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特殊レンズ・スーパーマニアックス(53)COSINA レンズ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に紹介している。

今回は「COSINA(コシナ) レンズ」という主旨で
COSINA製でCOSINA銘の付いているレンズを5本紹介しよう。
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ご存知のように、現代のコシナは「フォクトレンダー」
及び「カール・ツァイス」の、2大強力ブランドを擁する
高級レンズメーカーだ。だが、コシナがそれらのブランド
銘で製品を展開し始めるのは、1999年以降の話である。

本記事においては、まだ無名であった時代のCOSINAの
1990年代までのレンズ群を紹介する。

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、COSINA 19-35mm/f3.5-4.5 (MF版)
(新品購入価格 9,000円)(以下、COSINA19-35)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第45回記事で紹介以来、
約5年も(汗)時間が空いてしまっていたレンズだが
壊れていた訳では無く、用途が全く無かった為だ。
保管場所の「レンズ沼」(笑)の奥底に沈んでいた為、
今回使用の為に「発掘」するのにも時間がかかって
しまった。
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1980年代前後に製造と思われるMF(超)広角ズーム。
ここで言う「超広角」とは、銀塩時代であれば、私は
「広角端が20mm以下のレンズ(単焦点/ズーム)」と
定義していた。

ちなみに、その後のデジタル時代においては、APS-C機
専用等の広角も増えて来たので上記定義がそぐわなくなった、
よって、本シリーズ第44回「超広角ズーム」編では
「望遠端が30mm以下のズームレンズ」と定義しなおして
いる。

なお、単焦点レンズでの「超広角」は現状は未定義である。
銀塩時代同様に「20mm以下の換算焦点距離となるもの」と
すれば済みそうなのだが、生憎、そうした仕様の単焦点は
現代では機種数が少ない。新鋭の海外製の超広角レンズは、
フルサイズ対応ばかりでも無いので、定義がしずらい。

さて、本COSINA19-35には、後年にはAF版があったと思う、
1990年代にはMF版もAF版も併売されていたと記憶している。
また、TOKINAからもCOSINAによるOEM生産と思われる
全く同一のスペックのレンズが発売されていた。
さらに、TAMRONにも2000年代初頭の短期間だけ販売
された同スペックのAFレンズがある。(Model A10)
これもOEM版であろうか? ・・もはや詳細は不明だ。

私がCOSINAのMF版を選択したのは、勿論価格が安価で
あったからだ。
当時、1990年代のCOSINAは、現代のように有名では無く、
自社ブランド製品は、なんと定価の7割引き(!)とかの
無茶な価格で売られていたのだ。

つまり例えば「定価4万円のところを、今回は特別価格の
9千円ぽっきり、何と77%オフ、この機に1本どうですか?」
という売り方だ。
これは「特売」ではなく、いつでもどのコシナ製レンズでも
そうであった。今回紹介の他のレンズもこの販売方式である。

まあ、この売り方の「仕掛け」は、すぐに気づいた。
つまり最初から、「大安売り」をする為に、定価を高く
書いてあるだけである。元々が1万円程度の販売価格を
想定してコストダウンを図って作られたレンズである。

さしもの技術力のあるコシナでも「ブランド力」が無い為、
こうした困窮の販売戦略を取らざるを得ない。
(注:これは「カメラ事業」に関する部分だけの話だ、
総合光学機器メーカーである「コシナ」は、勿論、
カメラ事業だけで成り立っている訳ではないだろう)

最初からローコストで作るしか無いレンズであったから、
安価な構造にせざるを得ず、性能的にも妥協するしか無い。
同じ生産ラインで作られたレンズでも、カール・ツァイス
の名前がついていれば、60万円以上でも売れる。
その価格差は何と60倍以上だ、同じ「ガラスと金属の塊」
の「工業製品」であるのに、値段がそこまで違うのだ。

だけど、これは消費者の側に100%問題がある話である。
ブランドを信奉しすきる訳だ。

ツァイスの名前がついていれば、それをありがたがって
購入し、”神棚に飾って毎日朝晩拝んでいる”(笑)が・・

「コシナ? なにそれ? 知らん、三流メーカーか?
 7割引きならば、試しに買ってみるか・・ 
 まあ、この安物レンズが良く写るとは思えないけどな」
・・と、ユーザー(購買層)の殆どがそんな調子だ。

もちろん、そんな、何も知らない購買層では、レンズの
パフォーマンスを引き出して使えるだけの技能は持って
いない。結局、購入後においても、以下のような感じだ、
「安かったから買ったが、やはり、たいした写りじゃあ
 なかったよ、安物は買うべきではないな・・」

勿論、これらは酷い誤解あるいは「思い込み」の話である。

(注:これはカメラやレンズが良く売れていた銀塩時代
での話であり、現代ではこの「安売販売戦略」は使えない。
現代では、カメラやレンズが売れず、機材の安売りをして
いたら、購買層はそれを買って、満足して帰ってしまう。
だから、量販店や中古店では最初から高価な物しか店頭
には置かず、店員に聞いても、
「一番安いレンズ? ああ、この5万円のものですよ。
 しかし、こっちの10万円の方が遥かに良く写りますよ。
 今ならば2割引! 8万円でどうですか?」
と、店舗側の売りたい高額商品の購買に誘導されてしまう)

・・で、コシナの真の実力値を知っていたのは、
1990年代においては、中上級マニア層だけであった。

この時代のコシナ製レンズは性能はそこそこで、価格が安価
であったから結果的にコスパがとても良く、一部のマニア層
には大歓迎された。この時代に複数のコシナ製レンズを購入
している人は、つまり、上記の「安売り戦略」の真意を見抜き
それを使いこなせる(または、使いこなそうと努力する)
意識の高いユーザー層であった訳だ。
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さて、本レンズの購入動機であるが、OMシステムでの
広角の穴を埋める為のものである。この話は長くなるので、
詳しくは後述するが、まあ、簡単には、銀塩時代において
OM純正の広角が入手しずらかった(価格、種類、中古流通)
為の、代替措置としてのレンズだ。

長所であるが、コスパが高い実用レンズである事。
ただし、写りは毒にも薬にもならない、という感じであり
「とりあえず広角画角で写せます」という程度である。

だがまあ、これは購入目的どおりで、これで問題は
なかった、実際の用途は、荷物をあまり持てない小旅行等
での記念撮影程度であったのだ。

弱点であるが、最短撮影距離が極めて長い50cmであり、
現代的な広角撮影技法が一切使えない。
まあつまり、中遠距離被写体を平面的に撮る「記念撮影」
専用用途となってしまう、という事だ。

後年に気づいた事は、「なるほど、こういう風にして
レンズのコストダウンを実現するのか」という事実だ。
ここで近接撮影を可能とする構造とすると、画質を維持する
レンズ構成や内部機構等が、もっとずっと複雑化してしまう。
そうなると当然コストアップし、「安売り戦略」が不可能に
なってしまう訳だ。

同時に気づいた事は、「さすが、コシナは高い技術力が
あるOEMメーカーだなあ・・ 要望があれば、1万円から
60万円まで、どんな価格帯のレンズであっても、それに
応じて、簡単に設計して作ってしまう」という事であった。

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さて、2本目のレンズ。
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レンズは、COSINA 20mm/f3.8 (MC Macro)
(新品購入価格 13,000円)(以下、COSINA20/3.8)
カメラは、FUJIFILM X-T10(APS-C機)

ハイコスパレンズ・マニアックス第11回記事等で紹介の
1980~1990年代のMF単焦点超広角レンズ。

さて、本レンズも何度か紹介しているので、解説は
大幅に割愛しよう。
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注意点としては、MACRO表記はあるものの(注:資料に
よりけり)さほど寄れる仕様ではなく、最短撮影距離は
20cmと、焦点距離10倍則の通りである。
また、周辺画質が低い為、超広角画角を犠牲にしても
APS-C機以下のセンサーサイズで用いるのが賢明な用法
であろう。

他には特に課題があるレンズでは無いと思う。コスパが
良い超広角レンズとして、銀塩MF時代での2マウントで、
2本所有している。

では、ここで、前述の「ユーザー側・ラインナップ」の
話を続ける事とする。

1990年代、私は各社のMF銀塩一眼レフを所有していて、
各機を使っていたが、当時はマウントアダプターも殆ど
存在していなかった為、各々のマウントで、レンズを
広角から望遠まで揃えないと、各カメラを実用的に使えない。
よって、各マウントで数本~十数本の単焦点が、合計では
何十本ものレンズが最低限必須となるのだが・・

当時から各社のカメラには、それぞれ長所 短所がある事は
気づいていて、逆に言えば、そのカメラ(またはマウント)の
特徴を活かすためのレンズのラインナップ(=所有するべき
レンズの焦点距離の構成、本数等という意味)を決めていく
必要があった。

内、OLYMPUSのOMについては、小型軽量である事が大きな
長所である。逆に言えば、OM機に大型のレンズを装着すると
カメラの長所を活かせない事になる。
「よって、OMでのレンズ・ラインナップは広角から中望遠域
までを中心に充実するべきだ」、当時の私はそう考えた。
まあ、幸いにして、間違った考え方では無い。

いつの時代でも、初級中級層というものは、自身による
「思い込み」によって、正論とは言えない機材購買行動に
走ってしまう危険性を抱えている。たとえば、
「OMには広角から望遠までF2のレンズが売られているから、
 性能の優れたそれらを全部揃えるべきだ!」
等という考え方だ。

勿論、とてつもなく高額な出費となり、非現実的であるし
そもそも、F2レンズが常に高性能である訳でもないし、
(本シリーズ第33回OLYMPUS OM F2 LENS編記事参照)
小型軽量のOMとのバランスも悪く、つまりそんな事を
したら、極めて非実用的なシステムとなってしまう。


まあでも、そこまで「思い詰めて」しまう事もありうる
訳であり、事実、私も、この時代「OMヒトケタ機を全て
集める必要がある、何故ならば、これらは天才エンジニア
が心血を注いで作った、まぎれもない名機なのだ!」
という考え方に取り付かれ、実際にもOMヒトケタを
全部集めてしまったのだ(汗)


ところが、全部集めて目的を達成すると、憑き物が落ちた
かのように冷静になる。OM個々の機体の長所のみならず
弱点も色々と見えてくる訳だ。

私の「OM熱」は醒め、デジタル時代に入る頃に、殆どの
機体を処分(譲渡)してしまっていた、まあそれでも
最終機に近い2機種だけは残し、それぞれ「銀塩一眼レフ・
クラッシックス」記事で詳細を紹介済みである。

ただ、それが実用的か否かはともかく「コンプリート願望」
は、マニア層の基本行動原理に近いものあるので、そこは
否定できない。

近年においても「アポダイゼーション」のコンプリートを
目指して、高価なそれをやってしまっているし・・(汗)
(本シリーズ第0回記事参照)

まあ、私は初級中級者での「大三元コンプリート」は否定派
なのだが(=技能レベルと実用性が連携していない為)
逆に、初級中級層から見れば「アポ・・なんとかと言う、
訳のわからないレンズを揃えたいとは、何という変人だ!」
と思われてしまうかも知れない(汗)

で、余談が長くなったが、ここまで紹介のCOSINA 19-35も
COSINA 20/3.8も、OM,FD,MD等のMFマイナーマウントでの
購入である。すなわち、これらのMFマウントは利用者数が
少ない為、メーカー純正レンズで「ユーザー・ラインナップ」
を揃える事が難しい。広角であれば、28mm迄ならば、
純正品が良く流通していたが、それ以下の焦点距離、
すなわち24mm、20(21)mm、17(18)mm、14(15)mm
は、殆ど流通していないか、あっても高価であるか、
はたまた、元々存在していない場合すらある。

販売数の見込みが少なければ、開発・製造経費の償却の
負担により、個々のレンズの販売価格は勿論高くなる。
(=大量生産・大量販売をすれば安価になる、という、
ごく当たり前の製造原理)
別に、性能が高いから値段が高価な訳では無いのだ。

NIKONやCONTAXであれば、ブランド力を持っているから、
これらの(超)広角レンズを高額(例えば10万円とか
20万円とか)でも販売する事ができた。
ユーザー層が「高いから良い物だ」と勘違いするからだ。
だが、他社の純正品では厳しい、誰もそれを購入しない
だろうからだ。

そんな状況を踏まえ、COSINAあるいはSIGMA、TAMRON、
TOKINA、その他のレンズメーカーは、メーカー純正品が入手
しにくい、このあたりの焦点距離のレンズを販売していた。
その全貌は、限りなく記事文字数を消費するので割愛するが、
本ブログでも多数のそうしたサードパーティ製の広角レンズ
(あるいは、広角に限らず、特殊な仕様のレンズ群)を
色々と紹介済みである。
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COSINAにおいてだが、本20mm/F3.8の他、24mm/F2.8
および28mm/F2.8のMF広角が販売されていたと記憶している。
だが、24mmや28mmは各社純正品でもかろうじて入手できた
ので、それらのCOSINA製広角の購入は見送っている。

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さて、次のシステム
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レンズは、COSINA 55mm/f1.2 (MC)
(新品購入価格 17,000円)(以下、COSINA55/1.2)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1(μ4/3機)

ハイコスパレンズ・マニアックス第2回記事や
最強50mmレンズ選手権第7回記事等で紹介の、
1980年代(~1990年代)の大口径MF標準レンズ。

「MC」の表記は、マルチコーティングの意味だと思う。
ただ、この表記は実際のレンズ上では、他の製品名称とは
やや離れた位置に、”申し訳程度”に書かれている。
これはつまり、この時代では、もう多層コーティング仕様は、
当たり前の技術であって、そうで無いレンズ等は、ロシア
(旧ソ連)製の一部を除き、国産では皆無に近い状況であった
からだ。(注:コシナでは2000年代以降に、あえて単層
コートを採用したマニアックなレンズを発売している)

・・まあ、MCは「当たり前すぎる」と言え、単なる”注釈”
として、型番の一部だ、とは、あまり見なしていない為、
本記事や他記事では、COSINAのこの時代のレンズでの
「MC」表記を省略して記載する場合もある。
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本レンズCOSINA55/1.2は、他の今回紹介のレンズとは
ちょっと企画意図が違うと思う。

最強50mmレンズ選手権第7回記事等で紹介しているように
1970年代前後には、各社からF1.2級大口径MF標準レンズ
が発売されていて、これらは価格が高額であった為、
ビギナー層では「憧れはするが、入手できない」という
状況であった。

そのニーズに応える為の55mm/F1.2版の発売である。
例によって定価の7割引販売だが、それでも17,000円
程していた。COSINAにしては、ちょっと高目だが、
憧れの超大口径がこの値段で買えるのは、初級中級層や
初級マニア層にとっては「福音」であった。

ただ、本レンズは「後玉」を見てもらえば分かるが、
それが異様に大きい。この構造が原因であるのか?
他のCOSINAレンズは各社MFマウントで販売されたのに
本レンズは、PENTAX Kマウントのみでの発売だ。

なお、全く同じ仕様でTOKINAあるいはKENKOからも、
55mm/f1.2が発売されていたようにも記憶している。
前述の19-35mmとケース同様にOEM生産であろう、
当時ではTOKINA、COSINA、KENKOは、密接に関係
している状況であったからだ。


ただ、このTOKINA版(やKENKO版)は、現代となって
全く情報が見当たらず、完全な幻のレンズとなっている。
私ですらも、もしかして他社版は存在していなかったのか?
と、自分の記憶を疑うのだが・・(汗) でも一度中古店で
それを見かけ、買おうとして手に取ると、COSINA版と全く
同じように見えたので、その購入を保留した記憶がある。

まあ、そのあたりはあくまで余談だ、実際の本55/1.2の
実用価値(描写力)なのだが・・

最強50mmレンズ選手権第7回記事、あるいは他の記事でも
良く述べているが、MF時代の1970年代前後のF1.2級大口径
標準は、ともかく写りが悪い。何故こんな写りが悪いレンズ
を販売するのか? ・・と言えば、1960年代頃に各社の
間で「大口径化競争」が起こってしまっていて、より明るい
レンズを発売しないと、”技術力の無いメーカーだ”と
思われてしまったからである。

だから各社は無理をして、実用性能に満たない超大口径レンズ
を色々と発売していた訳である。勿論、無駄な開発競争であり、
性能の悪いレンズを発売したら、その方が、むしろメーカーの
技術力への不信感に繋がってしまう。よって、ほどなくして
この大口径化競争は終息した。

まあ、2000年代の「高画素化競争」や、2010年代での
「超高感度化競争」と同じ話である。実用性能を超える
無理な開発競争は、必ずどこかで終焉を迎えてしまう。
_c0032138_19352606.jpg
本COSINA55/1.2も諸収差の発生が抑えきれておらず
実用的な標準レンズであるとは言い難い。
ただまあ、これは各社F1.2級標準で全て同じ状況である。
性能の低いレンズを、高額に買う意味は殆ど無いが、
まあ、それにしても、解像感が低く、ボケ質が悪く、かつ
逆光耐性も相当に低いという、これらのレンズの描写傾向は、
「オールドレンズらしい」とマニア層には好まれる場合も
多々ある。
まあ、高価で買ってしまった事への「正当化」の弁明なの
かも知れないが、なんとも人間の心理は複雑だ。

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では、4本目のコシナレンズ、こちらはマクロだ。
_c0032138_19353236.jpg
レンズは、COSINA (MC) MACRO 100mm/f3.5
(新品購入価格14,000円)(以下、COSINA100/3.5)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

本シリーズ第20回記事「平面マクロ編」等で紹介の、
恐らくは、1980~1990年代頃のMF中望遠1/2倍マクロ。
例によって、この時代のコシナ銘レンズは、どれも、今と
なっては情報も殆ど無く、詳しい出自は「霧の中」だ。

「平面マクロ」編で紹介しているくらいなので、
解像感(解像力)を優先的に設定した、1970年代風の
設計コンセプトのマクロレンズだ。

様々な記事で説明しているように、まだコピー機が普及して
いない時代においては、マクロレンズは「資料の複写」の
用途としてが主目的であったから、平面被写体での解像力の
向上や歪曲収差の低減を目指して設計されていたが・・・
この特性は、一般的立体被写体には、ボケが固くなったり、
ボケ質が破綻するなどで、やや向かない。
_c0032138_19353249.jpg
1980年代位からのコピー機の普及に合わせて、各社
マクロレンズは「一般写真用途」への特性の転換を図るが、
まだ1980年代でのMFマクロでは、バランスの良い設計には
至っていない。ようやく1990年代の完全AF時代に入って
マクロレンズの性能は大きく向上している。

基本的には「等倍か否か?」で、だいたい描写力を見分ける
事が出来、等倍AFマクロ等であれば、現代での一般写真撮影
用途に向く特性となってている。

ただ、描写力が高いレンズが、必ずしも良いレンズだとは
限らない。

私の場合、この旧世代マクロは、多数所有していたものを
デジタル時代に入る頃までに殆ど譲渡・処分してしまって
いた、どれも描写が固くて気に入らなかったからだ。

だが、2010年代に入ってから、それらの数本を再度
購入しなおしている。その「平面マクロ」の描写特性は
現代となっては異端なだけに、特徴的に思え、むしろ、
それらの個性を強調した用途があるのではなかろうか?
と、考え方が変わってきたのだ。

銀塩時代では光学ファインダーの使用により、平面マクロの
ボケ質の確認や制御は、ほぼ不可能であったのが、ミラーレス
時代での高精細EVFではボケ質に僅かなコントローラビリティ、
つまり「制御できる可能性」が存在する。
それはテクニカルで面白く、エンジョイ度が高まる次第だ。
_c0032138_19353501.jpg
時代の環境にあわせて、レンズに要求される特性も変わると
ともに、それを使うカメラ・システム環境も変わり、そして
ユーザーの意識やニーズも、また変化していくという事だ。
それの典型例が、こうした「平面マクロレンズ」であろう。

なお、本COSINA100/3.5であるが、同等の仕様のマクロ
として他社製品が色々とある、具体的には、TOKINA版(AF)、
YASHICA ML版(MF)、PENTAX FA版(AF)等である。

内、PENTAX FA版のみ未所有だが、どうもこれらのマクロ
は、どれも、殆ど同じ性能であるように感じてしまう。
出自は今となっては不明であるが、当時のCOSINA/TOKINA/
PENTAX/YASHICAあたりは、関係性が強く、光学設計を売買
したか?または、モロにOEM生産していたのではなかろうか?
もはや詳細は不明だが、そうだったとすれば、この設計は
他社でも色々と使われた、ローコストで汎用性が高い設計
だったのかも知れない。

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さて、今回ラストのシステム
_c0032138_19354504.jpg
レンズは、COSINA AF ZOOM 70-210mm/f4.5-5.6 MC MACRO
(ジャンク購入価格 300円)(以下、COSINA70-210)
カメラは、SONY α700 (APS-C機)

レンズマニアックス第29回記事で紹介の、恐らくは
1980年代末頃のAF望遠ズーム。
純然たるジャンク品購入で、とても安価ではあったが、
程度もさほど悪くなく、ちゃんと(?)動作はする。
_c0032138_19354651.jpg
コシナ製のAFレンズは、「数える程しか無かった」と記憶
している。同社の製造形態がMFレンズ向けであるからで、
現代のフォクトレンダーやカール・ツァイス銘の高級レンズ
も、全てがMFレンズである。

本レンズがAFである事についての理由は、想像(類推)では
あるが、同紹介記事で解説している。
それと、本レンズを正しく動作させる為の現代のカメラ側
にも制限がある事(動くのは機種によりけり)も、同記事
で説明済みだ、今回は本レンズのAFが使用できるα700を
母艦としている。

まあ、本記事では、AFであるかどうかよりも、純粋に
描写性能の話をするが・・
で、この時代の望遠ズーム、あるいはこれより少し前の
1980年代前半の各社MF望遠ズーム(概ね望遠端が200mm
位)は、まだ全般的に設計・製造技術が未成熟であった。

中には、そこそこまともに写るものも含まれているが、
それは、メーカーの差異や時代の差異よりも、むしろレンズ
個々の設計による要素に強く依存する模様だ。

その事実は、私は近年この時代(1980年代~1990年代)
のMF/AF望遠ズームをかなり多数購入していて、それらを
個別に試写・評価してわかってきた事である。

多数(数十本)の望遠ズームは、ほとんどがジャンク購入
であり、平均して1000円台で、それらが入手できた。
これらはまあ、「研究用資料」として、そしてレンズの
「弱点回避」の為の「練習用教材」の目的での購入だ。
_c0032138_19354620.jpg
さて、本レンズだが、写りはあまりよろしく無い類だ。
低い逆光耐性によるフレア感と低コントラストが目立ち、
望遠側では諸収差の増大による解像感の低下が起こる。

様々な弱点が顕著であり、色々な弱点回避技法を駆使して
も、限界に達しているレベルであり、実用目的には苦しい。

コシナ製のズームレンズ、ましてやAFレンズは、ある意味
珍しいとは言えるので、単焦点MFレンズに比べて、
「コストダウンの為のノウハウ」が、あまり蓄積されては
いなかったかも知れない。
まあ、このレンズの詳細情報は不明であったが、恐らくは
他のコシナ銘レンズと同様に、「安売り戦略」で販売
されていただろうからだ。ズーム化や、AFを入れれば、
それなりに構造も複雑となり、低価格化が困難となる。

それでも低価格での販売を要求されるのであれば、もう
やむなく性能を妥協せざるを得ない。
性能が悪くなれば、当然ユーザーからの評価も得られない
というジレンマで悪循環だ、ここから抜け出さない限り
コシナはずっと低迷せざるを得ない。

そして、近い将来、カメラはデジタル化する、そうなれば
これまでのコシナの主力であったOEMビジネス、すなわち
他社銘の銀塩MF一眼レフや、各社ブランドのMF(まれにAF)
交換レンズを製造していく訳には行かない、もうどこからも
コシナに銀塩カメラやレンズ製造を依頼する事も、デジタル
時代においては無くなる筈だからだ。

だから、コシナは「ブランド」を強く欲した、ブランド力が
あれば、困窮の「安売り戦略」を取らずとも済む。
でも、自社ブランドは世の中では無名、または知られていた
としても「安かろう、悪かろう」の評価でしか無い。

そこで、コシナは1999年からは「フォクトレンダー」を、
そして2006年からは「カール・ツァイス」の商標使用権を
取得し、それらの有名ブランド銘で、これまでつちかって
きた高い技術力を遺憾なく発揮し、高性能・高額レンズを
やっと堂々と販売できるようになった訳だ。

「要望があれば、1万円から60万円まで、どんな値段の
 レンズでも作れますよ、それがコシナです!」
という技術者達の声が、なんだか様々なコシナ製レンズを
通して聞こえてきそうである。
_c0032138_19355135.jpg
<参照用関連記事>
*本シリーズ第11回:アポランター・グランドスラム
*本シリーズ第19回:国産ツァイスレンズ
*本シリーズ第22回:フォクトレンダー・レンジ機用レンズ
その他、ミラーレス・マニアックス、レンズ・マニアックス
等、多数の記事でコシナ製レンズを紹介済み。

また、銀塩一眼レフ・クラッシクス第18回、第22回、
第25回、第28回、第30回記事等で、コシナ製のカメラを
紹介済み。

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では、今回の「COSINA レンズ編」は、このあたり迄で。
次回記事に続く。

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