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特殊レンズ・スーパーマニアックス(38)M42超マニアック

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では「M42超マニアック」として、世に多々ある
M42マウントレンズの中でも変り種のレンズを7本紹介しよう。

なお、紹介本数が多い為、あまり個別のレンズの詳細説明
には拘らず、実写掲載も最小限とする。
(いずれも過去記事で紹介済みのレンズである)

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、COSINA 復刻TOPCOR 58mm/f1.4
(新品購入価格 44,000円)(以下、復刻TOPCOR)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

ミラーレス・マニアックス名玉編第1回記事等で紹介の
元々は、東京光学(トプコン)の1960年代の名レンズ
「トプコール(Topcor)58mm/F1.4」を2003年にコシナ社
がフォクトレンダーブランドで復刻限定版で発売したレンズ。

(注:厳密には、本レンズには、フォクトレンダー銘は
記載されていない)
_c0032138_19285612.jpg
発売本数は、AiとM42マウント版が各800本づつと希少では
あるが後年に外観変更されNOKTON(ノクトン)58mm/f1.4
となり、フォクトレンダー銘での定番ラインナップとなった。
さらに近年のバージョンのNOKTON 58mm/F1.4 SLⅡS では
1960年代のNIKKORのデザインを踏襲し、リムの色も黒と白が
選べる等、とてもマニアックな製品となっている。

まあすなわち、個々のバージョンは外観が大きく異なるが
どれも中身の光学系は同一であり、どれかを所有しておけば
実用的には十分だ。
しかし、ここまでマニアックなデザイン戦略が続くと
フラフラと、同じレンズを重複購入したくなる気持ちも
出てくるが(汗)そこは我慢しよう。

本レンズは発売当初から現行NOKTONに至るまで、
「絞り開放では柔らかく、絞るとシャープ」という
キャッチコピーが見受けられるが、これについては、
1960年代~1970年代での他社製品を含めた50mm級標準
(50~58mmの焦点距離)での、F1.4~F1.2級の大口径
レンズの多く(ほぼ全て)で、その売り文句と同様の
「開放で甘く、絞ってシャープ」という特性が見られる。

まあつまり、大口径化による球面収差の補正が当時の
レンズ設計技術では十分に解決できていなかった訳だ。
この後の時代になると、まずガラス材質の進化により
屈折率や色分散の特性を改善し、その課題(収差補正)は
1980年代にはF1.4級標準レンズでは、ほぼ解決する。

ただ、F1.2級レンズでは、この改良はあまり効果が
得られなかったのか? その時代に、MFのF1.2級標準は、
ほぼ絶滅してしまう。
同時に、これまで55mm,57mm,58mm等、大口径標準
の焦点距離を、なかなか50mmに縮める事が難しかった
事も、この時代に解決し、ほぼ50mmに統一された。

つまり、1980年代に各社のMFの50mm/F1.4級標準は
完成の域に達した訳で、1980年代末からのAF化において
も、MF時代の50mm/F1.4のレンズ構成を、そのまま
踏襲してAF版の50mm/F1.4レンズが各社で出揃った。

その後、1990年代はズームレンズの改良が最優先
となり、2000年代ではデジタル一眼レフの開発が
最優先となった為、AF版50mm/F1.4級レンズは、各社
ほぼ放置状態、したがって1970年代~1980年代の
古い(しかし、ほぼ完成された)光学系設計のまま、
30年も40年も販売が継続されていた状態であった。

2010年代になってやっと、非球面レンズや異常低分散
ガラス等を用いた複雑な光学設計をコンピューターで
行うことで、ようやく数十年ぶりに、50mm標準レンズ
の光学系の改良が各社において行われた。

ただ、こうした新鋭レンズは、旧来の値段がこなれた
(概ね定価3万円程度の)AF/デジタル兼用の標準
レンズに対して非常に高価であり、概ね定価ベースで
12~18万円、さらには40万円を越えるレンズもある。

これは「新設計だから高い」というよりも、レンズ
市場が縮退した2010年代においては、3万円の標準レンズ
をダラダラと売っていても儲からない(商売にならない)
という事情が大きい。つまり完全にリニューアルした事で
付加価値を上げて、同時に値段(利益率)も吊り上げた
訳だ。どうせ今時であれば、旧来の50mm/F1.4を安価に
売ったとしても、昔(1960年代~1980年代)のように、
皆が「まず標準レンズを最初に買う」という文化は
無くなってしまっている。だから、50mm標準レンズを
欲しいと思う人は、高くても買う訳であり、販売本数が
少なくなるのはやむを得ないが、その分利益率でカバー
して「何とかレンズ事業を継続する」という仕組みだ。

現状私は、そうした新時代の「高付加価値型標準レンズ」
を4本程度しか所有していないので、新鋭レンズ全般が
どうのこうのという評価は難しいが、概ねこうした新鋭
標準は「まあ、そこそこ良く写り、不満は殆ど無いものの
旧来の完成度の高い50mm/F1.4級に比べて、感覚的には
何倍も良く写るという訳では無い。それでいて、価格は
たとえ中古でも、数倍から十数倍も高価となってしまう、
すなわちコスパが良いとは言い難い」という評価となる。
(事実、本ブログでの「ハイコスパ系」の記事には、
まったくノミーネートすらもされていない)
_c0032138_19285675.jpg
で、ここまで長々と標準レンズの歴史を書いてきたが
本復刻TOPCORは、標準レンズが技術的に暫定完成する
1970年代~1980年代より以前のオールド標準レンズ
の特性を、あえて復刻させたものである。

まあ、であれば、1960年代~1970年代の各社MF標準を
1万円以下の安価な中古相場で買えば、本復刻TOPCOR
とほぼ同じ写りになる、と言えばその通りなのだが、
元祖TOPCOR58mm/F1.4は、エキザクタマウントという、
現代ではやや使い難いレアなマウントである為、
その点では、M42やAiマウントの本復刻TOPCORの方が
実用時の利便性は高い。

それに、この復刻TOPCORにはコシナやらフォクトレンダー
やらの記載もなく「東京光学」銘だ(注:提携したとの事)
まあ、そういうマニアックな製品であり、そのマニアック
度に、どれだけの対価を払って製品を買うのか?という点
である。今から考えると、本レンズを購入する必然性は
あまり無かったかも知れない(実は、ちょとした理由が
ある事はあった、過去の本レンズ紹介記事で毎回書いて
いるので今回は割愛しよう)

まあ、本レンズではなくても、ほぼ同じ性能のオールド
標準はいくらでも売られている。新品の方が機構面で安心だ
と言うならば、後年のNOKTON版を買えば良い訳であり、
私は所有しているからもう良いが、これを持っていない
人が、わざわざ現在では希少価値からプレミアム価格化
している本レンズを高価な相場で買う意味は全く無い。

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では、次のM42システム
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レンズは、YASHICA AUTO YASHINON-DS 50mm/f1.9
(中古購入価格 9,000円)(以下、DS50/1.9)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)

ミラーレス・マニアックス第28回記事で紹介の
1960年代と思われるM42マウント小口径標準レンズ。
_c0032138_19290236.jpg
M42とは何か? と言えば、内径42mm、ピッチ1mmの
ねじ込み式マウントを差す。
東独製カメラ ペンタコン「プラクティカ(プラクチカ)」
や、国産(ASAHI)PENTAX一眼レフに採用された事から、
「Pマウント」、「PSマウント」等とも呼ばれる。
PSは、プラクティカ・スクリューあるいはペンタックス・
スクリューの略だが、どちらのメーカー名が語源か?
とうのは、もう60年以上が経過した今となっては、
分かりようも無いし、どちらでも良い話であろう。

が、「P」というメーカー名が付くのを嫌う場合、
2003年発売のコシナ製M42機「BESSAFLEX TM」では、
「スレッドマウント」(=TM)という独自名称を使った
ケースもある。

このあたりのM42の話は、銀塩一眼レフ第30回
「BESSAFLEX TM」の記事に詳しいので参照されたし。
_c0032138_19290207.jpg
さて、本DS50/1.9だが、かなり古い時代のオールド
レンズである。しかしながら完成度は高く、現代に
おいて使用しても、「そこそこ良く写る」という印象が
得られるであろう。まあ、ヤシカ(あるいは富岡光学)
のレンズ設計力が、こういう感じで高かったからこそ、
1970年代にヤシカがCONTAXブランドを取得できた訳
である。つまり高いブランド力を持つカール・ツァイス
社が、レンズをちゃんと作れないメーカーには、
CONTAXの商標を渡すはずが無い、という事である。

まあでも、相当に高額でのブランド購入となったのか?
ヤシカはCONTAX RTS(1975)発売直後に、経営破綻して
しまい、京セラ等が資本投下をして、国産CONTAXは
なんとか事業が継続できた(しかし、それも2000年代
に終焉してしまう)

このあたりの話全般も「銀塩一眼レフ記事のCONTAX機
の数機種のところに詳しいので興味があれば参照されたし。
まあ、本レンズDS50/1.9は、その激動のCONTAXの時代
に至る前の時代のレンズだ、のんびりと撮るのも良いだろう。

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では、3本目のM42システム
_c0032138_19290993.jpg
レンズは、ARGUS Cintar 28mm/f2.8
(中古購入価格 4,000円)(以下、ARGUS28/2.8)
加えて、テイルトアダプターを使用
カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)

ミラーレスマニアックス第13回記事で紹介のレンズ
ではあるが、本レンズの出自は良くわからない。
米国のブランドではあるが、発売元は商社的であり
中身は日本製との噂もあるが、詳細は不明である。

過去の当該紹介記事を参照しても、これ以上の
詳しい内容は書いてはいない。わからないものは
わからないからだし、あまり真剣に調べるような類の
レンズという訳でも無い。

描写力は平凡でたいした事は無い。どこにでもある
ような1970年代のMF広角レンズである。
_c0032138_19290908.jpg
そのまま使用すると、あまりにつまらないので、今回は
ティルトアダプターを用いて、ティルト撮影を行って
いる。まあ、こういう使い方であれば、テクニカル的
にも面白いし、平凡なオールドレンズで、性能も低く
エンジョイ度も低いレンズを楽しく使う事が出来る訳だ。

勿論現代において必死に探すような価値の高いレンズ
では無いので念の為。

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では、4本目のM42システム
_c0032138_19291482.jpg
レンズは、PEMTAX SMC TAKUMAR 120mm/f2.8
(中古購入価格 20,000円)(以下、SMCT120/2.8)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)

ハイコスパレンズ第23回記事等で紹介の
1970年代初頭の変則焦点距離MF(中)望遠レンズ。
_c0032138_19292096.jpg
PENTAXが、ライカ系の焦点距離系列に反発して
様々な変則的焦点距離のレンズを発売した事は、
過去から現在に至るまで多数ある。
まあ、本レンズもその1本であり、普通、この時代での
望遠レンズと言えば、単焦点の135mmが一般的だ。

この銀塩MF時代(概ね1960年代~1980年代)において
一般ユーザーは、まず50mm(近辺の)標準レンズが
付属した銀塩MF一眼レフを最初に購入する。

なお、その際、F1.7~F2.0の小口径標準が付いた
組か合わせと、F1.4級の大口径標準レンズがセット
となる2つの製品が併売されていた事が一般的であり
その価格も、F1.4級レンズが付いているセットの方が
数千円ないし数万円高価であったので、まあこの当時
から「F1.4等の大口径レンズは高級品だ、高価な故に
良く写る」という「常識」が一般ユーザー層に広まった。

この「思い込み」は、そこから50年以上が過ぎた
現代においても、初級中級層の間で「F1.4級のレンズ
の方がF1.8級より良く写る、だって高いのだから
それが当たり前だろう?」という「常識」として
広まっている。

しかし、本当にそうだろうか? 本ブログの読者であれば
良くわかっていると思うが、例えば50mm前後のMF単焦点
標準レンズは、本ブログの過去のレンズ記事で数十本
紹介している、同一の時代の製品で大口径版と小口径版を
比較紹介する事も多々あるが、これが、たいていの場合、
小口径版の方が良く写るのだ。
(参考:最強50mm選手権シリーズ記事群)

まあつまり、この当時では(上のトプコールの記事でも
書いたように)、F1.4級の大口径標準は、まだ技術水準
が完成の域に達しておらず、小口径版の方に性能的な
アドバンテージ(優位点)が存在していた。

まあそれはそうだ、もしF1.4級が全ての点で小口径版
より性能が良いのであれば、各社とも、わざわざF1.4
付き製品と、F1.8付き製品を2種類ラインナップする
必然性が無くなる。つまり、50mm標準は最初にキット
として販売されるから、もしその性能が低いと、
ユーザーは「XX(メーカー)のカメラは写りが悪い」
とか言って、悪評判が立ってしまうのだ。
だから、F1.4版が高性能であれば、F1.4付きのセット
だけを売れば良い。

でも各社、そうはできなかった。両者を並存させたのは
実は小口径版標準の方が描写力が高かったからなのだ。
しかし「値段の安い物の方が良く写る」という事実が
消費者側にバレてしまうのもまずい、皆が安いものを
買ったら、メーカーや流通市場は儲からないからだ。

なので、メーカー側では小口径版に仕様制限を持たせた。
具体的には「最短撮影距離が長い」という事である。
50mm/F1.4級の最短撮影距離45cmに対して、小口径版
は最短60cm程度となる事が普通であった。

これならば、開放F値の差と近接能力の差により
大口径版の方が、はるかに(最大約2倍)被写界深度を
浅くできる為、メーカーや流通市場の営業マンは
営「こちらのF1.4の方が背景が良くボケるでしょう?
  だから、F1.4の方が高性能で高価なのですよ」
という理屈でセールストークができる。
(参考:35mm判銀塩システムにおいて、
50mm/F1.4@撮影距離45cm:被写界深度=約 6.8mm
50mm/F1.8@撮影距離60cm:被写界深度=約15.6mm)

まあつまり「高価な大口径レンズの方が高性能なのだ」
という理屈を、50年間もの間、常に、販売側は消費者
(購入側)に対して言い続けていた訳だ。
そうしないと、高い商品が売れなくなり、安い商品の
方が性能が高い、という市場での矛盾がバレてしまう。

まあ、こういう事情だ。だから現代にいたるまで、
「開放F値の小さい(明るい)レンズの方が、高性能で
高描写力で、だから高価なのだ」という”間違った論理”
が消費者/ユーザー側に定着してしまっている。

現代の場合はもう少し巧妙で、例えば、高級品である
大三元レンズ(開放F2.8ズーム)に、カメラ本体側の
AFセンサーの反応感度を合わせ(=F2.8対応測距点)
やや安価な小三元レンズ(開放F4ズーム)は、AF精度が
F2.8版より落ちる、というような仕掛けも存在する。

この場合の営業トークは、
営「ほら、こちらのF2.8ズームの方が、良くピントが
  合うでしょう? だからF2.8版は高いのですよ」
と言える訳だ。

まあ、馬鹿馬鹿しい話だ、いつの時代でも、何も知らない
消費者層は、こういう「仕様マジック」に簡単に騙されて
しまう訳だ。でも、それにひっかかるビギナー層が多数
居ない限り、高価な商品が売れなくなって、カメラ市場が
崩壊してしまう。それでは皆が困る訳だから、こういう事
には誰も言及せずに、黙っているだけだ。
_c0032138_19292175.jpg
さて、余談が長くなった。


ともかく銀塩MF時代の消費者層は、まず50mm前後の
標準レンズが付いた一眼レフを購入する。

この後、一眼ユーザーの大半は交換レンズを購入しないが
それでも欲しいレンズはある、まずは望遠と広角レンズだ。
ズームはまだ普及していない時代なので、単焦点を探す。
この場合、市場に豊富で価格的にも適正な望遠レンズは
135mmである、これはライカの決めた焦点距離系列で
あり、ライカのレンジファインダー機では、ほぼ最大
の焦点距離の望遠だ、一眼レフも、このルールを踏襲
していた(しかし、一眼では、より長い望遠もある)

135mm単焦点の開放F値は、F2.8版もあればF3.5版も
ある、あるいは両者が並行して売られる場合もあった。
前述の大口径・小口径の話と同じで、F3.5版の方が
描写力が高い場合に、そういう併売戦略もあるだろうし、
少しでも開放F値を明るくした方が、ビギナー受けが良い
から、F3.5版の後継製品がF2.8となるケースもあった。

まあ、そこはもう良い。で、望遠の場合課題となるのは、
初級層での「手ブレ」問題だ。シャッター速度に十分に
留意しないと(概ね1/250秒キープ)手持ち撮影では
当時の低感度フィルムでは、多くのケースで、その
シャッター速度が得られず、手ブレを頻発する。

そこでPENTAXの対応は、この120mmレンズの発売だ。
この時代の開発者のコメントには
P「標準レンズの2.5倍までの焦点距離ならば、
  初級層でも手ブレしない」
とあったと記憶しているが、これは恐らくは、
PENTAX一流の「ダミー情報」(すなわち「方便」)
であった可能性が高い。

つまり、実際のところは「初級者の手ブレ限界は
焦点距離分の1秒であり、当時のカメラの1段刻みの
シャッター速度では、1/125秒の設定で撮る際は、
135mmでは厳しく、120mmであれば安全圏である」
と、これが正しい根拠だろう。何故そう言わないかは、
これは開発ノウハウだからだ、つまり当時においては
「企業秘密」の類だ。

PENTAXは、よくこうしたダミー情報を流す。
1997年のFA43mm/F1.9 Limitedの発売時にも
P「43mmという焦点距離にしたのは、フィルムの
  対角線長と同じであり、人間の目に自然な画角だ」
と開発側からコメントがあったのだが、一見合って
いそうで納得するが、よくよく考えてみると、
何の技術的・生理学的な根拠も無い(汗)

ここは恐らくだが、FA43/1.9は、当時の他の標準
レンズの2倍以上も高価なプレミアム商品だ。
もしこれをFA50mm/F1.9という仕様で発売すると
世の中にあまた存在する標準レンズと同じ焦点距離で
しかも、F1.9は前述のように「小口径は安物である」
という刷り込みをメーカーも市場も何十年も一所懸命
続けてきたので、自社の製品が「F1.9のくせに高すぎる」
という悪評判につながる。だから50mmという焦点距離
を避けて、誰も見た事が無い43mmで、独自の販売戦略
を行ったのであろう。

余談が大変長くなった。本SMCT120/2.8は、そういった
出自等はどうでも良いと思えるほどに、良く写る高性能
レンズである。数多くあるSMC TAKUMARにおいては、
SMCT55/1.8,SMCT200/4と並び、ベスト3に入るレンズだ。
PENTAX党であれば、これの歴史的価値を重んじて、
購入に値するレンズであろう。M42なので、たいていの
一眼レフやミラーレス機に装着する事が出来る。

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では、次のシステム
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レンズは、HELIOS 44-2 (58mm/f2)
(中古購入価格 7,000円)(以下、HELIOS44-2)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)

ハイコスパレンズ第19回記事等で紹介した
1970年代~1980年代(詳細不明)のロシアンレンズ。

本レンズはCarl Zeiss Jena BIOTARのデッドコピー品と
言われている。
_c0032138_19293043.jpg
だが、写りはお世辞にも良いとは言い難いレンズであり
逆光耐性は低く、すぐにフレアっぽい低コントラストの
写りになる。これは曇天であっても防げない事もある為、
なかなか使いこなしは難しい。

ツァイスのコピー品と言っても、どこまで完璧にコピー
できているかは不明であるし、そもそも元となった
設計も恐ろしく古く、恐らくは戦前であろう。

まあ、そういう出自なので、あまりHi-Fiな描写力は
期待できない。
それから、本レンズは、いわゆる「プリセット型」の
無段階絞りである、その構造自体は、連続的な絞り値
操作が速やかに出来たり、開放と絞り込んだF値を瞬時
に変更できる等、個人的には結構好みなのであるが、
本レンズの個体は、絞り環が、もう経年劣化でユルユル
になってしまっている。これだとカメラを構えるたびに、
絞り値がどうなっているのか不定な状態なので、極めて
使い難い状態だ。
描写力に劣り、使い難い事もあって、本シリーズ第4回
「ロシアンレンズ編」では掲載を見送っている。

まあ、現代においては、実用的なレベルとは程遠く
あくまで趣味的な、しかも超マニアックなレンズであろう。
勿論、指名買いをするようなレンズでも無い。

ただ、沢山のバリエーション(類似機種)が存在している
模様なので、それらの多くを入手し、撮り比べる上級マニア
層も居るとは聞く、そうした研究目的には良いかも知れない。

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では、6本目のM42システム
_c0032138_19294031.jpg
レンズは、COSINA MC Macro 100mm/f3.5
(新品購入価格 14,000円)(以下、COSINA100/3.5)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)

本シリーズの第20回「平面マクロ」編で紹介済みの
レンズであるが、フルサイズ機に装着して再掲する。
_c0032138_19294002.jpg
現代では高級レンズメーカーとして著名なコシナ製
であるが、本レンズの時代(1990年前後?)では、
COSINAは、世間では全く無名のOEMメーカーであった。

当時も他社ブランドのレンズを沢山作ってはいたが、
自社ブランド(COSINA銘)のレンズは、大幅な値引き
戦略により、定価の7割引とか、そんな調子であった。

まあ、ブランドが知られていないのでやむを得ない。
本レンズの定価は不明だが、4~5万円とかするの
かも知れない(?)でも、それが新品で14,000円だ。
後年のフォクトレンダー・マクロアポランターならば
10万円~14万円もするし、カール・ツァイスMilvusの
マクロならば20万円以上もする。

勿論、いずれも同じコシナ社の製品である。
そうした超高級ブランドレンズの祖先かも知れない
本レンズが、新品で1万円台で買える(買えた)のは、
ある意味、痛快ではなかろうか?

勿論、大幅な値引き戦略を見込んで、コストダウンの
要素は大きい。鏡筒はプラスチック成型品であり、
恐ろしく軽く、かつ、安っぽい。
ただ意外に小型であり、後年のマクロアポランター等と
比較すると、「え?同じ中望遠マクロ?」と拍子抜け
してしまうほどに小型軽量だ。

描写傾向だが、解像感はそこそこあり、平面マクロ的だ。
だが、ボケ質破綻やフレアなどが出易い為、技法的には
色々と注意しなくてはならない。
フルサイズ機で使うと、周辺減光、周辺の解像力落ち、
などが発生するが、まあ、構図上の工夫で回避する必要
がある。
_c0032138_19294504.jpg
それと、1/2倍マクロであるから、フルサイズ機では
撮影倍率が物足りないであろう。そういう意味でも
本来は本レンズは、μ4/3機で使用し、撮影倍率を換算で
等倍まで引き上げる事と、画面周辺の性能低下をカット
する事が望ましい。

まあ今回は、「フルサイズ機での限界性能テスト」という
意味合いもある、そして現代のEOS機では、アダプター
使用時にはフォーカスエイドが無効になる「排他的仕様」
の為、使いこなしはさらに難しい。一応EOS 6Dは、MF用の
スクリーンEg-Sに換装してはあるが、それでも何一つ
MFをアシストする機能は無いので、この点でも難しい。

それから、1点注意点だが、コシナ製のM42マウントレンズ
の、ほぼ全てには、A/M切り替えがなく、手動絞りで使用
する場合、必ずレンズ背面の絞り連動ピンを押し込める
機構を持つ機体、またはマウントアダプターを使わないと
絞りが開放のままになってしまう。現代のミラーレス機用
アダプターでは、ほぼすべてその構造になっていると思うが
一眼レフ用のM42アダプターの一部(例:PENTAX純正品)
では、絞りの手動制御が出来ない。EOS(EF)アダプターは
確か両者混在であったので、今回使用のアダプターでは
大丈夫だが、そのあたりは購入前、または撮影前に必ず
絞りが動くかどうかチェックする必要がある。

コスパ的には悪いレンズでは無いのだが、課題は現代に
おいて本レンズは、全くと言っていいほど入手不能な所で
あろう、中古は、かつて一度も見かけた事が無い・・・

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では、今回ラストのシステム
_c0032138_19295390.jpg
レンズは、FUJIFILM FUJION T 135mm/f3.5
(中古購入価格 3,000円)(以下、FUJI135/3.5)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)

ミラーレス・マニアックス第73回記事で紹介の
1970年代のフジカSTシリーズ用の単焦点MF望遠レンズ。
_c0032138_19295358.jpg
1950年代より世界的に広まったM42マウントは、
ユニバーサル(汎用)マウントとして高い機種間互換性
が存在していた。
しかし、1970年頃には、他マウントの一眼レフが開放測光
や絞り優先などの新規の便利機能が搭載され始めた為、
M42マウント陣営は苦悩する。つまり、ねじ込みのM42の
ままでは、レンズの取り付け角度が不定の為、レンズと
ボディとの間で機械的または電気的な情報のやりとりが
困難な為、そうした新機能を搭載する事が出来ないのだ。
(注:とは言うものの、初の絞り優先AE機は、ASAHI
PENTAX ES(M42機)が先行した。ここで言うM42陣営
とは、PENTAX以外の話だ)

全世界のM42陣営で新規格を作ればよかったかも知れないが
当時は、そんな風な国際協業は、まず無理だ。
インターネットもメールも無ければ、言葉も違っていて
勿論翻訳機も無い。おまけに東独やソ連は共産圏である為、
西側との接点はほとんど無い。共産圏ではメーカーという
概念すらなく、旧ソ連製レンズは国営工場で作っていた。
開発にはお金も必要だが、誰がその資金を、どのように
払うのか? まあ、これらの解決はまず無理であろう。

そして、国際協業どころか、日本の中だけでもメーカー
協業は難しい。この時代から半世紀も経つのに、いまだ
日本のカメラは各社独自マウントのカメラを作り続けて
いる状態だ、他の市場分野の製品ならば各社共通規格が
あるのが当然の状態で、それがユーザー利便性に繋がる。

そこで結局、日本の各M42陣営のメーカーは、それぞれ
独自の改良をM42マウントに対して施し、開放測光や
絞り優先機能を1970年代前半頃に実現していく。
しかし、その時点で、せっかく各メーカー共通で使えた
M42の「汎用性」は完全に失われ、まったく互換性が
無くなってしまった。

互換性が無いだけならまだしも、マウント形状はほぼ
M42のままなので、自社のレンズ以外の、他社の「M42風」
レンズを装着しようとすると、嵌らない、外れない(!)
といった問題が発生した。

国内ではM42の親分格であったPENTAXも、さすがにもう
M42は限界と見たのであろう、1975年には現代にまで
続くバヨネット型のKマウントに全面変更をした。

これでまあ、残念ながら「M42陣営」は崩壊である。
1980年頃まではM42機の発売を続けたメーカーもあったと
思うが(FUJIFILM社もそうだ)その後の1980年代の
カメラのAF化により、国内のM42機は絶滅してしまった。
(注:海外では、その後も生産が続いていたと思う)

国産M42機では、2003年にコシナ社よりBESSAFLEX TMが
新発売されたが、中古カメラブームを受けた、例外的
な製品である。(銀塩一眼レフ第30回記事参照)

で、本レンズはFUJIのM42レンズの中では前期型とも
呼べるタイプであり、M42完全互換の手動絞り(込み)
レンズである。

なお、1970年代前半からの後期型はEBC FUJINON銘と
なっていて、開放測光あるいはボディ機能による絞り
優先を実現している。ただこのEBCは、もう「M42風」の
レンズであるから、現代で使用する際には特に装着には
神経を払わなければならない。具体的対策については
EBC FUINONは、絶対に一眼レフ等にはアダプターで装着
しない事である。使うならばミラーレス機用のM42対応
アダプターを使う、それであれば仮に外れなくなったと
しても、アダプターが1個犠牲になるだけで、ボディ側
には影響が無い。

本レンズのようなEBC型では無いFUJINONも、念のため
ミラーレス機用M42アダプターを介して使うのが安全だ。
今回は、FUJIFILM繋がりで、同社のミラーレス機を
使用している。
なお、FUJIFIM社は、1980年代にM42系を諦めて
独自バヨネットマウント(AXマウントまたはXマウントと
呼ばれる)に転換したが、それもまたAFの時代になって
生産終了、以降は一眼レフ市場からは撤退している。
(参考:近代のミラーレス機Xシリーズが出るまで、
一眼タイプ機は、約30年も空白期間がある)
_c0032138_19295517.jpg
さて、本FUJINON135/3.5であるが、かなり平凡な
性能の望遠レンズである。4群4枚のありふれた構成で
あり、当時の他社135mm級望遠でも同様の構成の物が
多く、まあ写りはさほど悪くは無いが、スペシャルな
要素は何も無い。

これも現代においては指名買いをするようなレンズでは
決して無いであろう。本レンズを所有する意味があると
すれば、この時代M42マウントの激変期(衰退期)での
「歴史的な証人」としての価値のみだ。

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さて、今回の記事「M42超マニアックレンズ特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・


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