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レンズ・マニアックス(51)

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過去の本ブログのレンズ関連記事では未紹介のマニアック
なレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は、未紹介レンズ2本、および紹介済みレンズ2本の
比較を行う。

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まず、今回最初の(未紹介)レンズ
_c0032138_06483099.jpg
レンズは、TOKINA AT-X M100 PRO D (100mm/f2.8)
(中古購入価格 20,000円)(以下、AT-X M100)
カメラは、NIKON Df(フルサイズ機)

2005年に発売された、フルサイズ対応AF中望遠
等倍(1対1)マクロレンズ。
_c0032138_06483018.jpg
本シリーズ記事では、本レンズ以前にTOKINA製の
中望遠マクロを2本入手し、それぞれ紹介している、
まず、TOKINA中望遠マクロの概要を述べておこう。

1)TOKINA AT-X M90 (MACRO) 90mm/f2.5
(ジャンク購入価格 2,000円)

レンズ・マニアックス第37回記事参照。
1980年代前半頃の、MF中望遠1/2倍マクロ。
米Vivitar社に供給していた同型マクロを、自社
ブランドで国内発売したもの、との情報がある。

同時代のライバルTAMRON 90/2.5 (52B型)マクロと
類似のスペックであり、描写傾向も似ているが、
TAMRON版より優れる部分もある、隠れた名マクロだ。

惜しむらくは、ジャンク品で故障品であった事だ。
(無限遠撮影が不能)
しかし、(これまで購入していなかった)TOKINA製
中望遠マクロの高性能を、このレンズで知る事となる。

2)TOKINA AF 100mm/f3.5 MACRO
(中古購入価格 3,000円)

レンズ・マニアックス第40回記事参照。
恐らくは1990年代と思われる、小型軽量AF中望遠
1/2倍マクロレンズ。
コストダウン仕様のレンズであり、プラスチッキーで
安っぽい。(しかし、軽量化には寄与していると思う)

同時代または少し前のCOSINA版MC MACRO100/3.5
(注:MF版)(特殊レンズ第20回平面マクロ編参照)
と同様の作り、同様の描写傾向であり、恐らくは
同一の光学系設計(のAF版)だと思われる。 

この時代は、COSINAとTOKINAは近しい関係にあった
と推察され、これ以外にも多数の、同一光学系設計と
思われるレンズの組み合わせが両社製品に存在する。

まあ、レンズサードパーティ間で共同開発を行い、
お互いの開発費や製造に係わる費用を削減する方法論
であろう。しかし1990年代末からは、COSINA社は
フォクトレンダーやカール・ツァイスのブランドを
取得して、高付加価値化戦略を目指した。
TOKINAは、その後KENKO社に吸収合併されている。

典型的な「平面マクロ」の特性を持ち、画面中央の
ピント面はとてもシャープだが、ボケ質が良く無い。
(少ないレンズ枚数で球面収差や歪曲収差等の補正を
優先するならば、必然的に像面湾曲収差や非点収差は
増大してしまう、これらは「トレードオフの関係」だ)
で、周辺収差はAPS-C機やμ4/3機を母艦とする事で
解消できるが、ボケ質の固さやボケ質破綻を制御する
のは難しく、被写体を著しく選ぶ特性のマクロだ。
だがまあ、個人的には近年では、「平面マクロ特性」
は、さほど嫌いでは無い。

3)TOKINA AT-X M100 PRO D(本レンズ)
2000年代のAF中望遠等倍マクロ。

4)TOKINA FiRIN 100mm F2.8 FE MACRO(未所有)
2010年代のAF中望遠等倍マクロ。
レンズ構成や仕様は、上記AT-X M100と同一の為、
ラインナップ整理(構成)上でのマイナーチェンジ版
だと思われるので、購入していない。
(つまり、FiRINや、operaといったネーミング戦略
による高付加価値化戦略であるから、好みでは無い。
名前が変わっただけで値上げするのか!?という理由だ)

・・・という事で、TOKINA製中望遠マクロは個性的な
ものが多い事がわかり、1)を入手後、それに続く時代
の製品を集中的に入手した次第である。
_c0032138_06483081.jpg
本AT-X M100の長所であるが、高い描写力が挙げられる。
ただまあ、TAMRON 90マクロと同等、というレベルで
あると思うので、そちらであれば、旧型であれば
本レンズの入手価格約2万円よりも安価な中古相場で
入手する事ができる。

まあつまり、悪いレンズでは無いが入手価格によっては
コスパが良いとは単純には言えない状況だ。

弱点だが、AFが速度・精度ともにNGである。
ただし、幸いにして本レンズは、距離指標有りの有限
回転式ピントリングと絞り環を備えている。
で、あれば、わざわざ本レンズを(ニコンマウントとは
言え)NIKONデジタル一眼レフで使う必然性は無い。

ニコンF(Ai)マウントの高い汎用性を活かし、ミラーレス
機等の、MFアシスト機能(ピーキング等)の豊富な機体で
MFで使えば、何ら問題は無い訳だ。
どうせマクロレンズだ、合わないAFにイライラして使う
のでは無く、MFを主体とするのが基本であろう。

なお、この理由の為、マクロレンズに超音波モーターを
搭載して高付加価値化(=つまり、値上げ)をする
メーカー戦略には全く賛同できず、個人的には数十本もの
マクロレンズを所有していながら、超音波モーター入りの
マクロレンズを、殆ど購入していない。

すなわち「どうせピントが合わず、MFでしか使わないから
超音波モーター入りの高価なマクロは買わない」、という
個人的な方針だ。これはユーザー側ができる、ただ1つの
抵抗であり「不条理な製品や気に入らない製品は買わない」
という意味である。モノが売れなければ、メーカー側も
その企画方針を、いずれ是正しなければならなくなる。
(つまり、マクロレンズにおいては不要な超音波モーター
や手ブレ補正機能を廃して、その分、安価かつ描写性能を
上げてもらいたい、それが正しい企画方針であろう。
世の中でレンズが売れなくなったからと言って、余計な
機能を入れて実質値上げをするのは、いかがなものか?
超音波モーターや手ブレ補正無しで高描写力を目指した
企画設計であれば、多少高くても製品の魅力には成り得る)
_c0032138_06483014.jpg
余談が長くなったが、本AT-X M100は悪くは無い。
ただまあ、TAMRON SP90/2.8やSP60/2 あるいは
SIGMA 105/2.8等のライバルマクロに比べて、さほど
大きなアドバンテージは無いし、逆に、大きな性能差も
無い。(=ライバルに劣るという要素も少ない)
なので、あくまで、ユーザー毎の好みとか、中古品との
遭遇とか、中古相場とか、使用マウントやセンサーサイズ
の差とか、そういう視点で選べば良いであろう。

他社レンズとの細かい差が気になるならば、極論すれば
買えるものは全て買ってしまい、納得がいくまで自身で
比べて試してみれば良いであろう。例えばビギナー層に
人気の不条理なまでに高価な(高価すぎる)新鋭レンズを
1本新品で買う予算(数十万円)があれば、世の中にある
高性能中望遠マクロ等(相場2万円程度)は、かたっぱし
から中古で買っても、十分にお釣りが来る。

なお、これは極論とも言い切れず、そうやって比較スキル
を自身で身につけていなかないと、いつまでたっても
「他人が良いと言ったレンズ」しか買えなくなってしまう。

初級マニア層のレンズ評価レビュー等でも、「有名な誰それ
が、良いと言った」とか「ネットでの評判も悪く無い」等の
他人の評価に頼った記事を書いてある場合が多い。
マニアであれば、必ず自身の視点で評価しなければならない、
それは大原則であろう。

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では、次の(未紹介)レンズ
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レンズは、MINOLTA AF 100-200mm/f4.5
(ジャンク購入価格 500円)(以下、AF100-200)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)

詳細不明、恐らくは1980年代後半頃のAF望遠ズーム、
開放F値固定型である。
_c0032138_06484322.jpg
本シリーズ第17回記事で紹介したCANON製望遠ズーム
EF100-200mm/f4.5A (1988年)と同じスペック
であり、時代的にも近い製品だと思われる。

1980年代後半は、各社とも銀塩一眼レフのAF化が強く
推進された時代であり、交換レンズもまた、それまでの
単焦点MFレンズが主体であった時代から、新たにAFズーム
レンズを売る事で、カメラ事業の拡大(沢山売り、沢山
儲ける)を狙うのが当時の各社の市場戦略であった。

でもまあ、ただでさえ交換レンズを売るのは難しい中、
(=ビギナーユーザーは当時も今も交換レンズを買わない、
その理由は、①高いから ②何を買って良いかわからない
から、であり、メーカーや流通からしたら大問題であろう)
・・そうした状況で、高性能で高価格なズームレンズを
作っても、なかなか売れ難い。

そこで、スペックをあえて控え目とした(コストダウン
した)低価格帯AFズームを各社ラインナップしたので
あろう。低価格レンズであれば、ビギナー層でも例えば
「望遠が欲しい」となれば、買ってくれるかも知れない。

スペックだが、本レンズ(やCANON版)では、ズーム比
(望遠端焦点距離÷広角端焦点距離、の事。
一般的に言う「ズーム倍率」は定義が曖昧な為、非推奨)
は、僅かに2であり、開放F値もF4.5と暗い。

だから、他のズームよりもカタログスペックが弱いので
そもそも「廉価版」という位置づけとなる。
ただまあ、それは「当時であれば、そう見える」という
だけの話である。

現実的には、この直前の時代のMFの100-300mm級
望遠ズームでは、望遠域での解像感が低下して(望遠域が)
使い物にならないものが殆どだ。AF時代に入ったからと
言って、ほんの数年間で、300mm端望遠ズームの性能が
劇的に向上する訳では無い。
そう考えると、使えない300mmを搭載しているよりも
望遠端200mmで留めている、これらの廉価版ズームは
スペック的な「割り切り」としては、悪くは無い。
_c0032138_06484426.jpg
それから開放F値の暗さだが、この時代の望遠ズームは
諸収差が大きく、常にF5.6~F8程度に絞って使わない
と画質低下が甚だしい。だから、多少、開放F値の
カタログスペックを欲張って、F4やF3.5にしたところで、
どうせ甘い描写で使えない絞り値だし、その結果、レンズ
全体が大型化したり重量級となり高価格化してしまう。
(いわゆる「三重苦」レンズに成り下がってしまう)

さらには、F4.5等で、開放F値固定という仕様は、実用上
においては大きなメリットがある。つまりズーミングに
よる絞り値の変動が無く、シャッター速度一定による動感
表現の維持、被写界深度のリニアな変化の類推、手ブレ限界
のリニア(焦点距離に比例する)な類推、等である。

これらは上級の概念ではあるが、ともかく開放F値固定型
ズームの利点は、同、変動型ズームとは比較にならない。

でも、実は、これらの点は現代での視点での利点である。
逆に銀塩時代では、低感度フィルム、手ブレ補正機能無し、
望遠手持ち撮影の経験不足(スキル不足)等、の複合的な
理由で、こうしたレンズはビギナー層が使うと間違いなく
手ブレや低画質化は免れない。
安価な廉価版ズームなのに、ビギナーでは使いこなせない
訳だ、これは大きな矛盾であるが、当時ではやむを得ない。

そして、前述のように、現代のデジタル時代では、
本レンズAF100-200/4.5やCANON EF100-200/4.5は
むしろ使い易い仕様・性能となる。
APS-C機で画角を稼げば300mm相当のまともな望遠ズーム
であるし、同時に周辺収差を低減できる。
また、内蔵手ブレ補正機能、高感度等の利用が任意で
あれば、実用上何ら問題の無いレンズとなり、おまけに、
これらのレンズは古くて不人気であるから、ジャンク価格で
あれば500円程度で十分購入できる。
_c0032138_06484454.jpg
総括だが、本AF100-200は、描写力的には、現代の水準
では不満が大きいだろう。だが、使えないというレベル
では無いし、当時の望遠ズームの水準からは悪く無い。

いずれにしても、こうしたレンズは、毎回説明しているが
「ワンコイン・レッスン」での練習・研究目的のものだ、
500円を投資する事で、様々な事がわかり、かつレンズの
弱点を回避する為の技能や技法の向上にも繋がる。

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では、次のレンズは、紹介済みであるが、続くレンズ
との比較用だ。
以降の2つのレンズは、設計(レンズ構成)が、かなり
類似している。
_c0032138_06484946.jpg
レンズは、Carl Zeiss Planar T* 85mm/f1.4 ZF(コシナ版)
(新品購入価格 101,000円)(以下、ZF85/1.4)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

本レンズは、2006年にコシナより発売された、異マウント
でのリバイバル版であり、オリジナルのRTS版P85/1.4は、
Y/C(RTS)マウントで、ヤシカより、CONTAX RTSと
同時期の1975年に発売されたものだ。


5群6枚、いわゆるプラナー構成であり、元祖のレンズ
(CONTAX Planar T* 85mm/f1.4  以下RTS版と呼ぶ)
においては、高描写力により「神格化」される程の人気を
誇った。しかし、販売数に対して、中古市場に売却される
ケースも極めて多く、1990年代の中古カメラブームの
際には、RTS版Planar 85/1.4が中古市場に溢れかえった。
_c0032138_06484975.jpg
何故、名レンズと呼ばれながらも手放してしまうのか?
には明確な理由があり、それはRTS版Planar 85/1.4
の持つ、いくつかの弱点に起因している。
それは以下の3つだ。

1)ピントが合わない。
(理由:被写界深度が浅すぎる。また当時のCONTAX機の
 ファインダーやスクリーンのMF性能が低い。レンズの
 開放時の解像感が低く、開放測光(測距)では厳しい)

2)ボケ質破綻が頻発する。
(参考:銀塩一眼レフでは、ボケ質破綻を回避する手段は
 無い→現代のミラーレス機であれば、かろうじて可能)

3)焦点移動が発生し、ピンボケを誘発する。
(理由:開放測光の銀塩一眼レフでは、絞り値を変えても
 シャッターを切る直前で無いと絞り込まれない。
 焦点移動がある場合、開放測距した時のピント位置と
 絞り込まれた際のピント位置に差異がある)

これでは、いかなる上級者であっても、銀塩システムで
これらの問題点を回避するのは難しい。だから、CONTAX
RTS Planar 85/1.4に大きな期待を持って購入した
上級層やマニア層であればある程、これらの弱点による
描写力の低下は、我慢の限界を超えていたに違い無い。
まあ、これを所有しつづけたのは「CONTAXやらツァイス
やらは良く写る」と、世間の噂だけで機材の性能や価値を
判断する初級層(あるいは、富裕層や投機層)くらいしか
居なかったのかも知れない。

まあでも、幸いな事にRTS版P85/1.4や、そのリバイバル
版の本ZF85/1.4は、ミラーレス機で絞り込み測光で
使うならば、上記1)~3)の課題は、殆ど回避できる。

つまり、1)ピント問題は、ピーキング等のMFアシスト
で回避し、2)は、高精細EVF+ボケ質破綻技法で回避、
3)の焦点移動は、絞り込み測光時には発生しない。
_c0032138_06484901.jpg
ただ、そうやって弱点を回避したとしても本レンズの
歩留まり、つまり成功率は、およそ10%以下であり、
これは利用者のスキルによっては、さらに低下する。
すなわち、多くの場合、殆どの写真が満足の行かない
品質レベルでしか、撮れない事となる。

この困難さは、本シリーズ第12回記事「使いこなし
が難しいレンズ特集」で、ワースト第4位の不名誉な
記録を本レンズが残している程だ。

ただ、そのランキングは「使いにくい」という意味
なので、レンズ描写性能とは無関係だ。いやむしろ、
そこにランクインしたレンズは高性能(高描写力)な
ものが殆どである。
すなわち「使いたいレンズであるが、使いこなすのが
とても難しい」という状況な訳であり、低性能で箸にも
棒にもかからないようなレンズは、元々、ランキングに
ノミネートされる筈も無い、という評価基準である。
_c0032138_06484947.jpg
さて、ではここで続く次のレンズとの比較の為、
私の個人データベースから、本レンズの各評価得点を
記載しておく。なお、毎回の説明だが、こうした評価の
項目や内容は、ユーザー個々により異なるだろうから、
この数字だけが一人歩きする事は好ましく無い。
評価は、必ず個々のユーザー自身が行うべきだ。

【描写表現力】★★★★☆
【マニアック】★★★★☆
【コスパ  】★☆
【エンジョイ】★★★☆
【必要度  】★★★☆
・評価平均値:3.5点

悪い点数では無いが・・ 念のため、この評価点は
オリジナルのRTS版P85/1.4との評価傾向とは、大きく
異なる事であろう。

で、リバイバル版の本レンズは、高得点の原動力が
「マニアック度」である。また、単なるリバイバル版
なのに(中身が同じなのに)価格が高価になりすぎて
しまった事で、コスパ評価を極めて厳しくしている。
(注:本レンズは発売前に予約して新品購入したのだが、
発売前には、RTS版P85/1.4のリバイバルである事は
公開されていなかったのだ。この事は結構トラウマと
なり、「もう全く新しい85mmなど、出て来ないのでは?」
と、それから10年以上も85mmレンズを購入しなかった)

すなわち、中身が同じなのに、価格は当時でのRTS版
P85/1.4の中古相場の2.5倍以上だ(怒) これでは
さすがに、厳しい減点評価にせざるを得ない。

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次は、今回ラストの(比較対象)紹介済みレンズ
_c0032138_06485573.jpg
レンズは、7artisans(七工匠) 55mm/f1.4
(新品購入価格 16,000円)(以下、七工匠55/1.4)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

2018年頃発売の、中国製ミラーレス機(APS-C機以下)
専用、MF大口径標準(中望遠画角)レンズ。
_c0032138_06485592.jpg
本レンズは、前述のRTS版P85/1.4あるいは、
同時代の1970~1980年代に、各社より発売された
MFの85mm/F1.4級レンズの典型的な設計(構成)を、
約2/3倍にダウンサイジングした設計である。

こうしたレンズを本ブログでは「ジェネリック・レンズ」
(医薬品の「ジェネリック薬品」と同様な意味であり、
古くから定評がある、または定番の薬品(製品)で、
特許や権利関係が切れているものをコピーして作る事。
新規開発に係わる様々な”膨大な経費”が不要であり、
概ね安価に製品化が可能である)・・と呼んでいる。

まあ、つまりPlanar 85/1.4(あるいは他社85/1.4)
のミニチュア版が、この「七工匠55/1.4」である。

本レンズはμ4/3機用のマウントで購入しているが、
イメージサークルは、APS-C機をカバーしている為、
(フルサイズ対応P85/1.4の2/3倍ならば、そうなる)
これを、APS-C機のα6000にマウントアダプターで
装着してみよう。ケラれずに、約82.5mm/F1.4
相当のレンズ、つまり、Planar 85mm/F1.4と、
ほぼ等価なスペックのレンズとして使用できる。

ただ、今回のこの組み合わせでは、ほんのコンマ何mm
か、レンズが浮いて装着されてしまっている模様で、
数10m以遠の距離、すなわち無限遠被写体において、
わずかに前ピンとなっている模様だ。今回はそういう
遠距離被写体においては、絞り込む操作を併用し、
できるだけ被写界深度内に収めるように配慮している。

この、画角を揃えた状態で、両者のレンズを比較して
みよう、というのが、この記事の意図だ、すなわち、
オリジナル対2/3倍ミニチュア版の比較である。

本レンズの構成は、P85/1.4と同じ5群6枚。
両者のレンズ構成図がネット等にあると思うので、
適宜参照されたし。ただし、ここでは引用はしない、
ネット上の画像や図面には「著作権」が存在するからだ。

一部のマニア等では、ネット上の他者の製品関連画像を
バンバンと引用して掲載記事を書いている人も多いが、
それは基本的には違法なので、やってはならない事だ。
で、そうした基本的な世の中のルールを理解していない
ならば、そういう人が書いた内容も信用には値しない。

では、何故、それが見逃されているか? と言えば、
そうして画像引用されたレンズや機材を売る方も、まあ
宣伝になる要素もあるから、見て見ぬふりをしているに
過ぎない訳だ。

そして、マニアと言えども、自身で所有していない
機材の評価を行っている場合も、あまりに多数ある。
なお、そうした記事の多くは、広告宣伝的要素や
アフィリエイトが主眼である場合も多いから(つまり
商売目的で記事を書いている訳だから)、ユーザー視点
での機材購入上の参考情報には成り得ない。

別の例をあげれば、専門的評価者等によるレビュー記事
で、「良いレンズなので、ボクも欲しいと思った」等と
締めくくっている記事も多いのだが・・
「なんだ、自分では買う気も無いレンズを勧めるのか?」
と、かなり心象が悪い。そんなに推奨するならば、まず
自分で買ってからレビュー記事で勧めるべきだろう。

結局、機材評価は、必ず自身が購入し、所有して、実用的に
長く使っているもので無いとならない、という事だ。
_c0032138_06485508.jpg
さて、余談はともかく、七工匠55/1.4のレンズ構成は
典型的な「プラナー型」であり、銀塩85mm/F1.4級
レンズをスケールダウンしたものに他ならない。

なお、他の「ジェネリック・レンズ」では、ミラーレス
機用にスケールダウンした際、一眼レフとミラーレスの
フランジバック長(の比率)の差異を吸収する為の
補正用レンズが、1~2枚追加されるケースも多いが、
本レンズの場合は、そうした補正レンズは入っていない
模様であり、殆どそのまま銀塩MF85mm/F1.4級の
ミニチュア版だろう。

そうなると、前述のRTS版P85/1.4にあった弱点の
①ピント歩留まり ②ボケ質破綻 ③焦点移動
の弱点も、そのまま残ってしまうように思えるだろう。

・・で、事実その通りであり、ミニチュア版でも、
上記の弱点は、ほとんどそのまま残ってしまっている。
だが、七工匠55/1.4は、ミラーレス機専用とした事で
上記弱点のことごとくが上手く解消されているのだ。

すなわち、弱点回避の理由として・・
①ピント歩留まりは、ミラーレス機のEVFとMFアシスト
 機能で改善されるし、さらに言えば、銀塩時代よりも、
 センサーサイズが小さく、かつ焦点距離も短く、と、
 スケールダウンしているので、結果的に被写界深度が
 深くなる事も、問題点の改善に寄与している。

②のボケ質破綻は、確かに出る事はでる。
 特に本レンズではオリジナルのMF版85/1.4よりも
 目立つ場合があり、その「破綻」の大半は、像面湾曲
 収差の発生により、背景ボケが僅かに「ぐるぐるボケ」の
 傾向を持つ事だ。これは85mm/F1.4よりも本レンズは
 被写界深度を浅くする事が出来ない為、85mmならば
 背景を大ボケさせて破綻を目立たなくさせる事も出来た
 が、本レンズは55mmなので「大ボケ回避法」が困難だ。
 だがまあ、致命的と言えるほどの弱点では無いし、
 ボケ質破綻は、なんとか頑張ってそれを回避すれば良い。
(詳細は、匠の写真用語辞典第13回記事、項目「ボケ質
 の良否」「ボケ質破綻回避」を参照の事)

③の焦点移動は、絞り込み(実絞り)測光のミラーレス
 機では発生しないので、気にしなくても良い。

まあつまり、七工匠55/1.4は、「かなり使い易い
Planar 85/1.4」となる訳であり、やっとこの環境で、
あれだけ「使いにくくて、本来の実力を発揮できない」
と不満であったP85/1.4の実力値を(ミニチュア版だが)
完全解放できる訳だ。
まあ、「逆光耐性の低さ」という微細な弱点はあるが
光線状態に留意する事で回避可能なので不問とする。

これであれば文句のつけようが無い。
おまけに価格が安価である、コシナ版Planar 85/1.4を
買った値段で、七工匠55/1.4が6本買える。
まあつまり、μ4/3、SONY E黒、SONY E銀、FUJI X、
EOS-M、ライカLの全発売マウントが買えてしまう訳だ。
(そんなに沢山の同じレンズはいらないが・・笑)
_c0032138_06485570.jpg
では、ZF85/1.4との比較の為、本七工匠55/1.4も、
個人データベースから評価得点を引用しておこう。

【描写表現力】★★★★
【マニアック】★★★★
【コスパ  】★★★★☆
【エンジョイ】★★★☆
【必要度  】★★★★
・評価平均値:4.0点

ZF85/1.4より評価平均値が上回っている、という最大の
理由は、やはり本レンズの「コスパ」評価点が原動力だ。
また、ミラーレス機専用とした事で、RTS P85/1.4
の弱点のことごとくが解消されていて、好ましく、
かつ価格も安価な事から、コスパ評価が極めて高い。

本ブログでは、このデータベース評価平均値が4.0点を
超えると「名玉」と称する。本レンズもその対象だ。
あいにく「ハイコスパ名玉編」では、そのシリーズ記事
執筆時には、未購入か評価が間に合っていなかった為に、
本レンズがランキングにノミネートされる事は無かったが、
後から追加で入れたいくらいの名玉とも言える。

なお、銀塩MF85/1.4と同様なレンズ構成でありながら、
描写傾向の微細な差は結構ある。それがスケールダウン
が所以なのか、そもそも、使っている硝材(ガラス)の
屈折率やアッベ数といった仕様や、レンズ曲率、空間配置、
口径等が違う故なのか? そこらへんの原因は不明だ。
そういう光学設計上の差異はユーザー側ではわかりようが
無いし、そもそも「微細な差」とは、カメラや被写体が
変われば、出て来てしまうような差でもある。

なお、そのあたりを厳密に比較しようとし、例えば、
三脚を立て、同じカメラで同じ被写体を、レンズだけ
交換して撮り比べようとした場合・・・ これは一見
科学的で論理的ではあるが。しかし、その比較法は
実用的視点からすると、あまり有効なやり方では無い。

つまり、被写体条件など、数万通り、いや、ほぼ無限に
存在する訳だから、その中から、たった1通りの被写体
条件だけに限って、細かい描写の差を調べて、それを
語っても無意味であろう。
例え同じ絞り値で撮っていても、ほんの少し撮影距離が
変わるだけで、ボケ質等も変化してしまう。

すなわち、「全く同じ被写体条件で撮ってみたから」と
言って、それは、その両者のレンズの描写性能を全般的
かつ実用的視点で比較している事にはならない。


例えば、室内で三脚を立て、2本のレンズで同じ被写体
を絞り開放等で撮影し、PC画面で拡大して見て、
「こっちのレンズの方がシャープに写っているから
 高性能である」という評価手法は成り立たない。

勿論だが、解像力(解像感)だけがレンズの性能の全て
では無いからである。



結局、レンズの描写力等は、ケースバイケースなのだ。
比較をする、と言っても、各々数千枚、いや、数万枚
づつは様々なシチュエーション(被写体条件)で
撮ってみて、その総合判断を下さないと意味が無い。
_c0032138_06490078.jpg
まあともかく「七工匠55/1.4」は、銀塩MF85/1.4と
類似の描写傾向を持ち、その長所も短所もひっくるめて
引き継いでいる。(注:上写真はボケ質破綻の例)
ただまあ、銀塩MF85/1.4は、悪いレンズでは無いし、
当時は、それなりに高額なレンズでもあった。
結局、七工匠55/1.4はコスパが良く、これは絶対に
「買い」のレンズであろう。私も、もし異マウント版の
中古が出たら、さらに買い増しする予定である。
(既にFUJI Xマウント版を購入済みである)

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さて、今回の第51回記事は、このあたり迄で・・
次回記事に続く。

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