緊急事態宣言により、私も外出を大幅に自粛して
いる状況が続いているが、本ブログでの掲載写真は
シリーズ記事の場合は、記事掲載時点の1~2年前に
撮られたものばかりである。
こうなると自由に趣味の撮影が出来た事が、いかに
恵まれた環境であった事を実感できるのであるが、
まあ新規の写真は、事態が終息した頃にも、また
ゆっくり撮りに行けば良い事であろう・・
さて、本シリーズ記事は、新規購入等の理由により、
過去の本ブログでのレンズ関連記事では掲載して
いなかったマニアックなレンズを主に紹介している。
今回は3本の未紹介レンズと、1本の再掲レンズを
取り上げる。
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ではまず、今回最初のレンズ
![_c0032138_13495839.jpg]()
レンズは、SIGMA AF 70-300mm/f4-5.6 APO Macro
(中古購入価格 500円)(以下、APO70-300)
カメラは、SONY α65 (APS-C機)
発売年不明、恐らくは1990年代のレンズと思われる。
後継の機種には「DG」の称号が入っていて、そちらは
デジタル対応の意味で恐らく2000年代のレンズであろう。
(追記:記事執筆後に入手済み、後日紹介予定)
・・とは言え「DG無し」の本レンズがデジタル一眼レフ
で使えないという訳では無い。
本レンズの名称(型番)の正式な記述は不明。
レンズ上には勿論型番は書いてあるが、APOとかMACRO
等が、順不同でバラバラに適当な位置に記載されていて、
一連の名称は書かれていない。
また、SIGMAのWEBでも、ここまで古い時代の製品の
情報は載っていないので、正式な型番は、もはや不明だ。
レンズ名で検索をすると、本ブログに当たるのだが・・
そう、このレンズは同型のものを、かつて所有していて、
かなり昔の「スーパーレンズ」のカテゴリーの記事でも
紹介していたのだが、10年程前に「望遠レンズが欲しい」と
言った知人に譲渡してしまっていたのである。
で、近年、中古店のジャンク品コーナーで、また本レンズを
発見、500円と非常に安価だったので再購入する事にした。
![_c0032138_13495831.jpg]()
型番での「APO」はアポクロマートの意味。すなわち望遠
レンズで良く発生する「色収差」を補正した設計である事を
示している。SIGMAのこのクラス(300mm級)のズームレンズ
においては、多くの時代の物で、「APO」版と非APO版が
併売されていて、APO版の方が若干定価が高価なのだが・・
中古、しかもジャンクともなれば、もう、そのAPOの有無
での相場差は無いと思っても良いであろう。
個人的には、SIGMAのこのクラスの非APO版は、見つけたと
しても購入する事はまず無い。私は他にも、古い時代の各社
の非APO仕様の望遠ズームは多数所有しているが、いずれも
例えば、遠距離の白い鳥等を撮影すると、輪郭の廻りに
様々な色の滲みが出る「色収差」が発生する。
SIGMA製の300mm級望遠ズームに関しては、APO版は2本
所有していて、それらであれば色収差は、さほど問題には
ならない事は承知している。だから中古で見かけた場合は
APO版である事が私の場合の購入条件だ。
(ただし、比較研究の意味で非APO版を購入したケースも
ある、それは後日紹介しよう)
「(軸上)色収差」を低減する最も簡単なレンズ構成は、
「色消しダブレット」等と呼ばれているものである。
これは、特性(色分散)の異なる凸レンズと凹レンズ、
あるいは正負の屈折特性を持つレンズ面を組み合わせると、
波長(色)による屈折率の差が打ち消し合って、
少なくとも2色(=赤と青の2波長)の屈折の差を抑える
事が出来る。
この構成を「アクロマート」(=2波長の補正)と呼び、
これは写真用レンズよりも古く、天体望遠鏡等で昔から
非常に良く使われている構成(の一部)だ。
ただ、これでは特定の2波長(色)しか補正されない、
そこで3波長(3色)に対して(軸上)色収差を補正する
構成を、今から100年以上も前に、カール・ツァイス社の
設計技師兼研究者の「エルンスト・アッベ」氏が(顕微鏡
用として)発明、「アポクロマート」と命名したのだが、
その後の光学技術の発展で、何をもって「アポクロマート」
と呼ぶのかが曖昧になってしまったと聞く。
まあ、そもそも光の波長に関しては三原色などの「色」と
1対1に対応している訳では無く、C線、d線、F線などの
(注:大文字小文字の区別必須)特定の波長を、レンズ
設計上での指標とする(多くの波長で屈折などを揃える)
ので、青、赤、緑などの単純な「色」の話では無い訳だ。
何が「アポ」なのか?、定義が混乱してもやむを得ない。
(注:この事もまた「設計基準」の一環である。世間一般
の非技術者層が言うように、「近接撮影が主か、無限遠
撮影が主か?」だけを「設計基準」と呼ぶのは誤りだ)
写真用レンズの場合、後年には異常(低)分散レンズなど、
屈折率や色分散の異なるガラス素材を使ったレンズ設計に
より、元々の意味の「3色を補正する」アポクロマートが
実現できるようになった。だが、これも今から60年以上も
昔の話である。(参考:旧フォクトレンダー社による、
アポランター(APO-LANTHAR)の発売は1950年代だ)
ちなみに、アポクロマートを実現する為に、新種ガラスを
用いる場合、その仕様を示すのは屈折率と色分散の値で
あるが、その色分散の指数を、前述のツァイス社の研究者に
ちなんで「アッベ数」と呼ぶ。
現代のコシナ社のフォクトレンダーブランドのレンズでも、
APO-LANTHARの製品名は使われている。また、SIGMA社や
MINOLTA社でも、本レンズのように、良く「APO」の名称を
使っている(いた)のだが、他社レンズでは、あまり「APO」
の名前は使われていない。
(光学的なアポクロマートの定義が曖昧であるし、APOと
言った所で、初級層が理解できるものでは無いからか?
まあ、それでもツァイスやライカ等でも、稀にAPOの
名称の付く高級(高額)レンズは存在している。
まあ、その辺りは名称による付加価値(高価に売りたい)
を得る為のものかも知れないが・・)
その代わり、レンズ型番に、ED,LD,ADなどの名称が付く
場合があり、これらは「異常(低/部分)分散ガラス」や
「特殊(低)分散ガラス」を表す省略語である。
これらの「新種ガラス」は、色収差の補正を始めとして、
様々な収差を補正(低減)する為に使われるのであるが、
現代においては、こうした新種ガラスを使ってレンズ設計を
する事は、あまりに常識的な話なので、SIGMAやTAMRONと
いったレンズメーカーにおいても、もう2010年代からは、
これらのLD等の型番称号は使われなくなってきている。
(まあ、LD等と書いたところで、初級層等では、何が凄い
のか良くわからない点はAPOと大差ないだろう、すなわち
「それでは付加価値にならない」という事である)
なお、異常低分散レンズ等がまだ一般化する前の時代には、
PENTAX(旭光学)やキヤノン等の一部のメーカーでは
1970年代頃から「蛍石(けいせき)レンズ」(CaF2結晶
を用いた特殊ガラス、「フローライト」とも呼ばれる)を
用いた事もある。
![_c0032138_13495968.jpg]()
この蛍石素材の硝材は、色分散の特性が一般ガラスとは
異なっていて「異常部分分散ガラス」等と呼ばれていた、
これを使う理由は、主に「色収差」等の補正である。
(また、稀に軽量化の目的で用いられる場合もある)
だが、この蛍石の素材は柔らかく、傷がつきやすいので、
レンズとしての製造が難しく、後年には新素材の「異常・
特殊(低)分散ガラス」を使う事が一般的になっていく。
(注:CANONにおいては、一部の交換レンズに、ずっと
蛍石レンズを使い続けている。またNIKONでもFL型番の
蛍石使用レンズが近年に発売されている)
で、これらも初期のものは、50年以上も前の古い時代の
話であるから、現代になってなお「昔の蛍石レンズは
良く写るらしいから、どうしても欲しい」等と言って
いたら、そこは、もう少し情報アップデートが必要だ。
今時の(望遠)レンズには、ほぼ全てに新素材である
「異常・特殊(低)分散ガラス」が使われているので
収差補正の目的には、基本的には、それで十分だ。
また、近代の蛍石レンズの用途には、収差を補正しつつ、
軽量化を意図したものもある。
要は、十把ひとからげに「蛍石レンズは凄い」とか
「異常低分散ガラスが入っているから良く写る」とかは
思い込まず、時代背景とか、その技術が使われる目的や
効能等を良く理解しなければならない。
さて、技術的な余談が長くなったが、中上級マニア層で
あれば、これらは最低限は知っておかなくてはならない事だ。
![_c0032138_13501026.jpg]()
本APO70-300であるが、20年以上も前のセミオールド
レンズとは言え、そこそこ良く写る。まあアポクロマート
設計の効果が良く出ているのであろう。
・・と言うか、製品ラインナップ上で、APO無しの廉価版と
比較される事が必至の立場であるから、両者の差別化の為に
APO版は高性能を目指した設計としているのであろう。
同じメーカーの安い機種に写りが負けていたら、お話にも
ならないからだ・・
まあつまり、中古相場が安価であるならば「お買い得」な
立ち位置の製品である。
それと、本レンズでは望遠端300mmにすると、それまでの
「NORMAL」位置のスイッチを「FULL」に手動切替する事が
可能となり、これは「マクロモード」に相当する。
NORMALでの最短撮影距離1.5mに対し、最短が95cmまで
短縮され、これはフルサイズ時に1/2倍の撮影倍率となる。
ここの操作性は、やや煩雑だが、高画質のレンズなので、
近接撮影が出来る仕様は効果的であり、長所と言える。
(ただし「遠距離+望遠端」で解像感が若干落ちる弱点を
持つ本レンズであるから「望遠端はマクロで使ってくれ」
という仕様とすれば、その弱点を目立たなくする事が可能だ、
もし、そこまで考えて設計したのならば「確信犯」であろう)
2000円以下とか、そういう価格帯で買えるのであれば、
コスパは極めて良いと思う。ちなみに、本レンズは
税込み540円だ。以前に知人に譲渡したニコンFマウントの
同型レンズも税込み1000円のジャンク価格であった。
ちなみに、後継機(DG付き型番)の場合は、中古相場は
1万円以上に跳ね上がる。そちらは「デジタル対応」と
銘打っているから、初級中級層では、本APO70-300が
「デジタル非対応で、デジタル一眼レフでは使用できない」
と勘違いをするから、中古相場も安価になるのだと思う。
勿論、本レンズは、何も問題無くデジタル一眼レフで使用
する事ができる。(後継DG版は、後日紹介予定)
![_c0032138_13501054.jpg]()
安価でコスパが良いレンズではあるが、課題としては、
もう様々な経年劣化が起こっていてもおかしく無い古い
時代のレンズである事だ。SIGMAのこの時代(1990年代
前後)のレンズの典型的な経年劣化については後述しよう。
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では、次のシステム
![_c0032138_13501767.jpg]()
レンズは、SIGMA AF ZOOM 75-300mm/f4-5.6 APO
(中古購入価格 1,000円)(以下、APO75-300)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス補足編第7回記事で紹介済みの
レンズであるが、上記の類似仕様レンズとの比較の為に
再掲しよう。
本レンズの正式名称(型番)は不明。例によってレンズ上に
順不同で書かれている単語を適宜並べて表記するしかない。
上記のAPO70-300よりも1世代古い旧型レンズと思われる。
発売時期は推測だが1990年前後であろうか?
スペック上の差異は、焦点距離の広角端が75mmと70mmで
僅かに異なる程度である。
また、MACROの名称が本レンズでは無い。本レンズの最短
撮影距離は1.5mであり、MACROモードは付いていないのだ。
本レンズもAPO仕様であり、後継レンズと同じく、非APO版
が当時は併売されていたと思われる。
![_c0032138_13501788.jpg]()
さて、この手のジャンクレンズは、常用しているという訳
では無いので、前回のミラーレス・マニアックス登場時から
およそ数年ぶりに使用してみると、なんだかコントラストが
とても低く写るようになってしまった(上写真)
「これはおかしい」と思って、レンズをカメラから外して
良く見ると、レンズ後玉の表面に白い曇り(カビ?)が
発生している。これが原因と推察し、レンズクリーナー液と
レンズペーパーで清掃すると綺麗になった。
![_c0032138_13501706.jpg]()
この状態で本来の性能は復活、クリアに写るようになった。
これが、少し前述したSIGMA製レンズの経年劣化の典型例
であり、所有している同時代のSIGMAレンズでは、本レンズ
以外にも2件ほど同様な後玉カビが発生している。
また、前記「APO70-300」は同型品を知人に譲渡した、と
書いたのだが、譲渡からおよそ8年位して、その知人から
「あの望遠ズームが、白っぽく写るようになってしまった」
という連絡があった。上記の課題ではなかろうか?と思い
後日「レンズの後ろを磨いたら直るかも」と連絡したが、
上手く復活できただろうか? そこは聞いていない。
下手をすると「壊れた、もうダメだ」と思って処分して
しまったかもしれない。さらに、もしかすると、この課題
がある為、故障(劣化)レンズとして、この手のSIGMA製
レンズが中古店でジャンク扱いで二束三文で売られている
可能性もある。
私が知る範囲で、この後玉劣化の問題が発生するものは、
1980年代~1990年代製造と思われるSIGMA製レンズである。
この時期の製造工程で、後玉の表面加工(コーティング?)
の材質や素材塗布方法に、経年劣化が起き易い課題が
あったのであろうか?
だがまあ、知っていれば対処法があるので問題は無い。
![_c0032138_13502792.jpg]()
さて、描写性能が復活すれば、本レンズの描写力は、
上記後継型と並んで、ほとんど問題にならない高い性能を
誇る。ここがまあ、APO仕様で、非APO版との差別化要因が
あるので、気合の入った設計だ。
ボケ質破綻が僅かに出るが、その回避は一眼レフ使用では
困難だ。前回使用時はミラーレス機(DMC-G6)で使ったが、
本レンズは絞り環が備わるNIKON Fマウント品なので、
ミラーレス機なら実絞り(絞り込み)測光で高精細EVFと
あいまって、なんとかボケ質破綻の回避技法が使える。
まあ、古い大型レンズなので、AFは遅いしAF精度もあまり
高くない為、本来であれば一眼レフでは使わず、MF性能
に優れたミラーレス機で使う事が、こうしたオールド
レンズでは基本であろう。
今回一眼レフで使用しているのは「限界性能テスト」の
意味があるのだが、このテストの意義は、「厳しい状況と
なる事が予想されるシステムで使っても実用的か否か?」
という検証の他、副次的には「システムの良し悪しについて
多数の経験を積んで、その基準(評価感覚)を築いていく」
要素もある。まあつまり、常に性能の優れたシステムだけを
使っていたら、そういう評価基準が身に付かないのだ。
これはカメラシステムに限らず、オーディオ等で音の
良し悪しを判断する感覚基準であったり、あるいは食品等
でも、味の良し悪しを評価するには、美味しいものも
食べるし、美味しくないものも食べて、その評価の幅や
スケール(物差し)を絶対感覚値として持つ必要がある。
そのスケールが身につけば、新しいレンズ、新しいイヤホン
新しい食品、などを手にした際、「これは5点満点中で4点」
などの評価が、(やっと)できるようになる訳だ。
この経験値を多数積まずに「このレンズは良く写る」等の
評価はやりずらい。・・と言うか、出来ない筈だ、経験値が
無いのに評価をするのは、殆どが「思い込み」の世界だ。
ビギナー層による機材評価は、ほとんどがその類なので、
残念でもあるし、通販サイト等での、そうした評価内容を
参考にして機材を購入する人達も可哀想だ。もし仮に多数の
ユーザーが同じ高評価だったとしても、全員がビギナー層で
ただ単に、他者の意見に「付和雷同」しているだけの事も
極めて良くある話だ。まあそれは大多数が「良い」といえば
一人だけ反発する事等はビギナーにはできる筈も無いからだ。
なお、さらに余談だが、前述のような「音」や「味」を
感覚的に評価する業務は、一般に「官能評価」と呼ばれ、
それらの業種での専門担当者が居る。
が、私が思うに、そうした業務も、そこそこ経験を積めば
出来るとは思う、しかし世間一般の人達に聞くと、音や味の
良し悪しは、多くの人達がわからないらしい。恐らくだが、
味が分かるのは世間の3割以下、音の良否はさらに少なく
1割以下であろう。だから、それがわからない「一般層」は、
自分では判断出来ない商品(音響機器や食品)は、ネットや
他者の評判を聞いて、買うかどうかを決めるそうだ。
私は、そういう話を聞くたびに強く反発する。
「なぜ、自分で評価判断ができるようになろうとしないのだ?
イヤホンを選ぶならば、店舗で試聴できるものは100本でも
200本でも全部聴いて、自分で決めれば良いだろう!?」
・・等と常に憤慨しているのだが、面倒だからとか、才能が
無いから、とか言い訳をして、そういう経験値を積もうとも
しなければ、永久にそういうセンス(=まあ、経験値だ)は
身に付かない。とても残念な話だが、それが世間一般層の
レベルである。・・しかし、それでは、他人の意見に簡単に
流されてしまうし、世の中には、特定の商品を売る為の
意図的な「情報操作」は、いくらでも存在しているから、
一般層は、そういうものに簡単に騙されてしまうのだ。
例えば、ごく普通のアナログ的構造のイヤホンの新製品を
「これはハイレゾ対応だ」と言えば、従来の数倍の価格と
なる。だが、実際に比較試聴してみれば、ずっと安価な
良く出来たイヤホンよりも音が悪い場合も多々ある・・
私はそういう不条理な製品は絶対に購入しないが、世間では、
「やはりハイレゾ対応は高いだけの事はある、ちょっと違うな」
などと言って、無駄な出費を自身で納得してしまう訳だ。
かなり馬鹿馬鹿しい話だが、近年では、私も「そういう風に
騙される人が沢山居るから、世の中は上手く廻っている」
と思って、憤慨しないようにしている。
![_c0032138_13502773.jpg]()
総括だが、まあ、かなり古い時代のレンズながら、SIGMAの
APO仕様の望遠ズームは、描写力的に、なかなか悪く無い。
現代においては二束三文の中古相場となっている事が多く、
中古店のジャンクコーナー等で見かけたら、試しに買って
みるのも良いであろう。 恐ろしくコスパが良い為、
「高価なレンズって、いったい何故必要なのか?」
という疑問が沸いてくるかも知れない。まあでも、そうした
価値感覚のスケールを持つ事が非常に重要な事だと思う。
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では、次のシステム。
![_c0032138_13504187.jpg]()
レンズは、VS Technology VS-LD6.5
(発売時定価 50,000円)
カメラは、PENTAX Q (1/2.3型機)
本シリーズでは未紹介であるが、「特殊レンズ第1回記事、
マシンビジョン特集」で、チラリと紹介している。
発売年不明、恐らくは2000年代のマシンビジョン(FA)
用低歪曲広角レンズであり、近接撮影のみが可能だが、
中遠距離撮影時には、絞り込んで被写界深度で撮る。
何cmまで寄れるか?等は良くわからない、レンズには
センサー換算倍率が書かれていて、一般写真用レンズ
のように、何m、などの距離目盛(指標)は無い。
それに、撮影倍率もセンサーサイズに依存する為、
そのスペックを書いても無意味であろう。
6.5mmの広角気味の焦点距離で、1/2型以下のCマウント
対応、初期メガピクセル対応のMF単焦点手動絞りレンズだ。
開放F値は撮影距離により変動しF2.2~F2.4程度となる。
(=近接露光(露出)倍数が掛るからだ)
![_c0032138_13504165.jpg]()
ここで「マシンビジョンとは何ぞや?」という話を
しだすと際限なく記事文字数を消費してしまうし、
非常に専門的な分野であり、写真用レンズやカメラの
世界との接点も殆ど無い。
もし興味があるならば、上記、特殊レンズ第1回記事や
匠の用語辞典第3回記事に詳しいが、専門的な用語や
概念や計算式ばかりで、一般ユーザー層では難解すぎる
内容かも知れない。
さらに言えば、一般ユーザーではマシンビジョン用レンズ
を入手(購入)する事もできない。これらの購入には
通常では「法人名義」で代理店を通すしか無いのだ。
(この事は、この業界における慣例だ)
私が多数のマシンビジョン用レンズを所有しているのは
あの手、この手で、その業界に頼み込んで入手している
次第である。
そして、仮に入手できたとしても、レンズを装着する
カメラシステムは限られているし、それよりも何よりも
問題なのは、その限られたシステムにおいては、撮影を
する事自体が、かなり難しい事だ。
特にPENTAX Qシステムを使った場合は、ピント距離が
まるで不明になる。(注:ここには様々な理由がある)
加えて、かろうじて写せたとしても、普通の写真のように
撮る事は困難だ。例えば、マシンビジョン用レンズは
いずれもボケ質に対する配慮は皆無に近いという特性があり、
つまり普通に背景をボカしても、その雰囲気やボケ質は、
写真としての感覚からは、かなり異端に感じる事だろう。
また、正しい使い方をしなければ、まともに解像感を
得たり、被写体形状が正しく写る保証すらない。
(注:電子シャッター使用となるからだ)
![_c0032138_13504168.jpg]()
では、そんなやっかいなレンズを何故使うのか? という
点があるが、それはまあ、難しいシステムを、あれこれと
工夫して撮る事に興味を持つような・・ 言ってみれば
「テクニカル・マニア」のような志向性があるからだ。
でもまあ、これもまた一般的なカメラマニアの志向性とは
異なる領域の話であろう。
しかし、一般層が想像するような「マニア像」という
ものがあると思う。つまり、有名でレアで高価なもの等を
集めたがるような風潮であるが、それもまた、私の定義
する「マニア道」とは、かけ離れた概念のイメージだ。
これについて書き出すと非常に長くなる、様々な記事
でも書いているが、例えば「匠の用語辞典第17回記事」
などにも、「マニア道」についての詳細を書いている。
![_c0032138_13504146.jpg]()
さて、肝心の本レンズVS-LD6.5の話がちっとも出て来ない
のだが、特に書くべき内容も殆ど無いし、写りが良いとか
悪いとか、あるいは長所短所を書いても意味が無いであろう、
「絶対に」と言っていい程、一般カメラユーザーはもとより
マニア層ですらも欲しいとは思わないレンズであるからだ。
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では、今回ラストのシステム。
![_c0032138_13505891.jpg]()
レンズは、SIGMA 70mm/f2.8 DG MACRO | Art
(中古購入価格 44,000円)(以下、A70/2.8)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
2018年に発売された、フルサイズ対応AF等倍マクロ。
Art Lineのラインナップとなるが、他のArt Line
レンズで一般的なHSM(超音波モーター)仕様では無い。
また、Art Lineレンズには、手ブレ補正が内蔵されて
いない。(が、その硬派なコンセプトが気に入っている)
やや特殊なモーターの仕様の為、NIKON(F)マウント版
は発売されておらず、EOS(EF)、SIGMA(SA)、および
SONY E(FE)マウント版のみの発売である。
(追記:ミラーレスLマウント版が追加発売されている)
![_c0032138_13510854.jpg]()
さて、本レンズは「カミソリマクロ」と呼ばれている。
どうやら、旧製品 SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG
の時代に、「デジカメWatch」の紹介記事でライターに
より、その名称が使われた記録があるのだが、その後、
マニア層において、その名称が定着していたとは聞かない。
(さらに古い時代、TOKINA 90mm/F2.5 Macro →後日紹介
にも、同様に「カミソリマクロ」の異名が与えられた記録
もある、まあつまり、比較的「普遍的」な呼び方だ)
まあ、今回の新製品で、その通称を用いた事は、単なる
「キャッチコピー」の類だとは思うが、それでも本レンズや
旧版レンズの特性を良く言い表している呼称であろう。
なお、旧製品の2006年版のマクロの正式名称だが、
「SIGMA MACRO 70mm F2.8 EX DG」で良い、とは思う
のだが、どうもはっきりしない。本記事では、たまたま
SIGMA製のレンズが3本紹介されているが、上の方で前述
したように、SIGMAのレンズ上に書かれている型番文字は
順不同であり、その旧版70マクロ本体にも、EXの名称は
書かれていない。また型番のMACROの位置も、新版は
最後だし、旧版は最初(?)であって、さらには、旧版で
AFの型番が入るか入らないか? など、結局、レンズの
正式名称が良くわからないのだ。
実際のところ「名前など、どうでも良い」とも言えるかも
知れないのだが、ちょっと困った事があり、旧版70マクロ
の事は、これまで他記事では「レア品で中古入手困難」
と書いてきたかも知れないが、近年、やっと市場に出てきた
ものを入手する事が出来たのだ(後日紹介予定)
これで新旧70mmカミソリマクロが手元に揃った訳だが、
これらをどう区別するか? まあ、新版はA70/2.8、
旧版はEX70/2.8と省略して記載する事にしようか・・
それと、正式な型番名称が不明であると、WEB等での情報
検索性が低下する(=見つからない)、という課題は、
ユーザー側のみならず、メーカー側にとっても不利であろう。
(まあ、そうだからか? 近年のArt Lineレンズでは
型番は、わりとシンプル、かつ明瞭につけられている)
![_c0032138_13510872.jpg]()
本A70/2.8だが、解像感は確かに高い、しかし事前に
想像したような「カリカリ・マクロ」では無く、一般的な、
良く写るマクロレンズである。
(なお、本記事では旧版との比較はやめておき、それは
旧版の紹介記事に譲るとしよう)
「カリカリ・マクロ」(匠の用語辞典第5回記事参照)
という特性を持つマクロも何本か所有しているのであるが
元々、現代のSIGMAのラインナップ上においては、Art Line
に属するものは、カリカリ描写は与えられておらず、むしろ
コンテンポラリー(Contemporary Line)のレンズ群の方が
輪郭がキツいカリカリ描写が強いように感じてしまう。
まあ、輪郭を強くした描写の方が、コンテンポラリーの
主力ユーザー層である初級中級者に、「良く写るレンズだ」
という勘違い(錯覚)を与え易いから、あえてそういう特性
になるように設計されているのだろうと思う。
本レンズは一応は Art Lineである為(注:Art Lineでは
初のマクロとなる)、そうしたビギナー層向けの特性は
与えられてはいない、という事だ。
(=上級者や職業写真家層は、撮影した写真は必ずレタッチ
して用いるので、高級レンズは、編集を前提に、出来るだけ
ニュートラルな特性を持たせる必要があるからだ)
じゃあ、「カミソリマクロ」とは何ぞや? という話に
戻ってしまうのだが、まあ結局、良くわからない(汗)
やはり、単なる「キャッチコピー」とでも思っておく方が
無難だろうと思う。
マクロレンズは数十本所有しているが、たいていのマクロ
は良く写り、別に本A70/2.8だけがスペシャル(特別)な
描写力を持つレンズ、という訳でも無いのだ。
![_c0032138_13510873.jpg]()
スペック的なライバルは、コシナ・フォクトレンダーの
マクロアポランター65mm/F2(本シリーズ第10回記事)
と思うかも知れないが、両者はまるで別のレンズである。
例えば、単純な話だが、
本A70/2.8は、AFの等倍マクロであり、解像力重視、
MAP65/2は、MFの1/2倍マクロであり、コントラスト重視だ。
おまけに価格(定価)も、MAP65/2が2倍も高価である。
写りも、まるで違う印象となるので、スペックが似ている
という理由だけで、両者の比較をしてはならないと思う。
実は私も当初は、既にSONY Eマウント用にMAP65/2を
所有していたので、同じEマウントで、焦点距離が5mm
異なるたけの本A70/2.8を購入する事には抵抗があり、
本A70/2.8は、EOS(EF)版を探していたのだが、そちらの
中古がなかなか出て来ず、先に出たSONY E版を購入して
しまったのだが、逆に、この状況で同じ母艦で、両レンズ
を使える事になったので、両者の設計コンセプト上の差異が
良くわかるようになった、とも言える。
さて、本レンズの弱点であるが、わけのわからないモーター
の仕様となっている事だ。SONY E版はカメラの電源OFF時
に、なんとか自動的にレンズの繰り出しが収納位置まで
復帰するのだが、EOS(EF)版では、それが無理な場合が
あり、レンズを(無限遠撮影またはMFで)引っ込めてから
EOSの電源をOFFしないと、レンズが伸びっぱなしで、
それを手動で引っ込める操作が出来ないケースがある。
(注:EOSデジタル一眼レフの一部には、カスタム設定で
「電源OFF時のレンズ収納」を可能とするものもある。
ただし、この機能は全てのEOS機に搭載されてはいない)
まあ、まるで4/3(フォーサーズ)用のAFレンズのような
仕様であり、レンズ側に電源を供給してあげない限り
モーターが廻らず、MFもできないのだ。
しかし、CANON純正レンズでも、例えばSTMレンズ
(例:EF40/2.8STM、本シリーズ第10回記事)において
電源を供給しないとピントリングが動かずMFが出来ない
のであるが・・(その結果、STMレンズは、機械式マウント
アダプターでは他社ミラーレス機などで使用できない)
同じようなものとは言え、小型のSTMレンズならば、レンズ
鏡筒が伸びっぱなしで電源をOFFしても邪魔にはならないが
本A70/2.8はマクロである、レンズが伸びたままでは
カメラバッグに仕舞う事も出来ず、また電源をONして
収納位置まで引っ込めてからEOSの電源をOFFしないと
ならない。(注:前述のように、機種による)
まあ、EOS機ではその問題がある事がわかっていたので、
購入前から非常に気にはなっていがた、まあたまたま
SONY Eマウント版を選択できたので、むしろ良かった。
なお、このモーターの不思議な仕様の問題があるからか、
本A70/2.8は、ニコンFマウント版は発売されておらず、
確か「作る事ができない」という話も聞いた事がある。
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それと、母艦であるα6000(2014年)のデジタルズーム
機能が効かない、α7(2013年)でも同様であるが、何故か
古いNEX-7(2012年)では動作する。
(追記:本レンズのファームウェアを2018年末のVer.02
へ更新する事で、この不具合は解消された)
ちょっとクセのあるレンズであるが、まあ総合的な
描写力は悪くなく、しかも、Art Lineレンズとしては
他の主力Artレンズの半額以下程度と安価である。
描写力の面でのコスパはなかなか良い現代的マクロで
あるので、中級層やマニア層に対してはオススメだ。
ただし、他にも代替できるマクロレンズもあれこれと多い
事があるのと、各マクロには微細な長所・短所があるので
利用者の用途とか志向性やらで、本来、推奨できるマクロ
は個々のユーザーで異なる、という事は念の為述べておく。
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さて、今回の記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。
いる状況が続いているが、本ブログでの掲載写真は
シリーズ記事の場合は、記事掲載時点の1~2年前に
撮られたものばかりである。
こうなると自由に趣味の撮影が出来た事が、いかに
恵まれた環境であった事を実感できるのであるが、
まあ新規の写真は、事態が終息した頃にも、また
ゆっくり撮りに行けば良い事であろう・・
さて、本シリーズ記事は、新規購入等の理由により、
過去の本ブログでのレンズ関連記事では掲載して
いなかったマニアックなレンズを主に紹介している。
今回は3本の未紹介レンズと、1本の再掲レンズを
取り上げる。
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ではまず、今回最初のレンズ

(中古購入価格 500円)(以下、APO70-300)
カメラは、SONY α65 (APS-C機)
発売年不明、恐らくは1990年代のレンズと思われる。
後継の機種には「DG」の称号が入っていて、そちらは
デジタル対応の意味で恐らく2000年代のレンズであろう。
(追記:記事執筆後に入手済み、後日紹介予定)
・・とは言え「DG無し」の本レンズがデジタル一眼レフ
で使えないという訳では無い。
本レンズの名称(型番)の正式な記述は不明。
レンズ上には勿論型番は書いてあるが、APOとかMACRO
等が、順不同でバラバラに適当な位置に記載されていて、
一連の名称は書かれていない。
また、SIGMAのWEBでも、ここまで古い時代の製品の
情報は載っていないので、正式な型番は、もはや不明だ。
レンズ名で検索をすると、本ブログに当たるのだが・・
そう、このレンズは同型のものを、かつて所有していて、
かなり昔の「スーパーレンズ」のカテゴリーの記事でも
紹介していたのだが、10年程前に「望遠レンズが欲しい」と
言った知人に譲渡してしまっていたのである。
で、近年、中古店のジャンク品コーナーで、また本レンズを
発見、500円と非常に安価だったので再購入する事にした。

レンズで良く発生する「色収差」を補正した設計である事を
示している。SIGMAのこのクラス(300mm級)のズームレンズ
においては、多くの時代の物で、「APO」版と非APO版が
併売されていて、APO版の方が若干定価が高価なのだが・・
中古、しかもジャンクともなれば、もう、そのAPOの有無
での相場差は無いと思っても良いであろう。
個人的には、SIGMAのこのクラスの非APO版は、見つけたと
しても購入する事はまず無い。私は他にも、古い時代の各社
の非APO仕様の望遠ズームは多数所有しているが、いずれも
例えば、遠距離の白い鳥等を撮影すると、輪郭の廻りに
様々な色の滲みが出る「色収差」が発生する。
SIGMA製の300mm級望遠ズームに関しては、APO版は2本
所有していて、それらであれば色収差は、さほど問題には
ならない事は承知している。だから中古で見かけた場合は
APO版である事が私の場合の購入条件だ。
(ただし、比較研究の意味で非APO版を購入したケースも
ある、それは後日紹介しよう)
「(軸上)色収差」を低減する最も簡単なレンズ構成は、
「色消しダブレット」等と呼ばれているものである。
これは、特性(色分散)の異なる凸レンズと凹レンズ、
あるいは正負の屈折特性を持つレンズ面を組み合わせると、
波長(色)による屈折率の差が打ち消し合って、
少なくとも2色(=赤と青の2波長)の屈折の差を抑える
事が出来る。
この構成を「アクロマート」(=2波長の補正)と呼び、
これは写真用レンズよりも古く、天体望遠鏡等で昔から
非常に良く使われている構成(の一部)だ。
ただ、これでは特定の2波長(色)しか補正されない、
そこで3波長(3色)に対して(軸上)色収差を補正する
構成を、今から100年以上も前に、カール・ツァイス社の
設計技師兼研究者の「エルンスト・アッベ」氏が(顕微鏡
用として)発明、「アポクロマート」と命名したのだが、
その後の光学技術の発展で、何をもって「アポクロマート」
と呼ぶのかが曖昧になってしまったと聞く。
まあ、そもそも光の波長に関しては三原色などの「色」と
1対1に対応している訳では無く、C線、d線、F線などの
(注:大文字小文字の区別必須)特定の波長を、レンズ
設計上での指標とする(多くの波長で屈折などを揃える)
ので、青、赤、緑などの単純な「色」の話では無い訳だ。
何が「アポ」なのか?、定義が混乱してもやむを得ない。
(注:この事もまた「設計基準」の一環である。世間一般
の非技術者層が言うように、「近接撮影が主か、無限遠
撮影が主か?」だけを「設計基準」と呼ぶのは誤りだ)
写真用レンズの場合、後年には異常(低)分散レンズなど、
屈折率や色分散の異なるガラス素材を使ったレンズ設計に
より、元々の意味の「3色を補正する」アポクロマートが
実現できるようになった。だが、これも今から60年以上も
昔の話である。(参考:旧フォクトレンダー社による、
アポランター(APO-LANTHAR)の発売は1950年代だ)
ちなみに、アポクロマートを実現する為に、新種ガラスを
用いる場合、その仕様を示すのは屈折率と色分散の値で
あるが、その色分散の指数を、前述のツァイス社の研究者に
ちなんで「アッベ数」と呼ぶ。
現代のコシナ社のフォクトレンダーブランドのレンズでも、
APO-LANTHARの製品名は使われている。また、SIGMA社や
MINOLTA社でも、本レンズのように、良く「APO」の名称を
使っている(いた)のだが、他社レンズでは、あまり「APO」
の名前は使われていない。
(光学的なアポクロマートの定義が曖昧であるし、APOと
言った所で、初級層が理解できるものでは無いからか?
まあ、それでもツァイスやライカ等でも、稀にAPOの
名称の付く高級(高額)レンズは存在している。
まあ、その辺りは名称による付加価値(高価に売りたい)
を得る為のものかも知れないが・・)
その代わり、レンズ型番に、ED,LD,ADなどの名称が付く
場合があり、これらは「異常(低/部分)分散ガラス」や
「特殊(低)分散ガラス」を表す省略語である。
これらの「新種ガラス」は、色収差の補正を始めとして、
様々な収差を補正(低減)する為に使われるのであるが、
現代においては、こうした新種ガラスを使ってレンズ設計を
する事は、あまりに常識的な話なので、SIGMAやTAMRONと
いったレンズメーカーにおいても、もう2010年代からは、
これらのLD等の型番称号は使われなくなってきている。
(まあ、LD等と書いたところで、初級層等では、何が凄い
のか良くわからない点はAPOと大差ないだろう、すなわち
「それでは付加価値にならない」という事である)
なお、異常低分散レンズ等がまだ一般化する前の時代には、
PENTAX(旭光学)やキヤノン等の一部のメーカーでは
1970年代頃から「蛍石(けいせき)レンズ」(CaF2結晶
を用いた特殊ガラス、「フローライト」とも呼ばれる)を
用いた事もある。

異なっていて「異常部分分散ガラス」等と呼ばれていた、
これを使う理由は、主に「色収差」等の補正である。
(また、稀に軽量化の目的で用いられる場合もある)
だが、この蛍石の素材は柔らかく、傷がつきやすいので、
レンズとしての製造が難しく、後年には新素材の「異常・
特殊(低)分散ガラス」を使う事が一般的になっていく。
(注:CANONにおいては、一部の交換レンズに、ずっと
蛍石レンズを使い続けている。またNIKONでもFL型番の
蛍石使用レンズが近年に発売されている)
で、これらも初期のものは、50年以上も前の古い時代の
話であるから、現代になってなお「昔の蛍石レンズは
良く写るらしいから、どうしても欲しい」等と言って
いたら、そこは、もう少し情報アップデートが必要だ。
今時の(望遠)レンズには、ほぼ全てに新素材である
「異常・特殊(低)分散ガラス」が使われているので
収差補正の目的には、基本的には、それで十分だ。
また、近代の蛍石レンズの用途には、収差を補正しつつ、
軽量化を意図したものもある。
要は、十把ひとからげに「蛍石レンズは凄い」とか
「異常低分散ガラスが入っているから良く写る」とかは
思い込まず、時代背景とか、その技術が使われる目的や
効能等を良く理解しなければならない。
さて、技術的な余談が長くなったが、中上級マニア層で
あれば、これらは最低限は知っておかなくてはならない事だ。

レンズとは言え、そこそこ良く写る。まあアポクロマート
設計の効果が良く出ているのであろう。
・・と言うか、製品ラインナップ上で、APO無しの廉価版と
比較される事が必至の立場であるから、両者の差別化の為に
APO版は高性能を目指した設計としているのであろう。
同じメーカーの安い機種に写りが負けていたら、お話にも
ならないからだ・・
まあつまり、中古相場が安価であるならば「お買い得」な
立ち位置の製品である。
それと、本レンズでは望遠端300mmにすると、それまでの
「NORMAL」位置のスイッチを「FULL」に手動切替する事が
可能となり、これは「マクロモード」に相当する。
NORMALでの最短撮影距離1.5mに対し、最短が95cmまで
短縮され、これはフルサイズ時に1/2倍の撮影倍率となる。
ここの操作性は、やや煩雑だが、高画質のレンズなので、
近接撮影が出来る仕様は効果的であり、長所と言える。
(ただし「遠距離+望遠端」で解像感が若干落ちる弱点を
持つ本レンズであるから「望遠端はマクロで使ってくれ」
という仕様とすれば、その弱点を目立たなくする事が可能だ、
もし、そこまで考えて設計したのならば「確信犯」であろう)
2000円以下とか、そういう価格帯で買えるのであれば、
コスパは極めて良いと思う。ちなみに、本レンズは
税込み540円だ。以前に知人に譲渡したニコンFマウントの
同型レンズも税込み1000円のジャンク価格であった。
ちなみに、後継機(DG付き型番)の場合は、中古相場は
1万円以上に跳ね上がる。そちらは「デジタル対応」と
銘打っているから、初級中級層では、本APO70-300が
「デジタル非対応で、デジタル一眼レフでは使用できない」
と勘違いをするから、中古相場も安価になるのだと思う。
勿論、本レンズは、何も問題無くデジタル一眼レフで使用
する事ができる。(後継DG版は、後日紹介予定)

もう様々な経年劣化が起こっていてもおかしく無い古い
時代のレンズである事だ。SIGMAのこの時代(1990年代
前後)のレンズの典型的な経年劣化については後述しよう。
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では、次のシステム

(中古購入価格 1,000円)(以下、APO75-300)
カメラは、NIKON D300 (APS-C機)
ミラーレス・マニアックス補足編第7回記事で紹介済みの
レンズであるが、上記の類似仕様レンズとの比較の為に
再掲しよう。
本レンズの正式名称(型番)は不明。例によってレンズ上に
順不同で書かれている単語を適宜並べて表記するしかない。
上記のAPO70-300よりも1世代古い旧型レンズと思われる。
発売時期は推測だが1990年前後であろうか?
スペック上の差異は、焦点距離の広角端が75mmと70mmで
僅かに異なる程度である。
また、MACROの名称が本レンズでは無い。本レンズの最短
撮影距離は1.5mであり、MACROモードは付いていないのだ。
本レンズもAPO仕様であり、後継レンズと同じく、非APO版
が当時は併売されていたと思われる。

では無いので、前回のミラーレス・マニアックス登場時から
およそ数年ぶりに使用してみると、なんだかコントラストが
とても低く写るようになってしまった(上写真)
「これはおかしい」と思って、レンズをカメラから外して
良く見ると、レンズ後玉の表面に白い曇り(カビ?)が
発生している。これが原因と推察し、レンズクリーナー液と
レンズペーパーで清掃すると綺麗になった。

これが、少し前述したSIGMA製レンズの経年劣化の典型例
であり、所有している同時代のSIGMAレンズでは、本レンズ
以外にも2件ほど同様な後玉カビが発生している。
また、前記「APO70-300」は同型品を知人に譲渡した、と
書いたのだが、譲渡からおよそ8年位して、その知人から
「あの望遠ズームが、白っぽく写るようになってしまった」
という連絡があった。上記の課題ではなかろうか?と思い
後日「レンズの後ろを磨いたら直るかも」と連絡したが、
上手く復活できただろうか? そこは聞いていない。
下手をすると「壊れた、もうダメだ」と思って処分して
しまったかもしれない。さらに、もしかすると、この課題
がある為、故障(劣化)レンズとして、この手のSIGMA製
レンズが中古店でジャンク扱いで二束三文で売られている
可能性もある。
私が知る範囲で、この後玉劣化の問題が発生するものは、
1980年代~1990年代製造と思われるSIGMA製レンズである。
この時期の製造工程で、後玉の表面加工(コーティング?)
の材質や素材塗布方法に、経年劣化が起き易い課題が
あったのであろうか?
だがまあ、知っていれば対処法があるので問題は無い。

上記後継型と並んで、ほとんど問題にならない高い性能を
誇る。ここがまあ、APO仕様で、非APO版との差別化要因が
あるので、気合の入った設計だ。
ボケ質破綻が僅かに出るが、その回避は一眼レフ使用では
困難だ。前回使用時はミラーレス機(DMC-G6)で使ったが、
本レンズは絞り環が備わるNIKON Fマウント品なので、
ミラーレス機なら実絞り(絞り込み)測光で高精細EVFと
あいまって、なんとかボケ質破綻の回避技法が使える。
まあ、古い大型レンズなので、AFは遅いしAF精度もあまり
高くない為、本来であれば一眼レフでは使わず、MF性能
に優れたミラーレス機で使う事が、こうしたオールド
レンズでは基本であろう。
今回一眼レフで使用しているのは「限界性能テスト」の
意味があるのだが、このテストの意義は、「厳しい状況と
なる事が予想されるシステムで使っても実用的か否か?」
という検証の他、副次的には「システムの良し悪しについて
多数の経験を積んで、その基準(評価感覚)を築いていく」
要素もある。まあつまり、常に性能の優れたシステムだけを
使っていたら、そういう評価基準が身に付かないのだ。
これはカメラシステムに限らず、オーディオ等で音の
良し悪しを判断する感覚基準であったり、あるいは食品等
でも、味の良し悪しを評価するには、美味しいものも
食べるし、美味しくないものも食べて、その評価の幅や
スケール(物差し)を絶対感覚値として持つ必要がある。
そのスケールが身につけば、新しいレンズ、新しいイヤホン
新しい食品、などを手にした際、「これは5点満点中で4点」
などの評価が、(やっと)できるようになる訳だ。
この経験値を多数積まずに「このレンズは良く写る」等の
評価はやりずらい。・・と言うか、出来ない筈だ、経験値が
無いのに評価をするのは、殆どが「思い込み」の世界だ。
ビギナー層による機材評価は、ほとんどがその類なので、
残念でもあるし、通販サイト等での、そうした評価内容を
参考にして機材を購入する人達も可哀想だ。もし仮に多数の
ユーザーが同じ高評価だったとしても、全員がビギナー層で
ただ単に、他者の意見に「付和雷同」しているだけの事も
極めて良くある話だ。まあそれは大多数が「良い」といえば
一人だけ反発する事等はビギナーにはできる筈も無いからだ。
なお、さらに余談だが、前述のような「音」や「味」を
感覚的に評価する業務は、一般に「官能評価」と呼ばれ、
それらの業種での専門担当者が居る。
が、私が思うに、そうした業務も、そこそこ経験を積めば
出来るとは思う、しかし世間一般の人達に聞くと、音や味の
良し悪しは、多くの人達がわからないらしい。恐らくだが、
味が分かるのは世間の3割以下、音の良否はさらに少なく
1割以下であろう。だから、それがわからない「一般層」は、
自分では判断出来ない商品(音響機器や食品)は、ネットや
他者の評判を聞いて、買うかどうかを決めるそうだ。
私は、そういう話を聞くたびに強く反発する。
「なぜ、自分で評価判断ができるようになろうとしないのだ?
イヤホンを選ぶならば、店舗で試聴できるものは100本でも
200本でも全部聴いて、自分で決めれば良いだろう!?」
・・等と常に憤慨しているのだが、面倒だからとか、才能が
無いから、とか言い訳をして、そういう経験値を積もうとも
しなければ、永久にそういうセンス(=まあ、経験値だ)は
身に付かない。とても残念な話だが、それが世間一般層の
レベルである。・・しかし、それでは、他人の意見に簡単に
流されてしまうし、世の中には、特定の商品を売る為の
意図的な「情報操作」は、いくらでも存在しているから、
一般層は、そういうものに簡単に騙されてしまうのだ。
例えば、ごく普通のアナログ的構造のイヤホンの新製品を
「これはハイレゾ対応だ」と言えば、従来の数倍の価格と
なる。だが、実際に比較試聴してみれば、ずっと安価な
良く出来たイヤホンよりも音が悪い場合も多々ある・・
私はそういう不条理な製品は絶対に購入しないが、世間では、
「やはりハイレゾ対応は高いだけの事はある、ちょっと違うな」
などと言って、無駄な出費を自身で納得してしまう訳だ。
かなり馬鹿馬鹿しい話だが、近年では、私も「そういう風に
騙される人が沢山居るから、世の中は上手く廻っている」
と思って、憤慨しないようにしている。

APO仕様の望遠ズームは、描写力的に、なかなか悪く無い。
現代においては二束三文の中古相場となっている事が多く、
中古店のジャンクコーナー等で見かけたら、試しに買って
みるのも良いであろう。 恐ろしくコスパが良い為、
「高価なレンズって、いったい何故必要なのか?」
という疑問が沸いてくるかも知れない。まあでも、そうした
価値感覚のスケールを持つ事が非常に重要な事だと思う。
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では、次のシステム。

(発売時定価 50,000円)
カメラは、PENTAX Q (1/2.3型機)
本シリーズでは未紹介であるが、「特殊レンズ第1回記事、
マシンビジョン特集」で、チラリと紹介している。
発売年不明、恐らくは2000年代のマシンビジョン(FA)
用低歪曲広角レンズであり、近接撮影のみが可能だが、
中遠距離撮影時には、絞り込んで被写界深度で撮る。
何cmまで寄れるか?等は良くわからない、レンズには
センサー換算倍率が書かれていて、一般写真用レンズ
のように、何m、などの距離目盛(指標)は無い。
それに、撮影倍率もセンサーサイズに依存する為、
そのスペックを書いても無意味であろう。
6.5mmの広角気味の焦点距離で、1/2型以下のCマウント
対応、初期メガピクセル対応のMF単焦点手動絞りレンズだ。
開放F値は撮影距離により変動しF2.2~F2.4程度となる。
(=近接露光(露出)倍数が掛るからだ)

しだすと際限なく記事文字数を消費してしまうし、
非常に専門的な分野であり、写真用レンズやカメラの
世界との接点も殆ど無い。
もし興味があるならば、上記、特殊レンズ第1回記事や
匠の用語辞典第3回記事に詳しいが、専門的な用語や
概念や計算式ばかりで、一般ユーザー層では難解すぎる
内容かも知れない。
さらに言えば、一般ユーザーではマシンビジョン用レンズ
を入手(購入)する事もできない。これらの購入には
通常では「法人名義」で代理店を通すしか無いのだ。
(この事は、この業界における慣例だ)
私が多数のマシンビジョン用レンズを所有しているのは
あの手、この手で、その業界に頼み込んで入手している
次第である。
そして、仮に入手できたとしても、レンズを装着する
カメラシステムは限られているし、それよりも何よりも
問題なのは、その限られたシステムにおいては、撮影を
する事自体が、かなり難しい事だ。
特にPENTAX Qシステムを使った場合は、ピント距離が
まるで不明になる。(注:ここには様々な理由がある)
加えて、かろうじて写せたとしても、普通の写真のように
撮る事は困難だ。例えば、マシンビジョン用レンズは
いずれもボケ質に対する配慮は皆無に近いという特性があり、
つまり普通に背景をボカしても、その雰囲気やボケ質は、
写真としての感覚からは、かなり異端に感じる事だろう。
また、正しい使い方をしなければ、まともに解像感を
得たり、被写体形状が正しく写る保証すらない。
(注:電子シャッター使用となるからだ)

点があるが、それはまあ、難しいシステムを、あれこれと
工夫して撮る事に興味を持つような・・ 言ってみれば
「テクニカル・マニア」のような志向性があるからだ。
でもまあ、これもまた一般的なカメラマニアの志向性とは
異なる領域の話であろう。
しかし、一般層が想像するような「マニア像」という
ものがあると思う。つまり、有名でレアで高価なもの等を
集めたがるような風潮であるが、それもまた、私の定義
する「マニア道」とは、かけ離れた概念のイメージだ。
これについて書き出すと非常に長くなる、様々な記事
でも書いているが、例えば「匠の用語辞典第17回記事」
などにも、「マニア道」についての詳細を書いている。

のだが、特に書くべき内容も殆ど無いし、写りが良いとか
悪いとか、あるいは長所短所を書いても意味が無いであろう、
「絶対に」と言っていい程、一般カメラユーザーはもとより
マニア層ですらも欲しいとは思わないレンズであるからだ。
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では、今回ラストのシステム。

(中古購入価格 44,000円)(以下、A70/2.8)
カメラは、SONY α6000 (APS-C機)
2018年に発売された、フルサイズ対応AF等倍マクロ。
Art Lineのラインナップとなるが、他のArt Line
レンズで一般的なHSM(超音波モーター)仕様では無い。
また、Art Lineレンズには、手ブレ補正が内蔵されて
いない。(が、その硬派なコンセプトが気に入っている)
やや特殊なモーターの仕様の為、NIKON(F)マウント版
は発売されておらず、EOS(EF)、SIGMA(SA)、および
SONY E(FE)マウント版のみの発売である。
(追記:ミラーレスLマウント版が追加発売されている)

どうやら、旧製品 SIGMA MACRO 70mm/f2.8 EX DG
の時代に、「デジカメWatch」の紹介記事でライターに
より、その名称が使われた記録があるのだが、その後、
マニア層において、その名称が定着していたとは聞かない。
(さらに古い時代、TOKINA 90mm/F2.5 Macro →後日紹介
にも、同様に「カミソリマクロ」の異名が与えられた記録
もある、まあつまり、比較的「普遍的」な呼び方だ)
まあ、今回の新製品で、その通称を用いた事は、単なる
「キャッチコピー」の類だとは思うが、それでも本レンズや
旧版レンズの特性を良く言い表している呼称であろう。
なお、旧製品の2006年版のマクロの正式名称だが、
「SIGMA MACRO 70mm F2.8 EX DG」で良い、とは思う
のだが、どうもはっきりしない。本記事では、たまたま
SIGMA製のレンズが3本紹介されているが、上の方で前述
したように、SIGMAのレンズ上に書かれている型番文字は
順不同であり、その旧版70マクロ本体にも、EXの名称は
書かれていない。また型番のMACROの位置も、新版は
最後だし、旧版は最初(?)であって、さらには、旧版で
AFの型番が入るか入らないか? など、結局、レンズの
正式名称が良くわからないのだ。
実際のところ「名前など、どうでも良い」とも言えるかも
知れないのだが、ちょっと困った事があり、旧版70マクロ
の事は、これまで他記事では「レア品で中古入手困難」
と書いてきたかも知れないが、近年、やっと市場に出てきた
ものを入手する事が出来たのだ(後日紹介予定)
これで新旧70mmカミソリマクロが手元に揃った訳だが、
これらをどう区別するか? まあ、新版はA70/2.8、
旧版はEX70/2.8と省略して記載する事にしようか・・
それと、正式な型番名称が不明であると、WEB等での情報
検索性が低下する(=見つからない)、という課題は、
ユーザー側のみならず、メーカー側にとっても不利であろう。
(まあ、そうだからか? 近年のArt Lineレンズでは
型番は、わりとシンプル、かつ明瞭につけられている)

想像したような「カリカリ・マクロ」では無く、一般的な、
良く写るマクロレンズである。
(なお、本記事では旧版との比較はやめておき、それは
旧版の紹介記事に譲るとしよう)
「カリカリ・マクロ」(匠の用語辞典第5回記事参照)
という特性を持つマクロも何本か所有しているのであるが
元々、現代のSIGMAのラインナップ上においては、Art Line
に属するものは、カリカリ描写は与えられておらず、むしろ
コンテンポラリー(Contemporary Line)のレンズ群の方が
輪郭がキツいカリカリ描写が強いように感じてしまう。
まあ、輪郭を強くした描写の方が、コンテンポラリーの
主力ユーザー層である初級中級者に、「良く写るレンズだ」
という勘違い(錯覚)を与え易いから、あえてそういう特性
になるように設計されているのだろうと思う。
本レンズは一応は Art Lineである為(注:Art Lineでは
初のマクロとなる)、そうしたビギナー層向けの特性は
与えられてはいない、という事だ。
(=上級者や職業写真家層は、撮影した写真は必ずレタッチ
して用いるので、高級レンズは、編集を前提に、出来るだけ
ニュートラルな特性を持たせる必要があるからだ)
じゃあ、「カミソリマクロ」とは何ぞや? という話に
戻ってしまうのだが、まあ結局、良くわからない(汗)
やはり、単なる「キャッチコピー」とでも思っておく方が
無難だろうと思う。
マクロレンズは数十本所有しているが、たいていのマクロ
は良く写り、別に本A70/2.8だけがスペシャル(特別)な
描写力を持つレンズ、という訳でも無いのだ。

マクロアポランター65mm/F2(本シリーズ第10回記事)
と思うかも知れないが、両者はまるで別のレンズである。
例えば、単純な話だが、
本A70/2.8は、AFの等倍マクロであり、解像力重視、
MAP65/2は、MFの1/2倍マクロであり、コントラスト重視だ。
おまけに価格(定価)も、MAP65/2が2倍も高価である。
写りも、まるで違う印象となるので、スペックが似ている
という理由だけで、両者の比較をしてはならないと思う。
実は私も当初は、既にSONY Eマウント用にMAP65/2を
所有していたので、同じEマウントで、焦点距離が5mm
異なるたけの本A70/2.8を購入する事には抵抗があり、
本A70/2.8は、EOS(EF)版を探していたのだが、そちらの
中古がなかなか出て来ず、先に出たSONY E版を購入して
しまったのだが、逆に、この状況で同じ母艦で、両レンズ
を使える事になったので、両者の設計コンセプト上の差異が
良くわかるようになった、とも言える。
さて、本レンズの弱点であるが、わけのわからないモーター
の仕様となっている事だ。SONY E版はカメラの電源OFF時
に、なんとか自動的にレンズの繰り出しが収納位置まで
復帰するのだが、EOS(EF)版では、それが無理な場合が
あり、レンズを(無限遠撮影またはMFで)引っ込めてから
EOSの電源をOFFしないと、レンズが伸びっぱなしで、
それを手動で引っ込める操作が出来ないケースがある。
(注:EOSデジタル一眼レフの一部には、カスタム設定で
「電源OFF時のレンズ収納」を可能とするものもある。
ただし、この機能は全てのEOS機に搭載されてはいない)
まあ、まるで4/3(フォーサーズ)用のAFレンズのような
仕様であり、レンズ側に電源を供給してあげない限り
モーターが廻らず、MFもできないのだ。
しかし、CANON純正レンズでも、例えばSTMレンズ
(例:EF40/2.8STM、本シリーズ第10回記事)において
電源を供給しないとピントリングが動かずMFが出来ない
のであるが・・(その結果、STMレンズは、機械式マウント
アダプターでは他社ミラーレス機などで使用できない)
同じようなものとは言え、小型のSTMレンズならば、レンズ
鏡筒が伸びっぱなしで電源をOFFしても邪魔にはならないが
本A70/2.8はマクロである、レンズが伸びたままでは
カメラバッグに仕舞う事も出来ず、また電源をONして
収納位置まで引っ込めてからEOSの電源をOFFしないと
ならない。(注:前述のように、機種による)
まあ、EOS機ではその問題がある事がわかっていたので、
購入前から非常に気にはなっていがた、まあたまたま
SONY Eマウント版を選択できたので、むしろ良かった。
なお、このモーターの不思議な仕様の問題があるからか、
本A70/2.8は、ニコンFマウント版は発売されておらず、
確か「作る事ができない」という話も聞いた事がある。

機能が効かない、α7(2013年)でも同様であるが、何故か
古いNEX-7(2012年)では動作する。
(追記:本レンズのファームウェアを2018年末のVer.02
へ更新する事で、この不具合は解消された)
ちょっとクセのあるレンズであるが、まあ総合的な
描写力は悪くなく、しかも、Art Lineレンズとしては
他の主力Artレンズの半額以下程度と安価である。
描写力の面でのコスパはなかなか良い現代的マクロで
あるので、中級層やマニア層に対してはオススメだ。
ただし、他にも代替できるマクロレンズもあれこれと多い
事があるのと、各マクロには微細な長所・短所があるので
利用者の用途とか志向性やらで、本来、推奨できるマクロ
は個々のユーザーで異なる、という事は念の為述べておく。
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さて、今回の記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。