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特殊レンズ・スーパーマニアックス(17)新鋭海外製 レンズ(Ⅰ)

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本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー
別に紹介している。
今回の記事では「新鋭海外製 レンズ」を6本紹介しよう。

ここで言う「新鋭」とは、2010年代以降に日本国内の
写真用交換レンズ市場に参入した海外メーカーの事で、
概ね中国製や韓国製のレンズである。

なお、本記事執筆後、日本市場に参入した海外メーカーは
さらに増加している。いずれも安価な価格帯のレンズが多く、
すなわち、国産レンズが近年に「高価になりすぎた」状況を
見ての市場参入であろう。需要と供給のバランス点が
崩れた市場では、かならずそうした弱点を突いた製品戦略が
行われる為、現代の国産カメラ機材のような「不当に高すぎる」
といった状況は、長い目で見れば必ず解消されていく筈だ。

本記事においては、初期に国内市場に参入した海外メーカー
の製品のみに絞って紹介する事とする。その後の2018年位
から急速に参入が始まった海外製品群については、後日また
続編を書く事としよう。

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ではまず、最初のシステム
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レンズは、中一光学 CREATOR 35mm/f2
(新品購入価格 22,000円)(以下、CREATOR35/2)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2014年発売の中国製MF隼広角レンズ(フルサイズ対応)

非Ai方式のFマウントレンズであるが、NIKON Dfでは
かろうじて使用可能。他のNIKON デジタル一眼レフだと
露出の制御が極めて困難(まず不可能)となるので
本来ならばミラーレス機で使うのが簡便だ。
_c0032138_07472291.jpg
中一光学(Shenyang Zhongyi Optical Electronics Co.、Ltd.
日本語では「ちゅういちこうがく」と読むのが一般的だ)
は、中国の光学機器メーカーであり、ヨーロッパ向けブランド
「MITAKON」のOEM供給元や、CCTV(監視カメラ)用レンズの
製造元として、30年以上の歴史があると聞く。

2010年代より、MITAKONあるいは中一光学ブランドとして、
日本国内でのデジタル一眼レフ&ミラーレス機用の交換レンズ
市場に参入している。

従前の「中国製」のイメージは「安かろう、悪かろう」という
印象があったが、近年はずいぶんと様相が変わってきている。

国際社会における市場競争に生き残ろうとしたら、品質の悪い
商品を販売していたらやっていけない、かつての戦後日本だって
品質とコスパの向上をスローガンとして、国際市場へ進出して
いった訳であり、今まさに中国製品がそうしたステージにある
のだと思う。

そうした品質の向上を実感させてくれるのが、今回記事での
「新鋭海外製レンズ」群であり、特にこの「中一光学」の
製品は、安っぽさは欠片も無く、国産のプラスチッキーな
普及版交換レンズを遥かに上回る質感・高級感を持ち、
それでいて、恐ろしく安価だ。

安価に製品を作れる理由については後述する事として、
現代の日本国内カメラ(レンズ)市場は「高付加価値化商品」
ばかりになってしまっている。
ぶっちゃけ言えば、「レンズの価格が高すぎる」状況である。
何故そうなってしまったかは、他記事で何十回も繰り返し
説明しているので、ここで詳細は割愛するが、要はこの
市場が儲かっていないから、高い商品を作って売る訳だ。

で、こうした現代の日本国内市場の「矛盾点」を突いてきた
のが、「新鋭海外メーカー」であった訳だ。

その戦略としては、日本国内市場において、
1)日本のメーカーが作れない(売りたくない)
 非常に安価で高品質な高性能レンズを作る。

2)日本のメーカーでは売りにくい、非常に特殊なスペックを
 持ったレンズを作る(例:超大口径、超マクロ、超広角、
 魚眼、ティルト、シフト、ぐるぐるボケ、ソフトフォーカス、
 アポダイゼーション等)
(ただし、これらは、そこそこ高付加価値型で高価だ)

・・を投入すれば、日本のカメラ&レンズメーカーでは、
手が出し難い分野で、十分な市場競争力がある(=売れる)と
踏んだのであろう。

「中一光学」は、上記の1)と2)を両方実践している。

*オーソドックスで高品質なレンズとしての、CREATORシリーズ
(35mm/F2,85mm/F2,135mm/F2.8)

*超大口径レンズとしての、SPEEDMASTARシリーズ
(25mm/F0.95,35mm/F0.95,50mm/F0.95,
 85mm/F1.2、135mm/F1.4)

*やや特殊な仕様のFREEWALKERシリーズ
(4.5倍マクロの20mm/F2,42.5mm/F1.2)

のレンズ群を展開(注:調査は2019年時点)していて、
また、これに加えてレデューサーやマウントアダプターも
発売している。

さて前置きがずいぶんと長くなったが、本CREATOR 35/2の
話である。


その特徴は、新品で2万円程度と極めて安価な価格である事だ。
品質(作り)はかなり良く、描写力もそこそこ高い。
同等の仕様の銀塩時代のMFレンズであれば、中古であっても
およそ2万円はしてしまう。
前述のように、「中一光学」は、日本市場への参入において
ずいぶんと入念なマーケティング・リサーチを行っていると
思われ、極めて良いポイントを突いてきている。
これであれば、マニア層ならば思わず買ってしまうであろう。

なお、描写力を判断するのは少々難しい、例えば新鋭の国産
レンズ(例:TAMRON SP35mm/F1.8)と比較してしまうと、
逆光耐性、ボケ質の破綻頻度、解像力、最短撮影性能等で、
様々な僅かな不満はあるかも知れない。

特に、冒頭写真のように、近接域で絞りを開け気味の際の
解像力の低下やボケ質が気になると思う。これの対策は適宜
絞り込めば良いが、本レンズは絞り込み測光である為、一眼
レフでのそうした利用法には向いていない(ミラーレス機で
使うならば可)

だが、銀塩MF時代のオールドレンズ(例:OLYMPUS OM35/2)
等と比較すれば、総合的な描写力は同等か、むしろ本CREATOR
が勝る位だ。すなわちコスパはかなり良い。
_c0032138_07472250.jpg
弱点は、絞り制御が現代の一眼レフ向きでは無い、という
点の他は殆ど無い。
勿論「AFで無い」とか「手ブレ補正が無い」等と「無いもの
ねだり」をしても無意味だ。
NIKON Fマウント品であってもAi爪対応では無いのは要注意
だが、マニア層であれば、ミラーレス機などで使用は容易だ。

描写力の弱点は、そういう高描写力を望むのならば、他の
新鋭レンズを買えば済む話であり、本レンズのようなコスパ
に主眼を置いたレンズで重箱の隅をつつくような性能評価を
してもフェアでは無いし、元々用途が違うので無意味でもある。

あえて細かい弱点を挙げれば、絞り機構の構造と耐久性か?
これは途中の絞り値が1つ無い(F16)事と、姉妹レンズの
CREATOR85/2で私の所有品では絞り粘りの構造不良が出た事だ。
だがまあ、些細な事だし、不良の発生は、あくまで確率論なので
なんとも言えない。
 
・・であれば課題は、「本レンズを必要とするか否か?」だ。
ここはユーザー次第であろう。

まあ現代のビギナー層の場合は、「最新の最高性能の機材を
使わないと上手く撮れない」という不安心理を、周囲から
「植え付けられてしまっている」状況なので、こうした機材は
絶対買わないであろう。「AFが無い、手ブレ補正も無い、
だからこれを買っても上手く撮れないで周囲から馬鹿にされる」
という論理である。

また、ベテランのシニア・マニア層の場合は、中国製と聞いた
だけで「安物を買ったら、性能も低く、すぐに壊れる」と
思い込んでしまっているから、この層も買わない。
現代の中国製品の品質が、いかに向上しているかを知った
としても、人生の大半で低品質の中国製品を見てきた経験から
なる価値感覚は、そう簡単には変わらないだろうからだ。

では、本レンズを誰が買うのか?
もしかすると、中国の優秀なマーケットリサーチ担当者は、
日本市場の製品ラインナップは詳細に調べたのだが、
そうした製品を誰が買っているのか?までは調べていなかった
かも知れない。つまり、現代の国内市場では高額な新製品を
買うのはビギナー層ばかりであり、安価な製品はむしろ売れない
のだ、その理由は前述のとおりで「高性能な機材を買わないと
ちゃんと撮れる自信が無いから」である。
(優秀なAF性能が無いとピンボケする、手ブレ補正が内蔵
されていないと手ブレする、それらにより周囲からバカに
されるのでは?という不安感を常に強く持っている状態)
・・なんとも情けない話だが、それが現実だ。

で、残念ながら、本レンズや他の海外製新鋭レンズを買って
いる人は極めて少ないように思える。
まあ、今時のご時勢だ、よほど腕前に自信が無いと、MFレンズ
等は誰も買わないであろう・・・
(追記:ごく近年、2019年頃からは、七工匠やMeikeという
新規参入海外メーカー製の格安レンズを買う初級マニア層が
増えてきている。しかし、残念ながら、ちゃんと使いこなして
いるような評価・レビューは、全く見た事が無い状態だ)

ただまあ、初級中球層にも推奨できるレンズとは言える。
「コスパ」という意味の真髄を理解する為の、そして
MFを使いこなす上での教材にもなりえるレンズであるからだ。

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では、次の海外製レンズ
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レンズは、SAMYANG(サムヤン)85mm/f1.4 AS IF UMC
(新品購入価格 30,000円)(以下、SAMYANG85/1.4)
カメラは、CANON EOS 6D (フルサイズ機)

2010年発売の韓国製MF大口径中望遠レンズ(フルサイズ対応)

発売当初は、流通形態が変則的であったと記憶しているが、
後年では「Kenko Tokina」社が輸入販売代理店を務め、
その為、カメラ専門店や中古市場でも流通が始まっていて
入手性が高まっている(=つまり、海外から直輸入している
ような状況では、保証や修理、サポートの面で、国内の通常の
流通に載せるのは難しいが、大手メーカーが代理店をやって
いるのであれば安心だ、という事である)
_c0032138_07474752.jpg
で、本レンズ発売時のSAMYANG(サムヤン)は、ビギナー層の
憧れのスペックである85mm/f1.4レンズが、僅かに3万円!
(これは他のどの国産85/1.4レンズの中古価格よりも安価だ)
という事で、センセーショナルな面もあったのだが・・

その後、SAMYANG製品は、超広角や大口径など、高付加価値
化戦略に転換して、製品価格も高価になった為、そうした
話題性が無くなってしまい、中古市場に新古品在庫が大量に
流れる状態となってしまった。まあ、あまり市場戦略が上手く
いっている状況とは思えず、私も、そうしたSAMYANG製の
「高付加価値型商品」は買う気になれず、現状では、この
85/1.4の1本を所有しているのみだ。

SAMYANG製品を追加購入していない理由はもう1つあり、
それは、本SAMYANG85/1.4が「使いこなしが極めて困難な
レンズ」である事からだ。

具体的には逆光耐性の低さの課題が大きく、加えてボケ質破綻
の発生頻度が高く、それから、元々85/1.4級レンズの全てに
あるピント精度の課題である。

これらの課題を全て回避しながら使うには上級者レベル以上
の高い撮影スキルが必要とされ、結果的に本レンズは
「レンズマニアックス記事、使いこなしが難しいレンズ特集」
において、ワースト8位にランクインしてしまっている。

数百本の所有レンズの中から、ここでワーストランクイン
したレンズは、「無茶苦茶難しいレンズ」という事となり、
一般層はもとより職業写真家層でも、まず使用は困難であり、
「テクニカル・マニア」のような、まるで「修行」的に難しい
レンズを使いこなしたい、と思うような、一部の奇特で特殊な
ユーザー層(まるで修行僧?)でないと使えないだろう。

よって、本レンズに関する正当な評価などは、まず一般的に
見かける事は無いし、あったとしても殆ど信用ができない。
(そこまで本レンズを使いこなせる人は一握りしか居ないから)
_c0032138_07474778.jpg
ただまあ、「ダメダメなレンズ」という訳では無い。
撮影条件を整えれば、かなり良く写るレンズではある。
しかし、その条件を整えるのが極めて困難であり、単純な
確率論で言えば、およそ数%以下程度だ。
つまり、数千枚という大量の撮影をして、やっとそこそこ
使えるレベルの写真がボチボチと上がってくるという感じで
あり、これは実用的な用途ではかなり苦しい。

他のSAMYANGレンズが、どれも本レンズと同様な難しい特性を
持つかどうかは、未所有なのでわからないが、ここまで難しい
レンズを最初に見せられてしまうと、他のレンズは正直言って
買う気が無くなってしまった訳だ。

まあ、この悪条件を承知の上で買うならば、それはそれで
良いが、「値段が安いから」と言って、あまり安易に手を
出さない方が良いかも知れない。

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では、3本目のシステム
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レンズは、LAOWA 105mm/f2 The Bokeh Dreamer
(LAO0013)

(新品購入価格 90,000円)(以下、LAOWA 105/2)

カメラは、SONY α7 (フルサイズ機)

2016年に発売された中国製MFアポダイゼーション中望遠レンズ。
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本レンズについては、過去記事で何度も紹介している、
(LAOWA105/2特集記事や、本シリーズ第0回記事
「アポダイゼーション・グランドスラム」等)

また「アポダイゼーションとは何か?」についても、それらの
特集記事や「匠の写真用語辞典第3回」記事に詳しい。

それらと重複する為、今回の記事では本レンズについての
説明は大幅に割愛しよう。

まあ、要は「ボケ質がとても良い」レンズである。
「ボケ質」についても「良くわからない」という場合は、
「匠の写真用語辞典第13回記事」で詳しく説明しているので
そちらを参照されたし。

ちなみに、「アポダイゼーション光学エレメント」を搭載
した写真用レンズは、2020年時点で4機種しか存在しない。
これらは極めて希少なレンズ故に、「アポダイゼーション・
グランドスラム」記事では、詳しく述べている次第だ。
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本レンズは、極めてマニアックなレンズゆえに、上級マニア層
以外には非推奨である。まあ、価格も高いし、効能も分かり難い
ので、一般ユーザーが欲しがるようなレンズでは決して無い事は
確かではあるが・・

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では、次の海外製レンズ
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レンズは、中一光学 CREATOR 85mm/f2
(新品購入価格 23,000円)(以下、CREATOR 85/2)
カメラは、NIKON D500 (APS-C機)

2014年発売の中国製MF中望遠レンズ(フルサイズ対応)
冒頭のCREATOR35/2の姉妹レンズであり、価格も同等で
およそ2万円程度と、安価である。
(注:本レンズは非Ai仕様のFマウントレンズであり、
今回使用のD500との組み合わせでは、絞り開放以外の場合の
露出が安定せず、制御がとても難しい。その詳細は後述する)
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さて、こうしたレンズが安価に作れるのは、日本製品で言う
所の「付加価値」つまり、AF、超音波モーター、手ブレ補正、
非球面レンズ、といった機能を一切持たないオーソドックスな
MFレンズである事が最大の理由だろう。

そうした付加価値に係わる面倒な製造工程を持たなければ、
レンズなど、所詮はガラスと金属の塊である。材料原価は
さほどかかるものでは無い。それが国産高付加価値レンズでは
定価が何十万円にもなってしまう事は、むしろそちらの方が
異常な状態だ。

製造コストには、まあ、設計等の開発費用はかかるだろうが、
近年はコンピューター設計も一般的であるし、何十年もレンズ
光学設計開発をしているメーカーであれば、安価な構成の設計を
するのは、お手の物であろう。
金型代等も当然かかるかも知れないが、無闇に製品数を増やして
多品種少量生産をするよりも、製品種類を絞って、生産数も
増やせば、金型償却費は、どんどんと低下していく。
(参考:レンズ構成中で「非球面(モールド)」を使うと、
さらにレンズ毎での金型が必要となり、価格も高額となる)

まあつまり、日本国産レンズ製品は現代においては、カメラ市場
の縮退によって、数が売れないから値段を高くするしか無い訳
であり、その為に、全てのユーザーが実際には必要としない性能
を色々と持たせて付加価値を上げている。つまり、そこで値上げの
理由を作り上げている訳だ。そう言うと、まるで、あくどい商売の
ようなイメージもあるかも知れないが、まあ、そうでは無い。
それは、市場を維持する為に、そういう利益構造になってきている
という事であり、ユーザーはそれらの商品を「高すぎる」と思えば、
「買わない」という選択肢は十分に残されている訳だ。

結果、何も知らないビギナーは、自分の機材使用目的やそのスキル
からは不要なまでの高価な製品を買わされてしまう事にもなるが、
それはあくまで自己責任だ。まあ傍目から見れば、馬鹿馬鹿しい
程に無駄をやっている状態だが、購入者本人が納得しているので
あれば、あるいは「高性能な機材を使わないと、上手く撮れる
自信が無い」と言うならば、それを外からとやかく言う必要は無い。
_c0032138_07481137.jpg
さて、余談はともかく、本CREAROT 85/2である。
銀塩時代の昔から85mm/f2級のレンズは「名玉が多い」という
印象であるが、それらは殆どが旧CONTAX版のゾナー 85mm/f2
のコピー品である場合が多い、
これは Carl Zeiss Jena(カール・ツァイス・イエナ)の
時代であるから、1930年代~(大戦を挟み)~1950年代の
製品である。
基本設計は80年以上も前と古く、そのコピー品(例:ソビエト製
Jupiter-9やNIKON NIKKOR-P85/2(Sマウント)等)ですらも、
およそ40年~60年も前のレンズである。

まあ、Sonnar 85/2等は、当時は名玉だったかも知れないが、
現代の感覚では、とてつもなくい古い時代の、典型的なオールド
レンズであろう。
(Jupitar-9は、ハイコスパ第24回記事等、多数で紹介済み)


これらのゾナー系レンズは、いずれも3群5枚~3群7枚という
構成であったと思われるが、では、本CREATOR85/2はどうか?

幸いにして、6群6枚と、ゾナー系とは全く異なる設計だ。
「幸い」と書いたのは、今更、80年も昔のゾナー系レンズの
コピー品は欲しく無いからだ、いくらなんでも時代が違いすぎる。
それにゾナー系レンズは、本家CONTAX版こそ未所有だが、それを
大幅に参考にしたレンズ(すなわちコピー品)は、あれやこれやと
色々と持っているので、もう必要無いのだ。

レンズ構成が異なっているのであれば、本CREATOR85/2は
確実にゾナー系レンズよりも良く写る。
その理由だが、もしゾナー構成の方が優れているならば、それを
そのまま採用した方が遥かに簡便だからだ、特許ももうとっくに
切れているし、面倒なレンズ設計や検証すら不要だ。
(「ジェネリック・レンズ」にした方が効率的、という意味だ)

本レンズは、安価で、そこそこ良く写る、すなわちコスパが
良いレンズである、それ故に「ハイコスパレンズ・マニアックス
第23回記事」でも取り上げている。
まあ、初級中球層にも推奨できるレンズと言えよう。
_c0032138_07481859.jpg
最後に1点だけ注意点、本CREATOR85/2は、NIKON Fマウント版で購入しているが、Ai対応品では無い為、現代のニコン製デジタル

一眼レフで使うのは、絞り開放以外では露出が狂うなど、そう
簡単では無い。
今回、NIKON D500で使っているのは、その問題点を確認する
為であり、推奨できるシステムでは決して無い。

で、仮に非Aiレンズを受け付けるNIKON Dfで使っても、同様に
露出の制御は難しい(本記事の冒頭の組み合わせ)

なので、NIKON機で使うのではなく、マウントアダプターで
他社機(特にミラーレス機)で使う方が遥かに簡便である。
まあ、そうしたアダプター汎用性を高める為に、NIKON F
マウント版を購入している訳だ。

なお、D500での使用は効率的ではなかったが、唯一、D500
に備わる1.3倍クロップモードで、4/3型センサー相当の
画角(170mm相当)で本レンズを使用すると、昆虫などの
自然観察撮影には使い易い画角となった。(つまり、
各85mm級レンズで、最短撮影距離が85cm~1mという
状態は、”寄れない不満が結構ある”という事と等価だ)
だが、その用途であれば、最初からμ4/3機に本レンズを
装着するのが望ましい。

----
では、5本目のシステム
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レンズは、LAOWA 15mm/f4 (LAO006)
(新品購入価格 75,000円)(以下、LAOWA15/4)
カメラは、FUJIFILM X-T1 (APS-C機)

2016年に発売された中国製MF特殊広角レンズ。
_c0032138_07482652.jpg
「特殊」の意味は、超広角レンズでありながら、
等倍マクロ、そしてシフト機能を備える事である。
かつて、このようなレンズは前例が全く無い程の特殊性だ。

前述の海外新鋭メーカーの日本国内市場戦略は、
1)非常に安価で高品質な高性能レンズを作る
2)非常に特殊なスペックを持ったレンズを作る
と書いたのだが、LAOWAは、典型的な2)の戦略を実施する
技術力主導のメーカーである。
(参考:LAOWAは、かつて日本のカメラメーカーで勤務して
いた方が創業者である模様だ。日本の光学設計技術を熟知
しているし、日本のメーカーでは、様々な市場等の制約に
より、作りたくとも作れなかった特殊なレンズを、自身の
会社で思う存分、作っている模様である)



本レンズも様々な記事で紹介済みだ、特殊レンズゆえに、ここで
スペックやら特徴を書いていると際限なく長くなるし、加えて
理解しにくい内容でもあるし、初級中球層は、絶対に買わない
レンズでもあるから、あまり細かい説明は無意味だ。

本記事では、さらにマニアック度を高める為に、本LAOWA15/4
に「ZENJIX SORATAMA(宙玉)72」を装着してみよう。
_c0032138_07483852.jpg
基本的に「宙玉(そらたま)」を使うには、WD(ワーキング・
ディスタンス)の短いレンズが要求されるのだが、
本LAOWA15/4は、WDが5mm弱と驚異的に短い。


LAOWA15/4のフィルター径はφ77mm、「宙玉」はφ72mm
なので、両者の接続には、φ77→φ72mmのステップダウン
リングを1つ用いるだけで、極めて簡便である。

_c0032138_07483817.jpg
描写は上写真の通り、「宙玉」の鏡筒で周囲がケラレてしまう。
まあこれは想定済みであり、ここからは適宜トリミングして
使えば良い。
なお、今回使用のX-T1では、デジタルズーム機能が無いのだが、
その機能のあるミラーレス機等の場合は、センサーサイズを
仮想的に小さくする事が出来る。まあ、トリミングをしたり、
デジタルズームを使えば、以下のようになる。
_c0032138_07483878.jpg
でも、こうするのであれば、普通にマクロレンズを用いて
「宙玉」を装着した方が良かったかも知れないのだが(汗)
ここでは、「特殊レンズをさらに特殊用途に使う」という
意味での紹介としておこう。

総括だが、基本的に本LAOWA15/4は上級マニア向けであり、
一般層には一切推奨しない。


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では、今回ラストのシステム
_c0032138_07484646.jpg
レンズは、中一光学 SPEEDMASTER 35mm/f0.95 Ⅱ
(新品購入価格 63,000円)(以下、SM35/0.95)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

2016年発売の中国製MF超大口径標準画角レンズ。
中一光学製品としては価格が高く、いわゆる「高付加価値型」
レンズとなっている、その付加価値は、勿論、開放F0.95
という超大口径である事だ。
_c0032138_07484614.jpg
35mmの焦点距離ではあるが、APS-C型以下のセンサーサイズ
の機体専用なので、実質は標準画角(約52mm相当)となる。
FUJI Xマウント用とSONY Eマウント用が発売されているが
本レンズは、Eマウント版である。

SONY FE(フルサイズ)マウント機(α7系等)で用いる
場合には注意点があり、本レンズは電子接点を持たない為
「APS-C撮影モード」には自動的には切り替わららず、
画面周辺が大きくケラれて写る。

よって、手動で「APS-C撮影」をONにして使う事となるが、
その際、センサーがクロップされて画素数が下がるので、
もし、必要画素数が決まっていて、それをキープしたい場合は、
画像サイズSで撮っている場合には画像サイズをMに切り替える。
同、Mで撮っていたら、Lにすれば良いが、Lで撮っていたら、
もう画素数は、それ以上は上げられない。


で、これらのメニュー操作は連動していないので、個々の
メニューを探して行わなければならない、かなり面倒なので、
もう最初から、APS-C機のNEX系やα4ケタ系で使った方が
簡便であろう。
なお、FUJI Xマウントの場合はフルサイズ機が無いので、
このあたりは気にする必要は無い。(ただしFUJI X機全般
の低いMF性能では、本レンズの使用は困難な事であろう)

さて、本SM35/0.95の特徴であるが、
まず描写力は普通である、ただし超大口径で多大なボケ量
を得る事ができるので、表現力は高い。

日中屋外での使用時は、当然ながら、ND8等のキツ目の
減光フィルターが必須だ。
逆光耐性は幸い問題無いが、状況によってはフードを装着
したいところだが、高価なレンズであるのに、フードが
付属していない。

フィルター径φ55mmであるから、市販の汎用フードが利用
できるのだが、銀色鏡筒に色が合う製品は少ないであろう。
(PENTAX FA-Limited等では銀色鏡筒と同色のフードが付属。
また、SIGMA Art-DNでは銀色鏡筒なのに黒色のフードが付属
しているが、こちらは安価なレンズなので、やむを得ない)
また、汎用ねじ込みフードでは、NDフィルターの黒色枠を
隠せないので、どちらにしてもデザイン的な問題は残る。

絞り値の制御にはクセがあって、無段階で調整可能だが
F5.6とF11の指標が書かれていない。
まあ、中一光学のレンズは、CREATORシリーズでも、特定
の絞り値が省略されているので、驚くには至らない、
そして、CREATOR(35/2,85/2)では、絞り値のクリック・
ストップがあったので、少し気にはなったのだが、
本SM35/0.95では、無段階絞りなので、指標が無くても
F5.6位置等には出来るため、あまり気にする必要は無い。

しかし、電子接点が無いので、カメラ本体には絞り値は
表示されない。よって、ファインダーを覗きながらでは
手指の感触で、だいたいの絞り値を類推する事になるが、
撮影中、被写界深度を深目に設定したいと思って、
全体の絞りの稼動範囲の半分くらいの位置にセットし、
「よし、これで、F5.6かF8位かな? パンフォーカス
 気味に設定できたかな?」と思ったとしても、
実は、その位置ではF2.8あたりだ、よって被写界深度が
まだかなり浅い。


すなわち開放F0.95からF2.8あたりまでの絞りの可変角度
がかなり大きく、そこから先は、F4からF11までは逆に
回転角度が狭すぎる状態だ。
ただまあ、ここは「欠点」ではなく、「仕様」であろう。
「超大口径レンズであるから、こんなものだ」と、覚えて
手指の感触を慣れていくしか無い。
_c0032138_07484656.jpg
欠点としては、最短撮影距離が長い点がある。
仕様では35cmであり、35mmの焦点距離の10倍法則どおり
ではあるが、他の超大口径、たとえばコシナのNOKTONは、
いずれも非常に寄れるので、それに比べると、せっかくの
超大口径レンズでの被写界深度の浅さを増強する事が出来ず、

大いに不満である。

ピント合わせだが、寄れないと言うものの、最短撮影距離
付近の近接撮影で絞り開放近くでは、被写界深度はかなり
浅くなる、この状態では、例えば優秀なSONY機のピーキング
機能でも精度が怪しくなるし、そもそも手持ち近接撮影では
被写体までの「距離ブレ」が頻繁に発生するので、とても

撮影が困難になる。ただまあ、同じ「中一光学」製の

超マクロレンズ FreeWalker20mm/F2よりは、遥かに簡単
ではあるが・・

総括だが、本SM35/0.95は、これもまた上級マニア専用であり、
それ以外の、初級中級上級層、初級中級マニア層、職業写真家層、
その他(例:コレクター層)の全てには、一切推奨できないという、
かなり強烈な個性を持つ特殊レンズである。

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さて、今回の記事「新鋭海外製 レンズ特集」は、
このあたり迄で。

前述のように、本記事執筆後に「七工匠」(しちこうしょう)
や、MEIKE(メイケ)、YONGNUO(ヨンヌオ)、KAMLAN、
VILTROX等の新鋭海外(中国他)製レンズが、次々と国内の
市場に参入して来ている。

それらも少しづつ入手している為、いずれ本記事の続編を
書く事とする。

次回記事に続く・・


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