過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介のマニアック
なレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズを4本取り上げる。
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まず、今回最初のレンズ
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レンズは、TOKINA AT-X124 PRO DX (12-24mm/f4)
(中古購入価格 15,000円)(以下、AT-X124)
カメラは、NIKON D2H (APS-C機)
2004年発売、TOKINA初のAPS-C機専用のレンズであり、
開放F値固定型の超広角ズーム、つまり高級レンズだ。
TOKINAにおいて、高性能レンズを表す型番の「AT-X」と、
さらに「PRO」という称号までがついているのだが・・
いつも言うように、個人的には、そうしてメーカー側から
「良く写るのです(=だから高価なのです)」と押し付け
られるスタンスは好まない。肝心なのは、実際に使える
レンズか否か?という点であり、名前だけでレンズを
選べる筈も無い訳だ。
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本レンズは、発売時には結構話題となった。
2004年と言えばデジタル一眼レフ(APS-C機)が、丁度
各社から出揃った年である。本ブログにおいても、当時に
発売された機種を「デジタル一眼レフ・クラッシックス」
シリーズ記事で紹介している。(多くが現有品である)
<2004年発売の代表的デジタル一眼レフ>
PENTAX *istDs (デジタル一眼レフ第2回記事)
KONICA MINOLTA α-7 DIGITAL (デジタル一眼第3回記事)
NIKON D70(デジタル一眼第4回記事)
CANON EOS 20D(故障廃棄、同第5回記事で少し紹介)
OLYMPUS E-300(故障廃棄、同第8回記事で少し紹介)
・・で、これらAPS-C型一眼レフのユーザーの不満点だが、
これらの機体のユーザーは一応、銀塩AF時代の交換レンズを
そのまま使用する事が出来た。(注:OLYMPUS 4/3機を除く)
だが、銀塩時代の(超)広角レンズは、ユーザーは持って
いたとしても、普通は24mm、良くても20mm止まりである。
それ以下の10mm台の超広角レンズの所有者は非常に稀だ。
20mmをデジタル機に装着してもAPS-C型センサーで1.5倍
程度の換算であるから30mm位の画角となり、これは銀塩
時代での「28mmの、ごく普通の広角レンズ」と同等だ。
銀塩時代で20mmを持っている人は、結構な広角好きである。
平凡な28mm相当の画角では、まったく満足できない。
つまり「広角が全然足りていない」のである。
まあ、この時代から18-55mmといった、APS-C機専用の
標準ズーム(銀塩時代の28-85mm程度に相当)も
発売され始めたのだが、それでもやはり広角端28mm相当
では、超広角ファン層は満足できない。それに、それら
標準ズーム群は、デジタル一眼レフの一般層への普及を
狙った廉価版が多かった事からも、マニア層が興味を持つ
ものではなかった。まあ、稀に広角端が10mm程度から
始まる超広角APS-C機専用ズームとか、F2.8通しの
大口径APS-C機専用広角ズームも発売され始めたが、
相応に高価であったりして、簡単に買えるものでは無い。
そんな中で、TOKINAから本AT-X124が発売されたのだ。
NIKONからも同仕様のレンズが発売されていたと思うが、
TOKINA版は定価9万円、恐らくは新品値引率も大きかった
事であろうから、メーカー純正品よりも安価に購入出来る。
知人のマニア等も本レンズを購入し「シャープに良く写る」
との事で、結構話題になった。
この頃からブログも一般に普及し、翌年位には、本ブログ
を開設、当時の他の写真ブロガー達の数名も、本レンズを
使用していて、ダイナミックな超広角の画像を掲載して
話題となっていた、と記憶している。
その後、後継機として、2008年にはAT-X124 PRO DXⅡ
となり、コーティングが改良され逆光耐性が向上したと
同時に、NIKON版ではレンズ内モーター搭載で、NIKONの
低価格機でもAFの使用が可能となった。
さらに、2013年には、望遠端焦点距離を少し伸ばした
AT-X 12-28 PRO DX(12-28mm/f4)となり、画質にも
さらに改良を施した。一応こちらが現行商品となっている。
その間、マニア層以外においても、Ⅱ型を使用する
企業広報担当カメラマンを見かけ、「おっ!良いレンズ
を使ってますねえ」等と話かけてはいたのだが・・
まあ「優秀なレンズだ」という認識は持っていたのだが、
これらを購入する機会には恵まれなかった。
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発売10数年を経過して、なにげなく本レンズの中古相場を
見ていると、1万円台前半くらいからの格安相場と
なっていた。後継機のⅡ型も128型も、勿論中古市場には
流通してはいるが「TOKINA初のDX(APS-C機専用)レンズ」
という重要な歴史的価値を重んじて、本レンズ(初期型)
を購入する事とした次第である。
ただ、ちょっとした勘違いもあった。本レンズはレンズ内
モーター仕様だと思い込んでいたのだ(それはⅡ型からだ)
想定したシステムは、NIKON D5300との組み合わせであり
これで小型軽量な(超)広角システムが出来上がり、
18-36mmの換算画角で、これはイベントでの会場撮影とか、
参加者集合写真等に役立つではなかろうか?と思っていた。
しかし、本レンズにはレンズ内モーターは無く、D5300
との組み合わせでは、AFが動作しない(汗)
まあ、MFでは撮れるのであるが、趣味撮影専用システムと
なってしまうだろう(参考:以下写真で、カメラ側からの
モーター動力伝達用のカプラー(マイナスのネジの形)が
ある場合、レンズ内にはモーターは入っていない)
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当初の目論見は外れたが、やむを得ない。NIKON上位機種で
あれば問題なくAFで使用できるし、小型軽量広角システム
を狙うならば、D70(2004年)と組み合わせるという、
超クラッシックな(汗)システム化も、なんとか可能だ。
本記事では、さらに捻くれて(笑)、本レンズよりも古い
時代のNIKON D2H(2003年)を使用してみよう。
これが20年近く前ならば、アマチュア層垂涎のシステムだ、
つまり、欲しくても高額すぎて手が出せない。しかしそれが
時代の経過とともに、格安で組み上がってしまうのだから、
本当にデジタル技術の進歩は恐ろしい。
まあつまり、現代において最新の高額なシステムを組んで
満足していたとしても、10年あるいは20年も経てば
とんでも無く価値が下がってしまう訳だ。
しかし、ここで言う「価値」とは単純に中古相場等の値段の
話だけである。値段は確かに安い、しかし、だからと言って
古いから性能が低いとは限らない。D2H+AT-X124であれば、
2004年当時であれば、最高級のシステムだ。
時代が過ぎた現代でも、ある程度は、まだ通用するであろう。
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では、本レンズの性能であるが・・
現代の視点からは、あまり強い「解像感」は感じ難い。
古いD2Hでは、ピクセルピッチが広すぎる(約9.4μm)
し、そのレンズ側要求解像力も、約52LP/mmと低いので、
レンズ性能自体の差は出にくい。
例えば、より後年のNIKON D5300で使用する場合にば、
(注:AFは効かない)ピクセルピッチは約3.9μmとなり、
ローパスレス仕様ともあいまって、この場合は、
約128LP/mm以上のレンズ側解像力が要求される。
そちらとの組み合わせが評価の面では良かったかも知れない。
本レンズや、この時代前後の高性能レンズであれば
恐らくは、百数十LP/mmの性能はあると推測できるので、
(高性能レンズの何本かは実測しているが、とても面倒な
作業なので、本レンズに関しては実測はしていない)
まあ現代でも、まだまだ通用する解像力性能だ。
だが、近い将来には、さらにカメラの画素数が増える事が
予測され、ピクセルピッチが2~3μmとなる場合に備え、
現代での新鋭高解像力レンズは、二百数十LP/mmの解像力
性能を備えていると思われる。
まあでも、そんな時代になったとしても、まだまだ
ピクセルピッチの広い仕様のカメラも存在するだろうし
現代の、または、少し古い時代の一眼レフを使えば、
この時代位のレンズであっても、性能的なバランスは
適正となる。
で、こんな計算を一々せずとも、だいたいカメラと
レンズは「同時代の組み合わせにする」事で、たいてい
解決する訳だ。
本レンズの総括だが、やや古い時代の発売とは言え、
近代レンズ故に、あまり描写性能上の不満は無い。
課題は、やや大きい事であり、大柄のD2Hとの組み合わせ
では、さらにハンドリング性能が悪化する。
発売当時での憧れの高級システムとは言え、その後は
ミラーレス機や小型軽量化一眼レフも当たり前の時代
となり、その感覚からは、2000年代前半のシステムは、
相当に大柄であった事が如実にわかる。
本レンズ購入は、あくまで時代背景の研究用途である。
現代において、あえて本レンズを指名買いする必要は
殆ど無い。逆光耐性や周辺描写力が改善されていると
推測できる後継レンズも色々と発売されているからだ。
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では、次のレンズ。
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レンズは、SOLIGOR(ソリゴール) 135mm/f3.5
(中古購入価格 3,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
出自は全く不明、本レンズ自体は、KONICA ARマウント品
である為、KONICA AR機が販売されていた1970年代前後
の時代の発売のMF望遠レンズであろう。
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SOLIGORはミランダ(MIRANDA、1950年代後半~1970
年代前半に銀塩MF一眼レフを展開)と関連が強い、という
説も有力だが、もはや詳細は残念ながら不明だ。
でもまあ、1990年代の中古カメラブーム時には、SOIGORの
レンズも、MIRANDAのカメラも、まあ良く流通していた。
SOLIGORは、その当時に何か1本を買ったような気もするが、
あまり記憶に無い(汗)買ったとしても当時の私であれば
「写りが悪い!」と、すぐに処分してしまっていた事だろう。
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そう、このレンズは相当に写りが悪い(汗)
特に逆光耐性がかなり低く、かろうじて単層コーティングが
施されている様相と、写りの傾向、そしてちょっと変則的な
プリセット絞り環の構造からしても、1960年代の古い製品
である可能性も高い。
まあ、およそ半世紀も前の古いレンズである、という事だ。
ただまあ、解像感は結構高く、この時代にしては優秀だ。
それと、幸いにして「程度」は極めて良好、ジャンク品という
扱いでもなく、何処かの家に大事に保管されていた物だろうか?
マウントは交換式となっている模様だが、現代において
SOLIGORの交換マウントが入手できる筈も無く、KONICA
ARマウントという、現代では使い難いマイナーマウント故に
中古店でも、ずっと売れ残っていた状態なのかも知れない。
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(注:上写真の「虹」は本物の虹であり、オールドレンズで、
稀にレンズの内面反射により発生する仮想的な虹では無い)
「写りが悪い」という最大の要因は逆光耐性の課題であり
僅かな逆光でも、すぐにフレアっぽくなり、コントラスト
の低下が顕著だ。
だが、順光では、さほど悪く無いので「天国と地獄」だ。
逆光状態を常に避けるように意識して撮る必要がある。
そう言えば、同時代1965年発売のCANON CANONET QL17
(キヤノネット:銀塩コンパクト機)の搭載レンズ45mm/F1.7
にも同様な短所があり、その機体も「天国と地獄」であった。
銀塩時代では現像後のフィルムで、その「地獄」を見る事が
多く、短期間で、その機体を処分してしまったのだが・・
現代のデジタル時代、特に交換レンズでは、撮影前または
撮影直後で、コントラスト低下の状態は確認できる為、
常に順光での良好な描写を確保する事は可能だ。
ただし、被写体状況の制限が多くなるので、撮りたいものを
自由に撮れない、という不満には繋がるであろう。
その他、今回μ4/3機を使っているのはレンズの周辺収差を
カットする理由もある。また、レンズの絞り環(プリセット)
は適宜(作画に影響が出ないよう、可能な範囲で)絞り込む
事で、いくつかの収差を低減できる。(この対策により、
解像感は多少高まっている)
ただし、画質を優先とすると、ボケ質の破綻の回避は困難だ。
いずれにしても、プリセット環を最大に絞り込み、もう1つの
絞り環で無段階に絞り値を調整できる。この技法が使えるので
プリセット仕様の古いレンズは個人的には嫌いでは無い。
実用上では、それらに注意を払えば、使えないという訳では
無いが、かなりのオールドレンズなので、限界はある。
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なお、これら弱点回避技法を用いず、「レンズの言うがまま」
に撮ってしまうと、酷い写りのレンズとなる(「地獄」状態)
世間一般での「これがオールドレンズの描写だ!」といった
作例や作品等では、古い時代のレンズを用い、あえて酷い写り
の写真を掲載している場合も多い。
これは、弱点回避が出来ない人(初級マニア等)が撮った物で
ある場合と、弱点が出る事は承知の上で、あえてオールド
レンズの酷い写りとなっているものを選んでいる場合がある。
(例:オールドレンズの写真集等で、普通に綺麗に写った写真
ばかりを乗せていたら、わざわざ「オールド」とタイトルに
書く意味が無いし、見る側も、期待外れになってしまう)
後者のケースは「確信犯」であるから、全く問題は無いが、
前者での「レンズの言うがままに撮ったら酷い写りとなった」
という状況は、あまり好ましく無い。
オールドレンズでも、撮影技法で、その画質や描写を制御する
技能を身につけておく事が望ましいであろう。その練習や研究
の為に、こうしたレンズを「教材」として利用する。という
目的が、近年、私がオールドレンズやジャンクレンズを多数
購入している理由の1つにもなっている。
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さて、次のレンズも、準ジャンク品だ。
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レンズは、SIGMA ZOOM AF 100-300mm/f4.5-6.7 DL
(ジャンク購入価格 1,000円)(以下、SIGMA100-300DL)
カメラは、PENTAX K-30 (APS-C機)
正確な出自は不明、正式な型番名称も不明。
名称が不明なのは、他のSIGMA製の銀塩時代のレンズ全般で
同様であり、SIGMAのWEB等には、もう情報が残っておらず、
レンズ上に書かれている名称も、部分的に順不同で書かれて
いるケースが多いからだ。(正式な順番がわからない)
製造年代は、恐らくだが1990年代後半からの銀塩時代末期
であろう。
DL型番も、現在となっては意味が不明。世間的には「Deluxe
の略称だ」と言われているのだが、私がこの時代にDL型番の
レンズを見た印象においては、
「販売店レンズキット用の低価格帯レンズ」と認識しており、
”DLのLは、ローコストのLだ”と覚えるようにしていた。
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「販売店レンズキット」とは何か?と言えば、この時代
1990年代後半は、空前の「(第一次)中古カメラブーム」
が起こっていた。
これは、1985年の一眼レフの実用的AF化(=αショック)
が起こってから、およそ10年が経過し、AF一眼レフの進化が
ピークに達した事(もうこれ以上、新機能を搭載できない)
そして、1990年代前半のバブル崩壊や阪神淡路大震災の影響
により、世情や消費者ニーズが激変した事で、ユーザー層の
多くは新製品のAF一眼レフに全く興味が持てず・・
新品機種であれば、新鋭高級コンパクト機やAPSコンパクト機、
そして他は全て、古い銀塩機(MF一眼レフやレンジ機)に
ユーザー(消費者)層の興味が集中していた時代だ。
AF一眼レフで唯一、孤軍奮闘していたのは、1993年からの
CANON EOS Kissシリーズで、これはファミリー層や女性層
といった新規一眼レフユーザーの獲得に多大な功績があった。
で、1990年代後半では、AF一眼レフが売れない。そこで、
流通(つまり販売店)が取った方策として、カメラメーカー
の発売したAF一眼レフの普及機に対し、カメラ販売店側で
SIGMAやTAMRONといった、レンズ・サードパーティ製の
安価なダブルズームキット(28-90mm前後の標準ズームと
100-300mm前後の望遠ズームのセット)を、ボディ単体
の価格に2万円程度の値段を上乗せする方式で販売した。
まあ入門層がカメラ本体だけを買って、その後、交換レンズ
を自由に選ぶ等は有り得ない。どのレンズを買ったら良いか
わからないし、しかも交換レンズはどれも高価だ。
一応はメーカー純正のレンズキット商品も存在したが、
それはやはり高価で、販売店レンズキットが遥かに安価だ。
だから、最初から「常用できる2本のレンズを2万円で買った」
と見なせるならば、こうした販売店レンズキットは、入門層
にとってみれば非常に買い易く、お買い得な商品となる。
したがって、入門層には、これらのキットは良く売れた。
しかし、この状態は、カメラメーカー側から見れば、自社の
ビジネスを邪魔されているようで面白く無い。
そして、レンズメーカーとしても、レンズは売れて嬉しい
のではあるが、微妙にデメリットもある。
すなわち、この措置で、ユーザー層全般には「SIGMAや
TAMRONのレンズは安物である!」という認識が広まって
しまった訳である。
また、メーカー側からの、この対策として、あるメーカー
では、2000年頃にカメラとレンズとの情報伝達プロトコル
(電子接点を流れる情報のやりとり)を意図的に変更し、
レンズメーカー製のレンズを使えなくしてしまった。
まあ、これはさすがにやりすぎであり、他のもっと穏便な
方策も採られた事であろう。以下はあくまで個人的な想像だが
カメラメーカーは、レンズメーカーと契約し、安価なキット用
ズームレンズをOEM(製造委託)したのではなかろうか?
カメラメーカー自社で品質(性能)管理を行えば、自社の
ブランドとして販売しても問題無いし、大量生産を得意と
するレンズメーカーだ、2万円以下等で納品してもらい、
自社ブランドで3~4万円相当で販売すれば、十分に儲かる。
レンズメーカーとしても、同じ値段で売れるのであれば、
販売店経由で消費者層に直接売るのも、カメラメーカーを
経由して販売するのも同じ事であるし、ブランドイメージ
の低下も無い。
だから、2000年代初頭頃には「販売店レンズキット」は
急速に見かけなくなってしまっていた。
(参考:同時期から、SIGMAやTAMRONも、廉価版のズーム
レンズを、あまり単品発売しなくなっていた)
だが「それでは、カメラメーカーは純正レンズが売れなく
なるのではなかろうか?」と思うかも知れない。
でも、この時代はデジタル化の直前の時期である。近い将来の
2000年代前半には、カメラメーカーは全ての銀塩一眼レフを
デジタル化する計画だ。
であれば、この時点では、ともかく自社の銀塩一眼を売る事が
最優先である。既にカメラやレンズを何本か所有していれば、
そのユーザーを「囲い込む」事が出来る。つまり、デジタル化
に際して、「デジタルでも、今までのフィルム用のレンズが
そのまま使えるそうだから、今更他社のシステムに乗り換える
のはなあ・・」というユーザー側の購買心理に繋がる訳だ。
その為、この時代(2000年前後)には各カメラメーカーから
極めて高性能かつ低価格な、普及用途の銀塩AF一眼レフが
大量に新発売されている。その機種名は多すぎて書ききれない
程であるが、別シリーズ「銀塩一眼レフ・クラッシックス」
記事でも、いくつかの機体を紹介している。
すなわち、この時代はカメラメーカーとして「損して得取れ」
の状態だ。消費者側から見れば、この時代の銀塩一眼レフは
どの機体も「大変コスパが良く、お買い得」ではあるのだが、
まあでも、近い将来にデジタル化されて、それらの機体が
「使い捨て」になる事は、ユーザー側でも気がついている。
こうした複雑な市場背景があり、カメラメーカー対レンズ
メーカーの戦争は、一時期「休戦協定」が結ばれたのでは
なかろうか? と推察している。
これらの話は、あくまで個人的な「想像」の話であるが、
当時の各社の機材を購入し、それを分析し、市場の歴史を
調べていけば、おのずとそのあたりの背景は見えてくる。
これはまあ歴史学者等が行っている「史実の研究・解明」と
同じような行為だ。ただ、昔の歴史であれば、もう当事者は
誰も居ないので、その真偽を確かめる事は難しい。
しかし、こうした近代の歴史であれば、当事者は今でも
健在であろうから、真実を知っている人は居るだろう。
けど、現代の複雑な社会であるから、たとえ当事者であっても
その複雑な仕組みを全て把握している訳でも無いかも知れない。
私も、稀に、当時の市場・メーカー等の関係者等と出合い、
お話を聞かせてもらう事もあるのだが、まあいずれのケースも
自身が業務上で関与していた特定の範囲での証言に留まり、
市場全体で何が起こっていたのか?までは把握されていない
場合が大半でもあった。
さて、余談が長くなったのだが、まあ余談とも言い切れず、
ある時代の、ある機材を評価する上で、その機材を取り巻く
市場や世情を理解した上で機材を見る事は、とても重要だ。
さもないと、何故、その機材が生まれてきたか(発売されたか)
の背景が理解できず、単純に「DL型番だから廉価版の安物だ」
と言ったような、表面的なだけの評価内容に留まってしまう。
では、ここまで世情を理解した上で、本SIGMA100-300DL
を見ていこう。
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レンズキット専用の安物である。ただし、コストダウンの
措置は確かに図られているだろうが、レンズの描写性能自体は、
さほど酷いものでは無い。
まあ、同クラスのSIGMA製望遠(ズーム)レンズには、色収差を
低減した仕様のAPO(アポクロマート)型番の物もラインナップ
上で並存していて、そちらは確かに高性能であり、私も従来に
おいては、1990年代等のSIGMA製望遠レンズを購入する際には、
APO型番のものばかりを選んで購入していたのだ。
だが、「では、APOの有り無しで、どれくらい性能が異なる
のであろうか?」という疑問(興味)も沸いて来た事も
確かである。場合により、「APOと称した事で、付加価値を
向上し、すなわち高く売る為の理由としている」という
捻くれた(ネガティブな)分析も出来るからだ。
実写の感想だが、まず、本レンズとPENTAX K-30(2012年)
との組み合わせでは露出が不安定(アンダー気味)となって
しまう。試しにK-5(2010年)に装着してみると、測光値は
安定し、問題無い。
まあ、レンズとカメラの組み合わせによっては、まれに
こういう事も起きる。だから、古い時代のカメラも簡単には
処分する事は出来ず、各時代のカメラを「検証用」に残して
おく必要性を近年では特に感じている。
(注:K-30に関しては、他にも1本、露出がアンダー気味
となる標準ズームレンズが存在するが、それら以外の
組み合わせでは、そうした課題が発生したケースは無い)
今回に関しては、露出が不安定なまま、K-30で使用する。
![_c0032138_10225590.jpg]()
描写力だが、望遠域になる程に解像感が低下する。多分
焦点距離に応じての諸収差の補正が追いついていないので
あろう。1980年代迄の望遠ズームレンズでは、その傾向が
顕著であり、1990年代からの望遠ズームにおいては、その
弱点は、かなり解消されている事が、多数のジャンク望遠
ズームを買って研究する事で、わかってきている。
では、1990年代後半の本レンズなのに、何故古い時代の
ズームと同様の弱点を持つのか? それは恐らくであるが
新時代のレンズ構成では、コストアップするからだ。
具体的には、異常低分散ガラスや非球面レンズを多用すれば
描写性能は勿論向上する。でも、それらは高価で、低価格帯
のレンズにならない。そこで、旧来からのオーソドックスな
設計(構成)を用いる事でコストダウンを図れる訳だ。
まあ、その仕掛けがわかってしまえば何と言う事は無い。
1980年台迄の望遠ズームと同様な点に注意すれば良い。
あまり極端な望遠域を使わず、控え目な望遠焦点距離として、
かつ、少し絞り気味とする。勿論フルサイズ機では無く
APS-C機を使い周辺収差のカットを行い、この措置で控え目な
焦点距離使用で足りなくなった望遠域の画角を補う。
本レンズはPENTAX用で絞り環を備えているから、この用法
においてはμ4/3機等のミラーレス機で、MFで使用した方が
さらに有利あろう。だが今回はまあAF動作の確認の意味も
あったのでPENTAX機を用いたが、今後はそうしよう。
ただ、これらの用法(技法)は現代の環境での話だ。
銀塩時代であれば、全てフルサイズ機であるし、おまけに
当時のズームレンズの撮影技法と言えば、望遠端と広角端
の端っこだけを目いっぱい使う(=”行ったり来たり”)
用法が初級中級層では殆どだ。
ズームの中間焦点距離を構図上や被写界深度調整の目的で
微妙に用いる等は、当時は、一部の上級者にしか出来ない
難しい技法でもあった。
だから、それらのビギナー的用法は、本レンズの弱点ばかり
を強調する事となる。これでは、恐らくだが当時での評価は
「やはり安物だ、写りがあまり良く無い」で終わってしまう
事であっただろう。
その後、約20年が経ってもシニア層等のユーザーの多くには
「SIGMAやTAMRONのレンズは安物だ、写りが良い筈が無い」
という認識が非常に強く残ってしまっている。
まあ当然ながら大きな誤解であり、現代のSIGMA製レンズは
特にART Lineにおいて、そしてTAMRONでもSP銘のレンズ
においては、他のカメラメーカー純正レンズに勝るとも
劣らない超高性能品である。(=そうやって付加価値を
つけないと、レンズメーカーは生き残れなかった。別に
技術力が無いから安物しか作れない訳では無かったのだ。
安いものも高性能な製品も作れる。後は単に、消費者が
どのレンズを買うのか?を選ぶだけの話である)
まあ銀塩時代の末期に、こうした廉価版のレンズ群を出して
しまった事に、色々な功罪があったという事なのだろう。
そして、銀塩時代に、こうした普及版(廉価版)レンズを
使ったとしても、その性能を上手く引き出せなかった事は、
100%ユーザー側の責任である事は間違い無い。
さらに言えば、現代においても同様だ。レンズは、その
購入価格に見合うだけの「使いこなし」を行わないとならない。
さもなければレンズの欠点ばかりを残してしまう無駄な撮り方
を行って、結果的に実用面でのコスパが大きく悪化してしまう。
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次は今回ラストのレンズ
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レンズは、7artisans(七工匠) 35mm/f1.2
(新品購入価格 20,000円)(以下、七工匠35/1.2)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2018年に発売された中国製のAPS-C型対応ミラーレス
機用、MF準広角(標準画角)大口径単焦点レンズ。
(注1:2020年に、銀色鏡筒版が追加発売されている)
(注2:本レンズの正式な型番は3512M43Bだが、
現状、七工匠のレンズは同一仕様での被り(重複)が
無い為、当面の間、七工匠製レンズの型番記載は省略
する。今後、機種数が増えたら型番で区別していこう)
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μ4/3マウント版で購入しているが、イメージサークルは
APS-C機対応の為、SONY Eマウント機でもアダプターで
使用可能だ。この用法でもケラれずに使える。
(参考:以下写真はSONY NEX-7に装着した例)
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この手の中国製レンズは電子接点を持たないMFレンズで
かつ、絞り環が存在しているので、こういう異マウント
での併用の離れ業が出来てしまう。(注:他にはあまり
異マウントのミラーレス機間でレンズを共用できるケース
は多くは無い)
最短撮影距離は35cmと、焦点距離10倍則通りでやや不満。
しかしWEBで本レンズの構成を見ると、どこかで見た記憶が
ある。変形ダブルガウス型で、前玉がやや大きい・・
これは恐らくだが、1960年代~1970年代にかけ、各社から
発売されていた55mm~58mmのF1.2級レンズの構成と、
ほぼ同等だろう。(注:当時のF1.2級標準は、6群7枚
構成のものも多いが、中には本レンズと同じ5群6枚の
ものもあった事だろう。あるいは、銀塩機とミラーレス機
のフランジバックの差の調整の為、あえて後群の1枚を
抜いているのかも知れない)
つまり、それら50年以上前の大口径標準レンズの設計を
元に、それを、だいたい3分の2位にスケールダウンして、
APS-C型イメージセンサー用の35mm/F1.2としたのであろう。
仮に3分の2のダウンサイジングであれば、APS-C機での
イメージサークル(面積)は、フルサイズ機の約1/2で
あるから(注:対角線長は約2/3)余裕がある設計となる。
実際にフルサイズ機に装着してみると、ケラれの範囲は少なく、
そんな感じであり、予想通りだ。(注:本シリーズ第26回
記事の「七工匠25mm/f1.8」は、1/2のスケールダウン
製品であったので、APS-C機では、周辺減光が僅かに発生
していた)
つまり、周辺減光や周辺収差のカットの効果は大きく、
特にμ4/3機で使用するならば、銀塩時代で大口径標準
レンズを使った場合よりも画面全域での画質が向上する、
という、隠れたメリットにも繋がる。
で、それらの半世紀以上前のレンズの最短撮影距離は、
いずれも、およそ60cmであったので、これは焦点距離
(55~58mm)の10倍とほぼ同じだ。
だから本レンズも、比率から計算して最短は35cmとなる。
(60cmx約0.6=約36cm、または35mmx10=35cm)
本シリーズ第26回記事で紹介の「七工匠25mm/F1.8」
と同様に、本レンズも、昔の名レンズをスケールダウン
した「ジェネリック・レンズ」である模様だ。
で、あれば・・ その時代の58mm/F1.2級レンズは、
まだ設計完成度が低く、どれも写りはイマイチである。
(最強50mm選手権第7回記事、MF50mm/F1.2編参照)
絞り開放近くで球面収差の発生が大きく、像面湾曲等も
抑えられておらず、解像感もボケ質も良く無い。
(下写真は本レンズで「ボケ質」が破綻している例)
![_c0032138_10231649.jpg]()
ただ、オールド大口径でも、それらの課題についての
対応策はある。簡単には、「絞り込んで使う」事だ。
本レンズ七工匠35mm/f1.2も、同じ弱点があると推察
されるので、オールド大口径レンズを使うつもりで、
弱点回避を行うのが望ましい。
絞り込めば殆どの収差は減少するし、逆に絞りを開放
近くで使う際は、解像感を要求される被写体を撮らな
かったり、平面に近い被写体を選んだり、ボケ質破綻の
回避(匠の写真用語辞典第13回記事)を行えば良い。
知識と経験と技能を必要とされる状態ではあるが、まあ
安価なレンズを使う場合は、どれも同様だ。
「レンズの言うがまま」に撮っていたらビギナーそのもの
であるし、その結果として「写りが悪い」と文句を言って
いても中級レベル迄であろう。
レンズには様々な弱点が存在するのは当然であるから、
その長所短所を良く見極め、長所を活用し、短所を回避
しながら使う必要がある。それができれば基本OKであるが、
さらに、その短所を強調して、特殊な表現に用いるという
超上級技法すらも存在する。
(下写真では各種設定を変えてボケ質破綻を回避)
![_c0032138_10231636.jpg]()
さて、本レンズの長所であるが
1)開放F1.2の大口径
2)大口径レンズとは思えない程の小型軽量
3)高品質な質感
4)無段階絞り、絞り羽根9枚
5)仕様からしては非常に安価(新品約2万円)
逆に短所もあげておこう
1)絞りを開けた場合での解像感の大幅な低下
2)ボケ質破綻の頻繁な発生(像面湾曲、非点収差等)
3)最短撮影距離が長い(35cm)
4)やや小さすぎて、操作性が悪い
5)NDフィルター必須だが、φ43mmとやや特殊
なお、MFである事や、超音波モーターや手ブレ補正が
入っていない事は短所とは見なしていない。そういった
付加機能が入って高価になるならば、むしろ、そちらが
コスパ評価点を悪化させる重大な短所になりうる。
短所1)の解像感の低下は、相当に絞り込まないと
解消されず、感覚的な話だがF11~F16あたりでやっと
球面収差等が収まってくる。しかし、本レンズの絞り値
はF16までが限界だ、それ以上絞る事はできず、また
そのレベルとなると、デジタル機では「小絞りボケ」
(回折現象)が発生する事への対策の仕様でもあろう。
(注:銀塩時代の大口径レンズでは、「自動絞り機構」の
実現の為、「大口径→撮影時の絞り込み」の動作ストローク
を大きくしすぎると、撮影時の絞り動作が間に合わない為、
F16以下の小絞りを搭載しない/出来ないケースもあった。
ただし、この事はミラーレス機用の実絞り(測光)では、
関係の無い話である。ただ単に、旧製品の仕様を踏襲している
だけの場合も当然あるだろうが、設計側で、製品仕様を決める
為の、広義での「設計基準」(=最良の画質を発揮する撮影
距離、という意味だけの話では無い)は、それを設計する側で
無いとわからない事も色々とある)
また短所2)、3)でのボケ質破綻と最短の長さにより、
背景をボカした撮影も、あまり得意とはしない。
オールド大口径でも、中望遠となれば、像面湾曲等を主因
としたボケ質破綻は、ある程度回避できるのだが、画角が
広くなるに従い、像面湾曲等は目立ち、回避も困難だ。
(参考:LOMOのペッツヴァールやLENSBABY TWIST等は、
フルサイズ機で用いる方が「ぐるぐるボケ」が出易い)
絞ってもダメ、開けてもダメ、となると、なかなか
本レンズを適正に使用する用途が見つけ難い。
まあつまり「用途開発が非常に難しいレンズ」という
事になってしまう。
結局、前述のオールドF1.2級大口径標準レンズ群でも、
全く同じ課題があって、極めて使いこなしが難しいレンズ
となり、しかも、それらオールド標準は非常に高価であった
から、コスパ評価も最悪となって、過去の本ブログ記事でも、
名玉編やハイコスパ系のランキングでは、1本も取り上げ
られていない。
まあつまり、評価点がとても低いレンズ群であり、昔から
個人的には、あまり好みのレンズ群では無かった。
でも、現代において、安価になってリニューアルされた
本レンズでは、コスパ評価は向上する。そして、もし
これらの欠点を完全に理解した上で、上手く使いこなす、
又は適正な用途開発が出来るのであれば、なかなか強力な
アイテムになるのではなかろうか・・?
![_c0032138_10231645.jpg]()
オールドレンズの弱点回避技法の研究の為の「教材」と
しても適するレンズではある。ただ、その回避技法は
恐ろしく難しいとは思う。ビギナー層では簡単に出来る
ものでは無いので、本レンズを「安価でF値が明るいから」
といった理由で安直に買ってしまったら、恐らくは皆、全く
使いこなせず、「写りが悪い。やはり安物の中華レンズだ!」
という評価となってしまう事であろう。
その原因は上記の通りなので、ユーザー側の課題が大半だ。
まあ、上手く使いこなせるように「練習あるのみ」という
事になる。
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さて、今回の第30回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。
なレンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は未紹介レンズを4本取り上げる。
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まず、今回最初のレンズ

(中古購入価格 15,000円)(以下、AT-X124)
カメラは、NIKON D2H (APS-C機)
2004年発売、TOKINA初のAPS-C機専用のレンズであり、
開放F値固定型の超広角ズーム、つまり高級レンズだ。
TOKINAにおいて、高性能レンズを表す型番の「AT-X」と、
さらに「PRO」という称号までがついているのだが・・
いつも言うように、個人的には、そうしてメーカー側から
「良く写るのです(=だから高価なのです)」と押し付け
られるスタンスは好まない。肝心なのは、実際に使える
レンズか否か?という点であり、名前だけでレンズを
選べる筈も無い訳だ。

2004年と言えばデジタル一眼レフ(APS-C機)が、丁度
各社から出揃った年である。本ブログにおいても、当時に
発売された機種を「デジタル一眼レフ・クラッシックス」
シリーズ記事で紹介している。(多くが現有品である)
<2004年発売の代表的デジタル一眼レフ>
PENTAX *istDs (デジタル一眼レフ第2回記事)
KONICA MINOLTA α-7 DIGITAL (デジタル一眼第3回記事)
NIKON D70(デジタル一眼第4回記事)
CANON EOS 20D(故障廃棄、同第5回記事で少し紹介)
OLYMPUS E-300(故障廃棄、同第8回記事で少し紹介)
・・で、これらAPS-C型一眼レフのユーザーの不満点だが、
これらの機体のユーザーは一応、銀塩AF時代の交換レンズを
そのまま使用する事が出来た。(注:OLYMPUS 4/3機を除く)
だが、銀塩時代の(超)広角レンズは、ユーザーは持って
いたとしても、普通は24mm、良くても20mm止まりである。
それ以下の10mm台の超広角レンズの所有者は非常に稀だ。
20mmをデジタル機に装着してもAPS-C型センサーで1.5倍
程度の換算であるから30mm位の画角となり、これは銀塩
時代での「28mmの、ごく普通の広角レンズ」と同等だ。
銀塩時代で20mmを持っている人は、結構な広角好きである。
平凡な28mm相当の画角では、まったく満足できない。
つまり「広角が全然足りていない」のである。
まあ、この時代から18-55mmといった、APS-C機専用の
標準ズーム(銀塩時代の28-85mm程度に相当)も
発売され始めたのだが、それでもやはり広角端28mm相当
では、超広角ファン層は満足できない。それに、それら
標準ズーム群は、デジタル一眼レフの一般層への普及を
狙った廉価版が多かった事からも、マニア層が興味を持つ
ものではなかった。まあ、稀に広角端が10mm程度から
始まる超広角APS-C機専用ズームとか、F2.8通しの
大口径APS-C機専用広角ズームも発売され始めたが、
相応に高価であったりして、簡単に買えるものでは無い。
そんな中で、TOKINAから本AT-X124が発売されたのだ。
NIKONからも同仕様のレンズが発売されていたと思うが、
TOKINA版は定価9万円、恐らくは新品値引率も大きかった
事であろうから、メーカー純正品よりも安価に購入出来る。
知人のマニア等も本レンズを購入し「シャープに良く写る」
との事で、結構話題になった。
この頃からブログも一般に普及し、翌年位には、本ブログ
を開設、当時の他の写真ブロガー達の数名も、本レンズを
使用していて、ダイナミックな超広角の画像を掲載して
話題となっていた、と記憶している。
その後、後継機として、2008年にはAT-X124 PRO DXⅡ
となり、コーティングが改良され逆光耐性が向上したと
同時に、NIKON版ではレンズ内モーター搭載で、NIKONの
低価格機でもAFの使用が可能となった。
さらに、2013年には、望遠端焦点距離を少し伸ばした
AT-X 12-28 PRO DX(12-28mm/f4)となり、画質にも
さらに改良を施した。一応こちらが現行商品となっている。
その間、マニア層以外においても、Ⅱ型を使用する
企業広報担当カメラマンを見かけ、「おっ!良いレンズ
を使ってますねえ」等と話かけてはいたのだが・・
まあ「優秀なレンズだ」という認識は持っていたのだが、
これらを購入する機会には恵まれなかった。

見ていると、1万円台前半くらいからの格安相場と
なっていた。後継機のⅡ型も128型も、勿論中古市場には
流通してはいるが「TOKINA初のDX(APS-C機専用)レンズ」
という重要な歴史的価値を重んじて、本レンズ(初期型)
を購入する事とした次第である。
ただ、ちょっとした勘違いもあった。本レンズはレンズ内
モーター仕様だと思い込んでいたのだ(それはⅡ型からだ)
想定したシステムは、NIKON D5300との組み合わせであり
これで小型軽量な(超)広角システムが出来上がり、
18-36mmの換算画角で、これはイベントでの会場撮影とか、
参加者集合写真等に役立つではなかろうか?と思っていた。
しかし、本レンズにはレンズ内モーターは無く、D5300
との組み合わせでは、AFが動作しない(汗)
まあ、MFでは撮れるのであるが、趣味撮影専用システムと
なってしまうだろう(参考:以下写真で、カメラ側からの
モーター動力伝達用のカプラー(マイナスのネジの形)が
ある場合、レンズ内にはモーターは入っていない)

あれば問題なくAFで使用できるし、小型軽量広角システム
を狙うならば、D70(2004年)と組み合わせるという、
超クラッシックな(汗)システム化も、なんとか可能だ。
本記事では、さらに捻くれて(笑)、本レンズよりも古い
時代のNIKON D2H(2003年)を使用してみよう。
これが20年近く前ならば、アマチュア層垂涎のシステムだ、
つまり、欲しくても高額すぎて手が出せない。しかしそれが
時代の経過とともに、格安で組み上がってしまうのだから、
本当にデジタル技術の進歩は恐ろしい。
まあつまり、現代において最新の高額なシステムを組んで
満足していたとしても、10年あるいは20年も経てば
とんでも無く価値が下がってしまう訳だ。
しかし、ここで言う「価値」とは単純に中古相場等の値段の
話だけである。値段は確かに安い、しかし、だからと言って
古いから性能が低いとは限らない。D2H+AT-X124であれば、
2004年当時であれば、最高級のシステムだ。
時代が過ぎた現代でも、ある程度は、まだ通用するであろう。

現代の視点からは、あまり強い「解像感」は感じ難い。
古いD2Hでは、ピクセルピッチが広すぎる(約9.4μm)
し、そのレンズ側要求解像力も、約52LP/mmと低いので、
レンズ性能自体の差は出にくい。
例えば、より後年のNIKON D5300で使用する場合にば、
(注:AFは効かない)ピクセルピッチは約3.9μmとなり、
ローパスレス仕様ともあいまって、この場合は、
約128LP/mm以上のレンズ側解像力が要求される。
そちらとの組み合わせが評価の面では良かったかも知れない。
本レンズや、この時代前後の高性能レンズであれば
恐らくは、百数十LP/mmの性能はあると推測できるので、
(高性能レンズの何本かは実測しているが、とても面倒な
作業なので、本レンズに関しては実測はしていない)
まあ現代でも、まだまだ通用する解像力性能だ。
だが、近い将来には、さらにカメラの画素数が増える事が
予測され、ピクセルピッチが2~3μmとなる場合に備え、
現代での新鋭高解像力レンズは、二百数十LP/mmの解像力
性能を備えていると思われる。
まあでも、そんな時代になったとしても、まだまだ
ピクセルピッチの広い仕様のカメラも存在するだろうし
現代の、または、少し古い時代の一眼レフを使えば、
この時代位のレンズであっても、性能的なバランスは
適正となる。
で、こんな計算を一々せずとも、だいたいカメラと
レンズは「同時代の組み合わせにする」事で、たいてい
解決する訳だ。
本レンズの総括だが、やや古い時代の発売とは言え、
近代レンズ故に、あまり描写性能上の不満は無い。
課題は、やや大きい事であり、大柄のD2Hとの組み合わせ
では、さらにハンドリング性能が悪化する。
発売当時での憧れの高級システムとは言え、その後は
ミラーレス機や小型軽量化一眼レフも当たり前の時代
となり、その感覚からは、2000年代前半のシステムは、
相当に大柄であった事が如実にわかる。
本レンズ購入は、あくまで時代背景の研究用途である。
現代において、あえて本レンズを指名買いする必要は
殆ど無い。逆光耐性や周辺描写力が改善されていると
推測できる後継レンズも色々と発売されているからだ。
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では、次のレンズ。

(中古購入価格 3,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
出自は全く不明、本レンズ自体は、KONICA ARマウント品
である為、KONICA AR機が販売されていた1970年代前後
の時代の発売のMF望遠レンズであろう。

年代前半に銀塩MF一眼レフを展開)と関連が強い、という
説も有力だが、もはや詳細は残念ながら不明だ。
でもまあ、1990年代の中古カメラブーム時には、SOIGORの
レンズも、MIRANDAのカメラも、まあ良く流通していた。
SOLIGORは、その当時に何か1本を買ったような気もするが、
あまり記憶に無い(汗)買ったとしても当時の私であれば
「写りが悪い!」と、すぐに処分してしまっていた事だろう。

特に逆光耐性がかなり低く、かろうじて単層コーティングが
施されている様相と、写りの傾向、そしてちょっと変則的な
プリセット絞り環の構造からしても、1960年代の古い製品
である可能性も高い。
まあ、およそ半世紀も前の古いレンズである、という事だ。
ただまあ、解像感は結構高く、この時代にしては優秀だ。
それと、幸いにして「程度」は極めて良好、ジャンク品という
扱いでもなく、何処かの家に大事に保管されていた物だろうか?
マウントは交換式となっている模様だが、現代において
SOLIGORの交換マウントが入手できる筈も無く、KONICA
ARマウントという、現代では使い難いマイナーマウント故に
中古店でも、ずっと売れ残っていた状態なのかも知れない。

稀にレンズの内面反射により発生する仮想的な虹では無い)
「写りが悪い」という最大の要因は逆光耐性の課題であり
僅かな逆光でも、すぐにフレアっぽくなり、コントラスト
の低下が顕著だ。
だが、順光では、さほど悪く無いので「天国と地獄」だ。
逆光状態を常に避けるように意識して撮る必要がある。
そう言えば、同時代1965年発売のCANON CANONET QL17
(キヤノネット:銀塩コンパクト機)の搭載レンズ45mm/F1.7
にも同様な短所があり、その機体も「天国と地獄」であった。
銀塩時代では現像後のフィルムで、その「地獄」を見る事が
多く、短期間で、その機体を処分してしまったのだが・・
現代のデジタル時代、特に交換レンズでは、撮影前または
撮影直後で、コントラスト低下の状態は確認できる為、
常に順光での良好な描写を確保する事は可能だ。
ただし、被写体状況の制限が多くなるので、撮りたいものを
自由に撮れない、という不満には繋がるであろう。
その他、今回μ4/3機を使っているのはレンズの周辺収差を
カットする理由もある。また、レンズの絞り環(プリセット)
は適宜(作画に影響が出ないよう、可能な範囲で)絞り込む
事で、いくつかの収差を低減できる。(この対策により、
解像感は多少高まっている)
ただし、画質を優先とすると、ボケ質の破綻の回避は困難だ。
いずれにしても、プリセット環を最大に絞り込み、もう1つの
絞り環で無段階に絞り値を調整できる。この技法が使えるので
プリセット仕様の古いレンズは個人的には嫌いでは無い。
実用上では、それらに注意を払えば、使えないという訳では
無いが、かなりのオールドレンズなので、限界はある。

に撮ってしまうと、酷い写りのレンズとなる(「地獄」状態)
世間一般での「これがオールドレンズの描写だ!」といった
作例や作品等では、古い時代のレンズを用い、あえて酷い写り
の写真を掲載している場合も多い。
これは、弱点回避が出来ない人(初級マニア等)が撮った物で
ある場合と、弱点が出る事は承知の上で、あえてオールド
レンズの酷い写りとなっているものを選んでいる場合がある。
(例:オールドレンズの写真集等で、普通に綺麗に写った写真
ばかりを乗せていたら、わざわざ「オールド」とタイトルに
書く意味が無いし、見る側も、期待外れになってしまう)
後者のケースは「確信犯」であるから、全く問題は無いが、
前者での「レンズの言うがままに撮ったら酷い写りとなった」
という状況は、あまり好ましく無い。
オールドレンズでも、撮影技法で、その画質や描写を制御する
技能を身につけておく事が望ましいであろう。その練習や研究
の為に、こうしたレンズを「教材」として利用する。という
目的が、近年、私がオールドレンズやジャンクレンズを多数
購入している理由の1つにもなっている。
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さて、次のレンズも、準ジャンク品だ。

(ジャンク購入価格 1,000円)(以下、SIGMA100-300DL)
カメラは、PENTAX K-30 (APS-C機)
正確な出自は不明、正式な型番名称も不明。
名称が不明なのは、他のSIGMA製の銀塩時代のレンズ全般で
同様であり、SIGMAのWEB等には、もう情報が残っておらず、
レンズ上に書かれている名称も、部分的に順不同で書かれて
いるケースが多いからだ。(正式な順番がわからない)
製造年代は、恐らくだが1990年代後半からの銀塩時代末期
であろう。
DL型番も、現在となっては意味が不明。世間的には「Deluxe
の略称だ」と言われているのだが、私がこの時代にDL型番の
レンズを見た印象においては、
「販売店レンズキット用の低価格帯レンズ」と認識しており、
”DLのLは、ローコストのLだ”と覚えるようにしていた。

1990年代後半は、空前の「(第一次)中古カメラブーム」
が起こっていた。
これは、1985年の一眼レフの実用的AF化(=αショック)
が起こってから、およそ10年が経過し、AF一眼レフの進化が
ピークに達した事(もうこれ以上、新機能を搭載できない)
そして、1990年代前半のバブル崩壊や阪神淡路大震災の影響
により、世情や消費者ニーズが激変した事で、ユーザー層の
多くは新製品のAF一眼レフに全く興味が持てず・・
新品機種であれば、新鋭高級コンパクト機やAPSコンパクト機、
そして他は全て、古い銀塩機(MF一眼レフやレンジ機)に
ユーザー(消費者)層の興味が集中していた時代だ。
AF一眼レフで唯一、孤軍奮闘していたのは、1993年からの
CANON EOS Kissシリーズで、これはファミリー層や女性層
といった新規一眼レフユーザーの獲得に多大な功績があった。
で、1990年代後半では、AF一眼レフが売れない。そこで、
流通(つまり販売店)が取った方策として、カメラメーカー
の発売したAF一眼レフの普及機に対し、カメラ販売店側で
SIGMAやTAMRONといった、レンズ・サードパーティ製の
安価なダブルズームキット(28-90mm前後の標準ズームと
100-300mm前後の望遠ズームのセット)を、ボディ単体
の価格に2万円程度の値段を上乗せする方式で販売した。
まあ入門層がカメラ本体だけを買って、その後、交換レンズ
を自由に選ぶ等は有り得ない。どのレンズを買ったら良いか
わからないし、しかも交換レンズはどれも高価だ。
一応はメーカー純正のレンズキット商品も存在したが、
それはやはり高価で、販売店レンズキットが遥かに安価だ。
だから、最初から「常用できる2本のレンズを2万円で買った」
と見なせるならば、こうした販売店レンズキットは、入門層
にとってみれば非常に買い易く、お買い得な商品となる。
したがって、入門層には、これらのキットは良く売れた。
しかし、この状態は、カメラメーカー側から見れば、自社の
ビジネスを邪魔されているようで面白く無い。
そして、レンズメーカーとしても、レンズは売れて嬉しい
のではあるが、微妙にデメリットもある。
すなわち、この措置で、ユーザー層全般には「SIGMAや
TAMRONのレンズは安物である!」という認識が広まって
しまった訳である。
また、メーカー側からの、この対策として、あるメーカー
では、2000年頃にカメラとレンズとの情報伝達プロトコル
(電子接点を流れる情報のやりとり)を意図的に変更し、
レンズメーカー製のレンズを使えなくしてしまった。
まあ、これはさすがにやりすぎであり、他のもっと穏便な
方策も採られた事であろう。以下はあくまで個人的な想像だが
カメラメーカーは、レンズメーカーと契約し、安価なキット用
ズームレンズをOEM(製造委託)したのではなかろうか?
カメラメーカー自社で品質(性能)管理を行えば、自社の
ブランドとして販売しても問題無いし、大量生産を得意と
するレンズメーカーだ、2万円以下等で納品してもらい、
自社ブランドで3~4万円相当で販売すれば、十分に儲かる。
レンズメーカーとしても、同じ値段で売れるのであれば、
販売店経由で消費者層に直接売るのも、カメラメーカーを
経由して販売するのも同じ事であるし、ブランドイメージ
の低下も無い。
だから、2000年代初頭頃には「販売店レンズキット」は
急速に見かけなくなってしまっていた。
(参考:同時期から、SIGMAやTAMRONも、廉価版のズーム
レンズを、あまり単品発売しなくなっていた)
だが「それでは、カメラメーカーは純正レンズが売れなく
なるのではなかろうか?」と思うかも知れない。
でも、この時代はデジタル化の直前の時期である。近い将来の
2000年代前半には、カメラメーカーは全ての銀塩一眼レフを
デジタル化する計画だ。
であれば、この時点では、ともかく自社の銀塩一眼を売る事が
最優先である。既にカメラやレンズを何本か所有していれば、
そのユーザーを「囲い込む」事が出来る。つまり、デジタル化
に際して、「デジタルでも、今までのフィルム用のレンズが
そのまま使えるそうだから、今更他社のシステムに乗り換える
のはなあ・・」というユーザー側の購買心理に繋がる訳だ。
その為、この時代(2000年前後)には各カメラメーカーから
極めて高性能かつ低価格な、普及用途の銀塩AF一眼レフが
大量に新発売されている。その機種名は多すぎて書ききれない
程であるが、別シリーズ「銀塩一眼レフ・クラッシックス」
記事でも、いくつかの機体を紹介している。
すなわち、この時代はカメラメーカーとして「損して得取れ」
の状態だ。消費者側から見れば、この時代の銀塩一眼レフは
どの機体も「大変コスパが良く、お買い得」ではあるのだが、
まあでも、近い将来にデジタル化されて、それらの機体が
「使い捨て」になる事は、ユーザー側でも気がついている。
こうした複雑な市場背景があり、カメラメーカー対レンズ
メーカーの戦争は、一時期「休戦協定」が結ばれたのでは
なかろうか? と推察している。
これらの話は、あくまで個人的な「想像」の話であるが、
当時の各社の機材を購入し、それを分析し、市場の歴史を
調べていけば、おのずとそのあたりの背景は見えてくる。
これはまあ歴史学者等が行っている「史実の研究・解明」と
同じような行為だ。ただ、昔の歴史であれば、もう当事者は
誰も居ないので、その真偽を確かめる事は難しい。
しかし、こうした近代の歴史であれば、当事者は今でも
健在であろうから、真実を知っている人は居るだろう。
けど、現代の複雑な社会であるから、たとえ当事者であっても
その複雑な仕組みを全て把握している訳でも無いかも知れない。
私も、稀に、当時の市場・メーカー等の関係者等と出合い、
お話を聞かせてもらう事もあるのだが、まあいずれのケースも
自身が業務上で関与していた特定の範囲での証言に留まり、
市場全体で何が起こっていたのか?までは把握されていない
場合が大半でもあった。
さて、余談が長くなったのだが、まあ余談とも言い切れず、
ある時代の、ある機材を評価する上で、その機材を取り巻く
市場や世情を理解した上で機材を見る事は、とても重要だ。
さもないと、何故、その機材が生まれてきたか(発売されたか)
の背景が理解できず、単純に「DL型番だから廉価版の安物だ」
と言ったような、表面的なだけの評価内容に留まってしまう。
では、ここまで世情を理解した上で、本SIGMA100-300DL
を見ていこう。

措置は確かに図られているだろうが、レンズの描写性能自体は、
さほど酷いものでは無い。
まあ、同クラスのSIGMA製望遠(ズーム)レンズには、色収差を
低減した仕様のAPO(アポクロマート)型番の物もラインナップ
上で並存していて、そちらは確かに高性能であり、私も従来に
おいては、1990年代等のSIGMA製望遠レンズを購入する際には、
APO型番のものばかりを選んで購入していたのだ。
だが、「では、APOの有り無しで、どれくらい性能が異なる
のであろうか?」という疑問(興味)も沸いて来た事も
確かである。場合により、「APOと称した事で、付加価値を
向上し、すなわち高く売る為の理由としている」という
捻くれた(ネガティブな)分析も出来るからだ。
実写の感想だが、まず、本レンズとPENTAX K-30(2012年)
との組み合わせでは露出が不安定(アンダー気味)となって
しまう。試しにK-5(2010年)に装着してみると、測光値は
安定し、問題無い。
まあ、レンズとカメラの組み合わせによっては、まれに
こういう事も起きる。だから、古い時代のカメラも簡単には
処分する事は出来ず、各時代のカメラを「検証用」に残して
おく必要性を近年では特に感じている。
(注:K-30に関しては、他にも1本、露出がアンダー気味
となる標準ズームレンズが存在するが、それら以外の
組み合わせでは、そうした課題が発生したケースは無い)
今回に関しては、露出が不安定なまま、K-30で使用する。

焦点距離に応じての諸収差の補正が追いついていないので
あろう。1980年代迄の望遠ズームレンズでは、その傾向が
顕著であり、1990年代からの望遠ズームにおいては、その
弱点は、かなり解消されている事が、多数のジャンク望遠
ズームを買って研究する事で、わかってきている。
では、1990年代後半の本レンズなのに、何故古い時代の
ズームと同様の弱点を持つのか? それは恐らくであるが
新時代のレンズ構成では、コストアップするからだ。
具体的には、異常低分散ガラスや非球面レンズを多用すれば
描写性能は勿論向上する。でも、それらは高価で、低価格帯
のレンズにならない。そこで、旧来からのオーソドックスな
設計(構成)を用いる事でコストダウンを図れる訳だ。
まあ、その仕掛けがわかってしまえば何と言う事は無い。
1980年台迄の望遠ズームと同様な点に注意すれば良い。
あまり極端な望遠域を使わず、控え目な望遠焦点距離として、
かつ、少し絞り気味とする。勿論フルサイズ機では無く
APS-C機を使い周辺収差のカットを行い、この措置で控え目な
焦点距離使用で足りなくなった望遠域の画角を補う。
本レンズはPENTAX用で絞り環を備えているから、この用法
においてはμ4/3機等のミラーレス機で、MFで使用した方が
さらに有利あろう。だが今回はまあAF動作の確認の意味も
あったのでPENTAX機を用いたが、今後はそうしよう。
ただ、これらの用法(技法)は現代の環境での話だ。
銀塩時代であれば、全てフルサイズ機であるし、おまけに
当時のズームレンズの撮影技法と言えば、望遠端と広角端
の端っこだけを目いっぱい使う(=”行ったり来たり”)
用法が初級中級層では殆どだ。
ズームの中間焦点距離を構図上や被写界深度調整の目的で
微妙に用いる等は、当時は、一部の上級者にしか出来ない
難しい技法でもあった。
だから、それらのビギナー的用法は、本レンズの弱点ばかり
を強調する事となる。これでは、恐らくだが当時での評価は
「やはり安物だ、写りがあまり良く無い」で終わってしまう
事であっただろう。
その後、約20年が経ってもシニア層等のユーザーの多くには
「SIGMAやTAMRONのレンズは安物だ、写りが良い筈が無い」
という認識が非常に強く残ってしまっている。
まあ当然ながら大きな誤解であり、現代のSIGMA製レンズは
特にART Lineにおいて、そしてTAMRONでもSP銘のレンズ
においては、他のカメラメーカー純正レンズに勝るとも
劣らない超高性能品である。(=そうやって付加価値を
つけないと、レンズメーカーは生き残れなかった。別に
技術力が無いから安物しか作れない訳では無かったのだ。
安いものも高性能な製品も作れる。後は単に、消費者が
どのレンズを買うのか?を選ぶだけの話である)
まあ銀塩時代の末期に、こうした廉価版のレンズ群を出して
しまった事に、色々な功罪があったという事なのだろう。
そして、銀塩時代に、こうした普及版(廉価版)レンズを
使ったとしても、その性能を上手く引き出せなかった事は、
100%ユーザー側の責任である事は間違い無い。
さらに言えば、現代においても同様だ。レンズは、その
購入価格に見合うだけの「使いこなし」を行わないとならない。
さもなければレンズの欠点ばかりを残してしまう無駄な撮り方
を行って、結果的に実用面でのコスパが大きく悪化してしまう。
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次は今回ラストのレンズ

(新品購入価格 20,000円)(以下、七工匠35/1.2)
カメラは、PANASONIC DMC-GX7(μ4/3機)
2018年に発売された中国製のAPS-C型対応ミラーレス
機用、MF準広角(標準画角)大口径単焦点レンズ。
(注1:2020年に、銀色鏡筒版が追加発売されている)
(注2:本レンズの正式な型番は3512M43Bだが、
現状、七工匠のレンズは同一仕様での被り(重複)が
無い為、当面の間、七工匠製レンズの型番記載は省略
する。今後、機種数が増えたら型番で区別していこう)

APS-C機対応の為、SONY Eマウント機でもアダプターで
使用可能だ。この用法でもケラれずに使える。
(参考:以下写真はSONY NEX-7に装着した例)

かつ、絞り環が存在しているので、こういう異マウント
での併用の離れ業が出来てしまう。(注:他にはあまり
異マウントのミラーレス機間でレンズを共用できるケース
は多くは無い)
最短撮影距離は35cmと、焦点距離10倍則通りでやや不満。
しかしWEBで本レンズの構成を見ると、どこかで見た記憶が
ある。変形ダブルガウス型で、前玉がやや大きい・・
これは恐らくだが、1960年代~1970年代にかけ、各社から
発売されていた55mm~58mmのF1.2級レンズの構成と、
ほぼ同等だろう。(注:当時のF1.2級標準は、6群7枚
構成のものも多いが、中には本レンズと同じ5群6枚の
ものもあった事だろう。あるいは、銀塩機とミラーレス機
のフランジバックの差の調整の為、あえて後群の1枚を
抜いているのかも知れない)
つまり、それら50年以上前の大口径標準レンズの設計を
元に、それを、だいたい3分の2位にスケールダウンして、
APS-C型イメージセンサー用の35mm/F1.2としたのであろう。
仮に3分の2のダウンサイジングであれば、APS-C機での
イメージサークル(面積)は、フルサイズ機の約1/2で
あるから(注:対角線長は約2/3)余裕がある設計となる。
実際にフルサイズ機に装着してみると、ケラれの範囲は少なく、
そんな感じであり、予想通りだ。(注:本シリーズ第26回
記事の「七工匠25mm/f1.8」は、1/2のスケールダウン
製品であったので、APS-C機では、周辺減光が僅かに発生
していた)
つまり、周辺減光や周辺収差のカットの効果は大きく、
特にμ4/3機で使用するならば、銀塩時代で大口径標準
レンズを使った場合よりも画面全域での画質が向上する、
という、隠れたメリットにも繋がる。
で、それらの半世紀以上前のレンズの最短撮影距離は、
いずれも、およそ60cmであったので、これは焦点距離
(55~58mm)の10倍とほぼ同じだ。
だから本レンズも、比率から計算して最短は35cmとなる。
(60cmx約0.6=約36cm、または35mmx10=35cm)
本シリーズ第26回記事で紹介の「七工匠25mm/F1.8」
と同様に、本レンズも、昔の名レンズをスケールダウン
した「ジェネリック・レンズ」である模様だ。
で、あれば・・ その時代の58mm/F1.2級レンズは、
まだ設計完成度が低く、どれも写りはイマイチである。
(最強50mm選手権第7回記事、MF50mm/F1.2編参照)
絞り開放近くで球面収差の発生が大きく、像面湾曲等も
抑えられておらず、解像感もボケ質も良く無い。
(下写真は本レンズで「ボケ質」が破綻している例)

対応策はある。簡単には、「絞り込んで使う」事だ。
本レンズ七工匠35mm/f1.2も、同じ弱点があると推察
されるので、オールド大口径レンズを使うつもりで、
弱点回避を行うのが望ましい。
絞り込めば殆どの収差は減少するし、逆に絞りを開放
近くで使う際は、解像感を要求される被写体を撮らな
かったり、平面に近い被写体を選んだり、ボケ質破綻の
回避(匠の写真用語辞典第13回記事)を行えば良い。
知識と経験と技能を必要とされる状態ではあるが、まあ
安価なレンズを使う場合は、どれも同様だ。
「レンズの言うがまま」に撮っていたらビギナーそのもの
であるし、その結果として「写りが悪い」と文句を言って
いても中級レベル迄であろう。
レンズには様々な弱点が存在するのは当然であるから、
その長所短所を良く見極め、長所を活用し、短所を回避
しながら使う必要がある。それができれば基本OKであるが、
さらに、その短所を強調して、特殊な表現に用いるという
超上級技法すらも存在する。
(下写真では各種設定を変えてボケ質破綻を回避)

1)開放F1.2の大口径
2)大口径レンズとは思えない程の小型軽量
3)高品質な質感
4)無段階絞り、絞り羽根9枚
5)仕様からしては非常に安価(新品約2万円)
逆に短所もあげておこう
1)絞りを開けた場合での解像感の大幅な低下
2)ボケ質破綻の頻繁な発生(像面湾曲、非点収差等)
3)最短撮影距離が長い(35cm)
4)やや小さすぎて、操作性が悪い
5)NDフィルター必須だが、φ43mmとやや特殊
なお、MFである事や、超音波モーターや手ブレ補正が
入っていない事は短所とは見なしていない。そういった
付加機能が入って高価になるならば、むしろ、そちらが
コスパ評価点を悪化させる重大な短所になりうる。
短所1)の解像感の低下は、相当に絞り込まないと
解消されず、感覚的な話だがF11~F16あたりでやっと
球面収差等が収まってくる。しかし、本レンズの絞り値
はF16までが限界だ、それ以上絞る事はできず、また
そのレベルとなると、デジタル機では「小絞りボケ」
(回折現象)が発生する事への対策の仕様でもあろう。
(注:銀塩時代の大口径レンズでは、「自動絞り機構」の
実現の為、「大口径→撮影時の絞り込み」の動作ストローク
を大きくしすぎると、撮影時の絞り動作が間に合わない為、
F16以下の小絞りを搭載しない/出来ないケースもあった。
ただし、この事はミラーレス機用の実絞り(測光)では、
関係の無い話である。ただ単に、旧製品の仕様を踏襲している
だけの場合も当然あるだろうが、設計側で、製品仕様を決める
為の、広義での「設計基準」(=最良の画質を発揮する撮影
距離、という意味だけの話では無い)は、それを設計する側で
無いとわからない事も色々とある)
また短所2)、3)でのボケ質破綻と最短の長さにより、
背景をボカした撮影も、あまり得意とはしない。
オールド大口径でも、中望遠となれば、像面湾曲等を主因
としたボケ質破綻は、ある程度回避できるのだが、画角が
広くなるに従い、像面湾曲等は目立ち、回避も困難だ。
(参考:LOMOのペッツヴァールやLENSBABY TWIST等は、
フルサイズ機で用いる方が「ぐるぐるボケ」が出易い)
絞ってもダメ、開けてもダメ、となると、なかなか
本レンズを適正に使用する用途が見つけ難い。
まあつまり「用途開発が非常に難しいレンズ」という
事になってしまう。
結局、前述のオールドF1.2級大口径標準レンズ群でも、
全く同じ課題があって、極めて使いこなしが難しいレンズ
となり、しかも、それらオールド標準は非常に高価であった
から、コスパ評価も最悪となって、過去の本ブログ記事でも、
名玉編やハイコスパ系のランキングでは、1本も取り上げ
られていない。
まあつまり、評価点がとても低いレンズ群であり、昔から
個人的には、あまり好みのレンズ群では無かった。
でも、現代において、安価になってリニューアルされた
本レンズでは、コスパ評価は向上する。そして、もし
これらの欠点を完全に理解した上で、上手く使いこなす、
又は適正な用途開発が出来るのであれば、なかなか強力な
アイテムになるのではなかろうか・・?

しても適するレンズではある。ただ、その回避技法は
恐ろしく難しいとは思う。ビギナー層では簡単に出来る
ものでは無いので、本レンズを「安価でF値が明るいから」
といった理由で安直に買ってしまったら、恐らくは皆、全く
使いこなせず、「写りが悪い。やはり安物の中華レンズだ!」
という評価となってしまう事であろう。
その原因は上記の通りなので、ユーザー側の課題が大半だ。
まあ、上手く使いこなせるように「練習あるのみ」という
事になる。
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さて、今回の第30回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。