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特殊レンズ・スーパーマニアックス(37)変則ズームレンズ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズをカテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では「変則ズームレンズ」を6本紹介しよう。

「変則ズームとは何か?」と言われても、明確な定義は
難しいが(汗) まあ、一般の初級中級層が想像したり
所有しているような、広角ズーム、標準ズーム、望遠ズーム
等とは、ちょっと毛色の違った、特殊なズームレンズ、
あるいは、その特殊な用法や利用目的を指す事とする。

なお、本記事では、レンズそのものの性能の話などは
最小限とする。多くは読者が欲しいと思うようなレンズ
群では決して無いからだ。記事内容の殆どが「余談」の

ような話となるが、まあ、事前に了承あれ。

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ではまず、最初のシステム
_c0032138_17195612.jpg
レンズは、smc PENTAX-F FISH-EYE 17-28mm/f3.5-4.5
(中古購入価格 38,000円)(以下、F17-28)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第4回記事、銀塩一眼第17回
記事で紹介の、発売年不明、恐らくは1980年代末頃
と思われる、かなり希少な魚眼ズームレンズ。
(注:昔から私は「FISH-EYE ZOOM/Fish-eye Zoom」等と
言い/書き続けてきたが、近年わかった事は、本レンズ
上には、ZOOMの文字はどこにも書かれていなかった・・)
_c0032138_17195683.jpg
で、「変則ズームとは何か?」という疑問については、
本レンズのような物が典型的な回答になる事であろう。

魚眼レンズにおいて、ズーム機構を持つものは、過去
より、本レンズを含めて数機種しか存在していないし、
いずれも発売している事すら、あまり知られていない、
とてもレアなレンズであるからだ。

まあ、初級中級層、あるいは初級マニア層であれば、
ズームレンズと言えば、その憧れは、「大三元」や
「小三元」であろう。
それらが何か? というのは、「匠の写真用語辞典
第9回記事」でも説明しているが、要は開放F値固定の
高級(高額)ズームレンズの事である。

例えばCANONデジタル一眼レフ用での、大三元ズーム
を上げておく(参考の為、記事執筆時点での定価も
掲載する)

EF16- 35mm/F2.8 LⅢ  USM:299,000円+税
EF24- 70mm/F2.8 LⅡ  USM:230,000円+税
EF70-200mm/F2.8 LⅢ IS USM:300,000円+税

つまり、この3本を全て揃える事が「大三元」であり
それが初級中級層での憧れな訳だ。

しかし、これらを全て新品で定価で購入すると、
税込みで、およそ90万円の予算が必要となる(汗)

業務用途などで機材購入予算が補填されているのならば
まだしも、個人の趣味の範囲で、そこまでレンズに予算を
かけられる裕福なユーザー層は非常に限られている。

そこで、上記のセットの開放F2.8の条件を少々
妥協して、開放F4のセットにダウングレードする。
EF16- 35mm/F4 L IS  USM:154,000円+税
EF24- 70mm/F4 L IS  USM:149,000円+税
EF70-200mm/F4 L IS Ⅱ USM:185,000円+税

こちらが「小三元」である。こちらならば3本での
購入予算は、およそ半額の50万円強で済む。

ただし、開放F4は暗く、当然、背景ボケ量が少ない。
そして、F2.8版に比べてAFセンサーの測距精度も落ちる。
(注:メーカー側では確信犯的に、F2.8級レンズ使用
時にAF性能が高まるようにチューニングを行っている。
そうすれば、初級中級層が「やはり大三元は凄い!
ピタリとピントが合う」等とビギナー評価をするからだ)
しかし、一部のF4版レンズにはF2.8版には無い、
IS(内蔵手ブレ補正)機能がある。

・・こうして、初級中級層は悩むのである。
まあ、ある意味絶妙な製品ラインナップと言えるであろう、
メーカー側の「さあ、どちらを買いますか?」という
スタンスが垣間見える。
で、これらが欲しいとなったら、他のレンズには、もう
目がいかない。
「大三元か、小三元か? それが問題だ・・」という
狭い視点での思考パターンに陥ってしまう感じである。
_c0032138_17195791.jpg
なお、上記はCANONでのケースだが、他社でも同様に
NIKON(Fマウント一眼レフ)でも、SONY(FEマウント
ミラーレス機)でも全く同様に大三元と小三元が存在する。
当然、各社での価格も大差無い。もし他社のどこかが
安価であれば、そればかりが売れて、自社の製品が
売れなくなるから、必然的に値段は各社同等となる。

ただ、ここで注意するのは、これらは「メーカーが売りたい」
商品なのだ、きっとそれは、必ずしも「ユーザーが買いたい」
商品とはイコールでは無いであろう。

けど、そのあたり、現代のマーケティング戦略は巧妙だ、
大三元や小三元を使う事が究極であり、ステータスでも
あるような風潮や文化を作り出してしまえば、それらの
高額レンズを買う為に、初級中級者は、お金を貯めて
せっせとカメラ業界に投資してくれるからだ。


「プロが使っている」などと言うのも、強力な売り文句
となるだろう、初級中級者層は、自身ではレンズ性能等の
「目利き」は出来ない訳だし、結局「誰かが良いと言った」
製品しか買う事は出来ない。
だったら簡単な話だ、「大三元レンズが良い」という
評判を、徹底的にネット上や雑誌等でバラまけば良い。

そして、ユーザーは、お金を貯めて高級レンズを買って
しまえば、もうそれが最高のレンズだと思いこんでしまう、
だから「やはり大三元レンズは凄いね、最高だよ!」
という感想や評価しか言わないし、それだけが広まっていく。

まあ、そんな調子なのだが、何かおかしくないだろうか?
何も疑問を感じないならば、せっせとお金を貯めて大三元
なり小三元を揃えたら良い。そうやって、アマチュア層が
大金を使ってくれる事で、現代のカメラ(レンズ)市場は
かろうじて成り立っている訳だ。

が、例えば、本ブログでは、何百本もの所有レンズ群を
紹介しているが、その中に、大三元も小三元も1本も
登場しない。レンズ資産総額では大三元が何セットも
買えるだけの金額を投資しているのにも係わらずだ。
その理由は、本ブログの読者であれば、言わずもがな、で
あろう、いずれも三重苦レンズでありコスパが悪いからだ。

勿論、撮影分野によっては、大三元ズームが必要なケースも
あるだろう、でも、その殆どは、業務撮影分野であろう。
趣味撮影分野のアマチュア層では、まず必要としないレンズ
群である。

すなわち「大三元や小三元が王道で究極だ」とする現代の
市場での志向性であれば、今回紹介するようなズームレンズ
は邪道も邪道、初級層が想像すらもしないような、変則的な
物ばかりだ、だから本記事においては、今回紹介のレンズ群
を「変則ズームレンズ」と呼んでいる訳だ。

さて、話の途中であるが、ここでレンズを交換する、
本レンズF17-28の話が出て来ない、とは言うなかれ、
過去記事で詳しく紹介済みだし、古いレンズなので
今更、指名買いで探すようなレンズでも無いからだ。

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では、次の変則ズーム
_c0032138_17200891.jpg
レンズは、TAMRON SP AF 10-24mm/f3.5-4.5 DiⅡ
(B001)(中古購入価格 29,000円)(以下、SP10-24)
カメラは、SONY α700 (APS-C機)

ミラーレス・マニアックス第52回記事で紹介の
2009年発売のAPS-C機専用AF超広角ズーム、
α700での換算画角は15~36mm相当となる。
_c0032138_17200890.jpg
またしても変わった仕様の(超広角)ズームであるが、
ただ、私にしてみれば、このズームは変則でも何でも無い。
仕様的には、ちょっとマニアックな所はあるかも知れないが、
特別な機能が入っている訳でもなく、その材料も、ただ単に
ガラスと金属の塊の製品だ。
もしこれが「竹細工」で出来ているならば(笑)真の
「変則ズーム」だろうが、幸か不幸か、写真用レンズで、
そこまで特殊な製品は無い。

例えばオーディオの世界では、通常は紙であるスピーカーの
振動板を、木製や金属製にしたり、他の変わった素材とする
ケースはよくある。マニア道としては、そういう変則的製品
の多い市場分野の方が、ある意味、興味深いかも知れない。

まあ、超広角ズームであっても、現代的な視点では、
珍しくも無いであろう。たとえば、前述のCANON製の
一眼レフ用レンズでフルサイズ対応のEF11-24mm/F4L
USMが存在するし(しかし、これは45万円もする・汗)

他社でも、フルサイズ対応の最広角は9mm位からある。
(注:魚眼レンズを除く。ここでは普通の超広角レンズ
であり、単焦点またはズームレンズの場合の話だ)

まあ、いまさらAPS-C機用の広角端10mmのズームは
驚くに値しない。これは換算15mmの画角にしかならず
銀塩時代から既に存在していた14mmレンズよりも狭い。

しかし、これ以上の広角が必要になるケースも非常に
稀であろうし、そんな滅多に使わないようなレンズに
何十万円も投資するのは、極めてコスパが悪くなる。

ちなみに、本SP10-24の中古購入価格は、約3万円と
比較的リーズナブルであり、描写力も悪く無い。
(注:近年では、もっと相場が下がっている)
業務撮影でも何度か使っていて、投資金額は、もう回収
済みである。業務用途として考えた場合、黒字になる
事は必須であり、高い機材を買っても、その機材で殆ど
収益が得られなかったら、それでは商売にならなくなる。

まあ、趣味用途の場合だけが、いくらでもお金をかけられる
という事となり、それが昂じて、現代のカメラ市場では
最新の高級(高額)機材を使っているのは、全てビギナー層
ばかり、という極端な状態になってきているのだ。
_c0032138_17200875.jpg
さて、本SP10-24ような超広角(ズーム)レンズは、撮影を
していて、さほど楽しいというものでも無いだろう。もし
これで極端に最短撮影距離が短ければ、それなりに他では
殆ど得られない独自の世界観が表現可能となるだろうが、
そういうレンズは、現状LAOWA 15mm/F4(本シリーズ
第17回記事等)しか存在しないだろうし、そのレンズも
また、かなり使いこなしが困難なレンズなので、逆に
その点で「エンジョイ度」が落ちてしまう。

ちなみに、本SP10-24の最短撮影距離は24cmと寄れず、
テレ端の24mm側で、ようやく「焦点距離10倍則」を
クリアする程度である。それより広角側では近接撮影での
不満点が大きくなり、結局、中遠距離撮影で被写体を広く
撮る技法にしか使用できない。

これの何が不満なのか?は、表現力が不足する事であり
別の言い方をすれば、「自分が思ったように撮れない」
という事とイコールである。

このあたりは実際に、こうした超広角ズームを使って
みないと、なかなかわかりにくい話かも知れない。
なお、本レンズだけが最短撮影距離が問題なのではなく
類似のスペックの超広角ズームは、他社製品を全て
見渡しても、ほとんどどれも同じようなものだ。

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では、ここからは、3本目のシステムだ。
_c0032138_17201761.jpg
レンズは、smc PENTAX-FA 28-70mm/f4 AL
(中古購入価格 3,980円)(以下、FA28-70)
に加えて、リバースリング・アダプターを使用。
カメラは、PENTAX K-5 (APS-C機)

ミラーレス・マニアックス第67回、ハイコスパ第8回記事
で紹介の、1990年代のAF小口径開放F値固定型標準ズーム。

なんの変哲も無い「標準ズーム」である。
ある意味、開放F値がF4固定なので、「小三元」の一種
であるかも知れない、しかし価格が違いすぎる。
小三元ズームは十数万円、本FA28-70は約4000円なので
価格差が40~50倍も異なるのだ。
(しかし、当然ながら性能が50倍も異なる訳では無い、
そこが「コスパ」の考え方の根幹となる)
_c0032138_17201796.jpg
本FA28-70は、個人的に「リバース撮影専用ズーム」
としている。それが何かを説明しはじめると長くなるし、
何故他のレンズではなく、本レンズなのだ?という理由も
含めて、前述の過去記事に詳しいので、興味があれば、
それらの記事を参照されたし。

ただまあ、普通は興味を持たない事であろうし、仮に
興味があったとしても、リバース撮影は超高難易度だ。
手持ちで自在に撮れるまでのスキルを得る事は困難で
あろうし、三脚を使ったとしたら被写体条件が限られて
しまい、撮るものが無くなってしまう。だから、この
「リバース撮影」というのは、銀塩時代から一応は存在
しでいる技法(または付属品)ではあったが、あまり
実際にこれを行っていたケースは多くは無い事であろう。

まあ、そういう状況であり、本FA28-70のズーム自体が
変則なのでは無く、この場合の「使用法」が変則なのだ。

ちなみに、今回の用法においては、いわゆるマクロ倍率
(撮影倍率)は、フルサイズセンサー換算で、約0.7倍~
約3倍の範囲のズーム(可変)(高倍率)マクロレンズ
となる。

だが、「それは凄い!」とは安易に思うなかれ、撮影倍率
が2倍を超えるようになると、手持ち撮影は極めて高難易度
となる。紙のように薄い被写界深度を、デジタル一眼レフ
のMFアシスト機能が何も無い貧弱な光学ファインダーで
合わせなければならないし、おまけに、被写体も撮影者も
常に動いていて、被写体ブレや手ブレを止めようにない。
これはPENTAX機の内蔵手ブレ補正を使っても無意味だ、
超近接撮影では、内蔵手ブレ補正の効果が無い前後方向
へのブレ(≒ピンボケ)が多発するからだ。

この状態であれば、内蔵手ブレ補正機能には拘らず
本来であれば任意のミラーレス機を用いて、EVFと
各種MFアシスト機能(ピーキングや拡大等)を併用
した方が、若干だが撮影難易度は下がるであろう。

_c0032138_20144334.jpg
さらには、強烈な「露光倍数」がかかる、仮に2倍の
撮影倍率としても、この値は公式より(1+2)x(1+2)=9
となり、これはシャッター速度が、通常撮影の1/9に
低下する事を意味する。(例:125秒→1/13秒)
K-5は高感度ISO51200が使えるので、ISO感度を高める
事で対応可能ではあるが、まあ、”現在のシャッター速度
を見落とす”等の、そういうスキルでは、まず撮れない。

結局、全ての点で高難易度となる、あまり本システムは
推奨できるもので無いので、これもあくまで「変則」だ。

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では、4本目のシステム
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レンズは、TAMRON 18-270mm/f3.5-6.3 DiⅡ VC PZD
(Model B008)(中古購入価格 17,000円)(以下、B008)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)

レンズマニアックス第10回記事で紹介の、2010年発売
高ズーム比15を特徴とする、APS-C機専用小型軽量
高倍率ズームレンズ。


換算画角は、ニコンAPS-C機の場合、27mm~405mm
さらにD500等では、「1.3倍クロップモード」が使え、
この時の換算画角は、焦点距離の2倍となり、36mm~
540mm相当となる。

_c0032138_17202524.jpg
このシステムには「変則」という要素は殆ど無い。
が、非常に軽量な超望遠ズームとして使える事から、
一般ユーザーが志向するような「150~600mm」の
超望遠ズームを狙う(買う)という状況から見れば、
十分に変則的であろう。

だが、150~600mmは、およそ2~3kgにも達する
重量級レンズだ。手持ち撮影が、ほぼ不可能な為、私も
そのスペックの超望遠ズームは購入していない。中古市場

には、それらが大量に流通していて安価なのだが・・

まあつまり、超望遠に憧れて買ってはみたものの、
重くて使いこなせないから、売却の玉数が多いのだろう。
まあ、現行製品群の中では、400mm超望遠ズームあたり
までが手持ちでの重量限界(約1.2kg)なのだ。

で、小型軽量という点はさておき、画角という一面から
見ても、150~600mmをフルサイズ機で使うよりは、
本B008レンズが有利な側面がある。
特に「引き」(広角)に強い為、遠距離から近距離に急速に
近づいてくるような被写体においては、極めて有効である。

具体例としては、本ブログの過去記事で複数回紹介の
「京都駅、大階段駆け上がり競技」であろうか。
これは100m程度先の選手が、階段を駆け上がって十数秒
後には目の前を通過する。選手の全身を入れようとした
場合、必要画角の変化は、遠距離では約300mm程度~
近距離では、およそ30mm前後となる為、本レンズ
でのクロップ無し(約27mm~405mm)で丁度良い。
(本B008は、元々、同競技の撮影用に購入している)
_c0032138_17202523.jpg
別に「階段駆け上がり」ではなく、普通の運動会等の
徒競走などでも、ほぼ同様の被写体の距離感覚となる
事であろう。だから、そういう一般的なスポーツ撮影
に強いレンズである。なお、ドラゴンボート競技撮影
でも近距離に艇が通過する会場の場合は、本レンズが
出動するケースがある。

ただ、高速で距離変化や移動がある被写体において
画角を連続的に変化させながら、AFもAEも追従させる
というのは、意外に高難易度の撮影となる。
AF性能に優れた機体(例:今回使用のD500)を使えば
済む、という訳でもなく、必ず撮影技能が要求される。

本B008レンズそのものの話だが、歪曲収差が大きいとか、
遠距離(望遠側)で解像力が低下する、ピエゾモーター
が遅いとか、VC(手ブレ補正)機能で視野が揺れる、
そもそも2010年代のNIKON製デジタル一眼レフとの
組み合わせで、何故か1段程度露出がアンダーになる
(NIKON機側の露出制御の問題か?)等、細かいいくつか
の弱点が存在するレンズであるが、それらは、そういう
弱点がある、とわかっているならば、全て回避可能な
レベルであり重欠点には成り得ない。
_c0032138_17202871.jpg
参考だが、実用的な高倍率(高ズーム比)ズームの先駆けと
なったのはTAMRON AF28-200mm Super Zoom F3.8-5.6
Aspherical XR [IF] MACRO (A03)
(2001年、ミラーレス・マニアックス補足編第4回記事)
であろうか? それ以前にも高倍率(高ズーム比)ズーム
は存在したが、あまり実用的な性能とは言いがたかった
状態だ。

本B08レンズは、そのA03型の正常進化系である。
(注:勿論、デジタル時代に入った為、APS-C機専用と
なったが、ここでは「コンセプト」の話をしている)
なお、本B008型の後、TAMRON社の高倍率ズーム製品は
16-300mm(B016)、18-400mm(B028)と、
順次ズーム比を高めていく傾向が見られるが、ズーム比
が大きくなれば、それなりに課題は出てくる(収差が
増えたり、重量が増すなど)ので、自身の利用目的に
合わせて適性なレンズを選択するのが良いであろう。
なお、本レンズB008であれば、極めて安価な中古相場
(1万円台)で購入できるので、「消耗用レンズ」として
酷使する利用法も悪くは無い。


まあ、あまりに「普通」のズームレンズではあるが、
「撮影用途にぴったりと合わせたレンズを購入する」
という意味では、初級中級者のレンズ購入感覚とは
ずいぶんと異なるであろう。その心理が「変則的」に
思えるかも知れないが、実は、それがレンズ購入の
真髄なのだ。つまり、用途の決まっていないレンズを
購入する事は、あまり望ましく無い訳だ。

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では、次のシステム
_c0032138_17203846.jpg
レンズは、SIGMA 15-30mm/f3.5-4.5 EX DG ASPHERICAL
(中古購入価格 45,000円)(以下、SIGMA15-30)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)

ミラーレス・マニアックス第55回で紹介の、
発売年不明、恐らくは2001年頃発売のフルサイズ対応
AF超広角ズームレンズ。
_c0032138_17203871.jpg
さて、なんとも言えない(汗)変則的ズームレンズだ。
恐らくは、超広角ズームの先駆け的な製品であるが、
大きく重く、そして、ズーム比は「2」と非常に狭く、
また、テレ端の30mm画角で使うならば他に代替できる
一般的広角レンズはいくらでもあるから、殆どの場合、
15~20mm程度の超広角域でしか使用しない。

それに、今時であれば、こうしたフルサイズ対応の
超広角ズームはいくつも存在する。

まあでも、2000年代のデジタル時代初期ではAPS-C機が
ほぼ全てであった事や、20mmを下回る超広角レンズは
銀塩時代のAFレンズでは、さほど多くは無かった為、
本レンズの役割は、ある事はあった。

しかし、大きく重く、比較的高価な三重苦レンズで
あった故に、あまり好んで趣味撮影に持ち出したいとは
思い難いレンズであった事も確かだ。
実用撮影では、業務上での集合写真撮影に使用した
事がある、被写界深度が深く取れ、かつ、少し絞れば
解像力も、なかなか高いレンズであったからだ。
_c0032138_17204284.jpg
でも現代の市場においては、代替できるレンズは他にも
あるだろう。それに、最短撮影距離30cmと意外に寄れず、
かつ、近接撮影でのボケ質破綻が気になるレンズでも
あるので、あまり現代的な性能のレンズでは無い。

まあ、あくまで、2000年代における実用性のみが
語られるべきレンズであり、歴史的な価値は、そこそこ
あると思うが、現代で指名買いをするレンズとは言い難い
かも知れない。

そういう歴史的な意味(価値)において、必要性が
あるレンズと言うのも、ある意味「変則的」なのかも
知れない。まあでも、このあたりはマニア心理としては
多かれ少なかれある事だろう。

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では、今回ラストのシステム
_c0032138_17204627.jpg
レンズは、TAMRON SP AF 200-500mm/f5-6.3 Di
LD [IF] (A08)
(中古購入価格 49,800円)(以下、A08)
カメラは、SONY α77Ⅱ (APS-C機)

ミラーレス・マニアックス第65回、本シリーズ第6回
記事で紹介の、2004年発売のAF超望遠ズームレンズ。

マウント違いで同型レンズを2本所有していて、上記
以外の記事でも紹介済みだ。
_c0032138_17204669.jpg
さて、超望遠(ズーム)レンズは、昔から一眼レフ
ユーザーの初級中級層の憧れのレンズである。

今でこそ減ったが、昔は観光地に行くと、コインを
入れて覗く望遠鏡(双眼鏡)が良く備え付けてあった。
また、カメラ量販店などで、三脚に望遠レンズが装着
されていると、たいていの客は、それを覗きたがるし
野鳥観察(撮影)のグループを見かけても、全然その
メンバーでは無い人が、「ちょっと覗かせてください」
と言っているケースもあるし・・
私ですら、ドラゴンボート競技の撮影中に選手達から
「その望遠レンズ、どこまで大きく写りますか?
覗かせてください」と言われる事は日常茶飯事である。

では、人は何故、「望遠鏡(望遠レンズ)を覗き
たがるのだろうか?」その心理分析は良くわからないが、
手の届かないところにあるもの、あるいは肉眼では
見えないものを見たいというのは、人間の根源的な
欲求なのかも知れない。

まあ、そういう意味では、顕微鏡やマクロレンズも
その類とは言えるが、一眼レフユーザーの場合には、
まずは望遠レンズだ。せっかく、レンズ交換が出来る
カメラを買ったのだから、肉眼では見えない(見え難い)
被写体を、どうしても撮りたいのであろう。

でも、銀塩時代では、それは難しかった。
一般消費者層が入手可能な望遠レンズは、せいぜいが
300mm/F5.6程度であったし、それ以上の400mm
や500mmレンズは、たいてい「大きく重く高価な」
三重苦レンズとなってしまう。

値段の面で無理をして、望遠を買っても、ハンドリング
性能(持ち運び、手持ち撮影)に多大な負担がかかる為、
滅多な事では持ち出す事は無い。
それこそ、野鳥や天体観測などの特別な目的が無い限り、
趣味撮影で、超望遠レンズを使用するケースは、まず
無い事であろう。

無理をして子供の運動会などに持っていっても、子供が
走る程度とは言え、そこそこの高速動体では、三脚撮影も
手持ち撮影も、いずれも初級レベルではお手上げとなる為、
まともに撮れず、きっと家族からはブーイングの嵐だ(汗)

現代においても超望遠(ズーム)レンズを買ったユーザー
が、それを持て余して、売却してしまう事は良くある。
事実、中古市場には大量の超望遠ズームが流通している。

せっかく購入した望遠ズームを、売らないまでも、使い道
を求めて、ドラゴンボート大会の撮影に、ふらりと訪れる
アマチュアカメラマンも結構居る。しかし、ここも運動会
と同じ事で、三脚撮影でも手持ち撮影でも、ビギナー層
では上手くいかない為、たいてい次の大会には、もう
来場する事は無い(常連さん、というのを見た事が無い)

結局もう、超望遠は死蔵させてしまうかだ・・

私は、2000年代にはTAMRON AF200-400mm/f5.6
(75D)というレンズ(本A08型の前モデル)を長く愛用
していた。まあ、小型軽量とは言い難いが、手持ち撮影が

難なく可能であり、各種ボート競技や、運動会撮影、
さらには趣味撮影での動物園などで役立っていた。
私が使っているのを見た周囲のビギナー層が
「望遠が欲しい」と言った場合、たいていその75Dを
推奨していた。2000年代では2万円台の中古相場で
あったので、初級層でも買いやすかったからだ。
都合10本ほどの75Dを買っただろうか? 大阪近郊の
中古店の在庫を買いつくし、ほどなくして、もう1本
も見なくなってしまった(汗)

だが、その10人程のビギナー層で、75Dを使いこなした
人は一人も居なかった。「重い」という理由に加え、
遅いAFではピントが合わせ難く、当然MF撮影も出来ない。
直進式ズームなので重心変動が激しく、手ブレ補正も
無いので、自身の手ブレ限界シャッター速度を理解して
それを維持しない限り、ブレ写真のオンパレードとなる。
手ブレにピンボケ、おまけに重くて、外に持ち出すのが
嫌になり、あわれ75Dは全員が死蔵してしまった状態だ。

「もうビギナー層に、無理な機材を薦めるのは辞めよう」
と強く思った逸話ではあるが、結局、このような事が
私の周囲以外でも、いたるところで起こっているので
あろう。
_c0032138_17205197.jpg
さて、本A08レンズであるが、75D以上に使いこなしが
困難なレンズである。望遠端500mmは、かなり長く、
開放F値固定レンズでは無く暗い為、手ブレを誘発する。
さらには、NIKON用、CANON用では手ブレ補正機能も
入っておらず、難易度がさらに増す。

二重回転式のズーム/ピントリングは、操作性に劣り、
加えて、本レンズも全長が変化し、バランスが取り難い。
レンズ全長はズーム収容時でも長く、カメラバッグには
入らないので、専用または汎用の「超望遠ケース」での
運搬が必須だ。


さらには、75Dのおよそ2倍ともなった高価な定価
(13万円+税)は、2010年頃で中古でも5~7万円と、
そう簡単に他人に薦められる価格帯でも無かった。

ただ、長所もある。75Dより焦点距離が長くとも、
僅かに軽くなった重量(注:三脚座が外せる)や、
SP仕様となった事で、75Dより、はるかに高画質だ。

私の場合、本レンズはドラゴン競技撮影と動物園撮影
の専用レンズとなっている、予備も含めて2本使用
しているが、多者に推奨した事は一度も無い。
現代においては、中古相場がかなり下がって来ていて
買い易いとは言えるが、そう簡単には使いこなせる
レンズでは無いからだ。(注:近年では、中古の玉数
は極めて少なく、セミレア品となってしまっている)

非常に限られた利用条件や、スキルを要求されるという
レンズである、これもまあ、言ってみれば「変則ズーム」
と呼べるであろう。

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さて、今回の記事「変則ズームレンズ特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・


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