最強のマクロレンズを決定するシリーズ記事。
今回は「広角マクロ・準広角マクロ」カテゴリー
(以下「広角マクロ」編)の予選第1組とする。
このカテゴリーでは、実焦点距離が28mm以下の
マクロを「広角マクロ」とし、実焦点距離35mm
以下を「準広角マクロ」とするが、既に35mm級
マクロで、APS-C機専用のレンズ等では「標準
マクロ編」で取り上げている場合もあるので、
そのあたりの「線引き」は、少々曖昧なままに
しておく。
最大撮影倍率についても、広角のマクロで等倍
までの仕様のレンズは、かなり希少であるから、
最大撮影倍率の制限範囲も、あまり細かくは
決めないようにしよう。
ノミネートされる近接レンズの条件が緩い為、
紹介(対戦)レンズ本数が、かなり多くなるが
これを2回の予選リーグで纏める為、1レンズ
あたりの実写掲載数は最小限とする。
(注:本ブログは昔からずっと、1記事あたりで、
1MB以上の画像容量としないルールで運用している。
BLOGが有限の容量である事と、アクセス時の速度
低下を防ぐ為だ。なお、画像解像度をわざと低く
しているのは容量増加を防ぐ為、まあ「SNSでは
高解像度である必然性は無い」と思ってもいる)
では早速、広角マクロの予選(1)を始めよう。
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まずは最初の広角マクロレンズ。
![_c0032138_10573758.jpg]()
レンズ名:TAMRON 20mm/f2.8 Di Ⅲ OSD M1:2
(Model F050)
レンズ購入価格:30,000円(新古)(以下、TAMRON20/2.8)
使用カメラ:SONY α7S (フルサイズ機)
2020年に発売された、ミラーレス機用、フルサイズ
対応AF超広角ハーフ(1/2倍)マクロレンズ。
現状、SONY FEマウント版の他のマウント版は
未発売だが、順次他マウント版も発売される可能性
がある。
![_c0032138_10573728.jpg]()
最短撮影距離は11cmと、恐ろしく寄れるレンズ
であるが、超広角20mmであるから、最大撮影倍率は
これでも1/2倍(ハーフマクロ)に留まる。
超音波モーターは内蔵しておらず、新方式の
DC(直流)モーター OSD(Optimized Silent Drive)
を搭載、”静音化と高速化に貢献した”との話であり
動画撮影でコンティニュアスAF時には、静音化は
効果的かも知れない。
しかし、例によって無限回転式ピントリングによる
シームレスMF方式であるから、最短撮影距離近辺での
AF/MF撮影は、著しく不便となる。
いったい何故、近接撮影時に、この仕様が適正では
無い事を、各メーカー側はいつまでも理解できない
のであろうか・・? 実際に撮ってみれば、ものの
10分で、ビギナーでもわかる課題であるのに・・
なお、「気に入らなければ、買わない」というのが、
消費者側に残された、唯一の対抗手段である。
私も、マクロ等の近接撮影用レンズにおいて、超音波
モーター等が内蔵されてシームレスMF仕様のものは、
どのメーカーの物も、もう買わないようにしようか?
とも考えている。
で、本レンズTAMRON 20/2.8には、姉妹レンズの
24mm/F2.8(Model F051)、35mm/F2.8(F053)
が存在し、どれも寄れる仕様であるし、価格も
さほど高価では無い(本F050型で46,000円+税)
状況な為、当初は「全てコンプリートしようか?」
と目論んでいたが、「近接撮影で使い難い」という
課題があるならば、これらを近接撮影用途のレンズ
と想定するならば、あまり好ましく無い。
「コンプリート計画」は、もう一旦、中断しておき、
仮に、後年に中古相場が大きく下落した場合等に、
再度検討するつもりだ。
新鋭レンズにつき、描写力等に不満はないだろう。
非球面レンズや異常低分散レンズを多用した現代的な
設計だ。結果的に、コスパも良いとは思うが・・
「寄れる仕様なのに、実際には寄っては撮り難い」
という用法上の矛盾点を、どう判断するか?は、
個々の消費者側の価値観になるだろう。
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では、次は、超広角準マクロレンズだ。
![_c0032138_10573748.jpg]()
レンズ名:SIGMA 20mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL (RF)
レンズ購入価格:44,000円(新品)(以下、EX20/1.8)
使用カメラ:PENTAX K10D (APS-C機)
2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル兼用の
AF大口径広角単焦点レンズ。
![_c0032138_10573817.jpg]()
いわゆる「SIGMA広角3兄弟」(又は、「広角トリオ」
とも呼ぶ事もある)の、長兄(注:どっちが兄か?
まあ、最広角のレンズである)であり、他には、
EX24mm/F1.8、EX28mm/F1.8が存在する。
(特殊レンズ第52回「SIGMA 広角3兄弟」編参照)
銀塩時代末期においての発売だ。その近い将来には
各社の銀塩AF一眼レフは全てデジタル化される流れで、
その際には、当初はAPS-C型センサー機ばかりとなる
事が、ほぼ明確であった為、予め、その状況に備え
「銀塩では超広角、デジタルで準広角レンズ」として
使えるという、兼用仕様のレンズ群だ。
銀塩機と、1.5倍型APS-C機での画角は以下となる。
EX20mm(銀塩/35mm判)→30mm(デジタル/APS-C機)
EX24mm(銀塩/35mm判)→36mm(デジタル/APS-C機)
EX28mm(銀塩/35mm判)→42mm(デジタル/APS-C機)
これによると、デジタルで42mm画角となるEX28/1.8
は、用途が少なそうな感じだ。また、各社において
銀塩用28mmのAF/MFレンズは、かなりポピュラーだ。
よって、私はEX20/1.8とEX24/1.8は、発売後すぐに
新品で購入したが、EX28/1.8は「当面不要」と
見なして購入を保留、それを入手したのは、ずいぶんと
時間が経過した2010年代後半になってからだった。
「3兄弟」の最短撮影距離は、いずれも20cm以下
と、寄れる仕様だ(本EX20/1.8で最短20cm)
この時、最大撮影倍率は1/4倍となる。
ただまあ、20mmレンズで20cmであれば、一応だが
「焦点距離10倍則」どおりであり、もう一声寄れる
と嬉しい。
その点、姉妹レンズのEX24/1.8であれば、
最短18cmで最大撮影倍率1/2.7倍なので、本レンズ
よりも、”ずっと寄れる”という印象が強い。
(次回記事で紹介予定)
でも、その当時(銀塩時代末期)の、各社20mmの
単焦点は、いずれも最短撮影距離が25cm程度と
焦点距離10倍則よりも寄れない事が普通であったので
(注:広角ズームレンズの場合は、もっと寄れない)
本EX20/1.8の、この仕様でも、従来比で考えると
”ずいぶんと寄れるようになった”という感覚もあった。
そこまでして「寄りたい」理由は、この広角3兄弟
の「開放F1.8」という仕様がある。
最短撮影距離と開放F値は、一見して無関係なスペック
なのだが、両者の特徴を掛け合わせる事により
「背景がボカせる広角マクロ撮影が可能となる」
という要素/用途が非常に大きい。
これ以前の時代の広角レンズやマクロレンズでは、
このような撮影技法は一切実現が出来なかった為、
「SIGMA広角3兄弟」では、「撮影技法を一新させた」
という視点で、歴史的価値が高いレンズ群である。
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では、3本目の準マクロレンズ。
![_c0032138_10574896.jpg]()
レンズ名:(AUTO) SICOR-XL (MC) 24mm/F3.5
レンズ購入価格: 4万ウォン(約4,000円)(中古)
使用カメラ:OLYMPUS Pen Lite E-PL2(μ4/3機)
詳細不明、出自不明の謎のレンズ。
どこのメーカーで作られた、いつの時代のものかも
一切不明だ、まあ多分、1970年代前後の製品であろう。
購入は、韓国の南大門の中古カメラ店であったのだが
恐らくは日本製だろう。これは「サイコール」と読む、
との事である。
どうやら本レンズには、日本向け版が存在していて、
そこには、レンズ名が「サイコール」とカタカナ(!)
で書かれているそうだ。
(注:現物を見た事が無いので詳細は不明)
マウントはKONICA ARである、マウントアダプターを
用いれば、現代のミラーレス機(注:一眼レフ不可)
には装着が可能である。
![_c0032138_10580849.jpg]()
描写力は恐ろしく低い。一見して「トイレンズ」という
訳では無いのだが、写りはトイレンズ並みでしか無い。
唯一の特徴は、最短撮影距離が約16cmと、異常な
迄に寄れる事である。鏡筒上にはMACROの記載が
あり、この時の最大撮影倍率は1/4倍とのこと。
この近接性能は、後年のSIGMA EX24/1.8ですら
最短18cmであるので、本レンズがフルサイズ対応
24mmレンズの中では最強であっただろう。
これをもって「サイコー(最高)ル」と命名したので
あれば、駄洒落なのか本気なのか? よくわからない。
ただまあ「サイコール」のこの記録も、近年2019年に
なって、TAMRON 24mm/f2.8 Di Ⅲ OSD M1:2
(Model F051) (冒頭紹介F050の姉妹レンズ)での
最短撮影距離12cmにより、軽く破られてしまった。
最短撮影距離の利点を無くしてしまったのでは、
描写力が非常に低い本レンズの価値は半減である。
ただまあ、F051型は購入していないので、依然、
本「SICOR24/3.5」が、私の所有範囲においては
「サイコー(ル)」の最短撮影距離を誇る24mmの
レンズである。
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では、4本目のレンズ。
![_c0032138_10574941.jpg]()
レンズ名:アルセナール MIR-1 37mm/f2.8
レンズ購入価格:14,000円(中古)
使用カメラ:OLYMPUS PEN-F(μ4/3機)
詳細不明。恐らくは、1960年代前後に、旧ソ連の
ウクライナの「アーセナル(アルセナール)国営工場」
にて製造された可能性が高い。
この工場は、レンズでは「MIR」(ミール)、カメラ
では「KIEV」(キエフ。注:読み方/発音は複数あり)
を作った事で著名であり、技術力が高かったのか?
ソビエト崩壊後では、ウクライナ国において、民間の
光学・電子系メーカーに独立発展した模様だ。
(企業化した後では、レンズのブランドとして、ARSAT
(アルサット)を使用している模様だ。→未所有)
![_c0032138_10581271.jpg]()
本MIR-1は、「フレクトゴン(Flektogon)のコピー品」
と言われている。
「フレクトゴン」35mm/F2.4 or 35mm/F2.8は、
第二次大戦での独国敗戦後に、東西分断されてしまった
Carl Zeiss Jena(東独)が、ツァイス系技術を
ベースに戦後に製造したレンズだ、と言われているが
レア品につき未所有だ、詳細の言及は避ける。
ただ、そのレンズは、35mmの焦点距離を持つフルサイズ
対応レンズとしては、最も寄れる類のレンズであった
模様で、その最短撮影距離は18cmだった、と聞く。
「寄れる35mmレンズ」には、「マクロ」と称する
ものを除くと、以下のような機種がある。
(注:*印は、フルサイズ対応では無い)
①18cm Flektogon(未所有につき詳細不明)
*18cm Docooler 35mm/F1.6 (APS-C以下ミラーレス機用)
②20cm TAMRON SP35mm/F1.8(F012)
*23cm SONY DT35mm/F1.8(APS-C機専用)
③24cm MIR-1 (本レンズ、ただし37mmの焦点距離)
③24cm MIR-24(本レンズと同じアルセナール工場製)
③24cm CANON EF35mm/F2 IS USM(未所有)
上記は記憶に頼って書いているので、場合により
抜けがあるかも知れない。
上表にはレア品も含まれている為、普通に世の中に
流通しているレンズでは、TAMRON F012型(後述)が、
最も寄れる(非マクロ系)35mmレンズだ。
なお、この表では、マクロレンズは除いているが、
35mmの焦点距離を持つマクロで、フルサイズ対応の
ものは希少(皆無?)であり、準マクロの中からは、
2019年に発売された、以下のフルサイズ対応1/2倍
準マクロレンズのスペックを挙げておく。
□15cm TAMRON 35mm/F2.8 (F053、未所有)
また、一見して”最短15cm”という仕様の
■15cm LENSBABY BURNSIDE35 は、これについては
WD(レンズ前からの撮影距離)なので例外だ。
(次回記事で紹介予定)
まあともかく、本MIR-1は、35mm級の実焦点距離の
レンズにおいて上位から数えた方が早いほどの
「寄れる35mm(37mm)レンズ」である。
本MIR-1の、寄れる以外の特徴は? というと
実のところ、ほとんど無い(汗)
弱点として、絞り環の操作性が悪く、加えて
ボケ質破綻が頻発するのだが、ボケ質破綻回避の
為の絞りの操作がやりにくい。
やや絞り込んで、中距離以上での平面被写体に
特化するならば、逆光耐性や解像感には、あまり
問題点は無い為、かろうじて実用的と言えよう。
ただ、せっかく「寄れる」という特徴を持つのに、
近接撮影でボケ質破綻が頻発する事は、その特徴
を活用できない為、その矛盾点がイラっと来る。
まあ、同じアルセナール工場製レンズであっても、
後年の「MIR-24」(ミラーレス名玉編第17位入賞、
最強35mmレンズ選手権準優勝、次回記事で対戦予定)
の方が、ずっとマシな印象だ。
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では、5本目のレンズ。
![_c0032138_10581827.jpg]()
レンズ名:TAMRON SP 35mm/f1.8 Di VC USD
(Model F012)
レンズ購入価格:41,000円(中古)(以下、SP35/1.8)
使用カメラ:NIKON D500(APS-C機)
2015年に発売された、高描写力単焦点準広角レンズ。
勿論フルサイズ対応であるが、チラリと前述したように、
本レンズは、現代において一般的に流通している
非マクロ系35mm級レンズの中では、「最も寄れる」
という特徴があり、素(す)のままでも最大撮影倍率
は0.4倍だ。
以下、APS-C機で使用時0.6倍。NIKON D500に備わる
1.3倍クロップ機能を用いれば0.8倍と、マクロレンズ
の代用として、十分な最大撮影倍率となる。
おまけに描写力も高く、値段も安価。何も申し分の
無いハイコスパレンズである。
![_c0032138_10581802.jpg]()
なお本レンズは、後年2019年に開放F1.4のSP35/1.4
(F045)が追加販売されているが、その理由は
本SP35/1.8が「開放F値がF1.8と暗い」という
たった、それだけの理由で、現代の消費者層からは
真の性能を理解されずに不人気商品となり、新品・
中古相場が暴落した、という悲運の歴史を持つレンズ
であるからで、TAMRONは、慌ててF1.4版を追加発売
した状況だ。(注:現代の主力購買層のビギナー層
では開放F1.8級レンズをF1.4級と数字だけを比べて
「安物、廉価版、良く写る筈が無い」と大誤解をする。
また、性能の良し悪しを自力判断できる中上級層等は
35mm級レンズは既に多数所有している為、(定価が)
高額な新鋭レンズには興味を持てない)
F1.4版は、本SP35/1.8よりも高額な価格となって
しまい、近接性能も失われ(最短30cm)、さらには
NIKON用では汎用性の低い電磁絞り対応(E型)と
なってしまっている。だから全く購入する気は無いの
だが・・ 所有してもいないレンズについて語る事は
「マニア道」的には「ご法度」(禁止事項)であるので、
これくらいまでにしておく。
本SP35/1.8の性能およびコスパには弱点は無く、
所有している数十本の35mm級レンズの順位を決める
「最強35mm(級)レンズ選手権」記事においては、
勿論ながら決勝進出、結果は堂々の3位入賞である。
ちなみに、その決勝戦には、超高描写力レンズである
SIGMA 40mm/F1.4 DG HSM | Art(定価16万円+税)
もエントリー(参戦)していたが、本SP35/1.8は
そのA40/1.4の順位を上回って、勝利している。
なお、順位の決定方法によっては、本SP35/1.8が
優勝する可能性もあったのだが、既に「最強50mm
選手権」で、姉妹レンズのSP45/1.8(F013型)
が優勝していた為、複数のカテゴリーでSP F1.8
シリーズが優勝(圧勝)するのを避ける為、若干だが
採点法を忖度(そんたく)したかも知れない(汗)
まあつまり、本来ならば、全カテゴリーで優勝しても
おかしく無いのが、TAMRON SP F1.8シリーズだ。
総括だが、本SP35/1.8は、高描写表現力に加え、
「手ブレ補正内蔵、超音波モーター内蔵」と近代
レンズでのフルスペック搭載、高い近接撮影性能、
(不人気で)低廉な新品・中古相場、という特徴から
極めてコスパが良い。
これはもう、基本的に「買い」のレンズであろう。
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では、6本目は特殊マクロレンズである。
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レンズ名:中一光学 FREEWALKER 20mm/f2 SUPER MACRO
レンズ購入価格:23,000円(新品)(以下、FW20/2)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)
2017年に発売された中国製の特殊マクロレンズである。
オリンパス製の1970年代の医療用特殊マクロレンズ
「OM-SYSTEM ZUIKO 20mm/f2 Macro」(未所有)
の設計をコピーした商品だと思われる。
(注:中一光学は、オリジナリティが高いメーカー
であるので、過去のレンズ設計のコピー品は、
極めて稀である。ただまあ、この特殊レンズに目を
つけた所が、オリジナリティが高いと言えるが・・)
![_c0032138_10581831.jpg]()
レンズ構成4群6枚で、撮影倍率が4~4.5倍にも
達する「超マクロレンズ」であるが、近接撮影しか
出来ず、ピントリング(ヘリコイド)も存在しない為、
屋内で台座等に固定して使わない限りは、屋外での
一般撮影は、まず不可能である。
μ4/3機に装着し、8~9倍マクロレンズとして屋外
撮影を行った経験では、被写界深度が極めて浅く、
その撮影成功率は約0.1%以下だ。
すなわち1万枚撮影し、わずか数枚しか普通に撮れて
いなかった次第だ。今回は、そこまで無理をせずに、
フルサイズ機を母艦とし、低めの4.5倍設定で撮影
したが、それでも成功率はコンマ何%という感じで
あり、作例を載せる、という程度の簡易的な撮影で
あっても数千枚くらいは撮らないとならないので、
面倒で、なかなか紹介しにくいレンズである。
まあ、「屋外での手持ち撮影は偶然でしか撮れない」
という意味であり、本レンズはあくまで特殊用途だ。
オリンパスが、このレンズ(のオリジナル版)を販売
していた頃には、延長鏡筒(ベローズ)が別売され、
それを装着すると、まさに「顕微鏡」のような感じに
なった事であろう。
その際の撮影倍率は、およそ13倍という資料もある。
その当時、オリンパスではOM-SYSTEMの開発方針で
「宇宙からバクテリアまで」(→何でも撮れる)の
キャッチコピーがあったのだが、その「バクテリア」
の方を撮るには、通常のマクロレンズでは無理であり、
本レンズ(のオリジナル版)のような、特殊医療用
(or 学術用)マクロが必要とされたのであろう。
本FW20/2も、そうやって特殊な用途で用いる必要が
あるレンズでだ。現代のビギナー層等において
ビ「最大4.5倍マクロだってよ、すげぇ~!」
といった、安直な理由で買ってしまったとしても、
完全に用途が無く、持て余してしまうので要注意だ。
ちなみに私の場合、技術分野での業務上で、ある物を
拡大して写す必要があったので、本レンズの購入は
無駄にはなっていない。
本レンズは「一般写真撮影では使用が不可能に近い」
というレンズである。勿論、一般層には非推奨だ。
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さて、7本目は近接撮影可能なトイレンズだ。
![_c0032138_10582583.jpg]()
レンズ名:PENTAX 03 FISH-EYE 3.2mm/f5,6
レンズ購入価格:5,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX Q (1/2.3型機)
2011年発売の、PENTAX Qシステム専用の
トイ魚眼(風)レンズ。
後年のQ7/Q-S1(1/1.7型機)で使用した方が、
画角が僅かに広くなり、魚眼(風)レンズとしての
利用に適するのだが、今回の使用法は、これを
近接撮影用途に用いるので、センサーサイズが小さい
PENTAX Qを用いて、撮影倍率を僅かに上げている。
(注:Qシステムでの1/2.3型機と、1/1.7型機の
両者における純正レンズ使用時のセンサーや画像処理
エンジンの処理内容は非常に複雑であり、後期型でも
前期型と同等のセンサー範囲で一旦撮影して、拡大を
している可能性がある。→イメージサークル確保の為。
だから、単純にセンサーサイズを変えても、撮影倍率
や画角等は、殆ど変化しないかも知れない。
あくまで「気休め」として考えておくのが無難だ)
![_c0032138_10582684.jpg]()
本03 FISH-EYEの最短撮影距離は9cmと短い、
だが、実焦点距離も恐ろしく短いので、撮影倍率は
さほど稼げず、概算だが、およそ1/14倍程度だ。
さて、魚眼レンズを近接撮影用途に使う件だが、
まあ例えば、昔に流行った「鼻デカのペット写真」を
撮るようなイメージを想像して貰えば良いであろう。
魚眼レンズには、大きく分けて「対角線魚眼」
(四角く写る)と「円周魚眼」(丸く写る)があり、
かつ、各々の「画角」(どれくらいの広い範囲が
写るか。概ね対角160°~180°程度、稀に
それ以上)の仕様がある。
その際、魚眼レンズでの「焦点距離」は、あまり
重要なスペックでは無い。だいたい3.2mm~20mm
程度の焦点距離の魚眼レンズが存在してるのだが
装着するカメラのセンサーサイズにより、魚眼描写に
必要な焦点距離は、まちまちとなるし、必ずしも
焦点距離の短い魚眼レンズの方が、撮影範囲(画角)
が広まる訳でも無い。あくまで、そのレンズの設計
仕様次第である。
だから、焦点距離では無く、対角線/円周の区別と
その際の画角だけを調べて買えば良い訳なのだが、
最短撮影距離の仕様はまちまちなので、個々の魚眼
レンズ毎のスペックを調べ、その用途に応じて必要と
思われる性能と、最後に価格を見て決めれば良い。
あまり詳しくは調べていないが、近年(2010年代末
頃から)では多数の中国製等の安価な魚眼レンズが
発売されている、それらの中には最短撮影距離が
かなり短いものも存在するかも知れない。
基本的に魚眼レンズは、よほど、それを必要とする
特殊用途(例:気象観測とか、建築物等での特殊な
表現等)が無い限り、あまり一般撮影において常用
するものでは無いと思われるので、「コスパ」の概念
は特に重要であろう。(つまり、あまり高価な物を
買う必要は無い)
注意点としては、魚眼レンズには、各々対応する
センサーサイズの仕様が存在する。
具体的には、フルサイズ対応、APS-C対応、μ4/3
対応、それ以下(例:今回のPENTAX Q対応)で
あるが、その際、魚眼レンズ自身の対応サイズより
も小さいセンサーの機体に、それを装着した場合、
(例:銀塩用フルサイズ対応魚眼レンズをデジタル
のAPS-C機に装着)この際には、魚眼レンズによる
十分な歪曲描写が得られず、少し歪んだ広角レンズ
のような描写となる。
これ(歪んだ広角)は、これで奥が深い撮影表現を
得る事は出来るが、一般的には「魚眼描写が欲しくて
魚眼レンズを買う」訳だから、「歪んだ広角描写」
では、レンズの購入目的とは一致しないであろう。
魚眼レンズでの対応センサーサイズは要注意だ。
なお、その逆に、上のセンサーサイズの機体に無理に
装着した場合、画角がより広く写るケースはまず無く、
イメージサークルが足りずに、写真の真ん中にのみ
丸く写り、周囲が真っ黒になるだけだ。これもこれで
面白いかも知れないが、やはり用途とは一致しない。
(→その場合は、円周魚眼を買えば良い訳だ)
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次は、本記事ラストとなる特殊広角マクロ。
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レンズ名:LAOWA 15mm/f4 (LAO006)
レンズ購入価格:75,000円(新品)
使用カメラ:NIKON Df (フルサイズ機)
2016年に発売された特殊MFレンズ。
超広角ながら、等倍マクロ仕様であり、加えて
シフト機能まで搭載されている。
過去に、あるいは、他に例を見ない唯一無二の
特殊な仕様のレンズであり、これを何に使うか?
つまり「用途開発」が難しいレンズである。
おまけに高価であるし、中古も殆ど見る事が無い。
(まあ、購入者が少ないだろうから、中古流通も
殆ど無い訳だ)
よほどのマニアックな用途が無い限りは、推奨
し難いレンズではあるが、「唯一無二」の仕様に
魅かれるならば、もうそれはやむを得ない。
(追記:2020年に後継版のLAOWA 15mm/F4.5
Zero-D Shiftが発売されているが、非球面
レンズを採用等、光学系を一新した為、非常に
高額(定価16万円前後)になってしまった。
また、マクロ機能も失われて最短20cm仕様である。
そういえば、「LAOWA社が、2019年頃に非球面
レンズの研磨/研削機械を導入した!」と噂で
聞いていたが、それが活用され始めたのであろう。
中国メーカーでは先進的な措置であるのだが、
しかし、「高価格化」は良し悪しある話だ)
![_c0032138_10582628.jpg]()
聞く所によると、LAOWAは、銀塩時代の日本国内
カメラメーカー関連でレンズの光学設計を担当
されていた技術者の方が、中国に帰って創業した
レンズメーカーだそうだ。
日本国内の大メーカーによる、近代のレンズでは、
「売れるスペック」の無難なものを企画して販売
するしか無い。(=レンズの開発には、多額の費用が
かかる為、あまり珍妙なレンズばかりを販売して
いたら、それらは多数は売れずに、大きな企業での
交換レンズの「事業」としては成り立たないからだ)
だから、恐らくだが、業界の光学技術者としては、
「いつも同じようなレンズばかり作る事を要望され
面白く無いし、自身のアイデアも活かせない」
という不満が大きい事であろう。
そういう理由からか、LAOWA製のレンズの多くは、
(日本)国内メーカーでは、絶対に販売しないで
あろう、極めてマニアックで特殊な仕様の物ばかりだ。
きっと、日本のメーカーに居た時には、やりたくても
出来なかった、自身のアイデアによる特殊なレンズを
LAOWAでは自由に企画・開発して販売しているので
あろうと思われる。(ある意味、恵まれた環境だ)
昔の時代だったら、小規模な組織で、交換レンズの
メーカーとなるのは、とても困難であったのだが、
現代においては、時代背景や環境が違う。
設計者に光学の専門的知識さえあれば、パソコンで
動く光学自動設計ソフトにレンズの諸元を入力すれば、
後は勝手にレンズの図面(構成)が出来上がってくる。
そのデータを、レンズ設計工場(国内でも色々あるし
中国では「深(しん)セン」地区等にも色々ある。
また、LAOWAでは近年、自社工場を建設したと聞く)
・・(設計図を)メールで送ってあげれば、あとは
その図面を元に、工場でレンズが作られる。
(注:勿論、製造の為の初期費用はかかる)
LAOWAは、中堅クラスのメーカーであるけど、上記の
作業の流れであれば、個人(ただ1人)でも、レンズ
メーカになる事ができる世情であり、例えば日本での
例では、安原製作所(代表の安原氏の個人企業)は、
ほぼ、この方式(ファブレス=工場なし、という意味)
で、いくつものユニークな仕様のレンズ(円周魚眼や
ソフトフォーカスなど)を、設計・製造・販売し、
「世界最小のメーカー」と、自らを称していた模様だ。
(注:残念ながら安原氏は2020年に逝去している)
ただまあ、製造形態はこれで良いとしても、特殊な
仕様のレンズは、当然ながら一般には売れず、販売数が
少なくなる。
だからLAOWAのレンズ群は、製造原価を、少ない販売数
で割って振り分ける為、いずれも、やや高価である。
(他の中国製格安レンズ群の数倍~十数倍の価格帯)
でも、マニアックな仕様のレンズであったり、他に
類を見ない特殊な用途に使えるレンズであれば、それは
マニア層とか、その仕様を特殊な目的で用いるユーザー
層においては、もう、多少高価であっても、それが必要
ならば買うしか無い。
「コスパ」評価では、多少コストが高かったとしても、
「パフォーマンス」(性能)が伴えば問題無い訳だ。
(注:近年のTVバラエティ番組等では、ただ単に価格が
安価な商品群を「コスパが良い」と紹介するケースも
多々あるが、安価なだけで品質、性能、味、サービス等
の内容が劣っているならば、それは「コスパが良い」と
見なす事はできない。それでは意味が通じず、誤用だ。
「コスパ」とは、あくまでバランス感覚の価値観だ)
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さて、本LAOWA15/4であるが、「超広角等倍マクロ」
「シフト機能」「特殊アタッチメントの着用性」の
3つの利点がある、これはそれぞれ、やや特殊な用途
だとは言えるが、必要とあれば、本レンズが唯一だ。
それぞれの特徴(機能)における注意点のみ挙げておく。
①超広角等倍マクロ
WD(レンズ先端から被写体までの距離)が、等倍撮影
時では、僅か5mm弱程度と極めて短い。
よって、撮影位置がそこまで近距離を確保できない
(レンズ前部が被写体に接触、衝突(し、故障)する、
被写体に影がかかる、小動物等の被写体は逃げる、
昆虫等では刺される)等に十分注意する必要がある。
一般的には、5mmのWDは短すぎる為、それを活用
できる撮影シーン(条件)は、さほど多くは無い。
②シフト機能
フルサイズ対応レンズであるが、このシフト機能を
用いると、イメージサークルが足りなくなり、画面の
周辺がケラれる。(大きく減光する)
よって、シフト機能時にはAPS-C型機の使用が推奨
されてはいるが、せっかくの超広角レンズなので、
フルサイズ機で使う場合が大半であろう。
その際は、センサークロップ、デジタル拡大(ズーム、
テレコン)、トリミング処理、等を併用し、足りなく
なった周辺をカットして使うか、あるいはもう、そういう
ケラれ写真も面白い、と見なしてそのまま使うか、だ。
なお、NIKON Fマウント版で、それを開放測光で用いる
機材環境(例:今回のようにNIKON Dfを母艦とする)
では、シフト機能を用いると、露出値が狂って、写真
が明るくなったり暗く写ったりする。(注:非Ai仕様)
これ(露出)を正確に補正するのは難しく、いっその事
ミラーレス機で実絞り測光で使う方が簡便だ。
また、このシフト機能は、縦方向にしか効かず、
横位置写真で撮る事が基本となるであろう。
ちなみに、厳密な建築写真等では、三脚が必要と
なるかも知れないが、シフトを効かすと、構図が
大きくずれるので、三脚利用では毎回の構図調整
が必須となり、とても煩雑だ。
趣味撮影であれば、手持ち100%で十分であるが、
結構高難易度な撮影になる事は述べておく。
③特殊アタッチメント(付属品)の利用
具体的には、ZENJIX Soratama72(宙玉)のような
特殊アタッチメントを、本LAOWAの短いWD(5mm)を
活かして、簡便に装着する事が出来る。
ただし、これはケラれる用法なので、良くわかって
いるユーザー向けだ。他にもレンズの前部に装着する
タイプのフロントコンバーター/アタッチメントは
装着汎用性が高いと思う。(注:「アタッチメント」
=付属品。を、フィルター径の意味で使うのは誤用)
いずれの場合でも、「ケラれ」(口径が足りずに
画像周辺が暗くなる、一種の「口径食」である)
には注意。
なお、本レンズはφ77mmのフィルター径であるが、
昔ながらの厚手枠の(保護)フィルターを使うと、
母艦環境(フルサイズ機等)によっては、それだけ
でもケラれが発生するリスクがある。
近年ではフィルター類が全て値上がりしてしまって
とても厳しい状況だが、新型の薄枠フィルターを
買わない限り、ちょっと利用には適さない。
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さて、次回の本シリーズ記事は、
「最強マクロ選手権・広角マクロ・予選(2)」の予定。
今回は「広角マクロ・準広角マクロ」カテゴリー
(以下「広角マクロ」編)の予選第1組とする。
このカテゴリーでは、実焦点距離が28mm以下の
マクロを「広角マクロ」とし、実焦点距離35mm
以下を「準広角マクロ」とするが、既に35mm級
マクロで、APS-C機専用のレンズ等では「標準
マクロ編」で取り上げている場合もあるので、
そのあたりの「線引き」は、少々曖昧なままに
しておく。
最大撮影倍率についても、広角のマクロで等倍
までの仕様のレンズは、かなり希少であるから、
最大撮影倍率の制限範囲も、あまり細かくは
決めないようにしよう。
ノミネートされる近接レンズの条件が緩い為、
紹介(対戦)レンズ本数が、かなり多くなるが
これを2回の予選リーグで纏める為、1レンズ
あたりの実写掲載数は最小限とする。
(注:本ブログは昔からずっと、1記事あたりで、
1MB以上の画像容量としないルールで運用している。
BLOGが有限の容量である事と、アクセス時の速度
低下を防ぐ為だ。なお、画像解像度をわざと低く
しているのは容量増加を防ぐ為、まあ「SNSでは
高解像度である必然性は無い」と思ってもいる)
では早速、広角マクロの予選(1)を始めよう。
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まずは最初の広角マクロレンズ。

(Model F050)
レンズ購入価格:30,000円(新古)(以下、TAMRON20/2.8)
使用カメラ:SONY α7S (フルサイズ機)
2020年に発売された、ミラーレス機用、フルサイズ
対応AF超広角ハーフ(1/2倍)マクロレンズ。
現状、SONY FEマウント版の他のマウント版は
未発売だが、順次他マウント版も発売される可能性
がある。

であるが、超広角20mmであるから、最大撮影倍率は
これでも1/2倍(ハーフマクロ)に留まる。
超音波モーターは内蔵しておらず、新方式の
DC(直流)モーター OSD(Optimized Silent Drive)
を搭載、”静音化と高速化に貢献した”との話であり
動画撮影でコンティニュアスAF時には、静音化は
効果的かも知れない。
しかし、例によって無限回転式ピントリングによる
シームレスMF方式であるから、最短撮影距離近辺での
AF/MF撮影は、著しく不便となる。
いったい何故、近接撮影時に、この仕様が適正では
無い事を、各メーカー側はいつまでも理解できない
のであろうか・・? 実際に撮ってみれば、ものの
10分で、ビギナーでもわかる課題であるのに・・
なお、「気に入らなければ、買わない」というのが、
消費者側に残された、唯一の対抗手段である。
私も、マクロ等の近接撮影用レンズにおいて、超音波
モーター等が内蔵されてシームレスMF仕様のものは、
どのメーカーの物も、もう買わないようにしようか?
とも考えている。
で、本レンズTAMRON 20/2.8には、姉妹レンズの
24mm/F2.8(Model F051)、35mm/F2.8(F053)
が存在し、どれも寄れる仕様であるし、価格も
さほど高価では無い(本F050型で46,000円+税)
状況な為、当初は「全てコンプリートしようか?」
と目論んでいたが、「近接撮影で使い難い」という
課題があるならば、これらを近接撮影用途のレンズ
と想定するならば、あまり好ましく無い。
「コンプリート計画」は、もう一旦、中断しておき、
仮に、後年に中古相場が大きく下落した場合等に、
再度検討するつもりだ。
新鋭レンズにつき、描写力等に不満はないだろう。
非球面レンズや異常低分散レンズを多用した現代的な
設計だ。結果的に、コスパも良いとは思うが・・
「寄れる仕様なのに、実際には寄っては撮り難い」
という用法上の矛盾点を、どう判断するか?は、
個々の消費者側の価値観になるだろう。
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では、次は、超広角準マクロレンズだ。

レンズ購入価格:44,000円(新品)(以下、EX20/1.8)
使用カメラ:PENTAX K10D (APS-C機)
2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル兼用の
AF大口径広角単焦点レンズ。

とも呼ぶ事もある)の、長兄(注:どっちが兄か?
まあ、最広角のレンズである)であり、他には、
EX24mm/F1.8、EX28mm/F1.8が存在する。
(特殊レンズ第52回「SIGMA 広角3兄弟」編参照)
銀塩時代末期においての発売だ。その近い将来には
各社の銀塩AF一眼レフは全てデジタル化される流れで、
その際には、当初はAPS-C型センサー機ばかりとなる
事が、ほぼ明確であった為、予め、その状況に備え
「銀塩では超広角、デジタルで準広角レンズ」として
使えるという、兼用仕様のレンズ群だ。
銀塩機と、1.5倍型APS-C機での画角は以下となる。
EX20mm(銀塩/35mm判)→30mm(デジタル/APS-C機)
EX24mm(銀塩/35mm判)→36mm(デジタル/APS-C機)
EX28mm(銀塩/35mm判)→42mm(デジタル/APS-C機)
これによると、デジタルで42mm画角となるEX28/1.8
は、用途が少なそうな感じだ。また、各社において
銀塩用28mmのAF/MFレンズは、かなりポピュラーだ。
よって、私はEX20/1.8とEX24/1.8は、発売後すぐに
新品で購入したが、EX28/1.8は「当面不要」と
見なして購入を保留、それを入手したのは、ずいぶんと
時間が経過した2010年代後半になってからだった。
「3兄弟」の最短撮影距離は、いずれも20cm以下
と、寄れる仕様だ(本EX20/1.8で最短20cm)
この時、最大撮影倍率は1/4倍となる。
ただまあ、20mmレンズで20cmであれば、一応だが
「焦点距離10倍則」どおりであり、もう一声寄れる
と嬉しい。
その点、姉妹レンズのEX24/1.8であれば、
最短18cmで最大撮影倍率1/2.7倍なので、本レンズ
よりも、”ずっと寄れる”という印象が強い。
(次回記事で紹介予定)
でも、その当時(銀塩時代末期)の、各社20mmの
単焦点は、いずれも最短撮影距離が25cm程度と
焦点距離10倍則よりも寄れない事が普通であったので
(注:広角ズームレンズの場合は、もっと寄れない)
本EX20/1.8の、この仕様でも、従来比で考えると
”ずいぶんと寄れるようになった”という感覚もあった。
そこまでして「寄りたい」理由は、この広角3兄弟
の「開放F1.8」という仕様がある。
最短撮影距離と開放F値は、一見して無関係なスペック
なのだが、両者の特徴を掛け合わせる事により
「背景がボカせる広角マクロ撮影が可能となる」
という要素/用途が非常に大きい。
これ以前の時代の広角レンズやマクロレンズでは、
このような撮影技法は一切実現が出来なかった為、
「SIGMA広角3兄弟」では、「撮影技法を一新させた」
という視点で、歴史的価値が高いレンズ群である。
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では、3本目の準マクロレンズ。

レンズ購入価格: 4万ウォン(約4,000円)(中古)
使用カメラ:OLYMPUS Pen Lite E-PL2(μ4/3機)
詳細不明、出自不明の謎のレンズ。
どこのメーカーで作られた、いつの時代のものかも
一切不明だ、まあ多分、1970年代前後の製品であろう。
購入は、韓国の南大門の中古カメラ店であったのだが
恐らくは日本製だろう。これは「サイコール」と読む、
との事である。
どうやら本レンズには、日本向け版が存在していて、
そこには、レンズ名が「サイコール」とカタカナ(!)
で書かれているそうだ。
(注:現物を見た事が無いので詳細は不明)
マウントはKONICA ARである、マウントアダプターを
用いれば、現代のミラーレス機(注:一眼レフ不可)
には装着が可能である。

訳では無いのだが、写りはトイレンズ並みでしか無い。
唯一の特徴は、最短撮影距離が約16cmと、異常な
迄に寄れる事である。鏡筒上にはMACROの記載が
あり、この時の最大撮影倍率は1/4倍とのこと。
この近接性能は、後年のSIGMA EX24/1.8ですら
最短18cmであるので、本レンズがフルサイズ対応
24mmレンズの中では最強であっただろう。
これをもって「サイコー(最高)ル」と命名したので
あれば、駄洒落なのか本気なのか? よくわからない。
ただまあ「サイコール」のこの記録も、近年2019年に
なって、TAMRON 24mm/f2.8 Di Ⅲ OSD M1:2
(Model F051) (冒頭紹介F050の姉妹レンズ)での
最短撮影距離12cmにより、軽く破られてしまった。
最短撮影距離の利点を無くしてしまったのでは、
描写力が非常に低い本レンズの価値は半減である。
ただまあ、F051型は購入していないので、依然、
本「SICOR24/3.5」が、私の所有範囲においては
「サイコー(ル)」の最短撮影距離を誇る24mmの
レンズである。
---
では、4本目のレンズ。

レンズ購入価格:14,000円(中古)
使用カメラ:OLYMPUS PEN-F(μ4/3機)
詳細不明。恐らくは、1960年代前後に、旧ソ連の
ウクライナの「アーセナル(アルセナール)国営工場」
にて製造された可能性が高い。
この工場は、レンズでは「MIR」(ミール)、カメラ
では「KIEV」(キエフ。注:読み方/発音は複数あり)
を作った事で著名であり、技術力が高かったのか?
ソビエト崩壊後では、ウクライナ国において、民間の
光学・電子系メーカーに独立発展した模様だ。
(企業化した後では、レンズのブランドとして、ARSAT
(アルサット)を使用している模様だ。→未所有)

と言われている。
「フレクトゴン」35mm/F2.4 or 35mm/F2.8は、
第二次大戦での独国敗戦後に、東西分断されてしまった
Carl Zeiss Jena(東独)が、ツァイス系技術を
ベースに戦後に製造したレンズだ、と言われているが
レア品につき未所有だ、詳細の言及は避ける。
ただ、そのレンズは、35mmの焦点距離を持つフルサイズ
対応レンズとしては、最も寄れる類のレンズであった
模様で、その最短撮影距離は18cmだった、と聞く。
「寄れる35mmレンズ」には、「マクロ」と称する
ものを除くと、以下のような機種がある。
(注:*印は、フルサイズ対応では無い)
①18cm Flektogon(未所有につき詳細不明)
*18cm Docooler 35mm/F1.6 (APS-C以下ミラーレス機用)
②20cm TAMRON SP35mm/F1.8(F012)
*23cm SONY DT35mm/F1.8(APS-C機専用)
③24cm MIR-1 (本レンズ、ただし37mmの焦点距離)
③24cm MIR-24(本レンズと同じアルセナール工場製)
③24cm CANON EF35mm/F2 IS USM(未所有)
上記は記憶に頼って書いているので、場合により
抜けがあるかも知れない。
上表にはレア品も含まれている為、普通に世の中に
流通しているレンズでは、TAMRON F012型(後述)が、
最も寄れる(非マクロ系)35mmレンズだ。
なお、この表では、マクロレンズは除いているが、
35mmの焦点距離を持つマクロで、フルサイズ対応の
ものは希少(皆無?)であり、準マクロの中からは、
2019年に発売された、以下のフルサイズ対応1/2倍
準マクロレンズのスペックを挙げておく。
□15cm TAMRON 35mm/F2.8 (F053、未所有)
また、一見して”最短15cm”という仕様の
■15cm LENSBABY BURNSIDE35 は、これについては
WD(レンズ前からの撮影距離)なので例外だ。
(次回記事で紹介予定)
まあともかく、本MIR-1は、35mm級の実焦点距離の
レンズにおいて上位から数えた方が早いほどの
「寄れる35mm(37mm)レンズ」である。
本MIR-1の、寄れる以外の特徴は? というと
実のところ、ほとんど無い(汗)
弱点として、絞り環の操作性が悪く、加えて
ボケ質破綻が頻発するのだが、ボケ質破綻回避の
為の絞りの操作がやりにくい。
やや絞り込んで、中距離以上での平面被写体に
特化するならば、逆光耐性や解像感には、あまり
問題点は無い為、かろうじて実用的と言えよう。
ただ、せっかく「寄れる」という特徴を持つのに、
近接撮影でボケ質破綻が頻発する事は、その特徴
を活用できない為、その矛盾点がイラっと来る。
まあ、同じアルセナール工場製レンズであっても、
後年の「MIR-24」(ミラーレス名玉編第17位入賞、
最強35mmレンズ選手権準優勝、次回記事で対戦予定)
の方が、ずっとマシな印象だ。
---
では、5本目のレンズ。

(Model F012)
レンズ購入価格:41,000円(中古)(以下、SP35/1.8)
使用カメラ:NIKON D500(APS-C機)
2015年に発売された、高描写力単焦点準広角レンズ。
勿論フルサイズ対応であるが、チラリと前述したように、
本レンズは、現代において一般的に流通している
非マクロ系35mm級レンズの中では、「最も寄れる」
という特徴があり、素(す)のままでも最大撮影倍率
は0.4倍だ。
以下、APS-C機で使用時0.6倍。NIKON D500に備わる
1.3倍クロップ機能を用いれば0.8倍と、マクロレンズ
の代用として、十分な最大撮影倍率となる。
おまけに描写力も高く、値段も安価。何も申し分の
無いハイコスパレンズである。

(F045)が追加販売されているが、その理由は
本SP35/1.8が「開放F値がF1.8と暗い」という
たった、それだけの理由で、現代の消費者層からは
真の性能を理解されずに不人気商品となり、新品・
中古相場が暴落した、という悲運の歴史を持つレンズ
であるからで、TAMRONは、慌ててF1.4版を追加発売
した状況だ。(注:現代の主力購買層のビギナー層
では開放F1.8級レンズをF1.4級と数字だけを比べて
「安物、廉価版、良く写る筈が無い」と大誤解をする。
また、性能の良し悪しを自力判断できる中上級層等は
35mm級レンズは既に多数所有している為、(定価が)
高額な新鋭レンズには興味を持てない)
F1.4版は、本SP35/1.8よりも高額な価格となって
しまい、近接性能も失われ(最短30cm)、さらには
NIKON用では汎用性の低い電磁絞り対応(E型)と
なってしまっている。だから全く購入する気は無いの
だが・・ 所有してもいないレンズについて語る事は
「マニア道」的には「ご法度」(禁止事項)であるので、
これくらいまでにしておく。
本SP35/1.8の性能およびコスパには弱点は無く、
所有している数十本の35mm級レンズの順位を決める
「最強35mm(級)レンズ選手権」記事においては、
勿論ながら決勝進出、結果は堂々の3位入賞である。
ちなみに、その決勝戦には、超高描写力レンズである
SIGMA 40mm/F1.4 DG HSM | Art(定価16万円+税)
もエントリー(参戦)していたが、本SP35/1.8は
そのA40/1.4の順位を上回って、勝利している。
なお、順位の決定方法によっては、本SP35/1.8が
優勝する可能性もあったのだが、既に「最強50mm
選手権」で、姉妹レンズのSP45/1.8(F013型)
が優勝していた為、複数のカテゴリーでSP F1.8
シリーズが優勝(圧勝)するのを避ける為、若干だが
採点法を忖度(そんたく)したかも知れない(汗)
まあつまり、本来ならば、全カテゴリーで優勝しても
おかしく無いのが、TAMRON SP F1.8シリーズだ。
総括だが、本SP35/1.8は、高描写表現力に加え、
「手ブレ補正内蔵、超音波モーター内蔵」と近代
レンズでのフルスペック搭載、高い近接撮影性能、
(不人気で)低廉な新品・中古相場、という特徴から
極めてコスパが良い。
これはもう、基本的に「買い」のレンズであろう。
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では、6本目は特殊マクロレンズである。

レンズ購入価格:23,000円(新品)(以下、FW20/2)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)
2017年に発売された中国製の特殊マクロレンズである。
オリンパス製の1970年代の医療用特殊マクロレンズ
「OM-SYSTEM ZUIKO 20mm/f2 Macro」(未所有)
の設計をコピーした商品だと思われる。
(注:中一光学は、オリジナリティが高いメーカー
であるので、過去のレンズ設計のコピー品は、
極めて稀である。ただまあ、この特殊レンズに目を
つけた所が、オリジナリティが高いと言えるが・・)

達する「超マクロレンズ」であるが、近接撮影しか
出来ず、ピントリング(ヘリコイド)も存在しない為、
屋内で台座等に固定して使わない限りは、屋外での
一般撮影は、まず不可能である。
μ4/3機に装着し、8~9倍マクロレンズとして屋外
撮影を行った経験では、被写界深度が極めて浅く、
その撮影成功率は約0.1%以下だ。
すなわち1万枚撮影し、わずか数枚しか普通に撮れて
いなかった次第だ。今回は、そこまで無理をせずに、
フルサイズ機を母艦とし、低めの4.5倍設定で撮影
したが、それでも成功率はコンマ何%という感じで
あり、作例を載せる、という程度の簡易的な撮影で
あっても数千枚くらいは撮らないとならないので、
面倒で、なかなか紹介しにくいレンズである。
まあ、「屋外での手持ち撮影は偶然でしか撮れない」
という意味であり、本レンズはあくまで特殊用途だ。
オリンパスが、このレンズ(のオリジナル版)を販売
していた頃には、延長鏡筒(ベローズ)が別売され、
それを装着すると、まさに「顕微鏡」のような感じに
なった事であろう。
その際の撮影倍率は、およそ13倍という資料もある。
その当時、オリンパスではOM-SYSTEMの開発方針で
「宇宙からバクテリアまで」(→何でも撮れる)の
キャッチコピーがあったのだが、その「バクテリア」
の方を撮るには、通常のマクロレンズでは無理であり、
本レンズ(のオリジナル版)のような、特殊医療用
(or 学術用)マクロが必要とされたのであろう。
本FW20/2も、そうやって特殊な用途で用いる必要が
あるレンズでだ。現代のビギナー層等において
ビ「最大4.5倍マクロだってよ、すげぇ~!」
といった、安直な理由で買ってしまったとしても、
完全に用途が無く、持て余してしまうので要注意だ。
ちなみに私の場合、技術分野での業務上で、ある物を
拡大して写す必要があったので、本レンズの購入は
無駄にはなっていない。
本レンズは「一般写真撮影では使用が不可能に近い」
というレンズである。勿論、一般層には非推奨だ。
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さて、7本目は近接撮影可能なトイレンズだ。

レンズ購入価格:5,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX Q (1/2.3型機)
2011年発売の、PENTAX Qシステム専用の
トイ魚眼(風)レンズ。
後年のQ7/Q-S1(1/1.7型機)で使用した方が、
画角が僅かに広くなり、魚眼(風)レンズとしての
利用に適するのだが、今回の使用法は、これを
近接撮影用途に用いるので、センサーサイズが小さい
PENTAX Qを用いて、撮影倍率を僅かに上げている。
(注:Qシステムでの1/2.3型機と、1/1.7型機の
両者における純正レンズ使用時のセンサーや画像処理
エンジンの処理内容は非常に複雑であり、後期型でも
前期型と同等のセンサー範囲で一旦撮影して、拡大を
している可能性がある。→イメージサークル確保の為。
だから、単純にセンサーサイズを変えても、撮影倍率
や画角等は、殆ど変化しないかも知れない。
あくまで「気休め」として考えておくのが無難だ)

だが、実焦点距離も恐ろしく短いので、撮影倍率は
さほど稼げず、概算だが、およそ1/14倍程度だ。
さて、魚眼レンズを近接撮影用途に使う件だが、
まあ例えば、昔に流行った「鼻デカのペット写真」を
撮るようなイメージを想像して貰えば良いであろう。
魚眼レンズには、大きく分けて「対角線魚眼」
(四角く写る)と「円周魚眼」(丸く写る)があり、
かつ、各々の「画角」(どれくらいの広い範囲が
写るか。概ね対角160°~180°程度、稀に
それ以上)の仕様がある。
その際、魚眼レンズでの「焦点距離」は、あまり
重要なスペックでは無い。だいたい3.2mm~20mm
程度の焦点距離の魚眼レンズが存在してるのだが
装着するカメラのセンサーサイズにより、魚眼描写に
必要な焦点距離は、まちまちとなるし、必ずしも
焦点距離の短い魚眼レンズの方が、撮影範囲(画角)
が広まる訳でも無い。あくまで、そのレンズの設計
仕様次第である。
だから、焦点距離では無く、対角線/円周の区別と
その際の画角だけを調べて買えば良い訳なのだが、
最短撮影距離の仕様はまちまちなので、個々の魚眼
レンズ毎のスペックを調べ、その用途に応じて必要と
思われる性能と、最後に価格を見て決めれば良い。
あまり詳しくは調べていないが、近年(2010年代末
頃から)では多数の中国製等の安価な魚眼レンズが
発売されている、それらの中には最短撮影距離が
かなり短いものも存在するかも知れない。
基本的に魚眼レンズは、よほど、それを必要とする
特殊用途(例:気象観測とか、建築物等での特殊な
表現等)が無い限り、あまり一般撮影において常用
するものでは無いと思われるので、「コスパ」の概念
は特に重要であろう。(つまり、あまり高価な物を
買う必要は無い)
注意点としては、魚眼レンズには、各々対応する
センサーサイズの仕様が存在する。
具体的には、フルサイズ対応、APS-C対応、μ4/3
対応、それ以下(例:今回のPENTAX Q対応)で
あるが、その際、魚眼レンズ自身の対応サイズより
も小さいセンサーの機体に、それを装着した場合、
(例:銀塩用フルサイズ対応魚眼レンズをデジタル
のAPS-C機に装着)この際には、魚眼レンズによる
十分な歪曲描写が得られず、少し歪んだ広角レンズ
のような描写となる。
これ(歪んだ広角)は、これで奥が深い撮影表現を
得る事は出来るが、一般的には「魚眼描写が欲しくて
魚眼レンズを買う」訳だから、「歪んだ広角描写」
では、レンズの購入目的とは一致しないであろう。
魚眼レンズでの対応センサーサイズは要注意だ。
なお、その逆に、上のセンサーサイズの機体に無理に
装着した場合、画角がより広く写るケースはまず無く、
イメージサークルが足りずに、写真の真ん中にのみ
丸く写り、周囲が真っ黒になるだけだ。これもこれで
面白いかも知れないが、やはり用途とは一致しない。
(→その場合は、円周魚眼を買えば良い訳だ)
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次は、本記事ラストとなる特殊広角マクロ。

レンズ購入価格:75,000円(新品)
使用カメラ:NIKON Df (フルサイズ機)
2016年に発売された特殊MFレンズ。
超広角ながら、等倍マクロ仕様であり、加えて
シフト機能まで搭載されている。
過去に、あるいは、他に例を見ない唯一無二の
特殊な仕様のレンズであり、これを何に使うか?
つまり「用途開発」が難しいレンズである。
おまけに高価であるし、中古も殆ど見る事が無い。
(まあ、購入者が少ないだろうから、中古流通も
殆ど無い訳だ)
よほどのマニアックな用途が無い限りは、推奨
し難いレンズではあるが、「唯一無二」の仕様に
魅かれるならば、もうそれはやむを得ない。
(追記:2020年に後継版のLAOWA 15mm/F4.5
Zero-D Shiftが発売されているが、非球面
レンズを採用等、光学系を一新した為、非常に
高額(定価16万円前後)になってしまった。
また、マクロ機能も失われて最短20cm仕様である。
そういえば、「LAOWA社が、2019年頃に非球面
レンズの研磨/研削機械を導入した!」と噂で
聞いていたが、それが活用され始めたのであろう。
中国メーカーでは先進的な措置であるのだが、
しかし、「高価格化」は良し悪しある話だ)

カメラメーカー関連でレンズの光学設計を担当
されていた技術者の方が、中国に帰って創業した
レンズメーカーだそうだ。
日本国内の大メーカーによる、近代のレンズでは、
「売れるスペック」の無難なものを企画して販売
するしか無い。(=レンズの開発には、多額の費用が
かかる為、あまり珍妙なレンズばかりを販売して
いたら、それらは多数は売れずに、大きな企業での
交換レンズの「事業」としては成り立たないからだ)
だから、恐らくだが、業界の光学技術者としては、
「いつも同じようなレンズばかり作る事を要望され
面白く無いし、自身のアイデアも活かせない」
という不満が大きい事であろう。
そういう理由からか、LAOWA製のレンズの多くは、
(日本)国内メーカーでは、絶対に販売しないで
あろう、極めてマニアックで特殊な仕様の物ばかりだ。
きっと、日本のメーカーに居た時には、やりたくても
出来なかった、自身のアイデアによる特殊なレンズを
LAOWAでは自由に企画・開発して販売しているので
あろうと思われる。(ある意味、恵まれた環境だ)
昔の時代だったら、小規模な組織で、交換レンズの
メーカーとなるのは、とても困難であったのだが、
現代においては、時代背景や環境が違う。
設計者に光学の専門的知識さえあれば、パソコンで
動く光学自動設計ソフトにレンズの諸元を入力すれば、
後は勝手にレンズの図面(構成)が出来上がってくる。
そのデータを、レンズ設計工場(国内でも色々あるし
中国では「深(しん)セン」地区等にも色々ある。
また、LAOWAでは近年、自社工場を建設したと聞く)
・・(設計図を)メールで送ってあげれば、あとは
その図面を元に、工場でレンズが作られる。
(注:勿論、製造の為の初期費用はかかる)
LAOWAは、中堅クラスのメーカーであるけど、上記の
作業の流れであれば、個人(ただ1人)でも、レンズ
メーカになる事ができる世情であり、例えば日本での
例では、安原製作所(代表の安原氏の個人企業)は、
ほぼ、この方式(ファブレス=工場なし、という意味)
で、いくつものユニークな仕様のレンズ(円周魚眼や
ソフトフォーカスなど)を、設計・製造・販売し、
「世界最小のメーカー」と、自らを称していた模様だ。
(注:残念ながら安原氏は2020年に逝去している)
ただまあ、製造形態はこれで良いとしても、特殊な
仕様のレンズは、当然ながら一般には売れず、販売数が
少なくなる。
だからLAOWAのレンズ群は、製造原価を、少ない販売数
で割って振り分ける為、いずれも、やや高価である。
(他の中国製格安レンズ群の数倍~十数倍の価格帯)
でも、マニアックな仕様のレンズであったり、他に
類を見ない特殊な用途に使えるレンズであれば、それは
マニア層とか、その仕様を特殊な目的で用いるユーザー
層においては、もう、多少高価であっても、それが必要
ならば買うしか無い。
「コスパ」評価では、多少コストが高かったとしても、
「パフォーマンス」(性能)が伴えば問題無い訳だ。
(注:近年のTVバラエティ番組等では、ただ単に価格が
安価な商品群を「コスパが良い」と紹介するケースも
多々あるが、安価なだけで品質、性能、味、サービス等
の内容が劣っているならば、それは「コスパが良い」と
見なす事はできない。それでは意味が通じず、誤用だ。
「コスパ」とは、あくまでバランス感覚の価値観だ)

「シフト機能」「特殊アタッチメントの着用性」の
3つの利点がある、これはそれぞれ、やや特殊な用途
だとは言えるが、必要とあれば、本レンズが唯一だ。
それぞれの特徴(機能)における注意点のみ挙げておく。
①超広角等倍マクロ
WD(レンズ先端から被写体までの距離)が、等倍撮影
時では、僅か5mm弱程度と極めて短い。
よって、撮影位置がそこまで近距離を確保できない
(レンズ前部が被写体に接触、衝突(し、故障)する、
被写体に影がかかる、小動物等の被写体は逃げる、
昆虫等では刺される)等に十分注意する必要がある。
一般的には、5mmのWDは短すぎる為、それを活用
できる撮影シーン(条件)は、さほど多くは無い。
②シフト機能
フルサイズ対応レンズであるが、このシフト機能を
用いると、イメージサークルが足りなくなり、画面の
周辺がケラれる。(大きく減光する)
よって、シフト機能時にはAPS-C型機の使用が推奨
されてはいるが、せっかくの超広角レンズなので、
フルサイズ機で使う場合が大半であろう。
その際は、センサークロップ、デジタル拡大(ズーム、
テレコン)、トリミング処理、等を併用し、足りなく
なった周辺をカットして使うか、あるいはもう、そういう
ケラれ写真も面白い、と見なしてそのまま使うか、だ。
なお、NIKON Fマウント版で、それを開放測光で用いる
機材環境(例:今回のようにNIKON Dfを母艦とする)
では、シフト機能を用いると、露出値が狂って、写真
が明るくなったり暗く写ったりする。(注:非Ai仕様)
これ(露出)を正確に補正するのは難しく、いっその事
ミラーレス機で実絞り測光で使う方が簡便だ。
また、このシフト機能は、縦方向にしか効かず、
横位置写真で撮る事が基本となるであろう。
ちなみに、厳密な建築写真等では、三脚が必要と
なるかも知れないが、シフトを効かすと、構図が
大きくずれるので、三脚利用では毎回の構図調整
が必須となり、とても煩雑だ。
趣味撮影であれば、手持ち100%で十分であるが、
結構高難易度な撮影になる事は述べておく。
③特殊アタッチメント(付属品)の利用
具体的には、ZENJIX Soratama72(宙玉)のような
特殊アタッチメントを、本LAOWAの短いWD(5mm)を
活かして、簡便に装着する事が出来る。
ただし、これはケラれる用法なので、良くわかって
いるユーザー向けだ。他にもレンズの前部に装着する
タイプのフロントコンバーター/アタッチメントは
装着汎用性が高いと思う。(注:「アタッチメント」
=付属品。を、フィルター径の意味で使うのは誤用)
いずれの場合でも、「ケラれ」(口径が足りずに
画像周辺が暗くなる、一種の「口径食」である)
には注意。
なお、本レンズはφ77mmのフィルター径であるが、
昔ながらの厚手枠の(保護)フィルターを使うと、
母艦環境(フルサイズ機等)によっては、それだけ
でもケラれが発生するリスクがある。
近年ではフィルター類が全て値上がりしてしまって
とても厳しい状況だが、新型の薄枠フィルターを
買わない限り、ちょっと利用には適さない。
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さて、次回の本シリーズ記事は、
「最強マクロ選手権・広角マクロ・予選(2)」の予定。