、どの時代の、どのModelの事を指して
話をしているのか?さっぱりわからないからだ。
TAMRON SP90Macroシリーズは40年を超える歴史を
持ち、光学系だけを見ても4種類も変遷している。
本シリーズ記事の中望遠マクロ編では、これから
その全てのSP90Macroの光学系の機種群を、紹介
(対戦)していくのだが、勿論、個々に光学系が
異なるので、それらの写りは基本的には別物だ。
だから、90Macroシリーズのオーナー(所有者)
であれば、必ず「Model 52BB」とか「172E型」
のように、個別の型番で、あるいは開放F値や
機種名での特徴(F2.5型とか、USD型等)で、
それらを、明確に区分する筈である。
まあ、あえて許せるレベルは「タムキューの
F004型」といった表現であり、こう言うならば、
どのレンズの話をしているのかは明確だ。
単に「タムキュー」で終わっていたら、その
レンズを所有してもおらず、「ちょっと借りてきて
撮ってみただけ」とか、そんな状況すら想像できる。
他分野の話で言えば、乗用車での「スカG」という
愛称のようなもので、憧れとかで、そう呼んでいる
だけであり、実際のオーナーならば、勿論、そんな
「ざっくり」とした呼び方はしない。
さて、本272E型における、型番「Di」は、デジタル
対応の事だと思われるが、旧型172E型(1999年)
に対しての改良点は、レンズ後玉表面に反射防止
コーティングを施し、撮像センサーと後玉間での
乱反射によるゴースト等の発生を防ぐ措置がある。
本レンズの発売時には、
「レンズ後群での光学的なテレセントリック特性
(≒直進性)を改善し、撮像センサーに垂直に
光が当たるようにした」
・・との噂も、まことしやかに流れていたのだが、
それはどうやら、完全な”デマ”だった模様であり、
本レンズの光学系は旧172E型と同じであった。
ただまあ、旧172E型(異マウントで2本所有している)
でも、さんざんデジタル機で使ってきたが、後玉の
乱反射などは気にした事もなかった(=出ない)
結局のところ、メーカーあるいは評論家などから、
「こういう技術が搭載されて、良くなりました」
などと言われても、それを鵜呑みにする事は
良くない。むしろ、ユーザー視点からは、
「そんな話は、根拠が無く、全く当てにならない。
要は、その製品が、使えるか否か、だろう?」
という事になるのだと思う。
それに、何故、上記のような「デマ」が流れてしまう
のかも理解できない。まあ、デジタル時代に入った
ばかりの頃の話なので、ユーザー層等においても、
たとえ上級層やマニア層であっても、デジタルの原理
等は、さっぱり理解していないので、わかったような、
わからないような話に、皆が飛びついてしまった状況
だろうと思われる。
(そういう解説をした紹介記事があったかも知れない)
まあ、そのあたりは、もはやどうでも良い話だ・・
まずは歴史的に重要な事は、本272E型の発売から、
次なる90マクロのF004型が出るまでの間、
およそ8~9年間も、新型モデルへの更新が凍結
されてしまった事がある。
個人的な分析では、その「空白期間」が生じたのは
2つの理由があったと思われる。
1)2000年代初期デジタル一眼レフ時代では、
殆どがAPS-C機であり、172E型や272E型は
135mm相当の1.5倍マクロとなり、銀塩時代から
慣れ親しんだ「中望遠マクロ」とは違和感の
ある状況となり、人気(必要性)が落ちた。
(参考:この時代、他の焦点距離(50mm等)でも、
同様な課題が良く言われたが、APS-C機での画角の
変化は、利用者の感覚的なアジャストで対応できる。
だから、本来であれば、こういう事は、問題には
ならないし、後年にそれが言われなくなったのは
皆が、APS-C機での画角に慣れたからであろう)
なお、後継F004型が発売された2012年は、
「フルサイズ元年」であり、多数のフルサイズ機が
発売され、その時代から、本来の画角の90mmの
マクロとして、皆が、これを使えるようになった。
2)172E型、272E型で、光学設計上は既に完成の
域にまで達していて、これ以上の改良点が無かった。
→だから、F004型では、手ブレ補正や、超音波
モーターを内蔵する事を「付加価値」とした。
マクロレンズに、そうした機能は基本的には不要
だが、それしか改善の余地が無かった。
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272E型で十分だ。既にこれらは完成されている。
また、別記事で述べるが、F004型になったからと
言って、全ての面での性能が改善されている訳では
無い。(→むしろ改悪もある)
172E型や272E型は、現代では中古相場も安価で、
コスパが良く、お買い得感も強いマクロだ。
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では、次のマクロ(マイクロ)レンズ。
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レンズ購入価格:8,000円(中古)(以下、Ai105/4)
使用カメラ:OLYMPUS PEN-F (μ4/3機)
1977年発売のMF小口径中望遠1/2倍マクロレンズ。
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高級機(=手動レンズ情報設定機能のある機種)
で使う事は、さほど困難では無い。
ただ、今回はちょっと捻くれてμ4/3機で使い、
1/2倍までの性能制限を取り払い、
「210mm画角の等倍マクロ」
として、望遠マクロ風の用途に用いる事とした。
本Ai105/4は、「平面マクロ」的な特徴を持つが、
姉妹レンズの、Ai55/3.5程に顕著では無い。
むしろ、ピント面での解像感が高いという長所は、
現代においても十分に通用するほどであり、
入手価格も、たまたま安価であったので、
コスパが良く、結構「お気に入り」のレンズだ。
ただまあ、セミ(準)オールドレンズであるし、
3群5枚と、単準なレンズ構成でもあるから、
全ての(諸)収差が、良好に補正されている訳でも
無いだろう。解像感を重視した設計の代償からか?
いわゆる「ボケ質破綻」が頻発するレンズである。
それについては、「ボケ質破綻回避」の技法を
使う必要があり、その場合は、NIKON(デジタル)
一眼レフに装着するよりも、各社ミラーレス機で
使用した方が、技法を使い易い。
まあ、そういう意味もあり、今回はμ4/3機で
使っている次第である。
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では無い。ただまあ、このレベルで本シリーズの
B決勝や決勝戦に、残れるかどうかは疑問だ。
僅かにそこには届かないあたり(本シリーズでは
特に設けていないが、準々決勝かBEST16あたり)
のポジションのマクロ(マイクロ)になるのでは、
なかろうか・・
---
では、3本目のマクロレンズ。
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レンズ購入価格:24,000円(新品)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2019年に発売された、各社ミラーレス機マウント用
APS-C機以下対応MF中望遠(相当)等倍マクロレンズ。
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「ジェネリック・レンズ」(つまり、過去の名レンズ
の設計を、スケールダウンし、ミラーレス機用等に
微調整を施し、安価なレンズとして販売する事)
を非常に得意とする「七工匠」(7Artisans)では
あるが、本レンズにおいては、その「元となった
マクロレンズ」が、どれであるか?を特定できない。
まあ、「写りが良いジェネリック・レンズ」
であれば、過去の(名)レンズを引っ張り出して
描写傾向を比較し、レンズ構成図等も参考にして
「ふむふむ、このレンズのコピーだったのね」と、
納得する事が出来、宝探しのような知的ゲームを
楽しむような気分に浸る事も出来るのだが・・
が、何も、あまり写りが芳しく無いレンズにおいて、
そのルーツ(起源)を探るような事をしても
あまり楽しく無いし、そもそも、そういう確認作業を
するには膨大な手間がかかる訳だから、本レンズに
関しては、もう完全に、元レンズを探す事は諦めた。
本レンズは、予定されていた発売日から数ヶ月も
遅れて発売されたので、
「下手をすると、何らかの問題点が発見されて、
慌てて修正をしていたのでは?
そして、修正をしても、完璧に性能は改善されず、
やむなく、中途半端な状態で発売されたのでは?」
・・などという、あまり好ましく無い状況すらも、
想像してしまった次第だ。
実際には、そういう事は無かったのかも知れないが
本レンズが近年での「中国製(外国製)格安レンズ」
の中では珍しいマクロレンズであり、「七工匠」と
しても初のマクロレンズだ、色々と設計やノウハウ面
での未成熟はあったかも知れない。
なお、中国製マクロの全てが低性能という訳でも
無いとは思う。例えば、また他記事で紹介するが
LAOWA 100mm/F2.8(Ultra) Macro等は、なかなか
良く写る高性能マクロである。(ただし若干高価だし、
”完璧”という程の描写力には、やや届かない)
本レンズに関しては、「改良待ち」という事で
現状の(2019年)バージョンは、”非推奨”という
事にしておく。
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からも新規にマクロレンズが発売されたが、
なんだか同様な課題を抱えているような、悪い
予感がしていて、ちょっと購入は保留している。
まあ、安価な中古品が出たら買うかも知れない。
要は「コスパ」が肝要であるから、仮にレンズが
若干見劣りする性能であったとしても、その性能に
見合うだけ値段が安ければ、文句は言わない訳だ。
本レンズだって、仮に8,000円くらいで購入
できていたとすれば、全然問題は無かった訳で、
それが24,000円も出すならば、例えばTAMRONの
高性能マクロ(SP60/2や、SP90/2.8系)を
中古で買ったとしても、お釣りが出る位だから、
それらと比べた価値感覚においては、「コスパが
悪い」と見なせる訳である。
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では、4本目の中望遠マクロ。
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レンズ購入価格:14,000円(新品)
使用カメラ:CANON EOS M5(APS-C機)
発売年不明、恐らくは1980年代~1990年代頃の
MF中望遠1/2倍(ハーフ)マクロ。
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新品購入価格は安価である。
その当時(1990年代頃)でも、COSINAは他社の
カメラやレンズを沢山生産しているOEMメーカー
ではあったが、さすがに一般消費者層にまでは
ブランド銘が知られておらず、自社ブランドの
レンズを販売する際には、
「定価4~5万円を、今ならば7割引」のような、
「叩き売り戦略」を取っていた。
これは勿論、「赤字覚悟」なのでは無く、OEM
メーカーとしての高い技術力や製造力を用いて、
7割引で売っても利益が出るような、ローコストな
レンズ設計をする事が出来た訳だ、つまりここでの
”定価”は、ただ単に「ダミー」である。
後年1999年には、コシナは「フォクトレンダー」
のブランドを入手、加えて、さらに2006年には、
「カール・ツァイス」のブランド使用権も入手し、
今や、「コシナは高級レンズメーカーだ」という
認識が、世間一般では常識であろうが・・
まあそれでも、「現代のマクロアポランターの
僅か10分の1の購入価格で、本レンズが買えた」
と言うべきなのか?
はたまた「マクロアポランターは、本レンズの
10倍の過剰なまでの高価(プレミアム価格)だ」
と考えるべきなのか?
まあ、どちらも正解なのだろうと思える。
でも、当然ながら、新鋭のマクロアポランターが、
本レンズよりも10倍も良く写る訳では無い。
さて、本レンズは、典型的な「平面マクロ」だ。
上記NIKKOR Ai105/4の描写に近いとも言えるが、
そこまでの設計の「エレガントさ」は無く、むしろ
「思い切りコストダウンしました」といった、
ぶっきらぼうな、(ある意味)潔さは感じる。
まあつまり、ボケ質が固かったりボケ質破綻が
頻発する訳であり、本レンズの場合は、いかに
そのあたりを制御あるいは回避するか?の作業に
時間を取られてしまう訳だ。
このあたりの技法は、現代のミラーレス機を
使ったところで容易では無い、ましてや銀塩時代
の一眼レフの光学ファインダーでは、まず実施が
出来ない撮影技法だ。
だから、本レンズを購入するような、その当時の
初級中級マニア層等においても、一眼レフを母艦
としたら、本レンズでは、コントローラビリティ
(制御する事)が殆ど無い為、たまたま良く写ったり、
あるいはボケ質が乱れてしまう事もあっただろう。
すなわち、ユーザー個々によっては、
A「安いけど、なかなか良く写るレンズだよ」
とか、
B「7割引だったから、試しに買ってみたけど、
やはり写りが悪いや、安かろう、悪かろう」
と、いったように、その評価は、個々でまちまちな
評価内容となった事が容易に想像できる。
でも、それらは、いずれも偶然での話だ、レンズ
の性能の本質の理解には至っていない。
あるいは、前述のNIKON Ai105/4と比較した
マニアも居たかも知れない。
C「NIKONのマイクロの方が、ずっとシャープだ、
さすがNIKKOR、高価なだけのことはある」
などと神妙に語っていたのかも知れないが・・
まあ、要は、Ai105/4の方が解像力重視で、
一見してビギナー層からは良く写るように見えて
しまうだろうが、立体被写体でのボケ質破綻は
Ai105/4が本COSINA 100/3.5よりも顕著だ。
ただ、ユーザーはAi105/4のシャープな描写に、
ある意味「誤魔化されてしまう」から、その
ボケ質破綻に言及することはまず無いだろうし、
そのユーザーは、きっと「平面被写体」等を
撮って解像感が高い状態で写っている写真しか、
他のマニア等には見せない事であろう。
まあ、こういう風に、Ai105/4の方が、全般的に
ビギナー層向けの特性だ。まあつまり、弱点を
見せないようにする点が「エレガントな設計だ」
と前述した点だ。(注:とは言え、Ai105/4は
1900年という古い時代に、旧フォクトレンダー社
(ドイツ)が開発した、「ヘリアー型」構成を
そのまま転用してる。つまり新しくオリジナルな
光学系設計では無い)
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して使うのは、銀塩時代であれば超A級難易度で、
現代でもA難易度級であろうから、これはもう、
実践派上級マニア向けに他ならない。
結局、コストダウン設計により、多くの撮影条件
でも良好な描写力を発揮できるようには作られて
いない。でも、もしかすると、上手く制御して
レンズの美味しい部分(長所)だけを活かせば、
そこそこ良く写るレンズにはなり得る。
まあ、皆が上手く使いこなす事ができないから
「安価」なのか。あるいは、そういう風に、
オーナー(撮り手)の撮影技能に依存するような
設計思想であるからこそ、コストダウンが出来た
のか・・? まあでも「手馴れた」設計手法だ。
でも、総論としては、「結局のところ、レンズの
性能を活かすも殺すもユーザー次第」という事
になるのだろう。
「レンズの言うがままに撮ってはいけない」とも
言い換える事もできる。
まあ、いずれも実践は難しい話ではあるが・・
---
では、5本目のマクロレンズ。
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レンズ購入価格:39,000円(中古)(以下、XF60/2.4)
使用カメラ:FUJIFILM X-T10(APS-C機)
2012年に発売された、FUJIFILM Xマウント専用の
AF中望遠1/2倍マクロレンズ。
Xマウント機は、現状全てAPS-C機であるので、
換算画角は90mm相当となる。
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描写力はさほど悪くは無いのだが、”一般レンズ
に比べて、近接域での描写特性がとても優れる”
事が普通のマクロレンズにしては、「もう一声」
という印象が強い。
また、Xマウント用純正レンズは、生産数が少ない
からか?新品価格も中古相場もかなり高目であり
この値段を出すならば、他社の高性能マクロが
よりどりみどりの状態だ。
しかし、他にはXマウントで使用できる、適価な
(AF)マクロレンズが存在しない為、選択肢は
本レンズしか無い状態だ。
まあ、近年の中国製のマクロレンズの一部は
Xマウント用も存在しているが、それらはMFレンズ
であり、その状況であれば、過去の古今東西の
MFマクロをXマウントへアダプターで装着するのと
大差ない。
ここで課題となるのは、FUJIFILM Xマウント機
全般でのMF精度の低さであり、ピーキングや
各種MFアシスト機能の精度が優れておらず、
加えてMF用の画面拡大の操作系も練れていない。
よって、MF(マクロ)レンズや、AFマクロでの
MFでの使用は、Xマウント機では苦しい。
さらには、本レンズは「無限回転式ピントリング
+距離指標無し」の仕様であり、これも、いつも
言っているように、マクロレンズとしてのMF用途
には向かない仕様だ。
残るAF性能だが、精度が壊滅的に低い。
これは像面位相差AFを搭載しているXマウント機
を用いても同様である。
原因は、合焦距離の設定が、近接用と中遠距離用の
二重構造である事。まあここは、他社のマクロでも
同様な(電子的)構造になっている場合が多いが
その切換(オートマクロ)の判定アルゴリズムが
未成熟であり・・
(注:オートマクロは2015年頃からの搭載であり、
それ以前の機種、X-E1やX-T1(Ver.2まで)等
では、近接域の撮影では、一々「マクロボタン」
を手動で押して、切り替える必要があった)
それと、そもそも、AFの合焦アルゴリズム自体の
精度にも課題があると思われ、結果的にAFでの
合焦が、実用範囲以下の低精度となっている。
まあつまり「AFもMFも弱い」という事であり、
本レンズを購入後は、Xマウント機を、精密な
ピント合わが要求されるレンズ、すなわち、
「大口径、望遠、マクロ」を用いる為の母艦と
する事は完全に諦め、もっぱらその逆のレンズ、
例えば、AF広角系、パンフォーカス、トイレンズ等
の母艦としてXマウント機を用いる方針に変更した。
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今は無理であっても、数年後か10年後の新鋭機で
あれば、現在所有しているXマウント用のレンズ
群も、より快適に使えるようになるかも知れない。
まあ、それを待てば良い訳であり、それまでは
現在所有している機体を使い潰してしまえば良い
とも思っている。
こういう事からも「レンズはずっと使えるが、
(デジタル)カメラは、仕様老朽化寿命(=
新鋭機に比べて性能が低い)があるので、長くは
使えない、よって、カメラにあまり金をかけず、
レンズの方に予算をつぎ込むのが良い」という
持論(1対4の法則、匠の写真用語辞典第16回)
に繋がる訳だ。
(追記:2021年夏より、TAMRONおよびCOSINA
から、ようやくFUJIFILM Xマウント用のレンズが
新規に発売される。Xマウント発売後9年を経過
しての「何故、今更?」という話なのだが・・
恐らくはFUJIFILMは、この時点までXマウントの
AFプロトコルを特定のメーカー(例:ツァイス銘の
Touit等を開発した非公開のメーカー)にしか
開示していなかったので、中国製等でのMFレンズしか
存在しなかったのだろう。その結果、サードパーティ製
交換レンズが少ない「孤高のXマウント」になりそうな
状況を避ける為、AFプロトコルを、多くのメーカーに
開示して、Xマウントの普及を目指したと思われる。
FUJIFILM製純正レンズは、生産量が少ないからか、
コスパが非常に悪い事が大きな課題であったので、
他社製レンズが普及してくれば、FUJI X機も若干
実用性が増えてくるだろうから、悪い話では無い)
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さて、次は本記事ラストのマクロとなる。
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レンズ購入価格:28,000円(中古)(以下、EX70/2.8)
使用カメラ:CANON EOS 8000D (APS-C機)
2006年に発売されたフルサイズ対応AF等倍マクロ。
正式型番は不明、上記は妥当と思われる型番を
推測で書いている。
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「カミソリマクロ」と称されたレンズであり、
後継のART版(2018年)にも「カミソリマクロ」
というキャッチコピーが使われた事で、こちらが
「元祖カミソリマクロ」と呼ばれる場合もある。
ただ、1980年代頃の「TOKINA 90/2.5 Macro」
でも同様に「カミソリマクロ」の愛称がついた
記録もあり、わりと普遍的な呼び名だと思われ、
この呼称は、あまりマニア層の間には広まって
いないと思われる。
それと、この時代(2000年代)のSIGMA EX DG系
マクロ(50mm,70mm,105mm,150mm,180mm)
は、いずれもシャープな描写力を特徴とし、
全てがカミソリマクロ的な雰囲気を持っている。
本レンズEX70/2.8のみを「カミソリマクロ」と
呼ぶのは、どうだろうか?とも思っている。
そのEX DGマクロの多くは所有していて、
*特殊レンズ第42回「伝説のSIGMA MACRO」
*レンズマニアックス第87回「SIGMA EX DG MACRO」
(後者は掲載予定)の両記事に詳しい。
EX DG系の全般的な話では、完成度が高いマクロで
あり、描写力上の不満は殆ど無い。
ただし、AFの精度が低い場合が多いので、これらは
基本的にはMFで使用するのが望ましい。
その一部は、2010年代では、超音波モーターや
手ブレ補正が搭載された新型となったが、近接
撮影においては、各種モーター内蔵+無限回転式
ピントリングでの「シームレスMF」仕様のものは
非常に使い難いという課題があり、かつ、超音波
モーターや手ブレ補正は、「付加価値」であるから
それらの新製品の価格は高価になっている。
そうであれば、使い難いレンズを高額に購入する
必要性は全く無く(→コスパが悪すぎる)
私の場合は、中古価格が安価で、実用性も優れる
2000年代のEX DGマクロを中心に収集し、それらを
主力のマクロレンズとしている。
余談であるが、SIGMAでは、かつて1990年代頃
だったか? 90mmの焦点距離を持つマクロレンズが
販売されていた。そのレンズ(型番不詳)は所有
していたが、当時から一般的であった、TAMRON製
90mm系マクロ(F2.5型や、初期F2.8型)と
比較すると描写力に劣り、私は短期間で処分して
しまっていた。
「TAMRON(90mm)と同じ土俵で勝負するのは不利」
との、SIGMAでも同様な認識があったのか?
その後、SIGMAは、90mmの焦点距離のマクロの
開発を避けるようにして、70mmと105mmの2系統
に分類されるようになって行った。
前述のEX DG系の70mm/105mmのマクロは、その
流れによるものである。
また、恐らくだが、やはり、TAMRONの90mm系の
描写傾向を強く意識して(反発や差別化の為)
EX DGの70/105mmは設計されたと思われ、
TAMRONの90mm系マクロではあまり感じらない、
「強い解像感、シャープネス」を重要視して開発
されたものだと思われる。
まあつまり、この特性をもって、後にEX DG系列が
「カミソリマクロ」と呼ばれる所以になったので
あろう。
さらにちなみに、その「解像感」については、
例えば、本記事で紹介したNIKON Ai105/4の方が
より強く感じる場合もある。
また、焦点距離は異なれど、Ai55/3.5やOM50/3.5
いった「平面マクロ」も同様だ。
まあつまり、感覚的に言えば、SIGMA EX DGは
「平面マクロ」の設計テイストを僅かに取り入れて
いる製品群だとも言える。まあでも、あまりに
「平面マクロ」色を濃くしすぎると、その用途や
被写体汎用性が著しく限定されてしまうので、
あくまで、過剰すぎるようにまでは設計されては
いない。
食品の”カレー”で言えば、TAMRON 90マクロ系が
多くの消費者層に受け入れられる「中辛カレー」で
あるならば、SIGMAのEX DG系は、一部の消費者が
好む「辛口カレー」のような差異であると思う。
それらはもう、「どっちが良い、どっちが優れる」
とかの答えを出す事は、できないであろう。
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消費者やユーザー毎のレンズの用途、目的、あるいは
好みによって、どちらを選ぶかが決まってくる事に
なるからだ。
どうしても差異が気になるならば、もう「両方買う」
しか解決策は無いであろうし、そうする事で、より
両者の設計コンセプトの違いも明確に理解する事が
できるだろうと思う。
すなわち、世間でのビギナー消費者層が良く言う
ビ「どのレンズを買ったら良いのですか?」
という質問には、絶対に答えようが無い訳だ。
カレーの例で挙げれば、
「貴方は、”辛口カレー”を食べるのが良いです」
などとはアドバイスしようが無い訳であり、まあ、
レンズ等でも、だいたい、それと同じ状況だろう。
どんなカレーを食べるのか決めるのは、あくまで
消費者自身である。
----
さて、次回の本シリーズ記事は、
「最強マクロ選手権・中望遠マクロ・予選(2)」
を予定している。