Quantcast
Channel: 【匠のデジタル工房・玄人専科】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

特殊レンズ・スーパーマニアックス(52)SIGMA 広角3兄弟

$
0
0
本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に紹介している。

今回は「SIGMA 広角3兄弟」編という主旨だ。
それが何であるかは、追々説明するが、本シリーズでは
最低4本のレンズを掲載する事が通例なので、3兄弟に
加えて、時代の近いレンズを1本加えて紹介しよう。

だたし本記事では、個々のレンズの詳細は、過去の紹介
記事と重複する点もある為に大幅に割愛し、これらの
「広角3兄弟」が生まれてきた時代背景等の歴史的な
内容の記述を主とする。

----
ではまず、最初のシステム
_c0032138_18052635.jpg
レンズは、SIGMA 20mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL (RF)
(新品購入価格 44,000円)(以下、EX20/1.8)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)

2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル兼用の
AF大口径広角単焦点レンズ。
_c0032138_18052686.jpg
まず「SIGMA 広角3兄弟」とは何か? という話であるが
これは、デジタル黎明期にSIGMAより発売された3本の
大口径広角単焦点レンズ群(シリーズ)の事を指す。
なお、SIGMA社では勿論このような呼び方をしておらず、
本ブログ独自の用語である。

具体的な製品名と簡易なスペックは以下の通り。

SIGMA (AF) 20mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL (RF)
 最短撮影距離=20cm 最大撮影倍率=1/4倍、φ82mm
SIGMA (AF) 24mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
 最短撮影距離=18cm 最大撮影倍率=1/2.7倍、φ77mm
SIGMA (AF) 28mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
 最短撮影距離=20cm 最大撮影倍率=1/2.9倍、φ77mm

いずれも発売日は2001年であり、
これらを「SIGMA 広角3兄弟」と(私は)呼んでいる。

なお、SIGMAでは焦点距離と開放F値の表記は「24mm F1.8」
のようなスタイルであるが、ここは各メーカー毎にまちまち
である為、本ブログでの慣習に沿った表記法としている。

それと()内のAFは出展資料によっては省略される事もある。
近年に整備されたSIGMAのWebサイトにおいては、生産完了
製品の一部が載っていて、そこに、このシリーズもある。
そこでは、「AF」表記が無いので、それが正式名称だとは
思うが、そのあたり微妙に確証が無い。どうもSIGMA製品では、
過去の様々な時点で、正式型番が資料毎で異なり、不明瞭な
ケースが多かったのだ。まあ、その為、本ブログにおいても
これらのレンズ群は、十数年前から記事に登場していたが、
いずれも、「AF」型番で表記していた状況であった。
まあ、この機に「AF型番無し」に改める事としよう。

また、「RF」とはリアフォーカス(後群移動式)の事。
だがここも実際のレンズ上にはその記載が無く、不明瞭だ。
発売当時にはRF型番が付いていた記憶は一切無く、後年に
追加されたものであろうか? ここも良くわからない。

「MACRO」表記は一般的な観点での「1/2倍以上」ではなく、
それには至らない。まあ、この時代はまだ、そうした
マクロ表記における厳密性は無い時代であったと思う。
SIGMAでは、1/3倍以上のレンズをMACROと呼んだ模様だ。

それと、SIGMAでは、このシリーズよりも前に、あるいは
紹介レンズによっては後の時代においても、製品仕様が
類似または同一なレンズ製品が存在している場合がある。
よって本記事においては、この時代(2000年代前半)の
紹介レンズ群をEX20/1.8のような省略記号で記載する。

この「省略記号(記法)」は、長いレンズ名を一々全部は
記載しない、という記事執筆・掲載上の便宜上の理由による
もので、まあ、本ブログ独自のものではあるが・・
他の記事も含めたいずれの場合でも「その省略記号があれば、
他の時代や他社のレンズと明確に区別が出来る」(つまり、
この名前が唯一(ユニーク)であり、他とは被らない)
という記号(アルファベット)を、一応選んで記載している。

この省略記法を実現するには、古今東西のあらゆるレンズ名
を知っていなければならない、さもないと、同じ名前が
被ってしまってはいけないからだ。例えばEX28/1.8と書けば、
それが唯一の存在であり、過去のSIGMA AF28/1.8(注:
HIGH-SPEED WIDEと呼ばれた系列製品)とは、明確に区別
できなくてはならない。

でもまあ、実際のところ、全ての交換レンズは数万種類も
あるだろうから、完全に被らない名前を見い出すのは困難で
あるとも言える。まあだから、省略記号(記法)は、その
レンズの紹介記事の中だけに留める事が普通であり、
紹介記事を超えて、いきなり他の記事で「EX20/1.8」の
ような記載を行う事は、できるだけ避けるようにしている。
_c0032138_18052690.jpg
さて、話の途中ではあるが、ここで本EX20/1.8について、
ごく簡単に説明しておく。

特徴(長所)は、大口径F1.8の(超)広角レンズである
発売時にAF20mmレンズでここまでの口径比を持つ物は
他に存在していなかった。
そして、最短撮影距離20cmも、なかなか優秀である。
他社の20mm単焦点レンズの最短は、良くても25cm程度
であった時代である。


で、大口径と近接撮影を組み合わせた「広角マクロ」的な
用法は、それまでの銀塩時代では見た事の無い、独特な、
多大な背景ボケを含んだ広い映像を生み出し、まさしく
それは「衝撃的」ではあった。
_c0032138_18052661.jpg
弱点だが、描写力(特に解像感)が低く、逆光耐性が低い、
ボケ質破綻が出る、そして、大きく重く高価であるという
「三重苦」レンズである事だ。

大きさについては、かなり深刻であり、本EX20/1.8の
フィルター径はφ82mmもある。これも当時では、特殊な
業務用レンズを除いては最大口径に近く、保護フィルター
を入手するだけでも一般品からは選べずに大変であったし
ましてや当時では、φ82mmのND(減光)フィルターを
入手する事も、ほぼ不可能であった。
(これは、ISO100のフィルムを用いたとしても日中では
あまり絞りを開けた撮影が出来ない事を示す。
特に、選んだマウントがPENTAXであったので、良くても
1/4000秒シャッター機だ。これではF2.8以上は開けれない)

そして、大柄で最短撮影距離が短いから、最短WDは
かなり短く、レンズ前数cmとなる、下手をすればレンズ
前玉が被写体にぶつかってしまったり、フードを装着
すると、そこまで寄れなくなってしまう事もある。

まあ、要は、EX20/1.8は、使いこなしが難しいレンズで
あった訳だ。

----
さて、ここから次のレンズとする。
_c0032138_18053651.jpg
レンズは、SIGMA 24mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
(新品購入価格 38,000円)(以下、EX24/1.8)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)

同じく2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル
兼用のAF大口径広角単焦点、準マクロレンズ。
MACROと名がつくのは、最短18cm、最大撮影倍率1/2.7倍
に起因するが、現代の感覚では、1/2倍以上でないと
MACROとは呼びにくい。ただ、APS-C機や、ミラーレス機
のデジタル拡大機能を併用すれば、本レンズでも等倍マクロ

相当程度とする事は実用範囲内である。
_c0032138_18053745.jpg
さて、歴史の話の続きに戻ろう。
ここからは「SIGMA 広角3兄弟」が生まれてきた時代背景
の話である。

2001年という年は、一眼レフにおいて、デジタルへの
転換期ではあるが、まだ主力は銀塩の時代である。

NIKONとCANONからデジタル一眼レフが発売されていたが
EOS D30を除き、いずれも業務用途専用の高額な機体だ。
(参考:デジタル一眼レフ・クラッシックス第23回、
「CANON EOS D30」(2000年)記事参照)

だが、近い将来、すぐに低価格なデジタル一眼レフが
発売される事は誰にでも予想できた。
事実、2003年からそれは始まり、2004年には各社から
一般層でも買える価格帯のデジタル一眼レフが出揃った。
(この為、2004年を「デジタル一眼レフ元年」と定義
している。→デジタル一眼レフ・クラッシックスの
シリーズ各記事参照)

そして、その新発売のデジタル一眼レフは(CANON製の
高価な業務用フルサイズ機を除き)全てがAPS-C型の
撮像センサーを搭載するだろう事も、市場もユーザーも
皆が予想できていた事であった。

ここで、銀塩AF一眼レフ時代の撮影機材を考えてみよう。
幸いにして、NIKON、CANONそして他のメーカーにおいて
も、デジタル化に際してマウントの変更は行われない様子
であった。(注:AF化を行わず、デジタル期から新規の

マウントを採用したCONTAX NとOLYMPUS 4/3を除く)

まあ、1980年代の後半の一眼レフのMF→AF化に際して、
いくつかのメーカーはマウントを変更した事で、それが
既存ユーザー層には、かなり不評であったのだ。
ここでまた同じ過ちを繰り返す事は、まず無い。

で、銀塩AF一眼ユーザーの持つレンズ群だが、まあズーム
が既に主流であろう。その広角端は28mmか良くて24mm
である。また、中古カメラブームの末期でもあったので
マニア層も非常に多い時代だ。単焦点レンズ群を志向する
マニアまたは中上級層も依然多いのだが、それでも単焦点
での最広角レンズは、24mmか良くて20mmである。

一応それ以下に、17(18)mmや14mmの超広角単焦点も
存在していたが、販売数が少ない故に、かなり割高だ。
よほどの用途あるいは志向性が無いと買えるレンズでは無い。

いずれにしても、一般初級中級層では28mmレンズ程度
までが最広角の所有レンズであったと思われる。

さて、ここでデジタルのAPS-C機に買い換えたらどうなるか?
銀塩用レンズがそのまま使える(だろう)事は、大きな利点
ではあるのだが、APS-C機は、およそ1.5倍の換算画角だ。
よって、以下のように画角が変化してしまう。
銀塩28mm→デジタル42mm
銀塩24mm→デジタル36mm
銀塩20mm→デジタル30mm

まあつまり、銀塩ではとても希少な20mm未満の広角レンズ
を持っている場合で、デジタルにおいては、かろうじて銀塩の
28mm以下相当となるが、それ以上の焦点距離では、いずれも
銀塩での準広角~標準画角となってしまう。

すなわち「広角が全然足りないでは無いか~!!」という
ユーザー側での課題(不満)に直面する事となる訳だ。

この課題に応える為、SIGMAでは絶妙な製品戦略を
ここ(2001年)で行った、それが「広角3兄弟」な訳だ。
_c0032138_18053778.jpg
当時はまだ銀塩時代、しかしユーザーの皆は数年後に
デジタル一眼レフを買う気が満々である。
広角3兄弟を買った場合の、銀塩・デジタルでの画角は
上記の一覧表と同じ計算だ、つまりは銀塩では超広角に、
デジタルでは普通の広角レンズとして、両者共用または
用途転換が可能なレンズ群である。

ただまあ、やはりデジタルでは準広角~準標準画角と
なってしまう事は、ユーザーから見れば若干の不満は
残るだろう。だから、そこに「有無を言わせない」為に、
SIGMAでは、当時としては「超絶性能」を2つ、これらの
広角3兄弟のスペックに盛り込んだ。

すなわち1点目は、「開放F1.8の大口径」である。
かつてこのような明るい広角レンズは殆ど存在せず、
あったとしても、同じSIGMAからAF28/1.8(Ⅱ)が
発売されていた程度だ。24mmや20mmでは、F1.8級は
見た事も無いか、又はF1.4級等が稀にあっても、
非常に高価な状況であった。

次いで、超絶性能の2点目だが、これは「近接性能」
である、3兄弟はいずれも最短撮影距離が20cm以下であり、
特に本EX24/1.8は、最短18mで1/2.7倍マクロだ。
これは当時の24mm級レンズでは最高レベルである。

(注:SIGMAの前製品、AF24/2.8も同等の最短18cmだ。
→ミラーレス・マニアックス第26回記事参照。
また、SICOR(サイコール) 24mm/f3.5という、
超マイナーなMFレンズは、16cmの最短を持ち、これが
文字通り「最高」なのだが、描写力が極めて悪い。
→ミラーレス・マニアックス第16回記事参照)

で、「驚愕の大口径F1.8広角」と「驚異の最短撮影距離」
を組み合わせると、銀塩時代においては、誰も見た事が
無かったような「広角で寄って背景をボカす」という
新たな「広角マクロ技法」が、この広角3兄弟によって
もたらされた。

これはかなり衝撃的な出来事であった。私は、その状況
が予想できたので、EX20/1.8とEX24/1.8を発売直後に
新品で購入。早速銀塩撮影に持ち出すと、予想どおり
かつて見たことの無い広角マクロ描写に、「おお!」と
驚きを隠せなかった。
_c0032138_18053734.jpg
さて、ここで本EX24/1.8個別の説明に入る。
過去記事で何度も紹介しているので最小限としよう。
(ちなみに、最も新しい記事は、ハイ・コスパレンズ・
マニアックス第10回記事「AF広角編」であったと思う。
ただし、その記事では、APS-C機で使用している)

長所だが、前述のように、24mm級レンズとして、
トップクラスの最短撮影距離18cmの近接性能である。

弱点としては、解像感がやや甘く、ボケ質破綻が出る。
そして実用上での最大の課題は、逆光耐性の低さだ。
ちょっとした逆光状態で、ゴーストおよびフレアの
発生が著しい。
しかし、ゴーストの発生は、それを上手く逆用すると、
「暑い」「神々しい」「都会的」等の、作画意図を演出
する事も可能である、だからケースバイケースで短所にも
長所にもなりうる特性だ。

高度な撮影技術を持っていれば、ゴーストの発生は意図的に
制御(コントロール)できる。よって、趣味撮影の範囲内
であれば、作画上の必要性に応じて、それを入れたり排除
したりする選択肢は撮影者側に残されている。

むしろ、これより後の時代の広角レンズでは、逆光耐性が
上がりすぎていて、何をやってもゴーストやフレアが
発生しない。それは勿論「描写性能」という視点からは
歓迎できる改善ではあるが、作画表現の意味ではデメリット
になりうる場合もある訳だ。

----
では、ここでまたレンズを交換しよう。
_c0032138_18055484.jpg
レンズは、SIGMA 28mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
(中古購入価格 21,000円)(以下、EX28/1.8)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)

同じく2001年に発売された、銀塩フルサイズ・デジタル
兼用のAF大口径広角単焦点、準マクロレンズ。

こちらの最短撮影距離は20cm、最大撮影倍率は1/2.9倍だ。
_c0032138_18055466.jpg
さて、「広角3兄弟」は、発売時のコンセプトが結構衝撃的
であり、かつその発想は好みであったので、EX20/1.8と
EX24/1.8は、すぐに新品購入したのであるが・・

その際、本EX28/1.8のみは、購入しなかった。
何故ならば旧モデルAF28/1.8(Ⅱ)を愛用していたからだ。
旧モデルは最短が30cmと長いが、小型軽量である。
新型の本EX28/1.8は最短が20cmだが、かなり大型となって
しまい、ハンドリング性能の悪さが予想できたからだ。
まあでも、「いずれ中古が出たら、28mmも買うか」とも
思っていた・・

そして数年後にデジタル時代に突入すると、前述のように
28mmレンズは、42mmと標準画角相当となり、本来の広角
レンズとしての役割を与える事が厳しくなってしまった。

なので、銀塩時代に愛用していたAF28/1.8(Ⅱ)も、
いつまにか出番が無くなり、何かの際に知人に譲渡して
しまっていた。同様に新たにEX28/1.8を買う気も起こらず、
そこから10数年間も、広角3兄弟の長兄(28mm)が欠けた
ままの状態が続いた訳だ。
_c0032138_18055429.jpg
状況が変化したのは、2010年代後半になってからである。
それまで高価すぎたフルサイズ機も、ようやく中古相場が
こなれ、コスパが許容範囲となった事で、いくつかの
フルサイズ機を購入。ただ、これはフルサイズの方が性能的
に優れる、などとは欠片(かけら)も思ってはいない。
私がフルサイズ機を必要とするのは、それでないと描写効果
が十分に得られない特殊レンズ、具体的には、魚眼、シフト&
テイルト、ぐるぐるボケ、等を正しく使う事が最重要の用途
であった訳だ。

でも、その後フルサイズ機を一般的に使うようになって
くると、今度はそれに適した広角画角の優秀なレンズが
必要となってくる。まあ、銀塩時代のAFレンズやMFレンズ
を使えば良いが、さすがに古すぎるケースもある。

また、SIGMAからは新鋭ART Lineのレンズが発売されて
いて、それらは高描写力である事は確かだが、どれも大きく
重く高価な三重苦であり、おまけに、Art 28mm/F1.4の
レンズの発売は遅れに遅れて最後発となった。
そちらの中古相場低下は、なかなか待ちきれず、
・・であれば、と、このEX28/1.8に注目した次第だ。

発売後10数年で、幸いにして中古相場はこなれていた、
性能上の長所も弱点も、他の兄弟レンズを長年使って来た
から、それと同様なものだと推察できるから何も問題無い。
現代においても、まだしばらくは通用するレンズなのだ。

そして同様に、2010年代においては、ミラーレス機および
マウントアダプターの普及により、本EX28/1.8の発売された
時代よりもレンズのマウント汎用性が格段に向上している。

まあつまり銀塩AF時代においては、複数のメーカーのカメラ
を所有して併用する際に、そのマウント毎に、広角から望遠
まで、そしてマクロや他の特殊レンズ等を、各々で揃えて
「ラインナップ」を構成する必要性があった訳だ。
(注:通常「ラインナップ」とは、メーカーの販売する
商品群の種類・数・構成等を示す市場用語であるが、本ブログ
では稀に、ユーザー側が、その使用マウントで揃える複数の
レンズ群についても「ラインナップ」と記載している。
それは、他に代替できる適切な用語が無いからだ。
あえて言えば「所有するレンズ群の種類や数」であろうか)

で、その「ラインナップ」を各マウントできっちり構成
しようとすると、最低でも数十本のレンズが必要となる。
まあ、MF時代であれば、例えばTAMRONの「アダプトール2」
仕様により、SP90/2.5(Macro)を1本持っておけば、
NIKON AiでもCANON FDでも、PENTAX Kでも、以下、
MD、Y/C、OM、AR・・ 等、全てのMFマウントで、同じ
レンズが共用できた事もあったが、AF時代となると、流石に
そうはいかない。


例えば、銀塩EOSに装着可能なレンズは、EFマウント用の
AFレンズしか付かない。
後年には、EOS用のマウントアダプターも色々と入手できる
ようにはなったが、銀塩時代の1990年代ではアダプターの
発売も稀であり、あったとしても結構高価であった(3万円
以上もした)、そして、アダプターを無理して購入しても
勿論AFは効かないし、絞り込んだらファインダーが暗くなって
MFのピント合わも困難となった。そこまでの不便を強いられる
ならば、EFマウント用のAFレンズを買った方が実用的であろう。

それに、様々なメーカーのレンズを購入する事自体にも
マニア的な興味はあるだろう。例えばTAMRON SP90/2.5は、
いくら優秀なマクロだとは言え、いつもそればかりを様々な
マウントで使っているのはワンパターンであるし、そもそも
銀塩一眼レフなる物は、ある意味「フィルムが入っている箱」
にすぎない訳だから、カメラのメーカーを変えたとしても
同じレンズを使っている以上は、そこで撮れる写真に大差が
出る訳では無いのだ。いや、と言うより露出条件を整えれば、
カメラを変えても全く同じ写真が撮れてしまう。

であれば結局、TAMRONの「アダプトール2」も、その高い
実用性に反して、マニアックな視点からは、面白味の無い
ガジェットに過ぎない事もわかってきてしまった訳だ。

なので実際のところは、各(AF/MF)マウントでレンズ群の
ラインナップを揃える事となるから、レンズ購入数は
際限なく増えていく(汗) そういう状況が現代に至るまで
何十年間も続いているから、結局私のレンズ所有数は極めて
多くなってしまっている。

そして、その全てを実用的に使いたい、というのもマニアック
な視点および知的好奇心(≒研究)の気持ちを持っているから
膨大な数のレンズを定期的に試写する。なので、本ブログでは
定期的にレンズ関連のシリーズ記事を掲載しているのだが、
いずれのシリース記事でも数百本のレンズを紹介するため、
記事総数は各数十記事、その試写期間は最低でも2年~3年
を要する事が殆どとなってしまっている。

レンズ所有数が何百本となる上級マニアは、他にも居るとは
思うが、その全てをちゃんと使っているとは、到底思えない。
何故ならば時間も無いし、気力も無いだろうし、評価をする為の
撮影枚数も尋常では無い(私の場合年間20万枚以上にもおよぶ)
一応本ブログでは、マニアの条件を「トリプルスリーの法則」
により、「年間3万枚以上の撮影」を推奨している。
ここもつまり、写真を沢山撮らない限り、レンズの評価等は
出来ないだろう、という話である。厳しい条件だとは思うが、
でも、これは真理であろう。
_c0032138_18055492.jpg
さて、余談が長くなった、本EX28/1.8の総括に戻る。
長所は、高い描写力。従前のAF28/1.8の写りは、もはや
譲渡してしまったので、あまり記憶には残っていないが、
まあ、それよりも向上しているだろう。
特に解像感に優れ、これは現代の視点でも十分に通用する。

短所は、「ありふれた28mmレンズなのに、何故こんなに
大きい!」と悪態をつきたくなる程に大柄な事だ。
そして例によって逆光耐性が低い。とは言え、EX24/1.8
程の、作画に活かせるレベルの強いゴーストは出ないのだが、
稀にちょこんと発生するので、コントローラビリティが低く、
むしろ、やっかいである。

後、本レンズ固有の問題かも知れないが、AF精度が低く、
良くピントを外す。半故障状態かも知れず、出来るだけ
MFで撮るようにしている。SONY α(A)マウントのα
フタケタ機(α77/α99系列等)又はマウントアダプター
を介してミラーレス機で使うならば、ピーキング等の
MFアシスト機能が使え、MF撮影も何ら問題にならない。

----
では、今回ラストのレンズ
_c0032138_18060711.jpg
レンズは、SIGMA (AF) 30mm/f1.4 EX DC HSM
(中古購入価格 27,000円)(以下、EX30/1.4)
カメラは、NIKON D5300 (APS-C機)

2005年に発売された、APS-C機専用AF大口径単焦点
準広角(標準画角)レンズ。(超音波モーター内蔵)

こちらは広角3兄弟では無いが、デジタル時代初期での
ユーザーの意識を変えた、歴史的価値の高いレンズで
あるので、本記事で合わせて紹介しておこう。
_c0032138_18060730.jpg
前述の、2000年代前半の一眼レフのデジタル化で画角が
変わる件だが、SIGMAが想像していた以上に実際の市場の
状況は深刻であった。

2003年から、ぼちぼち普及デジタル一眼レフが発売され、
2004年には各社デジタル一眼レフが出揃うと、当初それを
購入したのは、主に中上級層およびマニア層であった。

そして、彼らは一斉に「これまで使っていた50mm標準
レンズが望遠になってしまい、使い難い!」と言い出した。
まあ、ここには様々な理由(原因)があるのだが、ここで
それを書き出すと限りなく長くなるので、やむなく割愛する。

同じ頃(2003年~2004年)、中古市場において焦点距離
35mmのレンズの「組織的な買占め」が始まった。

APS-C機で約50mmの画角となる35mmレンズを入手すれば
ユーザーは銀塩標準レンズと同様の感覚で写真が撮れるので
文句を言わない。ところが、中古店のどこに行っても
35mmのレンズは1本も置いていないのだ(汗)

たまに出てきてもプレミアム価格で、とんでもない高値
相場となってしまっている。
中には「AFの35mmレンズが高くて買えないから」と、
MFの35mmレンズを買っていく人も現れたが、多くの場合、
MFの(銀塩用)35mmレンズはデジタル機では使えない。

でも、その事がわからずにMF35mmを買った人が多いのか、
あるいは組織的な買占めもまた、わからずにMF35mmを
買い漁ったのか、2005年頃には、中古市場に35mmレンズ
は殆ど見なくなってしまっていた。
_c0032138_18060813.jpg
私は、50mmのレンズが75mm相当画角になる事に、さほど
違和感を持っていなかった、「これは最初から75mmだ」
と思えば問題なかったからだ。また、少し前述したように
様々な焦点距離のレンズを集める習性(笑)があったので、
35mmレンズも多数保有していたから、デジタル機で標準
画角となる組み合わせを実現する事も容易ではあった。

だが他の多くのマニア層は、カメラ本体にのみ興味があり、
一眼レフであれば、50mmレンズだけをセットして保有して
いる場合が殆どであったのだ。またレンジ機でも同様に
50mmか、あるいは35mmがスタンダードなセットだ。


いずれにしても、75mmという画角は、たとえマニア層で
あっても極めて馴染みが薄かったので、かなりの違和感を
感じたのであろう。で、そうした「声の大きい」ユーザー
の意見を聞いて購買行動を起こす周囲の初級中級層も
また、同様に「35mmが欲しい」と言い出したのだ。

この為、35mmレンズの品薄は、中古市場にとどまらず
新品市場にまで及び、元々銀塩時代では、AFの35mmは
さほど売れるレンズではなかったので、あっと言うまに
新品も供給不足、ユーザーは35mmレンズを買う事が
出来なくなってしまった。

私は(中古)市場に35mmレンズが全く無くなった様子を
見て、いくつかの違和感を覚えた。
まず、「そこまでして50mmの画角が欲しいか?」という
デジタル機ユーザー層に対する疑念だ。何故、変化した
画角に感覚をアジャストする事が出来ないのだろうか?

それから、組織的な買占めを行った業者に対する不満だ。
(それは、無くなった35mmレンズが後年に市場に出て
きた事から、容易に何処が行ったのかがわかった)

ちなみに、その組織的買占めは、2005年にCONTAXが
事業撤退するとCONTAXレンズに対して行われ、
さらに、2006年にMINOLTAがαをSONYに譲渡すると、
今度はMINOLTAレンズに対しての買占めが行われた。
当然、市場で品薄になった後、販売時の定価すらを
遥かに超える高額中古相場で(例:発売時9万円の
レンズが中古だと18万円!)それらのレンズの販売が
開始されている。

・・まあ、ビジネス的にはわからない話では無いが、
「50mmでなくちゃ嫌だ」とか言っている初級中級層を
相手に、あるいはCONTAXやMINOLTAのレンズを本当に
必要とするユーザー層を相手にする商売としては、
相手の弱みを突いてくる様子なので、少々えげつなく、
「フェアでは無い」とも思ったのだ。

ちなみに、その状況を見てから、その後、その買占め
業者の系列チェーン店では、私は、ただの1本、1台も
機材を購入していない。(=気に入らなければ買わない、
という事が、消費者側が、メーカーや市場に対抗できる
唯一の手段である)
(それと、最近のコロナ禍においては、不足したマスク
や紙製品の投機的転売は「悪事」とみなして、政府等が
それを抑制する措置を行った。
カメラやレンズは生活必需品では無いから、転売を防止
する強制力は無いが、これはもう、高くても買ってしまう、
という消費者側の購買意識の問題につきるであろう)

で、そうした危機的な(中古)市場の状況を解決して
くれたのが、本EX30/1.4であった。

「銀塩35mmが欲しい(けど買えない)」と言っていた
消費者層も、仮に35mmレンズを入手したところで、
たいていは、F2級、あるいはF2.8級だ。
まあ、35mm/F1.4も存在してはいたが、高価すぎて簡単に
買えるものでは無い。

そこにSIGMAから、手頃な値段で買える30mm/F1.4
が登場した訳だ、これで、彼らの望みどおり、ほぼ
「50mm/F1.4」の標準レンズ相当のシステムがデジタルで
出来上がる。
だから、このEX30/1.4は、発売直後には爆発的に売れて
いる。ただし、そのヒットは、ほんの1~2年で沈静化
してしまっている。

その沈静化した理由はいくつかある。
1)EX30/1.4が、銀塩時代の50mm程の性能を持たなかった。
(例:最短撮影距離が40cmと長い、ボケ質破綻が頻発する、
 ピントリングの回転角がとても狭く、実質的にMF操作が
 出来ない、等・・)
2)多くのユーザー層は、デジタル(APS-C機)で変化する
 画角に感覚のアジャストが既に完了していた。
(まあ、もう3~4年も使っていれば、そうなるだろう)
3)デジタル(APS-C)専用の標準ズームの普及が始まった。
(例;18-55mm、18-200mm等)
4)レンズの事よりも、次々に発売されるデジタル機に
 ユーザー層の興味が向いていた。
5)CANONから、アマチュア層でも買える価格帯の
 フルサイズ機であるEOS 5Dが2005年に発売された。
「どうしても銀塩時代の画角でなくちゃ嫌だ」と
 言っていたユーザー層は、フルサイズ機に走った訳だ。

・・という理由である。
そうして、なんだか取り残された感じで、本EX30/1.4が
ポツンと市場に残ったのである。

僅か1年強で、中古店に置いてあっても、誰も見向きも
しなくなった本レンズが、少々哀れに思えた。
中古販売価格は3万円であったが、私は、中古店主に
発売時定価(55,000円)の約半額の27,000円で、価格
交渉し、無事その値段で入手した次第である。
_c0032138_18060879.jpg
だが、前述のリストの1)に書いた「性能上の弱点」が
気になり、その後はあまり使わないレンズとなった。

EX30/1.4の中古相場は、その後歳月とともに下降、
2万円を切った頃になって、ようやく本レンズは、
2013年のSIGMAライナップ改変により、「ART Line」に
統合され、リニューアルされた。後継型は、当然ながら
EX型の様々な弱点を改良しているのであろうが、
個人的には、なんだか興味が失せてしまい、ART型は
購入していない。

なお、2016年には、ミラーレス機用の同スペックの
「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」が発売
されているが、同様に興味が沸かず、スルーしている。
(本シリーズ第5回「SIGMA DN レンズ編」参照)

なんだか、本レンズEX30/1.4は、レンズ市場の危機を
救済する為に、パッと登場した、ヒーローか救世主の
ようであったが、ごく短期間だけ派手に活躍しただけで、
急速に注目されなくなり、皆から忘れ去られてしまった
「悲運のヒーロー」のようなイメージがある。

まあ、決して性能が壊滅的に悪いレンズでは無いのだが、
現代の中古市場で、1万円台前半くらいの格安相場で、
ひっそりと売られている状況を見ると、ますますなんだか
可哀想だ。(まあでも、安くなったからとは言え「ナンピン
買い」をするつもりは全く無いが・・)

----
では、今回の「SIGMA 広角3兄弟編」は、このあたり迄で。
次回記事に続く。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>