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特殊レンズ・スーパーマニアックス(14)パンケーキ レンズ

本シリーズでは、やや特殊な交換レンズを、カテゴリー別に
紹介している。
今回の記事では、一眼レフ用の新旧パンケーキ レンズを
6本(故障品込み7本)紹介しよう。

Pancake (パンケーキ)とは、小麦粉等の素材を、フライパン
等で平たく焼いたケーキで、日本で言う所の「ホットケーキ」
と思えば良いであろう。で、これが転じて、「超薄型」の
カメラ用の交換レンズを「パンケーキ(型、レンズ)」と呼ぶ。

現代のミラーレス機用交換レンズでは薄型のものも多いが、
本記事では、ミラーレス機用は取り上げず、一眼レフ用の
薄型レンズに限定して紹介しよう。

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まず最初のシステム
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レンズは、CANON EF 40mm/f2.8 STM
(中古購入価格 12,000円)(以下、EF40/2.8STM)
カメラは、EOS 6D (フルサイズ機)

2012年発売と、一眼レフ用としては、かなり新しい時代の
パンケーキ型レンズである。
詳細は後述するが、パンケーキレンズは銀塩MF時代の
1970年代頃までの製品が主であり、その後の1980年代後半
のAF時代からは、薄型化が困難で新製品が殆ど無かった。

なお、CANONでは銀塩時代を通じて、何故かパンケーキ型
レンズを発売しておらず(推測だが、当時のFD系レンズに
備わる自動絞り機構を入れる事が困難であったと思われる)
このレンズがCANON史上初のパンケーキであろう。

姉妹製品として、2014年発売の「EF-S 24mm/f2.8 STM」
が存在する。こちらは、APS-C機専用のパンケーキであり、

換算画角は約38mmと、本EF40mm/f2.8と大差ない。
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CANON機(EOS一眼レフ)は、フルサイズ機とAPS-C機の
住み分けが大きく、EF-S型レンズをフルサイズ機に装着
する事ができない。

あるいは、多くの場合、フルサイズ機をクロップできない
(注:EOS-1D X系での動画クロップ機能と、高画素機の
EOS 5Ds系での静止画クロップ機能は例外)という、
ユーザーから見た使用利便性を損なう要素(弱点)がある。

CANON一眼システムでの、この課題への対処法だが、
1)必ず、CANONフルサイズ機用EFレンズを購入する。
(これは、フルサイズ機でもAPS-C機でも使用できる)
2)EOSのフルサイズ機とAPS-C機を両方使用する。
がある。

さて、本レンズであるが、オーソドックスな描写力であり、
その点では、さほど目を引く部分は無い。
最短撮影距離30cmは、そこそこ優秀だ。
130gと軽量で、今回使用のEOS 6Dとの組み合わせにおいて、
「CANONフルサイズ一眼レフ最軽量AFシステム」となる。
また、定価も中古相場も安価であり、エントリーレンズ
並みの価格帯で入手が可能だ。

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弱点はSTM(ステッピングモーター内蔵)レンズとして、
これをEOS機(一眼レフ)に装着しない場合では、絞りの
制御が出来ない事は勿論、MF操作も全く効かなくなる事だ。


この仕様は、私の個人的な心情(価値観)からは、とても
不満であり、この為、他のSTM系レンズは、出来るだけ
買わないようにしているが・・
本EF40/2.8STMは「CANON初のパンケーキ」という歴史的
価値の高さを鑑みて、あえて問題点を飲んで購入した次第だ。


まあ、あまり実用的な価値は無いとは思うが、その点では、
ほとんど全てのパンケーキレンズでも同様である。

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では、次のパンケーキシステム
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レンズは、smc PENTAX-M 40mm/f2,8
(中古購入価格 12,000円)(以下、M40/2.8)
カメラは、SONY NEX-7 (APS-C機)

1970年代後半のMFパンケーキレンズ。

パンケーキレンズの構造であるが、一眼レフのマウント面
あたりに、テッサー型(3群4枚)等のシンプルな構成の
レンズ群を配置する事で、全体が薄型のレンズができる。
その際の焦点距離は、およそカメラのフランジバック長と
同等になる為、銀塩時代からの(フルサイズ用)パンケーキ
レンズの焦点距離は、だいたい40mm~50mmの範囲となる。
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本M40/2.8は、3群4枚テッサー型では無く、4群5枚構成と
やや複雑だ。テッサー型では無い、こうした構成のパンケーキ
も、世の中には多くある。前述のEF40/2.8STMもそうだし、
本記事で後述のパンケーキでも、少なくは無い。

さて、本M40/2.8はPENTAX MX(1976年)の登場にあわせた
小型軽量の「Mシリーズ」に属するレンズだ。

MXは、その4年前のOLYMPUS M-1(OM-1)に対抗して
世界最小を狙ったカメラであるが、単に小さいだけでは無く、
格好良い機体であった(譲渡により現在未所有)

特に、本M40/2.8との組み合わせでは、当時最軽量クラス
のシステムとなり、マニアックさもあった。

後年、2010年代では、カプセル玩具(ガチャガチャ)にも
なったくらいである(下写真)
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カプセル玩具は、既存製品のミニチュア模型の場合では、
現代では入手が難しい非常にマニアックなモノを狙い目と
した商品が多いが、その企画に上がるという事は、やはり
本M40/2.8も、マニアックなレアものなのだろう。

なお、最短撮影距離は60cmと、標準(系)レンズとしては
長目である(通常、50mm/F1.4級レンズの最短は45cm)
まあ、本M40/2.8に限らず、たいていのMFパンケーキは
最短が60cmであり、それはパンケーキレンズの弱点と言える。

パンケーキ共通の欠点としては、他には、ピントリングや
絞り環が細く(狭く)、MF操作性がかなり悪い事。
それから、描写力がスペシャルという程には良くはなく、
標準的な性能である事。それと、稀に焦点移動が発生する
レンズがある等だ。

本M40/2.8も、特に描写力的には特筆すべきものは無く、
またMF操作性も勿論悪い。
あくまで、デザイン上の「格好良さ」だけであろう。
MXのような小型機に付けるのみならず、大型機にチョコンと
薄型レンズが付いている状態も格好良い。
(例:CONTAX RTSⅢやAXに、CONTAX Tessar T*
45mm/f2.8を装着した状況等。「大小効果」として後述)

まあ、その「格好良さ」が、パンケーキレンズの本質であり、
所有の醍醐味であろう。
だから、1990年代後半には「中古カメラブーム」の一環
として、一大「パンケーキブーム」が起こった訳だ。

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ただまあ、現代のミラーレス機にマウントアダプターを介して
銀塩一眼レフ用のパンケーキを装着すると、アダプターの分、
レンズが前に出て装着され、逆に、極めて不恰好となる。

よって、あまり本記事のように、NEX-7といったミラーレス機
には装着したく無いのが本音の所ではあるのだが、
実のところPENTAXのM型レンズ等は、現代のPENTAXデジタル
一眼レフでは、装着できても使用利便性が極めて悪い機種が
大半であるので、一眼レフでは使いたく無い訳だ・・

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では、3本目のシステム
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レンズは、NIKON Ai NIKKOR 45mm /f2.8P
(新品購入価格 38,000円)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2001年に新発売された、「かなり遅れて来た」MFレンズ。
まあ、その理由は、少し前の時代の「中古カメラブーム」や、
「パンケーキブーム」を受けて、急遽、市場に投入された製品
であるからだ。本レンズに限らず、同様の理由で、MF一眼レフ
FM3Aや復刻版MFレンジファインダー機NIKON S3,NIKON SP
等が新発売された。ニコンは、企業イメージからは、やや意外な
ほどに、こうした市場の流行には乗り易いのだ。


で、このレンズは「投機対象」になってしまい、そういう点では
好きなレンズでは無く、それにパンケーキブームも、すでに終焉
しかけていた状態で出て来たレンズだ。「出足が遅い」とも思って
しまう。(このレンズが出てくる頃に、やっとパンケーキに興味を
示すとは、ユーザー層は、なんて流行遅れなのだ!とも思っていた)
まあ、とりあえずは買ってみたものの、あまり好んでは使用したい
と思った事は無かった。(付けて歩くだけで、流行遅れで格好悪い)

で、その後2000年代後半に、絞り羽根が不調になって一度修理
したのだが、2010年代中頃から、また絞り羽根の動作が不調で、
現在ではもう、まともに動かない。
ブームに乗って開発したものの、無理に小型レンズに自動絞り
機構を入れた事で、構造が脆弱であったのかも知れない訳だ。
まあ、これは好きなレンズでは無いので、再度修理する気にも
なれないで、もうほったらかしだ。
本記事では、外観紹介のみとしておこう。

ニコン製パンケーキ紹介の代替として、以下の準パンケーキ
レンズを取り上げる。
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レンズは、NIKON Ai NIKKOR 50mm/f1.8(S)
(中古購入価格14,000円)(以下、Ai50/1.8)

恐らくは、1980年頃に薄型化されたバージョン。それ以前にも
それ以降にも、Ai50/1.8は国内版のみならず、海外仕様やらが
あれこれと多く存在し、AF時代に入っても、本レンズの構成を
踏襲した物が、ごく近年まで発売されていた、という超ロング
セラーのシリーズのレンズだ。
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まあ、すなわち描写力の面では、ほぼ完成されていた設計の為、
長期に渡り、大きな改良の必要性も無く販売が継続された訳で、
その点においては、「名玉」とも言えるであろう。

余談だが、本レンズ等のニコンMFレンズ群において、仕様や
製造年代の微妙な差異による、正確な型番とか、その発売年
とかの差は、個人的には全く興味が無い。

つまり、型番が多少違おうが外観の差が多少あろうが、中身が
全く変わってないケースが殆どであるから、「実用上では、
その差異に言及する意味が無い」と思っているからだ。


だが、世の中の「ニコン党」の中級マニア等は、そのあたりの
差異を、何故か、ものすごく気にする。
下手をすれば、それは投機の為の要素もあるのかもしれない
(レアな仕様のバージョンであれば、高く売れるとか・・
 まるで古銭での発行年度(製造数)のような物か?)

私は、全く逆に「小さい差を気にしすぎだ!」と思ってしまうし、
投機については、それはマニア道に外れる行為、とも考えている。
よって、ますます、ニコン製レンズの型番や仕様の差について、
正確さを求める事も、調べる事も、何もやりたくなくなって
しまうのだ。なので、あえて型番などは適当に書いておこう。
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さて、前述のように、本レンズの描写力については問題は無い。
本レンズは純粋なパンケーキとは言い難いのだが、描写力の面
まで加味すると、「純パンケーキ」よりも、はるかに実用性が
高い「準パンケーキ」であると思う。

中古も、各時代のものがまんべんなく販売されていると思うし、
AFバージョンの場合も、そこそこ安価だ。
実用的な意味において「ニコン党必携」のレンズであろう。
なお、仮に投機対象となって相場が上がってしまっているので
あれば、実用的には、AF版を買えば良い、それであれば1万円
以下で買えると思うし、「性能対価格」のコスパ面では、
そのあたりが妥当な線だ。

銀塩時代のGNニッコール45/2.8(譲渡により現在未所有)の
ように、パンケーキブームの際に、約10万円という、その性能
からは、どう考えても不条理な相場にまで高騰してしまった
事は、どうにも納得できる話では無い。
いずれにせよ、ブームに乗って高値でも買ってしまうユーザー
(好事家)側にも責任がある話だ。

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次いで、4本目のシステム
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レンズは、KONICA HEXANON AR 40mm/f1.8
(中古購入価格 13,000円)(以下、AR40/1.8)
カメラは、PANASONIC DMC-G1 (μ4/3機)

恐らくは1970年代製と思われる、MF準パンケーキレンズ。
5群6枚という構成で、一般的な小口径標準レンズに近いので
あろう。このあたりは、フランジバックが40.5mmと、
他社の一眼レフより短いKONICA ARマウントである為、
他社のパンケーキよりも短めの焦点距離で、薄型設計が可能で

あったのかも知れない。
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パンケーキは、それ1本だけをカメラにつけて持ち出して楽しむ
タイプのレンズであり、もし、あれこれと交換レンズを持って
いくのであれば、パンケーキで機材を軽量化した意味が無い。
そういう点では、できれば35mm~40mmの準標準画角の方が
銀塩時代においては、被写体汎用性が高く、望ましかったのだ。

だが、デジタル時代に入り、KONICA ARマウントのMFレンズは、
そのフランジバックの短さが仇になって、デジタル一眼レフ用
のマウントアダプターが作れず、使用不能になってしまった。

長くその状態が続き、もうARマウントのレンズは処分しようか?
とも思っていたのだが、2010年前後にミラーレス時代に入り、
フランジバックのさらに短いミラーレス機ではKONICA AR用の
アダプターが容易に作れるようになり、10数年ぶりにARレンズ
の復活を見た次第だ。
その立役者は、今回使用している初のミラーレス(μ4/3機)
であるDMC-G1だ。この機種が出たおかげでARレンズが再度
使えるようになったので、本当に良かった。

「換算焦点距離が80mmになってしまう」等と野暮な事は言うまい、
システム上での、レンズの換算焦点距離(画角)に応じた被写体
の選び方がある訳で、元のレンズの焦点距離など、ある意味では
どうでも良い話なのだ。だからフルサイズ機でオールドレンズを
使う意味や意義も、焦点距離的には、あまり重要な点では無いと
思っている。(むしろフルサイズ機では、レンズの周辺収差が
目立ち、オールドレンズ母艦として適さない場合が大半だ)
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さて、本AR40/1.8の描写力だが、逆光耐性が低く、ボケ質破綻も
発生する、これはまあ古い時代のレンズなのでやむを得ない。
一部のマニアに「神格化」された「コニカ・ヘキサンノン」も、
それは、ある時代での相対的評価で、かつ、ある一部のレンズ
だけの話であり、AR40/1.8のような「量産ヘキサノン」に、
過剰な期待を持つのは禁物だ。
まあ、うまくレンズの欠点を出さないような条件で撮れる
ならば、悪いレンズでは無い。ただ、それは「歩留まりが悪い」
という事も意味するし、「使用者のスキルに応じて評価も変わる」
レンズであるとも言える。

現代において、ヘキサノンARの中では、本AR40/1.8は比較的
ポピュラーで、中古市場でも稀に出てくる事がある。
ただ、若干プレミアム相場気味だ。これはやはりパンケーキ
であるが故にであろうが、本レンズの描写力など全般を加味
した適正相場は、やはり1万円あたりが良いところであろう。
MFパンケーキレンズ全般で、1万円を超える価格は、そのコスパ
面からは考え難い、何故ならば、1万円も出すならば、もっと
遥かに良く写るMF標準レンズは、いくらでも存在するからだ。

パンケーキブームが去ってから、およそ20年、いまだに
高値の相場でパンケーキが売れる筈も全く無く、高値すぎる
相場は、販売側も購入側も、少々認識不足でもあると思う。

デザイン(外観)面だけが、パンケーキの価値とも言えるが、
ミラーレス機では、アダプター使用で、その長所は得られない、
(デジタル)一眼レフに装着可能なパンケーキのみ、その
恩恵に預かれるが、それが可能なシステム組み合わせは、
極めて限られる、というのが実情だ。
まあだから、現代においては、「MFパンケーキブームは、
もう起こらない」と解釈する事も可能なのだが・・

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さて、次のパンケーキ
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レンズは、CONTAX Tessar T* 45mm/f2.8
(中古購入価格 24,000円)(以下、T45/2.8)
カメラは、CANON EOS 30D (APS-C機)

1982年頃に発売された、一般的には「パンケーキの元祖」
とも言われている薄型レンズ。

ヤシカ(京セラ)CONTAXは1975年にCONTAX RTSを発売。
それは非常にセンセーショナルな出来事であったが、CONTAXの
商標取得の金銭的負担や、それ以外の複雑な要因がからみあい、
ヤシカは、なんと、その年に経営破綻してしまう(汗)
京セラの資本投下で、なんとかCONTAXの事業は存続する事と
なったが、RTS以降のCONTAXのカメラ展開は、ずいぶんと
大人しい状況になってしまった。

RTSから7年が経過した1982年に、やっとRTSⅡが発売、
ちょうどその頃に、本T45/2.8も発売された事となる。
しかし、RTSⅡはハイエンド機とは言え、さほど大柄な機体
ではない、本T45/2.8と組み合わせても「大小効果」
(注:大きな機体にパンケーキを組み合わせると格好良い)
が得られず、おまけに当時のCONTAXユーザーは、標準レンズ
と言えば、名玉のPlanar T* 50/1.4を、ほぼ全員が志向する
だろうし、CONTAXユーザーの一部は「富裕層」でもあるので
「あまりに貧相なレンズをつけると、偉そうに見えず格好悪い」
と、そうしたブルジョア的な考えを持つユーザーも多かった。
よって、本T45/2.8に注目するユーザーは、殆ど居なかった
であろう。実際にも早々に生産中止に追い込まれた模様だ。
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人気が出るのは、後にMM型となって、再生産が始まった頃
(注:発売年不明、1993年頃? 本レンズはMM型)であり、
1990年に発売された大型ハイエンド機、CONTAX RTSⅢに、
T45/2.8を組み合わせたマニアが居た事で、その「大小効果が
格好良い」と、マニア層に一気に、このファッション・スタイル
が流行し、その後の1990年代の一大「パンケーキブーム」に
繋がって行く。

なお、RTSⅢは発売時の定価が35万円もする高額機体であり、
マニアであっても、そう簡単に買えるものでは無かった。
まあ、だからこそRTSⅢにT45/2.8をつけた姿が「憧れ」に
なったのだろう。

RTSⅢは、私も未所有ゆえに、同様な大型機体である
CONTAX AX(1996)にT45/2.8を装着した「大小効果」を
例として上げておこう(下写真)
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まあでも、パンケーキブームは1990年代末には終焉していた。
というのも、実際のところ、世の中には数える程の機種しか
パンケーキは無く、上級マニアが真剣に集めようとすれば、
たいてい、コンプリートがすぐに出来てしまうのだ。
ごくレアなもの、例えばGNニッコールやOLYMPUS OM40/2等は、
レアなのにマニアが欲しがった為に、投機目的や市場原理で、
プレミアム価格となってしまった。が、上級マニアは必要以上に
相場が上がりすぎたものには、興味を失ってしまう、だから、
もう、その時点でパンケーキブームは終了だ。
(注:本記事で、名前が出て来ない他のMFパンケーキには、
RICOH XRリケノン45mm/f2.8(譲渡により現在未所有)
RICOH XRリケノン28mm/f3.5(ブロンズ版、未所有)および
MINOLTA New MD 45mm/f2(準パンケーキ、故障廃棄)がある。
他にも、準パンケーキと呼べる物があるかもしれないが、
何mm以下の厚み、等と、線引き定義をする事は困難だ)

そして、本T45/2.8に関しては概ね1990年代を通じて継続
生産されていたと思われ、入手性が高かった事から、逆に
投機対象やブームにはならず、落ち着いた販売状況が続いた。
(ただ、その分、本レンズは1990年代での中古購入価格が
24,000円と、高価すぎたと思っている)

2000年頃になると、そこまでマニア層が色々と収集した
パンケーキが、いずれも実用性や性能が低かった事から、
「今更、パンケーキを欲しがるなんて」という風に、
中上級マニア層の間では、風潮や常識が広まっていた。
だから、NIKONが2001年にAi45/2.8Pを新発売した際に、
過剰に反応したのはマニア層での実情を知らない投機層と、
流行に乗り遅れた初級マニア層だけの状態になっていた訳だ。

また、2002年にはCONTAX ARIA 70 Years という限定版
銀塩一眼レフが発売され、その機体に付属していたテッサー
100周年記念版の「TESSAR 100 Jahre」は、銀色塗装の
鏡筒のみならず、フィルター径も一般的なTessa 45/2.8の

φ49mmとは異なっていたと記憶している。親しい知人が
そのセットを所有していて私も欲しかったのだが、銀色枠
フィルターの特殊サイズが入手できそうも無い、という
些細な理由(汗)と、パンケーキブームも終息していた
事から、その購入は見送った。(注:現代、このレンズは
投機対象のプレミアム価格となっている。「いくらなんでも
20年も流行遅れとは・・」という感想も無きにしもあらずだ)
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さて、本T45/2.8だが今回はEOS一眼レフに装着している。
Y/C→EFのマウントアダプターはフランジバック長の差が
少ない為に薄型の物が作れ、デザイン的にはとても格好良い、
ただし、ここで重要な注意点が2つある。

1)薄型アダプターでは、装着したレンズを外し難くなって
 しまう場合がある。(私も、約10年間、このアダプターを
 装着したままで外れないY/Cレンズがあって、やっと近年に
 アダプターを分解する事で、外す事に成功した)

2)EOSのフルサイズ機では、ミラーが干渉し(当たって)
 使えなかったり、撮影エラーとなったりして、カメラを壊す
 リスクが高くなる。(EOS 6Dでの実験では、全部では無いが、
 多くのY/Cマウントレンズで同様の問題点が発生した。
 EOS 6Dは若干高価な機体なので、こんな事で壊したら勿体無い)
 この為、EOSフルサイズ機では無く、問題が起こり難い
 EOS APS-C機でY/Cレンズを使用する事が基本だ。
 また、さらに安全を期すならば、EOS APS-C機の中でも、
 壊しても良いような古い機体を用いる事だ。この為、今回は
 EOS 30D(2006年、現代の中古相場=数千円)を使用している。

というか、そもそもEOS機で、Y/Cマウントレンズを使う意味が
殆ど無い、まあ、今回は、T45/2.8とのデザインバランス上の
意味で、アダプターの厚みが無いシステムとしているのだが・・

EOS機では、オールドレンズ使用時に「排他的仕様」により
フォーカスエイドが効かず、当然、ピーキングも手ブレ補正も無く、
デジタル拡大機能も無く、絞り込むとEOSの光学ファインダーは
暗くなる、MF用のスクリーンに換装してある場合は、なおさらだ。
まあ、近年のEOSであれば、ライブビューで撮れば良いのだが、
モニター画面解像度が低いものを、拡大したり移動したりの
MF操作系・操作性が煩雑となる為、あまり実用的では無い。

結局、EOSはオールドレンズ用には効率的で使い易いシステム
には成り得ないのだ。他に色々と相乗効果的に効率的になりうる
機体を持っているのに、わざわざ、その利便性を放棄する
EOS機(一眼)で使う意味や意義は、残念ながら全く無い。
EOS機にオールドレンズを付けたりしたら、カメラシステムの
事を何もわかっていないようで格好悪いのだ。

ただ、本レンズT45/2.8の場合のみ、まず、その格好良さから、
EOS機に装着するのは有りだ。T45/2.8をミラーレス機で使う
事は、薄型に見えず、それも格好悪い。
見た目以外の、もう1つのポイントとしては、T45/2.8は
「焦点移動」が発生するレンズであるから、それを回避する為、
Y/C→EFアダプターで、絞り込み(実絞り)測光とする事に
意味がある、この用法では「焦点移動」は問題にならない。

さて、最後に本T45/2.8の入手性であるが、結構玉数はあると
思う、適正相場は、CONTAXのブランドバリューを加味しても
1万円台後半までであり、2万円を超えてまで買う実用価値の
あるレンズでは無いと思う。

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、smc PENTAX-DA 40mm/f2.8 XS
(中古購入価格 13,000円)(以下、XS40/2.8)
カメラは、PENTAX KP (APS-C機)

2010年代の新鋭超薄型AFレンズ。一般的なパンケーキよりも
さらに薄い約9mmmの仕様なので。PENTAXでは、これを
「ビスケット・レンズ」と呼んでいるが、あまり世間一般的に
広まってはいない呼び方だ。
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さて、1980年代後半以降、何故、パンケーキレンズが絶滅して
しまったか?は、MF時代には薄型のレンズを作れたものの、
その後の時代に他のレンズはAF化したが、当時の技術では、
薄型のAFレンズを作る事が困難であったからだ。

それ故、1990年代には、パンケーキレンズが殆ど無くなって
しまった為、余計に無いものねだりで「パンケーキブーム」が
起こったのであろう。

本XS40/2.8だが、非常に薄型である事はデザイン上では良いが、
実用的には極めて使い難い。とても薄いピントリングである事
に加えて、シームレスMF機能の「QSFS」も搭載されていない。
まあでも、QSFS無しは、その反面、有限回転式ピントリングと
なるので、MFの上級撮影技法上での操作性は向上する。

まあ、と言うか、よくこれだけの薄いレンズにAF機構を入れた
ものだとむしろ関心する。このXS40/2.8から30年前の1980年代
前半には、本記事で前述したM40/2.8(本レンズより、ずっと
大きい)にすら、AFを入れる事はできなかったのだから・・

そして、その困難さに挑戦したのは、ある意味、工業デザイナー
のマーク・ニューソン氏によるデザインも理由にあったのか?
同氏は、PENTAX K-01をデザインした人であり、その超個性的な
デザインは、市場では大きく賛否が分かれた。

そのK-01のキットレンズとして、本レンズのオリジナル版が
あるのだ(注:本レンズは、銀色塗装の限定版だ)
まあ、工業デザイナーは絵を描けばそれで良いので、ある意味
楽なのかも知れない、大変なのは、この無理難題を押し付けられた
PENTAXのエンジニアの方々なのだろうが、よくこの難題に挑戦し
良くそれを成功させたと思う。この世界最薄レンズでデザイナー
の方が名前を上げてしまったら、ちょっと理不尽な事にはなるが
まあ、そういう感じでも無いし、そもそも、本XS40/2.8は、
あまり話題になる事もなかった。

もしこのレンズが、15年程早く、パンケーキブームの最中に
発売されていたら、マニアも大騒ぎしたのかも知れないが・・

本レンズのスペックだが、APS-C機専用(換算約60mm相当)
4群5枚構成、最短撮影距離40cm、フィルター装着可φ27mm
厚み約9.2mm、重量52g(=最薄、最軽量レンズ)

描写力は、可も無く不可も無し、まあ、このあたりは他の
パンケーキレンズでも皆同様だ。
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オリジナル母艦のPENTAX K-01との組み合わせでは、AF精度が
不足する為に、私は非推奨であり、PENATX KP等の一眼レフに
装着する方が、システム効率が良い。

現在は生産終了。中古入手性は、限定版では無いバージョン
であっても、やや悪いが、これはK-01との超個性的なセットは、
あまり万人に人気があったとは言えないからであり、つまりは
販売絶対数が少ない、という事であろう。
幸いにして投機対象にはなっておらず、比較的安価な相場で
購入可能だ。まあ、現代のAFパンケーキの適正相場は、
このあたり(1万円台前半)と、考えておくのが無難だ。 

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さて、今回の記事「パンケーキ レンズ特集」は、
このあたり迄で、次回記事に続く・・


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