本シリーズは、各カメラメーカーが発売した銀塩・デジタル
のカメラを、およそ1970年代から現代2020年代に至る迄の
約50年間の変遷の歴史を世情等と絡めて辿る記事である。
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今回は、NIKON編(後編)として、2000年代~2010年代の
NIKONデジタル機(コンパクト、デジタル一眼レフ)を
中心に紹介するが、残念ながらNIKON製ミラーレス機
(1シリーズ、Zシリーズ)については所有していないので
それらの説明は最小限とする。
本記事では、このデジタル時代からの現有カメラの紹介
写真と、同時代のレンズ等をNIKONデジタル機に装着して
撮影した写真を適宜挿入して進める。
では、早速始めよう。
*NIKON デジタル一眼レフ黎明期 2000年前後
NIKONはCANONと共に、市場に先駆けて、いち早くデジタル
一眼レフの実用化を目指していた。
CANONが試作機的な機種(非常に高価)を1990年代後半に
いくつか発売した事に対し、NIKONではFUJIFILM社との
共同開発の「Eシリーズ」は、あくまで試作機的な
扱いのまま、あまり積極的な市場展開を行っていない。
結局、当初から実用レベルに近い完成度の機体を目指した
のであろう。その最初の機種は「NIKON D1」(1999年、
260万画素、65万円)となった。
以降、2001年に高画素型D1Xと、連写型D1Hが発売、
でもまあ、この時代は実用機と言ってもまだ高価すぎる為、
一般レベルに迄、これらの機種が普及する事は無かった。
2002年には、一般層への普及を目指したD100が発売、
しかし、この機体も30万円と、やや高価だ。
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2003年には、実用高速連写機D2H(上写真)が登場。
なお、「D2」という機種は存在せず、この連写型D2Hと、
後年(2005年)の高画素機D2Xに、当初から分割されて
いたラインナップだ。
D2Hは、デジタル一眼第1回記事で紹介済み。定価50万円
前後の高価な機体ではあるが、高感度ノイズ等について
市場に悪評判が流れ、非常に大きな値引率で安価に新品
購入する事が出来、この機体が私が購入した最初のNIKON製
デジタル一眼レフとなった。
ノイズ問題については、NIKON独自開発のJFET型センサー
「LBCAST」を採用した事で、当時の一眼レフとしては稀な
高感度(最大ISO6400)を搭載していたのだが、銀塩機
から持ち替えたばかりのユーザー層が、この高感度を
目一杯使って「ノイズが酷い」と酷評した事による。
ただ、今から思い返せば、NIKON機の急速なデジタル化を
良く思わない「対抗勢力」により意図的に流されたデマや
流言の類の物かも知れず、いずれにしても不当な評価だ。
個人的にはD2Hは、20年近くも現役で使用しているが
日中の趣味撮影等においては、ノイズが気になった事は
一度も無い(↓はD2Hによる撮影写真)
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ニコンは、このノイズ問題の為、急遽2年後の2005年に
暫定後継機D2Hs(未所有)を発売するが、ノイズ酷評は
収まらず、かつ、このD2H系のLBCASTは、400万画素と
解像度が貧弱で、既に市場は「画素数競争」の様相を
示し始めていた為、競争力が無くなってしまっていた。
従って、LBCASTも僅か2機種で採用されただけで終了、
NIKONの自社センサー開発への道に多大な影響を与えて
しまった事となる。(結果、自社センサー開発は中止)
詳しい真相は、もはや闇の中であるが、もしこれらの市場
評価が意図的に流されたデマのようなものであったならば
新技術の発展の芽を摘んでしまった形となって残念な話だ。
そして、デマや流言やフェイクは、それを流す方も問題
であるが、それらの根拠に乏しい噂を単純に信じて拡散
してしまう消費者側にも多大な課題がある。
*NIKON デジタル一眼レフ普及期 2004年~2000年代後半
2004年というのは、私が「デジタル一眼レフ元年」と
定義している年である。CANON、NIKONはもとより、それ
以外でも各社(PENTAX、KONICA MINOLTA、OLYMPUS等)
から、一般層でも入手可能な価格帯(概ねボディ単体で
20万円以下程度)の一眼レフが出揃い、それらが急速に
アマチュア層向けや業務用途としても広まって行く。
この時代の各社の代表的普及機としては、CANON EOS 20D、
PENTAX *istDs、OLYMPUS E-1(4/3機、2003年発売だが
旗艦機級でやや高価)、OLYMPUS E-300(2004年)、
KONICA MINOLTA α-7 DIGITAL等があるのだが、
NIKONでは、D70(2004年)が普及化の立役者となる。
また、やや遅れて上級機D200(2005年)も発売された。
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上写真は、NIKON D70、この機体の詳細は、デジタル
一眼レフ・クラッシックス第4回記事に詳しいが、
簡単に言えば、1/8000秒シャッター搭載や、大量の連続
撮影を可能とする高性能機でありながら、15万円以下の
戦略的な実勢価格で発売された、という点がある。
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なお、D70の画素数は600万画素のCCD、この時代の多くの
普及機が同一のスペックであり、各社共通の撮像センサー
部品を採用していると思われる。
まあ、つまり、それまではまだ、デジタル一眼レフは
「黎明期」であったと私は定義しており、性能がまだ
実用レベルに満たない、あるいは高価すぎたものが、
ようやく、この2003年~2005年頃に、実用的かつ
コスパ的に許容できる状態になったという事である。
この為、私もこの時代に各社の普及機群を入手、そして
本ブログも2005年の開設となっている。
なお、とは言え、まだいずれの機体も新品価格は高価
すぎた。これらを買えるのは、業務用途以外の場合は、
銀塩時代からの上級層やマニア層が中心である。
何故ならば、それらの層では銀塩時代の交換レンズを
所有しており、新規の4/3(フォーサーズ)マウント
以外であれば、銀塩時代のレンズがそのままデジタル
一眼レフでも使用できたので、機体を買い換えるだけ
なので新規機材導入コスト(レンズ代)を削減できた訳だ。
私の場合も、各AFマウントのレンズは銀塩時代からの
ものが多数あり、ボディの方は殆どの機体が中古又は
知人からの購入だ。
現代では考えられないが、この時代では、毎年のように
新型機の大きな性能アップや高機能化が進み、ほんの
1年程前の機体が急速に性能的に見劣りしてしまった為、
(→「仕様老朽化寿命」が極めて短い他、安価な新機種が
旧型の高級機の性能を上回る「下克上」が発生する)
当時の中古機購入は、発売後から少しの期間を待つだけで
リーズナブルな相場となったものが多く出て来ていた。
これら、この時代(2004年~2006年頃)の普及機群
に関しては、デジタル一眼第2回~第6回記事に詳しい。
ただ、今から思いおこせば、銀塩からデジタルへの
移行は、少々スムースすぎたかも知れない。
前述の、銀塩時代の交換レンズがそのまま使えた事で、
殆どのユーザーは、デジタル一眼レフを、ただ単に
「フィルムがいらなくなった便利なカメラ」位の感覚で
しか捕らえておらず、銀塩からデジタルへ大きく原理が
変わった事を見落としていた。この為、この時代では
一般ユーザー層において、様々なデジタルに関する誤解
が非常に多く蔓延した。
むしろ、交換レンズの件等も含め、カメラのデジタル化の
敷居がもっと高ければ、ユーザー層も「まったく新しい
カメラである」と気合を入れて、これらについて勉強や
新撮影技法の習得を進める事が出来ていたのかも知れない。
(つまり、大半のユーザーの意識は、銀塩時代からの古い
ままだった、という事である)
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2000年代後半ともなると、これまで中上級者御用達とも
言えたデジタル一眼レフも、ようやくエントリー層に
まで普及していく。まあ勿論、低価格化が進んだ事も
理由であるが、こうなるとメーカー側でも販売カメラの
ラインナップを段階的に差別化していかなくてはならない。
すなわち、2000年代前半では各社とも、デジタル一眼レフ
を開発し発売するだけで必死であり、上級機や普及機等の
複数の製品ラインナップを組む事が困難であったのだ。
まあ、その中でもNIKONとCANONに関しては、初期の段階
から旗艦機が存在し、その下に中上級機を用意していた。
これについては、デジタル化で使った多額の研究開発費
を、まず旗艦機に乗せて高価で販売、さらに下位機種で
開発費の償却(回収)を進めていたのであろう。
その後、初期デジタル化開発が一段落した頃になると、
この「ラインナップの差別化」の為に、下位機種では
元々持っている内部部品(例:画像処理エンジン)の性能
を制限するようになっていた。すなわち価格帯の異なる
機種毎に個別に開発をしていたら費用がかかり過ぎる為
下位機種では、本来持っている性能をわざと制限して
段階的ラインナップを組まざるを得ない訳である。
ところが、この事が、一般ユーザー層から見れば、
「値段が高価な機種は、画素数も大きく、連写性能も高い
から、性能が優れているのだ」と、上位機種に対して
過剰なまでの期待や憧れを持つようになっていく。
だから、こうしたユーザーニーズは、例えばメーカー側の
「画素数競争」や「大型センサー化競争」に拍車をかけ、
そうした「数値スペック」だけを市場全体が重んじる
ようになり、だんだんと実用上では不要なまでの性能を
カメラに持たせるようになって行く・・
さて、2000年代後半におけるNIKONの代表的な機種と
言えば、初のフルサイズ(FX)旗艦機D3(2007年)と、
フルサイズ上級機、D700(2008年)、そして、
DX(APS-C)の上級機、D300(2007年)、中級機の
D90(2008年)をあげておく。
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上写真は、D300(デジタル一眼第9回記事参照)
前述した「過剰なスペック競争」は、私個人的には、
「それに追従したら、コスパの悪いカメラを買わされる」
と非常に警戒し、この時代のフルサイズ機を、あえて
無視していた。よって、狙い目とする機種は、上記の
D300しかなく、かつ、それも、旧来から使用している
D2HとD70が、十分に長期間使えるだけの「仕様老朽化
寿命」の長さを持っていた為、D300の購入は、発売後
少し年月が過ぎた2010年代前半になってからであり、
ずいぶんと安価な中古相場で購入が出来た。
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発売時価格の数分の1まで低下したD300の中古価格を
見て、私は「デジタルカメラは消耗品だ」という思いを
より強くした。この頃から私は新機種を追いかける事を
一切しなくなり、発売後数年が過ぎて中古相場が下がった
一眼レフを順次購入する「ローテーション購買戦略」を
意図するようになる。2000年代後半以降の機種であれば、
既に実用性能的な不満は殆ど無く、それ以上の部分は
前述の「過剰なスペック競争」で、「不要な性能である」
という意識も強くなっていたからだ。
*NIKONデジタル・コンパクトカメラ 2000年代~2010年代
NIKONでは「COOLPIX」というブランド名で、
他社と同様に1990年代後半よりコンパクト・デジタル
機を発売している。
しかしながら、前記事(NIKON編前編)でも書いたが、
NIKONの市場戦略上、コンパクト機や低価格機には
あまり力を入れる事は出来ない。それらを安価に
売って、ユーザーが「NIKONを買った」と満足して
しまったら、より高付加価値な(=利益の大きい)
高級(デジタル)一眼レフを売る販売機会を損失して
しまう可能性があるからだ。
とは言え、2000年代位からは、NIKONコンパクト機も
そこそこ実用性の高い機種は多数発売されていたと思う。
まあでも、やはりマニアックさは欠片も無い。すなわち
特徴的な性能や機能などの個性が全く無い機種が大半だ。
よって、殆どの機種を、私はずっと無視しつづけた。
かろうじて所有しているNIKONコンパクト・デジタル機
は、僅かに2機種だけであるし、それらも正直言えば
好きなカメラでは無い。
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上写真は、NIKON Coolpix S50 (2007年)
コンパクト・デジタル・クラッシックス第3回記事で
紹介済みだ。だが殆ど個性が無く、長所はデザイン的な
良さだけであろうか。
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上写真は、NIKON Coolpix S1100 pj(2010年)
NIKONでは、恐らく2機種しか存在しないと思われる
「プロジェクター内蔵」の特殊カメラだ。
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撮影したSDカード内の写真の鑑賞のみならず、PC等で
作成したパワーポイント資料等もJPEG化して保存して、
SDカードにコピーすれば、簡易的なプレゼンも可能に
なるのだが、解像度や光量が貧弱な為、数人程度の
小さい集まりの「場」でしか使用できない。
勿論「デジカメ」ではあるが、およそカメラらしく無い
異常とも言える、独特の非常に使い難い操作系を持つ為、
この機体は殆どカメラとしては使用しておらず、
プロジェクター用途専用で使っていたが、上記解像度と
光量の課題が大きく、自然と使わなくなっていった。
他のコンパクト機だが、勿論多数あるものの、マニア的
に魅力を感じる機体は少ない。2000年代のコンパクト機
製造では、有力な大手OEMメーカーも存在していた為、
各社から多数のOEM機が発売されていたが、「カメラの
ロゴ(メーカー名)が異なるだけで中身は同じカメラだ」
という印象も強かった。
*NIKON デジタル一眼レフ フルサイズ化期 2010年代前半
ミラーレス機の新発売(2008年~)やスマホの台頭に
より、(デジタル)一眼レフ市場の縮退が始まる。
(↓は、初のミラーレス機Panasonic DMC-G1,2008年)
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まあ、実際のところ、2000年代後半の一眼レフ性能が
あれば、実用撮影的にはもう十分なレベルであり、
例えば、1600万画素機が2000万画素になったから、と
言って、それだけでカメラを買い換える理由にはならない。
中上級ユーザーであれば、もう「(2000年代の)画素数
競争に踊らされていただけ」と言う事には気づいている。
初級層においては、選択肢として、一眼レフ、ミラーレス
の二択であれば、軽量な方を選ぶ事も多いであろう。
ただ、エントリー(入門)層であるとか、あるいは一部の
初級中級層では、2000年代より引き続き(デジタル)機
を数値スペックだけで良否を語るような(残念な)状況は
ずっと続いている。まあ、消費者側から表面的に見える
「数字」は、それらだけしか無いので、画素数の話がもう
無意味になったと理解すれば、今度は連写性能とか、
最高ISO感度の話を言い出す訳だ。
まあ、消費者層側では、発売されたカメラ等について、
スペック等を、あれこれ語っていれば良いだけなのだが、
メーカーや市場側はそうはいかない。このまま一眼レフ
や交換レンズが売れなくなってしまったら、カメラ事業
そのものへの影響が強すぎる。何の為に手間暇や資金を
かけて銀塩からデジタルへの転換を果たしたのか、その
意味が無くなってしまうだろうし、流通や市場もまた
デジタル化への移行や推進をする為に、この10年間、
あれこれと努力をしてきたのも無駄になってしまう。
で、初期(2010年前後)のミラーレス機は、μ4/3型や
APS-C型の小型センサー機ばかりであったので、一眼レフ
陣営は「フルサイズ化」への対応を行った。
つまり、「フルサイズ機であれば良く写る」という
概念を、これまでの「画素数が多ければ良く写る」
というものに替って、消費者層に新たに植えつけよう
とした訳だ。物事の本質が良くわかっていないビギナー
層等であれば、こうした話には簡単に乗って来る。
で、そうすれば、その「付加価値」によりカメラの価格を
上げられる。つまり縮退した販売台数を、売り上げ金額や
利益でカバー出来る訳だ。
2012年は「フルサイズ元年」とも言える程、
各社からフルサイズ・デジタル一眼レフが出揃った。
NIKONでも、D4、D800、D800E、D600が発売され、
翌2013年でも、Df(下写真)、D610と続く。
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他社製品も含め、これらフルサイズ機の中には、
20万円程度で買える機体もあり、実用派の中級層や
金満家のビギナー層であれば手が出せない金額では無い。
しかし、これまでのAPS-C型等の一眼レフやミラーレス
機が10万円以下、あるいは、それらの中古であれば、
2~5万円程度で買える状況からすれば、高価である
事には変わりが無い。
それに、フルサイズ機をビギナー層等が無理をして購入を
検討しようとして、彼らが気にする「カタログスペック」
を見れば、やはり低価格のフルサイズ機は、それが弱く、
上位の機種になればなるほど「数値的な性能」が高いと
感じてしまう。まあ、それもその筈、前述したように
ラインナップ下位機種ほど性能を「差別化」して低めて
いるから当然である。
なので、ビギナー層は「少しでも上位の機種が欲しい」
となってしまう。
ここで「何故、高性能の機体が欲しいのか?」と言えば、
ビギナー層は自身の写真撮影スキル(技能、経験、知識等)
に自信が持てないからだ。だって、絞りやシャッター速度
がどうのこうの、と言われてもさっぱり理解が出来ない
状況だしピンボケや手ブレを必要以上に恐れてしまっても、
それはもう、やむを得ない事であろう。
写真の基本原理はさほど難しくは無いが、知れば知るほど
奥が深く、一部は上級者層や専門家層でも理解が困難な
要素も多々ある。だから「ちゃんと勉強しよう」と思う
勤勉な利用者であったとしても、その奥の深さに「眩暈を
覚える」程となって、必ずどこかの段階で挫折してしまう
事であろう。ましてや「シャッターを押せば写真は写る」
と思っている楽観的な初級層であれば、なおさらであり、
最低限の露出原理すら勉強せずに、ただただ「AFが速くて
良くピントが合い、手ブレ補正機能があって、連写が速く、
画素数が多くてフルサイズであれば、きっと良い写真が
撮れるに違い無い」と、単純に思い込んでしまう訳だ。
まあ、そう思う事自体が「ビギナー」の証拠であるのだが、
そこはもう本記事では深堀りはするまい、ともかく高性能
の機体を初級中級層が欲しがる事は確かである。
また、この時代は、人口構成比率の大きい「団塊の世代」
の定年期であり、彼らが定年後の余暇の為、若い頃に
憧れた(高価すぎて買えなかった)NIKON製の新鋭高級
カメラを欲しがる要因ともなっている。
でもまあ、そういう消費者層が、高価な(高価すぎる)
新鋭機を買ってくれる事で、なんとかこの時代の一眼レフ
市場は崩壊を免れた。そういう点では、上級層やマニア層
であれば、自身の撮影目的等に合わせて、安価な機体から
高性能な機体まで、新品も中古も含めて選択肢が増加した
事は嬉しい、コスパ等をよく吟味して、好きな機体を
買えば、それはそれで良いからだ。
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なお、カメラ本体のみならず、交換レンズ市場も当然
ながら、販売数縮退の影響を強く受けている。
よって、レンズメーカー等でも、この時代から高付加価値
戦略を開始、結果的に交換レンズの価格も高価になって
しまった。まあ高性能になれば、高価格化もやむを得ない
面もあるが、値段が上がっただけの性能増強があるとも
言い切れず、結果的に「コスパ」が悪化している事は
否めない。
一応、カメラメーカーでは、この課題(レンズが高価すぎて
ビギナー層が買えない)を鑑みて、「エントリーレンズ」
という戦略を開始した(匠の写真用語辞典第9回記事参照)
まあ「お試し版」の高性能単焦点レンズ等を安価に販売し、
それを気に入ってくれたユーザー層において、次の段階で、
さらに高価な自社製高級レンズを買ってもらったり、
他社機(ミラーレス機等)への乗り換えを防ぐ、という
一種の「囲い込み戦略」である。
ただ、この市場戦略はあまり効果が無かったかも知れない、
2010年代前半より後では、各社ともエントリーレンズ
の発売は少なくなっている。(しかし、エントリーレンズ
は全般に極めてコスパが良く、「見かけたら全て買い」と
いう手段を取っても悪く無い)
まあ、2010年代前半より、カメラ・レンズ市場の縮退
が顕著となり、悠長な「エントリーレンズ戦略」を取る
余裕が無く、もっと直接的に高額(レンズ)商品で利益を
稼がざるを得なくなった事もあるだろう。
*NIKON デジタル一眼レフ エントリー機 2010年代前半
この時代、「フルサイズ化戦略を行った」と前述したが
そうした高額商品が直接、入門層や初級層に簡単に売れる
訳でもない。
そこでNIKONは、「エントリーレンズ」戦略とともに、
「エントリー機」の販売戦略を行う。
具体的には、D3000/D5000シリーズであり、
これらは低価格の入門機だ。しかも、毎年のように
新製品が発売され、消費者層の目を引く。
(下写真は、D5300、2013年発売)
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この戦略も「安価なお試し版」であり、これらを購入
したユーザー層が、次に高価な(フルサイズ等)の一眼
レフを買ってもらう為の「呼び水」となっている。
ただし、これらのエントリー機は、意図的に非常に性能を
低められているので、これらの機体だけで実用撮影を
行うのは厳しい。ここでの「仕様的差別化」は、すなわち
NIKONの高額機種の購入に誘導する為のものだ。
でも、その仕掛けがわかっているならば、小型軽量の
サブ機として利用すれば良い訳であり、利用形態次第だ。
また、こういう戦略をとっても、消費者層の一眼レフ
離れは止まらず、結局NIKONは2010年代後半から、
低価格(エントリー)機戦略を止め、高付加価値型
(=高価な)一眼レフの販売のみに注力する事となる。
*NIKON ミラーレス機 2010年代~
何度も前述したように、NIKONは「高付加価値型」の
メーカーであるから、安価な価格帯のカメラを販売する
事については消極的だ。
ただ、初期ミラーレス機の市場における勢いが止まらず、
そのまま、それを無視し続ける事は出来そうにない。
そこでNIKONでも、2011年より「NIKON 1」シリーズで
ミラーレス機市場への参入を開始した。
しかしながら、1型というセンサーサイズは、一眼レフ
との差別化要因が甚だしく感じ、残念ながらマニア層が
魅力を感じる要素は無い。
このシリーズは、2015年のNIKON 1 J5を持って短期間
で終了してしまい、NIKONのWEBでも「旧製品」という
扱いとなっている。
私もまた興味を持てなかった為、1台も所有していない。
ミラーレス機市場における戦略転換点としては、2013年
に、SONYから初のフルサイズ・ミラーレス機である
α7/R(下写真はα7)が発売された事であろう。
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「ミラーレス機であっても本格的写真撮影用途に適する」
という新たな概念をユーザー層に植え付ける事は成功し、
このα7/9系シリーズはヒット商品となる。
これはミラーレス機市場全体、そしてフルサイズ化した
一眼レフ市場に対してもインパクトの大きい出来事であり、
1985年の、ミノルタによる実用的AF一眼レフの新発売の
「αショック」になぞらえて、「第二次αショック」とも
呼べる出来事であったかも知れない。
そして、NIKONにおいても、2018年からは、フルサイズ・
ミラーレス機である「NIKON Z6/Z7」を新たに展開。
いつまでもミラーレス機市場で後塵を拝する訳には行かない。
これらは「高付加価値型」商品であるから勿論高価である。
現状では、Zシリーズは、まだ発売後時間が経っておらず、
高額であるし、今後の機種展開や交換レンズ展開も読めない。
個人的には購入保留という感じであり、所有してもいない
カメラの事をあれこれと語るのは本意では無いので、その
詳細については割愛する。
*NIKON デジタル一眼レフ 高付加価値化期 2010年代後半
2010年代前半において、NIKONを始め、他社においても
一眼レフのフルサイズ化は、ほぼ一段落した。個人的に
嬉しい事は、一眼レフAPS-C機、μ4/3等ミラーレス機、
APS-C専用交換レンズ等が不人気となり、それらの中古相場
の下落が大きい事であり、入手性が高まって来ていた。
ただ、皆がそういう「えげつない買い方」をしていたら、
それこそカメラ市場が維持できない。申し訳ないが、
ビギナー層にはせっせと高価な新鋭機を買っていただき
市場を潤してもらうとしよう。
(参考:少し前述したが、「団塊の世代」が、定年を迎える
時代であり、彼らが若い頃に憧れた「NIKONの一眼レフ」は、
この時代においては、ビギナーのシニア層をターゲットと
している様相が強く見られる)
しかし、フルサイズ機にかぎらず、APS-C機やミラーレス機
のカメラ全体として、こうした縮退市場の中でも、ユーザー
に新製品を欲しいと思っていただき、買ってもらう為には、
さらに、製品に魅力(付加価値)を付けていかなくては
ならない。
その為、この時代のカメラには、どれも「超絶性能」(匠の
写真用語辞典第1回記事参照)が、与えられるようになった。
これを簡単に言えば、超高感度であるとか超絶的なAF性能、
高速連写性能、などである。
代表的な超絶機体は、NIKONの各商品ランク毎に多数存在し、
旗艦機で言えば、NIKON D5(2016年)、D6(2020年)
以下、高級機のD850(2017年)、上級機D500(2016年、
下写真)や、中上級機D7500(2017年)等がある。
(参考:本記事掲載時点では、NIKONは、もう低価格帯
一眼レフの販売を中止していて、ほぼ、ここに挙げた
高額な超絶性能機しか、ラインナップされていない)
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ただ、何度も言うが、これら「超絶性能機」は、
もはや(趣味的な)写真を撮る、という行為においては、
完全にオーバースペックである。確かに業務用途であれば
悪条件の撮影においても、少しでも歩留まり(成功確率)
を高める為に、超絶性能はありがたい。しかしながら
それでもユーザー側から見てコスパが悪すぎる事は否めない。
まあつまり、メーカー側が事業を維持する為に高く売りたい
商品群である訳だから、当然の事なのだが、「買い物」の
感覚からは、これでは「売り手の勝ち」の状態である。
買い物は「消費者の勝ち」を目指す事は基本中の基本だ。
所有してもいない機体の文句を言うのは本意では無い、と
常に思っているが、そういう意味もあって「D500」を
購入したとも言える。本当に超絶性能機が実用的なのか
どうか? そしてそのコスパは妥当か否か? それらを
実機で実感してみたかった要素もあったからである。
![_c0032138_18420155.jpg]()
だが実際に買って使ってみると、やはり気に入らない点が
多々出てくる(デジタル一眼第20回記事参照)
そして、もう1つ私が気がついた点は、高価な機種で
あればある程、評価基準が厳しくなって行くという事実だ。
つまり高価な機体では、何一つ実用上での欠点はあって
欲しく無い。もしそれがあると「高いカメラのくせに、
こんな簡単な課題も治っていないのか、酷い怠慢だ!」と
いう風に解釈できてしまうからだ。
まあ結局、上級層やマニア層であれば、これらの新鋭の
高付加価値型カメラは、あまり購入してはいないだろう。
何故ならば、旧型機でも撮影に必要な性能に不足は無いから、
それらで十分な訳だ。仮に多少何か物足りない点があったと
しても、経験や技能で、それらの旧型機の欠点を回避して
使うだけのスキルも持っている。
逆にいえば、ビギナー層が超絶性能機を買ったとしても、
その欠点や課題を見出す事は難しい。そこまで色々なカメラ
を使用してきた経験値や感覚値を持っていないからだ。
だから結局「D500の連写性能は凄い!」とかいった単純な
評価しか行わない事となる、まあ趣味撮影においては、
その事で、所有満足感が得られれば、別にそれでも良い。
![_c0032138_18420177.jpg]()
しかし、業務用途あるいは、重要な撮影シーンにおいて、
その超絶的なAFや連写性能を期待し、難しい条件の撮影を
こなそうとしていたのが、結局、高速連写中にAFが追従
できずにピンボケとなったり、AEが非追従な結果、酷い
露出オーバーや露出アンダーになったりしたら、がっかり
としてしまうだけのみならず、撮るべき写真が撮れずに、
責任問題にも発展してしまう(汗)
だから、重要な撮影シーンでは、結局、カメラ側の性能に
頼る訳には行かない。カメラに責任を被せるのでは無く
あくまで自身の撮影スキルを高めるしか無い訳なのだ。
(参考:高額なハイエンド機を購入した中級層等が、例えば
「この機体はAFの追従性が低い。これは本当にプロ機なのか?」
といった評価を下す事がある。でも、ハイアマチュア層や
職業写真家層ならば、機体を手にすれば、そういう弱点は
すぐ認識できる。だから、そこからは弱点を問題としない
用法を色々と模索する訳であり、機体側の性能に頼りきる
事はしない。また、そうするからこそ上級層である訳だ)
なお、NIKONの高速連写機では、シャッター音がうるさい
という「重欠点」を持つ。(高速連写機とは具体的には
銀塩F5、デジタルではD2H、D300、D500。
それと、私は未所有だがD3~D6も、それにあたる)
これらは「音量」のみならず「音色」も問題点であり、
高調波成分が多い、甲高い耳障りな音色と大音量で、
撮影者にも、その周囲にも大迷惑をかけてしまう。
(参考:「重欠点」とは、ユーザー側の用法では、そう簡単
には回避できない、機体やシステムの持つ課題の事だ)
先年のコロナ禍での、史上初の「緊急事態宣言発出」の
放映映像にも、大音量で耳障りな音色の「NIKON D5」
の高速連写シャッター音が沢山入ってしまっていた。
この歴史的な「映像」においては、全国の多数の
視聴者も同様に「うるさい」と感じたであろう。
同様に各種記者会見(特に海外のもの)でも、NIKON
高速連写機のうるさいシャッター音が、発言が聞き取り
難い程の、大きな音量で入ってしまう。まあつまり、
TV等の視聴者にまで迷惑をかけている状態だ。
(このあたりは、海外等の報道系カメラマンのモラル
にも依存する話だろう)
それと、NIKON機かどうかは不明だが、2000年代~
2010年代、ゴルフの人気選手等が優勝を決める
パットやアプローチの際(打つ前に)、報道系のプロ
カメラマンが高速連写音を轟かせ、集中力を切らした
プレーヤーがミスショットをした事例は多数存在する。
(注:2010年代では、報道系カメラマンのみならず、
ゴルフでの一般ギャラリーがスマホのシャッタ-音を
響かせる問題も、多数起こっている)
まあ、メーカー側でも、ユーザー側でも、シャッター
音量や音色への配慮が無い事は、非常に残念な事実だ。
![_c0032138_18420205.jpg]()
さて、今後、一眼レフがどのように進化するかはわからない。
全社一斉にミラーレス機市場を主力とするように戦略を
転換して、そちらはまだ若干の技術や性能の発展の余地が
残っているから、「真の実用性能」に係わるユーザー側の
疑問点を「うやむや」にしてしまう事も出来るだろうからだ。
まあつまり、(デジタル)一眼レフでは、もう発展の余地
があまり無いが、ミラーレス機では、「前の機種に対して
ここが良くなりました」と、ユーザー層にアピールする
事が、まだできるという事だ。
その為か、2021年、NIKONは国内での一眼レフの生産
を終了する事を発表した。当面はNIKON D6等のデジタル
一眼レフの海外生産および販売は継続されるだろうが、
もう、一眼レフは先細りである事は明白だ。
![_c0032138_18420530.jpg]()
まあでも、本シリーズ「カメラの変遷」では、おそよ
過去50年間の、主要なカメラメーカー全ての製品の歴史を
詳細に解説している。これらを全部読んでいただければ、
各時代・時期において、カメラの歴史には実に様々な事が
起こった事が理解できるだろうし、その見識を深めれば
各時代の状況や流行などに振り回されて、自身にとって
あまり有益では無いカメラを買ってしまう事も防げる
かも知れない。まあ、この50年間の(一眼レフ)カメラ
の歴史の中でも、現代での状況は一眼レフにとっては、
あまり望ましく無い状態である事は確かなのであるが、
「カメラと言えば一眼レフ」という一般的感覚値も確か
だとは思う。その「象徴」を壊してしまわない為にも、
メーカーやユーザーは、現状を良く認識して、新機種の
発売やその購入、または中古での購買行動に繋げれば、
それで良いと思っている。
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さて、今回の記事はこのあたりまでとするが。
これで私が所有する全カメラメーカーの機体は紹介
しつくした、なお、紹介していない他のメーカー製の
カメラも所有していた事はあったが、現有していない
カメラについては実機を紹介できず、それらについては
割愛した。
以上で、本シリーズ「カメラの変遷」を、とりあえず
終了する。後日、他メーカー、あるいは紹介していない
カテゴリーの機体(例:NIKON Zシリーズ、CANON R
シリーズ、SIGMA Foveon系機体、デジタル中判機等)を
複数台所有し、それらの体系的な評価や紹介が可能と
なった頃に補足編記事を書くかも知れないが、あまり
その可能性は高く無い。
続編があるとすれば、本シリーズではメーカー毎に
分類していた話を、時代の順に分類しなおして紹介する
記事群である。こちらは構想中なので、場合により
シリーズ化できるかもしれない。
のカメラを、およそ1970年代から現代2020年代に至る迄の
約50年間の変遷の歴史を世情等と絡めて辿る記事である。

NIKONデジタル機(コンパクト、デジタル一眼レフ)を
中心に紹介するが、残念ながらNIKON製ミラーレス機
(1シリーズ、Zシリーズ)については所有していないので
それらの説明は最小限とする。
本記事では、このデジタル時代からの現有カメラの紹介
写真と、同時代のレンズ等をNIKONデジタル機に装着して
撮影した写真を適宜挿入して進める。
では、早速始めよう。
*NIKON デジタル一眼レフ黎明期 2000年前後
NIKONはCANONと共に、市場に先駆けて、いち早くデジタル
一眼レフの実用化を目指していた。
CANONが試作機的な機種(非常に高価)を1990年代後半に
いくつか発売した事に対し、NIKONではFUJIFILM社との
共同開発の「Eシリーズ」は、あくまで試作機的な
扱いのまま、あまり積極的な市場展開を行っていない。
結局、当初から実用レベルに近い完成度の機体を目指した
のであろう。その最初の機種は「NIKON D1」(1999年、
260万画素、65万円)となった。
以降、2001年に高画素型D1Xと、連写型D1Hが発売、
でもまあ、この時代は実用機と言ってもまだ高価すぎる為、
一般レベルに迄、これらの機種が普及する事は無かった。
2002年には、一般層への普及を目指したD100が発売、
しかし、この機体も30万円と、やや高価だ。

なお、「D2」という機種は存在せず、この連写型D2Hと、
後年(2005年)の高画素機D2Xに、当初から分割されて
いたラインナップだ。
D2Hは、デジタル一眼第1回記事で紹介済み。定価50万円
前後の高価な機体ではあるが、高感度ノイズ等について
市場に悪評判が流れ、非常に大きな値引率で安価に新品
購入する事が出来、この機体が私が購入した最初のNIKON製
デジタル一眼レフとなった。
ノイズ問題については、NIKON独自開発のJFET型センサー
「LBCAST」を採用した事で、当時の一眼レフとしては稀な
高感度(最大ISO6400)を搭載していたのだが、銀塩機
から持ち替えたばかりのユーザー層が、この高感度を
目一杯使って「ノイズが酷い」と酷評した事による。
ただ、今から思い返せば、NIKON機の急速なデジタル化を
良く思わない「対抗勢力」により意図的に流されたデマや
流言の類の物かも知れず、いずれにしても不当な評価だ。
個人的にはD2Hは、20年近くも現役で使用しているが
日中の趣味撮影等においては、ノイズが気になった事は
一度も無い(↓はD2Hによる撮影写真)

暫定後継機D2Hs(未所有)を発売するが、ノイズ酷評は
収まらず、かつ、このD2H系のLBCASTは、400万画素と
解像度が貧弱で、既に市場は「画素数競争」の様相を
示し始めていた為、競争力が無くなってしまっていた。
従って、LBCASTも僅か2機種で採用されただけで終了、
NIKONの自社センサー開発への道に多大な影響を与えて
しまった事となる。(結果、自社センサー開発は中止)
詳しい真相は、もはや闇の中であるが、もしこれらの市場
評価が意図的に流されたデマのようなものであったならば
新技術の発展の芽を摘んでしまった形となって残念な話だ。
そして、デマや流言やフェイクは、それを流す方も問題
であるが、それらの根拠に乏しい噂を単純に信じて拡散
してしまう消費者側にも多大な課題がある。
*NIKON デジタル一眼レフ普及期 2004年~2000年代後半
2004年というのは、私が「デジタル一眼レフ元年」と
定義している年である。CANON、NIKONはもとより、それ
以外でも各社(PENTAX、KONICA MINOLTA、OLYMPUS等)
から、一般層でも入手可能な価格帯(概ねボディ単体で
20万円以下程度)の一眼レフが出揃い、それらが急速に
アマチュア層向けや業務用途としても広まって行く。
この時代の各社の代表的普及機としては、CANON EOS 20D、
PENTAX *istDs、OLYMPUS E-1(4/3機、2003年発売だが
旗艦機級でやや高価)、OLYMPUS E-300(2004年)、
KONICA MINOLTA α-7 DIGITAL等があるのだが、
NIKONでは、D70(2004年)が普及化の立役者となる。
また、やや遅れて上級機D200(2005年)も発売された。

一眼レフ・クラッシックス第4回記事に詳しいが、
簡単に言えば、1/8000秒シャッター搭載や、大量の連続
撮影を可能とする高性能機でありながら、15万円以下の
戦略的な実勢価格で発売された、という点がある。

普及機が同一のスペックであり、各社共通の撮像センサー
部品を採用していると思われる。
まあ、つまり、それまではまだ、デジタル一眼レフは
「黎明期」であったと私は定義しており、性能がまだ
実用レベルに満たない、あるいは高価すぎたものが、
ようやく、この2003年~2005年頃に、実用的かつ
コスパ的に許容できる状態になったという事である。
この為、私もこの時代に各社の普及機群を入手、そして
本ブログも2005年の開設となっている。
なお、とは言え、まだいずれの機体も新品価格は高価
すぎた。これらを買えるのは、業務用途以外の場合は、
銀塩時代からの上級層やマニア層が中心である。
何故ならば、それらの層では銀塩時代の交換レンズを
所有しており、新規の4/3(フォーサーズ)マウント
以外であれば、銀塩時代のレンズがそのままデジタル
一眼レフでも使用できたので、機体を買い換えるだけ
なので新規機材導入コスト(レンズ代)を削減できた訳だ。
私の場合も、各AFマウントのレンズは銀塩時代からの
ものが多数あり、ボディの方は殆どの機体が中古又は
知人からの購入だ。
現代では考えられないが、この時代では、毎年のように
新型機の大きな性能アップや高機能化が進み、ほんの
1年程前の機体が急速に性能的に見劣りしてしまった為、
(→「仕様老朽化寿命」が極めて短い他、安価な新機種が
旧型の高級機の性能を上回る「下克上」が発生する)
当時の中古機購入は、発売後から少しの期間を待つだけで
リーズナブルな相場となったものが多く出て来ていた。
これら、この時代(2004年~2006年頃)の普及機群
に関しては、デジタル一眼第2回~第6回記事に詳しい。
ただ、今から思いおこせば、銀塩からデジタルへの
移行は、少々スムースすぎたかも知れない。
前述の、銀塩時代の交換レンズがそのまま使えた事で、
殆どのユーザーは、デジタル一眼レフを、ただ単に
「フィルムがいらなくなった便利なカメラ」位の感覚で
しか捕らえておらず、銀塩からデジタルへ大きく原理が
変わった事を見落としていた。この為、この時代では
一般ユーザー層において、様々なデジタルに関する誤解
が非常に多く蔓延した。
むしろ、交換レンズの件等も含め、カメラのデジタル化の
敷居がもっと高ければ、ユーザー層も「まったく新しい
カメラである」と気合を入れて、これらについて勉強や
新撮影技法の習得を進める事が出来ていたのかも知れない。
(つまり、大半のユーザーの意識は、銀塩時代からの古い
ままだった、という事である)

言えたデジタル一眼レフも、ようやくエントリー層に
まで普及していく。まあ勿論、低価格化が進んだ事も
理由であるが、こうなるとメーカー側でも販売カメラの
ラインナップを段階的に差別化していかなくてはならない。
すなわち、2000年代前半では各社とも、デジタル一眼レフ
を開発し発売するだけで必死であり、上級機や普及機等の
複数の製品ラインナップを組む事が困難であったのだ。
まあ、その中でもNIKONとCANONに関しては、初期の段階
から旗艦機が存在し、その下に中上級機を用意していた。
これについては、デジタル化で使った多額の研究開発費
を、まず旗艦機に乗せて高価で販売、さらに下位機種で
開発費の償却(回収)を進めていたのであろう。
その後、初期デジタル化開発が一段落した頃になると、
この「ラインナップの差別化」の為に、下位機種では
元々持っている内部部品(例:画像処理エンジン)の性能
を制限するようになっていた。すなわち価格帯の異なる
機種毎に個別に開発をしていたら費用がかかり過ぎる為
下位機種では、本来持っている性能をわざと制限して
段階的ラインナップを組まざるを得ない訳である。
ところが、この事が、一般ユーザー層から見れば、
「値段が高価な機種は、画素数も大きく、連写性能も高い
から、性能が優れているのだ」と、上位機種に対して
過剰なまでの期待や憧れを持つようになっていく。
だから、こうしたユーザーニーズは、例えばメーカー側の
「画素数競争」や「大型センサー化競争」に拍車をかけ、
そうした「数値スペック」だけを市場全体が重んじる
ようになり、だんだんと実用上では不要なまでの性能を
カメラに持たせるようになって行く・・
さて、2000年代後半におけるNIKONの代表的な機種と
言えば、初のフルサイズ(FX)旗艦機D3(2007年)と、
フルサイズ上級機、D700(2008年)、そして、
DX(APS-C)の上級機、D300(2007年)、中級機の
D90(2008年)をあげておく。

前述した「過剰なスペック競争」は、私個人的には、
「それに追従したら、コスパの悪いカメラを買わされる」
と非常に警戒し、この時代のフルサイズ機を、あえて
無視していた。よって、狙い目とする機種は、上記の
D300しかなく、かつ、それも、旧来から使用している
D2HとD70が、十分に長期間使えるだけの「仕様老朽化
寿命」の長さを持っていた為、D300の購入は、発売後
少し年月が過ぎた2010年代前半になってからであり、
ずいぶんと安価な中古相場で購入が出来た。

見て、私は「デジタルカメラは消耗品だ」という思いを
より強くした。この頃から私は新機種を追いかける事を
一切しなくなり、発売後数年が過ぎて中古相場が下がった
一眼レフを順次購入する「ローテーション購買戦略」を
意図するようになる。2000年代後半以降の機種であれば、
既に実用性能的な不満は殆ど無く、それ以上の部分は
前述の「過剰なスペック競争」で、「不要な性能である」
という意識も強くなっていたからだ。
*NIKONデジタル・コンパクトカメラ 2000年代~2010年代
NIKONでは「COOLPIX」というブランド名で、
他社と同様に1990年代後半よりコンパクト・デジタル
機を発売している。
しかしながら、前記事(NIKON編前編)でも書いたが、
NIKONの市場戦略上、コンパクト機や低価格機には
あまり力を入れる事は出来ない。それらを安価に
売って、ユーザーが「NIKONを買った」と満足して
しまったら、より高付加価値な(=利益の大きい)
高級(デジタル)一眼レフを売る販売機会を損失して
しまう可能性があるからだ。
とは言え、2000年代位からは、NIKONコンパクト機も
そこそこ実用性の高い機種は多数発売されていたと思う。
まあでも、やはりマニアックさは欠片も無い。すなわち
特徴的な性能や機能などの個性が全く無い機種が大半だ。
よって、殆どの機種を、私はずっと無視しつづけた。
かろうじて所有しているNIKONコンパクト・デジタル機
は、僅かに2機種だけであるし、それらも正直言えば
好きなカメラでは無い。

コンパクト・デジタル・クラッシックス第3回記事で
紹介済みだ。だが殆ど個性が無く、長所はデザイン的な
良さだけであろうか。

NIKONでは、恐らく2機種しか存在しないと思われる
「プロジェクター内蔵」の特殊カメラだ。

作成したパワーポイント資料等もJPEG化して保存して、
SDカードにコピーすれば、簡易的なプレゼンも可能に
なるのだが、解像度や光量が貧弱な為、数人程度の
小さい集まりの「場」でしか使用できない。
勿論「デジカメ」ではあるが、およそカメラらしく無い
異常とも言える、独特の非常に使い難い操作系を持つ為、
この機体は殆どカメラとしては使用しておらず、
プロジェクター用途専用で使っていたが、上記解像度と
光量の課題が大きく、自然と使わなくなっていった。
他のコンパクト機だが、勿論多数あるものの、マニア的
に魅力を感じる機体は少ない。2000年代のコンパクト機
製造では、有力な大手OEMメーカーも存在していた為、
各社から多数のOEM機が発売されていたが、「カメラの
ロゴ(メーカー名)が異なるだけで中身は同じカメラだ」
という印象も強かった。
*NIKON デジタル一眼レフ フルサイズ化期 2010年代前半
ミラーレス機の新発売(2008年~)やスマホの台頭に
より、(デジタル)一眼レフ市場の縮退が始まる。
(↓は、初のミラーレス機Panasonic DMC-G1,2008年)

あれば、実用撮影的にはもう十分なレベルであり、
例えば、1600万画素機が2000万画素になったから、と
言って、それだけでカメラを買い換える理由にはならない。
中上級ユーザーであれば、もう「(2000年代の)画素数
競争に踊らされていただけ」と言う事には気づいている。
初級層においては、選択肢として、一眼レフ、ミラーレス
の二択であれば、軽量な方を選ぶ事も多いであろう。
ただ、エントリー(入門)層であるとか、あるいは一部の
初級中級層では、2000年代より引き続き(デジタル)機
を数値スペックだけで良否を語るような(残念な)状況は
ずっと続いている。まあ、消費者側から表面的に見える
「数字」は、それらだけしか無いので、画素数の話がもう
無意味になったと理解すれば、今度は連写性能とか、
最高ISO感度の話を言い出す訳だ。
まあ、消費者層側では、発売されたカメラ等について、
スペック等を、あれこれ語っていれば良いだけなのだが、
メーカーや市場側はそうはいかない。このまま一眼レフ
や交換レンズが売れなくなってしまったら、カメラ事業
そのものへの影響が強すぎる。何の為に手間暇や資金を
かけて銀塩からデジタルへの転換を果たしたのか、その
意味が無くなってしまうだろうし、流通や市場もまた
デジタル化への移行や推進をする為に、この10年間、
あれこれと努力をしてきたのも無駄になってしまう。
で、初期(2010年前後)のミラーレス機は、μ4/3型や
APS-C型の小型センサー機ばかりであったので、一眼レフ
陣営は「フルサイズ化」への対応を行った。
つまり、「フルサイズ機であれば良く写る」という
概念を、これまでの「画素数が多ければ良く写る」
というものに替って、消費者層に新たに植えつけよう
とした訳だ。物事の本質が良くわかっていないビギナー
層等であれば、こうした話には簡単に乗って来る。
で、そうすれば、その「付加価値」によりカメラの価格を
上げられる。つまり縮退した販売台数を、売り上げ金額や
利益でカバー出来る訳だ。
2012年は「フルサイズ元年」とも言える程、
各社からフルサイズ・デジタル一眼レフが出揃った。
NIKONでも、D4、D800、D800E、D600が発売され、
翌2013年でも、Df(下写真)、D610と続く。

20万円程度で買える機体もあり、実用派の中級層や
金満家のビギナー層であれば手が出せない金額では無い。
しかし、これまでのAPS-C型等の一眼レフやミラーレス
機が10万円以下、あるいは、それらの中古であれば、
2~5万円程度で買える状況からすれば、高価である
事には変わりが無い。
それに、フルサイズ機をビギナー層等が無理をして購入を
検討しようとして、彼らが気にする「カタログスペック」
を見れば、やはり低価格のフルサイズ機は、それが弱く、
上位の機種になればなるほど「数値的な性能」が高いと
感じてしまう。まあ、それもその筈、前述したように
ラインナップ下位機種ほど性能を「差別化」して低めて
いるから当然である。
なので、ビギナー層は「少しでも上位の機種が欲しい」
となってしまう。
ここで「何故、高性能の機体が欲しいのか?」と言えば、
ビギナー層は自身の写真撮影スキル(技能、経験、知識等)
に自信が持てないからだ。だって、絞りやシャッター速度
がどうのこうの、と言われてもさっぱり理解が出来ない
状況だしピンボケや手ブレを必要以上に恐れてしまっても、
それはもう、やむを得ない事であろう。
写真の基本原理はさほど難しくは無いが、知れば知るほど
奥が深く、一部は上級者層や専門家層でも理解が困難な
要素も多々ある。だから「ちゃんと勉強しよう」と思う
勤勉な利用者であったとしても、その奥の深さに「眩暈を
覚える」程となって、必ずどこかの段階で挫折してしまう
事であろう。ましてや「シャッターを押せば写真は写る」
と思っている楽観的な初級層であれば、なおさらであり、
最低限の露出原理すら勉強せずに、ただただ「AFが速くて
良くピントが合い、手ブレ補正機能があって、連写が速く、
画素数が多くてフルサイズであれば、きっと良い写真が
撮れるに違い無い」と、単純に思い込んでしまう訳だ。
まあ、そう思う事自体が「ビギナー」の証拠であるのだが、
そこはもう本記事では深堀りはするまい、ともかく高性能
の機体を初級中級層が欲しがる事は確かである。
また、この時代は、人口構成比率の大きい「団塊の世代」
の定年期であり、彼らが定年後の余暇の為、若い頃に
憧れた(高価すぎて買えなかった)NIKON製の新鋭高級
カメラを欲しがる要因ともなっている。
でもまあ、そういう消費者層が、高価な(高価すぎる)
新鋭機を買ってくれる事で、なんとかこの時代の一眼レフ
市場は崩壊を免れた。そういう点では、上級層やマニア層
であれば、自身の撮影目的等に合わせて、安価な機体から
高性能な機体まで、新品も中古も含めて選択肢が増加した
事は嬉しい、コスパ等をよく吟味して、好きな機体を
買えば、それはそれで良いからだ。

ながら、販売数縮退の影響を強く受けている。
よって、レンズメーカー等でも、この時代から高付加価値
戦略を開始、結果的に交換レンズの価格も高価になって
しまった。まあ高性能になれば、高価格化もやむを得ない
面もあるが、値段が上がっただけの性能増強があるとも
言い切れず、結果的に「コスパ」が悪化している事は
否めない。
一応、カメラメーカーでは、この課題(レンズが高価すぎて
ビギナー層が買えない)を鑑みて、「エントリーレンズ」
という戦略を開始した(匠の写真用語辞典第9回記事参照)
まあ「お試し版」の高性能単焦点レンズ等を安価に販売し、
それを気に入ってくれたユーザー層において、次の段階で、
さらに高価な自社製高級レンズを買ってもらったり、
他社機(ミラーレス機等)への乗り換えを防ぐ、という
一種の「囲い込み戦略」である。
ただ、この市場戦略はあまり効果が無かったかも知れない、
2010年代前半より後では、各社ともエントリーレンズ
の発売は少なくなっている。(しかし、エントリーレンズ
は全般に極めてコスパが良く、「見かけたら全て買い」と
いう手段を取っても悪く無い)
まあ、2010年代前半より、カメラ・レンズ市場の縮退
が顕著となり、悠長な「エントリーレンズ戦略」を取る
余裕が無く、もっと直接的に高額(レンズ)商品で利益を
稼がざるを得なくなった事もあるだろう。
*NIKON デジタル一眼レフ エントリー機 2010年代前半
この時代、「フルサイズ化戦略を行った」と前述したが
そうした高額商品が直接、入門層や初級層に簡単に売れる
訳でもない。
そこでNIKONは、「エントリーレンズ」戦略とともに、
「エントリー機」の販売戦略を行う。
具体的には、D3000/D5000シリーズであり、
これらは低価格の入門機だ。しかも、毎年のように
新製品が発売され、消費者層の目を引く。
(下写真は、D5300、2013年発売)

したユーザー層が、次に高価な(フルサイズ等)の一眼
レフを買ってもらう為の「呼び水」となっている。
ただし、これらのエントリー機は、意図的に非常に性能を
低められているので、これらの機体だけで実用撮影を
行うのは厳しい。ここでの「仕様的差別化」は、すなわち
NIKONの高額機種の購入に誘導する為のものだ。
でも、その仕掛けがわかっているならば、小型軽量の
サブ機として利用すれば良い訳であり、利用形態次第だ。
また、こういう戦略をとっても、消費者層の一眼レフ
離れは止まらず、結局NIKONは2010年代後半から、
低価格(エントリー)機戦略を止め、高付加価値型
(=高価な)一眼レフの販売のみに注力する事となる。
*NIKON ミラーレス機 2010年代~
何度も前述したように、NIKONは「高付加価値型」の
メーカーであるから、安価な価格帯のカメラを販売する
事については消極的だ。
ただ、初期ミラーレス機の市場における勢いが止まらず、
そのまま、それを無視し続ける事は出来そうにない。
そこでNIKONでも、2011年より「NIKON 1」シリーズで
ミラーレス機市場への参入を開始した。
しかしながら、1型というセンサーサイズは、一眼レフ
との差別化要因が甚だしく感じ、残念ながらマニア層が
魅力を感じる要素は無い。
このシリーズは、2015年のNIKON 1 J5を持って短期間
で終了してしまい、NIKONのWEBでも「旧製品」という
扱いとなっている。
私もまた興味を持てなかった為、1台も所有していない。
ミラーレス機市場における戦略転換点としては、2013年
に、SONYから初のフルサイズ・ミラーレス機である
α7/R(下写真はα7)が発売された事であろう。

という新たな概念をユーザー層に植え付ける事は成功し、
このα7/9系シリーズはヒット商品となる。
これはミラーレス機市場全体、そしてフルサイズ化した
一眼レフ市場に対してもインパクトの大きい出来事であり、
1985年の、ミノルタによる実用的AF一眼レフの新発売の
「αショック」になぞらえて、「第二次αショック」とも
呼べる出来事であったかも知れない。
そして、NIKONにおいても、2018年からは、フルサイズ・
ミラーレス機である「NIKON Z6/Z7」を新たに展開。
いつまでもミラーレス機市場で後塵を拝する訳には行かない。
これらは「高付加価値型」商品であるから勿論高価である。
現状では、Zシリーズは、まだ発売後時間が経っておらず、
高額であるし、今後の機種展開や交換レンズ展開も読めない。
個人的には購入保留という感じであり、所有してもいない
カメラの事をあれこれと語るのは本意では無いので、その
詳細については割愛する。
*NIKON デジタル一眼レフ 高付加価値化期 2010年代後半
2010年代前半において、NIKONを始め、他社においても
一眼レフのフルサイズ化は、ほぼ一段落した。個人的に
嬉しい事は、一眼レフAPS-C機、μ4/3等ミラーレス機、
APS-C専用交換レンズ等が不人気となり、それらの中古相場
の下落が大きい事であり、入手性が高まって来ていた。
ただ、皆がそういう「えげつない買い方」をしていたら、
それこそカメラ市場が維持できない。申し訳ないが、
ビギナー層にはせっせと高価な新鋭機を買っていただき
市場を潤してもらうとしよう。
(参考:少し前述したが、「団塊の世代」が、定年を迎える
時代であり、彼らが若い頃に憧れた「NIKONの一眼レフ」は、
この時代においては、ビギナーのシニア層をターゲットと
している様相が強く見られる)
しかし、フルサイズ機にかぎらず、APS-C機やミラーレス機
のカメラ全体として、こうした縮退市場の中でも、ユーザー
に新製品を欲しいと思っていただき、買ってもらう為には、
さらに、製品に魅力(付加価値)を付けていかなくては
ならない。
その為、この時代のカメラには、どれも「超絶性能」(匠の
写真用語辞典第1回記事参照)が、与えられるようになった。
これを簡単に言えば、超高感度であるとか超絶的なAF性能、
高速連写性能、などである。
代表的な超絶機体は、NIKONの各商品ランク毎に多数存在し、
旗艦機で言えば、NIKON D5(2016年)、D6(2020年)
以下、高級機のD850(2017年)、上級機D500(2016年、
下写真)や、中上級機D7500(2017年)等がある。
(参考:本記事掲載時点では、NIKONは、もう低価格帯
一眼レフの販売を中止していて、ほぼ、ここに挙げた
高額な超絶性能機しか、ラインナップされていない)

もはや(趣味的な)写真を撮る、という行為においては、
完全にオーバースペックである。確かに業務用途であれば
悪条件の撮影においても、少しでも歩留まり(成功確率)
を高める為に、超絶性能はありがたい。しかしながら
それでもユーザー側から見てコスパが悪すぎる事は否めない。
まあつまり、メーカー側が事業を維持する為に高く売りたい
商品群である訳だから、当然の事なのだが、「買い物」の
感覚からは、これでは「売り手の勝ち」の状態である。
買い物は「消費者の勝ち」を目指す事は基本中の基本だ。
所有してもいない機体の文句を言うのは本意では無い、と
常に思っているが、そういう意味もあって「D500」を
購入したとも言える。本当に超絶性能機が実用的なのか
どうか? そしてそのコスパは妥当か否か? それらを
実機で実感してみたかった要素もあったからである。

多々出てくる(デジタル一眼第20回記事参照)
そして、もう1つ私が気がついた点は、高価な機種で
あればある程、評価基準が厳しくなって行くという事実だ。
つまり高価な機体では、何一つ実用上での欠点はあって
欲しく無い。もしそれがあると「高いカメラのくせに、
こんな簡単な課題も治っていないのか、酷い怠慢だ!」と
いう風に解釈できてしまうからだ。
まあ結局、上級層やマニア層であれば、これらの新鋭の
高付加価値型カメラは、あまり購入してはいないだろう。
何故ならば、旧型機でも撮影に必要な性能に不足は無いから、
それらで十分な訳だ。仮に多少何か物足りない点があったと
しても、経験や技能で、それらの旧型機の欠点を回避して
使うだけのスキルも持っている。
逆にいえば、ビギナー層が超絶性能機を買ったとしても、
その欠点や課題を見出す事は難しい。そこまで色々なカメラ
を使用してきた経験値や感覚値を持っていないからだ。
だから結局「D500の連写性能は凄い!」とかいった単純な
評価しか行わない事となる、まあ趣味撮影においては、
その事で、所有満足感が得られれば、別にそれでも良い。

その超絶的なAFや連写性能を期待し、難しい条件の撮影を
こなそうとしていたのが、結局、高速連写中にAFが追従
できずにピンボケとなったり、AEが非追従な結果、酷い
露出オーバーや露出アンダーになったりしたら、がっかり
としてしまうだけのみならず、撮るべき写真が撮れずに、
責任問題にも発展してしまう(汗)
だから、重要な撮影シーンでは、結局、カメラ側の性能に
頼る訳には行かない。カメラに責任を被せるのでは無く
あくまで自身の撮影スキルを高めるしか無い訳なのだ。
(参考:高額なハイエンド機を購入した中級層等が、例えば
「この機体はAFの追従性が低い。これは本当にプロ機なのか?」
といった評価を下す事がある。でも、ハイアマチュア層や
職業写真家層ならば、機体を手にすれば、そういう弱点は
すぐ認識できる。だから、そこからは弱点を問題としない
用法を色々と模索する訳であり、機体側の性能に頼りきる
事はしない。また、そうするからこそ上級層である訳だ)
なお、NIKONの高速連写機では、シャッター音がうるさい
という「重欠点」を持つ。(高速連写機とは具体的には
銀塩F5、デジタルではD2H、D300、D500。
それと、私は未所有だがD3~D6も、それにあたる)
これらは「音量」のみならず「音色」も問題点であり、
高調波成分が多い、甲高い耳障りな音色と大音量で、
撮影者にも、その周囲にも大迷惑をかけてしまう。
(参考:「重欠点」とは、ユーザー側の用法では、そう簡単
には回避できない、機体やシステムの持つ課題の事だ)
先年のコロナ禍での、史上初の「緊急事態宣言発出」の
放映映像にも、大音量で耳障りな音色の「NIKON D5」
の高速連写シャッター音が沢山入ってしまっていた。
この歴史的な「映像」においては、全国の多数の
視聴者も同様に「うるさい」と感じたであろう。
同様に各種記者会見(特に海外のもの)でも、NIKON
高速連写機のうるさいシャッター音が、発言が聞き取り
難い程の、大きな音量で入ってしまう。まあつまり、
TV等の視聴者にまで迷惑をかけている状態だ。
(このあたりは、海外等の報道系カメラマンのモラル
にも依存する話だろう)
それと、NIKON機かどうかは不明だが、2000年代~
2010年代、ゴルフの人気選手等が優勝を決める
パットやアプローチの際(打つ前に)、報道系のプロ
カメラマンが高速連写音を轟かせ、集中力を切らした
プレーヤーがミスショットをした事例は多数存在する。
(注:2010年代では、報道系カメラマンのみならず、
ゴルフでの一般ギャラリーがスマホのシャッタ-音を
響かせる問題も、多数起こっている)
まあ、メーカー側でも、ユーザー側でも、シャッター
音量や音色への配慮が無い事は、非常に残念な事実だ。

全社一斉にミラーレス機市場を主力とするように戦略を
転換して、そちらはまだ若干の技術や性能の発展の余地が
残っているから、「真の実用性能」に係わるユーザー側の
疑問点を「うやむや」にしてしまう事も出来るだろうからだ。
まあつまり、(デジタル)一眼レフでは、もう発展の余地
があまり無いが、ミラーレス機では、「前の機種に対して
ここが良くなりました」と、ユーザー層にアピールする
事が、まだできるという事だ。
その為か、2021年、NIKONは国内での一眼レフの生産
を終了する事を発表した。当面はNIKON D6等のデジタル
一眼レフの海外生産および販売は継続されるだろうが、
もう、一眼レフは先細りである事は明白だ。

過去50年間の、主要なカメラメーカー全ての製品の歴史を
詳細に解説している。これらを全部読んでいただければ、
各時代・時期において、カメラの歴史には実に様々な事が
起こった事が理解できるだろうし、その見識を深めれば
各時代の状況や流行などに振り回されて、自身にとって
あまり有益では無いカメラを買ってしまう事も防げる
かも知れない。まあ、この50年間の(一眼レフ)カメラ
の歴史の中でも、現代での状況は一眼レフにとっては、
あまり望ましく無い状態である事は確かなのであるが、
「カメラと言えば一眼レフ」という一般的感覚値も確か
だとは思う。その「象徴」を壊してしまわない為にも、
メーカーやユーザーは、現状を良く認識して、新機種の
発売やその購入、または中古での購買行動に繋げれば、
それで良いと思っている。
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さて、今回の記事はこのあたりまでとするが。
これで私が所有する全カメラメーカーの機体は紹介
しつくした、なお、紹介していない他のメーカー製の
カメラも所有していた事はあったが、現有していない
カメラについては実機を紹介できず、それらについては
割愛した。
以上で、本シリーズ「カメラの変遷」を、とりあえず
終了する。後日、他メーカー、あるいは紹介していない
カテゴリーの機体(例:NIKON Zシリーズ、CANON R
シリーズ、SIGMA Foveon系機体、デジタル中判機等)を
複数台所有し、それらの体系的な評価や紹介が可能と
なった頃に補足編記事を書くかも知れないが、あまり
その可能性は高く無い。
続編があるとすれば、本シリーズではメーカー毎に
分類していた話を、時代の順に分類しなおして紹介する
記事群である。こちらは構想中なので、場合により
シリーズ化できるかもしれない。