本シリーズでは、やや特殊な交換レンズをカテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では、「反射鏡」を用いたミラー(レンズ)を
4本紹介しよう。
なお、「ミラーレンズ」は、主要な光学系は反射鏡であり
光学レンズは接眼部に少しあるだけか、原始的な物では
レンズが無いケースもあるかも知れず、よって厳密には
単に「ミラー」と呼ぶのが良さそうだが、写真用途の製品は
光学系の一部にレンズを使用するケースが全てであろう。
本記事では、便宜上、これを「レンズ」と呼ぶ事もある。
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まず最初のシステム
![_c0032138_17134901.jpg]()
ミラーは、TAMRON SP 500mm/f8 (Model 55B)
(中古購入価格 23,000円)(以下SP500/8)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
1979年発売の、恐らくタムロン初となる超望遠ミラー。
この時代1980年代には、レンズサードパーティや海外製
でも、ミラー(レンズ)がいくつか存在していたが、
どれが元祖(世界初)だったかは調べていない。
![_c0032138_17134968.jpg]()
元々ミラーレンズは「反射望遠鏡」の原理を元にしており、
それは17世紀の「アイザック・ニュートン」等による
発明として、とても有名だ。その歴史的偉業を考えると、
「カメラ用のミラーレンズは何処が最初か?」等の話は、
あまり歴史的な意味は無い。
・・とは言うものの、本SP500/8(55B)型だが、実は
後継の55BB型(1983)を、先に所有していたのだが、
それは知人に譲渡して、後年に本55B型を買いなおした。
両者の光学系は同一と思われたし、そうであれば、恐らくは
TAMRON初、そして場合により他のミラーレンズよりも先行
していたとも思われる55B型の方が「歴史的価値が高い」と
思った次第だ。
本ミラーは、TAMRONでは、高描写力を示す「SP」型番が
付いている、しかし、実際にこのミラーを使うと、そこまでの
高描写力は感じられないし、それどころか、解像力が低く、
画質への不満を感じる。
![_c0032138_17134902.jpg]()
SP銘の理由の推察だが、このミラーの発売年の1979年には、
TAMRONでは、大きな製品ラインナップの変革があった。
それは、アダプトール2の採用、モデル名の整理、SP型番の導入
等であるが、最初期の「SP」には、現代のように「高画質」
という意味はあまり持たせていなかったのではなかろうか?
「他に比べて、やや特殊な(スペシャルな)仕様」という意味
が強かったと思われ、本レンズの他にも、例えば超広角17mm
にも「SP」銘が与えられているが、そのレンズも、たいした写り
は得られない(ミラーレス・マニアックス第8回記事参照)
その後、1980年代初頭には、多数の「SP」を冠したレンズが
発売され、この時代は「SPの大安売り」という印象すらある。
まあでも、現代の「TAMRON SP」は、確かに高画質を示す
指標となっていて、SP銘がついていれば、いずれのレンズも
描写力についての不満は無い。ただしそれは「高付加価値」
戦略の一環でもあるから、「SPのついているレンズは高価」な
(高価でも売れる、メーカーの利益が大きい)商品となる。
まあ、私は、「高描写力か否かは、ユーザーが決める事で、
メーカー側から押し付けられる必要は無い」という考え方で
あるので、こういう高付加価値型番とかは、あまり好きでは
無いが、それでも、コスパを意識しながら適宜中古で購入する
などで、SP型番のレンズは多数所有していて、近代のものでは
どれも写りは満足しており、機嫌よく使っている。
(本シリーズ第8回「TAMRON SP編」記事等を参照)
さて、本SP500/8(55B)の特徴だ。
まず、小型軽量である事、ここが超望遠ミラーの最大の特徴
であり、例えば同じ500/8のスペックで、屈折型望遠鏡を
ベースとした設計では、とんでもなく大きく長くなって
しまう事もある。
(参考:以下は韓国製と思われる、望遠鏡転用型の写真用
レンズ、これで本ミラーと同じ500mm/F8である)
![_c0032138_17135834.jpg]()
本55Bの他の特徴であるが、絞りは無く、F8固定だ、
このあたりは、他のミラーレンズでも概ね同様であり、
だいたい400~600mmの焦点距離のミラーがF8程度、
それより長い800~1000mmミラーだと、F11~F16程度、
焦点距離が短い250~350mmミラーだと、F5.6~F6.3程度だ。
絞りが調整できず、ND等のフィルターも装着が困難か不能な
機種もあり、銀塩時代には非常に使い難かったのであるが、
現代のデジタル機では、ISO感度の調整や内蔵手ブレ補正
等により、だいぶ使い易くなった。
そしてMFであるが、ここは、ミノルタ製AFミラー等、ごく
限られた機種以外は全てMFなので、あまり不満は感じない。
ただ、ガラスレンズに比べて、解像力が低い場合が多いミラー
レンズではピントの山がわかりにくく、加えてガラスレンズ
のようなピント位置(距離)の変化の感覚でも無い。
特に無限遠付近でのピント変化の挙動が異なり、ガラスレンズ
では遠距離はピント変化幅も狭く、「だいたいこのあたり」等と
ラフに合わせても大丈夫だし、遠距離で被写界深度が深まる事も
あいまって使い易いが、ミラーレンズの場合では遠距離付近でも
ピント合わせがシビアだ。また絞りが無い為に被写界深度の調整が
(デジタルズームを上手く使わない限り)殆ど不可能であるし、
撮影距離に応じた被写界深度の変化も良くわからず、
ガラスレンズでの撮影技能や経験則が転用しずらい。
次いで、本SP500/8特有の特徴だが、最短撮影距離が1.7mと
500mmレンズの標準的な値(焦点距離10倍則で5m)よりも
だいぶ短い。この為「超望遠マクロ」的な使用方法が出来る。
この特徴を活かすには、フルサイズ機では無く、APS-C機や
μ4/3機を用いる。その場合の最大撮影倍率は、およそ
1/2倍~2/3倍(いずれもフルサイズ換算)となり、本格的な
マクロレンズ並みとなる。
本記事ではAPS-C機のFUJI X-T1を使用しているが、これで
約1/2倍マクロ仕様だ。
ただ、そうした場合、単焦点の750mm~1000mmという画角
仕様は、被写体を見つける事が大変困難になり、上級者向けだ。
加えて、換算焦点距離1000mm以上ともなると、カメラを向けた
ところに狙った被写体はまず無く、ぴったりとターゲットを
捉えるには、「ゴルゴ13」ばりの高いスキルが要求される。
それと、マクロと言っても、WD(撮影距離)は1.7mと極めて
遠い、目の前にある小さな被写体ならば、見つけようがあるが
2m近くも先にある小さい被写体は、そう簡単には見つからない、
ここも撮影の難易度を上げる要因となる。
![_c0032138_17140291.jpg]()
また、「リングボケ」の発生については、長所とも短所とも
言える、ここは後述しよう。
総括だが、本ミラー55B又は後継機の55BB型は、2000年代
頃の中古市場では1万円台前半の安価な相場で入手できて、
「手軽に購入できる超望遠レンズ(ミラー)」として、そこそこ
存在価値があった。アダプトール2型であるので、どんなMF
マウントでも使えるし、さらに2010年代のミラーレス時代では、
マウントアダプターの種類が多く、組み合わせの自由は高い。
ただし、近年稀に本ミラーは、その希少価値から「プレミアム
相場」になっていて、数万円という高値での販売も見た事がある、
本ミラーに関しては、購入タイミングが悪く若干高価であったが、
本ミラーの性能と発売年からすれば、適正相場は1万円台前半
迄であり、プレミアム価格のものまでは買う必要は無いと思う。
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では、次のミラーシステム
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ミラーは、TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
(中古購入価格 18,000円)(以下、MF300/6.3)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売の新鋭ミラー(レンズ)である。
μ4/3機専用であり、換算600mm、電子接点にも対応している。
DMC-GX7との組み合わせでは、焦点距離を手動入力する必要も
無く、そのまま内蔵手ブレ補正機能が使用可能だ。
![_c0032138_17141268.jpg]()
現代では、一部のサードパーティ製ミラーを除き、ミラーレンズ
の発売は皆無に近い状態であるので、非常に希少な新製品だ。
現代では、何故ミラーレンズの発売が無くなってしまったのか?
いや、逆に言えば、何故昔はミラーレンズを売っていたのか?
という点だが・・
銀塩時代(1970年代~1990年代)においては、まず、
「望遠レンズへの憧れ」というユーザーニーズが、とても
強かった。
「せっかくレンズ交換ができる一眼レフを買ったのだから、
望遠が欲しい」、と思うビギナー層は、とても多い。
だが、メーカー純正レンズでは、300mmを超えたあたりから、
「大きく重く高価」という三重苦がのしかかり、初級中級層
の手におえるシロモノでは無い。
地上用望遠鏡をベースにした、安価で軽量な超望遠レンズは
存在したが、「とてつもなく大きい」という課題もあった。
(前述の韓国製500mmレンズ写真を参照)
そんな中、小型軽量でさほど価格も高くない「ミラーレンズ」
はユーザー層に受け入れられたのであろう。
望遠への憧れは、カメラユーザーのみならず、一般層でも
同様だ。この時代(1970年代)頃では、観光地や高層ビル等に、
有料の望遠鏡(コインを入れると数分間、景色が見れる)が
良くあった事からも、うかがい知れるであろう。
現代、そうした設備は残っている場合もあるが、一般客は、
あまりそれを見ようとはしない。
また、銀塩時代の中級アマチュア層等が、望遠レンズを三脚に
備え付けていると、関係ない一般人が「ちょっと見せてください」
などと言う事も良くあった。
こうした様子は、現代ではまず見かけないが、カメラマン側に
その心理(優越感)だけは残っていて、殆ど何も撮影しないのに、
丸1日、望遠レンズを三脚につけて、誰かが話しかけてくれるのを
待っているシニア層等は、依然、どこへ行っても良く見かける。
(注:見かけても話かけるべきでは無い。延々と、機材自慢と
世間話に付き合わされる・汗 →実例があるので後述する)
で、銀塩MF時代であれば、ミラーレンズはそこそこ売れていた、
しかし、1990年代のAF銀塩時代、そして2000年代からのデジタル
時代となると、「MFである」という点だけでも、ビギナー層は
撮影不能になってしまう。「カメラマンのスキルが低下した」と
嘆くよりも、もう時代や文化が違うのだから、やむを得ない。
文化のみならず、機材的にも銀塩時代のMF技法を踏襲する事が
困難であり、現代のミラーレス機用の大半のレンズは、MFで
撮る事は可能だが、MF技法が使える前提仕様になっていない。
これでは、現代の上級層や職業写真家であっても、もうMFで
撮るスキルは持っていない(それを高める術が無い)状態だ。
また、望遠に対する憧れもだいぶ減ってきた。
例えば、コンパクトカメラであるが、銀塩時代には200mmの
焦点距離がついただけで、センセーショナルなニュースとなり
そうした機体は良く売れた。(勿論、ビギナー層では手ブレに
より、実用上では使えるものでは無かった)
現代でも、初級層での望遠への憧れはまだあるので、スマホ
等に押されて厳しいデジタル・コンパクト機の市場では、
「ロングズ-ム機」と一般に呼ばれる望遠端焦点距離を強化した
モデルが存在し、望遠端は700mm、1000mm、2000mmと
順次伸び、いまや3000mmという機種すら存在する。
ただまあ、これらの超々望遠撮影が実用的かどうかは疑問だ、
ロングズーム機は私も持っているが、実用範囲を意識して
600mm程度までに留めている(注:デジタル拡大で1200mm)
また、ミラーレス機等でのデジタル拡大機能を駆使すれば、
簡単に超々望遠画角は得られ、最大8000mmあたりまでは
可能だ。
だが、私の様々な実験の結果では、手ブレ補正機能は
800mmを超えるあたりから精度不足で殆ど効かず、それが
あっても無くても1500mmを超えると手持ち撮影は不可能だ。
また、1000mmを超えると、前述の「ゴルゴ13」状態となり、
ターゲット(被写体)をファインダー内に収める事自体が
非常に困難となる。
さて、でも、超望遠が身近になってきた為、望遠に対する
ニーズは昔より減ってきている、本当にそれが必要な撮影
シーンは、野鳥撮影、屋外遠距離スポーツ、遠距離イベント
等と、極めて限られている為、一般初級層では超望遠の必要性
が余り無い。事実、中古市場には、そうして、初級層が欲しく
て買ったものの、持て余して売却してしまった、と思われる
600mm級超望遠ズームが、極めて多数流通している。
動体撮影が多いと思われる遠距離撮影においては、AFが
間に合う保証は無い。特に野鳥などでは、いったん飛んだら
AFで合わせるのは、どんなにAF性能が優れた高級一眼レフでも
まず不可能だ、だから実際にはMFでも十分なのだが、
前述のように現代のカメラユーザーは、初級層から上級層まで
もう誰もMFをちゃんと使いこなせない。
よって、MFのミラーレンズが現代において受け入れられる事は
まずなく、その結果として製品展開も非常に少ない訳だ。
![_c0032138_17141704.jpg]()
さて、余談がとても長くなった。
本MF300/6.3であるが、LUMIX DMC-GX7との組み合わせで
最大のパフォーマンスを発揮できる。
単焦点600mmではあるが、ごく簡単な操作でデジタルテレコン
を入れて、1200mm、2400mm相当の画角に変えられる。
内蔵手ブレ補正は一応有効だが、1200mmでは、既に精度が
怪しく、あまりその機能に頼らない方が良い。
(以前は、この場合、手動で焦点距離設定を延ばして使って
いた、その後の詳細な検証では、その必然性は無い模様であり、
そのままの設定で手ブレ補正が効くのだが、やはり精度は厳しい)
さて、手ブレ補正に頼らない、というと、ISO感度を高める
事によるシャッター速度の高速化だ、これについては、手動
ISOで適宜、1/500秒程度(注:撮影者のスキルによる)を
キープするのが賢明だ。
そしてAUTO-ISOの場合だが、DMC-GX7では、低速限界を
手動設定する事ができない。ここは不満であるが、幸いにして
DMC-GX7では、通常レンズ(標準、広角等)では、1/125秒、
電子接点付き望遠レンズでは1/500秒に自動で切り替わる。
であれば、本MF300/6.3であれば、AUTO-ISOのままで十分だ。
ただし、ここは前述ようにスキル次第だ、それに暗所に向ける
とAUTO-ISOが頭打ちして、急激にシャッター速度が低下する、
その際に、どのようにして手ブレや被写体ブレを防ぐかは、
中上級者クラスの知識と技能が必要だ。
なお、オリンパスμ4/3機の一部では、手ブレ補正機能に
優れたものもあるが、パナ機と同様に、多くの機種では、
AUTO-ISOの低速限界の変更が出来ない。(注:OLYMPUS
PEN-F 2016年、以降の一部の高級機では可能)
その為、高性能な手ブレ補正機能に頼りすぎると、むしろ
逆に手ブレしてしまう場合もあるので、ここでも中級者以上
のスキルが必要だ。
![_c0032138_17141742.jpg]()
本MF300/6.3は、最短撮影距離80cm(撮影倍率1/2倍)と
極めて優秀であり、超望遠マクロとして実用範囲内だ。
近接での被写界深度は浅くなるが、DMC-GX7など、ピーキング
性能に優れた機体を用いれば問題は無い。
なお、安直にMFアシスト機能をONしてしまうと、自動拡大や
距離目盛などが、色々と出てきてしまう。MF操作オンリーで
あれば、これらは多くの場合、不用であるので、カメラの
設定を細かく、自身の好みや撮影技法に合わせて調整する
必要があるが、まあ、ここは上級者向けの話だ。
描写力もミラー(レンズ)にしては優秀な方であり、
銀塩時代の製品とは一線を画す。
価格も安価で、中古であれば1万円台後半から入手可能だ。
これらの特徴をもって、ミラーレス・マニアックス名玉編では
300数十本のレンズの中から第13位に、ハイコスパ名玉編
では第12位にランクインした、高コスパの名玉である。
初級層には、あまり推奨が出来ないレンズであるが、中上級層の
μ4/3ユーザーであれば必携、いや、むしろこのレンズを
使う為に、新規にμ4/3機を購入しても惜しくは無い位だ。
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では、3本目のミラー
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レンズは、MINOLTA RF ROKKOR 250mm/f5.6
(中古購入価格 35,000円)(以下、RF250/5.6)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
恐らくは1980年頃の発売と思われる小型軽量ミラーレンズ。
MD型の時代の製品であるが、絞りが無いので、カメラ側の
露出モードを自由に使える訳ではなく、また、現代に
おいてはミラーレス機でアダプターで使うから、MD型か否か
はどうでも良い。
![_c0032138_17142997.jpg]()
内部は、反射鏡と光学レンズのハイブリッド型だと思う。
つまり反射式望遠鏡のように接眼部はレンズの構造という
事だ。実際に後玉を見ると、後群のレンズ構成が見える、
しかし、もはや情報が殆ど無く、良く分からない。
なお、天体望遠鏡等では、無限遠からの光を集めるという
(アフォーカル)光学系であり、対物レンズや反射鏡の
焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割って「倍率」を
求めるのだが、写真用レンズでは、こういう考え方はしない。
あくまで焦点距離があるのみであり、倍率はスペックに
無いのだが、あえて「視野角」からの概算を行うので
あれば、焦点距離を50mmで割れば良く、すると500mmの
ミラーでは、およそ10倍の視野倍率となる。
さて、本ミラーは銀塩時代から使っている物だが、
こうした小型軽量のミラーは、海外製を含む他社でも、
300mm級、350mm級など、色々あったと思うが、どうも
あまり食指が動かなかった。
その理由は「あまり望遠では無い」からである。
通常のガラスレンズでも200~400mm級は多数存在している。
ビギナー層には憧れかも知れないが、マニア層であれば、
それらは所有している。システムの重さとか、手ブレとかも、
撮影者のスキル次第でなんとでもなる。であれば、この手の
250~350mm級ミラーは、中途半端な仕様で、あまり必要性が
無かった、という訳だ。
それと、このクラスのミラーはレア品であり、中古相場が
高いのも課題であった。
だが、その状況は、2010年代、ミラーレス時代に入って大きく
変わる。小型軽量のミラーレス機、特にμ4/3機との組み合わせで
本レンズは、500mm単焦点、場合によりデジタル拡大機能を
用いて、1000mm級迄の、かなり使い勝手が良い超望遠システム
を得る事ができる。おまけに手ブレ補正やら、MFアシストやら
高感度やら、エフェクト等も使いたい放題だ。
![_c0032138_17144164.jpg]()
本レンズの課題は色々とある、描写力はたいした事が無いし
最短撮影距離は2.5mとかなり長い、勿論F値は固定で
被写界深度の調整も殆どできない。おまけに高価だ。
F値固定のミラーで、被写界深度を調整するやり方だが、
被写界深度を深めようと思った場合、撮影位置をバックして
その分、デジタルズーム機能を用いて、被写体を同等の大きさ
になるまで拡大する、これで撮影距離が伸びているので、
見かけ上の被写界深度が深まる訳だ。
トリミングと同等ではあるが、撮影時にこれができるので、
心情面でのメリットがある(すなわち撮影時に「こう撮りたい」
と思った通りに出来る。PCでの後編集では、こうはいかない)
なお、この用法はデジタルズームの微調整機能に優れた
ミラーレス機でないと無理で、それはμ4/3機では、DMC-G5と
DMC-G6の2機種しか無い(他にAPS-C機では、SONY NEXの
後期型や、α5000/6000系もある)
次善の機種では、デジタルズーム倍率をダイヤルやキーで
調整可能なパナソンック後期Gシリーズ(概ね2013年以降)
もあるが、今回使用のOM-D E-M1(2013)では、その用法は
無理なので念の為。また、α7/9系のフルサイズ機では、
本RF250/5.6では、あまり望遠画角にはならず、FUJI X系
では、そもそもデジタル拡大機能が搭載されていない。
![_c0032138_17144179.jpg]()
総括だが、あまり本RF250/5.6特有のメリットは感じられず
中古購入価格もかなり高かったし、現代ではさらにレア品に
よるプレミアム相場となっていると思う。
しかし、高い価格を甘んじて買う程の価値は無いので、
あくまで安い個体を偶然見かけた場合のみの判断となるだろう。
(注:この時代のミラーは、蒸着が経年劣化で剥がれやすく、
そのたりの「目利き」も必要なので、中古購入は簡単では無い)
実用上の価値も殆ど無い。あえて特殊例をあげれば、前述の、
「高価な超望遠レンズを三脚に据え付けて、何を撮るでもなく、
誰かが話しかけるのを待っているビギナー層の人達」に
たまたま出くわしてしまった場合だ(汗)これは非常にまずい、
下手をすれば「機材自慢」に延々と付き合わされてしまう(汗)
まあ、恐らく野鳥を待っているのであろう、しかしながら、
三脚での狭い望遠視界に、たまたま野鳥が来る筈もない、だから
丸一日、写真を撮るでもなく、暇を持て余している訳だ。
そんな時に、先制パンチを繰り出し、
匠「おたくのレンズは? ふ~ん、600mmですか。
高くて良いレンズなのでしょう?いい写真撮ってくださいね。
ところで、こちらのシステムは、こんなに小型だけど
これで1000mm/F5.6なんですよ(注:テレコン2倍モード)
勿論、振り回しも自由自在・・ あっ、鳥が飛んでいる!」
速やかにカメラの電源を入れて、カメラを構えながらも指の感触で
ピントリングを無限遠にセットする、フレームに飛ぶ鳥を捉えたら
カシャカシャカシャ・・と、鳥を追いながらのMF高速連写技法を
して見せれば、これは「超望遠+三脚+AF」では、手も足も出ない
撮り方だ、「ビギナー三脚族もびっくり」の、目を丸くする
「想像だにしていなかった」撮影技法であろう。
匠「ほら、なんとか撮れましたよ」とモニター画面を見せ、
彼らは機材自慢をする暇もなく、驚いている間に、
匠「では、皆さん、頑張って撮ってくださいね」と、何事もなく、
その場から立ち去る事が出来て、一安心だ(笑)
![_c0032138_17144181.jpg]()
ちなみに、これは架空の話では無く実話だ。
実際にこういう事があった数時間後に、たまたま、その同じ
シニアのグループ内の一人(若手だ)に、少し離れた場所で
出くわした、彼は三脚をたたんで手持ちで撮っていた模様で・・
匠「どうです? いい写真撮れましたか?」と聞くと。
初「あれからずっと、スズメを狙って連写していました・笑」
との事だ、つまり、「ハンドリング性能の重要性」を学んだ、
という状態であろう、まあ良いレクチャーだったかも知れない。
恐らくだが、重量級望遠を三脚に付けていた他の人達は、その場
から1歩も動けず、きっと写真も何も撮れていなかった事だろう・・
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では、今回ラストのシステム
![_c0032138_17145115.jpg]()
ミラーは、KENKO ミラーレンズ 400mm/f8
(中古購入価格 13,000円)(以下、KENKO400/8)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)
詳細は不明だが、2010年前後(2012年?)頃の発売と
思われる小型軽量のミラーレンズ。Tマウントを採用していて
各種のマウントに交換可能だが、勿論MFであり、電子接点も無い。
![_c0032138_17145104.jpg]()
現在ではこの機種は生産完了となっている模様であるが、
これ以前にも、500mmミラーが発売されていたし、これ以降も
Ⅱ型となった後継機が出ている。400mm版に関しては後継型も
光学系には大きな変更は無い模様なので、初期型でも十分だ。
KENKOは銀塩時代の昔からミラーレンズを多数発売している
いずれかの時代のものは、マニア必携であろう。
なお、前述のTOKINA 300/6.3も、まあKENKOの傘下での
発売であり、KENKOはミラーレンズのノウハウは強いメーカーだ。
![_c0032138_17145759.jpg]()
さて、本KENKO400/8だが、最短撮影距離1.15mは、かなり
短く、フルサイズ換算で、1/2.5倍の撮影倍率が得られる。
他社500mm級ミラーほど重くなく、500gは軽量の類だ。
ただし、これをμ4/3のミラーレス機に装着すると、800mm
換算の画角は、少々やりすぎな感覚もある、以前は、その用法
が主であったが、長すぎて使い難い為、近年はフルサイズ機で
400mm(+適宜デジタルズーム)の使用法が多い。
小型軽量の超望遠システムで、ハンドリング性能が良く、
おまけに安価であるから、そういう点でも過酷な撮影環境にも
向く、以前、真冬の雪混じりの雨の際に持ち出し、野鳥を
探して撮った事もあったが、故障等の心配もあまりいらない。
(現行品で安価だし、簡単に壊れそうな精密な構造でも無い)
メーカーのスペック表には2群6枚というレンズ構成が書かれて
いて、反射鏡のみの構成仕様では無いと思われるが、詳細は
良くわからない。まあ反射望遠鏡のように接眼部にレンズが
あるというハイブリッドな構成であったとしても、描写力は、
どうしても純粋な光学レンズに比べて一歩譲ってしまう。
ミラーレンズの特徴である「リングボケ」は勿論出る。
これに関しては、それを作画意図的に必要とするならば、
背景ボケを作り出し、そこに光源を入れればよいし、
それが不用な場合には、平面被写体で背景ボケを作らない
および背景に光源やハイライト(明るい)部分を入れなければ
良いので、リングボケの出現をコントロールする事は可能だ。
さらには中間的に、必要な量のリングボケを得る事も出来る。
まあ、リングボケは、長所とも短所とも言える特徴であるから、
これは利用者側で、しっかり制御して使う必要があるだろう。
(注1:ここは上級者向けの話だ。
注2:リングボケの例は、上の項目「TOKINA MF300/6.3」
の3枚目写真が顕著。また、本レンズの写真の2枚目でも
少し出している。なお、下写真はリングボケでは無い)
![_c0032138_17145793.jpg]()
また、本ミラーはレンズ前部にφ67mmの、ねじこみフィルター
が、加えてレンズ後部にもφ30.5mmの挿入式フィルターが
利用できる。
近年のミラーでは、前部フィルターがやっと利用可能となった
ので好ましい。銀塩時代のミラーは後部挿入式のみだったので、
使い勝手が悪かったのだ。
前部フィルターは、保護フィルター、晴天時等でのND
(スローシャッター用途)、PL、その他特殊効果、という
用途に適するが、まあ、こうした、ある意味、本格的な撮影には
使い難いミラーにおいては、それらを使う用途もあまり無い
かも知れない。PLを利用する事は画質的には意味はあるが、
最大で2段も暗くなるので、開放F16相当ともなれば、超晴天時
以外では使わない事が、手ブレ・被写体ブレ対策上では賢明だ。
![_c0032138_17145761.jpg]()
その他、特に長所も無いが、現代においては、現行製品が
極めて希少なミラーレンズだ。
初級層においても、ミラーレンズの得失を理解する上でも
持っておいても悪く無い、なお新品価格はオープンであり、
時代や店舗によっても変化するとは思うが、だいたい2万円
前後で購入できるであろう。中古であれば、およそ半額の
1万円前後だ。この金額であれば、「教材」という意味でも
「小型軽量の実用望遠システム」という意味でも、さほど
大きな負担とは言えないであろう。
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さて、今回の記事「ミラー(レンズ) 特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・
紹介している。
今回の記事では、「反射鏡」を用いたミラー(レンズ)を
4本紹介しよう。
なお、「ミラーレンズ」は、主要な光学系は反射鏡であり
光学レンズは接眼部に少しあるだけか、原始的な物では
レンズが無いケースもあるかも知れず、よって厳密には
単に「ミラー」と呼ぶのが良さそうだが、写真用途の製品は
光学系の一部にレンズを使用するケースが全てであろう。
本記事では、便宜上、これを「レンズ」と呼ぶ事もある。
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まず最初のシステム

(中古購入価格 23,000円)(以下SP500/8)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)
1979年発売の、恐らくタムロン初となる超望遠ミラー。
この時代1980年代には、レンズサードパーティや海外製
でも、ミラー(レンズ)がいくつか存在していたが、
どれが元祖(世界初)だったかは調べていない。

それは17世紀の「アイザック・ニュートン」等による
発明として、とても有名だ。その歴史的偉業を考えると、
「カメラ用のミラーレンズは何処が最初か?」等の話は、
あまり歴史的な意味は無い。
・・とは言うものの、本SP500/8(55B)型だが、実は
後継の55BB型(1983)を、先に所有していたのだが、
それは知人に譲渡して、後年に本55B型を買いなおした。
両者の光学系は同一と思われたし、そうであれば、恐らくは
TAMRON初、そして場合により他のミラーレンズよりも先行
していたとも思われる55B型の方が「歴史的価値が高い」と
思った次第だ。
本ミラーは、TAMRONでは、高描写力を示す「SP」型番が
付いている、しかし、実際にこのミラーを使うと、そこまでの
高描写力は感じられないし、それどころか、解像力が低く、
画質への不満を感じる。

TAMRONでは、大きな製品ラインナップの変革があった。
それは、アダプトール2の採用、モデル名の整理、SP型番の導入
等であるが、最初期の「SP」には、現代のように「高画質」
という意味はあまり持たせていなかったのではなかろうか?
「他に比べて、やや特殊な(スペシャルな)仕様」という意味
が強かったと思われ、本レンズの他にも、例えば超広角17mm
にも「SP」銘が与えられているが、そのレンズも、たいした写り
は得られない(ミラーレス・マニアックス第8回記事参照)
その後、1980年代初頭には、多数の「SP」を冠したレンズが
発売され、この時代は「SPの大安売り」という印象すらある。
まあでも、現代の「TAMRON SP」は、確かに高画質を示す
指標となっていて、SP銘がついていれば、いずれのレンズも
描写力についての不満は無い。ただしそれは「高付加価値」
戦略の一環でもあるから、「SPのついているレンズは高価」な
(高価でも売れる、メーカーの利益が大きい)商品となる。
まあ、私は、「高描写力か否かは、ユーザーが決める事で、
メーカー側から押し付けられる必要は無い」という考え方で
あるので、こういう高付加価値型番とかは、あまり好きでは
無いが、それでも、コスパを意識しながら適宜中古で購入する
などで、SP型番のレンズは多数所有していて、近代のものでは
どれも写りは満足しており、機嫌よく使っている。
(本シリーズ第8回「TAMRON SP編」記事等を参照)
さて、本SP500/8(55B)の特徴だ。
まず、小型軽量である事、ここが超望遠ミラーの最大の特徴
であり、例えば同じ500/8のスペックで、屈折型望遠鏡を
ベースとした設計では、とんでもなく大きく長くなって
しまう事もある。
(参考:以下は韓国製と思われる、望遠鏡転用型の写真用
レンズ、これで本ミラーと同じ500mm/F8である)

このあたりは、他のミラーレンズでも概ね同様であり、
だいたい400~600mmの焦点距離のミラーがF8程度、
それより長い800~1000mmミラーだと、F11~F16程度、
焦点距離が短い250~350mmミラーだと、F5.6~F6.3程度だ。
絞りが調整できず、ND等のフィルターも装着が困難か不能な
機種もあり、銀塩時代には非常に使い難かったのであるが、
現代のデジタル機では、ISO感度の調整や内蔵手ブレ補正
等により、だいぶ使い易くなった。
そしてMFであるが、ここは、ミノルタ製AFミラー等、ごく
限られた機種以外は全てMFなので、あまり不満は感じない。
ただ、ガラスレンズに比べて、解像力が低い場合が多いミラー
レンズではピントの山がわかりにくく、加えてガラスレンズ
のようなピント位置(距離)の変化の感覚でも無い。
特に無限遠付近でのピント変化の挙動が異なり、ガラスレンズ
では遠距離はピント変化幅も狭く、「だいたいこのあたり」等と
ラフに合わせても大丈夫だし、遠距離で被写界深度が深まる事も
あいまって使い易いが、ミラーレンズの場合では遠距離付近でも
ピント合わせがシビアだ。また絞りが無い為に被写界深度の調整が
(デジタルズームを上手く使わない限り)殆ど不可能であるし、
撮影距離に応じた被写界深度の変化も良くわからず、
ガラスレンズでの撮影技能や経験則が転用しずらい。
次いで、本SP500/8特有の特徴だが、最短撮影距離が1.7mと
500mmレンズの標準的な値(焦点距離10倍則で5m)よりも
だいぶ短い。この為「超望遠マクロ」的な使用方法が出来る。
この特徴を活かすには、フルサイズ機では無く、APS-C機や
μ4/3機を用いる。その場合の最大撮影倍率は、およそ
1/2倍~2/3倍(いずれもフルサイズ換算)となり、本格的な
マクロレンズ並みとなる。
本記事ではAPS-C機のFUJI X-T1を使用しているが、これで
約1/2倍マクロ仕様だ。
ただ、そうした場合、単焦点の750mm~1000mmという画角
仕様は、被写体を見つける事が大変困難になり、上級者向けだ。
加えて、換算焦点距離1000mm以上ともなると、カメラを向けた
ところに狙った被写体はまず無く、ぴったりとターゲットを
捉えるには、「ゴルゴ13」ばりの高いスキルが要求される。
それと、マクロと言っても、WD(撮影距離)は1.7mと極めて
遠い、目の前にある小さな被写体ならば、見つけようがあるが
2m近くも先にある小さい被写体は、そう簡単には見つからない、
ここも撮影の難易度を上げる要因となる。

言える、ここは後述しよう。
総括だが、本ミラー55B又は後継機の55BB型は、2000年代
頃の中古市場では1万円台前半の安価な相場で入手できて、
「手軽に購入できる超望遠レンズ(ミラー)」として、そこそこ
存在価値があった。アダプトール2型であるので、どんなMF
マウントでも使えるし、さらに2010年代のミラーレス時代では、
マウントアダプターの種類が多く、組み合わせの自由は高い。
ただし、近年稀に本ミラーは、その希少価値から「プレミアム
相場」になっていて、数万円という高値での販売も見た事がある、
本ミラーに関しては、購入タイミングが悪く若干高価であったが、
本ミラーの性能と発売年からすれば、適正相場は1万円台前半
迄であり、プレミアム価格のものまでは買う必要は無いと思う。
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では、次のミラーシステム

(中古購入価格 18,000円)(以下、MF300/6.3)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売の新鋭ミラー(レンズ)である。
μ4/3機専用であり、換算600mm、電子接点にも対応している。
DMC-GX7との組み合わせでは、焦点距離を手動入力する必要も
無く、そのまま内蔵手ブレ補正機能が使用可能だ。

の発売は皆無に近い状態であるので、非常に希少な新製品だ。
現代では、何故ミラーレンズの発売が無くなってしまったのか?
いや、逆に言えば、何故昔はミラーレンズを売っていたのか?
という点だが・・
銀塩時代(1970年代~1990年代)においては、まず、
「望遠レンズへの憧れ」というユーザーニーズが、とても
強かった。
「せっかくレンズ交換ができる一眼レフを買ったのだから、
望遠が欲しい」、と思うビギナー層は、とても多い。
だが、メーカー純正レンズでは、300mmを超えたあたりから、
「大きく重く高価」という三重苦がのしかかり、初級中級層
の手におえるシロモノでは無い。
地上用望遠鏡をベースにした、安価で軽量な超望遠レンズは
存在したが、「とてつもなく大きい」という課題もあった。
(前述の韓国製500mmレンズ写真を参照)
そんな中、小型軽量でさほど価格も高くない「ミラーレンズ」
はユーザー層に受け入れられたのであろう。
望遠への憧れは、カメラユーザーのみならず、一般層でも
同様だ。この時代(1970年代)頃では、観光地や高層ビル等に、
有料の望遠鏡(コインを入れると数分間、景色が見れる)が
良くあった事からも、うかがい知れるであろう。
現代、そうした設備は残っている場合もあるが、一般客は、
あまりそれを見ようとはしない。
また、銀塩時代の中級アマチュア層等が、望遠レンズを三脚に
備え付けていると、関係ない一般人が「ちょっと見せてください」
などと言う事も良くあった。
こうした様子は、現代ではまず見かけないが、カメラマン側に
その心理(優越感)だけは残っていて、殆ど何も撮影しないのに、
丸1日、望遠レンズを三脚につけて、誰かが話しかけてくれるのを
待っているシニア層等は、依然、どこへ行っても良く見かける。
(注:見かけても話かけるべきでは無い。延々と、機材自慢と
世間話に付き合わされる・汗 →実例があるので後述する)
で、銀塩MF時代であれば、ミラーレンズはそこそこ売れていた、
しかし、1990年代のAF銀塩時代、そして2000年代からのデジタル
時代となると、「MFである」という点だけでも、ビギナー層は
撮影不能になってしまう。「カメラマンのスキルが低下した」と
嘆くよりも、もう時代や文化が違うのだから、やむを得ない。
文化のみならず、機材的にも銀塩時代のMF技法を踏襲する事が
困難であり、現代のミラーレス機用の大半のレンズは、MFで
撮る事は可能だが、MF技法が使える前提仕様になっていない。
これでは、現代の上級層や職業写真家であっても、もうMFで
撮るスキルは持っていない(それを高める術が無い)状態だ。
また、望遠に対する憧れもだいぶ減ってきた。
例えば、コンパクトカメラであるが、銀塩時代には200mmの
焦点距離がついただけで、センセーショナルなニュースとなり
そうした機体は良く売れた。(勿論、ビギナー層では手ブレに
より、実用上では使えるものでは無かった)
現代でも、初級層での望遠への憧れはまだあるので、スマホ
等に押されて厳しいデジタル・コンパクト機の市場では、
「ロングズ-ム機」と一般に呼ばれる望遠端焦点距離を強化した
モデルが存在し、望遠端は700mm、1000mm、2000mmと
順次伸び、いまや3000mmという機種すら存在する。
ただまあ、これらの超々望遠撮影が実用的かどうかは疑問だ、
ロングズーム機は私も持っているが、実用範囲を意識して
600mm程度までに留めている(注:デジタル拡大で1200mm)
また、ミラーレス機等でのデジタル拡大機能を駆使すれば、
簡単に超々望遠画角は得られ、最大8000mmあたりまでは
可能だ。
だが、私の様々な実験の結果では、手ブレ補正機能は
800mmを超えるあたりから精度不足で殆ど効かず、それが
あっても無くても1500mmを超えると手持ち撮影は不可能だ。
また、1000mmを超えると、前述の「ゴルゴ13」状態となり、
ターゲット(被写体)をファインダー内に収める事自体が
非常に困難となる。
さて、でも、超望遠が身近になってきた為、望遠に対する
ニーズは昔より減ってきている、本当にそれが必要な撮影
シーンは、野鳥撮影、屋外遠距離スポーツ、遠距離イベント
等と、極めて限られている為、一般初級層では超望遠の必要性
が余り無い。事実、中古市場には、そうして、初級層が欲しく
て買ったものの、持て余して売却してしまった、と思われる
600mm級超望遠ズームが、極めて多数流通している。
動体撮影が多いと思われる遠距離撮影においては、AFが
間に合う保証は無い。特に野鳥などでは、いったん飛んだら
AFで合わせるのは、どんなにAF性能が優れた高級一眼レフでも
まず不可能だ、だから実際にはMFでも十分なのだが、
前述のように現代のカメラユーザーは、初級層から上級層まで
もう誰もMFをちゃんと使いこなせない。
よって、MFのミラーレンズが現代において受け入れられる事は
まずなく、その結果として製品展開も非常に少ない訳だ。

本MF300/6.3であるが、LUMIX DMC-GX7との組み合わせで
最大のパフォーマンスを発揮できる。
単焦点600mmではあるが、ごく簡単な操作でデジタルテレコン
を入れて、1200mm、2400mm相当の画角に変えられる。
内蔵手ブレ補正は一応有効だが、1200mmでは、既に精度が
怪しく、あまりその機能に頼らない方が良い。
(以前は、この場合、手動で焦点距離設定を延ばして使って
いた、その後の詳細な検証では、その必然性は無い模様であり、
そのままの設定で手ブレ補正が効くのだが、やはり精度は厳しい)
さて、手ブレ補正に頼らない、というと、ISO感度を高める
事によるシャッター速度の高速化だ、これについては、手動
ISOで適宜、1/500秒程度(注:撮影者のスキルによる)を
キープするのが賢明だ。
そしてAUTO-ISOの場合だが、DMC-GX7では、低速限界を
手動設定する事ができない。ここは不満であるが、幸いにして
DMC-GX7では、通常レンズ(標準、広角等)では、1/125秒、
電子接点付き望遠レンズでは1/500秒に自動で切り替わる。
であれば、本MF300/6.3であれば、AUTO-ISOのままで十分だ。
ただし、ここは前述ようにスキル次第だ、それに暗所に向ける
とAUTO-ISOが頭打ちして、急激にシャッター速度が低下する、
その際に、どのようにして手ブレや被写体ブレを防ぐかは、
中上級者クラスの知識と技能が必要だ。
なお、オリンパスμ4/3機の一部では、手ブレ補正機能に
優れたものもあるが、パナ機と同様に、多くの機種では、
AUTO-ISOの低速限界の変更が出来ない。(注:OLYMPUS
PEN-F 2016年、以降の一部の高級機では可能)
その為、高性能な手ブレ補正機能に頼りすぎると、むしろ
逆に手ブレしてしまう場合もあるので、ここでも中級者以上
のスキルが必要だ。

極めて優秀であり、超望遠マクロとして実用範囲内だ。
近接での被写界深度は浅くなるが、DMC-GX7など、ピーキング
性能に優れた機体を用いれば問題は無い。
なお、安直にMFアシスト機能をONしてしまうと、自動拡大や
距離目盛などが、色々と出てきてしまう。MF操作オンリーで
あれば、これらは多くの場合、不用であるので、カメラの
設定を細かく、自身の好みや撮影技法に合わせて調整する
必要があるが、まあ、ここは上級者向けの話だ。
描写力もミラー(レンズ)にしては優秀な方であり、
銀塩時代の製品とは一線を画す。
価格も安価で、中古であれば1万円台後半から入手可能だ。
これらの特徴をもって、ミラーレス・マニアックス名玉編では
300数十本のレンズの中から第13位に、ハイコスパ名玉編
では第12位にランクインした、高コスパの名玉である。
初級層には、あまり推奨が出来ないレンズであるが、中上級層の
μ4/3ユーザーであれば必携、いや、むしろこのレンズを
使う為に、新規にμ4/3機を購入しても惜しくは無い位だ。
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では、3本目のミラー

(中古購入価格 35,000円)(以下、RF250/5.6)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)
恐らくは1980年頃の発売と思われる小型軽量ミラーレンズ。
MD型の時代の製品であるが、絞りが無いので、カメラ側の
露出モードを自由に使える訳ではなく、また、現代に
おいてはミラーレス機でアダプターで使うから、MD型か否か
はどうでも良い。

つまり反射式望遠鏡のように接眼部はレンズの構造という
事だ。実際に後玉を見ると、後群のレンズ構成が見える、
しかし、もはや情報が殆ど無く、良く分からない。
なお、天体望遠鏡等では、無限遠からの光を集めるという
(アフォーカル)光学系であり、対物レンズや反射鏡の
焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割って「倍率」を
求めるのだが、写真用レンズでは、こういう考え方はしない。
あくまで焦点距離があるのみであり、倍率はスペックに
無いのだが、あえて「視野角」からの概算を行うので
あれば、焦点距離を50mmで割れば良く、すると500mmの
ミラーでは、およそ10倍の視野倍率となる。
さて、本ミラーは銀塩時代から使っている物だが、
こうした小型軽量のミラーは、海外製を含む他社でも、
300mm級、350mm級など、色々あったと思うが、どうも
あまり食指が動かなかった。
その理由は「あまり望遠では無い」からである。
通常のガラスレンズでも200~400mm級は多数存在している。
ビギナー層には憧れかも知れないが、マニア層であれば、
それらは所有している。システムの重さとか、手ブレとかも、
撮影者のスキル次第でなんとでもなる。であれば、この手の
250~350mm級ミラーは、中途半端な仕様で、あまり必要性が
無かった、という訳だ。
それと、このクラスのミラーはレア品であり、中古相場が
高いのも課題であった。
だが、その状況は、2010年代、ミラーレス時代に入って大きく
変わる。小型軽量のミラーレス機、特にμ4/3機との組み合わせで
本レンズは、500mm単焦点、場合によりデジタル拡大機能を
用いて、1000mm級迄の、かなり使い勝手が良い超望遠システム
を得る事ができる。おまけに手ブレ補正やら、MFアシストやら
高感度やら、エフェクト等も使いたい放題だ。

最短撮影距離は2.5mとかなり長い、勿論F値は固定で
被写界深度の調整も殆どできない。おまけに高価だ。
F値固定のミラーで、被写界深度を調整するやり方だが、
被写界深度を深めようと思った場合、撮影位置をバックして
その分、デジタルズーム機能を用いて、被写体を同等の大きさ
になるまで拡大する、これで撮影距離が伸びているので、
見かけ上の被写界深度が深まる訳だ。
トリミングと同等ではあるが、撮影時にこれができるので、
心情面でのメリットがある(すなわち撮影時に「こう撮りたい」
と思った通りに出来る。PCでの後編集では、こうはいかない)
なお、この用法はデジタルズームの微調整機能に優れた
ミラーレス機でないと無理で、それはμ4/3機では、DMC-G5と
DMC-G6の2機種しか無い(他にAPS-C機では、SONY NEXの
後期型や、α5000/6000系もある)
次善の機種では、デジタルズーム倍率をダイヤルやキーで
調整可能なパナソンック後期Gシリーズ(概ね2013年以降)
もあるが、今回使用のOM-D E-M1(2013)では、その用法は
無理なので念の為。また、α7/9系のフルサイズ機では、
本RF250/5.6では、あまり望遠画角にはならず、FUJI X系
では、そもそもデジタル拡大機能が搭載されていない。

中古購入価格もかなり高かったし、現代ではさらにレア品に
よるプレミアム相場となっていると思う。
しかし、高い価格を甘んじて買う程の価値は無いので、
あくまで安い個体を偶然見かけた場合のみの判断となるだろう。
(注:この時代のミラーは、蒸着が経年劣化で剥がれやすく、
そのたりの「目利き」も必要なので、中古購入は簡単では無い)
実用上の価値も殆ど無い。あえて特殊例をあげれば、前述の、
「高価な超望遠レンズを三脚に据え付けて、何を撮るでもなく、
誰かが話しかけるのを待っているビギナー層の人達」に
たまたま出くわしてしまった場合だ(汗)これは非常にまずい、
下手をすれば「機材自慢」に延々と付き合わされてしまう(汗)
まあ、恐らく野鳥を待っているのであろう、しかしながら、
三脚での狭い望遠視界に、たまたま野鳥が来る筈もない、だから
丸一日、写真を撮るでもなく、暇を持て余している訳だ。
そんな時に、先制パンチを繰り出し、
匠「おたくのレンズは? ふ~ん、600mmですか。
高くて良いレンズなのでしょう?いい写真撮ってくださいね。
ところで、こちらのシステムは、こんなに小型だけど
これで1000mm/F5.6なんですよ(注:テレコン2倍モード)
勿論、振り回しも自由自在・・ あっ、鳥が飛んでいる!」
速やかにカメラの電源を入れて、カメラを構えながらも指の感触で
ピントリングを無限遠にセットする、フレームに飛ぶ鳥を捉えたら
カシャカシャカシャ・・と、鳥を追いながらのMF高速連写技法を
して見せれば、これは「超望遠+三脚+AF」では、手も足も出ない
撮り方だ、「ビギナー三脚族もびっくり」の、目を丸くする
「想像だにしていなかった」撮影技法であろう。
匠「ほら、なんとか撮れましたよ」とモニター画面を見せ、
彼らは機材自慢をする暇もなく、驚いている間に、
匠「では、皆さん、頑張って撮ってくださいね」と、何事もなく、
その場から立ち去る事が出来て、一安心だ(笑)

実際にこういう事があった数時間後に、たまたま、その同じ
シニアのグループ内の一人(若手だ)に、少し離れた場所で
出くわした、彼は三脚をたたんで手持ちで撮っていた模様で・・
匠「どうです? いい写真撮れましたか?」と聞くと。
初「あれからずっと、スズメを狙って連写していました・笑」
との事だ、つまり、「ハンドリング性能の重要性」を学んだ、
という状態であろう、まあ良いレクチャーだったかも知れない。
恐らくだが、重量級望遠を三脚に付けていた他の人達は、その場
から1歩も動けず、きっと写真も何も撮れていなかった事だろう・・
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では、今回ラストのシステム

(中古購入価格 13,000円)(以下、KENKO400/8)
カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)
詳細は不明だが、2010年前後(2012年?)頃の発売と
思われる小型軽量のミラーレンズ。Tマウントを採用していて
各種のマウントに交換可能だが、勿論MFであり、電子接点も無い。

これ以前にも、500mmミラーが発売されていたし、これ以降も
Ⅱ型となった後継機が出ている。400mm版に関しては後継型も
光学系には大きな変更は無い模様なので、初期型でも十分だ。
KENKOは銀塩時代の昔からミラーレンズを多数発売している
いずれかの時代のものは、マニア必携であろう。
なお、前述のTOKINA 300/6.3も、まあKENKOの傘下での
発売であり、KENKOはミラーレンズのノウハウは強いメーカーだ。

短く、フルサイズ換算で、1/2.5倍の撮影倍率が得られる。
他社500mm級ミラーほど重くなく、500gは軽量の類だ。
ただし、これをμ4/3のミラーレス機に装着すると、800mm
換算の画角は、少々やりすぎな感覚もある、以前は、その用法
が主であったが、長すぎて使い難い為、近年はフルサイズ機で
400mm(+適宜デジタルズーム)の使用法が多い。
小型軽量の超望遠システムで、ハンドリング性能が良く、
おまけに安価であるから、そういう点でも過酷な撮影環境にも
向く、以前、真冬の雪混じりの雨の際に持ち出し、野鳥を
探して撮った事もあったが、故障等の心配もあまりいらない。
(現行品で安価だし、簡単に壊れそうな精密な構造でも無い)
メーカーのスペック表には2群6枚というレンズ構成が書かれて
いて、反射鏡のみの構成仕様では無いと思われるが、詳細は
良くわからない。まあ反射望遠鏡のように接眼部にレンズが
あるというハイブリッドな構成であったとしても、描写力は、
どうしても純粋な光学レンズに比べて一歩譲ってしまう。
ミラーレンズの特徴である「リングボケ」は勿論出る。
これに関しては、それを作画意図的に必要とするならば、
背景ボケを作り出し、そこに光源を入れればよいし、
それが不用な場合には、平面被写体で背景ボケを作らない
および背景に光源やハイライト(明るい)部分を入れなければ
良いので、リングボケの出現をコントロールする事は可能だ。
さらには中間的に、必要な量のリングボケを得る事も出来る。
まあ、リングボケは、長所とも短所とも言える特徴であるから、
これは利用者側で、しっかり制御して使う必要があるだろう。
(注1:ここは上級者向けの話だ。
注2:リングボケの例は、上の項目「TOKINA MF300/6.3」
の3枚目写真が顕著。また、本レンズの写真の2枚目でも
少し出している。なお、下写真はリングボケでは無い)

が、加えてレンズ後部にもφ30.5mmの挿入式フィルターが
利用できる。
近年のミラーでは、前部フィルターがやっと利用可能となった
ので好ましい。銀塩時代のミラーは後部挿入式のみだったので、
使い勝手が悪かったのだ。
前部フィルターは、保護フィルター、晴天時等でのND
(スローシャッター用途)、PL、その他特殊効果、という
用途に適するが、まあ、こうした、ある意味、本格的な撮影には
使い難いミラーにおいては、それらを使う用途もあまり無い
かも知れない。PLを利用する事は画質的には意味はあるが、
最大で2段も暗くなるので、開放F16相当ともなれば、超晴天時
以外では使わない事が、手ブレ・被写体ブレ対策上では賢明だ。

極めて希少なミラーレンズだ。
初級層においても、ミラーレンズの得失を理解する上でも
持っておいても悪く無い、なお新品価格はオープンであり、
時代や店舗によっても変化するとは思うが、だいたい2万円
前後で購入できるであろう。中古であれば、およそ半額の
1万円前後だ。この金額であれば、「教材」という意味でも
「小型軽量の実用望遠システム」という意味でも、さほど
大きな負担とは言えないであろう。
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さて、今回の記事「ミラー(レンズ) 特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・