本シリーズでは、主に本ブログの範囲でのみ使われたる、
あまり一般的では無い写真撮影に用語を解説している。
今回も「補足編」としてテーマを「文化・歴史編」とする、
今回の記事は前記事に引き続き、PartⅢとなる。
なお、ここのところの本シリーズ記事では個々の項目での
解説が長くなりすぎ、項目数が稼げない状態が続いている。
少しづつ各項目の説明文章を減らしていく事としよう。
![_c0032138_18313428.jpg]()
<文化・歴史編 Part3>
★第一次中古カメラブームの終焉
独自用語、独自解釈。
1990年代末を中心に、「第一次中古カメラブーム」が
起こった事は、本ブログでの多数の記事で記載してあり、
カメラ史上での重要な出来事だ。
その概要は、本シリーズ第19回記事(文化・歴史編)でも
解説しているので、興味があれば参照されたし。
![_c0032138_18313418.jpg]()
で、その「第一次中古カメラブーム」だが、そのブーム
に乗っていたのは、殆どがマニア層および投機層であり、
かつ、殆どが男性である。
マニアでは無い一般層や女性もが、カメラブームに影響
されていた事も確かではあるが、実際のところ一般層と
女性は、新品の「高級コンパクト」や「APSコンパクト」
そして稀に新品一眼レフや、ポツポツと出始めたデジタル
のコンパクト機を新品購入する程度であって・・
カメラ店において、古い中古品をゴソゴソと物色したり
「目利き」をしているのは、ほぼ全員が男性で、マニアか
投機層であった訳だ。まあつまり、中古買いは価値判断が
とても難しいので、それに精通していないと、変な商品を
掴まされる。まあ現代では中古カメラでもシステマチックに
購入できるし、中古保証もあるので安全だが、その当時は
「自分の目利きと知識だけが頼り」という状態だったのだ。
ただ、この時代にも稀に女性マニアも居た。私の周囲にも
相当に詳しい(勉強をした)上級マニアと呼べる女性が
居たが、女性が中古店等に入ると目立つのか、好奇の目で
見られたり、周囲のマニア層から、あれこれと薀蓄を吹っかけ
られ「そのカメラは買うな、こっちが良い」など、好き放題
の(思い込みによる)「個人的見解」を押し付けられている
様子も何度か見た事がある。
ただ、マニアのレベルまでは行かない女性層も、男性達が
楽しそうにカメラの話をして売買を行ってる様子を横目で
見て、興味があった事は間違い無いであろう。
当たり前の話だが、女性も写真を撮るし、良いカメラやレンズ
にも興味はあるのだ、ただ、多くの女性では、そこまで写真
という趣味に没頭する事は出来ず(=他にも色々とやりたい
事があるからだ。お洒落もしたいし、グルメも旅行も恋愛も
したいわけだ)・・よって、カメラに関する知識は少ない。
だから中古カメラの売買等に直接手を出す女性も少ない訳だ。
![_c0032138_18313470.jpg]()
その状態がしばらく続いたが、やがて2000年代となると
時代は急速にデジタル化していき、それと同時に第一次
中古カメラブームも急速に終焉していく・・
★女子カメラ(ブーム)
市場用語、一般用語、独自分析。
2000年代初頭、(男性による)第一次中古カメラブームの
衰退と置き換わるように急速に台頭してきたのが、女性層
によるカメラブームである。
「女子カメラ」や「カメラ女子」とも呼ばれ、あるいはその
写真の志向性は「ガーリーフォト」 (Girly Photo) とも、
市場では呼ばれていたが・・
そうなった背景には色々な要因がある。
独自解釈だが、以下、その原因を挙げておこう。
![_c0032138_18313466.jpg]()
1)1990年代後半からのカメラ付き携帯電話の普及により、
女性層が「日常的に写真を撮る」事への興味と習慣が出来、
その流れで本格派カメラにも興味を持った。
2)1996年のAPS(IX240)フィルムの発売により、DPE店に
自動現像機(QSS)が導入され「0円プリント」が始まった。
同時に当時の女子高生の間で「レンズ付きフィルム」が
ブームとなる(=現像代が安価だから)
その世代が、2000年代に社会人となり、収入が出来て
本格的に写真を始める事となる。
3)上記1,2の理由から2000年代に「日常写真」の文化が始まり、
「それだったら自分でも撮れそう」という意識が広まる。
(注:1990年代では高価な機材を用いた、非日常的な
「Hi-Fi」写真が主流であった)
4)銀塩カメラの時代が去り、銀塩機材が安価になりつつあった。
5)銀塩写真機材の中でも、さらに安価な「トイカメラ」の、
市場での流通が始まった
6)インターネットの普及から、初期のSNSが生まれ、女性は
他者とのコミュニュケーションの一環として、それを利用
するようになった(=おしゃべりがしたい、友達が欲しい)
7)いつの時代でも「自分らしさ」の構築やそのアピールに悩む
女性は多く、写真という「映像」でそれを表現しようとした。
8)上記SNSの普及で、写真を不特定多数に発表する場が出来た。
(=「映像コミュニケーション」が生まれた。それ以前の時代
では、写真の発表の場は、コンテストか展示会しか無い)
9)男性中心の中古カメラブームを羨ましく思っていた。
中には周囲のカメラ好き男性に影響を受けた女性も多かった。
10)女性向けの写真教室がいくつか出来た。
11)女性向けの写真雑誌がいくつか刊行された。
(注:上記10,11は、ブームになったからニーズが出来た、
つまり”鶏が先か卵が先か?”という話にもなる)
12)市場により、意図的に「女子カメラ」ブームが演出された。
又は、そこに新規購買層を求めようとした市場戦略であった。
![_c0032138_18314442.jpg]()
・・という訳で、この時代(2000年代前半)から、女性が
首から一眼レフを下げていても何も不思議では無くなった。
それ以前の時代では、女性が一眼レフを使っているだけで
周囲から好奇の目で見られたり、面白がって話しかける男性
カメラマンも非常に多かった。まあ、なかなか女性にとって
は、写真という趣味はやりにくい時代であった事だろう。
「女子カメラ」の中でも「トイカメラ」のブーム(上記理由5)
は、一過性に終わったが(原因は本シリーズ第5回記事参照)
通常の写真撮影は、ブームではなく、文化として定着した。
女性の使うカメラは、2000年代後半には(安価になった)
デジタル一眼レフに代替され、さらに2010年代には、小型の
ミラーレス機を用いる事が普通になる。
なお、この傾向は国内のみに留まらず、2010年代後半に
急激に増えた外国人観光客の女性は、たいてい、デジタル
一眼レフかミラーレス機を首から下げて日本観光をしている。
★第二次中古レンズブーム
独自用語。
2008年、初のミラーレス機(μ4/3機)である、
PANASONIC DMC-G1(下写真)の発売と、同時期からの
各種マウントアダプターの市販と普及・・
![_c0032138_18314435.jpg]()
および、2013年、初のフルサイズ・ミラーレス機である
SONY α7/R(下写真はα7)の発売により・・
![_c0032138_18315123.jpg]()
それらの理由で、この時代に、古今東西のほぼ全ての交換
レンズが、デジタル(ミラーレス機)で使用可能となった。
その結果、一時的に、この時代(2010年代前半)において、
オールドレンズのブームが起こっている。
この事を、本ブログでは「第二次中古レンズブーム」と
呼んでいるのだが、このブームは(第一次中古カメラブーム
のようには)マニア層を超えて一般層にまで波及する事は
無かった。
まあ、その理由として最も大きな要因だと考えられる事は、
この時代からデジタル一眼レフやミラーレス機の国内販売台数
が縮小傾向になっていった事がある。まあ、もはや「カメラで
あれこれと遊ぶのは、マニア層だけ」という事なのであろう。
一般的には写真はスマホで撮るか、カメラを買うとしても
レンズ付きのキットを買ってそれで終わり、という時代だ。
これでは、オールドレンズ等に興味を持つ一般層は居ない。
★フルサイズ化元年
独自用語。
ミラーレス機の販売数が、2009年~2013年頃にかけて
爆発的に増加した。対して一眼レフの売り上げは、大きく
右肩下がりとなっていた。
この状態に危機感を覚えた各カメラメーカーは、自社でも
ミラーレス機を開発・発売するとともに、一眼レフには、
ミラーレス機では得られない「差別化要素」を持たせなければ
ならない。おりしもこの時代には、撮像センサーの製造技術が
上がり、歩留まりも向上して、コストダウンが図られた。
そこで、従来よりも安価になった「フルサイズ」(銀塩の
35mm版とほぼ同じ36mm x 24mm程度)の撮像センサーを
用いた「フルサイズ一眼レフ」を2012年頃、各社いっせいに
発売する。
![_c0032138_18315188.jpg]()
具体的にはCANON EOS-1DX,EOS 5D MarkⅢ,EOS 6D
NIKON D4,D800/E,D600,SONY α99等が、
いずれも2012年発売だ。
勿論、それ以前の時代からフルサイズデジタル一眼レフは
存在していたが、高価すぎて一般層が買える価格帯では無い。
上記機種群の中には、発売時の新品本体価格が20万円以下
という一般層でも入手可能な価格帯の機種もいくつか含まれて
いて、その後のデジタル一眼レフのフルサイズ化を加速する
要因となった。この措置により、その時代まで4/3型や
APS-C型以下ばかりであったミラーレス機と、デジタル一眼
レフは、センサーサイズの差異により差別化を行う事ができる。
この2012年を、本ブログでは「フルサイズ元年」と
呼んでいる。
なお、この戦略を実施する為、この当時から「カメラは
センサーサイズが大きい方が綺麗に写る」という常識を、
それまでの時代の「カメラは画素数が多い方が綺麗」という
常識に置き換わるように、メーカーや市場が、その概念を
ユーザーに「植えつける」ような方法論を取った。
一般の初級者層は、それらに乗せられるばかりであり、
2000年代には画素数の大きいカメラを皆が欲しがり、
2010年代ではセンサーサイズの大きいカメラを欲しがった、
ただまあ、フルサイズ機にも様々なデメリットが存在する。
それは非常に長くなるので本記事では割愛するが、例えば
「ミラーレス・クラッシックス第13回 SONY α7」の記事を
参考にしてもらえれば良い。
★メリット関数(レンズ自動設計)
専門用語、独自解釈。
近代においては、(カメラ・レンズ)メーカー等における
交換レンズ(写真用、その他)の設計は、昔のように手計算で
三角関数を求め、光路を沢山、紙に引いて設計するのでは無く、
コンピューターを用いた設計手法が一般的である。
このコンピューターは、一般的なパソコンでも可能であり、
パソコン用のレンズ設計ソフトが(専門的で高額だが)市販
されていたり、メーカーによっては自社で専用の設計ソフトを
開発し、それで自社(または他社からの依頼で)の交換レンズ
の設計を行う訳だ。
![_c0032138_18315157.jpg]()
そうした光学設計ソフトでは、レンズに求める要件、例えば
焦点距離、開放F値、寸法等や、レンズ枚数、求める収差の
レベル(度合い)、使用する硝材の(使用可能な)種類等を
入力しておき、計算を開始すると、どんどんと沢山の光路が
自動的に計算されてPC内に仮想的に引かれていき、その結果
として、そのレンズで、どのような像が結ばれるか?や、
収差がどの程度発生するか等をシミュレートする事ができる。
その際、計算の結果が、どれだけ求める仕様に近いかを表す、
1つの(または複数の)数値が、PC上に表示される。
これを専門的には「メリット関数」又は「評価関数」と呼ぶ。
コンピューターは、この「メリット関数」を少しでも高める
為に、複雑な計算を何万回、何十万回と淡々とこなしていく。
メリット関数を高めていけば、とても良い性能のレンズの
設計が自動的に出来上がる事となる。
後はその設計図を製造部門に送り、ガラス等の材料を設計図
通りに加工して、実際のレンズを製造すればよい。
まあ、製造するのは結構大変だが、設計は殆ど自動だ。
「では、人間(設計者)は何もしなくても良いのか?」と言うと、
そうでも無い。
もし、コンピューターの言うがままに、メリット関数を
どんどんと高める設計を行ってしまうと、高性能ではあるが、
結果的に、とんでもなく複雑なレンズが設計されてしまう。
例えば、50mmや85mmの単焦点レンズなのに、レンズ構成が
旧来の手動設計での5~7枚に対し、10数群10数枚と、
レンズ枚数が増え、ファイルター径も70mm~80mm台
という大型のレンズとなる、当然重量も重く、旧来設計では、
300gや400gといったレベルだった物が、軽く1kgを超える
重量級のレンズとなる。
おまけに、コンピューターは「非球面レンズを使え」
「異常(低)分散ガラスを使え」などと、コストを考えずに
好き勝手な設計を行う。
それらの新素材や新技術は、旧来の普通のガラスレンズよりも、
遥かに高価で、しかも製造面でも作りにくい(コスト高となる)
だから総合的に値段も非常に高くなる。旧来、3~5万円程度で
あった単焦点レンズが、こうした設計手法だと、定価10数万円
となる事が普通だ。
さて、この話を聞いた人は、こういう風に思う事であろう。
「じゃあ、コンピューターに、もっと簡単で安価なレンズを
設計するように指示(パラメーター入力)をすれば良い」
・・・その通りだ。さもないと、コンピューター設計では
どんどんと過剰なまでの高品質なレンズを考え出してしまう。
だから、設計者のやる事は、単にコンピューターの計算を
見守っているのではなく、「いかにバランスの良い設計を
コンピューターに指示できるか?」そこが最大の仕事となる。
まあ、良心的な技術者ならば皆、そう考えるであろう。
エンジニアは皆、「安くて良いもの」を作りたがっている。
ただ、「市場」が、それ(良心的な設計)を許さないのだ。
つまりカメラ市場・レンズ市場が縮退している2010年代から
の世情においては、高いレンズを売って儲けを出さないと
メーカーも流通も商売をやっていけない。
ただでさえ、交換レンズを買う人が大幅に減っているのに、
そこに安くて良いレンズを発売してしまったら、皆、それを
買って満足してしまう。
まだ一眼レフの市場が発展している最中の時代であれば、
さらに、また別の人達が、そうした安価で優秀なレンズを
買ってくれて市場は伸びていく。しかし、現代の市場では
レンズを買う人達が、もはや限られた数しか居ないのだ・・
そうやって2010年代後半からは、性能的には優秀であるが
大きく、重く、高価すぎてコスパが悪いという「三重苦」
レンズが市場に出揃った。
どのレンズがそれだ、とはあえて書かないが、そうした
レンズは全メーカーから沢山発売されているから、マニア層
はもとより、ユーザーの皆が良くわかっている事であろう。
別にそうした高額レンズが悪い訳では無い、絶対性能は
高いし、確かに旧来のレンズより良く写る。
でも、あまりに高価だ。「コンピューター設計」に功罪が
ある事を、財布が軽くなるたびに、何度も考えてしまう。
★段階的性能追加戦略
独自用語。
こちらは簡単な話だ、前記の「フルサイズ元年」以降、
メーカーはカメラに搭載する性能をあえて出し惜しみし、
次の世代の機種で手ブレ補正内蔵や高感度化を実現、
さらに次の世代では高速連写機能を搭載、等
段階的に性能を追加していく市場戦略を行った。
これらは既存技術であり、カメラへの搭載は容易だ、
でも最初の機種に、あれもこれもと性能を「てんこ盛り」
とすると、高価になるだろうし、次の機種では、もう何も
改良の余地が無くなってしまう。
だから、最初の機種ではあえて性能を持たせず、出し惜しみ
して、次の機種で「前機種より、ここが良くなりました」
とアピールし、同時に値上げも行う訳だ。
そうすれば、カタログスペックだけに目を惹かれてしまう
初級中級層においては、旧機種を売って新型機に買い換える
といった事をやってくれ、メーカーや市場は潤う訳である。
ここも結局、何度も書いているカメラ市場縮退を理由とし
カメラを買ってくれる人が減ったから、同じ人達に何度も
カメラを買ってもらわないとならない訳である。
(まあ、現代の「アイドルビジネス」と同等の手法だ)
さもないと、新型機が売れず、メーカーが商売をやって
いられなくなる。
ちょっとイヤらしい市場戦略であるが、新機種を買うか
買わないかは、あくまで消費者個々の選択であろう。
まあ、私としては(以前から何度もあったように)また
メーカーが撤退してしまうのは、カメラの選択肢が減り、
保有レンズ資産が使えなくなるので困った事になる。
それに新機種が出ると、買い換える人達が出て旧機種が
中古市場に溢れ、かつ相場も急速に安価となる。
個人的には旧型機でも実用上においては何ら問題無いので、
それは歓迎する傾向である。
だから、イヤらしい販売戦略であろうがなかろうが、
ビギナー層等には、せっせと高価な新型機を買って貰って
メーカーや流通市場や潤してもらいたい訳だ。
無駄に金を使っている行為だと感じるか否かは、あくまで
ユーザー個々の価値感覚や判断力に依存する話だ。
★高付加価値化戦略
独自用語。
こちらも本ブログでは何度も説明している事だ。
簡単に言えば、2010年代からカメラやレンズの市場は縮退
している(=販売数が伸びない)為、製品の個々の価格を
上げるしかない。
が、単純に値上げをしたらユーザー(消費者)層から反感を
買ってしまう為、実際には必要としない過剰なレベルまでの
高性能(「超絶性能」、本シリーズ第1回記事参照)を製品
に与え、それを「付加価値」として、結果的に製品の価格を
上げる戦略を指す。これはカメラでもレンズでも同様だ。
![_c0032138_18315929.jpg]()
そして、この事実をユーザーがどう捉えるか?
(イヤらしいやりかたと思うか?、性能が良くなったならば
価格が上がってもやむないと思うか?)については、前述
の「段階的性能追加戦略」と同様に、ユーザー個々の判断
に委ねられる事となる。
関連項目:本シリーズ第8回記事「高付加価値型レンズ」
★海外新鋭レンズの補足
独自分析。
本シリーズ第10回記事で、海外(アジア圏)新鋭レンズが
2010年代前半より急速に普及している、と書いたのだが、
2010年代後半にはさらにその傾向が加速され、
七工匠、Meike、KAMLAN等から非常に安価なミラーレス機
用の、主に広角系レンズが多数発売されている。
![_c0032138_18315928.jpg]()
これらの中国製等の低価格帯レンズの製造品質はかなり高く、
現代の日本製の普及レンズがプラスチッキーな外装ばかりに
なってしまった事に対して、金属鏡筒でMFでのヘリコイドの
感触に優れるものも多い。
また、その描写力も馬鹿に出来ない。
私がこれらのレンズ構成を調べたり、あるいは描写傾向等から
想像できる事は・・
「これらの中国製等のレンズは、およそ40年前後前の時代の
名レンズ(著名メーカー製含む)の設計(レンズ構成・材質)を、
ほぼそのままに、概ね2/3程度の寸法にダウンサイジングし、
小型軽量化する事が出来る他、小型化により小さくなった
イメージサークルについては「APS-C型以下のミラーレス機用」
という事で対応している。
だから、これらのレンズ群は、昔の名レンズと同じような写り
(描写力)を持っている。なので、写りには、あまり文句が出る
ような状況ではない。
私は、こうした製品を「ジェネリック・レンズ」と呼んでいる。
つまり、医薬における「ジェネリック薬品」と同じ事であり
昔の時代の特許の切れた薬品をそのまま製造する事で、新薬に
係わる膨大な研究・開発・臨床試験費用を削減できる。
それで、医薬の販売時に個々の薬品にかける償却費を不要とし、
安価な薬品が出来る訳だ。
![_c0032138_18320640.jpg]()
何故、こうしたレンズが出来たか? 何処に売るのか?は、
私見だが、概ね2つのターゲット戦略があると思う。
1)日本市場
近年、日本国内のカメラ・レンズ市場は近年急速に縮退した、
結果、レンズ製品も「高付加価値戦略」により、大きく
値上げされてしまっている。
例えば、50mm単焦点レンズが1本約20万円と言われても
そんな高価なレンズはマニアですら買おうとする人は少ない。
現代の日本市場のレンズは、異常なまでの高値だ、それでも
交換レンズを欲しがったり、実際に必要とする人は居る。
だから、そこに低価格帯レンズを販売すれば、市場の弱点を
突いて確実に売れると推察できる。
2)中国・アジア市場
近年、中国やアジア圏から日本への観光客(旅行者)が
非常に増えていたが、若い人達を見ていると、その多くが
日本製ミラーレス機を持っている(海外から持って来る他、
中には、来日後すぐに日本でカメラを購入する観光客も居る)
まあ、つまり中国・アジア圏でもミラーレス機は普及して
いるという事であろう。
・・で、その海外市場において、そこに対して近年の国産の
高付加価値型レンズを販売しようとしても、高価すぎて
売れる筈が無い、それを買えるのは、よほど裕福な人達だけだ。
(まあ、そういう外国人ユーザーも近年増えている模様だが)
だから、海外(アジア圏)市場に対して、より買い易い
価格帯での交換レンズの必要性が生まれたのであろう。
それらが日本市場にまで上陸して来た、という事だ。
まあ、これらはあくまで私の想像による分析だが、概ね遠くは
無い分析だと思う。つまり現代の日本製交換レンズは限界を
超えて高価すぎるのだ、だから市場バランスが、それに反発し、
自然に安価な製品群が受け入れられる状況になって来る。
結果的に、国内メーカーは厳しい状態になるだろう、
でも、それにどう対抗するかも、ここも国内メーカーの試練だ、
レンズが高価すぎるのであれば、より安価で優秀なレンズを
開発して販売すればよい、それが「企業努力」だと思う。
現代の新鋭国産レンズ程の性能であれば、現在の価格の半分
くらいとなれば、コスパは妥当な線に落ち着く。そこまで
値段が下がれば、多少高価であっても海外製低価格帯レンズ
とは、性能差とブランド力の差で勝てるかも知れない。
まあでも、その戦略の選択はあくまでメーカー側の責務だ。
ユーザー側の立場としては、その時々で国産でも外国製でも、
コスパが適正と思う方を買えば良いだけである。
ちなみに、これらの性能差は両方のタイプのレンズを実際に
購入して、使ってみないとわからない事であろう。
安価な方を買って高価な製品を「高すぎる」と文句を言ったり、
高価な方だけを買って安価な製品を「安かろう、悪かろう」と
馬鹿にする事は、どちらも適切では無い。それでは単なる
「思い込み」に過ぎないからだ。機材の評価は、必ず自分で
お金を出し、自分の目で実際に確かめなくてはならない訳だ。
★第三次中古デジカメブーム
独自予想。
これは完全に架空(想像)の話であるが、国産のカメラも
レンズも、これ以上、高付加価値化が進み、すなわち高価に
なりすぎてしまうと、消費者層は一斉に、それに反発し、
昔の時代の相場が安価になったデジタルカメラや旧型レンズを
中古で探すようになっていく可能性がある。
![_c0032138_18320657.jpg]()
その根拠としては、第一次中古カメラブームが起きる直前の
状況を私は知っているからだ。その時代においても、マニア
を始めとする多くのユーザー層は、メーカーが新発売する
機材(特にAF一眼レフ)に、誰も興味が持てず、まるでそれに
反発するかのように、一斉に古い時代の一眼レフやレンズを
買い求めるようになってしまった訳だ。
![_c0032138_18320682.jpg]()
もし、今後「第三次中古デジカメブーム」が起こってしまう
ようならば、それは現代のメーカーが提示する市場戦略
(高価な機材を売って販売数の減少を埋めようとする事)
に対し、”消費者層が反発している”という事となる。
そんな状況になったら、市場はぐちゃぐちゃに混迷するし、
古くて希少なカメラに高値が付き、中古売買で儲けようと
する「投機層」まで多数現れてくる。
![_c0032138_18320768.jpg]()
それはあまり好ましい状況では無いので、そういうブームが
来ないように、と願うばかりである。
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さて、今回の記事はこのあたりまでで。
次回も引き続き補足編となるが、内容は未定だ。
あまり一般的では無い写真撮影に用語を解説している。
今回も「補足編」としてテーマを「文化・歴史編」とする、
今回の記事は前記事に引き続き、PartⅢとなる。
なお、ここのところの本シリーズ記事では個々の項目での
解説が長くなりすぎ、項目数が稼げない状態が続いている。
少しづつ各項目の説明文章を減らしていく事としよう。

★第一次中古カメラブームの終焉
独自用語、独自解釈。
1990年代末を中心に、「第一次中古カメラブーム」が
起こった事は、本ブログでの多数の記事で記載してあり、
カメラ史上での重要な出来事だ。
その概要は、本シリーズ第19回記事(文化・歴史編)でも
解説しているので、興味があれば参照されたし。

に乗っていたのは、殆どがマニア層および投機層であり、
かつ、殆どが男性である。
マニアでは無い一般層や女性もが、カメラブームに影響
されていた事も確かではあるが、実際のところ一般層と
女性は、新品の「高級コンパクト」や「APSコンパクト」
そして稀に新品一眼レフや、ポツポツと出始めたデジタル
のコンパクト機を新品購入する程度であって・・
カメラ店において、古い中古品をゴソゴソと物色したり
「目利き」をしているのは、ほぼ全員が男性で、マニアか
投機層であった訳だ。まあつまり、中古買いは価値判断が
とても難しいので、それに精通していないと、変な商品を
掴まされる。まあ現代では中古カメラでもシステマチックに
購入できるし、中古保証もあるので安全だが、その当時は
「自分の目利きと知識だけが頼り」という状態だったのだ。
ただ、この時代にも稀に女性マニアも居た。私の周囲にも
相当に詳しい(勉強をした)上級マニアと呼べる女性が
居たが、女性が中古店等に入ると目立つのか、好奇の目で
見られたり、周囲のマニア層から、あれこれと薀蓄を吹っかけ
られ「そのカメラは買うな、こっちが良い」など、好き放題
の(思い込みによる)「個人的見解」を押し付けられている
様子も何度か見た事がある。
ただ、マニアのレベルまでは行かない女性層も、男性達が
楽しそうにカメラの話をして売買を行ってる様子を横目で
見て、興味があった事は間違い無いであろう。
当たり前の話だが、女性も写真を撮るし、良いカメラやレンズ
にも興味はあるのだ、ただ、多くの女性では、そこまで写真
という趣味に没頭する事は出来ず(=他にも色々とやりたい
事があるからだ。お洒落もしたいし、グルメも旅行も恋愛も
したいわけだ)・・よって、カメラに関する知識は少ない。
だから中古カメラの売買等に直接手を出す女性も少ない訳だ。

時代は急速にデジタル化していき、それと同時に第一次
中古カメラブームも急速に終焉していく・・
★女子カメラ(ブーム)
市場用語、一般用語、独自分析。
2000年代初頭、(男性による)第一次中古カメラブームの
衰退と置き換わるように急速に台頭してきたのが、女性層
によるカメラブームである。
「女子カメラ」や「カメラ女子」とも呼ばれ、あるいはその
写真の志向性は「ガーリーフォト」 (Girly Photo) とも、
市場では呼ばれていたが・・
そうなった背景には色々な要因がある。
独自解釈だが、以下、その原因を挙げておこう。

女性層が「日常的に写真を撮る」事への興味と習慣が出来、
その流れで本格派カメラにも興味を持った。
2)1996年のAPS(IX240)フィルムの発売により、DPE店に
自動現像機(QSS)が導入され「0円プリント」が始まった。
同時に当時の女子高生の間で「レンズ付きフィルム」が
ブームとなる(=現像代が安価だから)
その世代が、2000年代に社会人となり、収入が出来て
本格的に写真を始める事となる。
3)上記1,2の理由から2000年代に「日常写真」の文化が始まり、
「それだったら自分でも撮れそう」という意識が広まる。
(注:1990年代では高価な機材を用いた、非日常的な
「Hi-Fi」写真が主流であった)
4)銀塩カメラの時代が去り、銀塩機材が安価になりつつあった。
5)銀塩写真機材の中でも、さらに安価な「トイカメラ」の、
市場での流通が始まった
6)インターネットの普及から、初期のSNSが生まれ、女性は
他者とのコミュニュケーションの一環として、それを利用
するようになった(=おしゃべりがしたい、友達が欲しい)
7)いつの時代でも「自分らしさ」の構築やそのアピールに悩む
女性は多く、写真という「映像」でそれを表現しようとした。
8)上記SNSの普及で、写真を不特定多数に発表する場が出来た。
(=「映像コミュニケーション」が生まれた。それ以前の時代
では、写真の発表の場は、コンテストか展示会しか無い)
9)男性中心の中古カメラブームを羨ましく思っていた。
中には周囲のカメラ好き男性に影響を受けた女性も多かった。
10)女性向けの写真教室がいくつか出来た。
11)女性向けの写真雑誌がいくつか刊行された。
(注:上記10,11は、ブームになったからニーズが出来た、
つまり”鶏が先か卵が先か?”という話にもなる)
12)市場により、意図的に「女子カメラ」ブームが演出された。
又は、そこに新規購買層を求めようとした市場戦略であった。

首から一眼レフを下げていても何も不思議では無くなった。
それ以前の時代では、女性が一眼レフを使っているだけで
周囲から好奇の目で見られたり、面白がって話しかける男性
カメラマンも非常に多かった。まあ、なかなか女性にとって
は、写真という趣味はやりにくい時代であった事だろう。
「女子カメラ」の中でも「トイカメラ」のブーム(上記理由5)
は、一過性に終わったが(原因は本シリーズ第5回記事参照)
通常の写真撮影は、ブームではなく、文化として定着した。
女性の使うカメラは、2000年代後半には(安価になった)
デジタル一眼レフに代替され、さらに2010年代には、小型の
ミラーレス機を用いる事が普通になる。
なお、この傾向は国内のみに留まらず、2010年代後半に
急激に増えた外国人観光客の女性は、たいてい、デジタル
一眼レフかミラーレス機を首から下げて日本観光をしている。
★第二次中古レンズブーム
独自用語。
2008年、初のミラーレス機(μ4/3機)である、
PANASONIC DMC-G1(下写真)の発売と、同時期からの
各種マウントアダプターの市販と普及・・

SONY α7/R(下写真はα7)の発売により・・

レンズが、デジタル(ミラーレス機)で使用可能となった。
その結果、一時的に、この時代(2010年代前半)において、
オールドレンズのブームが起こっている。
この事を、本ブログでは「第二次中古レンズブーム」と
呼んでいるのだが、このブームは(第一次中古カメラブーム
のようには)マニア層を超えて一般層にまで波及する事は
無かった。
まあ、その理由として最も大きな要因だと考えられる事は、
この時代からデジタル一眼レフやミラーレス機の国内販売台数
が縮小傾向になっていった事がある。まあ、もはや「カメラで
あれこれと遊ぶのは、マニア層だけ」という事なのであろう。
一般的には写真はスマホで撮るか、カメラを買うとしても
レンズ付きのキットを買ってそれで終わり、という時代だ。
これでは、オールドレンズ等に興味を持つ一般層は居ない。
★フルサイズ化元年
独自用語。
ミラーレス機の販売数が、2009年~2013年頃にかけて
爆発的に増加した。対して一眼レフの売り上げは、大きく
右肩下がりとなっていた。
この状態に危機感を覚えた各カメラメーカーは、自社でも
ミラーレス機を開発・発売するとともに、一眼レフには、
ミラーレス機では得られない「差別化要素」を持たせなければ
ならない。おりしもこの時代には、撮像センサーの製造技術が
上がり、歩留まりも向上して、コストダウンが図られた。
そこで、従来よりも安価になった「フルサイズ」(銀塩の
35mm版とほぼ同じ36mm x 24mm程度)の撮像センサーを
用いた「フルサイズ一眼レフ」を2012年頃、各社いっせいに
発売する。

NIKON D4,D800/E,D600,SONY α99等が、
いずれも2012年発売だ。
勿論、それ以前の時代からフルサイズデジタル一眼レフは
存在していたが、高価すぎて一般層が買える価格帯では無い。
上記機種群の中には、発売時の新品本体価格が20万円以下
という一般層でも入手可能な価格帯の機種もいくつか含まれて
いて、その後のデジタル一眼レフのフルサイズ化を加速する
要因となった。この措置により、その時代まで4/3型や
APS-C型以下ばかりであったミラーレス機と、デジタル一眼
レフは、センサーサイズの差異により差別化を行う事ができる。
この2012年を、本ブログでは「フルサイズ元年」と
呼んでいる。
なお、この戦略を実施する為、この当時から「カメラは
センサーサイズが大きい方が綺麗に写る」という常識を、
それまでの時代の「カメラは画素数が多い方が綺麗」という
常識に置き換わるように、メーカーや市場が、その概念を
ユーザーに「植えつける」ような方法論を取った。
一般の初級者層は、それらに乗せられるばかりであり、
2000年代には画素数の大きいカメラを皆が欲しがり、
2010年代ではセンサーサイズの大きいカメラを欲しがった、
ただまあ、フルサイズ機にも様々なデメリットが存在する。
それは非常に長くなるので本記事では割愛するが、例えば
「ミラーレス・クラッシックス第13回 SONY α7」の記事を
参考にしてもらえれば良い。
★メリット関数(レンズ自動設計)
専門用語、独自解釈。
近代においては、(カメラ・レンズ)メーカー等における
交換レンズ(写真用、その他)の設計は、昔のように手計算で
三角関数を求め、光路を沢山、紙に引いて設計するのでは無く、
コンピューターを用いた設計手法が一般的である。
このコンピューターは、一般的なパソコンでも可能であり、
パソコン用のレンズ設計ソフトが(専門的で高額だが)市販
されていたり、メーカーによっては自社で専用の設計ソフトを
開発し、それで自社(または他社からの依頼で)の交換レンズ
の設計を行う訳だ。

焦点距離、開放F値、寸法等や、レンズ枚数、求める収差の
レベル(度合い)、使用する硝材の(使用可能な)種類等を
入力しておき、計算を開始すると、どんどんと沢山の光路が
自動的に計算されてPC内に仮想的に引かれていき、その結果
として、そのレンズで、どのような像が結ばれるか?や、
収差がどの程度発生するか等をシミュレートする事ができる。
その際、計算の結果が、どれだけ求める仕様に近いかを表す、
1つの(または複数の)数値が、PC上に表示される。
これを専門的には「メリット関数」又は「評価関数」と呼ぶ。
コンピューターは、この「メリット関数」を少しでも高める
為に、複雑な計算を何万回、何十万回と淡々とこなしていく。
メリット関数を高めていけば、とても良い性能のレンズの
設計が自動的に出来上がる事となる。
後はその設計図を製造部門に送り、ガラス等の材料を設計図
通りに加工して、実際のレンズを製造すればよい。
まあ、製造するのは結構大変だが、設計は殆ど自動だ。
「では、人間(設計者)は何もしなくても良いのか?」と言うと、
そうでも無い。
もし、コンピューターの言うがままに、メリット関数を
どんどんと高める設計を行ってしまうと、高性能ではあるが、
結果的に、とんでもなく複雑なレンズが設計されてしまう。
例えば、50mmや85mmの単焦点レンズなのに、レンズ構成が
旧来の手動設計での5~7枚に対し、10数群10数枚と、
レンズ枚数が増え、ファイルター径も70mm~80mm台
という大型のレンズとなる、当然重量も重く、旧来設計では、
300gや400gといったレベルだった物が、軽く1kgを超える
重量級のレンズとなる。
おまけに、コンピューターは「非球面レンズを使え」
「異常(低)分散ガラスを使え」などと、コストを考えずに
好き勝手な設計を行う。
それらの新素材や新技術は、旧来の普通のガラスレンズよりも、
遥かに高価で、しかも製造面でも作りにくい(コスト高となる)
だから総合的に値段も非常に高くなる。旧来、3~5万円程度で
あった単焦点レンズが、こうした設計手法だと、定価10数万円
となる事が普通だ。
さて、この話を聞いた人は、こういう風に思う事であろう。
「じゃあ、コンピューターに、もっと簡単で安価なレンズを
設計するように指示(パラメーター入力)をすれば良い」
・・・その通りだ。さもないと、コンピューター設計では
どんどんと過剰なまでの高品質なレンズを考え出してしまう。
だから、設計者のやる事は、単にコンピューターの計算を
見守っているのではなく、「いかにバランスの良い設計を
コンピューターに指示できるか?」そこが最大の仕事となる。
まあ、良心的な技術者ならば皆、そう考えるであろう。
エンジニアは皆、「安くて良いもの」を作りたがっている。
ただ、「市場」が、それ(良心的な設計)を許さないのだ。
つまりカメラ市場・レンズ市場が縮退している2010年代から
の世情においては、高いレンズを売って儲けを出さないと
メーカーも流通も商売をやっていけない。
ただでさえ、交換レンズを買う人が大幅に減っているのに、
そこに安くて良いレンズを発売してしまったら、皆、それを
買って満足してしまう。
まだ一眼レフの市場が発展している最中の時代であれば、
さらに、また別の人達が、そうした安価で優秀なレンズを
買ってくれて市場は伸びていく。しかし、現代の市場では
レンズを買う人達が、もはや限られた数しか居ないのだ・・
そうやって2010年代後半からは、性能的には優秀であるが
大きく、重く、高価すぎてコスパが悪いという「三重苦」
レンズが市場に出揃った。
どのレンズがそれだ、とはあえて書かないが、そうした
レンズは全メーカーから沢山発売されているから、マニア層
はもとより、ユーザーの皆が良くわかっている事であろう。
別にそうした高額レンズが悪い訳では無い、絶対性能は
高いし、確かに旧来のレンズより良く写る。
でも、あまりに高価だ。「コンピューター設計」に功罪が
ある事を、財布が軽くなるたびに、何度も考えてしまう。
★段階的性能追加戦略
独自用語。
こちらは簡単な話だ、前記の「フルサイズ元年」以降、
メーカーはカメラに搭載する性能をあえて出し惜しみし、
次の世代の機種で手ブレ補正内蔵や高感度化を実現、
さらに次の世代では高速連写機能を搭載、等
段階的に性能を追加していく市場戦略を行った。
これらは既存技術であり、カメラへの搭載は容易だ、
でも最初の機種に、あれもこれもと性能を「てんこ盛り」
とすると、高価になるだろうし、次の機種では、もう何も
改良の余地が無くなってしまう。
だから、最初の機種ではあえて性能を持たせず、出し惜しみ
して、次の機種で「前機種より、ここが良くなりました」
とアピールし、同時に値上げも行う訳だ。
そうすれば、カタログスペックだけに目を惹かれてしまう
初級中級層においては、旧機種を売って新型機に買い換える
といった事をやってくれ、メーカーや市場は潤う訳である。
ここも結局、何度も書いているカメラ市場縮退を理由とし
カメラを買ってくれる人が減ったから、同じ人達に何度も
カメラを買ってもらわないとならない訳である。
(まあ、現代の「アイドルビジネス」と同等の手法だ)
さもないと、新型機が売れず、メーカーが商売をやって
いられなくなる。
ちょっとイヤらしい市場戦略であるが、新機種を買うか
買わないかは、あくまで消費者個々の選択であろう。
まあ、私としては(以前から何度もあったように)また
メーカーが撤退してしまうのは、カメラの選択肢が減り、
保有レンズ資産が使えなくなるので困った事になる。
それに新機種が出ると、買い換える人達が出て旧機種が
中古市場に溢れ、かつ相場も急速に安価となる。
個人的には旧型機でも実用上においては何ら問題無いので、
それは歓迎する傾向である。
だから、イヤらしい販売戦略であろうがなかろうが、
ビギナー層等には、せっせと高価な新型機を買って貰って
メーカーや流通市場や潤してもらいたい訳だ。
無駄に金を使っている行為だと感じるか否かは、あくまで
ユーザー個々の価値感覚や判断力に依存する話だ。
★高付加価値化戦略
独自用語。
こちらも本ブログでは何度も説明している事だ。
簡単に言えば、2010年代からカメラやレンズの市場は縮退
している(=販売数が伸びない)為、製品の個々の価格を
上げるしかない。
が、単純に値上げをしたらユーザー(消費者)層から反感を
買ってしまう為、実際には必要としない過剰なレベルまでの
高性能(「超絶性能」、本シリーズ第1回記事参照)を製品
に与え、それを「付加価値」として、結果的に製品の価格を
上げる戦略を指す。これはカメラでもレンズでも同様だ。

(イヤらしいやりかたと思うか?、性能が良くなったならば
価格が上がってもやむないと思うか?)については、前述
の「段階的性能追加戦略」と同様に、ユーザー個々の判断
に委ねられる事となる。
関連項目:本シリーズ第8回記事「高付加価値型レンズ」
★海外新鋭レンズの補足
独自分析。
本シリーズ第10回記事で、海外(アジア圏)新鋭レンズが
2010年代前半より急速に普及している、と書いたのだが、
2010年代後半にはさらにその傾向が加速され、
七工匠、Meike、KAMLAN等から非常に安価なミラーレス機
用の、主に広角系レンズが多数発売されている。

現代の日本製の普及レンズがプラスチッキーな外装ばかりに
なってしまった事に対して、金属鏡筒でMFでのヘリコイドの
感触に優れるものも多い。
また、その描写力も馬鹿に出来ない。
私がこれらのレンズ構成を調べたり、あるいは描写傾向等から
想像できる事は・・
「これらの中国製等のレンズは、およそ40年前後前の時代の
名レンズ(著名メーカー製含む)の設計(レンズ構成・材質)を、
ほぼそのままに、概ね2/3程度の寸法にダウンサイジングし、
小型軽量化する事が出来る他、小型化により小さくなった
イメージサークルについては「APS-C型以下のミラーレス機用」
という事で対応している。
だから、これらのレンズ群は、昔の名レンズと同じような写り
(描写力)を持っている。なので、写りには、あまり文句が出る
ような状況ではない。
私は、こうした製品を「ジェネリック・レンズ」と呼んでいる。
つまり、医薬における「ジェネリック薬品」と同じ事であり
昔の時代の特許の切れた薬品をそのまま製造する事で、新薬に
係わる膨大な研究・開発・臨床試験費用を削減できる。
それで、医薬の販売時に個々の薬品にかける償却費を不要とし、
安価な薬品が出来る訳だ。

私見だが、概ね2つのターゲット戦略があると思う。
1)日本市場
近年、日本国内のカメラ・レンズ市場は近年急速に縮退した、
結果、レンズ製品も「高付加価値戦略」により、大きく
値上げされてしまっている。
例えば、50mm単焦点レンズが1本約20万円と言われても
そんな高価なレンズはマニアですら買おうとする人は少ない。
現代の日本市場のレンズは、異常なまでの高値だ、それでも
交換レンズを欲しがったり、実際に必要とする人は居る。
だから、そこに低価格帯レンズを販売すれば、市場の弱点を
突いて確実に売れると推察できる。
2)中国・アジア市場
近年、中国やアジア圏から日本への観光客(旅行者)が
非常に増えていたが、若い人達を見ていると、その多くが
日本製ミラーレス機を持っている(海外から持って来る他、
中には、来日後すぐに日本でカメラを購入する観光客も居る)
まあ、つまり中国・アジア圏でもミラーレス機は普及して
いるという事であろう。
・・で、その海外市場において、そこに対して近年の国産の
高付加価値型レンズを販売しようとしても、高価すぎて
売れる筈が無い、それを買えるのは、よほど裕福な人達だけだ。
(まあ、そういう外国人ユーザーも近年増えている模様だが)
だから、海外(アジア圏)市場に対して、より買い易い
価格帯での交換レンズの必要性が生まれたのであろう。
それらが日本市場にまで上陸して来た、という事だ。
まあ、これらはあくまで私の想像による分析だが、概ね遠くは
無い分析だと思う。つまり現代の日本製交換レンズは限界を
超えて高価すぎるのだ、だから市場バランスが、それに反発し、
自然に安価な製品群が受け入れられる状況になって来る。
結果的に、国内メーカーは厳しい状態になるだろう、
でも、それにどう対抗するかも、ここも国内メーカーの試練だ、
レンズが高価すぎるのであれば、より安価で優秀なレンズを
開発して販売すればよい、それが「企業努力」だと思う。
現代の新鋭国産レンズ程の性能であれば、現在の価格の半分
くらいとなれば、コスパは妥当な線に落ち着く。そこまで
値段が下がれば、多少高価であっても海外製低価格帯レンズ
とは、性能差とブランド力の差で勝てるかも知れない。
まあでも、その戦略の選択はあくまでメーカー側の責務だ。
ユーザー側の立場としては、その時々で国産でも外国製でも、
コスパが適正と思う方を買えば良いだけである。
ちなみに、これらの性能差は両方のタイプのレンズを実際に
購入して、使ってみないとわからない事であろう。
安価な方を買って高価な製品を「高すぎる」と文句を言ったり、
高価な方だけを買って安価な製品を「安かろう、悪かろう」と
馬鹿にする事は、どちらも適切では無い。それでは単なる
「思い込み」に過ぎないからだ。機材の評価は、必ず自分で
お金を出し、自分の目で実際に確かめなくてはならない訳だ。
★第三次中古デジカメブーム
独自予想。
これは完全に架空(想像)の話であるが、国産のカメラも
レンズも、これ以上、高付加価値化が進み、すなわち高価に
なりすぎてしまうと、消費者層は一斉に、それに反発し、
昔の時代の相場が安価になったデジタルカメラや旧型レンズを
中古で探すようになっていく可能性がある。

状況を私は知っているからだ。その時代においても、マニア
を始めとする多くのユーザー層は、メーカーが新発売する
機材(特にAF一眼レフ)に、誰も興味が持てず、まるでそれに
反発するかのように、一斉に古い時代の一眼レフやレンズを
買い求めるようになってしまった訳だ。

ようならば、それは現代のメーカーが提示する市場戦略
(高価な機材を売って販売数の減少を埋めようとする事)
に対し、”消費者層が反発している”という事となる。
そんな状況になったら、市場はぐちゃぐちゃに混迷するし、
古くて希少なカメラに高値が付き、中古売買で儲けようと
する「投機層」まで多数現れてくる。

来ないように、と願うばかりである。
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さて、今回の記事はこのあたりまでで。
次回も引き続き補足編となるが、内容は未定だ。