本シリーズでは写真用交換レンズ(稀に例外あり)を
価格帯別に数本づつ紹介し、記事の最後にBest Buy
(=最も購入に値するレンズ)を決めている。
今回は、8万円級編とする。
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ノミネートされた8万円級レンズは7本、では早速
対戦を開始する。まずは最初のエントリー(参戦)。
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レンズは、SONY Sonnar T*135mm/f1.8ZA
(SAL135F18Z)
(中古購入価格 89,000円)(実用価値 約80,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2006年に、SONYがKONICA MINOLAからカメラ事業
(α)を引き継いだ際に新発売された高付加価値型
(ブランド銘付与)大口径単焦点AF望遠レンズ。
ツァイス銘は、上記タイミングにおいて、新規αに
対するユーザー層からの「不審感」を払拭する事が
目的の、単なる「有名ブランドの付与」であるから、
それそのものを見て、本レンズを「高画質だ」等と
判断する事は出来ない。あくまでどう使うか?と
その際の「コスパ」が適切かどうか?であろう。
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で、そうした「用途(開発)」に関しては、実は
本レンズの場合は難しい。
まあ、135mmの単焦点は、特に現代のユーザー層では、
大口径望遠ズーム(70-200mm/F2.8級)等に内包される
レンズだと考えて、最初から購入対象外であろう。
職業写真家層はさておき、市場からの評判だけを聞いて
購買行動に結びつける現代の初級中級層では、恐らく
135mm単焦点を使う事は「不安の固まり」になる。
初「70mmで撮りたい場合や200mmで撮りたい場合は、
いったいどうするのだ?」と思ってしまう事であろう。
だが、それは根本的に思考法が違う。135mm単焦点を
いざ手にしたならば、その瞬間から135mmの画角で撮る
のにふさわしい被写体を能動的(自分から、アクティブ
に)に探していくのが正解であろう。
あれこれと、時事刻々と状況が変化していく被写体を
「受動的」にズームの焦点距離を、伸ばしたり引っ込め
たりしている状況では、ただ被写体に振り回されている
だけであり、能動的な撮影は出来ないし、
そして、そもそも、そんな撮り方では間に合わない
(動的にシチュエーションが変化する被写体には全く
追従する事ができない)ケースも多発する。
で、ズームレンズの本来の使用法は、画角の変化が
主体なのでは無く、パースペクティブ(遠近感)や、
主要被写体と背景との比率等をコントロールするもの
である。これは基本中の基本だが、残念ながら現代の
初級層では理解が困難な概念だ。
それとまあ、銀塩時代であれば、ズームでも単焦点
でも、より「画角」に関するの重要性は高かったが、
現代のデジタル時代においては、「高画素からの
トリミング編集」が、業務から趣味まで全ての撮影分野
で必須の後処理である為、さほど画角に関する重要性は
高く無い。
トリミングは、写真を納品する、あるいは閲覧や印刷を
行う為の解像度(画素数)やDPI値を満たしてさえすれば、
トリミングで画素数が減少する事は何ら問題にならない。
2000年代、デジタルに変わったばかりの時代であれば
ほぼ全ての、初級から上級までのユーザー層において、
このデジタルの原理を理解しておらず、トリミングや
画像編集そのものを嫌う風潮がとても強かった。
(参考:その理由は、まず画素数を低めたりする事で、
画質がどこまで低下するかがわからずに怖かった事。
さらには、画像編集ソフト等を誰も使った事が無く、
それを自身で処理する事への恐れ(それまでは、DPE店
に全て任せっぱなしであった)、あるいはそれを既に
使いこなせる人達への劣等感からの反発心がある為に
「邪道だ」「卑怯だ」「不公平だ」と、足をひっぱる
ように不満を露にしていた、という残念な世情だ)
まあでも、そこから20年が経過した現代においては、
写真を編集して納品や利用をする事は、ごく当たり前
の常識となっている。ただ、それは一部の中上級層
以上のクラスの人達での話であり、初級層においては
現代でもまだ、デジタルの基本概念を理解しておらず
かつ写真編集技能も殆ど無いので、そもそも写真編集
を行わない。すなわち、これでは2000年代初頭と
同様の状況であろう。そういう風な人達は、例えば、
その内面にくすぶる劣等感を表に出さない為に、
「オレの写真は、ノーレタッチ(画像編集無し)だ、
それでも、ここまでちゃんと写せるのだ」と言って
劣等感を優越感に転換する為の「自身への言い訳」を
行っていた(現代でも?)という状況なのだ。
余談はともかく、本ZA135/1.8が単焦点である事の
デメリットは殆ど無い。135mmで写すべき被写体を
探せばよいからだ。ちなみに、これをフルサイズ機で
使おうが、APS-C機で使おうが、はたまたμ4/3機で
使おうが、SONY α機等に備わるデジタル(スマート)
テレコンバーター機能を使おうが、そこでの画角の
変化も、どうでも良い話だ。
画角が変化したならば、それに応じた被写体や表現を
能動的に探すだけの話である、あらゆる焦点距離の
あらゆるレンズで、それは同様の話である。
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さて、本レンズZA135/1.8の総括であるが、
長所としては、高いコントラスト特性、優秀なボケ質、
短い最短撮影距離(72cm、1/4倍相当)である。
弱点としては、遅いAF、使い難いMF、やや重く大きく
高価な三重苦レンズである事だ。
まあそんなものか・・
想定用途としては「暗所のステージ撮影」および
「日中の自然観察撮影」が、私の場合での双璧だ。
ただまあ、そのあたりの用途はユーザー毎によりけり
であり、ポートレートや鉄道写真等も、条件が合う
ならば、その目的に使えば良いだけの話である。
値段が若干高いのだが、SONY α(A)マウント機の
縮退(事実上の終焉)により、年々中古相場が下落
しつづけている。
現在では想定実用価値 約80,000円を下回る価格と
なっていると思われるので、むしろコスパは優れると
思う。
SONY α(A)機とともに、仕様老朽化寿命が来る前に
入手して、実用レンズとして使いつぶしてしまう事は
悪い選択肢では無い。
なお、勿論、当たり前の話だが、「ツァイスの名前が
ついているから買うに値するレンズだ」などと言う
事は一切無い。(→そう考えてはならない)
レンズの評価はブランド銘で決まるものではなく、用途に
合った特性が得られるか? 長所を理解し活用できるか?
短所を見極め、それを回避できるか? そのトータルの
結果としてコスパに優れるか否か? ただそれだけである。
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では、次のシステム。
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レンズは、LAOWA 105mm/f2 The Bokeh Dreamer
(LAO0013)
(新品購入価格 90,000円)(実用価値 約70,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2016年に発売された、中国製MF中望遠単焦点
アポダイゼーション光学エレメント搭載型レンズ。
希少なアポダイゼーションレンズ(5機種しか無い)
の中では、最も安価であり、かつ、マウントの選択肢が
存在し、純正以外の他マウントでの利用汎用性も高い
レンズである。
詳細は、特集記事や、特殊レンズ第0回記事での
「アポダイゼーション・グランドスラム編」にて
多数記載しているので重複する為に大幅に割愛する。
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まあ、要は「ボケ質が大変優れたレンズ」なのだが、
残念ながら初級層等では「ボケ質」が何か?という
概念を全く持っていない。中級層くらいでも恐らくは
そのあたりは怪しいだろうから、一般層における
本レンズの評価は大変困難だ、とも言えるだろう。
(例;「玉ボケが出るから良いレンズだ・・」とか。
ちなみにそれは、あらゆるレンズで容易に出せる)
また、用途を探すのも難しいレンズだ。
例えば、「中望遠レンズ=ポートレート用」などと
言う、ビギナー的な固定観念を持っているようだと
ちょっとまずい。
MFでは、ビギナー層においては効率的な人物撮影は
難しいだろうし、そもそもボケ質の良さというのは
ピント面のシャープさを表す要素とイコールでは無い。
人物撮影が厳しいとしたら、では、このレンズで
何をどう撮るのか? まあ、そのあたりの「用途解発」
全般が、本レンズの難しさであろう。
基本的には、マニア層または中上級層御用達の
マニアックなレンズである。勿論、業務用途には
使えない事も言うまでも無いだろう。
ユーザー層や被写体状況を極端に選ぶ為、あまり一般的
には推奨しずらいレンズであるとも言える。
まあでも、好きなものを好きに撮れば良い訳だし、
個人的評価点も決して低くは無い。
「アポダイゼーション」の入門用としては適する
と思う。
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では、3本目のシステム。
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レンズは、SIGMA 85mm/f1.4 DG HSM | ART
(中古購入価格 94,000円)(実用価値 約80,000円)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
2016年に発売されたフルサイズ対応大口径AF中望遠
レンズ。 Art Lineを代表する中核レンズの内の1本だ。
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長所は、高描写力である事。実用上の不満はまず無い
事であろう。
短所は、大きく重く高価な三重苦レンズである事、
三重苦レンズ群の中でも、特に本レンズは手持ち限界
ギリギリのサイズ感であり、長時間の利用は厳しい。
(追記:この対策の為か? 2020年には同スペックで
500gも軽量化された新85/1.4が発売。
ただし、そちらはミラーレス機専用であり、現状では
未所有なので、詳細の言及は避ける)
スタジオ等で三脚に固定してポートレートを撮る為の
業務用途専用レンズだと思われる。Art Line全般で
そういうコンセプトである事も、このシリーズに
手ブレ補正機能が入っていない事の理由の1つであろう。
ただまあ、趣味撮影においては、そういう型に嵌った
使い方をする必要はまるで無く、手持ちで好きな被写体
を好きなように撮れば良い。
(余談だが、常に三脚にカメラをセットして撮影をする
「職業写真家」で、三脚からカメラを外して手持ちで撮ると
まるっきりカメラの構えが出来ず、ビギナー級レベルの
奇妙な構えで撮っている人達を何人も見た事がある)
描写力的な不満は無いだろうが、屋外においては、
ND4~ND8減光フィルターを装着する事が、絞り値を
「フルレンジ」で使う為に、表現汎用性が高まる。
ただ、その場合に、ファイルター径がφ86mmと、
なんと焦点距離を上回る大径である(こういうケース
は、中望遠以上の焦点距離のレンズでは、かなり珍しい)
φ82mm迄ならば、減光フィルターも入手しやすいが
φ86mmとなると、特注品とかになり、入手がしずらく
価格も高い、勿論中古流通も殆ど無い。
私は、開き直ってφ82mmのNDフィルターをステップ
ダウンリングを介して装着している。「ケラれる」
危険性が高い使用法だが、APS-C機で使う上では全く
問題なし。フルサイズ機の場合では、多くの機体で
試した訳では無いが、少なくともEOS 6Dは問題無しだ。
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本レンズの注意点としては、この規格外の大きさ・重さを
どうハンドリングするか? という点であろう。
重量級システムをいかに手持ちでバランス良く支えるか?
という点よりも「いかにして疲労しないように、あるいは
いかに疲労を回復するか?」という要素が重要だ。
そのあたりの対処法が出来て無いと、ほんの1時間程で
集中力や撮影モチベーションを失ってしまう恐れもある。
で、そういう事は、「カメラの構え方」とかとは、また
次元の違う話である。例えば、構えてから常に1秒以内に
極めて短い時間で撮影するとか、カメラのメニュー設定
や画像再生確認等の無駄な操作を徹底的に削減するとか、
そういう相当に高度なレベルでの撮影技能が要求される。
まあ、業務用途専用レンズである事は確かであろう。
つまり、上級層・職業写真家層の御用達である。
初級中級層に対しては、サイズ感やコストの問題で
あまり推奨できないレンズである。
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では、4本目のシステム。
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レンズは、COSINA Carl Zeiss Milvus 50mm/f1.4
(中古購入価格 85,000円)(実用価値 約60,000円)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)
2016年に発売されたMF単焦点大口径標準レンズ。
標準レンズであるのに「三重苦」レンズである。
重さが特にいけない、800g以上もあって、ハンドリング
性能全般に劣ってしまう。
そして価格も高い、いくらなんでもMFの50mm/F1.4で
定価約16万円は、ジャンク等での銀塩時代の標準レンズ
の何と100倍もの価格となってしまう(汗)
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長所であるが、特筆すべきは高いコントラスト特性
であり、これは一眼レフの光学ファインダーでも、
ミラーレス機のEVFですらも確認でき、まるで自身の
使っているカメラ本体そのものがグレードアップした
ような印象(勿論、錯覚だ)にも繋がる。
銀塩時代から、ごく稀に「フィンダーを覗いただけで
良く写るレンズだと認識できる」という特性のレンズが
存在したが、本レンズもその類だ。ただし、そういう
類のレンズは決して多くは無い、私の所有範囲の
数百本のレンズ群の中でも、数本しか無く、つまり
1%程度の割合でしか、そういう類のレンズは存在しない。
短所であるが、まずは「三重苦レンズ」である事。
そして、逆光耐性が低い、さらには光学ファインダー
ではピントの山が掴み難い点である。
ピントの山については、本レンズが、レトロフォーカス
型構成、すなわち「ディスタゴン構成」である事に
起因していると思われる。これはつまり変形ダブルガウス
の、いわゆる「プラナー型」は、ピント変化がガウスボケ
という特性に基づいて遷移する為、その「正規分布曲線」の
山が感覚的に掴み易いが・・ 「ディスタゴン型」では
ピントの変化が、なだからであり、どこが「頂上」か?、
つまりピントが来ているか否かが判断しにくい。
まあでも、この話は、個人的な感覚的なものであって、
光学原理的に、これの証明は(高度すぎて)困難だ。
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しかしながら、標準レンズ初の「ディスタゴン型構成」は
マニア的視点からすれば、「いったいどんな写りなのか?」
と、大変興味深い、その知的好奇心のただ1点だけの理由
で本レンズを買ってしまった、と言っても過言では無い。
このあたりの話の意味が理解できる上級マニア層御用達
のレンズである。決して「ツァイスの名前が付いている
から・・」という理由だけで本レンズを欲しがるという
初級中級マニア層には推奨しずらいレンズである。
勿論、マニア以外の一般層には全く推奨できないレンズだ。
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では、次のシステム。
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レンズは、Voigtlander NOKTON 42.5mm/f0.95
(注:変母音記載は省略)
(新品購入価格 90,000円)(実用価値 約70,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G5 (μ4/3機)
2013年発売のμ4/3機専用超大口径MF中望遠画角レンズ。
多数の過去記事で紹介しているレンズであるし
ランキング系記事で上位に入った事もあるが・・
それらの中での着目記事は、レンズマニアックス第12回
「使いこなしが難しいレンズ編」で、ワースト2位
となってしまった事であろう。
つまり、「恐ろしく難しいレンズ」である。
そして、「恐ろしくマニアック度も高い」レンズだ。
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開放F0.95の描写力はお世辞にも良いとは言えず、
球面収差等の収差のオンパレードで、甘々な描写だ。
だが、中近距離のどんな被写体でも、背景から
浮き出して見せるような、一種独特の「世界観」を
演出できるレンズであり、この描写傾向は、恐らくは
唯一無二であろう。これ故に、描写力が低くても
「描写表現力」の個人評価点は満点を獲得している。
まあ、これ以上、あれこれと長所短所をあげても
無意味かも知れない。こうした特殊な仕様かつ使用法が
困難なレンズを志向する、奇特な上級マニア層専用の
レンズであると言える。
その層であれば、本レンズの長所短所等は理解する事が
出来、どうとでも使おうとする事であろう。
その他の一般層には完全非推奨の特殊レンズだ。
(追記:2020年に、さらに高難易度なNOKTON 60mm/
F0.95が発売されている。本シリーズには評価が
間に合っておらず、後日、別記事で紹介予定だ)
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では、6本目のエントリー。
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レンズは、smc PENTAX-FA 31mm/f1.8 AL Limited
(新品購入価格 90,000円)(実用価値 約50,000円)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)
2001年発売の、変則焦点距離AF準広角レンズ。
銀塩時代のレンズであり、「FA型番」であるから
勿論フルサイズ対応だ。
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銀塩時代に3本のみ存在した、FA~Limitedシリーズ
の末弟である。
その3本は、特殊レンズ第9回PENTAX Limited編
にて、全てを紹介しているのだが、その記事でも
書いた事として、本FA31/1.8は、ちょっと問題児
の傾向がある。
まあ、別に悪い描写力のレンズでは無いのだが、
コスパが悪く感じるのだ。
本レンズの定価が、FA~Limitedの3本中、最も高価
であった事もある。しかし、最後発であったし、
当時のPENTAXも事業再編等で大変な時代であったから
少しづつ交換レンズを値上げしていった、という
事情は理解できる。
また、市場のタイミングも悪く、本レンズ発売時
には、その高価な価格ゆえに、あまり注目されない
レンズであったのだが、数年後(2003年~)に
デジタル時代に突入してしまうと、当初のPENTAX機は
全てAPS-C機であった為(注:その傾向は、13年後の
2016年発売のPENTAX K-1まで続く。そのフルサイズ機
が出る迄は、PENTAX機は全てAPS-C機であった)
APS-C機で標準(50mm前後)となる35mm前後級レンズ
が(中古)市場で高騰し、投機層まで現れて、35mm
級レンズが品不足となってしまった。
本レンズは、その時代でも新品販売はされていたが
中古相場は新品価格と、さして差が無い10万円前後
で高値安定傾向となってしまったのだ。
私は、FA~Limitedの3本の中では、本FA31/1.8が
最も描写表現力に優れないレンズであるという評価
を下していたのと、市場の都合により高額相場と
なってしまった事により、本レンズをあまり外に
持ち出したく無くなってしまった。
変に、知らない初級マニア等に見つかってしまうと、
なんだか評判に乗せられて購入したみたいで格好悪い、
あるいは「値段が高いから良いレンズなのだ」という
変な「信仰」を持っていたりされると厄介だ。
「レンズの価格と性能は比例しない」という事実は、
初級マニア層等では理解の範疇を超える事なので
それを説明するのも面倒だし、下手をすれば「宗教戦争」
となり、出先で見知らぬ他人と口論になってしまう
恐れもある。
「値段と性能・・」の件に関しては、少なくとも30本
以上のレンズを使ってきている(注:「マニアの条件」
としての「トリプルスリーの法則」)位の上級マニア層
で無いと、決して理解できない事であるからだ。
だから、2000年代を通じて私は本レンズを殆ど使用
せず、半ば死蔵させている状態になってしまった訳だ。
まあでも、それらの、35mmフィーバーや本レンズの
過剰評価のほとぼりも醒めた2010年代になって、
ようやく私は本レンズを本格的に使用し始めた。
そして、そこでの本レンズの評価は悪くは無かった。
特に優れるのは逆光耐性の高さであり、直接太陽光を
画角に入れるなどの「限界性能テスト」を施しても、
本FA31/1.8の描写は破綻しない。
「値段が高いだけのブルジョアレンズ」では無かった
事をようやく理解でき、なんだか一安心した次第だ。
ただまあ、やはりそれでもコスパは悪いと思う。
現代においては、同等スペックのエントリーレンズで
ヒトケタ安価なレンズも何本か存在しているし。
新鋭中国製レンズも同様に極めて安価だ。
フルサイズ対応の本格派レンズであっても、例えば
TAMRON SP35/1.8(Model F012)等は、本FA31/1.8
と比較して優れる部分も多く、それでいて中古相場も
本レンズよりもずっと安価だ。
これらのレンズ群は、本レンズよりも新しい時代の
ものとは言え、新しいレンズは(特に近年では)
大きく値上がりしている、という状況において、
古い時代の本FA31/1.8が、後年の新鋭レンズ群よりも
ずっと高価であり、場合により、性能すら劣ってしまう、
という事実は、コスパの面からは、どう見ても分が悪い。
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だとすると、本FA31/1.8の存在意義とか、有効な
活用法には、頭を悩ませてしまう、というのが正直な
感覚である。「用途開発」もあまり進んでおらず、
唯一の有益な活用法としては、超エキセントリックな
デザインのPENTA K-01(2012年)用の、「汎用標準
レンズとしての適正がある」と、それ位しか事例を
持っていない。
他に有益な用途は、殆ど思いつかず、なんとも推奨
しずらいレンズである。
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では、今回ラストのシステム。
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レンズは、MINOLTA STF 135mm/f2.8[T4.5]
(新品購入価格 118,000円)(実用価値 約80,000円)
カメラは、SONY α65(APS-C機)
1998年に発売されたMF望遠単焦点。史上初の
アポダイゼーション光学エレメント搭載型レンズだ。
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発売年次は古く、20年以上も前のセミオールドレンズ
であるが、まず初のアポダイゼーション(STF)として
歴史的価値は極めて高い。
そして描写力が物凄い、セミオールドと言っても、
現代の新鋭レンズの大半が、本STF135/2.8には
負けてしまう位だ。
あまり数字の詳細を公開したく無いが、個人評価DB
において、描写表現力5点満点のレンズは、所有
レンズ約400本中、20本弱存在しており、その中でも
「表現力」ではなく「描写力」そのものに優れる
レンズは、およそその半分の10本弱くらいである。
そして、その中に本STF135/2.8が含まれる訳であり
すなわち所有レンズ中、2%程度しか無い、描写力が
最上位得点をたたき出すハイランカーレンズの中に
依然本レンズも入っており、加えて言えば、その
「満点レンズ」の中では、本STF135/2.8が最も
古い時代のものである。
つまり、発売から20年以上も、その後の時代の新鋭
レンズをも上回るトップクラスの描写力を保ち続けた
「レジェンド」のレンズであると言える。
ただまあ、もう20年以上も、周囲の人達に対して
「STF(135/2.8)や、ナナナナ(FA77/1.8)を
買わずして、いったいどのレンズを買うのだ?」
と繰り返し言っていても、実際にSTFやFA77/1.8を
購入した人達は極めて少ない。
まあ、価格の高さ、効能の不理解、用途設定が
出来ない、MFはできない、単焦点はイヤだ、
(どこの誰とも知らない)他人の好評価が無いと
買えない・・ といった、ビギナー的な購買論理
しか持たなければ、こういう特殊なレンズは、まず
買えないで事であろう。
で、私も近年ではもう、そういう人達に対して無理に
良質な機材等を勧めたりはしない。基本的には何を
買うかは購入層の好き好きであろうし、仮に、それが
購入者の目的には合わない変なレンズを買って失敗
したとしても、まあそれは、やむを得ない話だ。
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他の記事でも良く書くが、近年の男性層は、恐ろしく
買い物が下手である。その典型例としては、やはり
自分自身で購買論理(モノを購入するポリシー)を
持っていない事が最大の課題であろう。
自分で買うものは、自分自身の価値観を持って買う
ことは、あまりにも当たり前の話であると思う。
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では、最後に各選出レンズの評価点を記載する。
1)ZA135/1.8 =3.8点
2)LAOWA105/2 =3.9点
3)ART85/1.4 =3.7点
4)Milvus50/1.4 =3.5点
5)NOKTON42.5/0.95=4.5点→非推奨
6)STF135/2.8 =4.3点
今回の8万円級対戦は、どれも高得点である。
まあつまり、実用的には、このあたりの価格帯の
レンズが最も使い勝手が良い(優れる)という事
なのであろう。
得点における「Best Buy」は「NOKTON 42.5/0.95」
であるが、こちらは非常にマニアックなレンズな為、
非推奨だ。
すると実用的な範囲での「Best Buy」はMINOLTAまたは
SONY製(両者は同じ光学系)のSTF135/2.8[T4.5]で
確定だと思われる。
発売後20数年を経ても、「完璧と言えるボケ質」と
「感動的な高描写力」は、依然現代の視点でもトップ
クラスであり、これはまさしく「レジェンド」だ。
アスリート(スポーツ選手)は、昔活躍した選手でも
いつかは現役引退をせざるを得ない、でも、ごく稀に
非常に長期に渡って現役生活をつづけ、かつ親子程
年下の新鋭選手達に混じって好成績を上げ続ける事が
できる超人的な選手達が居る、彼らの事を本来の意味
での「レジェンド」と呼ぶ訳なのだが・・
このSTF135/2.8も、「本物のレジェンド」である。
あらゆるユーザー層に推奨できるレンズではあるが、
課題としては「アポダイゼーション」の効能や用途を
理解できるか否か?という点であろうか。
現代のビギナー層では、ちょっと理解困難かも知れない。
「MFはちょっと・・(出来ない)」等と言っていたら、
それもまた典型的ビギナーであろう。ちなみに本記事
での紹介(対戦)レンズは、その半数以上がMFレンズだ。
「爆速AF!」等のビギナー評価用語もたまに見かけるが、
MFで置きピン等で合わせるならば、いかなる「爆速AF」
レンズにも簡単に勝利できる。
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さて、今回の「8万円級レンズ編」記事は、
このあたり迄で、次回記事に続く。
価格帯別に数本づつ紹介し、記事の最後にBest Buy
(=最も購入に値するレンズ)を決めている。
今回は、8万円級編とする。
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ノミネートされた8万円級レンズは7本、では早速
対戦を開始する。まずは最初のエントリー(参戦)。
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(SAL135F18Z)
(中古購入価格 89,000円)(実用価値 約80,000円)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)
2006年に、SONYがKONICA MINOLAからカメラ事業
(α)を引き継いだ際に新発売された高付加価値型
(ブランド銘付与)大口径単焦点AF望遠レンズ。
ツァイス銘は、上記タイミングにおいて、新規αに
対するユーザー層からの「不審感」を払拭する事が
目的の、単なる「有名ブランドの付与」であるから、
それそのものを見て、本レンズを「高画質だ」等と
判断する事は出来ない。あくまでどう使うか?と
その際の「コスパ」が適切かどうか?であろう。
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本レンズの場合は難しい。
まあ、135mmの単焦点は、特に現代のユーザー層では、
大口径望遠ズーム(70-200mm/F2.8級)等に内包される
レンズだと考えて、最初から購入対象外であろう。
職業写真家層はさておき、市場からの評判だけを聞いて
購買行動に結びつける現代の初級中級層では、恐らく
135mm単焦点を使う事は「不安の固まり」になる。
初「70mmで撮りたい場合や200mmで撮りたい場合は、
いったいどうするのだ?」と思ってしまう事であろう。
だが、それは根本的に思考法が違う。135mm単焦点を
いざ手にしたならば、その瞬間から135mmの画角で撮る
のにふさわしい被写体を能動的(自分から、アクティブ
に)に探していくのが正解であろう。
あれこれと、時事刻々と状況が変化していく被写体を
「受動的」にズームの焦点距離を、伸ばしたり引っ込め
たりしている状況では、ただ被写体に振り回されている
だけであり、能動的な撮影は出来ないし、
そして、そもそも、そんな撮り方では間に合わない
(動的にシチュエーションが変化する被写体には全く
追従する事ができない)ケースも多発する。
で、ズームレンズの本来の使用法は、画角の変化が
主体なのでは無く、パースペクティブ(遠近感)や、
主要被写体と背景との比率等をコントロールするもの
である。これは基本中の基本だが、残念ながら現代の
初級層では理解が困難な概念だ。
それとまあ、銀塩時代であれば、ズームでも単焦点
でも、より「画角」に関するの重要性は高かったが、
現代のデジタル時代においては、「高画素からの
トリミング編集」が、業務から趣味まで全ての撮影分野
で必須の後処理である為、さほど画角に関する重要性は
高く無い。
トリミングは、写真を納品する、あるいは閲覧や印刷を
行う為の解像度(画素数)やDPI値を満たしてさえすれば、
トリミングで画素数が減少する事は何ら問題にならない。
2000年代、デジタルに変わったばかりの時代であれば
ほぼ全ての、初級から上級までのユーザー層において、
このデジタルの原理を理解しておらず、トリミングや
画像編集そのものを嫌う風潮がとても強かった。
(参考:その理由は、まず画素数を低めたりする事で、
画質がどこまで低下するかがわからずに怖かった事。
さらには、画像編集ソフト等を誰も使った事が無く、
それを自身で処理する事への恐れ(それまでは、DPE店
に全て任せっぱなしであった)、あるいはそれを既に
使いこなせる人達への劣等感からの反発心がある為に
「邪道だ」「卑怯だ」「不公平だ」と、足をひっぱる
ように不満を露にしていた、という残念な世情だ)
まあでも、そこから20年が経過した現代においては、
写真を編集して納品や利用をする事は、ごく当たり前
の常識となっている。ただ、それは一部の中上級層
以上のクラスの人達での話であり、初級層においては
現代でもまだ、デジタルの基本概念を理解しておらず
かつ写真編集技能も殆ど無いので、そもそも写真編集
を行わない。すなわち、これでは2000年代初頭と
同様の状況であろう。そういう風な人達は、例えば、
その内面にくすぶる劣等感を表に出さない為に、
「オレの写真は、ノーレタッチ(画像編集無し)だ、
それでも、ここまでちゃんと写せるのだ」と言って
劣等感を優越感に転換する為の「自身への言い訳」を
行っていた(現代でも?)という状況なのだ。
余談はともかく、本ZA135/1.8が単焦点である事の
デメリットは殆ど無い。135mmで写すべき被写体を
探せばよいからだ。ちなみに、これをフルサイズ機で
使おうが、APS-C機で使おうが、はたまたμ4/3機で
使おうが、SONY α機等に備わるデジタル(スマート)
テレコンバーター機能を使おうが、そこでの画角の
変化も、どうでも良い話だ。
画角が変化したならば、それに応じた被写体や表現を
能動的に探すだけの話である、あらゆる焦点距離の
あらゆるレンズで、それは同様の話である。
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長所としては、高いコントラスト特性、優秀なボケ質、
短い最短撮影距離(72cm、1/4倍相当)である。
弱点としては、遅いAF、使い難いMF、やや重く大きく
高価な三重苦レンズである事だ。
まあそんなものか・・
想定用途としては「暗所のステージ撮影」および
「日中の自然観察撮影」が、私の場合での双璧だ。
ただまあ、そのあたりの用途はユーザー毎によりけり
であり、ポートレートや鉄道写真等も、条件が合う
ならば、その目的に使えば良いだけの話である。
値段が若干高いのだが、SONY α(A)マウント機の
縮退(事実上の終焉)により、年々中古相場が下落
しつづけている。
現在では想定実用価値 約80,000円を下回る価格と
なっていると思われるので、むしろコスパは優れると
思う。
SONY α(A)機とともに、仕様老朽化寿命が来る前に
入手して、実用レンズとして使いつぶしてしまう事は
悪い選択肢では無い。
なお、勿論、当たり前の話だが、「ツァイスの名前が
ついているから買うに値するレンズだ」などと言う
事は一切無い。(→そう考えてはならない)
レンズの評価はブランド銘で決まるものではなく、用途に
合った特性が得られるか? 長所を理解し活用できるか?
短所を見極め、それを回避できるか? そのトータルの
結果としてコスパに優れるか否か? ただそれだけである。
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では、次のシステム。
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(LAO0013)
(新品購入価格 90,000円)(実用価値 約70,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)
2016年に発売された、中国製MF中望遠単焦点
アポダイゼーション光学エレメント搭載型レンズ。
希少なアポダイゼーションレンズ(5機種しか無い)
の中では、最も安価であり、かつ、マウントの選択肢が
存在し、純正以外の他マウントでの利用汎用性も高い
レンズである。
詳細は、特集記事や、特殊レンズ第0回記事での
「アポダイゼーション・グランドスラム編」にて
多数記載しているので重複する為に大幅に割愛する。
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残念ながら初級層等では「ボケ質」が何か?という
概念を全く持っていない。中級層くらいでも恐らくは
そのあたりは怪しいだろうから、一般層における
本レンズの評価は大変困難だ、とも言えるだろう。
(例;「玉ボケが出るから良いレンズだ・・」とか。
ちなみにそれは、あらゆるレンズで容易に出せる)
また、用途を探すのも難しいレンズだ。
例えば、「中望遠レンズ=ポートレート用」などと
言う、ビギナー的な固定観念を持っているようだと
ちょっとまずい。
MFでは、ビギナー層においては効率的な人物撮影は
難しいだろうし、そもそもボケ質の良さというのは
ピント面のシャープさを表す要素とイコールでは無い。
人物撮影が厳しいとしたら、では、このレンズで
何をどう撮るのか? まあ、そのあたりの「用途解発」
全般が、本レンズの難しさであろう。
基本的には、マニア層または中上級層御用達の
マニアックなレンズである。勿論、業務用途には
使えない事も言うまでも無いだろう。
ユーザー層や被写体状況を極端に選ぶ為、あまり一般的
には推奨しずらいレンズであるとも言える。
まあでも、好きなものを好きに撮れば良い訳だし、
個人的評価点も決して低くは無い。
「アポダイゼーション」の入門用としては適する
と思う。
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では、3本目のシステム。
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(中古購入価格 94,000円)(実用価値 約80,000円)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)
2016年に発売されたフルサイズ対応大口径AF中望遠
レンズ。 Art Lineを代表する中核レンズの内の1本だ。
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事であろう。
短所は、大きく重く高価な三重苦レンズである事、
三重苦レンズ群の中でも、特に本レンズは手持ち限界
ギリギリのサイズ感であり、長時間の利用は厳しい。
(追記:この対策の為か? 2020年には同スペックで
500gも軽量化された新85/1.4が発売。
ただし、そちらはミラーレス機専用であり、現状では
未所有なので、詳細の言及は避ける)
スタジオ等で三脚に固定してポートレートを撮る為の
業務用途専用レンズだと思われる。Art Line全般で
そういうコンセプトである事も、このシリーズに
手ブレ補正機能が入っていない事の理由の1つであろう。
ただまあ、趣味撮影においては、そういう型に嵌った
使い方をする必要はまるで無く、手持ちで好きな被写体
を好きなように撮れば良い。
(余談だが、常に三脚にカメラをセットして撮影をする
「職業写真家」で、三脚からカメラを外して手持ちで撮ると
まるっきりカメラの構えが出来ず、ビギナー級レベルの
奇妙な構えで撮っている人達を何人も見た事がある)
描写力的な不満は無いだろうが、屋外においては、
ND4~ND8減光フィルターを装着する事が、絞り値を
「フルレンジ」で使う為に、表現汎用性が高まる。
ただ、その場合に、ファイルター径がφ86mmと、
なんと焦点距離を上回る大径である(こういうケース
は、中望遠以上の焦点距離のレンズでは、かなり珍しい)
φ82mm迄ならば、減光フィルターも入手しやすいが
φ86mmとなると、特注品とかになり、入手がしずらく
価格も高い、勿論中古流通も殆ど無い。
私は、開き直ってφ82mmのNDフィルターをステップ
ダウンリングを介して装着している。「ケラれる」
危険性が高い使用法だが、APS-C機で使う上では全く
問題なし。フルサイズ機の場合では、多くの機体で
試した訳では無いが、少なくともEOS 6Dは問題無しだ。
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どうハンドリングするか? という点であろう。
重量級システムをいかに手持ちでバランス良く支えるか?
という点よりも「いかにして疲労しないように、あるいは
いかに疲労を回復するか?」という要素が重要だ。
そのあたりの対処法が出来て無いと、ほんの1時間程で
集中力や撮影モチベーションを失ってしまう恐れもある。
で、そういう事は、「カメラの構え方」とかとは、また
次元の違う話である。例えば、構えてから常に1秒以内に
極めて短い時間で撮影するとか、カメラのメニュー設定
や画像再生確認等の無駄な操作を徹底的に削減するとか、
そういう相当に高度なレベルでの撮影技能が要求される。
まあ、業務用途専用レンズである事は確かであろう。
つまり、上級層・職業写真家層の御用達である。
初級中級層に対しては、サイズ感やコストの問題で
あまり推奨できないレンズである。
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では、4本目のシステム。
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(中古購入価格 85,000円)(実用価値 約60,000円)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)
2016年に発売されたMF単焦点大口径標準レンズ。
標準レンズであるのに「三重苦」レンズである。
重さが特にいけない、800g以上もあって、ハンドリング
性能全般に劣ってしまう。
そして価格も高い、いくらなんでもMFの50mm/F1.4で
定価約16万円は、ジャンク等での銀塩時代の標準レンズ
の何と100倍もの価格となってしまう(汗)
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であり、これは一眼レフの光学ファインダーでも、
ミラーレス機のEVFですらも確認でき、まるで自身の
使っているカメラ本体そのものがグレードアップした
ような印象(勿論、錯覚だ)にも繋がる。
銀塩時代から、ごく稀に「フィンダーを覗いただけで
良く写るレンズだと認識できる」という特性のレンズが
存在したが、本レンズもその類だ。ただし、そういう
類のレンズは決して多くは無い、私の所有範囲の
数百本のレンズ群の中でも、数本しか無く、つまり
1%程度の割合でしか、そういう類のレンズは存在しない。
短所であるが、まずは「三重苦レンズ」である事。
そして、逆光耐性が低い、さらには光学ファインダー
ではピントの山が掴み難い点である。
ピントの山については、本レンズが、レトロフォーカス
型構成、すなわち「ディスタゴン構成」である事に
起因していると思われる。これはつまり変形ダブルガウス
の、いわゆる「プラナー型」は、ピント変化がガウスボケ
という特性に基づいて遷移する為、その「正規分布曲線」の
山が感覚的に掴み易いが・・ 「ディスタゴン型」では
ピントの変化が、なだからであり、どこが「頂上」か?、
つまりピントが来ているか否かが判断しにくい。
まあでも、この話は、個人的な感覚的なものであって、
光学原理的に、これの証明は(高度すぎて)困難だ。
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マニア的視点からすれば、「いったいどんな写りなのか?」
と、大変興味深い、その知的好奇心のただ1点だけの理由
で本レンズを買ってしまった、と言っても過言では無い。
このあたりの話の意味が理解できる上級マニア層御用達
のレンズである。決して「ツァイスの名前が付いている
から・・」という理由だけで本レンズを欲しがるという
初級中級マニア層には推奨しずらいレンズである。
勿論、マニア以外の一般層には全く推奨できないレンズだ。
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では、次のシステム。
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(注:変母音記載は省略)
(新品購入価格 90,000円)(実用価値 約70,000円)
カメラは、PANASONIC DMC-G5 (μ4/3機)
2013年発売のμ4/3機専用超大口径MF中望遠画角レンズ。
多数の過去記事で紹介しているレンズであるし
ランキング系記事で上位に入った事もあるが・・
それらの中での着目記事は、レンズマニアックス第12回
「使いこなしが難しいレンズ編」で、ワースト2位
となってしまった事であろう。
つまり、「恐ろしく難しいレンズ」である。
そして、「恐ろしくマニアック度も高い」レンズだ。
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球面収差等の収差のオンパレードで、甘々な描写だ。
だが、中近距離のどんな被写体でも、背景から
浮き出して見せるような、一種独特の「世界観」を
演出できるレンズであり、この描写傾向は、恐らくは
唯一無二であろう。これ故に、描写力が低くても
「描写表現力」の個人評価点は満点を獲得している。
まあ、これ以上、あれこれと長所短所をあげても
無意味かも知れない。こうした特殊な仕様かつ使用法が
困難なレンズを志向する、奇特な上級マニア層専用の
レンズであると言える。
その層であれば、本レンズの長所短所等は理解する事が
出来、どうとでも使おうとする事であろう。
その他の一般層には完全非推奨の特殊レンズだ。
(追記:2020年に、さらに高難易度なNOKTON 60mm/
F0.95が発売されている。本シリーズには評価が
間に合っておらず、後日、別記事で紹介予定だ)
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では、6本目のエントリー。
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(新品購入価格 90,000円)(実用価値 約50,000円)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)
2001年発売の、変則焦点距離AF準広角レンズ。
銀塩時代のレンズであり、「FA型番」であるから
勿論フルサイズ対応だ。
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の末弟である。
その3本は、特殊レンズ第9回PENTAX Limited編
にて、全てを紹介しているのだが、その記事でも
書いた事として、本FA31/1.8は、ちょっと問題児
の傾向がある。
まあ、別に悪い描写力のレンズでは無いのだが、
コスパが悪く感じるのだ。
本レンズの定価が、FA~Limitedの3本中、最も高価
であった事もある。しかし、最後発であったし、
当時のPENTAXも事業再編等で大変な時代であったから
少しづつ交換レンズを値上げしていった、という
事情は理解できる。
また、市場のタイミングも悪く、本レンズ発売時
には、その高価な価格ゆえに、あまり注目されない
レンズであったのだが、数年後(2003年~)に
デジタル時代に突入してしまうと、当初のPENTAX機は
全てAPS-C機であった為(注:その傾向は、13年後の
2016年発売のPENTAX K-1まで続く。そのフルサイズ機
が出る迄は、PENTAX機は全てAPS-C機であった)
APS-C機で標準(50mm前後)となる35mm前後級レンズ
が(中古)市場で高騰し、投機層まで現れて、35mm
級レンズが品不足となってしまった。
本レンズは、その時代でも新品販売はされていたが
中古相場は新品価格と、さして差が無い10万円前後
で高値安定傾向となってしまったのだ。
私は、FA~Limitedの3本の中では、本FA31/1.8が
最も描写表現力に優れないレンズであるという評価
を下していたのと、市場の都合により高額相場と
なってしまった事により、本レンズをあまり外に
持ち出したく無くなってしまった。
変に、知らない初級マニア等に見つかってしまうと、
なんだか評判に乗せられて購入したみたいで格好悪い、
あるいは「値段が高いから良いレンズなのだ」という
変な「信仰」を持っていたりされると厄介だ。
「レンズの価格と性能は比例しない」という事実は、
初級マニア層等では理解の範疇を超える事なので
それを説明するのも面倒だし、下手をすれば「宗教戦争」
となり、出先で見知らぬ他人と口論になってしまう
恐れもある。
「値段と性能・・」の件に関しては、少なくとも30本
以上のレンズを使ってきている(注:「マニアの条件」
としての「トリプルスリーの法則」)位の上級マニア層
で無いと、決して理解できない事であるからだ。
だから、2000年代を通じて私は本レンズを殆ど使用
せず、半ば死蔵させている状態になってしまった訳だ。
まあでも、それらの、35mmフィーバーや本レンズの
過剰評価のほとぼりも醒めた2010年代になって、
ようやく私は本レンズを本格的に使用し始めた。
そして、そこでの本レンズの評価は悪くは無かった。
特に優れるのは逆光耐性の高さであり、直接太陽光を
画角に入れるなどの「限界性能テスト」を施しても、
本FA31/1.8の描写は破綻しない。
「値段が高いだけのブルジョアレンズ」では無かった
事をようやく理解でき、なんだか一安心した次第だ。
ただまあ、やはりそれでもコスパは悪いと思う。
現代においては、同等スペックのエントリーレンズで
ヒトケタ安価なレンズも何本か存在しているし。
新鋭中国製レンズも同様に極めて安価だ。
フルサイズ対応の本格派レンズであっても、例えば
TAMRON SP35/1.8(Model F012)等は、本FA31/1.8
と比較して優れる部分も多く、それでいて中古相場も
本レンズよりもずっと安価だ。
これらのレンズ群は、本レンズよりも新しい時代の
ものとは言え、新しいレンズは(特に近年では)
大きく値上がりしている、という状況において、
古い時代の本FA31/1.8が、後年の新鋭レンズ群よりも
ずっと高価であり、場合により、性能すら劣ってしまう、
という事実は、コスパの面からは、どう見ても分が悪い。
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活用法には、頭を悩ませてしまう、というのが正直な
感覚である。「用途開発」もあまり進んでおらず、
唯一の有益な活用法としては、超エキセントリックな
デザインのPENTA K-01(2012年)用の、「汎用標準
レンズとしての適正がある」と、それ位しか事例を
持っていない。
他に有益な用途は、殆ど思いつかず、なんとも推奨
しずらいレンズである。
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では、今回ラストのシステム。
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(新品購入価格 118,000円)(実用価値 約80,000円)
カメラは、SONY α65(APS-C機)
1998年に発売されたMF望遠単焦点。史上初の
アポダイゼーション光学エレメント搭載型レンズだ。
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であるが、まず初のアポダイゼーション(STF)として
歴史的価値は極めて高い。
そして描写力が物凄い、セミオールドと言っても、
現代の新鋭レンズの大半が、本STF135/2.8には
負けてしまう位だ。
あまり数字の詳細を公開したく無いが、個人評価DB
において、描写表現力5点満点のレンズは、所有
レンズ約400本中、20本弱存在しており、その中でも
「表現力」ではなく「描写力」そのものに優れる
レンズは、およそその半分の10本弱くらいである。
そして、その中に本STF135/2.8が含まれる訳であり
すなわち所有レンズ中、2%程度しか無い、描写力が
最上位得点をたたき出すハイランカーレンズの中に
依然本レンズも入っており、加えて言えば、その
「満点レンズ」の中では、本STF135/2.8が最も
古い時代のものである。
つまり、発売から20年以上も、その後の時代の新鋭
レンズをも上回るトップクラスの描写力を保ち続けた
「レジェンド」のレンズであると言える。
ただまあ、もう20年以上も、周囲の人達に対して
「STF(135/2.8)や、ナナナナ(FA77/1.8)を
買わずして、いったいどのレンズを買うのだ?」
と繰り返し言っていても、実際にSTFやFA77/1.8を
購入した人達は極めて少ない。
まあ、価格の高さ、効能の不理解、用途設定が
出来ない、MFはできない、単焦点はイヤだ、
(どこの誰とも知らない)他人の好評価が無いと
買えない・・ といった、ビギナー的な購買論理
しか持たなければ、こういう特殊なレンズは、まず
買えないで事であろう。
で、私も近年ではもう、そういう人達に対して無理に
良質な機材等を勧めたりはしない。基本的には何を
買うかは購入層の好き好きであろうし、仮に、それが
購入者の目的には合わない変なレンズを買って失敗
したとしても、まあそれは、やむを得ない話だ。
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買い物が下手である。その典型例としては、やはり
自分自身で購買論理(モノを購入するポリシー)を
持っていない事が最大の課題であろう。
自分で買うものは、自分自身の価値観を持って買う
ことは、あまりにも当たり前の話であると思う。
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では、最後に各選出レンズの評価点を記載する。
1)ZA135/1.8 =3.8点
2)LAOWA105/2 =3.9点
3)ART85/1.4 =3.7点
4)Milvus50/1.4 =3.5点
5)NOKTON42.5/0.95=4.5点→非推奨
6)STF135/2.8 =4.3点
今回の8万円級対戦は、どれも高得点である。
まあつまり、実用的には、このあたりの価格帯の
レンズが最も使い勝手が良い(優れる)という事
なのであろう。
得点における「Best Buy」は「NOKTON 42.5/0.95」
であるが、こちらは非常にマニアックなレンズな為、
非推奨だ。
すると実用的な範囲での「Best Buy」はMINOLTAまたは
SONY製(両者は同じ光学系)のSTF135/2.8[T4.5]で
確定だと思われる。
発売後20数年を経ても、「完璧と言えるボケ質」と
「感動的な高描写力」は、依然現代の視点でもトップ
クラスであり、これはまさしく「レジェンド」だ。
アスリート(スポーツ選手)は、昔活躍した選手でも
いつかは現役引退をせざるを得ない、でも、ごく稀に
非常に長期に渡って現役生活をつづけ、かつ親子程
年下の新鋭選手達に混じって好成績を上げ続ける事が
できる超人的な選手達が居る、彼らの事を本来の意味
での「レジェンド」と呼ぶ訳なのだが・・
このSTF135/2.8も、「本物のレジェンド」である。
あらゆるユーザー層に推奨できるレンズではあるが、
課題としては「アポダイゼーション」の効能や用途を
理解できるか否か?という点であろうか。
現代のビギナー層では、ちょっと理解困難かも知れない。
「MFはちょっと・・(出来ない)」等と言っていたら、
それもまた典型的ビギナーであろう。ちなみに本記事
での紹介(対戦)レンズは、その半数以上がMFレンズだ。
「爆速AF!」等のビギナー評価用語もたまに見かけるが、
MFで置きピン等で合わせるならば、いかなる「爆速AF」
レンズにも簡単に勝利できる。
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さて、今回の「8万円級レンズ編」記事は、
このあたり迄で、次回記事に続く。