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特殊レンズ・スーパーマニアックス(67)超広角マニアックス(中編)

本シリーズは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介する記事群だ。

今回も、「超広角(レンズ)マニアックス」という主旨で、
実焦点距離が21mm以下の超広角(特殊レンズ等を含む)
単焦点レンズを前編に引き続き、9本取り上げる事とする。

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、SONY E16mm/f2.8 (SEL16F28)
(中古購入価格 7,000円相当)(以下、E16/2.8)
カメラは、SONY NEX-3(APS-C機)

2010年発売の薄型軽量AF単焦点広角レンズ。
ミラーレス機Eマウント(APS-C型)用レンズであり、
フルサイズα機(FEマウント)で使用の際は、
自動または手動でAPS-Cサイズにクロップして使える。

本レンズは当初は、SONY初のミラーレス機、NEX-3
およびNEX-5のキットレンズとしての発売であった。
最初期ミラーレス機での、コントラストAFの速度と
精度不足を補う為の、広角&小型レンズであったと
思われる。被写界深度が深く、軽量(67g)であるから
ピントを外し難く、AF駆動モーターの負荷も少ない。

そして、「ビギナー層が換算24mmの(単焦点)広角
画角を使いこなせるのか?」という課題については、
初期NEXから(プレシジョン)デジタルズーム機能が
内蔵されていて、それは10倍までの可変幅があった。
(注:3倍拡大を超えたあたりから、画質劣化が目立つ)

ただし、初期NEXでは(純正等)単焦点レンズでしか、
デジタルズームは効かない、よって、本E16/2.8の
ほぼ専用の機能となっていた。
(注:後期のNEXでは、その「排他的仕様」は緩和され、
ズームレンズやマウントアダプターを介したオールド
レンズ使用時でも、デジタルズーム機能が動作する)
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さて、本レンズE16/2.8であるが、平凡な描写力では
あるものの、汎用性が高く、例えばイベント会場や
ステージ等の全景撮影、さらには人物集合写真等に、
24mmの画角はマッチした。
各社初期ミラーレス機の中では、小型軽量であるNEX
とのマッチングも良く、コンパクト機と同等のサイズ感や
重量で、コンパクト機より遥かに大型のAPS-C型センサー
による実用撮影が出来る事で、2010年代を通じて、
そうした「記録撮影」用途には大変活躍したレンズである。

おまけに安価であり、このNEX-3+E-16/2.8のセット
(NEX-3Aというセット型番)は、水没故障により2度
購入しているのだが、いずれも中古1万円台後半のセット
価格であった。2010年代前半では、各社から次々と
ミラーレスの新型機が発売された為、発売後1~2年も
すれば、旧型機は、とんでも無い安値の中古相場まで下落
してしまっていたのだ。だけど、常に最新型機でなければ
ならない理由も特に無く、ミラーレス機材購入のコスパが
とても高い時代ではあった。

そして、2010年代前半頃に(デジタル)コンパクト機が
大きく市場縮退した際、各社は「高付加価値化戦略」で
大型センサーを搭載した高級(高額)コンパクト機を
色々と発売したのだが、個人的には全く興味が沸いて
こなかった。何故ならば、例えばNEX-3にE16/2.8を
つければ、高額コンパクト機と同等以上の描写性能が
得られたし、レンズ交換まで可能で、おまけに安価で
あったからだ。事実、私は、2010年代前半頃から
以降の高級コンパクト機は、1台も購入していない。 

ちなみに前述のように、ミラーレス機本体は2010年代
前半においては、毎年のように新型機が出ていた。
で、いまさら、その時代の(10年以上も前の)NEX-3を
使うのはかなり厳しい(仕様老朽化寿命)のだが、交換
レンズは、もっとずっと長寿命である、例えば本E16/2.8
は、特に後継機種が出る訳でもなく、発売10年を超えて迄
いまだ現役商品として販売が継続されている。

まあ、こういう事が、「カメラ本体よりレンズの方が
ずっと価値が高い」(1対4の法則)という事である。
初級層等では、新型のカメラにばかり目が行く事に
なるのだが、10年も過ぎれば酷い事になっているのが
わかると思う。購入時点においては、さすがの新鋭機で
あっても、後の世代の周囲の最新機種に比べると大きく
見劣りしてしまうし、新鋭下位機種にも性能的に負け、
下手をすれば、カメラのカテゴリーですら、無くなって
しまうのだ(例:今時、銀塩コンパクト機などは発売
されていないし、それを使っている人は皆無であろう)

本E16/2.8は、現代において1万円以下の中古相場で
購入できるハイコスパレンズである。
「フルサイズ対応でなくちゃ嫌だ!」と駄々をこねる
超初級者層には推奨しないが、その他のE/FEマウント
ユーザー層には、文句無く、おすすめできるレンズだ。

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では、次のシステム
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レンズは、PANASONIC LUMIX G 14mm/f2.5 ASPH.
(型番:H-H014)
(新古購入価格 13,000円)(以下、G14/2.5)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)

2010年にPANASONIC DMC-GF2とのキット(DMC-GF2C)
として発売された薄型軽量AF単焦点広角レンズ。
実焦点距離は14mmだが、μ4/3機専用レンズである為、
換算画角は28mm相当と、平凡な広角画角となる。

上記、E16/2.8と全く同じ開発コンセプトと思われる
レンズであり、つまり初期ミラーレス機のAFの課題を
解消する目的があったと思われる。
(加えて、GF2において「セルフィー」(自撮り)にも
対応しているのも、商品コンセプトの1つだ)

小型軽量で汎用的な広角画角、という意味では良いが、
28mmというのは、ちょっと持ち出す理由には欠ける
画角のレンズかも知れない、つまり標準ズームと
大きな差異が無い為、わざわざ単焦点を持ちだすのか?
という感覚となる。

その心理的課題を解消するには、連続デジタルズーム
機能を持つμ4/3機と組み合わせると良いであろう。
連続で2倍までの画角調整が可能なカメラ設定として
おけば、フルサイズ換算28~56mmの範囲でF2.5通し
の、とても使い易い常用スナップ画角が得られる。


今回使用のDMC-GX7でも、連続デジタルズーム機能は
使えるのだが、操作系が良く無い。
なので、デジタルズーム機能を専用操作子にアサイン
可能なPANASONIC DMC-G5/G6(注:この2機種のみ
それが可能)と組み合わせて使用する事が、本レンズ
G14/2.5において最大のパフォーマンスを発揮できる
状態となる。
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総括的には、あまり特徴の無いレンズである。秀でた
性能も機能も無い。だがまあ必須と言える28mm広角
であるから、μ4/3機ユーザーであれば、何らかの撮影

用途の為に(注:そこはユーザー次第だ)、本G14/2.5
を所有しておくのも悪く無い選択だ。

あ、1点だけ長所があった、本G14/2.5は薄型軽量レンズ
であるので、カメラバッグの隙間に入れておいても、
あるいはボディキャップ代わりに装着しておいても
悪くは無い。(注:パナ社の販促品で、本レンズと同じ
形状のボディキャップ(撮影は出来ない)が存在する)
そうしておけば、交換レンズのハンドリング上の負担が
殆ど無い状態で、いざとなれば広角撮影が可能となる。

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さて、3本目の超広角システム
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レンズは、MINOLTA AF 20mm/f2.8
(中古購入価格 36,000円)(以下、AF20/2.8)
カメラは、SONY α77Ⅱ(APS-C機)

発売年不明、恐らくは1980年代後半頃に発売された、
AF単焦点超広角レンズ。
発売当時は、ズームレンズと魚眼レンズを除き、
ミノルタα用レンズでは、本AF20/2.8が最広角だった
と思われる。


当時の銀塩αレンズでは、超広角画角を得たい場合、
純正の範囲では、かなり高価なAF17-35mm/f3.5Gと、
本AF20mm/f2.8の二択でしか無かった。
(注:銀塩末期においては、TAMRON社との共同
開発と思われる、AF17-35mm/f2.8-4が加わった)

よって中古市場においても、AF17-35mm/f3.5Gは
かなりの高値相場で推移、関連して本AF20/2.8も
高値相場であった事が大きな課題であった。
(つまり、ミノルタαレンズで超広角が欲しければ
いずれかを購入するしか無い訳だ)

ちなみに、値段が高いのは、生産数(販売数)が
少なく、量産効果による価格低減が出来ないからだ。
単なる製造上の都合でしかなく、別に、良い部品を
使っていたり、性能が物凄く高いからでは無い。

だけど、その結果として、高価なこの2種のレンズは
「高価だから写り(性能)が良い(筈だ)」、という
思い込みを、ユーザー層や評論家層に与えてしまい、
これらのレンズの悪評判は、市場において聞く事は
無かった。
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ただ、私としては、本レンズの描写力に関しては
(銀塩時代から長らく使ってはいるが・・) 
「可も無く、不可も無し」という評価点である。

解像感が高いという訳では無いし、最短撮影距離が
短いという訳では無く(最短25cm)、近接撮影で
超広角マクロ的な用法が出来る事も無いし、その際の
ボケ質も(ズームに比べては良いが)特筆するべき
要素も無い。

まあつまり、「普通の(超)広角レンズ」である。
その割に価格や中古相場が高価で、かつ市場での
評判が良い、という事は、個人的には納得が出来ず、
つまり「あまり好きなレンズでは無い」という事態に
陥ってしまっていた。

「値段が高いレンズが、必ずしも良いものでは無い」
という事に気づかせてくれたレンズ群の中の1本でも
あるし、そういう値段が高い(つまり、高付加価値)
レンズは、メーカーも市場(流通)側も、評論家層も
それを高値で購入したユーザー層も、その全てが
「悪い評価をしない」という事に気づかせてくれた
レンズでもある。 つまり、そうした過剰な好評価に
ついては、「売りたい」とか「自慢したい」という
意識が極めて強いから、「公正な評価になっていない」
という事に気づいた次第だ。

「機材を評価するのは、あくまで自分自身である」
という意識を強く持ったレンズの1本である。
さも無いと市場での評判に踊らされてしまうばかりだ。

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さて、4本目の超広角レンズ
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レンズは、SIGMA 14mm/f3.5
(中古購入価格 38,000円)(以下、SIGMA14/3.5)
カメラは、NIKON D300(μ4/3機)

詳細な出自は不明、恐らく1980年代頃に発売の
MF超広角レンズである、銀塩時代の商品であり、勿論、
35mm判(フルサイズ)対応だ。

この1980年代~1990年代のSIGMA製レンズの一部は
現代においては、「経年劣化」が激しいものが多い。

具体的にはコントラストが低下して、特に逆光状態では
フレアっぽく(白っぽく)写り、実用に耐えない。

原因はレンズ内部のクモリであるが、そうなってしまう
のは、カビの発生、コーティングの劣化、バルサム切れ
(注:レンズを貼り合わせている接着剤の劣化)等の
複数の要因が有り得る。

そして本レンズSIGMA14/3.5も、残念ながらそうなって
しまっている。購入時点での1990年代では良く写ったが
2000年代以降、症状が進行して、もう、まともに撮れない。
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上記症状の一部では、レンズ後玉の表面に、びっしりと
白いカビのようなものが発生する場合があり、その際には
後玉の表面を(自力で)清掃すると描写力が復活する
場合がある。だが、レンズ表面ならば良いが、レンズ内部に
なんらかのクモリがある場合には、もうお手上げだ。

なお、(超)広角レンズ等では、レンズの前後から内部を
観察しようとするのは難しい。目視できる範囲が、狭くて
小さいからだ。「バルサム切れ」では、レンズが黄色く
見える場合も多いが、標準や望遠レンズでは発見しやすい
ものの、(超)広角レンズでは、まずわからない。

で、古いレンズの場合、メーカー修理期間は終了している
だろうし、修理専門店に出すのは修理代が高額となる。
この手の故障の自力分解修理を試みるマニアも多いが、
かなりの修理技能や専門工具も必要な為、「失敗した」
という報告も、とても良く聞く。
(まあ、私も何度か挑戦して、上手くいったためしが無い
為に(汗)、もう今では自力修理を試みることは無い)

・・という事で、私の所有範囲でも、SIGMA製を中心に
この手の故障(経年劣化)が起こっているレンズが、
都合5~6本あるのだが、前述の後玉磨きで修復できるもの
以外では、もう、ほったらかしである(汗)

撮影技法上での対策としては、絶対に逆光条件で撮らない事、
これは僅かな逆光でもコントラストの低下が著しいからだ。
これに加えて、PCでのコントラスト調整の編集で多くの場合
は対応可能であるが、著しく撮影条件が制限される事は
間違いない。 

あるいは、コントラストが低下した画像をLo-Fi用途に
用いる事だ。つまり、そうした映像をそのまま、あるいは
適正なエフェクトと組み合わせて、「懐かしい」「レトロな」
「ノスタルジックな」「柔らかな」「陽光の下」「神々しい」
等の映像表現に結び付けてしまう事である。勿論、そうした
被写体を選びながら、光線状態も十分に意識し、さらに
エフェクトやレタッチの要素も考慮して撮影すれば良い。

そういう風に意図的に(確信犯的に)弱点を逆用するスキル
が撮影者側にあるのならば、こうした劣化レンズの使い道は
「無い訳ではない」という事だ。

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では、5本目のシステムだが、こちらは特殊レンズだ。
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レンズは、Space JF7.5M-2 7.5mm/f1.4
(新品購入価格 17,000円)(以下、Space7.5/1.4)
カメラは、PENTAX Q7(1/1.7型機)

2010年代のマシンビジョン(FA)用、メガピクセル対応、
2/3型センサー用MF単焦点広角手動絞りレンズ。
(レンズ・マニアックス第11記事、本シリーズ第1回
記事等で紹介済み)

2/3センサー対応であるので、ケラれずに使用できるのは
PENTAX Qシステム、またはμ4/3機での常時テレコン2倍
モードでしか使えない。

ここでCCTVやマシンビジョンの話をしだすと大幅に
文字数を消費するので割愛するが、上記の過去記事群や
匠の写真用語辞典第3回記事を参照の事。

実焦点距離は7.5mmと短いが、小型センサーで使用の際、
今回母艦としているPENTAX Q7においてはフルサイズ換算
約35mの画角となり、あるいはμ4/3機+2倍テレコンの
場合では、約30mm相当の画角となる。
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ただし、フルサイズ版35mm/F1.4のような多大なボケ量
を得れる訳では無いので、数値スペックだけを見て、

「凄そうなレンズだ」と勘違いする事は禁物だ。

さらには、PENTAX Qシステムでは、MFの精度を高める
事は困難であるので、あまり大口径のまま使うのは難しく、
少し絞って35mm画角でのパンフォーカス気味の準広角
撮影とするのが無難であろう。

また、(最大)解像力は、恐らくは170LP/mm前後は
出ていると思われるが、これも小型センサー専用なので
対応ピクセルピッチは、約3.3μm程度となる。

PENATAX Q7では、ピクセルピッチが1μm台と、とても
狭いので、記録画素数を最低の400万画素程度に留めて
使用する事が望ましい。(それ以上、画素数を高めても
レンズが解像しない。ただし、カメラ内での画素数低減
は、どのような処理をしているか?は非公開である為、
(例:バイリニア縮小とか、ピクセル連結/ビニング等・・)
この措置は、単なる「気休め」に過ぎないかも知れないが
「ベイヤー型配列センサー」では、原理上、フル画素は
補間処理による生成なので、最大解像度では撮らない
事も、基本的な「裏技」であろう)

CCTV/マシンビジョン用レンズは、マニア向けと言うより
専門家向けのシステムであり、この分野に係わる専門的
知識を持っていない限り、使うのは困難だと思う。
一般的には非推奨としておこう。

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では、次のシステム
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レンズは、COSINA 20mm/f3.8 (MC Macro)
(新品購入価格 13,000円)(以下、COSINA20/3.8)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)

本シリーズ第53回記事等で紹介の、1980~1990年代の
MF単焦点超広角レンズ。

フォクトレンダー等のブランドを取得する前のCOSINA銘
の製品であり、ブランドバリューが無い為、低価格帯で
販売する事を目的にローコスト化されたレンズであり、
周辺収差発生等の様々な弱点を持つ。

したがって、それらの弱点を理解し、回避して使えるか
どうか?で、評価が大きく変わるレンズだ。
使いこなせれば「コスパが良い超広角レンズ」となり、
さもなければ「安かろう、悪かろう」となってしまう。

風景等を撮るならば、基本的には、超広角の画角を犠牲に
しても、APS-C機やμ4/3機で用いるのが良いであろう。
逆光にならないように、かつ、やや絞り込んで写す事で
多くの収差や弱点は消える事となる。
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また、近接撮影が可能な長所(最短20cm)を活用すれば、
広角マクロ的なユニークな描写を得る事が可能となる。

周辺画質が気にならないような被写体(例:近接した
1本の花に周辺の背景を取り込んで撮る等)を選ぶ
ならば、絞りを開けて被写界深度を浅くする事を、
収差の低減よりも優先すれば良いと思う。
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同様に、こうした場合に出る、像面湾曲収差等による、
ボケ質破綻(やや、ぐるぐるボケ傾向あり)も、
あまり気にしない方が良いと思う。


さらに、フルサイズ機で使用する場合も、上記と同様に
近接撮影に持ち込む事が有益であろう。画角を生かして
広く風景を撮る等の用法では周辺画質の確保が難しいと
思われるので、そうした際には絞り込む事が必須だ。

色々と用途限定があって面倒なレンズではあるのだが、
ローコストレンズやオールドレンズ等では、どれも似た
ように性能低下を回避する為に、用途が制限される事は
やむを得ない。

ー--
さて、7本目だが、こちらはトイレンズだ。
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レンズは、GIZMON Wtulens 17mm/f16
(新品購入価格 6,000円 マウントアダプター付き)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)

2018年に発売された、MF単焦点パンフォーカス型
超広角(トイ)レンズ。
銀塩時代の富士フイルム社製「写ルンです」から
レンズを取り外してリサイクル(再利用)した(トイ)
レンズである。

GIZMO社の製品ラインナップとして、「写ルンです]の
レンズを1枚使用したものが、「Utulens」であり、
(本シリーズ第21回記事等)
同レンズを2枚使用したものが、本「Wtulens」
そして、あまり流通していないが、他に、KODAK社の
レンズ付きフィルム「スナップキッズ」からレンズを
流用したものが「Kodalens」(未所有)である。

他にも、FUJIのAPSフィルム用「写ルンです」のレンズを
再利用した「Utulens APS」等がある模様だ(未所有)

本レンズの詳細については、本シリーズ第45回記事等
でも紹介しているので、今回は大幅に割愛しよう。
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簡単に総括すると、銀塩時代の「写ルンです」では
フィルムをわざと湾曲して装填する工夫があり、
レンズとフィルムを組み合わせて、収差を減らし
高画質を実現していた。 

本「Wtulens」では、「写ルンです」レンズを2枚
対称配置とする事で、いくつかある収差の内、ある種の
収差はそれで打ち消し合うが、そうならならい収差も
ある。その為に銀塩時代の「写ルンです」には無かった
「(固定)絞り機構」を入れ、その為に本レンズは、
銀塩時代の「写ルンです」に比べ、およそ2.5倍(1段強)
暗い口径比であるF16相当となっている。

2枚のレンズを対称配置する事で、画角は大幅に広角化
した。(銀塩時代の約32mmに対し、約17mm相当)
しかし、超広角に対応する瞳径(有効径)は無い為、
口径食が発生し、撮影画面の「周辺減光」が大きい。

この「周辺減光」は被写体状況とセンサーサイズにより
目立ち方が異なるが、概ね以下の感じだ
1:フルサイズ機ではかなり顕著、実用的にはまず使えない。
2:APS-C機でもはっきりわかる。
  ただ、一般的に「描写表現として利用する周辺減光」
 (つまり、中央に置いた主要被写体に視線を集めて、
  目だ立つようにする効果を得る→TV CM等でお馴染み)
  は、これくらいのレベルなので丁度良いとも言える。
3:μ4/3機で使用すると、あまり目立たない。

あるいは、デジタルズーム機能を併用する事で、撮影前に
周辺減光の度合いを見ながら調整する事が出来る。
勿論、撮影後のトリミング編集で周辺減光を微調整しても
良い。
なお、周辺減光は綺麗に丸型にはならず、四角っぽくなる
場合もある(注:これは製造個体差かも知れない)

それと、本レンズはLマウント(旧ライカマウント、L39)
であるので、マウントアダプターが付属販売されているが
「L→任意のミラーレス・マウントアダプター」を、所有
していれば、どのミラーレス機でも使用できる。だが、
フランジバック長が大きく異なる一眼レフではピントが
合わずに使用しにくい(注:固定焦点パンフォーカス型)

注意点としては、オリジナルLマウント機、すなわち
バルナック型ライカ、1960年代前後の国産レンジ機、
2000年前後のフォクトレンダー製レンジ機、などでの、
使用は推奨されていない。(注:私は試していないので、
具体的に、どんな問題が起こりうるか?は不明)

また、本レンズはヘリコイドを持たない固定焦点式で
あるが、ねじ込みを緩める事で撮影距離を数十cm程度
短縮する事は可能だ。ただし、レンズを緩めると、その後
の「脱落」等の危険性が高い為、あくまで自己責任の範囲
で色々試してみると良いだろう。(注:Lマウント型の
ヘリコイドアダプターの使用とか、M→L変換リングの
使用等も同様、そうした特殊な利用法は全てユーザー側の
自己責任である為、そのリスクを容認できる「マニア層」
以外には完全非推奨である)

総括としては、本「Wtulens」は基本的にはトイレンズ
であるが、さほどの極端なLo-Fi感は無い。
まあトイレンズの入門編として、あるいは、そのユニーク
な出自と合わせてマニアックに使うのが良いであろう。


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さて、8本目のシステム。
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レンズは、OLYMPUS Body Cap Lens BCL-1580 (15mm/f8)
(新品購入価格 5,000円)(以下 BCL-1580)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5Ⅱ LImited(μ4/3機)

2012年発売のμ4/3機専用薄型(ボディキャップ型)
MF広角レンズ。

前述のWtulensのような固定焦点型ではなく、
一応ピントレバーが付いているMFレンズである。

ただ、μ4/3機専用とは言え、実焦点距離はかなりの
超広角レンズであるが故に、被写界深度は深く、
殆どの撮影は、ピントレバー上にあるクリックストップ
位置で、パンフォーカスレンズとして使用する。
近接撮影(注:最短撮影距離は30cm)の場合のみ、
ピントレバーを近接域として撮影すれば良い。
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本レンズは、オリンパスとしては、正規のレンズでは無く
アクセサリー(ボディキャップ)の扱いであり、つまり
普段は、ピントレバーを廻して、レンズバリアーを閉じて
おいてボディキャップとして用い、いざとなれば、そのまま
広角撮影(30mm相当の画角)も出来る、という用法だ。

レンズ構成は、3群3枚、いわゆる「トリプレット」に
近い構成と思われる。この構成は、銀塩時代のコンパクト
カメラ等で良く用いられたものであり、トイレンズ的な
Lo-Fi描写では無く、ちゃんと普通に良く写るHi-Fiレンズ
である。(参考:「トリプレット」は、F8程度に絞れば
普通に写るが、絞りを開けていくと、諸収差が大きく
なったり、あるいは「シャボン玉ボケ」も発生する)

殆どの撮影をパンフォーカス位置でこなせる事から、
その場合はAF/MFは不要で、合焦時間はゼロ秒であるから
使い方によっては、強力な速写(スナップ)カメラには
なるのだが、残念ながら殆どのミラーレス機(μ4/3機)
は起動が遅く(銀塩/デジタル)一眼レフや銀塩レンジ機
ほどの速写(→即時の撮影)性能は得られない。

ただ、その代わり、小型(薄型)軽量のシステムを組む
事が出来、私は良く、OLYMPUS E-PL2(本体317g)や
PANASONIC DMC-GF1(本体285g)といった、軽量μ4/3機
と組み合わせて良く使った。それらの機体での非EVF搭載や
低いAF性能の弱点は、本BCL-1580ではピント合わせが殆ど
不要な為に、まったく課題とならなかったからだ。
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今回、OM-D E-M5Ⅱで使っているのは、上記の旧世代機
には無かったエフェクト(アートフィルター)が搭載されて

いる為、本レンズを、トイレンズ代わりに用いる為だ。
若干の重量アップ(カメラ本体417g)はあるが、本レンズ
を装着し、電池やカードを入れた状態でも、トータルで
銀塩時代のオリンパスOM一眼レフよりも軽い。
(例:OLYMPUS OM-1は、発売当時は世界最小、最軽量の
銀塩一眼レフであったが、それでも本体510g程度だ)

まあ、本BCL-1580も趣味的な要素のとても強いレンズでは
あるが、参考まで。

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、Voigtlander SC SKOPAR 21mm/f4
(新品購入価格 55,000円)(以下、SC21/4)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

2002年に発売のNIKON Sマウント/旧CONTAX Cマウント
兼用、レンジファインダー機用MF超広角レンズ。
(注:例によって「フォクトレンダー」の独語綴りの
変母音の記載は省略している)

当時の(銀塩)中古カメラブームを受けての、旧形式
マウントに合わせて発売された、極めてマニアックな
レンズである。生産数も、800本程度?と、かなり少ない
為に、その後の中古市場で見かけた事は無いレア物である。

私は、Voigtlander BESSA-R2C(2002年、銀塩一眼第28回)
用のレンズとして購入したが、生産数が少ないが故に、
Mマウントでの同一光学系のCOLOR-SKOPAR 21mm/f4(P)
よりも割高であるし、S/Cマウント用である為に、距離計
連動範囲も遠い(本レンズは、0.9m~∞。ちなみに
ライカM用は0.7m~∞)
まあつまり、価格が高い割に、中身が同じ他マウント品
よりも性能が落ちているとう事で、とてもコスパが悪い
レンズではあるが(汗)、SやCマウントに装着可能な
レンズ自体が、種類や流通数が少ないが故に、当時と
しては、やむをえない選択であった。

なお、距離計連動の件だが、L/Mマウント用レンズの
場合は連動範囲を超えて目測近接撮影が出来るレンズも
稀に存在する(例:同社製SWH15/4.5等)のであるが、
S/Cマウントの場合、広角レンズであっても、距離計連動
の制約どおり、最短撮影距離が0.9mとなってしまう模様だ。
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_c0032138_06451596.jpg
この為、本SC21/4の場合「寄れない不満」が、かなりの
撮影技法上の制限となり、大きなストレズになる。

現代的な視点や撮影技法では、全くの実用範囲以下の
レンズである。ましてや「どうしてもこの21/4が欲しい」
と言うならば、現代でも発売が継続されているMマウント版
を買うならば、最短は50cmの仕様であり、依然寄れない不満
は残るだろうが、本レンズよりもずっとマシだと思う。

本レンズは現代となっては。コレクターズアイテムとも言え、
実用目的には、全く推奨しない。

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では、今回の「超広角レンズマニアックス(中編)」は、
このあたり迄で。次回続編記事に続く。


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