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最強100mmレンズ選手権(2)決勝戦

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「最強選手権シリーズ」はレンズ焦点距離毎でのリーグ
対戦で、各焦点距離毎の「最強レンズ」を決定している。
今回は、100mm(級/相当)リーグの決勝戦だ。
本決勝戦には、5本のレンズがエントリーされている。

なお、前記事100mmB決勝戦で取り上げたレンズの中
にも、元々は本決勝戦にノミネートされていたレンズ
もあったが、他のレンズと特性や特徴が被る場合があり、
それらは、やむなく下位のB決勝戦にエントリーする
事となった。

なお、本100mm級決勝戦進出レンズは、100mm~
110mmの実焦点距離を持つ写真用レンズ群であり、
全てフルサイズ(/銀塩35mm判)対応レンズと
なっている。(注:中望遠レンズで、フルサイズ
対応で無い製品は、極めて少ない)

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では、まずは最初の決勝進出100mm(級)レンズ。
_c0032138_17065863.jpg
レンズ名:LAOWA 105mm/f2 (The) Bokeh Dreamer
レンズ購入価格:90,000円(新品)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)

2016年発売の、史上3本目の「アポダイゼーション
光学エレメント」搭載MF中望遠レンズ。
型番の「The」は、出典によりけりで有無が曖昧だ。

過去に特集記事や、特殊レンズ超マニアックス
第0回「アポダイゼーション・グランドスラム編」
等でも多数紹介済みであるので、レンズ自体の
特徴や詳細については、重複する為、割愛する。
_c0032138_17065888.jpg
これを簡単に言えば、「ボケ質に優れたレンズ」
である。これは勿論、「アポダイゼーション光学
エレメント」(以下、APD)を搭載している効果だ。
この機構を持つレンズは、本記事執筆時点では
市場に4機種しか存在せず、上記「グランドスラム」
記事中で全4機種を紹介済みだ。(注:2019年末に
CANONより5機種目のAPD相当のDS仕様レンズが
発売された)


他の3機種のAPDレンズが各々MINOLTA/SONY α(A)、
FUJIFILM X、SONY FEと、ほぼ専用マウントであり、
母艦の種類を選ぶ(制限される)状態であったが、
本レンズは、いくつかの一眼レフ用マウントで販売
されていて、上記以外のマウントのカメラでも、
APDレンズの利用が可能となる。

特に、本レンズをNIKON F(非Ai)マウント版で
購入しておけば、一部の他社デジタル一眼レフや
ほぼ全てのミラーレス機で、マウントアダプターを
介して使用可能だ。
ただし、そうしてしまうと、今度は逆に、NIKON
デジタル一眼レフ(Fマウント)で使用したくとも、
本レンズは非Ai仕様であるが故に、少々使い難い。

NIKONの低価格機(D3000/D5000系列等)では、
まともに使えず、NIKON高級機ではレンズ情報手動
設定を正しく行っても、露出が狂う場合が多々ある。
NIKON(デジタル)一眼レフの中では各種レンズの
互換性(汎用性)の最も高いNIKON Dfであれば、
なんとか使えるのだが・・

まあそれにしても、せっかくNIKON Fマウント版を
買っても、NIKON機で使える環境が限られている、
というのは、ちょっとがっかりだが、それでも、
およそNIKON機以外の全てのカメラで使えるので、
やはりNIKON Fマウント版の購入を推奨する。
_c0032138_17065802.jpg
描写力だが、4機種のAPDレンズは「同等に良好」
という訳では無く、ボケ質以外の基本的な描写力
の部分で差異がある。

最も優秀なのは、MINOLTA STF135/2.8と
SONY FE100/2.8STFであり(いずれも個人評価
データベースの描写表現力評価が5点満点)

FUJI XF56/1.2APDと本LAOWA105/2は、それらに
比べると、やや落ちる印象がある。(評価4.5点)

ただし、いずれも、さすがにAPDレンズであるから
ボケ質には優れているし、個人DBの評価点の差も
微々たるものだ。基本は、その「描写表現力」の
評価が4点以上あれば一般的に不満は無いだろうし、
ましてや、5点満点という高評価得点のレンズは、
私の全所有レンズ数の5%の比率にも満たない
十数本しか存在していないので、相当の高描写力
なレベルのレンズ群である。

本レンズは、LAOWA(Venus Optics社)が、
日本国内市場に参入してきた初期の製品だが、
以降、LAOWAは他の中国製レンズとは異なる市場戦略
として、非常に高性能か、あるいは他に類を見ない
特異なスペックのレンズを多数、開発販売している。
まあつまり、設計技術力が極めて高いメーカーである。
(参考:LAOWAの社長は、元MINOLTA系列の企業での
レンズ設計者だった、という噂を聞いた事がある)

現代の日本でのカメラ・レンズ市場は、縮退して
しまっていて、ユーザー層のニーズも変化している為、
国内メーカーでは、あまり、ユニーク(個性的)な、
あるいは特異な仕様のレンズを発売できない状態だ。

そんな中、LAOWAの製品企画コンセプトはなかなか
光っていると思う。AFレンズこそ存在しないが、
MFでも極めて魅力的な仕様のレンズが多々ある。

その価格は、他の中国製レンズの数倍から10数倍も
高額ではあるが、消費者側から見れば、高価でも
欲しいと思えるレンズが多い。

まあ、これこそが真の意味での「付加価値」であり、
消費者/ユーザーから見た場合の製品の魅力だ。

だが、市場縮退に起因して、現代の国産レンズは
不要なまでの性能を付与し、結果的に、そこで言う
「付加価値」とは、メーカーが値上げをする為の
弁明としか思えないレンズが多々存在する。

それでは「付加価値」とは、メーカー側から見て
「利益そのもの」になるから、消費者側からは
コスパが極めて悪く感じ、「そこに製品の魅力を
感じない」という残念な市場状況であると思う。
(注:これを続けていくと、さらにカメラ・レンズ
市場が縮退してしまう、という危惧が、消費者側
からも強くある。もう、メーカーが事業撤退をしたり、
新製品が際限なく値上げされる状況は見たく無い訳だ)

---
では、次の100mmレンズ。
_c0032138_17071032.jpg
レンズ名:CONTAX Planar T* 100mm/f2 MMJ
レンズ購入価格:106,000円(新品)
使用カメラ:CANON EOS 6D (フルサイズ機)

1980年代後半頃に発売されたMF中望遠レンズ。

現代となっては、もはやCONTAXブランドも存在
せず(2005年に事業撤退)、本レンズを正規に
使える(新しい)デジタル機も存在していない。

ただまあ、Y/C(RTS)マウントレンズは、CANON
EOS EF(一眼レフ)機を始め、多くのミラーレス
機で(アダプター経由で)問題なく利用できる為、
発売後30数年を経過した、セミ・オールドレンズ
ながら、本P100/2は私にとっては現役レンズだ。
_c0032138_17071008.jpg
さて、CONTAXの(RTS)Planarと言うと50mm/F1.4
85mm/F1.4そしてMakro-Planar 100mm/F2.8が
著名かつ人気のレンズ群であったと思う。
(注:限定版Planarが数機種あるが、殆ど投機対象
の商品であり、例外的だし、所有もしていない)

対して、本Planar 100mm/F2は、あまり人気が
高く無い。まあ、それもその筈、大口径中望遠を
狙うならばP85/1.4、マクロが欲しいならば
MP100/2.8を選ぶだろう、何もわざわざ中途半端な
P100/2を選択する購買層は少ない。

まあでも、P85/1.4もMP100/2.8も、どちらも
使いこなしが難しいレンズである。
(両レンズ(注:P85/1.4は、リバイバル品)は、
レンズマニアックス第11/12回、使いこなしが
困難なレンズ特集ランキングで、各、ワースト
4位、5位となっている難しいレンズだ)

つまり、Planarというレンズ構成は、経験上での
話をするならば、確かに高描写力を持つレンズだが、
それは「ピーキー」である。つまり、被写体条件と
機材設定条件が上手く噛み合わない場合、高描写力が
得られないケースが多々ある。

具体的な例を挙げれば、絞り値、被写体距離、
背景距離、背景の絵柄、等の条件が崩れてしまうと、
いわゆる「ボケ質破綻」が起こる、というのが大きな
課題であり、さらにはPlanar系レンズのピント合わせは
難しい。ここについては、これらはMFレンズである為、
使用するシステム(カメラ+レンズ)によっては、
ファインダーやスクリーンのピント精度の低さ、
焦点移動の発生(注:レンズによる)、被写界深度
が極めて浅くなる(レンズ仕様と撮影条件による)、
開放測光時に被写界深度が浅い事に加えて球面収差の
発生等の原因により(レンズによる)ピントの山が
わからず、ピンボケを誘発する。


これらの条件を整えて撮影するのは、撮影者の技能
のみに限らず、偶然的な要素もある為、とても困難だ。

結果、Planar系レンズの歩留まり(成功率)は、
例えば銀塩システムであれば、私の経験上では、
36枚撮りフィルム1本あたりで1枚、つまり3%程度
しか高描写力を発揮できない状態であった。

しかし、同じPlanar系システムでも、本P100/2で
あれば、他のPlanarほどには難しくなく、安定した
歩留まり(成功率)で、高描写力が得られるという
大きな特徴(長所)を持つ。
_c0032138_17071101.jpg
加えて、現代、デジタル時代でのシステムにおいては
銀塩時代と同じレンズを使う場合でも、カメラ側の
性能や仕様が銀塩一眼レフとはずいぶんと異なる場合
もあり、本来それらPlanar系レンズが持つ課題が、
問題点にならないケースすら存在している。


ここの具体例を挙げれば、銀塩(RTS)Planar 85/1.4
は「焦点移動」(開放で測光・合焦し、撮影の為に
自動的に絞り込まれると、絞りの値でピント位置が
変化してしまい、ピンボケになる、という課題)が
発生するレンズだが、これを現代のミラーレス機等に
マウントアダプターを介して装着し、「絞り込み
(実絞り)測光」で使うならば、原理的に焦点移動は
発生せず、かつミラーレス機の高精度ピーキング機能
等を併用すれば、ピント合わせの成功率は、大幅に
向上し、問題にはならなくなる。


余談だが、近代のレンズで、銀塩時代のPlanar系
85mm/F1.4(注:CONTAX RTS P85/1.4そのもの
とは限らない。1980年代以降、P85/1.4と類似の
光学系を持つ他社85mm/F1.4級レンズは複数存在する)

の設計を、2/3程度のサイズにスケールダウンし
APS-C機専用のイメージサークルに合わせて設計された
いわゆる「ジェネリック・レンズ」が複数存在する。
具体的にはsmc PENTAX-DA★55mm/F1.4(2009年)
や、七工匠55mm/F1.4(2019年)等である。

これらの「ミニ・Planar85/1.4」は、銀塩時代の
Planar系85/1.4と同等の高い描写力を持ちながら
も、現代のデジタル・システムにおいて、その
根源的な弱点の多くが封じれらていて、とても
使い易いし、価格も安価である。(七工匠55/1.4
は、1万円台の新品価格で購入する事ができる)
よって、コスパが非常に良く、個人的には、とても
お気に入りのレンズ群だ。
_c0032138_17071536.jpg
余談はさておき、本P100/2だが、前述の銀塩時代
のPlanar系レンズの弱点の殆どは、現代、この
レンズをデジタルシステムで利用する際には消えて
いて、純粋に高い描写力を楽しむ事が可能である。


まあ、だからこそ、並み居る近代/現代強豪レンズに
混じって、本P100/2が、この最強100mm決勝戦に
ノミネートされている訳だ・・・

---
では、3本目の100mmレンズ。
_c0032138_17072036.jpg
レンズ名:SONY FE 100mm/f2.8 STF GM OSS
(SEL100F28GM)
レンズ購入価格:129,000円(中古)
使用カメラ:SONY α6000 (APS-C機)

2017年に発売された史上4本目のアポダイゼーション
光学エレメント搭載AF中望遠レンズ。
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前述の通り、本レンズはトップクラスの高い描写
表現力を持つ。これは本当にトップクラスであり、
現代において「一番写りが良いレンズが欲しい」
というユーザーニーズがあった場合は・・

まあ、そこで被写体の種類とか、どう撮りたい
とか色々あると思うし、それによっても、Bestの
レンズは変わってくるのだが・・ それらの条件
についてあまり特定せず、漠然と「良い写り」
というレンズを推奨するならば、本FE100/2.8STF
は、その最有力の候補となるだろう。
(他の候補は、APO-LANTHER 50mm/F2か?)


初級中級層が期待する「開放からシャープ」という
要素に加え、マニア層や上級層が重視する「ボケ質」
という、両者の要求事項を同時に満たしてくれる
とても希少なレンズが、本FE100/2.8STFであろう。
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心理的な注意点としては、「GM」銘、すなわち
「G Master」と称するハイグレードのラインナップ
に「本レンズが属しているから高画質なのだ」、
という短絡的な理屈は通用しない事だ。


メーカー側が、それぞれ独自の、高性能を示す称号
を付けて販売する事は、まあ、それは確かにレンズ
構成を複雑化したり、高価な部材(非球面レンズや
異常低分散ガラス等)を多用してコストが上がった
レンズではあるのだが、それが直接的に高描写力で
ある事とイコールになる訳では無い。

銀塩時代から現代に至る為、そうした贅沢な設計を
して、高付加価値化(つまりメーカーからすれば、
高価に売る為の弁明である)をしたところで、
その値段に見合う描写力が得られていなかったり、
あるいは、そうした高性能の称号の無い一般レンズに
写りで負けてしまっている場合すら、多々存在して
いた次第だ。

その具体例を挙げる事は可能ではあるが、その
レンズのオーナーにとっては不快であり、感情的にも
受け入れ難い情報であろう。メーカーにとっても、
せっかく高付加価値を謳っているのに、その実態が
たいした事が無い事がわかってしまうのは好ましく
無いであろう。まあ、よって、市場倫理的にも
「高価なだけで描写力が低いダメレンズ」の情報は
流せない状況だ。これは商業的な新製品レビュー等
でも同様であり、高価な新製品が、値段に見合わない
低性能であっても、その(専門)評価者は、倫理
(コンプライアンス)的に、その弱点を強く指摘
する事は許されていない。まあ「逆宣伝」になって
しまったら、メーカーも流通も困るし、消費者層も
混乱するからだ、下手をすれば専門評価者にも、もう
仕事が来なくなってしまう(つまり、誰も得をしない)

だから倫理的には、メーカーが高性能レンズの称号
を与えているならば「さすがGMレンズ、良く写る!」
といった、ありきたりの評価しか有り得ない訳だ。

これは近年に始まった事では無く、銀塩時代から
ずっとそうだった。もう時効だろうが、1975年に
カール・ツァイス社が事業撤退した後「CONTAX」を、
ヤシカ(後に京セラ)が引き継いで、国産CONTAXが
スタートした際(銀塩一眼レフ第5回記事参照)にも
新たに登場した国産RTSマウント用ツァイス銘レンズ
については、雑誌や書籍等での専門評価者においても、
「さすがにツァイス、大変良く写る!」等の評価を
する事しか許されていなかった事であろう。

「世界のツァイス」を否定してしまったら、市場の
倫理が全て崩壊するし、せっかく超高級ブランドが
国産化したのに、そのイメージを低下させてしまう
から、困った事となる。仮に、そういう評価をして
しまった人も袋叩きにあってしまう(汗)だろう。

(ちなみに、そういう時代の著作物等の評価内容を
参照・引用する等も、全く意味が無い。時代背景的に、
ある意味「思想が統制されてしまっていた」とも
言えるからだ。準公式的なサイト等で、「引用文献
があるから、これは正しい情報だ」といったスタンス
が見られるが、元となる情報の信憑性は、全く保証
されていない状態のケースも多々ある訳だ)

つまり、そこには「大人の事情」が存在している。
だから、世の中に流れている情報が全て、客観的で
正しいものであるという保証は、まるで無い。

では、ユーザー/消費者側はどうすれば良いのか?
ここはいつも本ブログで言っているように、ユーザー
個々に確固たる価値感覚を持って、それぞれの機材を
ユーザー自身(あるいは、ユーザーの利用目的に
合わせて)評価しなければならない、ここは鉄則だ。

例えば、本レンズFE100/2.8STFで、私が評価する、
「トップクラスの高描写表現力」を、そのまま
鵜呑みにするのではなく、必ず自身で入手し、これまた
自身で持っているだろう他の高性能と称されるレンズ
と長期に渡り、様々な撮影条件で、厳密な比較をする
必要がある。そうした上で、本レンズが、その評価に
値するレンズかどうかを、ユーザー自身の目で
確かめなければならない。
・・結局、買ってみるまで、わからない訳だ(汗)

「では、買ったら良いものかどうか?を迷っている
 消費者はどうしたら良いのか?」という疑問も
出て来る事であろう。

これについては「あくまで買ってみないとわからない」
が基本であるが、いくつものレンズ等の機材の購入
経験とかレンズ(機材)関連知識がついてくれば、
自然と、レンズ(機材)購入前の段階においても、
その性能や特徴等を予想できるようになって来る。
(それが出来ない場合、近年では「機材の短期レンタル」
という制度も発達してきている。だが、短期間では良く
わからない事も多いと思うので、その利用は良し悪しだ)

したがって、そのレンズ等の価格(や中古相場)と
比較し、そのレンズ等のコスパは推測できる訳だ。
その「コスパ」が自分にとって適正かどうか? 
つまり、自身の利用目的において、その入手価格が
投資に見合う効果や見返りや、心理的満足感を得る
事ができるならば、迷わずその機材は「買い」だ。

レンズ機材(や、あらゆる商品でも同様)を、購入
する事で、不満を持ってはいけない。消費行動は
つまり満足感であるから、「失敗した」「損をした」
等と思ってしまったら、消費行動そのものがストレス
となってしまう。そうならないようにするには、
良く検討し、調べた上で、満足の行く買い物をする事
が必須であろう。

なお、それでも実際のところは「失敗したレンズ」
という買い物は存在している(汗)
これについては、私の場合の心理的な解決方法では
「レンズには必ず長所短所がある、長所を活用し
 弱点を回避して使うのは、ユーザー側の責務だ」
という近年での持論で、この「失敗感覚」を緩和して
いる。

すなわち、「性能が低い、または弱点があるレンズ
(やカメラ)でも、使いようはあるだろう」という
意味である。それをする事で、「無駄な出費とは
ならなかった」という心理に加え、そういう研究や
練習をする事は、ユーザー自身のスキルアップにも
役立つ事だ、だから「良い練習になった」と思えば
その投資は勉強の為、という事で無駄にはならない。
_c0032138_17072769.jpg
さて、色々と長くなったが、本FE100/2.8STFは、
どのユーザー層にも安心して推奨できる高描写力の
レンズである。値段はやや高いし、AF速度や操作性
等に、小さい弱点も持つが、この高描写力の前には、
どうでも良い課題であり、前述のように課題を回避
しながら使うのは、ユーザー側の責務でもあろう。

---
では、4本目の100mm(級)レンズ。
_c0032138_17073075.jpg
レンズ名:NIKON AF-S NIKKOR 105mm/f1.4E ED
レンズ購入価格:148,000円(中古)
使用カメラ:NIKON D5300(APS-C機)

2016年に発売された、AF大口径中望遠レンズ。
「三次元的ハイファイ」の設計思想により
作られた、第二弾(第一弾は、AF-S 58/1.4G)
のレンズである。

「三次元的ハイファイ」について詳しく説明
すると、とても長くなる。いずれ他の記事で
特集を組んで検証する事としよう。
_c0032138_17075781.jpg
さて、なんとも説明しにくいレンズである、
「三次元的ハイファイ」の原理や効能も理解
しずらい。まあそれは、この「技術」は、単なる
ハード(部品)やソフトウェアの技術ではなく、
いわば「設計コンセプト」(思想)であるから、
論理的に説明する術(すべ)が無いのだ。

そして、これはメーカー側からも正確かつ簡便には
市場やユーザー側に説明できていない状態だから、
ますます、本レンズの特徴については、曖昧となる。

まあ、簡単に言えば、ボケ質に配慮したレンズである。
「だったら、アポダイゼーションを使えば良いでは
 無いか」と一部のユーザー層は思うであろう。
・・そう、それは事実だ、単に、そうすれば良い。

でも、もしかするとNIKONでは、そういう風に他社
が先行した技術を採用し「二番煎じ」になる事を
嫌っているのかも知れない。消費者側に技術力や
ブランド力を提示するならば、新技術の採用は
他社に先行する方が、市場戦略的に優位であろう。

・・しかし、別の考え方もある。
アポダイゼーション光学エレメントは、確かに、
二次元的に良好なボケ質を得る事ができる機構だ。

だが、各社のアポダイゼーションレンズの、Webや
カタログ等での写真作例を見るとわかるが、その多く
が、平面的に近い主要被写体が1つ存在し、その他の
部分は全てアウトフォーカス(ボケ部)となっている。
・・で、カタログ等では、「この場合のボケ質が良い」
という説明を行っている訳だ。

まあつまり、「主要被写体を、ハサミで切り取って
背景に貼り付けたような写真」においては、明らかに
アポダイゼーションは最強である。

ただ、実際の被写体は三次元である、そのように、
「ピント面 vs ボケ部」が、オン/オフ、白と黒、
のように、明確に分離されている被写体条件は、
それを意図的に作りださない限り、そう多くは無い。

私も、STFやAPDレンズを持ち出すと、意識的に
そうした「ピント面 vs ボケ部」対比となるような
被写体条件や構図を探し出してしまう。何故ならば
そういう条件で撮ると、「さすがにSTF、凄い!」
という写真が撮れてしまうからだ。

よって、距離差が色々とあるごちゃごちゃした被写体
とか、十分に立体的な厚みがある重厚な被写体等は、
意識的か無意識的か、STF/APDレンズでは撮らない。
そうした「一般被写体」「通常被写体」においては、
必ずしも、さしものSTF/APDでも、その特徴や長所を
最大限に発揮できない場合があるからだ。
_c0032138_17075712.jpg
さて、ここで「三次元的ハイファイ」とは何かを
簡単に説明すれば、上記のような、ピント面から
アウトフォーカス面に、段階的または連続的な距離差
がある、厚みのある(立体的な、三次元的な)被写体
においても、そのボケ質の変化(=「ボケ遷移」と
本ブログでは呼ぶ)の度合いが、スムースである、
という設計思想の事を表す。

「だから何か?」・・と、この思想の恩恵を被写体を
探す条件に適用できない状態だと、ちょっと本レンズ
を使いこなす(活用する)のは困難だと思う。

適切な用途としては、立体的な表現を要求される
人物撮影(ポートレート)に向くとは思うが、
それだけでは無いであろう。

(参考:近年、個人的には「大口径中望遠」と言うと、
すぐに「女性ポートレート用」に短絡的に結びつけて
しまう傾向や風潮を好まない。
あまりにワンパターンだし、そういうレビュー記事等
では、レンズの評価ではなく、モデルさんの値踏みに
なってしまっている。まあ、私と同様な考えの評価者も
銀塩時代には居た模様で、かつて、85mmレンズの撮り
比べ雑誌記事で、鉄道写真を撮影したケースを見た。
しかし、それでは、あまりに個人的な趣味要素が強く、
かつ、遠距離被写体では85mmのボケ質の良否などは
一切わからなかったし、恐らくは雑誌の読者層からも
「何でオネイサンを撮らないのだ?」と不評であった
事だろう。・・このあたりの正解は無いのかも知れず、
何かと専門評価者層も苦労してそうだ・・)

まあ、なかなか使いこなしが難しいレンズである。
これ以上は、本記事では冗長になりすぎる為、
また別記事で詳しく検証する事としよう。

----
次は本記事ラストの100mm(級)レンズだ。
_c0032138_17080192.jpg
レンズ名:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
(注:独語綴りの変母音記載は省略)
レンズ購入価格:138,000円(新品)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)

2018年末に発売された、MF中望遠等倍マクロレンズ。
現状、このレンズはSONY FE(フルサイズ可)の
マウント版のみの発売である。

さて、アポダイゼーション光学エレメント搭載型
レンズが(平面的な)ボケ質を最良にする、究極の
レンズであれば、アポダイゼーションを搭載しない
一般レンズにおいては、近年の(マクロ)アポランター
系レンズの、その高描写表現力は最右翼に位置する。

_c0032138_17080671.jpg
本MAP110/2.5の、個人評価DBでの「描写表現力」
は5点満点、このレベルのレンズは、前述のように
約400本の所有レンズ中、十数本しか存在しない。
ここまで高レベルともなると、あれこれと重箱の
隅をつつくように弱点を探しても無意味であろう。
そういう細かい弱点は気にせず、高い描写表現力を
楽しめば良いレンズである。

ただ、現実的課題としては、価格が若干高価だ。
類似仕様のマクロとして、SIGMA EX105mm/F2.8
であれば、初期型ならば2万円以下程度の中古相場
であり、しかも、そのレンズは本最強100mm選手権
のB決勝戦(前記事)で第3位にランクインした
強者(つわもの)であった。そのレンズが、軽く
6本も買えてしまうのが、本MAP110/2.5の価格帯だ。

ほんの僅かな描写力の差異の為に、数倍にもなる
価格を許容できるか否か? そこが本MAP110/2.5
の最大の課題であろう。

なお、別の問題点を挙げておけば、本レンズの
前機種と言える、MAP125/2.5(2001年)は、
現在レアものとなり、中古相場が18万~20万円も
してしまう程の不条理なプレミアム相場だ。
つまり、「投機対象」となってしまっている訳だが、
そのMAP125/2.5は、決して名玉では無く、むしろ
非常に使い難いレンズ(→レンズ・マニアックス
第12回「使いこなしが困難なレンズ」ランキング
ワースト第1位)である事は、当該レンズの様々な
紹介記事で説明済みだ。
_c0032138_17080602.jpg
本MAP110/2.5の総括であるが、まず高描写力で
あるが価格が若干高価なので、基本はマニア向けだ。
だが、本レンズもいつまでも発売が継続される
訳では無い、いつか生産完了となるだろう。
もし発売期間中に、本レンズの実力値を見抜けず、
買わないでおいて、生産完了後での後年になって
「あのレンズがどうしても欲しい」等と言い出しても、
もはや手遅れだ。
「何故、欲しいならば売っている時に買わないのか?」
という事は、生産完了品を(投機目的等で)譲って
くれ、とか言われた際、必ず厳しく言う内容だ。

----
では、ここから各レンズの個人DB評価総合点を元に、
決勝順位を決定していく事としよう。

1位:4.1点:SONY FE 100/2.8 STF
2位:3.9点:MACRO APO-LANTHAR 110/2.5
2位:3.9点:LAOWA 105/2
2位:3.9点:CONTAX Planar 100/2
5位:3.7点:NIKON AF-S105/1.4

いずれも高得点のレンズが目白押しの状態であり、
全て、名玉または準名玉である(注:本ブログでは
評価総合点が4点を超えると名玉と称している)


このレベルとなると、どのレンズを購入しても、
あまり性能上の不満は感じ難いであろう。
ただ、中には使いこなしが難しいレンズも多いし、
そもそも、MFレンズが半数以上であるから、
「MFで撮る自信が無い」というビギナー層には
推奨しずらいレンズも多い。

また、マニアックで用途を著しく限定するレンズも
多数含まれている事も注意点だ。


それらを総合的に判断し、AFで、被写体汎用性も
極めて高く、高描写力でもあるSONY FE100/2.8STF
が、最強100mm選手権の優勝レンズである事には、
あまり異論が無い事であろう。

なお、2位以下の、どのレンズも悪く無い。
マニア層であれば、どれを入手しても満足が行く
レベルだと思う。
課題としては、いずれのレンズも若干高価であり
どれも個人DBでのコスパ評価点は低い。
よって、あまり自身の用途には合わないレンズを
買ってしまうと、低コスパの弊害がモロに出る。
何に使うか?どう使うか?を吟味して選択する事
が重要だと思う。


---
さて、ここまでで「最強100mmレンズ選手権」での
「決勝戦」記事は終了だ。

次回は「最強レンズ選手権シリーズ」として、他の
焦点距離レンズの対戦を行う予定だ。


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