所有している一眼レフ用の50mm標準レンズを、AF/MFや
開放F値等によるカテゴリー別で予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。
本シリーズ記事は予選を終え、いよいよ決勝リーグに突入
したのだが、今回は、これまで都合15記事、紹介(対戦)
標準レンズ数、約80本という中で、性能面等の評価が
暫定上位となったレンズによる最終決戦(決勝戦)だ。
まず決勝戦への出場(選出)レンズ名を5本記載する。
1)SIGMA Art 50mm/f1.4
2)PENTAX-DA 55mm/f1.4
3)Carl Zeiss Milvus 50mm/f1.4
4)FUJIFILM XF56mm/f1.2 APD
5)TAMRON SP 45mm/f1.8
これは省略表記である、正式なレンズ名は各々後述する。
そして、APS-C機専用、フルサイズ用、ミラーレス機用、
一眼レフ用が混在し、時代も2000年代~2010年代と、
若干のばらつきがある。
コスパ面の評価もあるので、新しい(高価な)レンズの
方が常に有利だとは限らない。
ただ、やはり総合描写力の優位性で、この標準レンズの
カテゴリーでは、近代レンズのみが決勝戦への進出となった。
各レンズの詳細や評価方法・評価点は追って述べていこう。
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さて、まずは今回最初の決勝進出レンズ。
![_c0032138_18004203.jpg]()
レンズ名:SIGMA 50mm/f1.4 DG HSM | ART
レンズ購入価格:72,000円(中古)(以下、A50/1.4)
使用カメラ:CANON EOS 6D(フルサイズ機)
2014年発売の大口径単焦点AF標準レンズ。
当初、一眼レフ用マウント版のみの発売であったが、
近年に、SONY E(FE)マウントや、L(ミラーレス)
マウント版が追加されている。
(ただし、ミラーレス版は、一眼用レンズの後部に
マウントアダプターを追加したような形状だ)
![_c0032138_18004244.jpg]()
旧来のAF標準レンズの一般的な設計(変形ダブルガウス
型等)とは一線を画す新規設計で、8群13枚である。
もう、こういう複雑な構成では、プラナー型であるとか、
なんとか型、とかいう呼び名も、もはや当てはまらない。
まあ、諸収差の低減と解像力の向上を狙ったコンセプト
の新世代高描写力レンズではあるが、大きく重く高価な
「三重苦」の弊害が、必然的にのしかかる。
さて、今回紹介の各レンズは、本シリーズの過去の
予選記事でいずれも紹介済みであるので、個別のレンズに
ついての特徴などの詳細は大幅に割愛する。
で、以前の記事でも書いたが、本シリーズのような記事を
システマティックに執筆するには、準備期間が2~3年も
かかってしまう。
本決勝戦では、その準備期間の時点(2017年より)で
想定された、最も優秀と思われる標準レンズを集めた
つもりではあるが、その準備期間中にも、新規の高性能
標準レンズが、いくつか発売されている。
具体的には、HD PENTAX-D FA★50mm/f1.4 SDM AW
やTOKINA opera 50mm/f1.4 FF 等がそれであるが
これらは未所有だ。まあ、趣味の範囲で、全ての
新製品を次々に購入できる筈もないので、やむを得ない
話である。そして、それら新鋭レンズは、非常に高価
でもある、DFA50/1.4は約18万円、opera50/1.4は
約14万円の定価だ、どうみてもコスパが悪そうなのだが、
でもまあ、この2本は気にはなっているので、後年に
中古等が適正な相場になったら購入するかも知れない。
それと、その期間で、多数の新鋭海外製(中国製等)
のレンズが新発売されている。それらの一部は、過去の
名レンズの設計を縮小コピーして製造されたもので、
(=ジェネリック・レンズ)写りが良く、かつ安価だ。
これらも評価が間に合っていなく、本シリーズには不参戦
であるが、参考の為「七工匠55/1.4」は過去のプラナー
系85mm/F1.4を、2/3程度に縮小した設計で、なかなか
優れたレンズである、本シリーズのB決勝戦あたりには
進出できていたかも知れない。
また、カメラメーカー純正の高級標準レンズも、他に
3~4本程存在している。だが、これらは余り購入する
気にはなれない。純正品は、例えサードパーティ品と
同等の性能であっても、ブランド銘により高価になって
しまうからだ、すなわちコスパが悪いと判断している。
(注:NIKON AF-S 58mm/F1.4Gは購入している。しかし
本シリーズ記事には間に合わなかった為、欠場とする)
![_c0032138_18004398.jpg]()
・・まあ、という訳で、本決勝戦進出標準レンズは、
一般に購入可能な範囲で、コスパが比較的良いという
特徴も兼ね備えているが、それでも高価すぎると感じた
場合には、コスパ点の加点は、まず有り得ない。
で、もし前述のようなメーカー純正等の高額レンズが
ノミネートされたとしても、コスパ点の大減点により
優勝あるいは上位入賞は不可能に近くなってしまう訳だ。
ただ、もしこれを「総合評価点」だけで決勝戦進出や
ランキングを決めるとしたら、実の所、他のレンズが
ゾロゾロと入ってくる事であろう。
具体的には、
*MF時代の小口径標準(コスパがとんでもなく良い)
*AF時代の標準マクロ(描写力とコスパが良い)
*エントリー標準レンズ(コスパが非常に良い)
・・が、ランキング上位を独占してしまうと思われる。
(事実、「ハイコスパ名玉編」記事では、そうなった)
しかし、正直、それらの標準レンズは「チャンピオン」と
呼ぶには、あまりに貫禄が無い(汗)
まあ一応、「高性能・高描写力」である事が、少なくとも
チャンピオン標準レンズにはふさわしいであろう。
まあ、近代レンズにおいては、カメラ市場の縮退により
全ての新鋭レンズが高付加価値化(高価格化)している。
よって、旧来のレンズと同じ感覚でコスパ評価をすると、
少々アンフェア(不公平)な印象も否めない。
そこで、その解決策としてなんらかの加点が必要だろう。
なので、今回の記事では、本来の評価データベースの
得点に対して、「特別加点」の項目を設けている。
これは、
【汎用性】
*特定の被写体のみならず、一般的、汎用的な用途に向く。
*特定のカメラとの組み合わせでのみ高性能が得られる
事なく、汎用的に多くのカメラに装着して使える。
【新鋭度】
*比較的新しいレンズである。
*話題性があり、入手性が高い。
【認知度】
*著名、または人気レンズである(一般ユーザーが好む)
*一般的に評価されるレンズである(マニアック度が強すぎない)
【硬派度】
*質実剛健である(無駄なスペックを持たない)
*設計コンセプトが秀逸である。
【付加性能】
*目立たない特徴的な長所を持つ(隠れ高性能レンズ)
において、1項目あたり0.2点づつを加点している。
この「特別加点」(最大1点)を加えた点数が、最終総合
順位を決める事となる。
![_c0032138_18004346.jpg]()
さて、実際の評価が、どのような感じになるかを、
本A50/1.4で紹介してみよう。
なお、各通常評価項目において、★は1点、☆は0.5点、
であり、5点満点だ。3点が標準(水準)点となる、
総合評価点は、単純に5項目の平均だ、これも3.0点が
標準点となる。
<A50/1.4 詳細評価点>
描写・表現力=★★★★☆
マニアック度=★★★★
コスパ =★★
エンジョイ度=★★★★
必要度 =★★★★☆
総合評価点 =3.8
特別加点 =0.6(合計4.4)
総合評価点は4点を超えると、まあ「名玉」の類となるが、
本決勝戦でも、なかなか4点を超えるレンズは多くは無い、
その原因は、殆どがコスパ点の減点である。
(まあ、その為に特別加点で調整している次第だ)
これらの評価項目の内、「必要度」とは、本来は趣味撮影の
範疇では「所有するべきか否か?」という、やや曖昧な
評価である。これはレンズ単体での話に限らず、たとえば
そのマウントにおいて、他に代替すべきレンズが少ない
場合など(例:そのマウントでは純正マクロレンズがあまり
優秀では無かったりコスパが悪かったりすれば、当該マウント
でのサードパーティ製マクロは必要度が高くなる)も評価点
の加点の対象となる。
そして、今回の決勝戦では、趣味撮影の視点に加えて、
業務撮影等における「実用性」も必要度の評価に加えている。
つまり、あまりに趣味性の強いレンズで、使いこなしが困難
などで、実用的な使用が厳しい場合は、この評価点が低くなる
という訳だ。この事は「マニアック度」と相反する要素である
から、両者の評価点を同時に高くする事は難しい。
そして、前述のように、「特別加点」も加わっている。
ここも、通常評価項目と相反する要素があり、必ずしも
加点が得られる訳でも無い。
こうした広範囲の評価を、全て高得点で切り抜けた優秀な
レンズが、優勝に値するレンズになるという事だ。
本A50/1.4は、さほど悪い評価点ではない、以降登場の
レンズとの比較においても、悪い位置にはならないであろう。
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では、2番目の決勝エントリー(対戦)レンズ。
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レンズ名:smc PENTAX-DA ★ 55mm/f1.4 SDM
レンズ購入価格:42,000円(中古)(以下、DA55/1.4)
使用カメラ:PENTAX KP(APS-C機)
2009年発売のAPS-C機専用AF標準(中望遠画角)レンズ。
![_c0032138_18005051.jpg]()
銀塩時代の名玉FA★85/1.4のデジタル版代替レンズ
としてのコンセプトで開発されたレンズだと思われる。
(FA85/1.4の2/3スケールダウン設計の可能性も高い)
設計者も同一、という噂も聞いていて、まあ、確かに
両レンズの持つ「雰囲気」は酷似している。
(注:FA★85/1.4は、ミラーレス・マニアック名玉編
第1回記事等参照)
具体的に何処が似ているか?という点は、言葉で説明
する事は難しい。ここからはあくまで感覚的な話だが、
両レンズをカメラに装着した場合の映像の印象がある、
これについては、ミラーレス機のEVFで見るよりも、
一眼レフの光学ファインダーの方が若干わかりやすいか?
恐らく、こういう風なレンズの設計技法は、現代で主流
となっているコンピューター設計(数値特性条件を入力し
自動的にレンズ構成を計算させる)ではなく、手動計算に
よる設計ではなかろうか? 昔ながらの設計上のノウハウ
を活用し、感覚的にそれを微調整していって、一種独特な
設計上の特徴を創り上げているように思える。
このような「雰囲気」は、ミラーレス名玉編第一位の名玉
FA77/1.8Limitedにも近い、いずれのレンズも、例えば
解像力や収差補正を主眼には置かず、「ボケの遷移」に
重点を置いているように感じるのだ。
あくまで感覚的な話だが、銀塩時代の名玉プラナー系
レンズは、ピント面とボケ部が、かっちりと分かれていて
あえて言うならば「シャープな被写体画像を切り抜いて、
綺麗な背景ボケ部に貼り付けたような」印象がある。
対してFA★85/1.4やFA77/1.8、本DA★55/1.4は、
被写体のピント面からボケ部に繋がるまでの変化(遷移)
が、かなり滑らか(スムース)であるように感じるのだ。
これはピント面の「くっきり感」が、貼り付けたような
印象にならず、とても自然な描写傾向だ。
まあ、この話もまた非常に「感覚的」な話である。
でも、設計が感覚的なものを重視しているならば、
それを使い・評価する側でも感覚値を重視するしかない。
こういう話は、「数値性能」を重視した設計や評価では
決して出来ない事だ。
PENTAXでは、2000年代前半において、この「雰囲気」を
レンズカタログ上では「空気感」と記載していた。
あまりに概念的で曖昧なキャッチコピーなので、それに
反応するユーザーは少なかったとは思うのだが、まあ
今にして思えば「言い得て妙」であったと思う。
![_c0032138_18005007.jpg]()
さて、では、本DA★55/1.4の点数評価はいかに?
<DA55/1.4 詳細評価点>
描写・表現力=★★★★★
マニアック度=★★★★☆
コスパ =★★★★
エンジョイ度=★★★★☆
必要度 =★★★★☆
総合評価点 =4.5
特別加点 =0.0(合計4.5)
総合評価点は非常に高得点である。この高得点をもって
かつてのミラーレス・マニアックス名玉編では、
堂々の第三位にランキングされた名レンズである。
ただ、その記事の時代からは既に数年が経過していて、
その後、本決勝戦にエントリーしているような、
新鋭の超高性能標準レンズが多数発売され、いつの間にか
本レンズも、発売後十数年のセミ・オールドレンズに
なってしまった。
申し訳ないが、特別加点を行う要素も、もはや無い。
ただまあ、恐らくだが現代においては、もう手動設計等が
できるような老練のベテランレンズ設計者などは現存しない
事であろう・・・
であれば、もう本DA★55/1.4は「最後の伝統工芸レンズ」
であるかも知れない訳だ。評価項目には無いが、その
「歴史的価値」は高い。
![_c0032138_18005062.jpg]()
新鋭のHD PENTAX-D FA★50mm/f1.4 SDM AW(未所有)
との差異は気になるところであろう、ただ、その新レンズ
がフルサイズ対応で、しかも高価(18万円)だから、
「優れたレンズだ」と思い込むのは早計だ。
価格の高さは、高付加価値(高利益)型商品を展開しない
と、カメラ(レンズ)市場が維持できないからであって、
それはメーカー(や市場)側の都合によるものだ。
消費者側としては安くて良いレンズの方が当然好ましい。
現状では、それを持っていないので何とも評価はできないが、
後年、いずれそれを入手した時に、詳しく比較してみよう。
ただ、もう結果は予想がついている。それは良い意味でも
悪い意味でも「全然別物である」という結論だ。
だから、どちらか一方を選ぶという訳には行かない筈だ、
被写体の状況や、撮影者が求める表現により、両者は
異なるシチュエーションで活躍できる事であろう。
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では、3番目の対戦レンズ。
![_c0032138_18005982.jpg]()
レンズ名:Carl Zeiss Milvus 50mm/f1.4
レンズ購入価格:85,000円(中古)(以下、Milvus50/1.4)
使用カメラ:NIKON D500(APS-C機)
2016年発売の高解像力仕様MF大口径標準レンズ。
カール・ツァイス銘ではあるが、国産のコシナ製だ。
現代のカールツァイス社は、カメラ用レンズの生産を
もう殆ど行っていないと思われ、全て(?)が日本製
となっている事であろう。
![_c0032138_18005992.jpg]()
ただ、交換レンズを作っていないツァイス製よりも、
何十年も高性能レンズを作り続けているコシナ製の方が
現代となっては、むしろ「品質や性能に信頼が置ける」
という事となり、はるか戦前からの「有名ブランド」も
現代においては実質的な意味は何も無い。
(嫌らしい提案をすれば、ツァイスとのブランド提携を
解消してもらって、同等の性能のレンズを、コシナ銘で
安価に売ってもらった方が、消費者側としては、遥かに
嬉しい。どうせ価格の差分は、ツァイス社にブランド料
として払っているのだろうから、コシナ社も損はしない。
問題点は、そうした「真の実力値」を見抜けず、ブランド
銘だけに左右されてしまう消費者側の、その価値観だ)
さて、本Milvus50/1.4は、ニコンマウント品であり、
「ZF2」仕様であるから、NIKON製デジタル一眼レフの
全ての機種に装着しても正常に絞り値操作が電子ダイヤル
で可能である。NIKON高級機で必須であったレンズ情報の
手動設定も不要だ。それと、絞り環が存在するし、MFでも
あるので、ほぼ全てのミラーレス機にも、簡易なマウント
アダプターで使用できる(G型対応で無くても良い)
いや、むしろ、このようなMFレンズは、ミラーレス機で
使用する方が、各種MFアシスト機能の利用の面で有利だ。
![_c0032138_18005954.jpg]()
今回NIKON機で使用しているのは「限界性能テスト」の
意味もある、つまり快適に使えるか否か?の研究である。
そして、ピクセルピッチが狭いD500と、こうした解像力
の高い新鋭レンズとの相性は良い筈だ。旧来、本レンズ
はNIKON Dfへの装着例で紹介する事が多かったが、
ピクセルピッチが7.2μmと異様に大きいDfは、むしろ
低解像力のオールドレンズとの相性が良い事であろう。
D500での使用は、本レンズでの最短撮影距離45cmと、
近代標準レンズとしては、やや不満な撮影倍率の課題を
解消するには役に立つ。そして、いざとなれば1.3倍の
クロップも効くので、さらにその点に対しては効果的だ。
だが、D500でのMFでのピント合わせは厳しい。
ファインダーやスクリーンの性能が(標準品では)
低すぎるのだ。
一応フォーカスエイドは動作するが、ミラーレス機の
各種MFアシスト機能と比べると、いかにも貧弱だ。
ピントの厳密性を狙ってライブビューモードとして
拡大しても、拡大解除ボタンが無く、撮影前の構図確認
が出来ない、という劣悪な操作性だ。(注:これを
解除するには、拡大ボタンを押した回数だけ縮小ボタン
を押さなければならない。これは他のNIKON機も同じ)
おまけに、ライブビューモードに固定は出来ず、電源を
ONするたびに一々ライブビューにしなくてはならないし、
そもそもライブビューにしたら、正しいカメラの構えが
出来ず、手ブレを誘発する。
設計者側は三脚を立てた撮影技法しか想定していないの
かも知れないが、現代撮影技法では、99%以上が手持ち
撮影であろうし、本ブログでは元々三脚は完全非推奨だ。
(まあ、矛盾だらけの仕様・操作系コンセプトである)
さて、本レンズは画像周辺に至るまで収差補正が良く
行き届いていると思われ、画質向上の目的でAPS-C機の
使用や、あるいはクロップ操作を行う必然性は無い。
まあ、私は所有していないが、フルサイズの高画素機
(5000万画素以上)との相性が良いレンズであろう。
![_c0032138_18005912.jpg]()
ディスタゴン構成のレトロフォーカス型は、標準レンズ
としては初の構成であろう。その新設計の意気込みは
十分に伝わってきて、感覚的にも綺麗な画像が得られる。
弱点は勿論「有名ブランド」によるコスパの悪さだ。
<Milvus50/1.4 詳細評価点>
描写・表現力=★★★★★
マニアック度=★★★★★
コスパ =★★
エンジョイ度=★★★
必要度 =★★☆
総合評価点 =3.5
特別加点 =0.4(合計3.9)
評価点はやはり伸び悩みだ。コスパの悪さはこれでも
最小限と見なしている。ニコン用標準は、他にも星の数
ほどあるので、本レンズである必然性は少ないという事だ。
あえて許せる点は、ニコンFマウントで買えば、他社機
利用での汎用性が高くなるという点であろう。
(だから、EFマウントで買うのは不利である。そして、
FマウントMFレンズをEOS一眼レフやEOSミラーレス機
に装着する事は、マウントアダプターを介して可能だ)
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では、4番目のエントリー(対戦)レンズ。
![_c0032138_18010703.jpg]()
レンズ名:FUJIFILM FUJINON XF56mm/f1.2 R APD
レンズ購入価格:112,000円(中古)(以下APD56/1.2)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1(APS-C機)
2014年発売の、初のAF搭載型アポダイゼーション
(APD)レンズ。
アポダイゼーションとは何か?を説明すると長くなる、
過去記事で何度も繰り返し解説しているので、そこは
ばっさりと割愛する。
![_c0032138_18010708.jpg]()
しかし、アポダイゼーション光学エレメントを搭載すれば、
どれも、とてつもなく高描写力のレンズになるのか?
といえば、そんな事は全くなく、本レンズは記事執筆時点
で4本存在するアポダイゼーションの中では、3番目の
順位に評価される描写表現力だ。
(特殊レンズ第0回「アポダイゼーション・グランドスラム」
特集記事参照)
(注:記事執筆後にCANONより5本目のアポダイゼーション
レンズが発売されている)
若干の描写力上の弱点は見てとれるが、それでも一般の
レンズに比べて、描写表現力上のアドバンテージは残る。
課題は、定価20万円以上(+税)と極めて高価な価格で
ある事、そして、XマウントAPS-C機以外では使えない事、
さらには、Xマウント機は、像面位相差AF機能を搭載して
いたとしても、本レンズの巨大なガラス質量を正確に
コントロールする事は困難で、AF(そしてMFも)速度や
精度や操作系に多大な問題点を持つ事である。
人物撮影に向く換算画角(84mm相当)とはなるが、
その(業務上での)目的には、AF/MFの課題により、
正直言って全く使えない。
ボケの良好さを活かした自然観察分野の近接撮影も
システム上のAF/MFの弱点が大きくて向かない。
結局「用途開発」が大変難しいレンズではあるが、その
仕様上の魅力は非常に大きい。典型的な上級マニア向け
のレンズである。
![_c0032138_18010790.jpg]()
<APD56/1.2 詳細評価点>
描写・表現力=★★★★☆
マニアック度=★★★★★
コスパ =★★
エンジョイ度=★★★★☆
必要度 =★★★★★
総合評価点 =4.2
特別加点 =0.0(合計4.2)
総合評価点は悪くは無いが、特別加点は見送った。
まあ、どうみても一般的に受け入れられるレンズでは
無いからだ。
---
では、今回ラストの対戦レンズ。
![_c0032138_18011180.jpg]()
レンズ名:TAMRON SP 45mm/f1.8DiVC USD(F013)
レンズ購入価格:36,000円(中古)(以下、SP45/1.8)
使用カメラ:NIKON Df(フルサイズ機)
2015年発売のフルサイズ対応の単焦点小口径標準レンズ。
初級中級層から見れば、他社新鋭標準レンズがいずれも
開放F1.4の口径比を実現しているので、本レンズのF1.8
は「低性能、廉価版」などの印象を強く持つ事であろう。
よって、本レンズは市場で不人気であった。
その結果、姉妹レンズSP35/1.8とSP85/1.8を含め
発売から数年後には新品在庫品が多数中古市場に流通し、
連動して中古相場の下落も速かった、つまり、とても
買い易い価格となり、コスパが、なかなか良い。
![_c0032138_18011712.jpg]()
さて、開放F1.8の件だが、本レンズを手にしてみると
良くわかるのは「非常に大きいレンズ」という事だ。
フィルター径φ67mmは旧来のMF/AFの50mm/F1.4級
(φ49mm~φ55mmが主流)よりもはるかに大きく、
近年の新鋭50mm/F1.4級と比べても、ほぼ同等だ。
すなわち、開口径に非常に余裕を持った構造設計であり
かつ、開放F値を欲張っていない為、原理上、収差が発生
しずらく、F1.4級よりも高画質に設計が可能だ。
(注:他にも、この時代からのTAMRONでは単焦点レンズ
のフィルター径をφ67mmで統一する動きが見られる)
この原理と特徴が顕著に見られるのは、銀塩MF/AF時代
(1960年代~1990年代、一部2000年代にまで引継ぎ)
の標準レンズであり、ここではF1.4級大口径標準よりも
F1.7~F2.0の小口径標準の方が、たいてい描写力に
優れる事は、本シリーズ記事の読者であれば、もう
十分に理解している事実であろう。
だから、同じ理屈で、現代の新鋭レンズでも、F1.4級
を無理して作るよりも、余裕を持った設計でF1.8級を
作った方が高描写力が得られる可能性が高い。
その一例としては、レンズは近接撮影では一般的に描写
性能が悪化する為、その「設計上の性能限界」に応じて
最短撮影距離の仕様を制限しなければならない。
例えば、本記事冒頭のSIGMA A50/1.4の最短は40cm
である。これは旧来の変形ダブルガウス型6群7枚構成
のMF/AF標準レンズの最短45cmより、わずかに短縮に
成功しているが、その高性能なA50/1.4でも、そこが
仕様限界である。
だが、本SP45/1.8では、最単撮影距離は29cmと
驚異的である(マクロを除き、発売当時では最高性能)
つまり、そこまで最短を縮めても設計上の性能限界点を
下回らなかった、という事である。
しかし、例えば球面収差の補正を行いながら他の諸収差
の補正を行って、総合的な高解像力を得たとしても、
それだけがレンズの描写力としての評価とは言えない事
であろう。かといって、初級評価者が行うような、歪曲
収差、周辺減光、焦点移動などの簡便な評価項目のみを
検証したとしても、やはり無意味だ。たとえば前述の
DA★55/1.4で述べたようなボケ質や、ボケ遷移などの
感覚的な評価は、メーカー側の数値性能評価やユーザー
側の簡易項目評価には現れない性能である。
このあたりは、設計者や企画者のコンセプトやバランス
感覚にも大きく依存する。つまり、何を重視してレンズ
の特徴(長所)とするか?という点である。
その設計思想としては、本レンズはなかなか優れている。
また、標準レンズとしては初の手ブレ補正内蔵である。
まあこの点は、F1.8の標準レンズでは不用と思われる
スペックではあるが、ビギナー向けには付加価値となる
事であろう。
![_c0032138_18011793.jpg]()
弱点はただ1つ、本レンズの高性能は、カタログ
スペック上のF1.8という、ただその貧弱な数値だけを見て
初級中級層には魅力的に感じない、と、それだけである。
(まあ、性能の落ちるF1.4を使うより、高性能のF1.8
を使いたい、というのが上級者的発想だ。
ちなみに銀塩時代からの85mm中望遠レンズでも、F1.4級
は全滅に近く、実用上ではF1.8級中望遠に、はるかに
高い利点が存在していた)
なお、NIKON機用でも、電磁絞り方式では無く、通常の
機械絞り動作であるので、他社機、他マウント機への
装着汎用性は高い(注:姉妹レンズのSP85/1.8は
電磁絞り対応(E型)であるのて、汎用性が低くなる)
全体に地味なスペックであり、評価点はあまり伸びないと
は思うが、「特別加点」は、色々と追加できると思う。
<SP45/1.8詳細評価点>
描写・表現力=★★★★☆
マニアック度=★★★★
コスパ =★★★
エンジョイ度=★★★☆
必要度 =★★★★
総合評価点 =3.8
特別加点 =0.8(合計4.6)
やはり点数は悪くは無い。本SP45/1.8の「悲劇」は
メーカーやレンズ設計側の持つ「製品コンセプト」や
「性能のバランス感覚」が、現代での消費者層には、
うまく伝わらない、という事であろう。
![_c0032138_18011727.jpg]()
以下は、本レンズの企画時点でのTAMRON側では把握して
いなかったかも知れない点であるが・・
現代の高付加価値型機材(カメラ、レンズ)を欲しがる
消費者層は、ほぼ全てが初級層(ビギナー)である。
中上級層や、マニア層、職業写真家層などは、コスパが
悪化してしまった、それら新鋭機材には、もう殆ど興味を
持っていないのだ。
ある程度の撮影スキル(技能)があれば、1~2世代古い
機材でも十分に使いこなせる。
だから、上級層は皆、古い機材を使い続け、初級層のみが
ピカピカの高付加価値型の新製品を使っているという状況が、
近年の各地でのカメラマンの様子から如実にわかる。
よって、ユーザー側での新製品のスペック等への理解度も、
従前の時代よりも、確実に大幅に低下している。
だから、2010年代の製品では、数値スペックを「盛る」
必要がある(カメラでは、フルサイズ、高画素、高速連写、
高感度、手ブレ補正・・ レンズでは超音波モーター、
手ブレ補正の段数、開放F値、等のカタログ数値を高める)
そんな状況でF1.8級の高性能レンズを発売したところで、
購入ターゲットである新規のビギナー層では、その数字を
見るだけで、F1.4級レンズよりもスペックが劣るから、
誰も欲しいとは思わないのだ。
これが売れるとすれば、真のスペックを見抜く力がある
上級層が新品在庫処分や中古市場で相場が下落した時点
で、コスパが適正であると判断した場合のみであろう。
・・でも、その流通では、メーカー側は儲からないのだ。
やはりスペックを「盛って」、ビギナー層に新品レンズを
買ってもらわないと、現代での市場戦略は成り立たない。
加えて、上級層やマニア層は50mm前後の標準レンズは
他にも必ず所有している、わざわざ新規の標準レンズを
追加して買う必要は殆ど無い訳だ。
メーカー側から見れば「失敗作」とも言えるかも知れないが、
売買の行為を「勝負」とすれば、これらを買う事は、消費者
側から見れば「勝ち」である、つまり必携のレンズとなる。
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さて、これで「最強標準レンズ」の最終順位が決定した。
1位:4.6点:TAMRON SP45/1.8
2位:4.5点:PENTAX DA55/1.4
3位:4.4点:SIGMA A50/1.4
3位:4.2点:FUJIFILM APD56/1.2
5位:3.9点:Zeiss Milvus50/1.4
総合優勝はやはり、地味なスペックながら、総合的な
設計コンセプトが秀逸であったTAMRON SP45/1.8と
なった。中古相場も安価であり、新鋭レンズ群の中で
唯一コスパ点の減点が無い、まあこれは中上級層では
必携の標準レンズであろう。
準優勝としては、「感覚的設計」による独特の描写力
を発揮する、DA★55/1.4がランクイン。
ただし、フルサイズ対応ではなく、さほどの高解像力仕様
でも無い為、2010年代前半迄のPENTAX機と組み合わせた
場合でのみ、その独特の世界観(空気感)を実感できる
レンズだろう。少々古い、とも言い換える事もできるが
最新のレンズだけが良いレンズという訳でも無い。
DA★55/1.4を使う為だけに、その時代の例えばPENTAX
K-5等をアサインする(あてがう)事も十分に有りだが
本レンズはまあ、多少はマニア層向けだ。
3位には定番のSIGMA Art50/1.4が入賞した。
中級層以上向けには、最も無難と思われる標準レンズと
しての選択肢となる。ただし、手ブレ補正機能が無いので、
手ブレ限界シャッター速度やらISO低速限界の設定といった
要素の意味がわからない初級層では、残念ながら使いこなす
事はできない。また、重量級レンズである事もあいまって、
カメラの構えがちゃんと出来ていなければ、全ての撮影
写真が手ブレを起こす危険性もある。まあ、もっとも、
高額なレンズなので初級層が買うような機材では無い。
SIGMA A50/1.4は、あくまで「硬派なレンズ」なのだ。
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さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
「決勝戦」の対戦記事は終了だ。
なお、本シリーズは「各焦点距離別の選手権」記事として
継続予定である。
開放F値等によるカテゴリー別で予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。
本シリーズ記事は予選を終え、いよいよ決勝リーグに突入
したのだが、今回は、これまで都合15記事、紹介(対戦)
標準レンズ数、約80本という中で、性能面等の評価が
暫定上位となったレンズによる最終決戦(決勝戦)だ。
まず決勝戦への出場(選出)レンズ名を5本記載する。
1)SIGMA Art 50mm/f1.4
2)PENTAX-DA 55mm/f1.4
3)Carl Zeiss Milvus 50mm/f1.4
4)FUJIFILM XF56mm/f1.2 APD
5)TAMRON SP 45mm/f1.8
これは省略表記である、正式なレンズ名は各々後述する。
そして、APS-C機専用、フルサイズ用、ミラーレス機用、
一眼レフ用が混在し、時代も2000年代~2010年代と、
若干のばらつきがある。
コスパ面の評価もあるので、新しい(高価な)レンズの
方が常に有利だとは限らない。
ただ、やはり総合描写力の優位性で、この標準レンズの
カテゴリーでは、近代レンズのみが決勝戦への進出となった。
各レンズの詳細や評価方法・評価点は追って述べていこう。
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さて、まずは今回最初の決勝進出レンズ。

レンズ購入価格:72,000円(中古)(以下、A50/1.4)
使用カメラ:CANON EOS 6D(フルサイズ機)
2014年発売の大口径単焦点AF標準レンズ。
当初、一眼レフ用マウント版のみの発売であったが、
近年に、SONY E(FE)マウントや、L(ミラーレス)
マウント版が追加されている。
(ただし、ミラーレス版は、一眼用レンズの後部に
マウントアダプターを追加したような形状だ)

型等)とは一線を画す新規設計で、8群13枚である。
もう、こういう複雑な構成では、プラナー型であるとか、
なんとか型、とかいう呼び名も、もはや当てはまらない。
まあ、諸収差の低減と解像力の向上を狙ったコンセプト
の新世代高描写力レンズではあるが、大きく重く高価な
「三重苦」の弊害が、必然的にのしかかる。
さて、今回紹介の各レンズは、本シリーズの過去の
予選記事でいずれも紹介済みであるので、個別のレンズに
ついての特徴などの詳細は大幅に割愛する。
で、以前の記事でも書いたが、本シリーズのような記事を
システマティックに執筆するには、準備期間が2~3年も
かかってしまう。
本決勝戦では、その準備期間の時点(2017年より)で
想定された、最も優秀と思われる標準レンズを集めた
つもりではあるが、その準備期間中にも、新規の高性能
標準レンズが、いくつか発売されている。
具体的には、HD PENTAX-D FA★50mm/f1.4 SDM AW
やTOKINA opera 50mm/f1.4 FF 等がそれであるが
これらは未所有だ。まあ、趣味の範囲で、全ての
新製品を次々に購入できる筈もないので、やむを得ない
話である。そして、それら新鋭レンズは、非常に高価
でもある、DFA50/1.4は約18万円、opera50/1.4は
約14万円の定価だ、どうみてもコスパが悪そうなのだが、
でもまあ、この2本は気にはなっているので、後年に
中古等が適正な相場になったら購入するかも知れない。
それと、その期間で、多数の新鋭海外製(中国製等)
のレンズが新発売されている。それらの一部は、過去の
名レンズの設計を縮小コピーして製造されたもので、
(=ジェネリック・レンズ)写りが良く、かつ安価だ。
これらも評価が間に合っていなく、本シリーズには不参戦
であるが、参考の為「七工匠55/1.4」は過去のプラナー
系85mm/F1.4を、2/3程度に縮小した設計で、なかなか
優れたレンズである、本シリーズのB決勝戦あたりには
進出できていたかも知れない。
また、カメラメーカー純正の高級標準レンズも、他に
3~4本程存在している。だが、これらは余り購入する
気にはなれない。純正品は、例えサードパーティ品と
同等の性能であっても、ブランド銘により高価になって
しまうからだ、すなわちコスパが悪いと判断している。
(注:NIKON AF-S 58mm/F1.4Gは購入している。しかし
本シリーズ記事には間に合わなかった為、欠場とする)

一般に購入可能な範囲で、コスパが比較的良いという
特徴も兼ね備えているが、それでも高価すぎると感じた
場合には、コスパ点の加点は、まず有り得ない。
で、もし前述のようなメーカー純正等の高額レンズが
ノミネートされたとしても、コスパ点の大減点により
優勝あるいは上位入賞は不可能に近くなってしまう訳だ。
ただ、もしこれを「総合評価点」だけで決勝戦進出や
ランキングを決めるとしたら、実の所、他のレンズが
ゾロゾロと入ってくる事であろう。
具体的には、
*MF時代の小口径標準(コスパがとんでもなく良い)
*AF時代の標準マクロ(描写力とコスパが良い)
*エントリー標準レンズ(コスパが非常に良い)
・・が、ランキング上位を独占してしまうと思われる。
(事実、「ハイコスパ名玉編」記事では、そうなった)
しかし、正直、それらの標準レンズは「チャンピオン」と
呼ぶには、あまりに貫禄が無い(汗)
まあ一応、「高性能・高描写力」である事が、少なくとも
チャンピオン標準レンズにはふさわしいであろう。
まあ、近代レンズにおいては、カメラ市場の縮退により
全ての新鋭レンズが高付加価値化(高価格化)している。
よって、旧来のレンズと同じ感覚でコスパ評価をすると、
少々アンフェア(不公平)な印象も否めない。
そこで、その解決策としてなんらかの加点が必要だろう。
なので、今回の記事では、本来の評価データベースの
得点に対して、「特別加点」の項目を設けている。
これは、
【汎用性】
*特定の被写体のみならず、一般的、汎用的な用途に向く。
*特定のカメラとの組み合わせでのみ高性能が得られる
事なく、汎用的に多くのカメラに装着して使える。
【新鋭度】
*比較的新しいレンズである。
*話題性があり、入手性が高い。
【認知度】
*著名、または人気レンズである(一般ユーザーが好む)
*一般的に評価されるレンズである(マニアック度が強すぎない)
【硬派度】
*質実剛健である(無駄なスペックを持たない)
*設計コンセプトが秀逸である。
【付加性能】
*目立たない特徴的な長所を持つ(隠れ高性能レンズ)
において、1項目あたり0.2点づつを加点している。
この「特別加点」(最大1点)を加えた点数が、最終総合
順位を決める事となる。

本A50/1.4で紹介してみよう。
なお、各通常評価項目において、★は1点、☆は0.5点、
であり、5点満点だ。3点が標準(水準)点となる、
総合評価点は、単純に5項目の平均だ、これも3.0点が
標準点となる。
<A50/1.4 詳細評価点>
描写・表現力=★★★★☆
マニアック度=★★★★
コスパ =★★
エンジョイ度=★★★★
必要度 =★★★★☆
総合評価点 =3.8
特別加点 =0.6(合計4.4)
総合評価点は4点を超えると、まあ「名玉」の類となるが、
本決勝戦でも、なかなか4点を超えるレンズは多くは無い、
その原因は、殆どがコスパ点の減点である。
(まあ、その為に特別加点で調整している次第だ)
これらの評価項目の内、「必要度」とは、本来は趣味撮影の
範疇では「所有するべきか否か?」という、やや曖昧な
評価である。これはレンズ単体での話に限らず、たとえば
そのマウントにおいて、他に代替すべきレンズが少ない
場合など(例:そのマウントでは純正マクロレンズがあまり
優秀では無かったりコスパが悪かったりすれば、当該マウント
でのサードパーティ製マクロは必要度が高くなる)も評価点
の加点の対象となる。
そして、今回の決勝戦では、趣味撮影の視点に加えて、
業務撮影等における「実用性」も必要度の評価に加えている。
つまり、あまりに趣味性の強いレンズで、使いこなしが困難
などで、実用的な使用が厳しい場合は、この評価点が低くなる
という訳だ。この事は「マニアック度」と相反する要素である
から、両者の評価点を同時に高くする事は難しい。
そして、前述のように、「特別加点」も加わっている。
ここも、通常評価項目と相反する要素があり、必ずしも
加点が得られる訳でも無い。
こうした広範囲の評価を、全て高得点で切り抜けた優秀な
レンズが、優勝に値するレンズになるという事だ。
本A50/1.4は、さほど悪い評価点ではない、以降登場の
レンズとの比較においても、悪い位置にはならないであろう。
---
では、2番目の決勝エントリー(対戦)レンズ。

レンズ購入価格:42,000円(中古)(以下、DA55/1.4)
使用カメラ:PENTAX KP(APS-C機)
2009年発売のAPS-C機専用AF標準(中望遠画角)レンズ。

としてのコンセプトで開発されたレンズだと思われる。
(FA85/1.4の2/3スケールダウン設計の可能性も高い)
設計者も同一、という噂も聞いていて、まあ、確かに
両レンズの持つ「雰囲気」は酷似している。
(注:FA★85/1.4は、ミラーレス・マニアック名玉編
第1回記事等参照)
具体的に何処が似ているか?という点は、言葉で説明
する事は難しい。ここからはあくまで感覚的な話だが、
両レンズをカメラに装着した場合の映像の印象がある、
これについては、ミラーレス機のEVFで見るよりも、
一眼レフの光学ファインダーの方が若干わかりやすいか?
恐らく、こういう風なレンズの設計技法は、現代で主流
となっているコンピューター設計(数値特性条件を入力し
自動的にレンズ構成を計算させる)ではなく、手動計算に
よる設計ではなかろうか? 昔ながらの設計上のノウハウ
を活用し、感覚的にそれを微調整していって、一種独特な
設計上の特徴を創り上げているように思える。
このような「雰囲気」は、ミラーレス名玉編第一位の名玉
FA77/1.8Limitedにも近い、いずれのレンズも、例えば
解像力や収差補正を主眼には置かず、「ボケの遷移」に
重点を置いているように感じるのだ。
あくまで感覚的な話だが、銀塩時代の名玉プラナー系
レンズは、ピント面とボケ部が、かっちりと分かれていて
あえて言うならば「シャープな被写体画像を切り抜いて、
綺麗な背景ボケ部に貼り付けたような」印象がある。
対してFA★85/1.4やFA77/1.8、本DA★55/1.4は、
被写体のピント面からボケ部に繋がるまでの変化(遷移)
が、かなり滑らか(スムース)であるように感じるのだ。
これはピント面の「くっきり感」が、貼り付けたような
印象にならず、とても自然な描写傾向だ。
まあ、この話もまた非常に「感覚的」な話である。
でも、設計が感覚的なものを重視しているならば、
それを使い・評価する側でも感覚値を重視するしかない。
こういう話は、「数値性能」を重視した設計や評価では
決して出来ない事だ。
PENTAXでは、2000年代前半において、この「雰囲気」を
レンズカタログ上では「空気感」と記載していた。
あまりに概念的で曖昧なキャッチコピーなので、それに
反応するユーザーは少なかったとは思うのだが、まあ
今にして思えば「言い得て妙」であったと思う。

<DA55/1.4 詳細評価点>
描写・表現力=★★★★★
マニアック度=★★★★☆
コスパ =★★★★
エンジョイ度=★★★★☆
必要度 =★★★★☆
総合評価点 =4.5
特別加点 =0.0(合計4.5)
総合評価点は非常に高得点である。この高得点をもって
かつてのミラーレス・マニアックス名玉編では、
堂々の第三位にランキングされた名レンズである。
ただ、その記事の時代からは既に数年が経過していて、
その後、本決勝戦にエントリーしているような、
新鋭の超高性能標準レンズが多数発売され、いつの間にか
本レンズも、発売後十数年のセミ・オールドレンズに
なってしまった。
申し訳ないが、特別加点を行う要素も、もはや無い。
ただまあ、恐らくだが現代においては、もう手動設計等が
できるような老練のベテランレンズ設計者などは現存しない
事であろう・・・
であれば、もう本DA★55/1.4は「最後の伝統工芸レンズ」
であるかも知れない訳だ。評価項目には無いが、その
「歴史的価値」は高い。

との差異は気になるところであろう、ただ、その新レンズ
がフルサイズ対応で、しかも高価(18万円)だから、
「優れたレンズだ」と思い込むのは早計だ。
価格の高さは、高付加価値(高利益)型商品を展開しない
と、カメラ(レンズ)市場が維持できないからであって、
それはメーカー(や市場)側の都合によるものだ。
消費者側としては安くて良いレンズの方が当然好ましい。
現状では、それを持っていないので何とも評価はできないが、
後年、いずれそれを入手した時に、詳しく比較してみよう。
ただ、もう結果は予想がついている。それは良い意味でも
悪い意味でも「全然別物である」という結論だ。
だから、どちらか一方を選ぶという訳には行かない筈だ、
被写体の状況や、撮影者が求める表現により、両者は
異なるシチュエーションで活躍できる事であろう。
---
では、3番目の対戦レンズ。

レンズ購入価格:85,000円(中古)(以下、Milvus50/1.4)
使用カメラ:NIKON D500(APS-C機)
2016年発売の高解像力仕様MF大口径標準レンズ。
カール・ツァイス銘ではあるが、国産のコシナ製だ。
現代のカールツァイス社は、カメラ用レンズの生産を
もう殆ど行っていないと思われ、全て(?)が日本製
となっている事であろう。

何十年も高性能レンズを作り続けているコシナ製の方が
現代となっては、むしろ「品質や性能に信頼が置ける」
という事となり、はるか戦前からの「有名ブランド」も
現代においては実質的な意味は何も無い。
(嫌らしい提案をすれば、ツァイスとのブランド提携を
解消してもらって、同等の性能のレンズを、コシナ銘で
安価に売ってもらった方が、消費者側としては、遥かに
嬉しい。どうせ価格の差分は、ツァイス社にブランド料
として払っているのだろうから、コシナ社も損はしない。
問題点は、そうした「真の実力値」を見抜けず、ブランド
銘だけに左右されてしまう消費者側の、その価値観だ)
さて、本Milvus50/1.4は、ニコンマウント品であり、
「ZF2」仕様であるから、NIKON製デジタル一眼レフの
全ての機種に装着しても正常に絞り値操作が電子ダイヤル
で可能である。NIKON高級機で必須であったレンズ情報の
手動設定も不要だ。それと、絞り環が存在するし、MFでも
あるので、ほぼ全てのミラーレス機にも、簡易なマウント
アダプターで使用できる(G型対応で無くても良い)
いや、むしろ、このようなMFレンズは、ミラーレス機で
使用する方が、各種MFアシスト機能の利用の面で有利だ。

意味もある、つまり快適に使えるか否か?の研究である。
そして、ピクセルピッチが狭いD500と、こうした解像力
の高い新鋭レンズとの相性は良い筈だ。旧来、本レンズ
はNIKON Dfへの装着例で紹介する事が多かったが、
ピクセルピッチが7.2μmと異様に大きいDfは、むしろ
低解像力のオールドレンズとの相性が良い事であろう。
D500での使用は、本レンズでの最短撮影距離45cmと、
近代標準レンズとしては、やや不満な撮影倍率の課題を
解消するには役に立つ。そして、いざとなれば1.3倍の
クロップも効くので、さらにその点に対しては効果的だ。
だが、D500でのMFでのピント合わせは厳しい。
ファインダーやスクリーンの性能が(標準品では)
低すぎるのだ。
一応フォーカスエイドは動作するが、ミラーレス機の
各種MFアシスト機能と比べると、いかにも貧弱だ。
ピントの厳密性を狙ってライブビューモードとして
拡大しても、拡大解除ボタンが無く、撮影前の構図確認
が出来ない、という劣悪な操作性だ。(注:これを
解除するには、拡大ボタンを押した回数だけ縮小ボタン
を押さなければならない。これは他のNIKON機も同じ)
おまけに、ライブビューモードに固定は出来ず、電源を
ONするたびに一々ライブビューにしなくてはならないし、
そもそもライブビューにしたら、正しいカメラの構えが
出来ず、手ブレを誘発する。
設計者側は三脚を立てた撮影技法しか想定していないの
かも知れないが、現代撮影技法では、99%以上が手持ち
撮影であろうし、本ブログでは元々三脚は完全非推奨だ。
(まあ、矛盾だらけの仕様・操作系コンセプトである)
さて、本レンズは画像周辺に至るまで収差補正が良く
行き届いていると思われ、画質向上の目的でAPS-C機の
使用や、あるいはクロップ操作を行う必然性は無い。
まあ、私は所有していないが、フルサイズの高画素機
(5000万画素以上)との相性が良いレンズであろう。

としては初の構成であろう。その新設計の意気込みは
十分に伝わってきて、感覚的にも綺麗な画像が得られる。
弱点は勿論「有名ブランド」によるコスパの悪さだ。
<Milvus50/1.4 詳細評価点>
描写・表現力=★★★★★
マニアック度=★★★★★
コスパ =★★
エンジョイ度=★★★
必要度 =★★☆
総合評価点 =3.5
特別加点 =0.4(合計3.9)
評価点はやはり伸び悩みだ。コスパの悪さはこれでも
最小限と見なしている。ニコン用標準は、他にも星の数
ほどあるので、本レンズである必然性は少ないという事だ。
あえて許せる点は、ニコンFマウントで買えば、他社機
利用での汎用性が高くなるという点であろう。
(だから、EFマウントで買うのは不利である。そして、
FマウントMFレンズをEOS一眼レフやEOSミラーレス機
に装着する事は、マウントアダプターを介して可能だ)
---
では、4番目のエントリー(対戦)レンズ。

レンズ購入価格:112,000円(中古)(以下APD56/1.2)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1(APS-C機)
2014年発売の、初のAF搭載型アポダイゼーション
(APD)レンズ。
アポダイゼーションとは何か?を説明すると長くなる、
過去記事で何度も繰り返し解説しているので、そこは
ばっさりと割愛する。

どれも、とてつもなく高描写力のレンズになるのか?
といえば、そんな事は全くなく、本レンズは記事執筆時点
で4本存在するアポダイゼーションの中では、3番目の
順位に評価される描写表現力だ。
(特殊レンズ第0回「アポダイゼーション・グランドスラム」
特集記事参照)
(注:記事執筆後にCANONより5本目のアポダイゼーション
レンズが発売されている)
若干の描写力上の弱点は見てとれるが、それでも一般の
レンズに比べて、描写表現力上のアドバンテージは残る。
課題は、定価20万円以上(+税)と極めて高価な価格で
ある事、そして、XマウントAPS-C機以外では使えない事、
さらには、Xマウント機は、像面位相差AF機能を搭載して
いたとしても、本レンズの巨大なガラス質量を正確に
コントロールする事は困難で、AF(そしてMFも)速度や
精度や操作系に多大な問題点を持つ事である。
人物撮影に向く換算画角(84mm相当)とはなるが、
その(業務上での)目的には、AF/MFの課題により、
正直言って全く使えない。
ボケの良好さを活かした自然観察分野の近接撮影も
システム上のAF/MFの弱点が大きくて向かない。
結局「用途開発」が大変難しいレンズではあるが、その
仕様上の魅力は非常に大きい。典型的な上級マニア向け
のレンズである。

描写・表現力=★★★★☆
マニアック度=★★★★★
コスパ =★★
エンジョイ度=★★★★☆
必要度 =★★★★★
総合評価点 =4.2
特別加点 =0.0(合計4.2)
総合評価点は悪くは無いが、特別加点は見送った。
まあ、どうみても一般的に受け入れられるレンズでは
無いからだ。
---
では、今回ラストの対戦レンズ。

レンズ購入価格:36,000円(中古)(以下、SP45/1.8)
使用カメラ:NIKON Df(フルサイズ機)
2015年発売のフルサイズ対応の単焦点小口径標準レンズ。
初級中級層から見れば、他社新鋭標準レンズがいずれも
開放F1.4の口径比を実現しているので、本レンズのF1.8
は「低性能、廉価版」などの印象を強く持つ事であろう。
よって、本レンズは市場で不人気であった。
その結果、姉妹レンズSP35/1.8とSP85/1.8を含め
発売から数年後には新品在庫品が多数中古市場に流通し、
連動して中古相場の下落も速かった、つまり、とても
買い易い価格となり、コスパが、なかなか良い。

良くわかるのは「非常に大きいレンズ」という事だ。
フィルター径φ67mmは旧来のMF/AFの50mm/F1.4級
(φ49mm~φ55mmが主流)よりもはるかに大きく、
近年の新鋭50mm/F1.4級と比べても、ほぼ同等だ。
すなわち、開口径に非常に余裕を持った構造設計であり
かつ、開放F値を欲張っていない為、原理上、収差が発生
しずらく、F1.4級よりも高画質に設計が可能だ。
(注:他にも、この時代からのTAMRONでは単焦点レンズ
のフィルター径をφ67mmで統一する動きが見られる)
この原理と特徴が顕著に見られるのは、銀塩MF/AF時代
(1960年代~1990年代、一部2000年代にまで引継ぎ)
の標準レンズであり、ここではF1.4級大口径標準よりも
F1.7~F2.0の小口径標準の方が、たいてい描写力に
優れる事は、本シリーズ記事の読者であれば、もう
十分に理解している事実であろう。
だから、同じ理屈で、現代の新鋭レンズでも、F1.4級
を無理して作るよりも、余裕を持った設計でF1.8級を
作った方が高描写力が得られる可能性が高い。
その一例としては、レンズは近接撮影では一般的に描写
性能が悪化する為、その「設計上の性能限界」に応じて
最短撮影距離の仕様を制限しなければならない。
例えば、本記事冒頭のSIGMA A50/1.4の最短は40cm
である。これは旧来の変形ダブルガウス型6群7枚構成
のMF/AF標準レンズの最短45cmより、わずかに短縮に
成功しているが、その高性能なA50/1.4でも、そこが
仕様限界である。
だが、本SP45/1.8では、最単撮影距離は29cmと
驚異的である(マクロを除き、発売当時では最高性能)
つまり、そこまで最短を縮めても設計上の性能限界点を
下回らなかった、という事である。
しかし、例えば球面収差の補正を行いながら他の諸収差
の補正を行って、総合的な高解像力を得たとしても、
それだけがレンズの描写力としての評価とは言えない事
であろう。かといって、初級評価者が行うような、歪曲
収差、周辺減光、焦点移動などの簡便な評価項目のみを
検証したとしても、やはり無意味だ。たとえば前述の
DA★55/1.4で述べたようなボケ質や、ボケ遷移などの
感覚的な評価は、メーカー側の数値性能評価やユーザー
側の簡易項目評価には現れない性能である。
このあたりは、設計者や企画者のコンセプトやバランス
感覚にも大きく依存する。つまり、何を重視してレンズ
の特徴(長所)とするか?という点である。
その設計思想としては、本レンズはなかなか優れている。
また、標準レンズとしては初の手ブレ補正内蔵である。
まあこの点は、F1.8の標準レンズでは不用と思われる
スペックではあるが、ビギナー向けには付加価値となる
事であろう。

スペック上のF1.8という、ただその貧弱な数値だけを見て
初級中級層には魅力的に感じない、と、それだけである。
(まあ、性能の落ちるF1.4を使うより、高性能のF1.8
を使いたい、というのが上級者的発想だ。
ちなみに銀塩時代からの85mm中望遠レンズでも、F1.4級
は全滅に近く、実用上ではF1.8級中望遠に、はるかに
高い利点が存在していた)
なお、NIKON機用でも、電磁絞り方式では無く、通常の
機械絞り動作であるので、他社機、他マウント機への
装着汎用性は高い(注:姉妹レンズのSP85/1.8は
電磁絞り対応(E型)であるのて、汎用性が低くなる)
全体に地味なスペックであり、評価点はあまり伸びないと
は思うが、「特別加点」は、色々と追加できると思う。
<SP45/1.8詳細評価点>
描写・表現力=★★★★☆
マニアック度=★★★★
コスパ =★★★
エンジョイ度=★★★☆
必要度 =★★★★
総合評価点 =3.8
特別加点 =0.8(合計4.6)
やはり点数は悪くは無い。本SP45/1.8の「悲劇」は
メーカーやレンズ設計側の持つ「製品コンセプト」や
「性能のバランス感覚」が、現代での消費者層には、
うまく伝わらない、という事であろう。

いなかったかも知れない点であるが・・
現代の高付加価値型機材(カメラ、レンズ)を欲しがる
消費者層は、ほぼ全てが初級層(ビギナー)である。
中上級層や、マニア層、職業写真家層などは、コスパが
悪化してしまった、それら新鋭機材には、もう殆ど興味を
持っていないのだ。
ある程度の撮影スキル(技能)があれば、1~2世代古い
機材でも十分に使いこなせる。
だから、上級層は皆、古い機材を使い続け、初級層のみが
ピカピカの高付加価値型の新製品を使っているという状況が、
近年の各地でのカメラマンの様子から如実にわかる。
よって、ユーザー側での新製品のスペック等への理解度も、
従前の時代よりも、確実に大幅に低下している。
だから、2010年代の製品では、数値スペックを「盛る」
必要がある(カメラでは、フルサイズ、高画素、高速連写、
高感度、手ブレ補正・・ レンズでは超音波モーター、
手ブレ補正の段数、開放F値、等のカタログ数値を高める)
そんな状況でF1.8級の高性能レンズを発売したところで、
購入ターゲットである新規のビギナー層では、その数字を
見るだけで、F1.4級レンズよりもスペックが劣るから、
誰も欲しいとは思わないのだ。
これが売れるとすれば、真のスペックを見抜く力がある
上級層が新品在庫処分や中古市場で相場が下落した時点
で、コスパが適正であると判断した場合のみであろう。
・・でも、その流通では、メーカー側は儲からないのだ。
やはりスペックを「盛って」、ビギナー層に新品レンズを
買ってもらわないと、現代での市場戦略は成り立たない。
加えて、上級層やマニア層は50mm前後の標準レンズは
他にも必ず所有している、わざわざ新規の標準レンズを
追加して買う必要は殆ど無い訳だ。
メーカー側から見れば「失敗作」とも言えるかも知れないが、
売買の行為を「勝負」とすれば、これらを買う事は、消費者
側から見れば「勝ち」である、つまり必携のレンズとなる。
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さて、これで「最強標準レンズ」の最終順位が決定した。
1位:4.6点:TAMRON SP45/1.8
2位:4.5点:PENTAX DA55/1.4
3位:4.4点:SIGMA A50/1.4
3位:4.2点:FUJIFILM APD56/1.2
5位:3.9点:Zeiss Milvus50/1.4
総合優勝はやはり、地味なスペックながら、総合的な
設計コンセプトが秀逸であったTAMRON SP45/1.8と
なった。中古相場も安価であり、新鋭レンズ群の中で
唯一コスパ点の減点が無い、まあこれは中上級層では
必携の標準レンズであろう。
準優勝としては、「感覚的設計」による独特の描写力
を発揮する、DA★55/1.4がランクイン。
ただし、フルサイズ対応ではなく、さほどの高解像力仕様
でも無い為、2010年代前半迄のPENTAX機と組み合わせた
場合でのみ、その独特の世界観(空気感)を実感できる
レンズだろう。少々古い、とも言い換える事もできるが
最新のレンズだけが良いレンズという訳でも無い。
DA★55/1.4を使う為だけに、その時代の例えばPENTAX
K-5等をアサインする(あてがう)事も十分に有りだが
本レンズはまあ、多少はマニア層向けだ。
3位には定番のSIGMA Art50/1.4が入賞した。
中級層以上向けには、最も無難と思われる標準レンズと
しての選択肢となる。ただし、手ブレ補正機能が無いので、
手ブレ限界シャッター速度やらISO低速限界の設定といった
要素の意味がわからない初級層では、残念ながら使いこなす
事はできない。また、重量級レンズである事もあいまって、
カメラの構えがちゃんと出来ていなければ、全ての撮影
写真が手ブレを起こす危険性もある。まあ、もっとも、
高額なレンズなので初級層が買うような機材では無い。
SIGMA A50/1.4は、あくまで「硬派なレンズ」なのだ。
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さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
「決勝戦」の対戦記事は終了だ。
なお、本シリーズは「各焦点距離別の選手権」記事として
継続予定である。