最強のマクロレンズを決定するシリーズ記事。
現在「広角マクロ・準広角マクロ」カテゴリーでの
予選を行っているが、以下では「広角マクロ」編と
簡略表記する。
今回の予選第2組で、このカテゴリーは終了だ。
紹介(対戦)レンズ本数が多目なので、1レンズ
あたりの実写掲載数、および個々のレンズの仕様等
を紹介する内容は最小限とする。
では早速、広角マクロの予選(2)を始めよう。
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まずは最初の準マクロ広角レンズ。
![_c0032138_15361877.jpg]()
レンズ名:SIGMA 28mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
レンズ購入価格:21,000円(中古)(以下、EX28/1.8)
使用カメラ:SONY α65 (APS-C機)
2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル兼用
AF大口径広角単焦点、準マクロレンズ。
最短撮影距離は20cm、最大撮影倍率は1/2.9倍だ。
同時代の「SIGMA広角3兄弟」の末弟である。
![_c0032138_15361827.jpg]()
この時代の他社レンズでは、概ね最大1/2倍以上の
もので無いと「MACRO」と記載しない事、へと転換
しつつある状況であったが、これは「自主規制」の
ようなものであったかも知れず、当時のSIGMAでは、
本EX28/1.8のような、最大1/3倍程度のレンズにも
MACROと記載してあった。
銀塩機で超広角、APS-C型デジタル機で準広角、という
コンセプトで、銀塩からデジタルへの転換期に有益性が
極めて高かった「SIGMA広角3兄弟」ではあるが、その
末弟ともなると、APS-C機で換算42mmでは、少々用途
も少なく、「広角3兄弟」の中では、本レンズの購入は、
発売後十数年を過ぎてから、と非常に遅かった。
もう1つ購入が遅れた理由は、本レンズの前機種として、
Hi-Speed Wide(Ⅱ)等と呼ばれていた(注:正式型番
は不明)同スペックのSIGMA製28mm/F1.8を使って
いたからだ、そちらは近接撮影の性能は持たなかった
のだが、描写力はかなり高く、銀塩時代には愛用して
いたのだが、訳あって銀塩末期に譲渡してしまい、
その前機種とスペックが被り、かつ、サイズ感として
およそ倍にも及ぶまで巨大化した、本EX28/1.8は、
どうにも買う気になれなかった次第だ。
本レンズはどうもAFの精度が低い、これは経年劣化
なのか、微妙に故障しているのか、あるいは元々が
この程度の性能であったのか?は不明だ。
勿論MFで使う事で回避はできるが、なんだか中途半端
な状態である、本レンズの細かい話は割愛しておこう。
(特殊レンズ第52回「SIGMA広角3兄弟」編参照)
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では、次のレンズ。
![_c0032138_15361829.jpg]()
レンズ名:Docooler 35mm/f1.6
レンズ購入価格:9,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GF1 (μ4/3機)
詳細不明。発売年不明、メーカー名も不明・・の
中国製と思われる、ミラーレス機専用?単焦点MF
準広角(標準画角)レンズ。
![_c0032138_15361927.jpg]()
極めて高い近接性能(最短撮影距離18cm)を持ち、
これは、フルサイズ対応では無いものの、35mmの
実焦点距離の(非マクロ仕様の)レンズとしては、
歴代トップクラスである。
また、描写力もさほど悪く無いし、製造品質も高い。
あまり弱点が無いのだが、前述のように「出自不明」
という点が大きな課題となり、現在、これを入手する
事は、なかなか難しいかも知れない。
2010年代中頃位の古い情報において、本レンズは
通販で売られていたWeb資料も目にしたのだが、既に
販売終了(少ロットで売り切れ?)になっていた
模様であり、私の場合は、これをたまたま中古市場で
見かけて、”試しに買ってみた”というだけの状況だ。
あまり褒めると「どうしても欲しい」という好事家が
出てきたら「投機対象」となってしまうかも知れない。
それに実のところ、この入手価格9,000円というのも
さほど安価では無く、通販で流通していた頃の価格と、
ほぼ同等か、むしろ若干高価な位であった。まあつまり、
既に、希少価値で若干のプレミアム相場化していた訳だ。
よって、基本的には「入手困難につき非推奨」と、して
おくが、指名買いとかは、あまり期待せずに、偶然に
中古市場等で適価(5,000円程?)で見かけたならば、
購入は悪く無い。
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では、3本目のレンズ。
![_c0032138_15363052.jpg]()
レンズ名:SONY DT 35mm/f1.8 SAM (SAL35F18)
レンズ購入価格:11,000円(中古)(以下、DT35/1.8)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2010年に発売された(α Aマウント)APS-C機専用
準広角(標準画角)AFエントリーレンズ。
APS-C機専用(フルサイズ対応では無い)ながら、
最短撮影距離23cm、と優れた近接撮影性能を持ち、
35mmの実焦点距離の非マクロレンズ群の中では、
かなりの上位の最短撮影距離である。
α(A)機に備わる各種デジタル拡大機能を併用する事で、
マクロレンズ並みの撮影倍率となる。
![_c0032138_15363034.jpg]()
レンズ構成は5群6枚と、恐らくだが銀塩時代の
50mm/F1.8級小口径標準レンズの変形ダブルガウス型
構成を、2/3程度にダウンサイジングして設計された
「メーカー純正ジェネリック」であろうか(?)
こういう設計手法で、設計や検証や製造を省力化し、
格安なレンズを製造販売する事が出来るので、
その発売当時(2010年前後)、SONY α Aマウント機
を普及させる為に、入門層・初級層を「囲い込む」為の
市場戦略、つまり「エントリーレンズ戦略」を実施した
のだと思われる。当時のSONYでは、これを「はじめて
レンズ」と呼び、新規購買層へのアピールを行った。
ただまあ、その数年後の2013年頃において、SONYは
一眼レフとミラーレス機のブランドを「α」で統一し、
主軸をフルサイズミラーレス機(α7系、後にα9/1系)
に移した為、α Aマウント機の展開は縮小されてしまい、
当然ながら「エントリーレンズ戦略」も終焉して
しまった為、その後の時代において「はじめてレンズ」
シリーズの新製品は発売されていない。
で、あれば、本DT35/1.8や姉妹レンズのDT50/1.8、
DT30/2.8(MACRO)、SAM85/2.8(フルサイズ可)の
4本は、SONYの(少なくともAマウントでは)最初で
最後の「エントリーレンズ」であり、歴史的価値が
高いと同時に、コスパも大変優れる為、マニア層や
「SONY党」であれば、押さえて(所有して)おくのも
悪く無い選択肢だ。(現代では中古相場も安価だ)
だがそれは、α Aマウントが縮退していき、いずれは
市場からは、母艦も消えてしまうだろう状況との
トレードオフであるから、従前の時代(2010年代中頃)
ほどには、現代においては、これらSONY製エントリー
レンズ群を、簡単には推奨し難くなってしまっている。
買うのであれば、いずれは使用困難となる状況を理解
した上での自己判断の選択となるであろう。
(参考:特殊レンズ第51回「SONY エントリーレンズ」
編で、全4本を紹介している)
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では、4本目はFA用特殊広角レンズだ。
![_c0032138_15363049.jpg]()
レンズ名:VS Technology VS-LD6.5
レンズ発売時定価:50,000円(以下、VS6.5)
使用カメラ:PENTAX Q(1/2.3型機)
発売年不明、恐らくは2000年代?の、FA用低歪曲広角
初期メガピクセル対応、1/2型センサー対応、
MF単焦点手動絞り、Cマウント、近接撮影専用レンズ。
開放F値は「不定」で、撮影倍率に応じてF2.2~F2.4
程度となる。(→「露光(露出)倍数」が掛る為)
![_c0032138_15363057.jpg]()
これまでのマシンビジョン用のレンズの紹介時には
専門的内容ばかりになって、極めて難解な話となった
のだが、今回は、そのあたりは、ばっさりと割愛し、
また別の視点での、余談のような説明としよう。
で、6.5mmの実焦点距離はPENTAX Qで使用時には、
フルサイズ換算で約35mmの準広角画角となるが、
本レンズは遠距離撮影が出来ないので、通常の写真用
レンズのようには撮れない。もし無限遠撮影をしたい
場合は、相当に絞り込んで「被写界深度」に頼って
撮る事になるが、もとより、そういう撮り方には全く
適さないレンズである。
こういうレンズは、例えば工場ラインでの検査の際に
製品(FAの世界では”ワーク(Work)”と呼ばれる)を
自動検査する際に、広角画角であるから、大きな製品や
または、FA機器の構造上の制限等で、ワークに近づいて
写さなくてはならない場合に使われるレンズだ。
その際、広角レンズである事で歪曲収差が出てしまうと、
製品自体が不良で曲がっているのか? レンズが低性能
で曲がって写っているのか? の区別が出来ないので
こうしたFA(/工業用)レンズでは、まず歪曲収差の補正
に重点を置いて設計されたものが多い。
レンズ型番のVS-LD6.5の「LD」は、恐らくであるが
「Low Distortion」(低歪曲)の略語だと思われる。
本レンズの時代(2000年代頃)の直後では、FA用の
カメラ等の解像力が大きく向上している。これは
それまでの時代のFAやCCTV(監視カメラ含む)の
システムでは、映像のモニターとして、TV受像機を
使う場合もあり、その頃では、まだアナログ受像機
のNTSC仕様のものが多かった。これはデジタルでは
およそ30万画素~35万画素に相当する。
当然、FA/CCTVの撮像センサー(カメラ)も、その
あたりの画素数(解像度)のものが主流であった。
だが、2010年代よりアナログ(TV)放送が終了し、
モニターTV受像機も、全て地デジ対応の製品となった
のだが、これは、1920x1080pixelでの表示ならば
約200万画素に相当している。
そういうモニターを使うと、いままでのアナログ対応
の30万画素CCTV(FA)システムでは、解像度が低すぎて
バランスが悪い。そこで撮像センサーの方も、この時代
からメガピクセル(100万画素級以上)となった訳だ。
ただし、元々、CCTV(FA)用撮像センサーは、写真用の
撮像センサーと比べてサイズが物凄く小さく、そこに
100万画素や300万画素のピクセルを詰め込むと、
個々のピクセルピッチが恐ろしく狭くなってしまう。
(写真用デジタル一眼レフの数分の1程度の小ささ)
こうなると、それまでの時代のCCTV(FA)レンズでは、
その解像力性能が追いつかない。
ちなみに、現代の写真用の新鋭高性能レンズですら、
ここまで小さいピクセルピッチには対応し難い状態だ。
そこで、本レンズの後の時代(2010年代)からは、
「高解像力仕様」の、CCTV(FA)用レンズが一般的に
なっていく。しかしながら、当然、これまでの時代
のレンズよりも大幅に高額となった。
で、本レンズのような古い時代のレンズは、急速に
「お役御免」となり、私もこういう旧型レンズを、
その業界に頼み込んで、何本か入手した次第だ。
(注:一般個人に向けて販売される事は、まず無い)
だが、旧型とは言え、写真用の中堅性能のレンズと
同等の解像力は持っているし、歪曲収差も少ない。
ならば、写真用マクロレンズの代用としての用途
位で使うのは、悪い選択では無い訳だ。
なお、この歴史を振り返ると、アナログ放送が
終わって(2011年)地デジになった事により、
モニターTVが無くなり、撮像センサーも高解像度化
して高価になり、それに対応するレンズも同様に
多少無理をして高解像力化(「メガピクセル対応」と、
これを呼ぶ)して、これも高価になった。
全てのシステム部材が高価になったのだが、果たして、
実際にCCTV(FAや監視カメラ)の用途で、そこまで
の高解像度(≒画素数)は必要なのであろうか?
という疑問があるだろう。
まあ、それは半分正解であり、用途によっては勿論
そこまでの解像度はいらない。
でも、ここでもまた写真用カメラ・レンズの市場と
全く同じ事が起こっており、つまり、そうやって
画素数だの解像力等を高めた事を付加価値とした、
高価な新製品をマーケット側では売りたい訳だ。
そういう風にマーケット(市場)が変化するならば
もう、消費者や利用者(ユーザー)は、そこに追従
するしか無い。もう、アナログTVモニターや旧型
機種等を新しく購入する事自体が難しいのだから、
まあ高価格化での出費は、やむを得ない。
もう1つ、FA(ファクトリー・オートメーション)や
マシンビジョンの世界では、「画像処理」の技術分野
とは、切っても切れないものがある。
写真の世界で「画像処理」と言うと、
「ああ、フォトショップ等でレタッチする事だね?」
と解釈する人が多いと思うが、この世界では、そういう
措置とは全く異なる。(上記は「画像編集」と呼ぶ)
ここで言う「画像処理」とは、画像をコンピューター
等で自動的に計算・解析する事(処理)の全般であり・・
工場であれば製品の不良を判断するとか、医療だったら
病気等を見つけるとか、監視用途ならば不審者を発見
するとか、駐車場や犯罪捜査であれば車のナンバーを
読み取るとか、セキュリティだったら、顔や指紋を
読みって本人かどうかを確認するとか・・
そういう計算処理が、本来の「画像処理」である。
この分野の理解には、非常に高い専門的知識を必要と
されるので、写真分野のユーザーとは全く接点が無い。
説明をしても、チンプンカンプンになると思うが・・
1つだけ重要なポイントを挙げておけば、前述の地デジ
化から、CCTV分野の機材も画素数が上がった、という
点がある。
ただ、それがFAや、その他の分野での「画像処理」
には、そのまま上手く反映される訳では無い。
例えば、製品の不良発見とか、それ位の画像処理
内容であれば、7万画素あたり(320x240pixel)で
計算しても、まあ十分だ。
で、もしそれを200万画素(1920x1080pixel)で
画像処理の計算を行うように改良しようとすると、
計算量は、これまでの約27倍!にも大きくなる。
当時、同じパソコン(Windows XP/Windows 7等)
を使った場合、今までのアナログ30万画素級の
システムで、製品の自動検査に仮に1個あたり1秒の
計算時間が必要だった場合、それが、新システム
では、27秒間!も計算しなければならないのだ。
(注:これは極端な例。実際の画像処理計算は
そこまで時間が掛らないケースが大半ではあるが
生体認証等では、これよりも遅いケースもある)
そんなに遅くなったら、工場の生産ラインはそこで
止まって製品が流れなくなるし、セキュリティでは
部屋に入る本人確認の為に30秒も待つ必要があるし、
不審者の発見では、犯罪が終わって逃げ出した頃に、
やっと非常ベルが鳴る事となる(汗)
そんな状態では効率が悪い。じゃあどうするのか?
そう、新しいシステムで全体の画素数が上がったと
しても、画像処理の計算は、従来通りの画素数で
行うのだ。さもないと、遅くてやっていられない。
で、下手をすれば、増加した画素数を縮小処理して
から画像処理に掛けないとならず、従来システム
よりも全体の処理が低速化してしまう事すらある。
結局のところ、画素数が向上した意味が、少なくとも
画像処理上では、まったくメリットになっていない。
それどころか、困った状態になっているとも言え、
画像処理のエンジニアであれば、きっと、こう思う、
「画素数が上がったので綺麗に写る、と思って
安易に新型システムを喜んで買う工場責任者なんて、
結局、何もわかっていないのじゃあないか!」
まあ、おっしゃる通りだ。システムの一部の性能
だけを高めても意味が無い。
・・まあ、この話は、写真界に当て嵌めても通じる
話ではなかろうか、すなわち・・
「システム全体において、何か1つの性能を高めると、
関連する部品や製品の性能まで、全て均一に高め
ないとアンバランスとなり、性能向上効果が無い」
という事である。
これでも写真界の人達は、あまりピント来ない話かも
知れないが・・ 例えば、自動車やバイクが好きで、
そのチューニングまでをする人達だったら、ただ単に
エンジンのパワーを上げただけではダメで、関連する
ブレーキとか足回りとか車体とか、全てに手を入れない
とならず、際限なく大変な事になってしまう状態・・
あるいは、オーディオマニアであれば、良いスピーカー
を買ったら、アンプもプレーヤーも、接続ケーブルで
すらも高性能なものに変えないとバランスが悪い状態。
まあ、これらであれば、ずっと理解しやすいであろう。
カメラも同様、フルサイズで画素数も上がった新型機
を購入したら、今までの低性能レンズを全て処分して、
新たに高性能レンズを買い揃えないとバランスが悪い。
そこまで出費する覚悟があって、新型機を買うならば
止めはしないが、カメラだけ変えて「良く写るように
なった」とか喜んでいるのは、ただ単に「思い込み」
でしか無い場合も多々ある、という事であるし、
下手をすれば、いずれかの、最も低い性能のパーツの
せいで、システム全体のパフォーマンスが著しく低下
している危険性すらある訳だ。
余談ばかりになったが、ここは極めて重要な点だ。
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では、5本目のレンズ。
![_c0032138_15364568.jpg]()
レンズ名:COSINA 20mm/f3.8 (MC) (Macro)
レンズ購入価格:13,000円(新品)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)
1980~1990年代頃のMF単焦点超広角レンズ。
![_c0032138_15364578.jpg]()
資料によっては、Macro銘がある場合と無い場合が
あると思う。
最短撮影距離は20cmと、近接に強い広角であるが、
この場合の最大撮影倍率は、計算上では0.1倍~
0.2倍程度でしか無い。
ただし、APS-C機やμ4/3機を使ったり、さらに
デジタル拡大機能を併用する事で、広角マクロ的な
用法は可能ではある。
無名時代のCOSINA銘のレンズであり、新品定価は、
記憶によれば4万円以上していたと思う。
だが、例によって「7割引き戦略」の時代(注:
現代のようにフォクトレンダーやツァイスといった
ブランド力を持たない時代のコシナは、レンズの
定価を高目に記載し、”大幅な安売り”と見せて
レンズを販売していた)であるから、新品購入価格
は13,000円程度と安価だ。
(注:本レンズは異マウントで2本所有していて、
紹介記事によっては11,000円での購入版を紹介する
事もある。まあ、いずれにしても7割引程度の価格だ)
安価な超広角(注:各社純正20mm超広角レンズは、
中古であっても、この数倍も高価だった)で、かつ
寄れるという事で、中級マニア層等の人気レンズで
あった。ただ、周辺描写力が優れない事を気にする
ユーザーも居た事も確かだ。まあ、それについては
低価格で作る為には、そこまで細かく周辺収差を補正
する事は設計・製造上では無理である。
現代の視点においては、周辺収差が出る事は百も承知
の上で、フルサイズ機では無く、小型センサー機で
これを使い、周辺収差をカットしてしまう。超広角の
性能は失われるが、近代においては20mm以下の超広角
も普及しているから、銀塩時代のような希少性は無い。
残った本レンズの「近接性能」だけを生かすので
あれば、広角マクロは、むしろ現代では希少であり、
小型センサーやデジタル拡大で撮影倍率も高める事も
出来ている。まあこれで「弱点相殺型システム」が
成り立っている訳だ。
レンズが古かろうが、安かろうが、性能が低かろうが、
何らかの利点を探し出して、それを活用しなくては
ならない、それがユーザー(購入者)の責務だ。
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では、6本目のレンズ。
![_c0032138_15364572.jpg]()
レンズ名:LENSBABY BURNSIDE 35 (35mm/f2.8)
レンズ購入価格:34,000円(中古)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1(APS-C機)
2018年に発売された米国製のフルサイズ対応MF
単焦点準広角「ぐるぐるボケ」レンズ。
「ぐるぐるボケ」レンズであるから、基本的には
フルサイズ機で使う事がセオリーだ。
(画角が広い方が「ぐるぐるボケ」が出易い)
だが、今回は、本レンズの、他1つの特徴である
最短WD(ワーキング・ディスタンス)15cmという
近接撮影性能を活用する為、ぐるぐるボケ描写を
犠牲にして、APS-C機で使ってみよう。
![_c0032138_15364611.jpg]()
ところで、国内の写真用交換レンズの仕様は、
最短撮影距離(フィルムまたは撮像センサー面より
被写体までの距離)で記載される、という暗黙の
了解があるのだが、海外の写真用交換レンズ、
または、国内でもコンパクトカメラ等では、
最短撮影距離では無く、WD(ワーキング・
ディスタンス。つまりレンズ前より被写体までの
距離)で仕様を示す事も多々ある。
まあ、これはWDの方が仕様数値が小さい為に、
ビギナー消費者層等では、「こちらのレンズ・
カメラの方が近寄って写せる」と、いう単純な
誤解を引き起こさせる為の「確信犯」であろう。
勿論、よくわかっている消費者であれば、WDと
最短撮影距離を混同して判断してはならない。
ちなみに、WD表記しか無い場合は、その値に
レンズ全長、および使用マウントのフランジバック
長を全て加えると、最短撮影距離が推定できる。
本BURNSIDE 35の場合、
WD15cm+約6cm(全長)+約4.6cm(NIKON F時)
となって、概算だが、約26cmが最短撮影距離だ。
ただまあ、約26cmであっても、35mmの実焦点距離
を持つレンズの中では寄れる方である。
最大撮影倍率は、概算だが、フルサイズ換算で
約0.13倍(約1/7倍)となり、これをデジタル機
に備わる機能(クロップ、デジタルズーム等)で
拡大すれば、実用的なマクロ域の撮影倍率とする
事は一応可能だ。
ただ、(前述のように)画角を狭めてしまうと
本レンズの特徴である「ぐるぐるボケ」または
特殊な「周辺減光機能(ゴールド・スライダー)」
の効能は無効となる。ここは両者のトレードオフ
(どちらかを取れば、他が立たない)であるから
レンズの使用目的に合わせて、母艦の選択および、
カメラ設定、被写体選択、撮影技法、等をチョイス
しなければならない。
まあでも、感覚的な話をすれば、本BURNSIDE35
は、あくまで「ぐるぐるボケ」レンズであるから
フルサイズ機で普通に使う方が、その特殊な効能
を活用できる事になり、望ましいであろう。
最短撮影距離(WD)の長所は、その「ぐるぐるボケ」
発生条件の自由度を高める為に用いるべきであり
「マクロレンズ級の撮影倍率を得る事」は、あまり
本レンズの特徴とはマッチしていないと思う。
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では、7本目のレンズ。
![_c0032138_15365224.jpg]()
レンズ名:SIGMA 24mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
レンズ購入価格:38,000円(新品)
使用カメラ:CANON EOS D30(APS-C機)
2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル
兼用のAF大口径広角単焦点、準マクロレンズ。
今回は、発売当時の雰囲気を味わう為、2000年に
発売された、CANONでは初の完全自社製デジタル
一眼レフ「EOS D30」を使ってみよう。
発売から20年以上が経過した、「博物館行き」が
ふさわしいオールドデジカメであるが、老骨に鞭打ち、
まだまだ、その出動の機会はある。
![_c0032138_15365230.jpg]()
レンズは、既に何度も説明している「SIGMA 広角
3兄弟」であり、本EX24/1.8は次男坊だ。
ただし、この次男坊が、3兄弟の中では最も寄れ、
かつ最大撮影倍率も大きい、簡単に比較してみよう。
EX20/1.8:最短=20cm 撮影倍率=1/4倍
EX24/1.8:最短=18cm 撮影倍率=1/2.7倍
EX28/1.8:最短=20cm 撮影倍率=1/2.9倍
もっとも、最大撮影倍率は、あくまで銀塩時代に
おける、35mm判フィルムを基準とした、考え方、
およびスペックである。
デジタル時代においては、①センサーサイズの差
②デジタル拡大・クロップ機能 ③トリミング処理
などが存在する為、撮影倍率は、写真の用途に合致
する範囲や条件を満たすのであれば、いくらでも
上げる事が出来るので、あまり重要な仕様では無い。
それよりも「最短撮影距離」のスペックが重要であり、
いくら、デジタルにおける拡大機能を用いて、見掛け
上での被写体の大きさを高めたとしても、そもそも、
被写体に寄って撮る事が出来ないのであれば、
撮影アングル(角度)、撮影レベル(高さ)、そして
被写体以外での背景や前景を、どう取り込むのか?
という点で、構図(撮影)自由度が失われてしまう。
特に広角レンズの場合、最短撮影距離の長いレンズ
は、被写体制限が大きい、という課題を強いられる。
「寄れない広角は、ただの広角(広く写る)だ!」
・・・と、映画”紅の豚”の主人公ポルコなら
言ったかも知れない(笑)
まあつまり、広角レンズの購入を検討するならば、
最も注意してチェックすべきは、最短撮影距離であり、
「手ブレ補正の有無、超音波モーターの有無」等は、
ある意味、どうでも良い仕様・機能である。
(=広角では手ブレし難いし、被写界深度を深く取る
撮影技法ならば、AF精度/速度も余り要求されない)
で、その場合の最短撮影距離のチェックだが、ここは
著名な「焦点距離10倍則」を用いるのが有効だ。
つまり、レンズの焦点距離のmm(ミリメートル)を、
cm(センチメートル)に置き換えるだけで良い。
24mmの広角レンズならば、24cm以下の最短撮影
距離性能が得られているかどうか? そこだけを
チェックすれば良いので、ビギナーでもわかる。
短ければ短い程良い訳であり、具体的に、寄れる
単焦点24mm(級)レンズの代表例を上げておく。
12cm:TAMRON 24mm/f2.8 DiⅢ OSD M1:2
(F051)(2019年発売、未所有)
16cm:SICOR 24mm/f3.5(レア品、前記事)
17cm:Voigtlander NOKTON25mm/f0.95
(μ4/3機専用、本シリーズ第4回)
18cm:SIGMA EX24/1.8(本レンズ)
18cm:SIGMA SUPER WIDE Ⅱ AF24mm/f2.8
(ミラーレス・マニアックス第26回等)
18cm:七工匠(7 Artisans)25mm/f1.8
(APS-C以下専用、レンズマニアックス第26回)
19cm:COSINA 24mm/f2.8 MC MACRO(現在未所有)
20cm:CANON EF24mm/f2.8 IS USM(未所有)
23cm:AF-S NIKKOR 24mm/F1.8G ED(未所有)
だいたいこのあたりまでが、「焦点距離10倍則」を
満たす24mmレンズとなる。これらは記憶に頼って
書いているので、古今東西での全メーカーの24mm
レンズを調べた訳ではなく、抜けがあるかも知れない。
また、恐らくだが、24mmの実焦点距離を持つマクロ
レンズ(等倍)は存在していない、と記憶している。
さらに参考まで、以下は近代の「高付加価値型」の
24mmレンズの最短撮影距離だ。(全て未所有)
25cm:SIGMA ART 24mm/f1.4
25cm:CANON EF24mm/f1.4L Ⅱ USM
25cm:NIKON AF-S NIKKOR 24mm/f1.4G ED
まあすなわち、本EX24/1.8は相当に寄れる類の
24mmレンズであるし、その寄れる24mmの中では
(特殊なNOKTONを除き)本EX24/1.8の開放F1.8
は、最大口径だ。
この特徴から、「被写体に寄って、広い背景を
構図上に取り込みながら、それをボカせる」という、
本レンズの時代(2001年)以前では、かつて、見た
事もない、「新たな撮影技法」を創生した事は、
本EX24/1.8の多大な功績であり、歴史的価値が
高いレンズである。
念のため、本レンズと、高付加価値(F1.4級)
レンズでの最短撮影距離での被写界深度の比較を
しておこう。(注:銀塩相当での計算だ)
EX24/1.8:最短撮影距離18cm 絞りF1.8
被写界深度=約6mm
他24/1.4:最短撮影距離25cm 絞りF1.4
被写界深度=約9mm
まあつまり、新鋭24mm/F1.4級レンズよりも、
本EX24/1.8の方が、被写界深度を浅く取る事が
出来る。(このポイントがある為に、本レンズを
新型のART24/1.4へ、リプレイス(置き換える)
する必要性があまり感じられず、依然、旧型の
本EX24/1.8を使い続けている次第だ)
ちなみに、機材環境・用途や技法等は異なるが、
NOKTON 25mm/f0.95の場合には、さらに浅い
被写界深度を得れるが、これはまあ特例だろう。
それから、新鋭TAMRON 24mm/f2.8 (F051)は、
「1/2倍マクロレンズ」であり、これも近接撮影では、
本レンズより浅い被写界深度を得れる。(未所有)
しかし、姉妹レンズのTAMRON 20mm/f2.8(F050)
(前記事で紹介)を使っている感覚としては
このシリーズのレンズでの近接撮影は、AF/MFの
仕様的に、かなりやりにくく、目的とする効能は
出し難いかも知れない。
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次は本記事ラストのレンズとなる。
![_c0032138_15365277.jpg]()
レンズ名:アルセナール MIR-24N (35mm/f2)
レンズ購入価格:8,000円(中古)
使用カメラ:NIKON Df (フルサイズ機)
1970年代~1980年代頃(?)の、旧ソビエト連邦
ウクライナ地区の、アルセナール(アーセナル)
国営工場製、フルサイズ対応MF大口径準広角、
ニコン(風)マウントレンズ。
近接撮影能力に優れ、最短撮影距離24cmは、現代に
おいても、非マクロ35mmレンズ中、BEST 5に入る。
![_c0032138_15365276.jpg]()
まずは注意点、本レンズはKIEV(-19)カメラ用の
マウントであり、NIKON風(型番Nは、NIKON互換の
意味、ただしロシア語では「H」という記載となる)
のマウントであるが、完全互換では無いので、装着
するNIKON一眼レフによっては、嵌らない、外れない
故障する、等の重大なリスクに繋がる。
多くのジャンク・ニコン機で、個体別の着脱テスト
を繰り返せる環境を持つ上級マニア層以外では、
ニコン機への直接装着は極めて危険であり、必ず
マウントアダプターを介してミラーレス機に装着する
のが良い。もし外れなくなっても、アダプターが1個
犠牲になるだけだ。
今回のように、NIKON Dfに装着できているのは、
十数台のNIKON機(MF/AF/デジタル)を用いて、着脱の
試験を繰り返し、安全性を確認した上での措置である。
・・さて、ちゃんと使うならば、本MIR-24は、
なかなか高性能/ハイコスパのレンズである。
ロシアンレンズの多くは、戦前のツァイスの技術
水準で設計製造されていて、「とてつもなく古い」
という印象が強いものが大半ではあるが、本レンズ
は、少し新しい時代の設計で、かつ技術力が高いと
想像できる工場で作られたものであるから・・
(注:第二次大戦直後の混乱期に、東独ツァイスから
の接収設備等が最初に陸送されたのが、ウクライナの
アルセナール工場だった、という話も聞いた事がある)
現代的視点でも、そこそこ良く写るレンズだ。
おまけに近接撮影能力があり、被写体汎用性も高い。
過去記事、ミラーレス・マニアックス名玉編では、
ロシアンレンズの中では唯一の17位入賞だ。
近年での「35mmレンズ選手権」では、数十本の
所有35mm級レンズの中で、決勝進出し、見事に
準優勝の成績を収めている。
ただ、大きな弱点としては、現代、このレンズは
入手困難であり、希少価値から、中古市場では
若干のプレミアム相場化で、数万円という価格に
なってしまうケースもあるだろう事だ。
ちなみに、1990年代、ソビエト崩壊後における
輸入価格は、記憶に頼れば、およそ新品2万円だ。
中古の場合では、私が購入したように8,000円が
当時での適正な相場であった。
上記の、「ランキング入賞レンズ」という立派な
肩書きは、8,000円で入手した事による、コスパ
評価の高さも結果的な順位に若干反映されている。
もし、このレンズを3万円も出して買っていたので
あれば、著しく評価点も下がってしまい、それらの
ランキング入賞実績も、全て「剥奪」となるだろう。
中古で3万円も出すならば、例えば前記事のTAMRON
SP35/1.8が、全ての面で性能的に優れるからだ。
(追記:ごく近年、2万円程で本レンズの中古品を
見かけた事がある)
「高く買ったら、普通以下のレンズに成り下がる」
ここは、本レンズに限らず、全てのロシアンレンズ
に言える共通の注意点だ。
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次回の本シリーズ記事は、
「最強マクロ選手権・中望遠マクロ・予選(1)」の予定。
現在「広角マクロ・準広角マクロ」カテゴリーでの
予選を行っているが、以下では「広角マクロ」編と
簡略表記する。
今回の予選第2組で、このカテゴリーは終了だ。
紹介(対戦)レンズ本数が多目なので、1レンズ
あたりの実写掲載数、および個々のレンズの仕様等
を紹介する内容は最小限とする。
では早速、広角マクロの予選(2)を始めよう。
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まずは最初の準マクロ広角レンズ。

レンズ購入価格:21,000円(中古)(以下、EX28/1.8)
使用カメラ:SONY α65 (APS-C機)
2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル兼用
AF大口径広角単焦点、準マクロレンズ。
最短撮影距離は20cm、最大撮影倍率は1/2.9倍だ。
同時代の「SIGMA広角3兄弟」の末弟である。

もので無いと「MACRO」と記載しない事、へと転換
しつつある状況であったが、これは「自主規制」の
ようなものであったかも知れず、当時のSIGMAでは、
本EX28/1.8のような、最大1/3倍程度のレンズにも
MACROと記載してあった。
銀塩機で超広角、APS-C型デジタル機で準広角、という
コンセプトで、銀塩からデジタルへの転換期に有益性が
極めて高かった「SIGMA広角3兄弟」ではあるが、その
末弟ともなると、APS-C機で換算42mmでは、少々用途
も少なく、「広角3兄弟」の中では、本レンズの購入は、
発売後十数年を過ぎてから、と非常に遅かった。
もう1つ購入が遅れた理由は、本レンズの前機種として、
Hi-Speed Wide(Ⅱ)等と呼ばれていた(注:正式型番
は不明)同スペックのSIGMA製28mm/F1.8を使って
いたからだ、そちらは近接撮影の性能は持たなかった
のだが、描写力はかなり高く、銀塩時代には愛用して
いたのだが、訳あって銀塩末期に譲渡してしまい、
その前機種とスペックが被り、かつ、サイズ感として
およそ倍にも及ぶまで巨大化した、本EX28/1.8は、
どうにも買う気になれなかった次第だ。
本レンズはどうもAFの精度が低い、これは経年劣化
なのか、微妙に故障しているのか、あるいは元々が
この程度の性能であったのか?は不明だ。
勿論MFで使う事で回避はできるが、なんだか中途半端
な状態である、本レンズの細かい話は割愛しておこう。
(特殊レンズ第52回「SIGMA広角3兄弟」編参照)
---
では、次のレンズ。

レンズ購入価格:9,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GF1 (μ4/3機)
詳細不明。発売年不明、メーカー名も不明・・の
中国製と思われる、ミラーレス機専用?単焦点MF
準広角(標準画角)レンズ。

これは、フルサイズ対応では無いものの、35mmの
実焦点距離の(非マクロ仕様の)レンズとしては、
歴代トップクラスである。
また、描写力もさほど悪く無いし、製造品質も高い。
あまり弱点が無いのだが、前述のように「出自不明」
という点が大きな課題となり、現在、これを入手する
事は、なかなか難しいかも知れない。
2010年代中頃位の古い情報において、本レンズは
通販で売られていたWeb資料も目にしたのだが、既に
販売終了(少ロットで売り切れ?)になっていた
模様であり、私の場合は、これをたまたま中古市場で
見かけて、”試しに買ってみた”というだけの状況だ。
あまり褒めると「どうしても欲しい」という好事家が
出てきたら「投機対象」となってしまうかも知れない。
それに実のところ、この入手価格9,000円というのも
さほど安価では無く、通販で流通していた頃の価格と、
ほぼ同等か、むしろ若干高価な位であった。まあつまり、
既に、希少価値で若干のプレミアム相場化していた訳だ。
よって、基本的には「入手困難につき非推奨」と、して
おくが、指名買いとかは、あまり期待せずに、偶然に
中古市場等で適価(5,000円程?)で見かけたならば、
購入は悪く無い。
---
では、3本目のレンズ。

レンズ購入価格:11,000円(中古)(以下、DT35/1.8)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2010年に発売された(α Aマウント)APS-C機専用
準広角(標準画角)AFエントリーレンズ。
APS-C機専用(フルサイズ対応では無い)ながら、
最短撮影距離23cm、と優れた近接撮影性能を持ち、
35mmの実焦点距離の非マクロレンズ群の中では、
かなりの上位の最短撮影距離である。
α(A)機に備わる各種デジタル拡大機能を併用する事で、
マクロレンズ並みの撮影倍率となる。

50mm/F1.8級小口径標準レンズの変形ダブルガウス型
構成を、2/3程度にダウンサイジングして設計された
「メーカー純正ジェネリック」であろうか(?)
こういう設計手法で、設計や検証や製造を省力化し、
格安なレンズを製造販売する事が出来るので、
その発売当時(2010年前後)、SONY α Aマウント機
を普及させる為に、入門層・初級層を「囲い込む」為の
市場戦略、つまり「エントリーレンズ戦略」を実施した
のだと思われる。当時のSONYでは、これを「はじめて
レンズ」と呼び、新規購買層へのアピールを行った。
ただまあ、その数年後の2013年頃において、SONYは
一眼レフとミラーレス機のブランドを「α」で統一し、
主軸をフルサイズミラーレス機(α7系、後にα9/1系)
に移した為、α Aマウント機の展開は縮小されてしまい、
当然ながら「エントリーレンズ戦略」も終焉して
しまった為、その後の時代において「はじめてレンズ」
シリーズの新製品は発売されていない。
で、あれば、本DT35/1.8や姉妹レンズのDT50/1.8、
DT30/2.8(MACRO)、SAM85/2.8(フルサイズ可)の
4本は、SONYの(少なくともAマウントでは)最初で
最後の「エントリーレンズ」であり、歴史的価値が
高いと同時に、コスパも大変優れる為、マニア層や
「SONY党」であれば、押さえて(所有して)おくのも
悪く無い選択肢だ。(現代では中古相場も安価だ)
だがそれは、α Aマウントが縮退していき、いずれは
市場からは、母艦も消えてしまうだろう状況との
トレードオフであるから、従前の時代(2010年代中頃)
ほどには、現代においては、これらSONY製エントリー
レンズ群を、簡単には推奨し難くなってしまっている。
買うのであれば、いずれは使用困難となる状況を理解
した上での自己判断の選択となるであろう。
(参考:特殊レンズ第51回「SONY エントリーレンズ」
編で、全4本を紹介している)
---
では、4本目はFA用特殊広角レンズだ。

レンズ発売時定価:50,000円(以下、VS6.5)
使用カメラ:PENTAX Q(1/2.3型機)
発売年不明、恐らくは2000年代?の、FA用低歪曲広角
初期メガピクセル対応、1/2型センサー対応、
MF単焦点手動絞り、Cマウント、近接撮影専用レンズ。
開放F値は「不定」で、撮影倍率に応じてF2.2~F2.4
程度となる。(→「露光(露出)倍数」が掛る為)

専門的内容ばかりになって、極めて難解な話となった
のだが、今回は、そのあたりは、ばっさりと割愛し、
また別の視点での、余談のような説明としよう。
で、6.5mmの実焦点距離はPENTAX Qで使用時には、
フルサイズ換算で約35mmの準広角画角となるが、
本レンズは遠距離撮影が出来ないので、通常の写真用
レンズのようには撮れない。もし無限遠撮影をしたい
場合は、相当に絞り込んで「被写界深度」に頼って
撮る事になるが、もとより、そういう撮り方には全く
適さないレンズである。
こういうレンズは、例えば工場ラインでの検査の際に
製品(FAの世界では”ワーク(Work)”と呼ばれる)を
自動検査する際に、広角画角であるから、大きな製品や
または、FA機器の構造上の制限等で、ワークに近づいて
写さなくてはならない場合に使われるレンズだ。
その際、広角レンズである事で歪曲収差が出てしまうと、
製品自体が不良で曲がっているのか? レンズが低性能
で曲がって写っているのか? の区別が出来ないので
こうしたFA(/工業用)レンズでは、まず歪曲収差の補正
に重点を置いて設計されたものが多い。
レンズ型番のVS-LD6.5の「LD」は、恐らくであるが
「Low Distortion」(低歪曲)の略語だと思われる。
本レンズの時代(2000年代頃)の直後では、FA用の
カメラ等の解像力が大きく向上している。これは
それまでの時代のFAやCCTV(監視カメラ含む)の
システムでは、映像のモニターとして、TV受像機を
使う場合もあり、その頃では、まだアナログ受像機
のNTSC仕様のものが多かった。これはデジタルでは
およそ30万画素~35万画素に相当する。
当然、FA/CCTVの撮像センサー(カメラ)も、その
あたりの画素数(解像度)のものが主流であった。
だが、2010年代よりアナログ(TV)放送が終了し、
モニターTV受像機も、全て地デジ対応の製品となった
のだが、これは、1920x1080pixelでの表示ならば
約200万画素に相当している。
そういうモニターを使うと、いままでのアナログ対応
の30万画素CCTV(FA)システムでは、解像度が低すぎて
バランスが悪い。そこで撮像センサーの方も、この時代
からメガピクセル(100万画素級以上)となった訳だ。
ただし、元々、CCTV(FA)用撮像センサーは、写真用の
撮像センサーと比べてサイズが物凄く小さく、そこに
100万画素や300万画素のピクセルを詰め込むと、
個々のピクセルピッチが恐ろしく狭くなってしまう。
(写真用デジタル一眼レフの数分の1程度の小ささ)
こうなると、それまでの時代のCCTV(FA)レンズでは、
その解像力性能が追いつかない。
ちなみに、現代の写真用の新鋭高性能レンズですら、
ここまで小さいピクセルピッチには対応し難い状態だ。
そこで、本レンズの後の時代(2010年代)からは、
「高解像力仕様」の、CCTV(FA)用レンズが一般的に
なっていく。しかしながら、当然、これまでの時代
のレンズよりも大幅に高額となった。
で、本レンズのような古い時代のレンズは、急速に
「お役御免」となり、私もこういう旧型レンズを、
その業界に頼み込んで、何本か入手した次第だ。
(注:一般個人に向けて販売される事は、まず無い)
だが、旧型とは言え、写真用の中堅性能のレンズと
同等の解像力は持っているし、歪曲収差も少ない。
ならば、写真用マクロレンズの代用としての用途
位で使うのは、悪い選択では無い訳だ。
なお、この歴史を振り返ると、アナログ放送が
終わって(2011年)地デジになった事により、
モニターTVが無くなり、撮像センサーも高解像度化
して高価になり、それに対応するレンズも同様に
多少無理をして高解像力化(「メガピクセル対応」と、
これを呼ぶ)して、これも高価になった。
全てのシステム部材が高価になったのだが、果たして、
実際にCCTV(FAや監視カメラ)の用途で、そこまで
の高解像度(≒画素数)は必要なのであろうか?
という疑問があるだろう。
まあ、それは半分正解であり、用途によっては勿論
そこまでの解像度はいらない。
でも、ここでもまた写真用カメラ・レンズの市場と
全く同じ事が起こっており、つまり、そうやって
画素数だの解像力等を高めた事を付加価値とした、
高価な新製品をマーケット側では売りたい訳だ。
そういう風にマーケット(市場)が変化するならば
もう、消費者や利用者(ユーザー)は、そこに追従
するしか無い。もう、アナログTVモニターや旧型
機種等を新しく購入する事自体が難しいのだから、
まあ高価格化での出費は、やむを得ない。
もう1つ、FA(ファクトリー・オートメーション)や
マシンビジョンの世界では、「画像処理」の技術分野
とは、切っても切れないものがある。
写真の世界で「画像処理」と言うと、
「ああ、フォトショップ等でレタッチする事だね?」
と解釈する人が多いと思うが、この世界では、そういう
措置とは全く異なる。(上記は「画像編集」と呼ぶ)
ここで言う「画像処理」とは、画像をコンピューター
等で自動的に計算・解析する事(処理)の全般であり・・
工場であれば製品の不良を判断するとか、医療だったら
病気等を見つけるとか、監視用途ならば不審者を発見
するとか、駐車場や犯罪捜査であれば車のナンバーを
読み取るとか、セキュリティだったら、顔や指紋を
読みって本人かどうかを確認するとか・・
そういう計算処理が、本来の「画像処理」である。
この分野の理解には、非常に高い専門的知識を必要と
されるので、写真分野のユーザーとは全く接点が無い。
説明をしても、チンプンカンプンになると思うが・・
1つだけ重要なポイントを挙げておけば、前述の地デジ
化から、CCTV分野の機材も画素数が上がった、という
点がある。
ただ、それがFAや、その他の分野での「画像処理」
には、そのまま上手く反映される訳では無い。
例えば、製品の不良発見とか、それ位の画像処理
内容であれば、7万画素あたり(320x240pixel)で
計算しても、まあ十分だ。
で、もしそれを200万画素(1920x1080pixel)で
画像処理の計算を行うように改良しようとすると、
計算量は、これまでの約27倍!にも大きくなる。
当時、同じパソコン(Windows XP/Windows 7等)
を使った場合、今までのアナログ30万画素級の
システムで、製品の自動検査に仮に1個あたり1秒の
計算時間が必要だった場合、それが、新システム
では、27秒間!も計算しなければならないのだ。
(注:これは極端な例。実際の画像処理計算は
そこまで時間が掛らないケースが大半ではあるが
生体認証等では、これよりも遅いケースもある)
そんなに遅くなったら、工場の生産ラインはそこで
止まって製品が流れなくなるし、セキュリティでは
部屋に入る本人確認の為に30秒も待つ必要があるし、
不審者の発見では、犯罪が終わって逃げ出した頃に、
やっと非常ベルが鳴る事となる(汗)
そんな状態では効率が悪い。じゃあどうするのか?
そう、新しいシステムで全体の画素数が上がったと
しても、画像処理の計算は、従来通りの画素数で
行うのだ。さもないと、遅くてやっていられない。
で、下手をすれば、増加した画素数を縮小処理して
から画像処理に掛けないとならず、従来システム
よりも全体の処理が低速化してしまう事すらある。
結局のところ、画素数が向上した意味が、少なくとも
画像処理上では、まったくメリットになっていない。
それどころか、困った状態になっているとも言え、
画像処理のエンジニアであれば、きっと、こう思う、
「画素数が上がったので綺麗に写る、と思って
安易に新型システムを喜んで買う工場責任者なんて、
結局、何もわかっていないのじゃあないか!」
まあ、おっしゃる通りだ。システムの一部の性能
だけを高めても意味が無い。
・・まあ、この話は、写真界に当て嵌めても通じる
話ではなかろうか、すなわち・・
「システム全体において、何か1つの性能を高めると、
関連する部品や製品の性能まで、全て均一に高め
ないとアンバランスとなり、性能向上効果が無い」
という事である。
これでも写真界の人達は、あまりピント来ない話かも
知れないが・・ 例えば、自動車やバイクが好きで、
そのチューニングまでをする人達だったら、ただ単に
エンジンのパワーを上げただけではダメで、関連する
ブレーキとか足回りとか車体とか、全てに手を入れない
とならず、際限なく大変な事になってしまう状態・・
あるいは、オーディオマニアであれば、良いスピーカー
を買ったら、アンプもプレーヤーも、接続ケーブルで
すらも高性能なものに変えないとバランスが悪い状態。
まあ、これらであれば、ずっと理解しやすいであろう。
カメラも同様、フルサイズで画素数も上がった新型機
を購入したら、今までの低性能レンズを全て処分して、
新たに高性能レンズを買い揃えないとバランスが悪い。
そこまで出費する覚悟があって、新型機を買うならば
止めはしないが、カメラだけ変えて「良く写るように
なった」とか喜んでいるのは、ただ単に「思い込み」
でしか無い場合も多々ある、という事であるし、
下手をすれば、いずれかの、最も低い性能のパーツの
せいで、システム全体のパフォーマンスが著しく低下
している危険性すらある訳だ。
余談ばかりになったが、ここは極めて重要な点だ。
---
では、5本目のレンズ。

レンズ購入価格:13,000円(新品)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)
1980~1990年代頃のMF単焦点超広角レンズ。

あると思う。
最短撮影距離は20cmと、近接に強い広角であるが、
この場合の最大撮影倍率は、計算上では0.1倍~
0.2倍程度でしか無い。
ただし、APS-C機やμ4/3機を使ったり、さらに
デジタル拡大機能を併用する事で、広角マクロ的な
用法は可能ではある。
無名時代のCOSINA銘のレンズであり、新品定価は、
記憶によれば4万円以上していたと思う。
だが、例によって「7割引き戦略」の時代(注:
現代のようにフォクトレンダーやツァイスといった
ブランド力を持たない時代のコシナは、レンズの
定価を高目に記載し、”大幅な安売り”と見せて
レンズを販売していた)であるから、新品購入価格
は13,000円程度と安価だ。
(注:本レンズは異マウントで2本所有していて、
紹介記事によっては11,000円での購入版を紹介する
事もある。まあ、いずれにしても7割引程度の価格だ)
安価な超広角(注:各社純正20mm超広角レンズは、
中古であっても、この数倍も高価だった)で、かつ
寄れるという事で、中級マニア層等の人気レンズで
あった。ただ、周辺描写力が優れない事を気にする
ユーザーも居た事も確かだ。まあ、それについては
低価格で作る為には、そこまで細かく周辺収差を補正
する事は設計・製造上では無理である。
現代の視点においては、周辺収差が出る事は百も承知
の上で、フルサイズ機では無く、小型センサー機で
これを使い、周辺収差をカットしてしまう。超広角の
性能は失われるが、近代においては20mm以下の超広角
も普及しているから、銀塩時代のような希少性は無い。
残った本レンズの「近接性能」だけを生かすので
あれば、広角マクロは、むしろ現代では希少であり、
小型センサーやデジタル拡大で撮影倍率も高める事も
出来ている。まあこれで「弱点相殺型システム」が
成り立っている訳だ。
レンズが古かろうが、安かろうが、性能が低かろうが、
何らかの利点を探し出して、それを活用しなくては
ならない、それがユーザー(購入者)の責務だ。
---
では、6本目のレンズ。

レンズ購入価格:34,000円(中古)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1(APS-C機)
2018年に発売された米国製のフルサイズ対応MF
単焦点準広角「ぐるぐるボケ」レンズ。
「ぐるぐるボケ」レンズであるから、基本的には
フルサイズ機で使う事がセオリーだ。
(画角が広い方が「ぐるぐるボケ」が出易い)
だが、今回は、本レンズの、他1つの特徴である
最短WD(ワーキング・ディスタンス)15cmという
近接撮影性能を活用する為、ぐるぐるボケ描写を
犠牲にして、APS-C機で使ってみよう。

最短撮影距離(フィルムまたは撮像センサー面より
被写体までの距離)で記載される、という暗黙の
了解があるのだが、海外の写真用交換レンズ、
または、国内でもコンパクトカメラ等では、
最短撮影距離では無く、WD(ワーキング・
ディスタンス。つまりレンズ前より被写体までの
距離)で仕様を示す事も多々ある。
まあ、これはWDの方が仕様数値が小さい為に、
ビギナー消費者層等では、「こちらのレンズ・
カメラの方が近寄って写せる」と、いう単純な
誤解を引き起こさせる為の「確信犯」であろう。
勿論、よくわかっている消費者であれば、WDと
最短撮影距離を混同して判断してはならない。
ちなみに、WD表記しか無い場合は、その値に
レンズ全長、および使用マウントのフランジバック
長を全て加えると、最短撮影距離が推定できる。
本BURNSIDE 35の場合、
WD15cm+約6cm(全長)+約4.6cm(NIKON F時)
となって、概算だが、約26cmが最短撮影距離だ。
ただまあ、約26cmであっても、35mmの実焦点距離
を持つレンズの中では寄れる方である。
最大撮影倍率は、概算だが、フルサイズ換算で
約0.13倍(約1/7倍)となり、これをデジタル機
に備わる機能(クロップ、デジタルズーム等)で
拡大すれば、実用的なマクロ域の撮影倍率とする
事は一応可能だ。
ただ、(前述のように)画角を狭めてしまうと
本レンズの特徴である「ぐるぐるボケ」または
特殊な「周辺減光機能(ゴールド・スライダー)」
の効能は無効となる。ここは両者のトレードオフ
(どちらかを取れば、他が立たない)であるから
レンズの使用目的に合わせて、母艦の選択および、
カメラ設定、被写体選択、撮影技法、等をチョイス
しなければならない。
まあでも、感覚的な話をすれば、本BURNSIDE35
は、あくまで「ぐるぐるボケ」レンズであるから
フルサイズ機で普通に使う方が、その特殊な効能
を活用できる事になり、望ましいであろう。
最短撮影距離(WD)の長所は、その「ぐるぐるボケ」
発生条件の自由度を高める為に用いるべきであり
「マクロレンズ級の撮影倍率を得る事」は、あまり
本レンズの特徴とはマッチしていないと思う。
---
では、7本目のレンズ。

レンズ購入価格:38,000円(新品)
使用カメラ:CANON EOS D30(APS-C機)
2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル
兼用のAF大口径広角単焦点、準マクロレンズ。
今回は、発売当時の雰囲気を味わう為、2000年に
発売された、CANONでは初の完全自社製デジタル
一眼レフ「EOS D30」を使ってみよう。
発売から20年以上が経過した、「博物館行き」が
ふさわしいオールドデジカメであるが、老骨に鞭打ち、
まだまだ、その出動の機会はある。

3兄弟」であり、本EX24/1.8は次男坊だ。
ただし、この次男坊が、3兄弟の中では最も寄れ、
かつ最大撮影倍率も大きい、簡単に比較してみよう。
EX20/1.8:最短=20cm 撮影倍率=1/4倍
EX24/1.8:最短=18cm 撮影倍率=1/2.7倍
EX28/1.8:最短=20cm 撮影倍率=1/2.9倍
もっとも、最大撮影倍率は、あくまで銀塩時代に
おける、35mm判フィルムを基準とした、考え方、
およびスペックである。
デジタル時代においては、①センサーサイズの差
②デジタル拡大・クロップ機能 ③トリミング処理
などが存在する為、撮影倍率は、写真の用途に合致
する範囲や条件を満たすのであれば、いくらでも
上げる事が出来るので、あまり重要な仕様では無い。
それよりも「最短撮影距離」のスペックが重要であり、
いくら、デジタルにおける拡大機能を用いて、見掛け
上での被写体の大きさを高めたとしても、そもそも、
被写体に寄って撮る事が出来ないのであれば、
撮影アングル(角度)、撮影レベル(高さ)、そして
被写体以外での背景や前景を、どう取り込むのか?
という点で、構図(撮影)自由度が失われてしまう。
特に広角レンズの場合、最短撮影距離の長いレンズ
は、被写体制限が大きい、という課題を強いられる。
「寄れない広角は、ただの広角(広く写る)だ!」
・・・と、映画”紅の豚”の主人公ポルコなら
言ったかも知れない(笑)
まあつまり、広角レンズの購入を検討するならば、
最も注意してチェックすべきは、最短撮影距離であり、
「手ブレ補正の有無、超音波モーターの有無」等は、
ある意味、どうでも良い仕様・機能である。
(=広角では手ブレし難いし、被写界深度を深く取る
撮影技法ならば、AF精度/速度も余り要求されない)
で、その場合の最短撮影距離のチェックだが、ここは
著名な「焦点距離10倍則」を用いるのが有効だ。
つまり、レンズの焦点距離のmm(ミリメートル)を、
cm(センチメートル)に置き換えるだけで良い。
24mmの広角レンズならば、24cm以下の最短撮影
距離性能が得られているかどうか? そこだけを
チェックすれば良いので、ビギナーでもわかる。
短ければ短い程良い訳であり、具体的に、寄れる
単焦点24mm(級)レンズの代表例を上げておく。
12cm:TAMRON 24mm/f2.8 DiⅢ OSD M1:2
(F051)(2019年発売、未所有)
16cm:SICOR 24mm/f3.5(レア品、前記事)
17cm:Voigtlander NOKTON25mm/f0.95
(μ4/3機専用、本シリーズ第4回)
18cm:SIGMA EX24/1.8(本レンズ)
18cm:SIGMA SUPER WIDE Ⅱ AF24mm/f2.8
(ミラーレス・マニアックス第26回等)
18cm:七工匠(7 Artisans)25mm/f1.8
(APS-C以下専用、レンズマニアックス第26回)
19cm:COSINA 24mm/f2.8 MC MACRO(現在未所有)
20cm:CANON EF24mm/f2.8 IS USM(未所有)
23cm:AF-S NIKKOR 24mm/F1.8G ED(未所有)
だいたいこのあたりまでが、「焦点距離10倍則」を
満たす24mmレンズとなる。これらは記憶に頼って
書いているので、古今東西での全メーカーの24mm
レンズを調べた訳ではなく、抜けがあるかも知れない。
また、恐らくだが、24mmの実焦点距離を持つマクロ
レンズ(等倍)は存在していない、と記憶している。
さらに参考まで、以下は近代の「高付加価値型」の
24mmレンズの最短撮影距離だ。(全て未所有)
25cm:SIGMA ART 24mm/f1.4
25cm:CANON EF24mm/f1.4L Ⅱ USM
25cm:NIKON AF-S NIKKOR 24mm/f1.4G ED
まあすなわち、本EX24/1.8は相当に寄れる類の
24mmレンズであるし、その寄れる24mmの中では
(特殊なNOKTONを除き)本EX24/1.8の開放F1.8
は、最大口径だ。
この特徴から、「被写体に寄って、広い背景を
構図上に取り込みながら、それをボカせる」という、
本レンズの時代(2001年)以前では、かつて、見た
事もない、「新たな撮影技法」を創生した事は、
本EX24/1.8の多大な功績であり、歴史的価値が
高いレンズである。
念のため、本レンズと、高付加価値(F1.4級)
レンズでの最短撮影距離での被写界深度の比較を
しておこう。(注:銀塩相当での計算だ)
EX24/1.8:最短撮影距離18cm 絞りF1.8
被写界深度=約6mm
他24/1.4:最短撮影距離25cm 絞りF1.4
被写界深度=約9mm
まあつまり、新鋭24mm/F1.4級レンズよりも、
本EX24/1.8の方が、被写界深度を浅く取る事が
出来る。(このポイントがある為に、本レンズを
新型のART24/1.4へ、リプレイス(置き換える)
する必要性があまり感じられず、依然、旧型の
本EX24/1.8を使い続けている次第だ)
ちなみに、機材環境・用途や技法等は異なるが、
NOKTON 25mm/f0.95の場合には、さらに浅い
被写界深度を得れるが、これはまあ特例だろう。
それから、新鋭TAMRON 24mm/f2.8 (F051)は、
「1/2倍マクロレンズ」であり、これも近接撮影では、
本レンズより浅い被写界深度を得れる。(未所有)
しかし、姉妹レンズのTAMRON 20mm/f2.8(F050)
(前記事で紹介)を使っている感覚としては
このシリーズのレンズでの近接撮影は、AF/MFの
仕様的に、かなりやりにくく、目的とする効能は
出し難いかも知れない。
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次は本記事ラストのレンズとなる。

レンズ購入価格:8,000円(中古)
使用カメラ:NIKON Df (フルサイズ機)
1970年代~1980年代頃(?)の、旧ソビエト連邦
ウクライナ地区の、アルセナール(アーセナル)
国営工場製、フルサイズ対応MF大口径準広角、
ニコン(風)マウントレンズ。
近接撮影能力に優れ、最短撮影距離24cmは、現代に
おいても、非マクロ35mmレンズ中、BEST 5に入る。

マウントであり、NIKON風(型番Nは、NIKON互換の
意味、ただしロシア語では「H」という記載となる)
のマウントであるが、完全互換では無いので、装着
するNIKON一眼レフによっては、嵌らない、外れない
故障する、等の重大なリスクに繋がる。
多くのジャンク・ニコン機で、個体別の着脱テスト
を繰り返せる環境を持つ上級マニア層以外では、
ニコン機への直接装着は極めて危険であり、必ず
マウントアダプターを介してミラーレス機に装着する
のが良い。もし外れなくなっても、アダプターが1個
犠牲になるだけだ。
今回のように、NIKON Dfに装着できているのは、
十数台のNIKON機(MF/AF/デジタル)を用いて、着脱の
試験を繰り返し、安全性を確認した上での措置である。
・・さて、ちゃんと使うならば、本MIR-24は、
なかなか高性能/ハイコスパのレンズである。
ロシアンレンズの多くは、戦前のツァイスの技術
水準で設計製造されていて、「とてつもなく古い」
という印象が強いものが大半ではあるが、本レンズ
は、少し新しい時代の設計で、かつ技術力が高いと
想像できる工場で作られたものであるから・・
(注:第二次大戦直後の混乱期に、東独ツァイスから
の接収設備等が最初に陸送されたのが、ウクライナの
アルセナール工場だった、という話も聞いた事がある)
現代的視点でも、そこそこ良く写るレンズだ。
おまけに近接撮影能力があり、被写体汎用性も高い。
過去記事、ミラーレス・マニアックス名玉編では、
ロシアンレンズの中では唯一の17位入賞だ。
近年での「35mmレンズ選手権」では、数十本の
所有35mm級レンズの中で、決勝進出し、見事に
準優勝の成績を収めている。
ただ、大きな弱点としては、現代、このレンズは
入手困難であり、希少価値から、中古市場では
若干のプレミアム相場化で、数万円という価格に
なってしまうケースもあるだろう事だ。
ちなみに、1990年代、ソビエト崩壊後における
輸入価格は、記憶に頼れば、およそ新品2万円だ。
中古の場合では、私が購入したように8,000円が
当時での適正な相場であった。
上記の、「ランキング入賞レンズ」という立派な
肩書きは、8,000円で入手した事による、コスパ
評価の高さも結果的な順位に若干反映されている。
もし、このレンズを3万円も出して買っていたので
あれば、著しく評価点も下がってしまい、それらの
ランキング入賞実績も、全て「剥奪」となるだろう。
中古で3万円も出すならば、例えば前記事のTAMRON
SP35/1.8が、全ての面で性能的に優れるからだ。
(追記:ごく近年、2万円程で本レンズの中古品を
見かけた事がある)
「高く買ったら、普通以下のレンズに成り下がる」
ここは、本レンズに限らず、全てのロシアンレンズ
に言える共通の注意点だ。
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次回の本シリーズ記事は、
「最強マクロ選手権・中望遠マクロ・予選(1)」の予定。