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特殊レンズ・スーパーマニアックス(18)ミラーレンズ

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズをカテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では、「反射鏡」を用いたミラー(レンズ)を
4本紹介しよう。

なお、「ミラーレンズ」は、主要な光学系は反射鏡であり
光学レンズは接眼部に少しあるだけか、原始的な物では
レンズが無いケースもあるかも知れず、よって厳密には
単に「ミラー」と呼ぶのが良さそうだが、写真用途の製品は
光学系の一部にレンズを使用するケースが全てであろう。
本記事では、便宜上、これを「レンズ」と呼ぶ事もある。

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まず最初のシステム
_c0032138_17134901.jpg
ミラーは、TAMRON SP 500mm/f8 (Model 55B)
(中古購入価格 23,000円)(以下SP500/8)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)

1979年発売の、恐らくタムロン初となる超望遠ミラー。
この時代1980年代には、レンズサードパーティや海外製
でも、ミラー(レンズ)がいくつか存在していたが、
どれが元祖(世界初)だったかは調べていない。
_c0032138_17134968.jpg
元々ミラーレンズは「反射望遠鏡」の原理を元にしており、
それは17世紀の「アイザック・ニュートン」等による
発明として、とても有名だ。その歴史的偉業を考えると、
「カメラ用のミラーレンズは何処が最初か?」等の話は、
あまり歴史的な意味は無い。

・・とは言うものの、本SP500/8(55B)型だが、実は
後継の55BB型(1983)を、先に所有していたのだが、
それは知人に譲渡して、後年に本55B型を買いなおした。
両者の光学系は同一と思われたし、そうであれば、恐らくは
TAMRON初、そして場合により他のミラーレンズよりも先行
していたとも思われる55B型の方が「歴史的価値が高い」と
思った次第だ。

本ミラーは、TAMRONでは、高描写力を示す「SP」型番が
付いている、しかし、実際にこのミラーを使うと、そこまでの
高描写力は感じられないし、それどころか、解像力が低く、
画質への不満を感じる。
_c0032138_17134902.jpg
SP銘の理由の推察だが、このミラーの発売年の1979年には、
TAMRONでは、大きな製品ラインナップの変革があった。
それは、アダプトール2の採用、モデル名の整理、SP型番の導入
等であるが、最初期の「SP」には、現代のように「高画質」
という意味はあまり持たせていなかったのではなかろうか?

「他に比べて、やや特殊な(スペシャルな)仕様」という意味
が強かったと思われ、本レンズの他にも、例えば超広角17mm
にも「SP」銘が与えられているが、そのレンズも、たいした写り
は得られない(ミラーレス・マニアックス第8回記事参照)
その後、1980年代初頭には、多数の「SP」を冠したレンズが
発売され、この時代は「SPの大安売り」という印象すらある。

まあでも、現代の「TAMRON SP」は、確かに高画質を示す
指標となっていて、SP銘がついていれば、いずれのレンズも
描写力についての不満は無い。ただしそれは「高付加価値」
戦略の一環でもあるから、「SPのついているレンズは高価」な
(高価でも売れる、メーカーの利益が大きい)商品となる。

まあ、私は、「高描写力か否かは、ユーザーが決める事で、
メーカー側から押し付けられる必要は無い」という考え方で
あるので、こういう高付加価値型番とかは、あまり好きでは
無いが、それでも、コスパを意識しながら適宜中古で購入する
などで、SP型番のレンズは多数所有していて、近代のものでは
どれも写りは満足しており、機嫌よく使っている。
(本シリーズ第8回「TAMRON SP編」記事等を参照)

さて、本SP500/8(55B)の特徴だ。
まず、小型軽量である事、ここが超望遠ミラーの最大の特徴
であり、例えば同じ500/8のスペックで、屈折型望遠鏡を
ベースとした設計では、とんでもなく大きく長くなって
しまう事もある。
(参考:以下は韓国製と思われる、望遠鏡転用型の写真用
レンズ、これで本ミラーと同じ500mm/F8である)
_c0032138_17135834.jpg
本55Bの他の特徴であるが、絞りは無く、F8固定だ、
このあたりは、他のミラーレンズでも概ね同様であり、
だいたい400~600mmの焦点距離のミラーがF8程度、
それより長い800~1000mmミラーだと、F11~F16程度、
焦点距離が短い250~350mmミラーだと、F5.6~F6.3程度だ。

絞りが調整できず、ND等のフィルターも装着が困難か不能な
機種もあり、銀塩時代には非常に使い難かったのであるが、
現代のデジタル機では、ISO感度の調整や内蔵手ブレ補正
等により、だいぶ使い易くなった。

そしてMFであるが、ここは、ミノルタ製AFミラー等、ごく
限られた機種以外は全てMFなので、あまり不満は感じない。

ただ、ガラスレンズに比べて、解像力が低い場合が多いミラー
レンズではピントの山がわかりにくく、加えてガラスレンズ
のようなピント位置(距離)の変化の感覚でも無い。

特に無限遠付近でのピント変化の挙動が異なり、ガラスレンズ
では遠距離はピント変化幅も狭く、「だいたいこのあたり」等と
ラフに合わせても大丈夫だし、遠距離で被写界深度が深まる事も
あいまって使い易いが、ミラーレンズの場合では遠距離付近でも
ピント合わせがシビアだ。また絞りが無い為に被写界深度の調整が
(デジタルズームを上手く使わない限り)殆ど不可能であるし、
撮影距離に応じた被写界深度の変化も良くわからず、
ガラスレンズでの撮影技能や経験則が転用しずらい。

次いで、本SP500/8特有の特徴だが、最短撮影距離が1.7mと
500mmレンズの標準的な値(焦点距離10倍則で5m)よりも
だいぶ短い。この為「超望遠マクロ」的な使用方法が出来る。


この特徴を活かすには、フルサイズ機では無く、APS-C機や
μ4/3機を用いる。その場合の最大撮影倍率は、およそ
1/2倍~2/3倍(いずれもフルサイズ換算)となり、本格的な
マクロレンズ並みとなる。
本記事ではAPS-C機のFUJI X-T1を使用しているが、これで
約1/2倍マクロ仕様だ。

ただ、そうした場合、単焦点の750mm~1000mmという画角
仕様は、被写体を見つける事が大変困難になり、上級者向けだ。
加えて、換算焦点距離1000mm以上ともなると、カメラを向けた
ところに狙った被写体はまず無く、ぴったりとターゲットを
捉えるには、「ゴルゴ13」ばりの高いスキルが要求される。

それと、マクロと言っても、WD(撮影距離)は1.7mと極めて
遠い、目の前にある小さな被写体ならば、見つけようがあるが
2m近くも先にある小さい被写体は、そう簡単には見つからない、
ここも撮影の難易度を上げる要因となる。
_c0032138_17140291.jpg
また、「リングボケ」の発生については、長所とも短所とも
言える、ここは後述しよう。

総括だが、本ミラー55B又は後継機の55BB型は、2000年代
頃の中古市場では1万円台前半の安価な相場で入手できて、

「手軽に購入できる超望遠レンズ(ミラー)」として、そこそこ
存在価値があった。アダプトール2型であるので、どんなMF
マウントでも使えるし、さらに2010年代のミラーレス時代では、
マウントアダプターの種類が多く、組み合わせの自由は高い。

ただし、近年稀に本ミラーは、その希少価値から「プレミアム
相場」になっていて、数万円という高値での販売も見た事がある、
本ミラーに関しては、購入タイミングが悪く若干高価であったが、
本ミラーの性能と発売年からすれば、適正相場は1万円台前半
迄であり、プレミアム価格のものまでは買う必要は無いと思う。

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では、次のミラーシステム
_c0032138_17141289.jpg
ミラーは、TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
(中古購入価格 18,000円)(以下、MF300/6.3)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)

2012年発売の新鋭ミラー(レンズ)である。
μ4/3機専用であり、換算600mm、電子接点にも対応している。
DMC-GX7との組み合わせでは、焦点距離を手動入力する必要も
無く、そのまま内蔵手ブレ補正機能が使用可能だ。
_c0032138_17141268.jpg
現代では、一部のサードパーティ製ミラーを除き、ミラーレンズ
の発売は皆無に近い状態であるので、非常に希少な新製品だ。

現代では、何故ミラーレンズの発売が無くなってしまったのか?
いや、逆に言えば、何故昔はミラーレンズを売っていたのか?
という点だが・・
銀塩時代(1970年代~1990年代)においては、まず、
「望遠レンズへの憧れ」というユーザーニーズが、とても
強かった。
「せっかくレンズ交換ができる一眼レフを買ったのだから、
 望遠が欲しい」、と思うビギナー層は、とても多い。
だが、メーカー純正レンズでは、300mmを超えたあたりから、
「大きく重く高価」という三重苦がのしかかり、初級中級層
の手におえるシロモノでは無い。

地上用望遠鏡をベースにした、安価で軽量な超望遠レンズは
存在したが、「とてつもなく大きい」という課題もあった。
(前述の韓国製500mmレンズ写真を参照)
そんな中、小型軽量でさほど価格も高くない「ミラーレンズ」
はユーザー層に受け入れられたのであろう。

望遠への憧れは、カメラユーザーのみならず、一般層でも
同様だ。この時代(1970年代)頃では、観光地や高層ビル等に、
有料の望遠鏡(コインを入れると数分間、景色が見れる)が
良くあった事からも、うかがい知れるであろう。
現代、そうした設備は残っている場合もあるが、一般客は、
あまりそれを見ようとはしない。

また、銀塩時代の中級アマチュア層等が、望遠レンズを三脚に
備え付けていると、関係ない一般人が「ちょっと見せてください」
などと言う事も良くあった。
こうした様子は、現代ではまず見かけないが、カメラマン側に
その心理(優越感)だけは残っていて、殆ど何も撮影しないのに、
丸1日、望遠レンズを三脚につけて、誰かが話しかけてくれるのを
待っているシニア層等は、依然、どこへ行っても良く見かける。
(注:見かけても話かけるべきでは無い。延々と、機材自慢と
世間話に付き合わされる・汗 →実例があるので後述する)

で、銀塩MF時代であれば、ミラーレンズはそこそこ売れていた、
しかし、1990年代のAF銀塩時代、そして2000年代からのデジタル
時代となると、「MFである」という点だけでも、ビギナー層は
撮影不能になってしまう。「カメラマンのスキルが低下した」と
嘆くよりも、もう時代や文化が違うのだから、やむを得ない。

文化のみならず、機材的にも銀塩時代のMF技法を踏襲する事が
困難であり、現代のミラーレス機用の大半のレンズは、MFで
撮る事は可能だが、MF技法が使える前提仕様になっていない。
これでは、現代の上級層や職業写真家であっても、もうMFで
撮るスキルは持っていない(それを高める術が無い)状態だ。

また、望遠に対する憧れもだいぶ減ってきた。
例えば、コンパクトカメラであるが、銀塩時代には200mmの
焦点距離がついただけで、センセーショナルなニュースとなり
そうした機体は良く売れた。(勿論、ビギナー層では手ブレに
より、実用上では使えるものでは無かった)

現代でも、初級層での望遠への憧れはまだあるので、スマホ
等に押されて厳しいデジタル・コンパクト機の市場では、
「ロングズ-ム機」と一般に呼ばれる望遠端焦点距離を強化した
モデルが存在し、望遠端は700mm、1000mm、2000mmと
順次伸び、いまや3000mmという機種すら存在する。

ただまあ、これらの超々望遠撮影が実用的かどうかは疑問だ、
ロングズーム機は私も持っているが、実用範囲を意識して
600mm程度までに留めている(注:デジタル拡大で1200mm)
また、ミラーレス機等でのデジタル拡大機能を駆使すれば、
簡単に超々望遠画角は得られ、最大8000mmあたりまでは
可能だ。
だが、私の様々な実験の結果では、手ブレ補正機能は
800mmを超えるあたりから精度不足で殆ど効かず、それが
あっても無くても1500mmを超えると手持ち撮影は不可能だ。

また、1000mmを超えると、前述の「ゴルゴ13」状態となり、
ターゲット(被写体)をファインダー内に収める事自体が
非常に困難となる。

さて、でも、超望遠が身近になってきた為、望遠に対する
ニーズは昔より減ってきている、本当にそれが必要な撮影
シーンは、野鳥撮影、屋外遠距離スポーツ、遠距離イベント
等と、極めて限られている為、一般初級層では超望遠の必要性
が余り無い。事実、中古市場には、そうして、初級層が欲しく
て買ったものの、持て余して売却してしまった、と思われる

600mm級超望遠ズームが、極めて多数流通している。

動体撮影が多いと思われる遠距離撮影においては、AFが
間に合う保証は無い。特に野鳥などでは、いったん飛んだら
AFで合わせるのは、どんなにAF性能が優れた高級一眼レフでも
まず不可能だ、だから実際にはMFでも十分なのだが、
前述のように現代のカメラユーザーは、初級層から上級層まで
もう誰もMFをちゃんと使いこなせない。

よって、MFのミラーレンズが現代において受け入れられる事は
まずなく、その結果として製品展開も非常に少ない訳だ。
_c0032138_17141704.jpg
さて、余談がとても長くなった。
本MF300/6.3であるが、LUMIX DMC-GX7との組み合わせで
最大のパフォーマンスを発揮できる。
単焦点600mmではあるが、ごく簡単な操作でデジタルテレコン
を入れて、1200mm、2400mm相当の画角に変えられる。

内蔵手ブレ補正は一応有効だが、1200mmでは、既に精度が
怪しく、あまりその機能に頼らない方が良い。
(以前は、この場合、手動で焦点距離設定を延ばして使って
いた、その後の詳細な検証では、その必然性は無い模様であり、
そのままの設定で手ブレ補正が効くのだが、やはり精度は厳しい)

さて、手ブレ補正に頼らない、というと、ISO感度を高める
事によるシャッター速度の高速化だ、これについては、手動
ISOで適宜、1/500秒程度(注:撮影者のスキルによる)を
キープするのが賢明だ。

そしてAUTO-ISOの場合だが、DMC-GX7では、低速限界を
手動設定する事ができない。ここは不満であるが、幸いにして
DMC-GX7では、通常レンズ(標準、広角等)では、1/125秒、
電子接点付き望遠レンズでは1/500秒に自動で切り替わる。
であれば、本MF300/6.3であれば、AUTO-ISOのままで十分だ。

ただし、ここは前述ようにスキル次第だ、それに暗所に向ける
とAUTO-ISOが頭打ちして、急激にシャッター速度が低下する、
その際に、どのようにして手ブレや被写体ブレを防ぐかは、
中上級者クラスの知識と技能が必要だ。

なお、オリンパスμ4/3機の一部では、手ブレ補正機能に
優れたものもあるが、パナ機と同様に、多くの機種では、
AUTO-ISOの低速限界の変更が出来ない。(注:OLYMPUS
PEN-F 2016年、以降の一部の高級機では可能)
その為、高性能な手ブレ補正機能に頼りすぎると、むしろ
逆に手ブレしてしまう場合もあるので、ここでも中級者以上
のスキルが必要だ。
_c0032138_17141742.jpg
本MF300/6.3は、最短撮影距離80cm(撮影倍率1/2倍)と
極めて優秀であり、超望遠マクロとして実用範囲内だ。
近接での被写界深度は浅くなるが、DMC-GX7など、ピーキング
性能に優れた機体を用いれば問題は無い。
なお、安直にMFアシスト機能をONしてしまうと、自動拡大や
距離目盛などが、色々と出てきてしまう。MF操作オンリーで
あれば、これらは多くの場合、不用であるので、カメラの
設定を細かく、自身の好みや撮影技法に合わせて調整する
必要があるが、まあ、ここは上級者向けの話だ。

描写力もミラー(レンズ)にしては優秀な方であり、
銀塩時代の製品とは一線を画す。
価格も安価で、中古であれば1万円台後半から入手可能だ。

これらの特徴をもって、ミラーレス・マニアックス名玉編では
300数十本のレンズの中から第13位に、ハイコスパ名玉編
では第12位にランクインした、高コスパの名玉である。
初級層には、あまり推奨が出来ないレンズであるが、中上級層の
μ4/3ユーザーであれば必携、いや、むしろこのレンズを
使う為に、新規にμ4/3機を購入しても惜しくは無い位だ。

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では、3本目のミラー
_c0032138_17142963.jpg
レンズは、MINOLTA RF ROKKOR 250mm/f5.6
(中古購入価格 35,000円)(以下、RF250/5.6)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)

恐らくは1980年頃の発売と思われる小型軽量ミラーレンズ。
MD型の時代の製品であるが、絞りが無いので、カメラ側の
露出モードを自由に使える訳ではなく、また、現代に
おいてはミラーレス機でアダプターで使うから、MD型か否か
はどうでも良い。
_c0032138_17142997.jpg
内部は、反射鏡と光学レンズのハイブリッド型だと思う。
つまり反射式望遠鏡のように接眼部はレンズの構造という
事だ。実際に後玉を見ると、後群のレンズ構成が見える、
しかし、もはや情報が殆ど無く、良く分からない。

なお、天体望遠鏡等では、無限遠からの光を集めるという
(アフォーカル)光学系であり、対物レンズや反射鏡の
焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割って「倍率」を
求めるのだが、写真用レンズでは、こういう考え方はしない。
あくまで焦点距離があるのみであり、倍率はスペックに
無いのだが、あえて「視野角」からの概算を行うので
あれば、焦点距離を50mmで割れば良く、すると500mmの
ミラーでは、およそ10倍の視野倍率となる。

さて、本ミラーは銀塩時代から使っている物だが、
こうした小型軽量のミラーは、海外製を含む他社でも、
300mm級、350mm級など、色々あったと思うが、どうも
あまり食指が動かなかった。

その理由は「あまり望遠では無い」からである。
通常のガラスレンズでも200~400mm級は多数存在している。
ビギナー層には憧れかも知れないが、マニア層であれば、
それらは所有している。システムの重さとか、手ブレとかも、
撮影者のスキル次第でなんとでもなる。であれば、この手の
250~350mm級ミラーは、中途半端な仕様で、あまり必要性が
無かった、という訳だ。
それと、このクラスのミラーはレア品であり、中古相場が
高いのも課題であった。

だが、その状況は、2010年代、ミラーレス時代に入って大きく
変わる。小型軽量のミラーレス機、特にμ4/3機との組み合わせで
本レンズは、500mm単焦点、場合によりデジタル拡大機能を
用いて、1000mm級迄の、かなり使い勝手が良い超望遠システム
を得る事ができる。おまけに手ブレ補正やら、MFアシストやら
高感度やら、エフェクト等も使いたい放題だ。
_c0032138_17144164.jpg
本レンズの課題は色々とある、描写力はたいした事が無いし
最短撮影距離は2.5mとかなり長い、勿論F値は固定で
被写界深度の調整も殆どできない。おまけに高価だ。

F値固定のミラーで、被写界深度を調整するやり方だが、
被写界深度を深めようと思った場合、撮影位置をバックして
その分、デジタルズーム機能を用いて、被写体を同等の大きさ
になるまで拡大する、これで撮影距離が伸びているので、
見かけ上の被写界深度が深まる訳だ。
トリミングと同等ではあるが、撮影時にこれができるので、
心情面でのメリットがある(すなわち撮影時に「こう撮りたい」
と思った通りに出来る。PCでの後編集では、こうはいかない)

なお、この用法はデジタルズームの微調整機能に優れた
ミラーレス機でないと無理で、それはμ4/3機では、DMC-G5と
DMC-G6の2機種しか無い(他にAPS-C機では、SONY NEXの
後期型や、α5000/6000系もある)



次善の機種では、デジタルズーム倍率をダイヤルやキーで
調整可能なパナソンック後期Gシリーズ(概ね2013年以降)
もあるが、今回使用のOM-D E-M1(2013)では、その用法は
無理なので念の為。また、α7/9系のフルサイズ機では、
本RF250/5.6では、あまり望遠画角にはならず、FUJI X系
では、そもそもデジタル拡大機能が搭載されていない。
_c0032138_17144179.jpg
総括だが、あまり本RF250/5.6特有のメリットは感じられず
中古購入価格もかなり高かったし、現代ではさらにレア品に
よるプレミアム相場となっていると思う。
しかし、高い価格を甘んじて買う程の価値は無いので、
あくまで安い個体を偶然見かけた場合のみの判断となるだろう。
(注:この時代のミラーは、蒸着が経年劣化で剥がれやすく、
そのたりの「目利き」も必要なので、中古購入は簡単では無い)

実用上の価値も殆ど無い。あえて特殊例をあげれば、前述の、
「高価な超望遠レンズを三脚に据え付けて、何を撮るでもなく、
 誰かが話しかけるのを待っているビギナー層の人達」に
たまたま出くわしてしまった場合だ(汗)これは非常にまずい、
下手をすれば「機材自慢」に延々と付き合わされてしまう(汗)


まあ、恐らく野鳥を待っているのであろう、しかしながら、
三脚での狭い望遠視界に、たまたま野鳥が来る筈もない、だから
丸一日、写真を撮るでもなく、暇を持て余している訳だ。

そんな時に、先制パンチを繰り出し、
匠「おたくのレンズは? ふ~ん、600mmですか。
  高くて良いレンズなのでしょう?いい写真撮ってくださいね。
  ところで、こちらのシステムは、こんなに小型だけど
  これで1000mm/F5.6なんですよ(注:テレコン2倍モード)
  勿論、振り回しも自由自在・・ あっ、鳥が飛んでいる!」

速やかにカメラの電源を入れて、カメラを構えながらも指の感触で
ピントリングを無限遠にセットする、フレームに飛ぶ鳥を捉えたら
カシャカシャカシャ・・と、鳥を追いながらのMF高速連写技法を
して見せれば、これは「超望遠+三脚+AF」では、手も足も出ない
撮り方だ、「ビギナー三脚族もびっくり」の、目を丸くする
「想像だにしていなかった」撮影技法であろう。

匠「ほら、なんとか撮れましたよ」とモニター画面を見せ、
彼らは機材自慢をする暇もなく、驚いている間に、
匠「では、皆さん、頑張って撮ってくださいね」と、何事もなく、
その場から立ち去る事が出来て、一安心だ(笑)
_c0032138_17144181.jpg
ちなみに、これは架空の話では無く実話だ。
実際にこういう事があった数時間後に、たまたま、その同じ
シニアのグループ内の一人(若手だ)に、少し離れた場所で
出くわした、彼は三脚をたたんで手持ちで撮っていた模様で・・

匠「どうです? いい写真撮れましたか?」と聞くと。
初「あれからずっと、スズメを狙って連写していました・笑」
との事だ、つまり、「ハンドリング性能の重要性」を学んだ、
という状態であろう、まあ良いレクチャーだったかも知れない。
恐らくだが、重量級望遠を三脚に付けていた他の人達は、その場
から1歩も動けず、きっと写真も何も撮れていなかった事だろう・・

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では、今回ラストのシステム
_c0032138_17145115.jpg
ミラーは、KENKO ミラーレンズ 400mm/f8
(中古購入価格 13,000円)(以下、KENKO400/8)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

詳細は不明だが、2010年前後(2012年?)頃の発売と
思われる小型軽量のミラーレンズ。Tマウントを採用していて
各種のマウントに交換可能だが、勿論MFであり、電子接点も無い。
_c0032138_17145104.jpg
現在ではこの機種は生産完了となっている模様であるが、
これ以前にも、500mmミラーが発売されていたし、これ以降も
Ⅱ型となった後継機が出ている。400mm版に関しては後継型も
光学系には大きな変更は無い模様なので、初期型でも十分だ。

KENKOは銀塩時代の昔からミラーレンズを多数発売している
いずれかの時代のものは、マニア必携であろう。
なお、前述のTOKINA 300/6.3も、まあKENKOの傘下での
発売であり、KENKOはミラーレンズのノウハウは強いメーカーだ。
_c0032138_17145759.jpg
さて、本KENKO400/8だが、最短撮影距離1.15mは、かなり
短く、フルサイズ換算で、1/2.5倍の撮影倍率が得られる。
他社500mm級ミラーほど重くなく、500gは軽量の類だ。
ただし、これをμ4/3のミラーレス機に装着すると、800mm
換算の画角は、少々やりすぎな感覚もある、以前は、その用法
が主であったが、長すぎて使い難い為、近年はフルサイズ機で
400mm(+適宜デジタルズーム)の使用法が多い。

小型軽量の超望遠システムで、ハンドリング性能が良く、
おまけに安価であるから、そういう点でも過酷な撮影環境にも
向く、以前、真冬の雪混じりの雨の際に持ち出し、野鳥を
探して撮った事もあったが、故障等の心配もあまりいらない。
(現行品で安価だし、簡単に壊れそうな精密な構造でも無い)

メーカーのスペック表には2群6枚というレンズ構成が書かれて
いて、反射鏡のみの構成仕様では無いと思われるが、詳細は
良くわからない。まあ反射望遠鏡のように接眼部にレンズが
あるというハイブリッドな構成であったとしても、描写力は、
どうしても純粋な光学レンズに比べて一歩譲ってしまう。

ミラーレンズの特徴である「リングボケ」は勿論出る。
これに関しては、それを作画意図的に必要とするならば、
背景ボケを作り出し、そこに光源を入れればよいし、
それが不用な場合には、平面被写体で背景ボケを作らない
および背景に光源やハイライト(明るい)部分を入れなければ
良いので、リングボケの出現をコントロールする事は可能だ。
さらには中間的に、必要な量のリングボケを得る事も出来る。

まあ、リングボケは、長所とも短所とも言える特徴であるから、
これは利用者側で、しっかり制御して使う必要があるだろう。
(注1:ここは上級者向けの話だ。
 注2:リングボケの例は、上の項目「TOKINA MF300/6.3」
    の3枚目写真が顕著。また、本レンズの写真の2枚目でも
    少し出している。なお、下写真はリングボケでは無い)

_c0032138_17145793.jpg
また、本ミラーはレンズ前部にφ67mmの、ねじこみフィルター
が、加えてレンズ後部にもφ30.5mmの挿入式フィルターが
利用できる。
近年のミラーでは、前部フィルターがやっと利用可能となった
ので好ましい。銀塩時代のミラーは後部挿入式のみだったので、
使い勝手が悪かったのだ。

前部フィルターは、保護フィルター、晴天時等でのND
(スローシャッター用途)、PL、その他特殊効果、という
用途に適するが、まあ、こうした、ある意味、本格的な撮影には
使い難いミラーにおいては、それらを使う用途もあまり無い
かも知れない。PLを利用する事は画質的には意味はあるが、
最大で2段も暗くなるので、開放F16相当ともなれば、超晴天時
以外では使わない事が、手ブレ・被写体ブレ対策上では賢明だ。
_c0032138_17145761.jpg
その他、特に長所も無いが、現代においては、現行製品が
極めて希少なミラーレンズだ。
初級層においても、ミラーレンズの得失を理解する上でも
持っておいても悪く無い、なお新品価格はオープンであり、
時代や店舗によっても変化するとは思うが、だいたい2万円
前後で購入できるであろう。中古であれば、およそ半額の
1万円前後だ。この金額であれば、「教材」という意味でも
「小型軽量の実用望遠システム」という意味でも、さほど
大きな負担とは言えないであろう。

----
さて、今回の記事「ミラー(レンズ) 特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・


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