「画像処理プログラミング」シリーズ第4回記事。
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このシリーズでは、「画像処理」、すなわち、写真等の
デジタル画像のピクセル毎に、数学的な演算処理をPC等
で行い、その結果で、検出、抽出、診断、判断、加工等を
行う技術的(工学的)な処理、つまり「テクノロジー」を
実現する事を目指している。
世間一般では、「Photoshop」等のレタッチソフトで
画像を加工編集する事を「画像処理」と呼ぶ場合があるが、
それは、用語の明らかな誤用であろう。
本ブログでは、そちらは「画像編集」(技能)と呼び、
「画像処理」(技術)とは明確に区別している。
編集するのは「技能」(職人的に熟練すれば出来る)であるが、
画像処理は「技術」(研究/開発/発明要素を伴う)だ。
・・その画像処理を行う為のプログラミングの模様や手順を
シリーズ記事として紹介しているが、本シリーズ・プレ回の
「比較明合成」以降の記事では、「横浜写真」「擬似紅葉」
「高精度ピーキング」と、全て、私の完全オリジナルの
演算手法(これらを(画像処理)アルゴリズムと呼ぶ)に
基づいて、全て1からプログラミングしているものであり、
どこかに出ているプログラム(ソースコード)を参照して
単にPCに打ち込んだり、あるいは世の中に普及してる
画像処理ライブラリ等を使用して組み上げたものでは無い。
つまり、完全独自アイデア、かつ非常に高度な専門的内容の
「テクノロジー」である。
よって、この「アルゴリズム」は重要な「知的財産」であり、
残念ながら、その詳細は一般公開できない。また、こうして
作成したソフトウェア群は、完全に私個人用の趣味的な
ツールであり、これを公開したり販売あるいは供与する事も
行わない。あくまで、自分専用の「研究ツール」な訳だ。
そして、前回の「ピーキング」アルゴリズムに関しては、
現代のカメラメーカー製のものよりも正直言えば高精度だ。
だが、これをカメラメーカー等に供与するつもりも無い、
趣味とビジネスは別物であるし、メーカー側が、その道の
専門家であるならば、少なくとも一般人が趣味で作るもの
よりも高性能であって欲しい、という気持ちも多々ある。
さて、では、今回のテーマは「画像をロココ調にするソフト」
である。早速、開発(プログラミング)を行ってみよう。
もう、頭の中で「何をするのか?」は決まっている。
逆に言えば、やる事が決まっていなければ、プログラミング
に着手する事も一切無い訳だ。
では、例によって、プログラミング開発用ソフトを用いて、
C#言語(.NET Framewok)で作っていこう。
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最初に書いておくが、今回のソフトは正直言って失敗だ(汗)
前述のように、オリジナルの画像処理手法(アルゴリズム)
は、高度な専門性が必要かつ、その開発には研究的な要素が
多々含まれている。したがって、それが「研究」である以上は、
その全てがうまくいくとは限らない。まあ平均的な研究では、
10のうち1つも成功すれば良い方であろう。もし新規考案した
テーマの3割もの研究が成功するならば、野球の「3割打者」
レベルでの凄い事(偉業)になる。
まあでも、研究の成功率は、その学術分野によっても異なり、
例えば、薬品(新薬)の研究成功率は、2万~3万件あたりで
僅かに1件程度しか無い、という話も聞いた事がある。
私が目指す研究分野は、「デジタル写真を、世の中の事象に
即した自動加工を行う」というテーマであり、まあこういう
類の研究であれば、成功率は3割程度には達するとは思う。
でも、仕事ならまだしも、趣味でこうした学術研究を行う
人は大変少ないであろう。ただまあ、幸い、趣味であるから
こういう事が自由に出来るのであって、常に研究成果を
求められる「業務」上であったら、正直、やっている事も
しんどくなるかも知れない。
なのでまあ、気軽にプログラミングをしていこう・・
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さて、では最初に「ロココ調」とは何か? という話だが・・
簡単に言えば、18世紀(1700年代頃)のフランスを
発祥とする文化様式である。
例えば、家具の分野であれば「ロココ調家具」という物は
比較的ポピュラーであり、曲線を生かした、優美、華麗、
女性的なデザインのものを指す。これは比較的良く知られて
いるとは思うが、ではロココ調絵画(美術)が、どんな特徴
を持っているか?は、世間一般には殆ど知られていないし、
その様式の代表作とか、代表的な画家も殆ど知られていない。
(まあ、「フラゴナール」作、「ぶらんこ」位のものか?
他のロココ画家としては、「ヴァトー」(Watteau)や
「プーシェ」等が知られているが、いずれも、一般層では、
まず耳にした事が無い画家の名前だと思われる)
また、ロココはバロック(美術)と良く対比される事も多い、
でも、「バロック」も、美術よりも音楽の世界で著名であり、
例えば、”バロック音楽家”の名前であれば、「バッハ」や
「ヘンデル」「ヴィヴァルディ」といった巨匠の名前が、
ちょっと音楽を知っていれば、すらすらと出てくるだろう。
けど、バロック美術(1600年台頃)も負けてはいない、
代表的な画家では、「ルーベンス」「レンブラント」
「フェルメール」「カラヴァッジョ」といったビッグネーム
(巨匠)が勢揃いだ。
あの、アニメの名作「フランダースの犬」では、ネロは
「ルーベンスの絵」を見る事が(悲しい)夢であったし
(注:一部のルーベンスの作品は、ネロ少年には刺激が
強すぎるように思うが・・汗 まあ、ネロの地元が生んだ
巨匠であるから、そういうストーリーになっているのか?
ちなみに、ルーベンス(Rubens 1577~1640年)だが、
他の一般的な画家は、生前に作品が評価される事は少なく、
困窮生活となる事が普通であるが・・ ルーベンスは工房を
経営し作品も良く売れ、生前から非常に著名であった模様だ)
レンブラントは、「レンブラント光」として、写真とか
映像分野でのライティング(照明)の手法としても著名だ。
地元オランダでの人気は高く、市民が彼の代表作「夜警」の
登場人物に仮装して町を練り歩く祭りがあるそうだ。
フェルメールも、近年では日本においても大人気だ、
美術展などがあっても長蛇の列・満員御礼で、近寄る事すら
出来ない(汗)
(注:フェルメールの生涯作品数は少なく、30数点しか
無いと言われている。美術展では、やや厳しい少なさだ)
「カラヴァッジョ」は日本での知名度は低いが、「天才」と
称されたバロックの立役者だ。2020年、コロナ禍の直前
に大阪で展覧会が開催され、なんとか見学に行けた。
(注:ただし、こちらも作品数が少なく、画家単独で展覧会
を行うには厳しい。そこで、一般に「カラバッジェスキ」と
呼ばれる、カラヴァッジョの影響を強く受けた他の画家達の
作品が並行して展示されている場合が多いと思う)
で、バロック美術の特徴は、一言で言うと「ドラマチック」
であり、技法上では「光と影」の対比が凄い事だ。
まあ、ちょっと「やりすぎ感」もあって、好みは分かれる
と思う。フェルメールあたりでも、そういう作品はあるが、
「真珠の耳飾りの少女」や「牛乳を注ぐ女」等の、あまり
劇的(ドラマチック)で過剰演出気味では無い、大人しい
作品が一般には好まれる模様だ。
----
対して「ロココ」だが、フランス貴族文化であり、ずばり
簡単に言ってしまえば「ベルサイユのばら」(漫画、アニメ、
舞台等)での世界である。
まあ、とは言うものの、ロココ文化のピークは、マリー・
アットワネットが王妃になる頃より少し前の時代の話で、
つまり、アントワネットの義父、国王「ルイ15世」の愛人の
「ポンパドゥール夫人」とか、アニメでのアントワネットの
いじめ役の「デュ・バリー夫人」とか、そのあたりの時代か。
そして、文化は、より長い時間で継承されていくので、
「ベルばら」におけるアントワネットの時代での取り巻きの
「ポリニャック夫人」とか、そのあたりの登場人物の嗜好、
文化、服装、あるいは家具調度の類を連想してもらえれば、
ロココ文化については、わかり易いであろう。
(注:ポンパドゥール夫人は、当時のロココ調の宮廷画家達を
庇護していた記録がある模様だが、正確なところはわからない。
なお、「ベルばら」に登場する、「XXX夫人」といった
キャラクターの多くは実在の人物であり、贅を尽くしていた
模様だ。いずれにしても、これらの国王とりまきの女性達の
浪費が王室財政に多大な負担を与えた事は確かな様子だし、
それがフランス革命(1789~1799年)の原因の1つでも
あったのだろう。(→市民が王政や旧体制に強く反発した)
まあこれも、まさに「ベルばら」作品の世界観だ)
「ロココ絵画」は前述のように代表的な作品や作家が少ない
ので、なんとも説明がしずらい。そして絵画的な特徴も
定義がしずらく、簡単に言えば、前時代の「バロック」の
真逆であり、華麗で華美・優雅、曲線的、そして技法上では
人物の肌等における明暗差を殆ど廃し、平板とも言える繊細さ
を持たせている事である。まあつまり、前述のようなフランス
宮廷における貴族(特に女性)の肖像画などに適したスタイル
の作風だ。
まあ、それもその筈であり、前時代のバロックのレンブラント
やベラスケスのような、ドドーンと劇的すぎるドラマチックな
絵では、肖像画を書いてもらう方(注文主)にも、時代・文化の
背景的に、だいぶ違和感があっただろうからだ。
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で、私個人が、何故ロココ調のソフトを作りたいのか?
と言えば、実はロココ調に特定した話ではなく、西洋美術史
全般に興味があるからである。
それは最近での話、と言うよりは、学生時代の頃からであり、
理工系の大学ではあったが、「芸術」の単位取得があって、
そこでは「西洋美術」を選択し、試験の際は「フォービスム」
(=野獣派。20世紀初頭の様式、マティス等が著名。
マティスはキュビズムのブラック等へも影響を与えた事で、
そのあたりを主に)論文を書いてA評価を貰った事があった。
近隣に美術館もあった大学だったので、良く行っていたし
卒業後もずっと現在に至るまで、年に数回は様々な画家の
美術展を見学している。また、たまに美術関連の本とかも
買って来て読んでいる次第だ。
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近年では、さらにこの分野に傾倒していて、コロナ禍以前
では、月に1度程度の美術展見学をしていたし、美術関連の
書籍所有数は優に200冊を超える。
で、最近では、そうした、昔から好きな(西洋)美術の
様式と、「画像処理工学」という学問を掛け合わせる事に、
興味が沸いてきてしまった訳だ。
専門的な「画像処理」の技術が身についてきたので、それを
美術的な様式を実現する為に使ったらどうなるだろうか?
という発想である。今回の「ロココ調」は、あまりうまく
いかなかったが(汗) 今後、印象派だとか、点描とか、
ダ・ヴィンチ風の背景(空気遠近法)とか、フォービスム風の
派手な色彩感とか、ピカソ風キュビズム(多面視点)とか、
バルビゾン派(ミレー等)の素朴な田園イメージであるとか、
画像処理のネタになりそうな様式はいくらでも存在するので、
「これは趣味的な研究テーマとしては、とても面白い」という
判断に至った次第である。
(コロナ禍での外出自粛期間中に、上記のようなテーマの
絵画調変換ソフトの「試作」をいくつか行ったので、今後、
本シリーズ記事で順次紹介していく。
ただし、その全てが成功している訳では無いが、まあ
「新しい画像処理を研究する」事自体に意味があると思う)
さて、基本的な部分の説明が極めて長くなったのだが、
そうこうしている間に、ソフトウェア「Rococo Ver.1」
が既に完成している。
使用言語はMicrosoft C# (.NET Framework)のみを使用。
なお、.NETとはWindowsの開発・実行環境であるが
Windows OSの基礎をなす要素として発展し、2020年
11月には、「.NET5」として統合される予定だと聞く。
まあ、当面は、従来の.NET 4.xも動作互換性は保証
される事であろう。
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C#言語での開発は効率が良く、やりたい事さえちゃんと
決まっていて、画像工学に係わる基礎知識もあるならば
1日もかからずにソフトウェアを完成させることが出来る。
(注:いつもプログラミング関連の記事で書くが、
「やりたい事」つまり「仕様」が決まっていない場合、
プログラムは1行たりとも書く事はできない。
逆に言えば、プログラミングとは、その、やりたい事を
フローチャート的に思いつけるか否か?で決まり、C++言語
とか、パイソン言語の書き方(作法、文法)を知っているか
否か?などは、あまり重要な事では無いのだ。)
ただ、完成したと言っても、この時点では一応ソフトウェアが
正しく動作をしたと場合であっても、どのような画像に対して、
どのように調整したら、適正な画像処理効果が出るか?
という点では、まっさらな状態で、未調整である。
一応、女性等の人物写真において、「肌等の質感を柔らかく
繊細にすれば良い、派手な色味を省略する事」といった事は
わかっていて、そういう画像処理内容を組み込んではいるが、
実際にロココ調に見えるかどうか?は、例えば上写真のような
和装の女性では、全くと言っていいほど、世界観のイメージが
変わって来て、なんだかよくわからない(汗)
しかし、「ベルサイユのばら」の世界観のような写真など、
手元には無いし、実際の調整作業のところで困ってしまった。
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じゃあ、上写真のような感じか? これをロココ調に変換
するとどうなるのか?(下写真)
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これが画像処理後・・ う~ん、なんだか良く効果が
現れていない(汗) ・・と言うか、そもそもロココ調の
絵画はあるが、ロココ調の写真なんて、世の中には存在して
いないから、「どうしたら正解なのか?」が、わからない訳だ。
だとしたら、この研究プロジェクトは、この時点で失敗だ(汗)
いったい何が目指す目標なのか、良くわからないし、その目標に
近づけるためのサンプルとなる画像資料も、何も持っていない。
(参考:近年のプロジェクトで良く失敗する「AI(人工知能)
ならば、何でも出来るだろう・・」と言って、コンピューター
に教えるべき「教師データ」も十分に揃っていない状態で、
AI化を進めてしまって、結果、「何の成果も得られなかった」
という状態に近いと思う)
でもまあ「ロココ調」に拘る必要はなく、色々なジャンルの
写真を、このソフトを通したらどうなるのだろうか?
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昆虫写真、なんだか良く効果がわからない(汗)
最初から、こういう感じの蝶の写真だといえば、
その通りであろう。
それと、背景のハイライトボケ部が「段階的な
諧調」となってしまっていて、それが目立つ。
これを目立たないように処理すると、全体的な効果も
減ってしまうので、なんとも調整が難しい。
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草花のソフトフォーカス写真の処理後。
う~ん、ただ単に花の色が薄くなっただけだ。
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装飾品、でも、これも、最初からこういう色味の家具だ、
といえば、それだけである。
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マネキン人形、これも、だからどうなの? という感じだ。
このソフトにはヒストグラムの表示があり、画像処理前と
処理後で、それを確認できるが、だいたい目的となる処理
結果は得られていると思う、しかし、それがあまり効果的
では無いのだ。
やっぱ、実際の女性のポートレートで無いと無理なのか?
でも、「ベルサイユのばら」に出てくる貴族の女性の
ような写真は、残念ながら1枚も持っていない。まあネット
で検索すれば肖像画等は出てくると思うが、古い時代の物で
著作権は問題無いとは言え、他人の芸術家の作品をあまり
安易に引用したく無い。また、それらの肖像画は、最初から
「ロココ調」の絵であるから、本ソフトでロココ調に変換
する為の「元ネタ」が無いではないか(汗)
しょうがない、「フランス貴族」はあきらめて、純和風の
女性で試してみよう。
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こちらをロココ調にすると・・
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まあ、全体的に派手な色味はすべて省略されてはいる。明暗差については、段階的に階調化してグラデーションの
単純化処理をしてはいるが、明部と暗部の輝度差そのものを
いじくる事はしていない。(つまり、バロック絵画での
「盛りすぎ感」を嫌って、優雅にしたのがロココ美術だ)
しかし、この写真に関しては、女性の顔の部分、あるいは
着物の諧調が「段階的な事」が、やや目だってしまい、
これは、ちょっと好ましくない。
まあ、画像処理で「段階諧調」とする場合でも、その結果の
「大きな諧調差」が目立たないように、アルゴリズムを改良
する必要があるのだが、それは「段階である事」と矛盾する
内容なので、どうしたら良いか、わからなくなってしまう。
それと、これはサンプルとした画像が、あまり適正では無い
という事もあるだろう。できるだけ画像処理後の段階諧調が
目立たない写真を入力する必要がある。
それから、画像処理の効果や方向性が合っていたとしても、
さすがに和装写真では、ロココのイメージとは遠すぎるのだ。
もう少し洋風なのはどうか? パンク・ロックのステージ
写真があった筈だ。
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これは「フランス貴族」では無いが、洋風とは言えるだろう。
「さあ、これで上手くいってくれ!」
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う~ん、ダメだ(汗)これもまた段階諧調の目立つ画像にしかならないし、
この効果が得られたところで、何が言いたいのか?が、
良くわからない。
・・・やはりこのソフトは失敗作だろう(泣)
画像処理的には、結構複雑で高度な事をやっている。
で、その処理内容は、ちゃんとロココ調の特徴にも合致
してはいる、けど、良いサンプル画像が見当たらず、かつ
目標とする結果も、明確には存在していないのだ。
だから、「何が正解なのか?」が良くわからない。
すなわち、「プログラミング開発自体は成功したが、目的と
する結果を得る事ができなかった」という失敗例である。
まあ、そういうケースもあるのだろう。そして、どうせ
個人的な趣味での研究だから、研究の失敗で誰にも迷惑を
かける訳でもない、むしろ、「こういう失敗例もあるのだ」
という点で、非常に良い勉強になった。
世の中の研究・開発、あるいはアート、そして写真に至る迄、
失敗例は、ひたかくしに隠してしまう場合が殆どであるが、
失敗から得るものは大変多い、いや、むしろ多数の失敗例
こそ、後進にその轍を踏まない為にも、公開が必要なのでは
なかろうか・・
では、今回のプログラミング記事は、このあたりまで。
次回記事掲載は不定期としておくが、できるだけ次の
ソフトウェア開発は成功させたいものである・・
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デジタル画像のピクセル毎に、数学的な演算処理をPC等
で行い、その結果で、検出、抽出、診断、判断、加工等を
行う技術的(工学的)な処理、つまり「テクノロジー」を
実現する事を目指している。
世間一般では、「Photoshop」等のレタッチソフトで
画像を加工編集する事を「画像処理」と呼ぶ場合があるが、
それは、用語の明らかな誤用であろう。
本ブログでは、そちらは「画像編集」(技能)と呼び、
「画像処理」(技術)とは明確に区別している。
編集するのは「技能」(職人的に熟練すれば出来る)であるが、
画像処理は「技術」(研究/開発/発明要素を伴う)だ。
・・その画像処理を行う為のプログラミングの模様や手順を
シリーズ記事として紹介しているが、本シリーズ・プレ回の
「比較明合成」以降の記事では、「横浜写真」「擬似紅葉」
「高精度ピーキング」と、全て、私の完全オリジナルの
演算手法(これらを(画像処理)アルゴリズムと呼ぶ)に
基づいて、全て1からプログラミングしているものであり、
どこかに出ているプログラム(ソースコード)を参照して
単にPCに打ち込んだり、あるいは世の中に普及してる
画像処理ライブラリ等を使用して組み上げたものでは無い。
つまり、完全独自アイデア、かつ非常に高度な専門的内容の
「テクノロジー」である。
よって、この「アルゴリズム」は重要な「知的財産」であり、
残念ながら、その詳細は一般公開できない。また、こうして
作成したソフトウェア群は、完全に私個人用の趣味的な
ツールであり、これを公開したり販売あるいは供与する事も
行わない。あくまで、自分専用の「研究ツール」な訳だ。
そして、前回の「ピーキング」アルゴリズムに関しては、
現代のカメラメーカー製のものよりも正直言えば高精度だ。
だが、これをカメラメーカー等に供与するつもりも無い、
趣味とビジネスは別物であるし、メーカー側が、その道の
専門家であるならば、少なくとも一般人が趣味で作るもの
よりも高性能であって欲しい、という気持ちも多々ある。
さて、では、今回のテーマは「画像をロココ調にするソフト」
である。早速、開発(プログラミング)を行ってみよう。
もう、頭の中で「何をするのか?」は決まっている。
逆に言えば、やる事が決まっていなければ、プログラミング
に着手する事も一切無い訳だ。
では、例によって、プログラミング開発用ソフトを用いて、
C#言語(.NET Framewok)で作っていこう。
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前述のように、オリジナルの画像処理手法(アルゴリズム)
は、高度な専門性が必要かつ、その開発には研究的な要素が
多々含まれている。したがって、それが「研究」である以上は、
その全てがうまくいくとは限らない。まあ平均的な研究では、
10のうち1つも成功すれば良い方であろう。もし新規考案した
テーマの3割もの研究が成功するならば、野球の「3割打者」
レベルでの凄い事(偉業)になる。
まあでも、研究の成功率は、その学術分野によっても異なり、
例えば、薬品(新薬)の研究成功率は、2万~3万件あたりで
僅かに1件程度しか無い、という話も聞いた事がある。
私が目指す研究分野は、「デジタル写真を、世の中の事象に
即した自動加工を行う」というテーマであり、まあこういう
類の研究であれば、成功率は3割程度には達するとは思う。
でも、仕事ならまだしも、趣味でこうした学術研究を行う
人は大変少ないであろう。ただまあ、幸い、趣味であるから
こういう事が自由に出来るのであって、常に研究成果を
求められる「業務」上であったら、正直、やっている事も
しんどくなるかも知れない。
なのでまあ、気軽にプログラミングをしていこう・・
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簡単に言えば、18世紀(1700年代頃)のフランスを
発祥とする文化様式である。
例えば、家具の分野であれば「ロココ調家具」という物は
比較的ポピュラーであり、曲線を生かした、優美、華麗、
女性的なデザインのものを指す。これは比較的良く知られて
いるとは思うが、ではロココ調絵画(美術)が、どんな特徴
を持っているか?は、世間一般には殆ど知られていないし、
その様式の代表作とか、代表的な画家も殆ど知られていない。
(まあ、「フラゴナール」作、「ぶらんこ」位のものか?
他のロココ画家としては、「ヴァトー」(Watteau)や
「プーシェ」等が知られているが、いずれも、一般層では、
まず耳にした事が無い画家の名前だと思われる)
また、ロココはバロック(美術)と良く対比される事も多い、
でも、「バロック」も、美術よりも音楽の世界で著名であり、
例えば、”バロック音楽家”の名前であれば、「バッハ」や
「ヘンデル」「ヴィヴァルディ」といった巨匠の名前が、
ちょっと音楽を知っていれば、すらすらと出てくるだろう。
けど、バロック美術(1600年台頃)も負けてはいない、
代表的な画家では、「ルーベンス」「レンブラント」
「フェルメール」「カラヴァッジョ」といったビッグネーム
(巨匠)が勢揃いだ。
あの、アニメの名作「フランダースの犬」では、ネロは
「ルーベンスの絵」を見る事が(悲しい)夢であったし
(注:一部のルーベンスの作品は、ネロ少年には刺激が
強すぎるように思うが・・汗 まあ、ネロの地元が生んだ
巨匠であるから、そういうストーリーになっているのか?
ちなみに、ルーベンス(Rubens 1577~1640年)だが、
他の一般的な画家は、生前に作品が評価される事は少なく、
困窮生活となる事が普通であるが・・ ルーベンスは工房を
経営し作品も良く売れ、生前から非常に著名であった模様だ)
レンブラントは、「レンブラント光」として、写真とか
映像分野でのライティング(照明)の手法としても著名だ。
地元オランダでの人気は高く、市民が彼の代表作「夜警」の
登場人物に仮装して町を練り歩く祭りがあるそうだ。
フェルメールも、近年では日本においても大人気だ、
美術展などがあっても長蛇の列・満員御礼で、近寄る事すら
出来ない(汗)
(注:フェルメールの生涯作品数は少なく、30数点しか
無いと言われている。美術展では、やや厳しい少なさだ)
「カラヴァッジョ」は日本での知名度は低いが、「天才」と
称されたバロックの立役者だ。2020年、コロナ禍の直前
に大阪で展覧会が開催され、なんとか見学に行けた。
(注:ただし、こちらも作品数が少なく、画家単独で展覧会
を行うには厳しい。そこで、一般に「カラバッジェスキ」と
呼ばれる、カラヴァッジョの影響を強く受けた他の画家達の
作品が並行して展示されている場合が多いと思う)
で、バロック美術の特徴は、一言で言うと「ドラマチック」
であり、技法上では「光と影」の対比が凄い事だ。
まあ、ちょっと「やりすぎ感」もあって、好みは分かれる
と思う。フェルメールあたりでも、そういう作品はあるが、
「真珠の耳飾りの少女」や「牛乳を注ぐ女」等の、あまり
劇的(ドラマチック)で過剰演出気味では無い、大人しい
作品が一般には好まれる模様だ。
----
対して「ロココ」だが、フランス貴族文化であり、ずばり
簡単に言ってしまえば「ベルサイユのばら」(漫画、アニメ、
舞台等)での世界である。
まあ、とは言うものの、ロココ文化のピークは、マリー・
アットワネットが王妃になる頃より少し前の時代の話で、
つまり、アントワネットの義父、国王「ルイ15世」の愛人の
「ポンパドゥール夫人」とか、アニメでのアントワネットの
いじめ役の「デュ・バリー夫人」とか、そのあたりの時代か。
そして、文化は、より長い時間で継承されていくので、
「ベルばら」におけるアントワネットの時代での取り巻きの
「ポリニャック夫人」とか、そのあたりの登場人物の嗜好、
文化、服装、あるいは家具調度の類を連想してもらえれば、
ロココ文化については、わかり易いであろう。
(注:ポンパドゥール夫人は、当時のロココ調の宮廷画家達を
庇護していた記録がある模様だが、正確なところはわからない。
なお、「ベルばら」に登場する、「XXX夫人」といった
キャラクターの多くは実在の人物であり、贅を尽くしていた
模様だ。いずれにしても、これらの国王とりまきの女性達の
浪費が王室財政に多大な負担を与えた事は確かな様子だし、
それがフランス革命(1789~1799年)の原因の1つでも
あったのだろう。(→市民が王政や旧体制に強く反発した)
まあこれも、まさに「ベルばら」作品の世界観だ)
「ロココ絵画」は前述のように代表的な作品や作家が少ない
ので、なんとも説明がしずらい。そして絵画的な特徴も
定義がしずらく、簡単に言えば、前時代の「バロック」の
真逆であり、華麗で華美・優雅、曲線的、そして技法上では
人物の肌等における明暗差を殆ど廃し、平板とも言える繊細さ
を持たせている事である。まあつまり、前述のようなフランス
宮廷における貴族(特に女性)の肖像画などに適したスタイル
の作風だ。
まあ、それもその筈であり、前時代のバロックのレンブラント
やベラスケスのような、ドドーンと劇的すぎるドラマチックな
絵では、肖像画を書いてもらう方(注文主)にも、時代・文化の
背景的に、だいぶ違和感があっただろうからだ。
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と言えば、実はロココ調に特定した話ではなく、西洋美術史
全般に興味があるからである。
それは最近での話、と言うよりは、学生時代の頃からであり、
理工系の大学ではあったが、「芸術」の単位取得があって、
そこでは「西洋美術」を選択し、試験の際は「フォービスム」
(=野獣派。20世紀初頭の様式、マティス等が著名。
マティスはキュビズムのブラック等へも影響を与えた事で、
そのあたりを主に)論文を書いてA評価を貰った事があった。
近隣に美術館もあった大学だったので、良く行っていたし
卒業後もずっと現在に至るまで、年に数回は様々な画家の
美術展を見学している。また、たまに美術関連の本とかも
買って来て読んでいる次第だ。
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では、月に1度程度の美術展見学をしていたし、美術関連の
書籍所有数は優に200冊を超える。
で、最近では、そうした、昔から好きな(西洋)美術の
様式と、「画像処理工学」という学問を掛け合わせる事に、
興味が沸いてきてしまった訳だ。
専門的な「画像処理」の技術が身についてきたので、それを
美術的な様式を実現する為に使ったらどうなるだろうか?
という発想である。今回の「ロココ調」は、あまりうまく
いかなかったが(汗) 今後、印象派だとか、点描とか、
ダ・ヴィンチ風の背景(空気遠近法)とか、フォービスム風の
派手な色彩感とか、ピカソ風キュビズム(多面視点)とか、
バルビゾン派(ミレー等)の素朴な田園イメージであるとか、
画像処理のネタになりそうな様式はいくらでも存在するので、
「これは趣味的な研究テーマとしては、とても面白い」という
判断に至った次第である。
(コロナ禍での外出自粛期間中に、上記のようなテーマの
絵画調変換ソフトの「試作」をいくつか行ったので、今後、
本シリーズ記事で順次紹介していく。
ただし、その全てが成功している訳では無いが、まあ
「新しい画像処理を研究する」事自体に意味があると思う)
さて、基本的な部分の説明が極めて長くなったのだが、
そうこうしている間に、ソフトウェア「Rococo Ver.1」
が既に完成している。
使用言語はMicrosoft C# (.NET Framework)のみを使用。
なお、.NETとはWindowsの開発・実行環境であるが
Windows OSの基礎をなす要素として発展し、2020年
11月には、「.NET5」として統合される予定だと聞く。
まあ、当面は、従来の.NET 4.xも動作互換性は保証
される事であろう。
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決まっていて、画像工学に係わる基礎知識もあるならば
1日もかからずにソフトウェアを完成させることが出来る。
(注:いつもプログラミング関連の記事で書くが、
「やりたい事」つまり「仕様」が決まっていない場合、
プログラムは1行たりとも書く事はできない。
逆に言えば、プログラミングとは、その、やりたい事を
フローチャート的に思いつけるか否か?で決まり、C++言語
とか、パイソン言語の書き方(作法、文法)を知っているか
否か?などは、あまり重要な事では無いのだ。)
ただ、完成したと言っても、この時点では一応ソフトウェアが
正しく動作をしたと場合であっても、どのような画像に対して、
どのように調整したら、適正な画像処理効果が出るか?
という点では、まっさらな状態で、未調整である。
一応、女性等の人物写真において、「肌等の質感を柔らかく
繊細にすれば良い、派手な色味を省略する事」といった事は
わかっていて、そういう画像処理内容を組み込んではいるが、
実際にロココ調に見えるかどうか?は、例えば上写真のような
和装の女性では、全くと言っていいほど、世界観のイメージが
変わって来て、なんだかよくわからない(汗)
しかし、「ベルサイユのばら」の世界観のような写真など、
手元には無いし、実際の調整作業のところで困ってしまった。
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するとどうなるのか?(下写真)
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現れていない(汗) ・・と言うか、そもそもロココ調の
絵画はあるが、ロココ調の写真なんて、世の中には存在して
いないから、「どうしたら正解なのか?」が、わからない訳だ。
だとしたら、この研究プロジェクトは、この時点で失敗だ(汗)
いったい何が目指す目標なのか、良くわからないし、その目標に
近づけるためのサンプルとなる画像資料も、何も持っていない。
(参考:近年のプロジェクトで良く失敗する「AI(人工知能)
ならば、何でも出来るだろう・・」と言って、コンピューター
に教えるべき「教師データ」も十分に揃っていない状態で、
AI化を進めてしまって、結果、「何の成果も得られなかった」
という状態に近いと思う)
でもまあ「ロココ調」に拘る必要はなく、色々なジャンルの
写真を、このソフトを通したらどうなるのだろうか?
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最初から、こういう感じの蝶の写真だといえば、
その通りであろう。
それと、背景のハイライトボケ部が「段階的な
諧調」となってしまっていて、それが目立つ。
これを目立たないように処理すると、全体的な効果も
減ってしまうので、なんとも調整が難しい。
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う~ん、ただ単に花の色が薄くなっただけだ。
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といえば、それだけである。
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このソフトにはヒストグラムの表示があり、画像処理前と
処理後で、それを確認できるが、だいたい目的となる処理
結果は得られていると思う、しかし、それがあまり効果的
では無いのだ。
やっぱ、実際の女性のポートレートで無いと無理なのか?
でも、「ベルサイユのばら」に出てくる貴族の女性の
ような写真は、残念ながら1枚も持っていない。まあネット
で検索すれば肖像画等は出てくると思うが、古い時代の物で
著作権は問題無いとは言え、他人の芸術家の作品をあまり
安易に引用したく無い。また、それらの肖像画は、最初から
「ロココ調」の絵であるから、本ソフトでロココ調に変換
する為の「元ネタ」が無いではないか(汗)
しょうがない、「フランス貴族」はあきらめて、純和風の
女性で試してみよう。
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単純化処理をしてはいるが、明部と暗部の輝度差そのものを
いじくる事はしていない。(つまり、バロック絵画での
「盛りすぎ感」を嫌って、優雅にしたのがロココ美術だ)
しかし、この写真に関しては、女性の顔の部分、あるいは
着物の諧調が「段階的な事」が、やや目だってしまい、
これは、ちょっと好ましくない。
まあ、画像処理で「段階諧調」とする場合でも、その結果の
「大きな諧調差」が目立たないように、アルゴリズムを改良
する必要があるのだが、それは「段階である事」と矛盾する
内容なので、どうしたら良いか、わからなくなってしまう。
それと、これはサンプルとした画像が、あまり適正では無い
という事もあるだろう。できるだけ画像処理後の段階諧調が
目立たない写真を入力する必要がある。
それから、画像処理の効果や方向性が合っていたとしても、
さすがに和装写真では、ロココのイメージとは遠すぎるのだ。
もう少し洋風なのはどうか? パンク・ロックのステージ
写真があった筈だ。
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「さあ、これで上手くいってくれ!」
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この効果が得られたところで、何が言いたいのか?が、
良くわからない。
・・・やはりこのソフトは失敗作だろう(泣)
画像処理的には、結構複雑で高度な事をやっている。
で、その処理内容は、ちゃんとロココ調の特徴にも合致
してはいる、けど、良いサンプル画像が見当たらず、かつ
目標とする結果も、明確には存在していないのだ。
だから、「何が正解なのか?」が良くわからない。
すなわち、「プログラミング開発自体は成功したが、目的と
する結果を得る事ができなかった」という失敗例である。
まあ、そういうケースもあるのだろう。そして、どうせ
個人的な趣味での研究だから、研究の失敗で誰にも迷惑を
かける訳でもない、むしろ、「こういう失敗例もあるのだ」
という点で、非常に良い勉強になった。
世の中の研究・開発、あるいはアート、そして写真に至る迄、
失敗例は、ひたかくしに隠してしまう場合が殆どであるが、
失敗から得るものは大変多い、いや、むしろ多数の失敗例
こそ、後進にその轍を踏まない為にも、公開が必要なのでは
なかろうか・・
では、今回のプログラミング記事は、このあたりまで。
次回記事掲載は不定期としておくが、できるだけ次の
ソフトウェア開発は成功させたいものである・・