Quantcast
Channel: 【匠のデジタル工房・玄人専科】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

特殊レンズ・スーパーマニアックス(15)マイクロフォーサーズ単焦点

$
0
0
本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では、μ4/3(マイクロフォーサーズ)用の、
カメラメーカー純正のコスパの良いAF単焦点レンズを
4本紹介しよう。

なお、μ4/3用AF単焦点は、カメラメーカー製やレンズ・
サードパーティ製で極めて多数あるし、MF版レンズもまた、
サードパーティより、高性能な物からトイレンズに至るまで
非常に多数販売されている。
近年においては、特に中国製等の海外製の安価で高品質な
μ4/3機用MF(広角系)単焦点レンズが多数発売されている。

やや特殊な物は、また他の記事に譲るとし、本記事では
メーカー純正のAF単焦点、かつ安価でコスパが良いレンズ
を厳選して紹介する。
具体的には、オリンパスとパナソニックより各2本を選ぼう。
本シリーズ記事での「特殊な」という条件要素は全く無いが、
これら純正単焦点レンズが沢山売れている訳でも無いだろう
から、市場全体から見れば「やや特殊」なのかも知れない。

----
まず最初のシステム
_c0032138_18530665.jpg
レンズは、PANASONIC LUMIX G 20mm/f1.7Ⅱ ASPH.
(型番:H-H020A)
(中古購入価格 23,000円)(以下G20/1.7)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-GX7 (μ4/3機)

本レンズの初期型は、2009年にPANASONIC DMC-GF1の
キットレンズ(DMC-GF1C)として発売され、後継機のⅡ型は、
2013年に PANASONIC DMC-GX7のキットレンズ(DMC-GX7C)
となったものである(勿論、単品発売も存在している)

本レンズはⅡ型であり、後年に単体で購入したものだ。
今回はDMC-GX7に装着して使ってみるが、これで、当時の
メーカー側が商品企画時に想定した意図等を汲み取る事が
できるであろう。
_c0032138_18531688.jpg
まず、特徴や出自であるが、
薄型(パンケーキ)でありながら、開放F1.7の大口径で
μ4/3機装着時に40mmの使い易い準標準画角となる事から、
恐らくは、μ4/3規格スタートによる初期ラインナップ
検討時点から中核と想定されていたレンズであろう。

初期型の発売時定価は、5万円(+税)と、あまり安価な
エントリークラスのレンズでは無いが、とは言え、高性能
(高付加価値型)レンズのように高価すぎる、という
訳でもなく、バランスを重視した価格帯だ。

かつ、これは小型軽量(非EVF)のDMC-GF1とのセット
販売を想定した状況であるので、セットのトータルの価格は、

個々の単体価格計よりも当然、安くなっている。
(参考:発売時(2009年)実勢価格、GF1単体=約7万円,
G20/1.7付きのGF1Cは約9万円。他に標準ズームキットあり)

だが、DMC-GF1は小型軽量でありながらも、その初期の
コントラストAFでは大口径レンズでの近接時のピント精度等は、
かなり怪しい要素もあった(ミラーレス・クラッシックス
第3回記事で、本G20/1.7を装着して検証済み)


まあ、価格の件では、Panasonicは後発カメラメーカーで
あり、レンズは自社開発だろうが、そのブランド力は無い。
高級レンズには「ライカ」の名前を冠して高付加価値化して
いるが、マニア層から見れば「名前だけで高くなってもなぁ」
という悪印象があり、中庸な価格帯の高性能レンズのみが
興味の対象となるだろう。

もう1つ重要な事は、その時代(2010年頃)から本G20/1.7
(初期型)は、初級層や初級マニア層などによる口コミで
「良く写る」と「神格化」されてしまった事だ。
それによる影響として、本レンズは2010年代初頭において
中古市場ではレア品となり、相場は2万円台後半の高値で
推移し、入手が難しくなってしまった。

すなわちマニア的視点からは、システム(母艦)の性能の
未成熟の問題もあり、このレンズに、さほどの実用性能は
期待できない。よって購入するとしても「1万円台後半迄の
相場が望ましい」が、正当な価値感覚であり、それよりも
約1万円も高価な相場では、中古が出たとしても、入手する
気には全くなれないのだ。

何故、初級層が本レンズを過剰に高く評価してしまったかは
大口径単焦点レンズに対する評価スキルや経験値の不足だと
思われる。つまり、それまで、その手のレンズは滅多に使った
経験が無い状態で、身近に、そういうスペックのレンズが
出てくると、これまで使っていた初級者向け標準ズーム等と
比較して、とてつもなく優れた物に見えてしまう。
まあ、ただそれだけの話であろう。
(注:2010年のDMC-GF2発売後、DMC-GF1Cのキットは
在庫処分で、定価の半額以下の格安で販売されていた)

実際の所、本G20/1.7は私の評価データベースでは、
描写表現力は5点満点中4点であり、総合点は3.3点と、
まあ悪くは無いが、特筆すべきスペシャルなレンズでは無い。

で、2010年代前半を通じて本レンズの初期型は入手不能で
あったのだが、2013年に新機種GX7とのセットとして、
G20/1.7初期型の外観を変更したⅡ型が発売されると、
初期型の中古流通が復活した。つまりこれは、初期型を
投機層または流通が、まあ、悪い言葉で言えば、出し惜しみ
をして相場を上げようとしたのが、新製品が出てしまったら
旧製品の価値が下がる為に、そうならないうちに売り切って
しまおう、と考えたからであろう。(うがった見方をすれば
投機的理由で値上げする為に、本レンズの過剰評価をネット
に流し「神格化」を初級層に信じ込ませたのかも知れない)

その後、2014年頃には、新型Ⅱ型の中古流通も始まり、
やっと本レンズに係わる中古流通と相場が正常化した。
私も、その頃に、本レンズ(Ⅱ型)を中古入手した次第だ。

現在での中古相場だが初期型で1万円台中程、Ⅱ型で2万円
程度と、価値感覚的には、ほぼ適正と思われるし、玉数も多い。

また、発売から年月も経ち、新品価格も下がって来ていて、
量販店においては3万円台前半位だ。
_c0032138_18531693.jpg
さて、本G20/1.7の実使用上の得失であるが、
まず、描写力はさすがに高く、解像感もボケ質も通常撮影の
レベルでは不満は少ないであろう。

フードが付属していないが、パンケーキ(薄型)であるので
それを装着するのは外観的に良し悪しあるし、そもそも
フードが無くても、逆光耐性的にも問題点を感じ無い。
日中撮影では、保護フィルターを装着するよりも、むしろ、
φ46mmのND2(減光1段)フィルターを常時装着した方が、
1/4000秒機が主流となるμ4/3中級機での利用時に、
シャッター速度オーバーの危険性が減って望ましい。

暗所等の撮影にも向くが、室内等での安全な環境であれば、
日中の撮影からの移行時に、そのままND2を外して使ったと
しても、レンズ保護の必要性は少ないと思う。
F1.7の開放は実用範囲内描写性能であるから、手ブレ補正の
必要性は少なく、暗所であってもISO感度とシャッター速度に
注意さえすれば、問題なく利用できる。まあここは中級者
以上向けの話だ。
全般的に被写体汎用性が高い事が、本レンズの、最大の
特徴であろう。

弱点であるが、他のミラーレス機用レンズと同様に、
無限回転式のピントリング仕様であるから、高度なMF技法が
全く使えない。これはピーキングの無いDMC-GF1であっても、
それがあるGX7系であっても、あまり差は無い。
特に困るのが、近接撮影においてコントラストAFではピント
精度が不足する事であり、最短撮影距離の20cm付近での
撮影がAFでもMFでも苦しく、無限回転式で、最短が不明の
ピントリングで最短を僅かに超えても当然ピントは合わず、
対処不能だ。この点は、DMC-GX7系等でのMFアシスト機能の
一環である「距離指標表示」を用いても意味が無く、結局の所
現代のミラーレス機と、その純正レンズにおいては、正当な
MF技法を全く使う事が出来ない。

メーカー側、あるいはビギナー層が考えているような
「とりあえずAFで合わせて、合わなかったらMFを使う」
といった使用法は、効率的な正しいMF技法では無いのだ。
その件は、本ブログの他の記事で何度も述べているし、
「匠の写真用語辞典シリーズ第11回、12回記事」でも
詳しく記載している為、本記事での詳細説明は割愛する。
_c0032138_18531624.jpg
MF技法の件はともかく、結果的に本レンズでは、近接撮影が
AFでもMFでも大変困難である。本来、本レンズは大口径で
はあるが、実焦点距離が20mmと短く、近接撮影に持ち込んで
やや広めの背景範囲で大きなボケ量を得られるという用法が
本レンズの特徴を最大限に活かす撮影技法なのだが・・
それが、レンズとカメラの仕様や性能的に無理である事が、
極めて大きなストレスとなる。

ビギナー層が本レンズを「神格化」してしまう意味が全く
わからず、プログラム露出で少し絞った状態で遠景の風景等を
撮って画質が良い、とか言っているならば、本レンズの特徴を
何一つ生かしていない。そういう撮り方であれば、各社広角
レンズで、本レンズ以上の解像力や低収差性能を持つものは、
星の数ほど存在するのだ。本レンズをその目的に使う意味が
殆ど無い。本レンズは、世の中的に希少な、さほど高価では
無い大口径準広角で、被写体汎用性が高い事が、最大の
特徴である訳だ。
_c0032138_18531616.jpg
本G20/1.7の用途を考察するならば、

1)屋外フィールドでの準マクロ的自然撮影(注;多くのμ4/3機
 に備わるデジタル拡大(テレコン、ズーム)等と組み合わせる)
2)室内等での、人物単独または小人数の記録撮影(記念写真)
3)暗所でのステージ(ライブ、舞台)等イベントの記録撮影
4)小型軽量を生かした、日常撮り、スナップ、記録用途

が、本レンズの特徴を活かした主たる用途であり、それ以外の
撮影分野においては、もっとそれに適したレンズを使えば良い
訳であり、本レンズを使う必要性が無い。

まあでも、上記の用途範囲においては、そこそこ優れた
レンズであり、本来は「用途限定が出来る」という観点からは、
中上級者向けのレンズとは言えるが、初級層においても、
かろうじて推奨できる。

----
では、次の単焦点システム
_c0032138_18533920.jpg
レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm/f3.5 Macro
(中古購入価格 22,000円)(以下、MZ30/3.5)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M1 (μ4/3機)

2016年に発売された、新鋭標準画角AFマクロ。
最大撮影倍率は、センサー換算で1.25倍であり、
フルサイズ換算では2.5倍に到達する。
_c0032138_18533934.jpg
ただし現代のミラーレス機においては、あまり撮影倍率の
カタログ数値スペックは気にする必要は無く、例えば、
デジタル拡大機能やトリミング編集などを組み合わせれば、
撮影倍率は、見かけ上、いくらでも高める事ができる。

課題はむしろ、この撮影倍率を実現する為に、最短撮影距離
が9.5cmとかなり短い事であり、その際のWD(ワーキング・
ディスタンス=レンズ先端から被写体までの距離)は、非公開
ながら、概算で9.5cm-6cm(レンズ長)-2cm(フランジバック)
で、15mm程度しかない。
このWDの短さであると、レンズが影になる、レンズが被写体に
ぶつかる、昆虫等では逃げる、等と、色々と注意が必要だ。

さらに、この最短撮影距離での被写界深度は、絞り開放時に
オリンパスでの計算方法(注:デジタルでの許容錯乱円は
定義が曖昧だ)では、1mm以下となる。
また、一般的な銀塩時代の計算方法においても、この状態での
被写界深度は、約2mmとなり、非常に薄い事には間違いない。

この被写界深度では、いくらAFが優秀なμ4/3機を使おうが、
ピント精度はまず出ない。つまり、母艦には優秀なMF性能が
必須となる(例:高精度のピーキングや、操作系の良い
画面拡大、倍率が高く高精細なEVF等)
ただ、母艦のMF性能が優れていたとしても、本MZ30/3.5の
ピントリングが無限回転式である為、例によってMF操作性は
壊滅的に悪い。ごく簡単な例を上げれば、ピントリングを
指の感触で最短撮影距離に固定しながら、カメラを前後させて
ピントを合わせる、という、初級マクロ撮影技法すら使えない。

いったい、各社のミラーレス機用のレンズの開発者あるいは
開発関係者は、実際の製品で撮影を行っていて、それで改善の
案等を出しているのだろうか?そこすら疑問に思えてくる。

こういう事は、実際に屋外等でマクロ撮影を行ってみれば、
ものの数十分で、誰にでも(ビギナーにでも)理解できる事だ。
あるいは、実際のところでは、そういうMF仕様にしたいのだが、
業界内にレンズ仕様上の暗黙の了解や規定(例:μ4/3機用の
普及版の純正レンズは、ピントリングを無限回転式とし、
シームレスMFが出来る仕様とするのが望ましい、等)があって、
それを遵守する為に、自由な設計が出来ないのであろうか・・?

ともかくピントリングは不満な仕様だ、この弱点があると
特にマクロレンズでは大きな問題となり、重欠点と言える。
まあ、通常レンズでも大口径中望遠などは、MF技法を使う
ケースが多くなり、同様な課題が生じる。

よって、本格的なマクロ撮影や、本格的な大口径撮影を志向
するならば、ミラーレス機用純正普及版レンズは使用せずに、
MF専用でMF仕様・性能に優れたサードパーティ製の高性能
マクロ(例:フォクトレンダー製マクロアポランター等)や
高性能大口径(例:SIGMA ART LINEや、カールツァイス等)
を使うしか無い、という事になる。

注1:AF高級レンズであっても、無限回転式ピントリングで
  有限回転の距離指標を持ち、停止感触があるハイブリッド
  のタイプであれば、まあMFで使えない訳では無い。

注2:OLYMPUSの高級レンズ、Proシリーズでは、MF時に
  フォーカスリングをずらすことで、距離指標が現れる
  「マニュアルフォーカスクラッチ機構」を備えている。
  しかし高付加価値化していて、高価すぎるので未所有だ。

注3:一部のOLYMPUS機では、フォーカス・ブラケット機能や
  関連した被写界深度合成機能が使える場合もあるが、煩雑で
  ある事が課題だ。つまり「ピントが合わないからフォーカス
  ブラケットを使う」では、対処療法にしかならない訳だ。

さて、MF操作性に関しては、もうしかたが無い。購入前から
この弱点はわかっていたし、そこは覚悟の上での購入だ。
_c0032138_18533925.jpg
では、描写性能であるが、こうした記事で紹介するレベルの
レンズは、もう基本的には、描写力的な不満は無い。
もし大きな不満等があるならば、記事であまり紹介したく無いし、
そもそも使う気も、だんだん失せてしまう。予備役の「三軍」
扱いで死蔵してしまうか、下手をすれば譲渡・売却処分だ。
まあ、できるだけ所有しているレンズは手放したくは無いし、
性能がNGなレンズでも、それなりに工夫して使おうとする事は
楽しいのではあるが、それにも我慢の限度や限界はあるだろう。

で、本MZ30/3.5に期待していたのは、「カリカリ描写」の
マクロである、本ブログでは「平面マクロ」と呼ぶ事もあり、
平面的な解像力を主眼とした設計コンセプトで、その反面、
立体物の描写には向かない(ボケ質が悪くなる等)である。

これは1970年代のオリンパスOM Zuiko 50mm/f3.5 Macro
に、その傾向が見られたし、近年の製品でも、2010年代の
SONY E 30mm/f3.5 Macro (SEL30M35)が、そうした描写だ。
だが、本MZ30/3.5は、どうやら、そういう描写傾向には
ならない模様である。まあ、多くのマクロ被写体に汎用的に
使えるオーソドックスな味付けだ。

確かに「平面マクロ」は、被写体を著しく選ぶので、
使えるシーンは限られている。ただ、それもまた、どのように
それを使いこなすかは、テクニカル的な興味や研究要素が
ある為に、「エンジョイ度」は高まる場合もある。
何でも普通にちゃんと良く写ってしまう場合は、あまり
面白味を感じない事も多々ある訳だ。

ただまあ、これは製品コンセプトに依存する訳であり、
本MZ30/3.5のOLYMPUSの製品WEBでは、作例は近接撮影
100%で、花、昆虫、小物、子供などの撮影に特化している。
よって、それらの一般的マクロ被写体に向く、という設計
思想であろう。
_c0032138_18533913.jpg
ただ、ビギナー向けという割りには、描写力がそこそこ高く
(OLYMPUS で言う、M.Zuiko Premiumの中位カテゴリーで、
私の評価データベースでも、描写表現力は5点満点中4点)
その高描写力は、中上級層にとっても魅力的で、用途もある。
しかしながらMF操作性の重欠点があり、なんだか、製品全体と
して、設計思想が、ちょっとアンバランスな印象を受ける。

どのユーザー層に対しても、強く推奨できるレンズかどうかは
とても微妙だ。描写力を含めた性能はかなり高く、中古相場も
比較的安価で、コスパは良い、しかし、MFでの重欠点をどう
評価または判断するかが、重要なポイントになるだろう・・

----
では、3本目の単焦点
_c0032138_18535373.jpg
レンズは、PANASONIC LUMIX G 14mm/f2.5 ASPH.
(型番:H-H014)
(中古購入価格 13,000円)(以下、G14/2.5)
カメラは、PANASONIC (LUMIX) DMC-G5 (μ4/3機)
_c0032138_18535987.jpg
2010年にPANASONIC DMC-GF2とのキット(DMC-GF2C)
で発売された単焦点AF広角レンズ、勿論単品発売もある。

前述の2009年のDMC-GF1CのキットレンズG20/1.7から、
小口径かつ広角化されたのは、G20/1.7では初期ミラーレス
機のコントラストAFでのピント精度の問題があったから
だろうか? あるいは40mm相当のG20/1.7では、人物の
集合写真やセルフィー(自分撮り)が撮れないからか? 
確かに、その組み合わせでは実用上の問題点を感じる。
(注:その為、2010~2011年頃では、GF1+G20/1.7の
キットの新品在庫処分品が安価に販売され、それを
購入したビギナー層が、前述の「G20/1.7の神格化」を
広めるきっかけとなった、と分析できる)

そして、本G14/2.5であれば、初期ミラーレス機でも、
AF精度上の不満や不安はあまり感じ無い。
ただ、それは、カメラ側の性能よりも、主要被写体の
選択にも影響が強い事であろう。

すなわち、本G14/2.5の主要な被写体用途は以下だ、
1)中遠景の風景
2)中遠距離の街中スナップ
3)中~大人数の集合写真

これ以外にも、暗所イベント等でのステージ系全体撮影
という用途も考えられるのだが、それについては、もう一声
開放F値が明るい事(F2以下)や、画角が広い(換算24mm
程度)が、より望ましいと思う。

広角(28mm相当)の単焦点というのは、銀塩時代から
コンパクト機に搭載され、それは「ベテラン(通)好み」と
言われてきた。具体例としては、銀塩時代であれば、
OLYMPUS XA-4,NIKON 28Ti,NIKON MINI,FUJI Tiara系,
RICOH GR-1系、MINOLTA TC-1等であり、デジタルであれば
RICOH GR Digital/GRシリーズやGXRのA12 28mmユニット、
FUJIFILM XF10等である。

しかし「通好み」の裏を返せば「ビギナーでは使いこなせない」
となってしまい、私も、DMC-GF2C発売時には、
「これって、ビギナー向けセットでしょう? 広角単焦点で
大丈夫なのか?」と疑問に思ってしまったくらいである。

だが、そこはデジタル(ミラーレス)時代だ、PANASONICの
μ4/3機に備わる優秀なデジタルズームとデジタルテレコン
機能を用いれば、本レンズを仮想広角ズームとして使用できる。
ただし、それは、GF系のカメラでは、実は使い難い。
今回は、パナ機の中で、その機能が最も使い易いと思われる
DMC-G5/G6の内、DMC-G5を使ってみよう。

このシステムで、記録画素数を下げた撮影においては、
カメラ前部のファンクションレバーに触れるだけで簡便に
28~56mm/f2.5の常用広角ズーム機として使用できる。
また、ボタン数回の簡単な操作で、この焦点距離範囲を
56~112mmの中望遠域、または112~224mmの望遠域ズーム
としても利用可能だ。
この用法はなかなか快適であり、広角単焦点である事での
(ある種の)「不便さ」を解消する事ができる。

この用法は勿論、「トリミング編集と、ほぼ等価だ」とは
言えるが、撮影時に被写体に対峙しながら構図を工夫する
心理的要素と、家に帰ってからパソコン画面を見ながらの
「作業」とでは、まるで状況が異なる為、写真表現的には
撮影時に処理が出来る事には、とても意味がある。

勿論、後処理での編集コスト(手間)も、下げる事が出来る。
これは、撮った写真を、ほったらかしにするビギナー層には
理解し難いかも知れないが、納品とか作品化をする業務・実用
撮影において「編集コスト」は無視できない課題なのだ。
_c0032138_18535932.jpg
レンズの描写力だが、スペシャルな要素は特に無い、
オーソドックスな、ある意味、ありふれた広角レンズだ。
あえて特徴を言うならば、「μ4/3機用の広角単焦点レンズには
他に、適切な選択肢が無い」という点か。

勿論、製品ラインナップ上では、そういうレンズは多数存在する、
パナにも、オリンパスにも、サムヤンでも、コーワでも、
フォクトレンダーでも、ラオワでも、いくらでもある。
でも、ちょっとそれらの価格を見てもらいたい、中古で買う場合
であっても、それらは、本G14/2.5の数倍も高価な価格帯だ。

広角レンズは、若干絞って被写界深度を深めて使う用途が多い
その為、開放F値がF2.0であろうが、F2.5であろうが、用途上
での大差は無いのだ。であれば、安価な物を買う方がベターで
あろう。

そういう点では、AF広角は本レンズしか選択肢が有り得ない。
この状況において、本レンズ総合的な描写性能には不満は無いし、
勿論、コスパ面から言えば、他と比べて圧勝であろう。

「標準(または広角)ズームを使えば良いのでは?」という
考え方も勿論ある、だがまあ、市場では単焦点を志向する
ユーザー層も依然多い、という事からもわかるように、
ズームにおける「画角利便性」以外では、あらゆる点で
単焦点が優れる事は、中級層以上にとっては常識であろう。

(追記:近年においては、海外の新鋭レンズメーカー、
例えば七工匠やMeike等から、MFではあるが複数のμ4/3対応
広角レンズが発売されている。国内市場で適切な選択肢が無い、
という弱点を突いてきたマーケティング戦略であろう)
_c0032138_18540030.jpg
総論だが、本レンズはμ4/3ユーザーにおいては必携に近い
レンズである、ただ、より高価な高性能広角を既に持って
いるならば、小型軽量によるハンドリング性能以外において、
本レンズの優位性は無い為、本レンズを買い増しする必然性は無い。
また、標準・広角ズームを使用している初級層においても、
画角利便性を廃して本レンズを使え、と言うのは酷な話であり
まず使いこなせない結果となってしまう。

まあ、ターゲットのユーザー層を選ぶレンズであるが・・
例えば、新規のμ4/3ユーザーで、新たにレンズ・ラインナップを
組む上では、本レンズを含め、本記事で厳選した「単焦点の4本を
全て揃える」というのも十分に有り得る選択肢だ。

(その場合、本記事の4本のレンズでの私の中古購入総額は
約74,000円となる、若干高額にはなるが、この4本があれば、
およそどんな被写体にも適応可能であろう。そう考えると
無理をして高付加価値型(つまり、無闇に値段だけ高い)の
レンズを1本10数万円で購入するより、はるかに価値がある)

----
では、今回ラストのシステム
_c0032138_18540050.jpg
レンズは、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL 45mm/f1.8
(中古購入価格 16,000円)(以下、MZ45/1.8)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited (μ4/3機)

2011年に発売された中望遠画角AF単焦点レンズ。
OLYMPUSのWEBでは「ママのためのファミリーポートレート
レンズ」として紹介されている。
_c0032138_18551611.jpg
まあ、確かに人物撮影に適した90mm相当の画角、そして
開放F1.8という明るい口径比は、背景をボカした人物撮影
には最適であろう。


非常に小型軽量であり、フィルター径はφ37mmしか無い。
描写力はかなり高い方であり、本レンズの個人評価点での
描写表現力は、5点満点で4点をマークする。これ以上高い
得点のμ4/3機用レンズは、非常に高価な物を除いては
無いので、トップクラスのコスパとなるであろう。


最短撮影距離0.5mは、まあ焦点距離からすれば標準的な
性能である(=焦点距離10倍の法則)
逆光耐性も悪く無い。
ただし、日中の明所では、ND2/4フィルターを装着する
方がシャッター速度オーバーのリスクを減らせる。
(注:φ37mmの小径NDフィルターは、やや入手が困難だ)

「小型軽量で安価で良く写る」、これだけ見れば何ら問題点の
無いレンズに思えるだろう。
本レンズの最大の課題は、「平凡なスペック」である。
_c0032138_18552263.jpg
まあ、μ4/3用レンズとしては、45mm/F1.8というのは
一見して人物撮影用に適しているように思えて魅力的だ。
だが、よくよく考えて貰えれば分かるのだが、μ4/3機には
マウントアダプターを介して、古今東西、およそどんなレンズ
でも装着できる。

で、広い目線で見れば、50mm/F1.8級は「小口径標準」として
銀塩時代から非常に多数が存在する。私も数十本のそうした
レンズを所有しているし、たとえ銀塩時代のオールドレンズで
あっても、中には現代のレンズに勝るとも劣らない、極めて
良く写るレンズも何本もある。(=完成度の極めて高い、
変形ダブルガウス型構成のものが殆どであるからだ)

いざとなれば、PENTAX SMCT55/1.8でも、MINOLTA MC50/1.7
や、NIKON Ai50/1.8、CANON EF50/1.8等、好きな小口径標準
レンズを持ってきて、μ4/3機に装着すれば良いでは無いか。

「それではAFが効かない」とか、そういう事は、どうでも良い。
本MZ45/1.8でAFが合わない場合、仮にOM-D E-M5Ⅱに備わる
「スーパースポットAF機能」を使おうが、何をしようが、
AFが合わないものは合わない。
そこで、シームレス操作でMFに移行しても、例によって問題
がある無限回転式のヘリコイドだ。結局MFに切り替えても
使い難いならば、それはもう大きなストレスになってしまう。

だったら、いっそ、銀塩時代のMF小口径標準を用いて、
最初からMFで操作した方が遥かに簡便で、潔い。

なお、その際、今回の母艦のE-M5Ⅱでは、ピーキング機能が
常時表示不能(=必ず、何処かのFnボタンを犠牲にし、そこに
アサインする必要がある。だが、電源OFFでピーキング設定は
解除されるので、ほぼ毎回Fnボタンを手探りで押す必要がある)
・・という重欠点がある為、MFが使い難い(注:PANASONICの
μ4/3機では、オールドレンズ使用時にも常時ピーキングが
出せるが、ピーキング強度が変更できないという課題がある)

まあ結局、本MZ45/1.8は、悪いレンズでは無く、コスパも
良いのであるが、それはμ4/3純正レンズの中だけの範囲の
話であり、世の中全般を見渡せば、本MZ45/1.8を代替できる
仕様の小口径標準は、星の数ほどある、というのが課題だ。

それから、μ4/3システム(ボディ&レンズ)仕様上の問題で、
せっかくの良いレンズ(本MZ45/1.8)が快適に使用できない、
というのが、次なる課題だ。

例えば、AFが合ったら、合焦音を「ピッピッ」と鳴らして
いるようなビギナー層が使うレンズなのかも知れないが、
(注:中級層以上では、誰も「合焦音」など鳴らしていない、
撮影状況によっては、周囲への迷惑になるからだ)
ビギナー層も、その合焦音を聞いて安心してはいけない。
そのAFは被写体の何処に合ったのか?が重要だからだ。

で、45mm/F1.8の被写界深度は、そこそこ浅い(例:撮影
距離1m、絞りF1.8開放で銀塩時代の許容錯乱円を用いた
被写界深度計算では、5cm程度しか被写界深度が無い)
これでは、被写体が人物だとして、「ピッピッ」が合った
場所が、目なのか鼻なのか、あるいは服なのか、カバンなのか、
何処の場所に合うかで、5cm位の距離は平気で変わってしまう。

なお、ここでAF測距点を色々と変更しても、あまり意味が無い、
人物撮影での相対距離は、数cmくらいは常に変化している、

人物撮影において、F2未満の中望遠(又は中望遠画角)の大口径
レンズで近距離撮影で厳密にピントを合わせようとしたら、
MFでしかも高速連写の中から、たまたまピントが合っている物を
選ぶしか方法が無いのだ。その確率(成功率)はフルサイズ機で
85mm/F1.4の大口径の場合は、およそ1割以下か、もっと低い。
μ4/3機で本レンズMZ45/1.8では、遥かにマシな状況だと思うが、
それでもAF頼みでは何割かはNGで、最悪、半数位はピントを外す
リスクがあると思っておいた方がだろう。
(注:一部のOLYMPUS機では、フォーカスブラケット機能を
使用する、という回避手法はあるにはあるが、やや煩雑だ)
_c0032138_18552292.jpg
本MZ45/1.8は、一応OLYMPUSでは中位のPREMIUM系列だ、
値段は安価(定価で35,000円+税)ではあるが、あまり
ビギナー向けのレンズだとは思わない方が賢明だ。

・・でも、そういう風に「これはビギナーには無理だ」と
いつも言っていても意味が無いかも知れない。つまり
「ではビギナーはいつ練習し、いつ上達するのだ?」
という事になってしまい、いつまでもステップアップが
出来ないからだ。

ビギナー層でも、本レンズのような「やや難しいレンズ」を、
あえて購入し、たとえ半数だろうが大半だろうが、失敗撮影
を繰り返しながら、その何が問題であったのかを考えて、
またカメラ設定を変えたりしながら撮って、そうやって経験や
知識を積んでいってスキルを高めるしか無いかも知れない。
まあ、そういう意味では、やはり本MZ45/1.8は、ビギナー層
向けのレンズと言えるのであろうか・・?

----
さて、今回の記事「マイクロフォーサーズ単焦点 特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・


Viewing all articles
Browse latest Browse all 791

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>