所有している一眼レフ用の50mm標準レンズを、AF/MFや
開放F値等によるカテゴリー別で予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。
今回は、予選O(オー)ブロックとして「その他50mm相当」
のレンズを7本紹介(対戦)する。
紹介本数が多いので、各レンズの実写掲載は少な目とする。
なお、「その他50mm相当」とは、レンズの特性上で、
これまでのカテゴリーに区分し難かったレンズ、および
新規購入で追加したレンズを集めている。
それらの焦点距離または換算画角は、概ね40~60mmの
標準画角の範囲にとどまる。
まあつまり、ここまでで約80本のレンズ紹介(対戦)
となり、もう標準レンズは殆ど紹介しつくしたので、
「その他」というカテゴリーとなって、いよいよ
本シリーズ最後の「決勝戦」が近いという状況だ。
ちなみに、65mmという焦点距離のレンズと、APS-C機
専用の60mmというレンズを、本シリーズの標準レンズ
として扱うかどうか?を迷ったが、それらは、いずれ
「85mm選手権」をシリーズ化したら、その時に紹介
(対戦)する事としよう。
---
さて、まずは今回最初のレンズ。
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レンズ名:NIKON NIKKOR-H Auto 50mm/f2
レンズ購入価格:5,000円相当(中古)
使用カメラ:NIKON Df(フルサイズ機)
ハイコスパレンズ・マニアックス第25回記事等で
紹介した、1964年発売のMF単焦点標準レンズ。
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本レンズは単層コーティング(モノコート)仕様であり、
1990年代の中古カメラブーム時では「モノクロフィルム
で撮るのが望ましい」とされていたのだが、まあ現代の
デジタル時代においては、あまりそうした事に拘る必要
は無い。(=色味等は、どうとでも変更できるからだ。
それに、「モノコート=モノクロ用」という概念自体が
誤解である。技術的な詳細は冗長になる為、割愛するが、
何か疑問があれば、必ず自分で調べる必要があるだろう)
で、むしろ母艦が問題であり、ニコン製デジタル一眼レフ
では、このような「非Ai」仕様のオールドレンズは極めて
使い難いか使用不能であり、かろうじて使用可能な機種が
今回使用のNIKON Dfではあるが、Dfを使ったとしても
面倒で不条理な”絞り値の二重操作”が必要だ。
(=レンズ側絞り環を廻した後、それと同じ値まで
Df側の電子ダイヤルで絞り値を設定する必要がある)
よって、一般的なNIKON Fマウントアダプターを介して
ミラーレス機に装着した方が、遥かに簡便に使える。
その際、発色に優れたFUJIFILM機等を用いれば、前述の
「カラーフィルム時代以前のオールドレンズ」という
課題は、ほぼ問題無いレベルとなる。
FUJIFILMミラーレス機に現状フルサイズ機が無いという
事はどうでも良い。と言うか、本レンズの最短撮影距離は
60cmと、一般的な標準レンズの45cmよりもだいぶ長い為、
使用時には「寄れない不満」が出てくる。この点を
心理的に解消する上でも、APS-C機で75mm相当の画角、
かつ最短60cmで使った方が「エンジョイ度」が高まるし、
(=「焦点距離の10倍則」を下回る比率になる為)
周辺収差の大きいオールドレンズは、APS-C機で中央
画角を切り出して使った方が画面平均画質は高まる。
まあでも、今回はオリジナルのニッコールの雰囲気を
味わう為に、あえて不便なNIKON Dfで使ってみよう。
Dfは、操作系全般が極めて劣る機体である為、現代レンズ
を使用した効率的な撮影には適さない。こういう用途でも
無いと、この機体を使う価値が無くなってしまう。
なお、Dfの記録画素数は最大1600万画素と低いが、
逆に言えば、フルサイズ機である事とあいまって、
ピクセルピッチが約7.2μmと、非常に大きい(一般的
な他機の2倍程度)この事での、ダイナミックレンジの
増加等の話はさておき、今回のようなオールドレンズを
使った場合でも、その解像力(概ね低い)とのバランス
が良い。すなわち計算上では70LP/mm程度の低解像力
オールドレンズ使用時でもセンサー側のピクセルピッチ
との適合性があるという事だ。
まあただし、本NIKOR-H 50/2は、古いレンズとは言え、
そこまで低解像力では無いであろう。実測してはいないが
中央部で推定120LP/mm以上は確実にあるとは思われる。
で、例えば、APS-C機で2400万画素機ともなると、
1÷(横幅23.5mm÷横6000ピクセル)÷2=約127LP/mm
が必要解像力となり、現代のレンズでは、たいてい
これ以上の画面中央部解像力を持つが、周辺では怪しく
なるだろうし、オールドレンズ等では、これに満たない
性能のレンズも色々と存在すると思う。
まあつまり、レンズの性能や特性に合わせて母艦の選択、
あるいは画素数等も意識する必要があるという事だ。
ただ単に、高画素機で撮れば綺麗に写るという訳では無い。
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さて、本レンズ NIKKOR-H 50/2だが、悪く無いレンズ
である。実は銀塩時代には、MF(AiまたはNIKKOR)や
AF(AiAF)のニコン標準レンズを色々と多数所有して
いたのだが、どれもあまり描写力が好みでは無く、その
多くを譲渡処分してしまっていた。現代でも残している
標準は、本レンズ,Ai50/1.8,AiAF50/1.4,AiAF50/1.8
の4本のみである、つまり個人的に比較的気にいっている、
という意味であり、その発売時期の古さ(50年以上前)を
あまり感じさせない銘レンズであろう。
ただまあ、「オールドらしさ」という点(つまり、様々な
収差や弱点など)を期待しても、結構まともに写ってしまう
ので、その点(用途、目的)には要注意だ。
現代においても中古入手性は悪く無い、概ね数千円程度で
購入可能であろう。
---
では、次のレンズ。
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レンズ名:Voigtlander COLOR-SKOPAR 50mm/f2.5
レンズ購入価格:44,000円(新品)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第1回記事、特殊レンズスーパー
マニアックス第22回記事等で紹介の、2002年に発売された
レンジ機用L39マウント仕様の小口径高品質標準レンズ。
注:フォクトレンダーの独語綴りには、変母音(ウムラウト)
が入るが、記事掲載の便宜上、それを省略している。
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真鍮製鏡筒により、ずっしりと重く感じるレンズだ。
フォーカシングレバー搭載により、MFはやりやすく、
全般的な「感触性能」が極めて高い。
ヘリアー銘は、元祖フォクトレンダーでは、テッサー型の
3群4枚構成を指していたが、本レンズは、6群7枚の変形
ダブルガウス型構成である。しかしながら他の標準レンズ
のように開放F値を欲張っていない為か、かなり写りが良い
レンズである。
弱点の1つは、Lマウント(L39/M39)品であるから、
一眼レフでは使用できず、ミラーレス機が必須になる事。
それから第二に、生産本数が少なく、入手性が悪い事だ。
たとえマニア層であったとしても、このような小口径の
標準レンズはあまり興味を示さないであろう。開放F1.4
からF1.8あたりまでがターゲットであり、できれば
さらなる大口径(F1.2~F0.95)すら志向してしまう。
「開放F値が大きい(暗い)レンズは、低性能の廉価版
である」という誤った常識が、全てのユーザー層に根強い、
まあつまり、銀塩時代から数十年間も、大口径版をずっと
高価に売り続けていたメーカー側の市場戦略に、皆が
まんまと乗せられてしまっている、という事だ。
基本、レンズは開放F値を暗めに抑えた方が諸収差の補正の
設計が有利なのだ。つまり描写力も、その方が高くなる。
ただ、大口径でないと付加価値が無い(=高く売れない)為に、
メーカー側は、設計に無理をしても大口径レンズを作り、
売り続けている訳だ。
しかし、そのあたりの「真実」は、消費者層側はあまり
知らない方が望ましい。だから、誰しもが「高価なレンズ
は良く写る」と言い張る。これが市場の「倫理」を支える
根幹だからだ、もし安いレンズの方が良く写る事実が
広まってしまったら、誰も高価なレンズを買う事をしなく
なってしまい、市場が崩壊してしまう、それはまずい。
まあ、という状況であるから、本レンズは、F2.5の開放
F値ゆえに、あまり流通していなかった。すなわち誰も
欲しがらない訳である。結果的に現代ではセミレアとなり、
中古品は殆ど出廻らない。
で、レア品になると、投機層が着目してしまう、つまり
これをなんとか入手すれば、「どうしても欲しい」という
「好事家」層に高価に売る事ができるわけだ。
でもまあ、これについては高いモノを買う方が悪い。
モノの正しい価値を見抜けず、ただ単に、「珍しいから」
「誰かが良いと言ったから」「人気や話題性があるから」
といった理由でコスパが悪い買い物をする事は賛同できない、
下手をすれば世間では、そういう購買行動をする人の事を
「マニア」と呼んでいるかもしれないが、真のマニアとは、
「モノの価値がわかる人」を指すべきだと個人的には思う。
だから、価値に見合わない高価格の商品は、真のマニア道を
目指すのであれば、購入してはならない。
本レンズの実質的な価値は、作りの良さを加味したとしても
2万円程度までだ、それ以上の金額を出す意味もあまり無く、
それ以下の、はるかに安価な相場であっても、もっと良く
写る標準レンズは、市場にいくらでも存在する。
(これは、本シリーズ記事で色々と紹介してきた通りだ)
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さて、本CS50/2.5の、もう1つの弱点は最短撮影距離の
長さである。
最短70cmは、ライカタイプのレンジファインダー機の
距離計連動機構の限界点であり、これ以上短くするのは
カメラの構造的、および撮影技法的(視差=パララックス
の存在)により難しい。
だが、現代の一眼レフ用の標準レンズは、どれも最短
撮影距離が45cm以下である。
特にTAMRON SP45/1.8(F013)は、45mmと焦点距離が
若干短い標準レンズながら、最短29cmと驚異的である。
(追記:2019年発売のSIGMA 45mm/f2.8 DG DN
が、最短撮影距離24cmで標準レンズTOPの座を奪う)
こういう現代的レンズの性能に慣れてしまうと、
本CS50/2の最短70cmは、いかにも寄れない。
解決方法は、L39マウント・ヘリコイドアダプターを
使用する事だが、若干高価なので私は所有していない。
そこで簡易的な解決策としては、今回使用のNEX-7の
ようなAPS-C機を使えば、換算画角75mmで最短70cm
となり、「焦点距離10倍の法則」をクリアできる。
さらに、NEX-7にあるデジタルズーム機能を用いれば
仮想的に撮影倍率を高められる(注:勿論だが、最短
撮影距離は短縮されない)
まあ、あくまで簡易的な解決策ではあるが、寄れない
という心理的不満を、ある程度は解消する事ができる。
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では、3本目のレンズ。
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レンズ名:Voigtlander NOKTON 25mm/f0.95(初期型)
レンズ購入価格:84,000円(新品)
使用カメラ:PANASONIC DMC-G1 (μ4/3機)
2011年発売のμ4/3機専用超大口径MF標準画角レンズ。
(コシナ)フォクトレンダーとして初のμ4/3機用レンズ。
このレンズも、極めて多くの記事で紹介している、
よって、あまり改めて書く事も無い。
本記事で紹介(対戦)しているのは、μ4/3機専用
レンズであり、換算画角が50mm(以上)となる事からだ。
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標準画角(50mm)レンズを、人物撮影に使うのはやや難しい、
世間には、50mmレンズというのは星の数ほどあり、安価に
入手できる。開放F値もF1.4級のものが中心であるから、
背景ボケを大きく取れ、一見、人物撮影には適しているし
高価な85mm/F1.4級レンズを買わずとも代用できそうな
気もする訳だ。
しかし、人物撮影(特に異性)の場合には、
「パーソナルスペース」という概念を考慮しなければならない。
これは、「警戒距離」とも言い直す事が出来るであろう。
簡単に言えば、見知らぬ他人が近寄って来た際に、
(生物や人間が)本能的に警戒する距離(範囲)である。
人間、特に異性の場合には、これは70cm程度と言われている。
ここで、フルサイズ機で50mmレンズを使った際での
撮影距離毎の撮影範囲(縦位置の場合の縦の長辺の長さ)
をあげておく、
<50mm(相当)レンズの場合>
撮影距離3m=縦2.16m
撮影距離2m=縦1.44m
撮影距離1m=縦72cm
半身(バストアップ)撮影では、距離1mよりも、もう少し
踏み込んで撮影したい場合もあるだろう、しかし、
これ以上近づくと、パーソナルスペースに侵入してしまう。
親しい異性(家族、恋人、友人)であれば、もう少し
近づいても問題無いが、(例えば業務撮影で)見知らぬ
他人であれば、あまり近寄っての撮影はできない。
(嫌がられたり、緊張して表情が固くなったりするから)
なので、この「間合い」の問題を解決する為に85mm/F1.4
や100mm/F2等のポートレート用レンズが存在するのだ。
85mmレンズでの撮影範囲を計算してみよう。
<85mm(相当)レンズの場合>
撮影距離3m=縦1.27m
撮影距離2m=縦84cm
撮影距離1m=縦42cm
つまり、85mm(相当)であれば、パーソナルスペースを
犯さずに、半身像や顔のアップなどの撮影が自在となる。
(注:これ以上の焦点距離の望遠レンズでは、撮影距離が
遠くなりすぎて、コミュニケーションや信頼感情の面で、
むしろマイナス要因となる)
すなわち、50mmレンズ(50mm相当画角)では人物撮影
は難しい。あえてそれをやるならば、50mmレンズを
フルサイズ機ではなくAPS-C機やμ4/3機に装着する事
である、75mmや100mm相当であれば、上記85mm相当
での間合いと、ほぼ同じ間隔(感覚)で撮影が可能な訳だ。
(注:近年のコロナ禍により「ソーシャル・ディスタンス」
=「社会的距離」という概念が広まった。これは「6フィート
つまり約1.8m以上離れて人と接する」という意味だが、
今後、この感覚がコロナ終息後も一般的になれば、ますます
50mmレンズの距離感では、人と接近しすぎる感じであろう)
で、本レンズNOKTON25/0.95は、人物撮影の作例を
上げてはいるが、あまりこうした撮影に向かないレンズ
である事は注意点として述べておく。
人物撮影用には、同じNOKTONでも、42.5mm/F0.95が
適しているであろう。それならば、ぴったりと85mm相当の
画角となるし、NOKTONシリーズでの超大口径の仕様を所以
とする「絞り開放での解像力が非常に甘い」という弱点を
相殺できて、むしろ「柔らかい(女性)ポートレート」を
撮る上で適切な特性となる。
これはつまり、解像力の高いレンズだけが優れたレンズでは
無い、という事である。ちなみに、私のレンズ評価では、
描写性能に関しては【描写力・表現力】という複合項目に
なっていて、本レンズのような超大口径では、解像力は
甘々で低いものの、ボケ表現に適している、という多大な
特徴を持つ為、この評価が5点満点となっている。
---
さらに、次のレンズ。
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レンズ名:KMZ Industar-50-2 (50mm/f3.5)
レンズ購入価格:7,000円相当(新品)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
1960年頃から1990年頃迄の長期に渡って、
KMZ(クラスノゴルスク機械工場)で生産されていたと
思われる「ロシアン」(旧ソ連製)レンズである。
同工場は、銀塩カメラ「ゾルキー」や「ゼニット」の
交換レンズの「ZENITAR」を生産した事でも知られている。
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さて、「ロシアン」である。マニアックなカテゴリーで
ある為、あれこれと出自の説明や注意点の説明で記事の
文字数が大幅に消費されてしまう。
近年の記事では、ハイコスパ第19回「ロシアン編」や
特殊レンズ超マニアック第4回「ロシアン編」で
注意点も含めて詳しく書いてあるので、今回は大幅に
割愛するが、2点だけ重要な注意点をあげておく。
1)ロシアンレンズは、カメラに装着できない、または
外れない、という危険性が常につきまとう。
2)ロシアンが写りが良い、という噂は、ある側面だけを
見た場合の話である。数千円までで買うのであれば
コスパが良いが、それ以上の投資をする価値は無い。
である。すなわち上級マニア以上向けのレンズであり、
一般初級中級層や初級中級マニアには絶対に推奨できない。
カメラを壊したり、カメラから外れなくなったり、
高く買ったが写りが悪い、とか言う泣き言は聞く気も
おこならない、それらは全て自己責任であろう。
私自身でも、「使えない」、「外れない」、「描写が
イマイチでコスパが最悪」という、それぞれの重大な
問題点を実際に何度か体験しているし、それぞれの
ケースで、購入や修理にかけた費用が無駄になっている。
これはもう「授業料」であり、その事を痛感して、
色々と勉強・研究した故に、今こうしてロシアンレンズ
を使えている訳だ。
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勿論、世の中には「もっと安全」なレンズはいくらでも
あるし、むしろその安全さがある方が「常識」である。
わざわざ、使えるかどうかもわからないロシアンレンズを
買う事は、「危険性に魅力を感じる」という「悪魔の囁き」
であろう。そのリスクが容認できないという慎重派の人は、
絶対にロシアンレンズを買ってはならないと思う。
本レンズであるが、「テッサー型」である。これを色々
と説明していくのも他記事と重複するので割愛するが、
前述の、ハイコスパ第19回「ロシアン編」記事でも
本レンズについて詳しく述べているので、興味があれば
参照されたし。
---
では、5本目のレンズ。
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レンズ名:CBC(Computar) M1214-MP2 12mm/f1.4
レンズ購入価格:5,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX Q7 (1/1.7型機)
発売年不明(2000年代?)のCCTV/マシンビジョン(FA)
兼用、メガピクセル対応、2/3型センサー用MF単焦点
手動絞りのレンズである。
ブランド名は「Computar」であり、スペルは一般的な
Comput「er」ではなく「ar」となっている。
さて、本レンズも何度となく紹介しているし、加えて
この手の「マシンビジョン」用レンズは、それは何か?
という説明をするだけで、またしても記事文字数を大幅
に消費してしまう。
近年の記事では、特殊レンズ超マニアックス第1回
「マシンビジョン編」に詳しいので、興味があれば
参照されたし。
しかし、興味のある人は皆無であろう。たとえ上級マニア
層であっても、マシンビジョンを使っている人の比率は
極めて低いし、また、これを使うには、専門家レベルの
知識と技能が必要だ。ここで言う専門家とは職業写真家層
を指すのではなく、光学設計、画像処理、監視システム等
の、いわゆるテクニカル(技術)面での専門家層であり、
いくら撮影技能に優れた「プロ」カメラマンでも、これら
のレンズを使えるシステムを構築して撮る事は困難だし
業務撮影上での、これらの必要性も皆無であろう。
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で、本M1214-MP2であるが、個人的には比較的お気に入り
のレンズである。このスペック(焦点距離)は、画角的
に使い易い印象もあり、本レンズ入手後に、全く同じ
スペックのVS Technology 12mm/F1.4 SV-1214Hも
追加購入している。後者はレンズマニアックス第20回
記事で紹介済みだが、最短撮影距離が、本1214-MP2の
15cmに対しSV-1214Hは10cmとさらに短縮されている。
これらのマシンビジョンレンズの解像力は、現代の
一眼レフ用高性能レンズとほぼ同等である。しかしながら
ボケ質等への配慮は皆無であるので、使い方(撮影技法)
においても、かなり困難と言えるであろう。
まあ、あまり興味のある人は居るとは思えないが、
とりあえず参考まで。
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では、6本目のレンズ。
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レンズ名:KENKO LENSBABY Twist 60mm/f2.5
レンズ購入価格:39,000円(新品)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)
レンズ・マニアックス第2回記事等で紹介の
特殊効果(ぐるぐるボケ)レンズである。
また本レンズも説明が大変だ(汗)
ペッツヴァール型構成とか、像面湾曲や非点収差とかの
「超専門用語」の理解が必要となる。それらはもう
大幅に割愛する。要は「ぐるぐるボケが出る、面白い
レンズ」である。
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ただ、この特徴については「用途開発」が極めて困難だ、
つまり、「これで何を撮るのか?」という点である。
LENSBABY製品は、他の「ティルト」レンズや「ソフト」
レンズであっても、用途がどうもはっきりとしない。
まあ、「アート系」用途で「他人の作品とは違う個性」を
求めるというのが最も一般的目的ではあろうが、それとて
LENSBABY製品を買ってしまえば、誰でも、そういう風な
作品を撮る(創る)事が出来るのであれば、それもまた
アート分野においては、「表現」や「差別化要因」(個性)
にはならない事であろう。
結局、何に使うか?が難しい事には変わらない。
人物撮影が最も有効だとは思うが、それとて業務(依頼)
撮影においては、クライアント(依頼者)の意に沿わない
場合も多々あるだろう。あるいは趣味撮影で知人友人等を
撮ったとしても、それはそれでちょっと課題もある。
と言うのも、実例だが、これで撮った写真を友人にあげた
ところ、その友人の知人(多分カメラマニアだ)が
「これは面白い写りのレンズだ」などと言い出して、
「どんなレンズだ」とか「どのように撮ったのか?」等、
なんとか、かんとか詮索してきた模様である。それをまた
こちらに聞かれるのも鬱陶しいし、いちいち、どんな
レンズでどのように撮ったなどは、見知らぬ他人に教える
義務も意味も無いではないか! まあ、少なくともEXIF
情報は消しておかないと、「絞りをいくつにするのか?」等
また「古臭い概念」での質問とかが来てしまう恐れもある。
銀塩時代の写真コンテスト等とか評価記事の作例では
絞りやシャッター速度などのカメラ設定を記載する事も
良くあったと思うが、それは基本的には無意味な情報だ。
何故ならば、静止被写体での絞り値による被写界深度の
効果は撮影距離や背景距離に依存する。また動体被写体
でのシャッター速度の動感表現は、撮影者と被写体の
相対的な角速度に依存する。それらは撮影条件によって
様々に変化する為、同じ絞り値やシャッター速度を
選んだとしても、他者が同じ写真を撮ることはできない。
それは、ごく当たり前の、基本的な写真撮影原理だが、
それがわかっていない人が多すぎる。本ブログでは
開設当初から、そんなデータを載せた事は1度も無い。
無意味だし、それをあれこれ質問されるのも鬱陶しい。
ただし、銀塩の写真コンテストの場合は、「少なくとも
絞りやシャッター速度を意識して撮っている事」という
点が、作品のふるい落としの条件でもあったのだろう。
つまり、「何もわかっておらず、偶然に撮れたような
作品では、入賞させるのには好ましく無い」という
視点もあったのだろうと思われる。
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余談が長くなった、だから「どういうカメラ設定で
撮ったのか?」などは、基本的に意味が無いデータだ。
それを聞いて来られても、無駄なやりとりに時間を
費やすばかりとなる。ビギナー層が、どうしてもデータが
気になるならば、例えば同じ被写体を前にして、絞り値を
10段階位、変えて撮れば良い、それぞれの写真を良く見て、
EXIFも見て、ちゃんと分析や研究をする事だ。
「撮影枚数が10倍、撮影時間も10倍かかってしまう」等
とは言うなかれ、これは研究や練習の為には必要な事だ、
あえて言えば、ボケ質破綻回避の技法の習得にも役に立つ。
元々、趣味撮影では、撮影効率とか、納品締め切りとか、
そういう事は気にする必要が無い。その恵まれた環境を
最大限に利用するには、時間を費やしても研究や練習を
重ねる事だ。その向上心や好奇心が無ければ、ただ単に
無為に撮影を繰り返し、長年、何年写真を撮っていても、
単なる「習い事」の状態がずっと続いて、何の進歩も
無い事に繋がってしまう・・
---
では、今回ラストのレンズ。
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レンズ名:YONGNUO YN 50mm/f1.8
レンズ購入価格:4,000円(中古)
使用カメラ:CANON EOS 7D (APS-C機)
2014年頃??に発売の中国製小口径AF標準レンズ
エントリーレンズとして著名な「CANON EF50mm/f1.8Ⅱ」
のデッドコピー(=そっくり真似た)商品である。
ただ、「では、本YN50/1.8もエントリーレンズなのか?」
という視点は誤りだ。
エントリーレンズと言うからには、「ユーザーを囲い込み、
以降の自社の高付加価値型製品の購入に繋げる」という
戦略となるが、ヨンヌオ社には、そうした高付加価値商品
が殆ど無い為だ。まあ、すなわち本レンズは単なる「激安
レンズ」であり、大量の販売効果のみを狙っている。
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このレンズの出自は怪しい、あまりにEF50/1.8Ⅱに
似すぎているからだ。これは同じ部品を元に、同じ製造
ラインで作られた可能性も否定できない。その根拠は
色々とあるが、これは多分に「政治的背景」が絡む事で
あろうから、あまりここで詮索する事も好ましくは無い。
なのでまあ、ここでは本YN50/1.8の特徴のみをあげて
おくが、一言で言えば「高コスパレンズ」である。
まあ、初級中級層に「神格化」されたEF50/1.8Ⅱ
譲りの性能であるから、当然であろう。
でもまあ、5群6枚構成の、MF/AFの小口径(F1.7~F2)
50mm標準レンズは、どれも同様に良く写る。ただ単に
自身が持っているレンズを見て「銀のタクマー」だの
「和製ズミクロン」だの「神レンズ」などと言っている
だけである。他社・多数のそれらの小口径標準レンズを
所有して撮り比べれば、どれであっても極めて完成度の
高い「高コスパレンズ」である事は、明確に理解できる
事であろう。
加えて、あまり多数の小口径標準を所有する必要性も無い。
何故ならば、”どれも同じように良く写る”からだ。
メーカー毎の差異も殆ど無い。銀塩時代に、10年から
30年もかけて、他社に負けないよう小改良を繰り返して
進歩してきたレンズ群である。標準レンズの写りが
他社製品よりも悪ければ、それを装着して売っている
カメラや、メーカーそのものの信用やブランドイメージ
すらも落としてしまう時代であったからだ。
だから、少し時代が過ぎれば、どのメーカーの(小口径)
標準レンズも、他社に負けない、同等の高水準の性能に
落ち着く訳である。
これは本シリーズ記事で、散々、多数の大口径・小口径
標準レンズを紹介(対戦)してきた上で、基本的な概念
として伝え続けて来た事実である。
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本YN50/1.8のベースとなったCANON EF50/1.8は、
Ⅰ型からⅡ型にかけ、1987年~2015年までの、
28年間に渡り生産が続いた超ロングセラー製品である。
つまり、その期間「これ以上改良する必要性が無かった」
くらいの完成度の高いレンズである。
これに不満があるならば、もう近年の超高価(定価が
10万円~50万円)な新鋭高付加価値型標準レンズを
買うしか無いではないか。まあでも、それらを買った
ところで数十倍から百倍の価格差に伴う性能差は無い、
勿論、「100倍良く写る」などは有り得ない話だ。
だからまあ、レンズの選択には「コスパ」を良く考察
しなければならない、そこが基本中の基本なのだ。
---
さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
予選O(オー)ブロック「その他50mm相当」の記事は終了。
次回の本シリーズ記事は、
惜しくも決勝に進出できなかったが、十分に上位の
高評価を得られた標準レンズ群による「B決勝戦」
(下位決勝戦/順位決定戦)記事となる予定だ。
開放F値等によるカテゴリー別で予選を行い、最後に
決勝で最強の50mmレンズを決定するというシリーズ記事。
今回は、予選O(オー)ブロックとして「その他50mm相当」
のレンズを7本紹介(対戦)する。
紹介本数が多いので、各レンズの実写掲載は少な目とする。
なお、「その他50mm相当」とは、レンズの特性上で、
これまでのカテゴリーに区分し難かったレンズ、および
新規購入で追加したレンズを集めている。
それらの焦点距離または換算画角は、概ね40~60mmの
標準画角の範囲にとどまる。
まあつまり、ここまでで約80本のレンズ紹介(対戦)
となり、もう標準レンズは殆ど紹介しつくしたので、
「その他」というカテゴリーとなって、いよいよ
本シリーズ最後の「決勝戦」が近いという状況だ。
ちなみに、65mmという焦点距離のレンズと、APS-C機
専用の60mmというレンズを、本シリーズの標準レンズ
として扱うかどうか?を迷ったが、それらは、いずれ
「85mm選手権」をシリーズ化したら、その時に紹介
(対戦)する事としよう。
---
さて、まずは今回最初のレンズ。
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レンズ購入価格:5,000円相当(中古)
使用カメラ:NIKON Df(フルサイズ機)
ハイコスパレンズ・マニアックス第25回記事等で
紹介した、1964年発売のMF単焦点標準レンズ。
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1990年代の中古カメラブーム時では「モノクロフィルム
で撮るのが望ましい」とされていたのだが、まあ現代の
デジタル時代においては、あまりそうした事に拘る必要
は無い。(=色味等は、どうとでも変更できるからだ。
それに、「モノコート=モノクロ用」という概念自体が
誤解である。技術的な詳細は冗長になる為、割愛するが、
何か疑問があれば、必ず自分で調べる必要があるだろう)
で、むしろ母艦が問題であり、ニコン製デジタル一眼レフ
では、このような「非Ai」仕様のオールドレンズは極めて
使い難いか使用不能であり、かろうじて使用可能な機種が
今回使用のNIKON Dfではあるが、Dfを使ったとしても
面倒で不条理な”絞り値の二重操作”が必要だ。
(=レンズ側絞り環を廻した後、それと同じ値まで
Df側の電子ダイヤルで絞り値を設定する必要がある)
よって、一般的なNIKON Fマウントアダプターを介して
ミラーレス機に装着した方が、遥かに簡便に使える。
その際、発色に優れたFUJIFILM機等を用いれば、前述の
「カラーフィルム時代以前のオールドレンズ」という
課題は、ほぼ問題無いレベルとなる。
FUJIFILMミラーレス機に現状フルサイズ機が無いという
事はどうでも良い。と言うか、本レンズの最短撮影距離は
60cmと、一般的な標準レンズの45cmよりもだいぶ長い為、
使用時には「寄れない不満」が出てくる。この点を
心理的に解消する上でも、APS-C機で75mm相当の画角、
かつ最短60cmで使った方が「エンジョイ度」が高まるし、
(=「焦点距離の10倍則」を下回る比率になる為)
周辺収差の大きいオールドレンズは、APS-C機で中央
画角を切り出して使った方が画面平均画質は高まる。
まあでも、今回はオリジナルのニッコールの雰囲気を
味わう為に、あえて不便なNIKON Dfで使ってみよう。
Dfは、操作系全般が極めて劣る機体である為、現代レンズ
を使用した効率的な撮影には適さない。こういう用途でも
無いと、この機体を使う価値が無くなってしまう。
なお、Dfの記録画素数は最大1600万画素と低いが、
逆に言えば、フルサイズ機である事とあいまって、
ピクセルピッチが約7.2μmと、非常に大きい(一般的
な他機の2倍程度)この事での、ダイナミックレンジの
増加等の話はさておき、今回のようなオールドレンズを
使った場合でも、その解像力(概ね低い)とのバランス
が良い。すなわち計算上では70LP/mm程度の低解像力
オールドレンズ使用時でもセンサー側のピクセルピッチ
との適合性があるという事だ。
まあただし、本NIKOR-H 50/2は、古いレンズとは言え、
そこまで低解像力では無いであろう。実測してはいないが
中央部で推定120LP/mm以上は確実にあるとは思われる。
で、例えば、APS-C機で2400万画素機ともなると、
1÷(横幅23.5mm÷横6000ピクセル)÷2=約127LP/mm
が必要解像力となり、現代のレンズでは、たいてい
これ以上の画面中央部解像力を持つが、周辺では怪しく
なるだろうし、オールドレンズ等では、これに満たない
性能のレンズも色々と存在すると思う。
まあつまり、レンズの性能や特性に合わせて母艦の選択、
あるいは画素数等も意識する必要があるという事だ。
ただ単に、高画素機で撮れば綺麗に写るという訳では無い。
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である。実は銀塩時代には、MF(AiまたはNIKKOR)や
AF(AiAF)のニコン標準レンズを色々と多数所有して
いたのだが、どれもあまり描写力が好みでは無く、その
多くを譲渡処分してしまっていた。現代でも残している
標準は、本レンズ,Ai50/1.8,AiAF50/1.4,AiAF50/1.8
の4本のみである、つまり個人的に比較的気にいっている、
という意味であり、その発売時期の古さ(50年以上前)を
あまり感じさせない銘レンズであろう。
ただまあ、「オールドらしさ」という点(つまり、様々な
収差や弱点など)を期待しても、結構まともに写ってしまう
ので、その点(用途、目的)には要注意だ。
現代においても中古入手性は悪く無い、概ね数千円程度で
購入可能であろう。
---
では、次のレンズ。
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レンズ購入価格:44,000円(新品)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス第1回記事、特殊レンズスーパー
マニアックス第22回記事等で紹介の、2002年に発売された
レンジ機用L39マウント仕様の小口径高品質標準レンズ。
注:フォクトレンダーの独語綴りには、変母音(ウムラウト)
が入るが、記事掲載の便宜上、それを省略している。
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フォーカシングレバー搭載により、MFはやりやすく、
全般的な「感触性能」が極めて高い。
ヘリアー銘は、元祖フォクトレンダーでは、テッサー型の
3群4枚構成を指していたが、本レンズは、6群7枚の変形
ダブルガウス型構成である。しかしながら他の標準レンズ
のように開放F値を欲張っていない為か、かなり写りが良い
レンズである。
弱点の1つは、Lマウント(L39/M39)品であるから、
一眼レフでは使用できず、ミラーレス機が必須になる事。
それから第二に、生産本数が少なく、入手性が悪い事だ。
たとえマニア層であったとしても、このような小口径の
標準レンズはあまり興味を示さないであろう。開放F1.4
からF1.8あたりまでがターゲットであり、できれば
さらなる大口径(F1.2~F0.95)すら志向してしまう。
「開放F値が大きい(暗い)レンズは、低性能の廉価版
である」という誤った常識が、全てのユーザー層に根強い、
まあつまり、銀塩時代から数十年間も、大口径版をずっと
高価に売り続けていたメーカー側の市場戦略に、皆が
まんまと乗せられてしまっている、という事だ。
基本、レンズは開放F値を暗めに抑えた方が諸収差の補正の
設計が有利なのだ。つまり描写力も、その方が高くなる。
ただ、大口径でないと付加価値が無い(=高く売れない)為に、
メーカー側は、設計に無理をしても大口径レンズを作り、
売り続けている訳だ。
しかし、そのあたりの「真実」は、消費者層側はあまり
知らない方が望ましい。だから、誰しもが「高価なレンズ
は良く写る」と言い張る。これが市場の「倫理」を支える
根幹だからだ、もし安いレンズの方が良く写る事実が
広まってしまったら、誰も高価なレンズを買う事をしなく
なってしまい、市場が崩壊してしまう、それはまずい。
まあ、という状況であるから、本レンズは、F2.5の開放
F値ゆえに、あまり流通していなかった。すなわち誰も
欲しがらない訳である。結果的に現代ではセミレアとなり、
中古品は殆ど出廻らない。
で、レア品になると、投機層が着目してしまう、つまり
これをなんとか入手すれば、「どうしても欲しい」という
「好事家」層に高価に売る事ができるわけだ。
でもまあ、これについては高いモノを買う方が悪い。
モノの正しい価値を見抜けず、ただ単に、「珍しいから」
「誰かが良いと言ったから」「人気や話題性があるから」
といった理由でコスパが悪い買い物をする事は賛同できない、
下手をすれば世間では、そういう購買行動をする人の事を
「マニア」と呼んでいるかもしれないが、真のマニアとは、
「モノの価値がわかる人」を指すべきだと個人的には思う。
だから、価値に見合わない高価格の商品は、真のマニア道を
目指すのであれば、購入してはならない。
本レンズの実質的な価値は、作りの良さを加味したとしても
2万円程度までだ、それ以上の金額を出す意味もあまり無く、
それ以下の、はるかに安価な相場であっても、もっと良く
写る標準レンズは、市場にいくらでも存在する。
(これは、本シリーズ記事で色々と紹介してきた通りだ)
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長さである。
最短70cmは、ライカタイプのレンジファインダー機の
距離計連動機構の限界点であり、これ以上短くするのは
カメラの構造的、および撮影技法的(視差=パララックス
の存在)により難しい。
だが、現代の一眼レフ用の標準レンズは、どれも最短
撮影距離が45cm以下である。
特にTAMRON SP45/1.8(F013)は、45mmと焦点距離が
若干短い標準レンズながら、最短29cmと驚異的である。
(追記:2019年発売のSIGMA 45mm/f2.8 DG DN
が、最短撮影距離24cmで標準レンズTOPの座を奪う)
こういう現代的レンズの性能に慣れてしまうと、
本CS50/2の最短70cmは、いかにも寄れない。
解決方法は、L39マウント・ヘリコイドアダプターを
使用する事だが、若干高価なので私は所有していない。
そこで簡易的な解決策としては、今回使用のNEX-7の
ようなAPS-C機を使えば、換算画角75mmで最短70cm
となり、「焦点距離10倍の法則」をクリアできる。
さらに、NEX-7にあるデジタルズーム機能を用いれば
仮想的に撮影倍率を高められる(注:勿論だが、最短
撮影距離は短縮されない)
まあ、あくまで簡易的な解決策ではあるが、寄れない
という心理的不満を、ある程度は解消する事ができる。
---
では、3本目のレンズ。
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レンズ購入価格:84,000円(新品)
使用カメラ:PANASONIC DMC-G1 (μ4/3機)
2011年発売のμ4/3機専用超大口径MF標準画角レンズ。
(コシナ)フォクトレンダーとして初のμ4/3機用レンズ。
このレンズも、極めて多くの記事で紹介している、
よって、あまり改めて書く事も無い。
本記事で紹介(対戦)しているのは、μ4/3機専用
レンズであり、換算画角が50mm(以上)となる事からだ。
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世間には、50mmレンズというのは星の数ほどあり、安価に
入手できる。開放F値もF1.4級のものが中心であるから、
背景ボケを大きく取れ、一見、人物撮影には適しているし
高価な85mm/F1.4級レンズを買わずとも代用できそうな
気もする訳だ。
しかし、人物撮影(特に異性)の場合には、
「パーソナルスペース」という概念を考慮しなければならない。
これは、「警戒距離」とも言い直す事が出来るであろう。
簡単に言えば、見知らぬ他人が近寄って来た際に、
(生物や人間が)本能的に警戒する距離(範囲)である。
人間、特に異性の場合には、これは70cm程度と言われている。
ここで、フルサイズ機で50mmレンズを使った際での
撮影距離毎の撮影範囲(縦位置の場合の縦の長辺の長さ)
をあげておく、
<50mm(相当)レンズの場合>
撮影距離3m=縦2.16m
撮影距離2m=縦1.44m
撮影距離1m=縦72cm
半身(バストアップ)撮影では、距離1mよりも、もう少し
踏み込んで撮影したい場合もあるだろう、しかし、
これ以上近づくと、パーソナルスペースに侵入してしまう。
親しい異性(家族、恋人、友人)であれば、もう少し
近づいても問題無いが、(例えば業務撮影で)見知らぬ
他人であれば、あまり近寄っての撮影はできない。
(嫌がられたり、緊張して表情が固くなったりするから)
なので、この「間合い」の問題を解決する為に85mm/F1.4
や100mm/F2等のポートレート用レンズが存在するのだ。
85mmレンズでの撮影範囲を計算してみよう。
<85mm(相当)レンズの場合>
撮影距離3m=縦1.27m
撮影距離2m=縦84cm
撮影距離1m=縦42cm
つまり、85mm(相当)であれば、パーソナルスペースを
犯さずに、半身像や顔のアップなどの撮影が自在となる。
(注:これ以上の焦点距離の望遠レンズでは、撮影距離が
遠くなりすぎて、コミュニケーションや信頼感情の面で、
むしろマイナス要因となる)
すなわち、50mmレンズ(50mm相当画角)では人物撮影
は難しい。あえてそれをやるならば、50mmレンズを
フルサイズ機ではなくAPS-C機やμ4/3機に装着する事
である、75mmや100mm相当であれば、上記85mm相当
での間合いと、ほぼ同じ間隔(感覚)で撮影が可能な訳だ。
(注:近年のコロナ禍により「ソーシャル・ディスタンス」
=「社会的距離」という概念が広まった。これは「6フィート
つまり約1.8m以上離れて人と接する」という意味だが、
今後、この感覚がコロナ終息後も一般的になれば、ますます
50mmレンズの距離感では、人と接近しすぎる感じであろう)
で、本レンズNOKTON25/0.95は、人物撮影の作例を
上げてはいるが、あまりこうした撮影に向かないレンズ
である事は注意点として述べておく。
人物撮影用には、同じNOKTONでも、42.5mm/F0.95が
適しているであろう。それならば、ぴったりと85mm相当の
画角となるし、NOKTONシリーズでの超大口径の仕様を所以
とする「絞り開放での解像力が非常に甘い」という弱点を
相殺できて、むしろ「柔らかい(女性)ポートレート」を
撮る上で適切な特性となる。
これはつまり、解像力の高いレンズだけが優れたレンズでは
無い、という事である。ちなみに、私のレンズ評価では、
描写性能に関しては【描写力・表現力】という複合項目に
なっていて、本レンズのような超大口径では、解像力は
甘々で低いものの、ボケ表現に適している、という多大な
特徴を持つ為、この評価が5点満点となっている。
---
さらに、次のレンズ。
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レンズ購入価格:7,000円相当(新品)
使用カメラ:FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
1960年頃から1990年頃迄の長期に渡って、
KMZ(クラスノゴルスク機械工場)で生産されていたと
思われる「ロシアン」(旧ソ連製)レンズである。
同工場は、銀塩カメラ「ゾルキー」や「ゼニット」の
交換レンズの「ZENITAR」を生産した事でも知られている。
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ある為、あれこれと出自の説明や注意点の説明で記事の
文字数が大幅に消費されてしまう。
近年の記事では、ハイコスパ第19回「ロシアン編」や
特殊レンズ超マニアック第4回「ロシアン編」で
注意点も含めて詳しく書いてあるので、今回は大幅に
割愛するが、2点だけ重要な注意点をあげておく。
1)ロシアンレンズは、カメラに装着できない、または
外れない、という危険性が常につきまとう。
2)ロシアンが写りが良い、という噂は、ある側面だけを
見た場合の話である。数千円までで買うのであれば
コスパが良いが、それ以上の投資をする価値は無い。
である。すなわち上級マニア以上向けのレンズであり、
一般初級中級層や初級中級マニアには絶対に推奨できない。
カメラを壊したり、カメラから外れなくなったり、
高く買ったが写りが悪い、とか言う泣き言は聞く気も
おこならない、それらは全て自己責任であろう。
私自身でも、「使えない」、「外れない」、「描写が
イマイチでコスパが最悪」という、それぞれの重大な
問題点を実際に何度か体験しているし、それぞれの
ケースで、購入や修理にかけた費用が無駄になっている。
これはもう「授業料」であり、その事を痛感して、
色々と勉強・研究した故に、今こうしてロシアンレンズ
を使えている訳だ。
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あるし、むしろその安全さがある方が「常識」である。
わざわざ、使えるかどうかもわからないロシアンレンズを
買う事は、「危険性に魅力を感じる」という「悪魔の囁き」
であろう。そのリスクが容認できないという慎重派の人は、
絶対にロシアンレンズを買ってはならないと思う。
本レンズであるが、「テッサー型」である。これを色々
と説明していくのも他記事と重複するので割愛するが、
前述の、ハイコスパ第19回「ロシアン編」記事でも
本レンズについて詳しく述べているので、興味があれば
参照されたし。
---
では、5本目のレンズ。
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レンズ購入価格:5,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX Q7 (1/1.7型機)
発売年不明(2000年代?)のCCTV/マシンビジョン(FA)
兼用、メガピクセル対応、2/3型センサー用MF単焦点
手動絞りのレンズである。
ブランド名は「Computar」であり、スペルは一般的な
Comput「er」ではなく「ar」となっている。
さて、本レンズも何度となく紹介しているし、加えて
この手の「マシンビジョン」用レンズは、それは何か?
という説明をするだけで、またしても記事文字数を大幅
に消費してしまう。
近年の記事では、特殊レンズ超マニアックス第1回
「マシンビジョン編」に詳しいので、興味があれば
参照されたし。
しかし、興味のある人は皆無であろう。たとえ上級マニア
層であっても、マシンビジョンを使っている人の比率は
極めて低いし、また、これを使うには、専門家レベルの
知識と技能が必要だ。ここで言う専門家とは職業写真家層
を指すのではなく、光学設計、画像処理、監視システム等
の、いわゆるテクニカル(技術)面での専門家層であり、
いくら撮影技能に優れた「プロ」カメラマンでも、これら
のレンズを使えるシステムを構築して撮る事は困難だし
業務撮影上での、これらの必要性も皆無であろう。
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のレンズである。このスペック(焦点距離)は、画角的
に使い易い印象もあり、本レンズ入手後に、全く同じ
スペックのVS Technology 12mm/F1.4 SV-1214Hも
追加購入している。後者はレンズマニアックス第20回
記事で紹介済みだが、最短撮影距離が、本1214-MP2の
15cmに対しSV-1214Hは10cmとさらに短縮されている。
これらのマシンビジョンレンズの解像力は、現代の
一眼レフ用高性能レンズとほぼ同等である。しかしながら
ボケ質等への配慮は皆無であるので、使い方(撮影技法)
においても、かなり困難と言えるであろう。
まあ、あまり興味のある人は居るとは思えないが、
とりあえず参考まで。
---
では、6本目のレンズ。
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レンズ購入価格:39,000円(新品)
使用カメラ:SONY α7 (フルサイズ機)
レンズ・マニアックス第2回記事等で紹介の
特殊効果(ぐるぐるボケ)レンズである。
また本レンズも説明が大変だ(汗)
ペッツヴァール型構成とか、像面湾曲や非点収差とかの
「超専門用語」の理解が必要となる。それらはもう
大幅に割愛する。要は「ぐるぐるボケが出る、面白い
レンズ」である。
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つまり、「これで何を撮るのか?」という点である。
LENSBABY製品は、他の「ティルト」レンズや「ソフト」
レンズであっても、用途がどうもはっきりとしない。
まあ、「アート系」用途で「他人の作品とは違う個性」を
求めるというのが最も一般的目的ではあろうが、それとて
LENSBABY製品を買ってしまえば、誰でも、そういう風な
作品を撮る(創る)事が出来るのであれば、それもまた
アート分野においては、「表現」や「差別化要因」(個性)
にはならない事であろう。
結局、何に使うか?が難しい事には変わらない。
人物撮影が最も有効だとは思うが、それとて業務(依頼)
撮影においては、クライアント(依頼者)の意に沿わない
場合も多々あるだろう。あるいは趣味撮影で知人友人等を
撮ったとしても、それはそれでちょっと課題もある。
と言うのも、実例だが、これで撮った写真を友人にあげた
ところ、その友人の知人(多分カメラマニアだ)が
「これは面白い写りのレンズだ」などと言い出して、
「どんなレンズだ」とか「どのように撮ったのか?」等、
なんとか、かんとか詮索してきた模様である。それをまた
こちらに聞かれるのも鬱陶しいし、いちいち、どんな
レンズでどのように撮ったなどは、見知らぬ他人に教える
義務も意味も無いではないか! まあ、少なくともEXIF
情報は消しておかないと、「絞りをいくつにするのか?」等
また「古臭い概念」での質問とかが来てしまう恐れもある。
銀塩時代の写真コンテスト等とか評価記事の作例では
絞りやシャッター速度などのカメラ設定を記載する事も
良くあったと思うが、それは基本的には無意味な情報だ。
何故ならば、静止被写体での絞り値による被写界深度の
効果は撮影距離や背景距離に依存する。また動体被写体
でのシャッター速度の動感表現は、撮影者と被写体の
相対的な角速度に依存する。それらは撮影条件によって
様々に変化する為、同じ絞り値やシャッター速度を
選んだとしても、他者が同じ写真を撮ることはできない。
それは、ごく当たり前の、基本的な写真撮影原理だが、
それがわかっていない人が多すぎる。本ブログでは
開設当初から、そんなデータを載せた事は1度も無い。
無意味だし、それをあれこれ質問されるのも鬱陶しい。
ただし、銀塩の写真コンテストの場合は、「少なくとも
絞りやシャッター速度を意識して撮っている事」という
点が、作品のふるい落としの条件でもあったのだろう。
つまり、「何もわかっておらず、偶然に撮れたような
作品では、入賞させるのには好ましく無い」という
視点もあったのだろうと思われる。
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撮ったのか?」などは、基本的に意味が無いデータだ。
それを聞いて来られても、無駄なやりとりに時間を
費やすばかりとなる。ビギナー層が、どうしてもデータが
気になるならば、例えば同じ被写体を前にして、絞り値を
10段階位、変えて撮れば良い、それぞれの写真を良く見て、
EXIFも見て、ちゃんと分析や研究をする事だ。
「撮影枚数が10倍、撮影時間も10倍かかってしまう」等
とは言うなかれ、これは研究や練習の為には必要な事だ、
あえて言えば、ボケ質破綻回避の技法の習得にも役に立つ。
元々、趣味撮影では、撮影効率とか、納品締め切りとか、
そういう事は気にする必要が無い。その恵まれた環境を
最大限に利用するには、時間を費やしても研究や練習を
重ねる事だ。その向上心や好奇心が無ければ、ただ単に
無為に撮影を繰り返し、長年、何年写真を撮っていても、
単なる「習い事」の状態がずっと続いて、何の進歩も
無い事に繋がってしまう・・
---
では、今回ラストのレンズ。
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レンズ購入価格:4,000円(中古)
使用カメラ:CANON EOS 7D (APS-C機)
2014年頃??に発売の中国製小口径AF標準レンズ
エントリーレンズとして著名な「CANON EF50mm/f1.8Ⅱ」
のデッドコピー(=そっくり真似た)商品である。
ただ、「では、本YN50/1.8もエントリーレンズなのか?」
という視点は誤りだ。
エントリーレンズと言うからには、「ユーザーを囲い込み、
以降の自社の高付加価値型製品の購入に繋げる」という
戦略となるが、ヨンヌオ社には、そうした高付加価値商品
が殆ど無い為だ。まあ、すなわち本レンズは単なる「激安
レンズ」であり、大量の販売効果のみを狙っている。
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似すぎているからだ。これは同じ部品を元に、同じ製造
ラインで作られた可能性も否定できない。その根拠は
色々とあるが、これは多分に「政治的背景」が絡む事で
あろうから、あまりここで詮索する事も好ましくは無い。
なのでまあ、ここでは本YN50/1.8の特徴のみをあげて
おくが、一言で言えば「高コスパレンズ」である。
まあ、初級中級層に「神格化」されたEF50/1.8Ⅱ
譲りの性能であるから、当然であろう。
でもまあ、5群6枚構成の、MF/AFの小口径(F1.7~F2)
50mm標準レンズは、どれも同様に良く写る。ただ単に
自身が持っているレンズを見て「銀のタクマー」だの
「和製ズミクロン」だの「神レンズ」などと言っている
だけである。他社・多数のそれらの小口径標準レンズを
所有して撮り比べれば、どれであっても極めて完成度の
高い「高コスパレンズ」である事は、明確に理解できる
事であろう。
加えて、あまり多数の小口径標準を所有する必要性も無い。
何故ならば、”どれも同じように良く写る”からだ。
メーカー毎の差異も殆ど無い。銀塩時代に、10年から
30年もかけて、他社に負けないよう小改良を繰り返して
進歩してきたレンズ群である。標準レンズの写りが
他社製品よりも悪ければ、それを装着して売っている
カメラや、メーカーそのものの信用やブランドイメージ
すらも落としてしまう時代であったからだ。
だから、少し時代が過ぎれば、どのメーカーの(小口径)
標準レンズも、他社に負けない、同等の高水準の性能に
落ち着く訳である。
これは本シリーズ記事で、散々、多数の大口径・小口径
標準レンズを紹介(対戦)してきた上で、基本的な概念
として伝え続けて来た事実である。
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Ⅰ型からⅡ型にかけ、1987年~2015年までの、
28年間に渡り生産が続いた超ロングセラー製品である。
つまり、その期間「これ以上改良する必要性が無かった」
くらいの完成度の高いレンズである。
これに不満があるならば、もう近年の超高価(定価が
10万円~50万円)な新鋭高付加価値型標準レンズを
買うしか無いではないか。まあでも、それらを買った
ところで数十倍から百倍の価格差に伴う性能差は無い、
勿論、「100倍良く写る」などは有り得ない話だ。
だからまあ、レンズの選択には「コスパ」を良く考察
しなければならない、そこが基本中の基本なのだ。
---
さて、ここまでで「最強50mmレンズ選手権」における
予選O(オー)ブロック「その他50mm相当」の記事は終了。
次回の本シリーズ記事は、
惜しくも決勝に進出できなかったが、十分に上位の
高評価を得られた標準レンズ群による「B決勝戦」
(下位決勝戦/順位決定戦)記事となる予定だ。