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銀塩一眼レフ・クラッシックス(29)MINOLTA α-7 Limited

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「MINOLTA α-7 発売20周年記念記事」

所有している銀塩一眼レフの名機を紹介するシリーズ記事。
今回は第四世代(世代定義はシリーズ第1回記事参照)の
MINOLTA α-7 Limited (2001年)を紹介する。
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装着レンズは、MINOLTA HI-SPEED APO AF200mm/f2.8
(ミラーレス・マニアックス第67回、ハイコスパ第23回)

本シリーズでは紹介銀塩機でのフィルム撮影は行わずに、
デジタルの実写シミュレーター機で代替する。
今回は型番の類似からSONY α7を使用する。
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ミノルタの機種名にはハイフンが入り、SONYには入らない事
は何度も述べてきた通りだが、このように機種名が酷似して
いても、内容が全く異なるカメラが世の中には存在するので、
型番は決して間違って記載してはならない。
ましてや本機α-7(Limited)は歴史的超名機である、決して
α7とは書いてはならない(その間違いを至る所で見る)

以降はシミュレーターでの撮影写真と、本機α-7 Limitedの
機能紹介写真を交えて記事を進める。
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さて、革新的で記念碑的なポジションのカメラに付けられる
事がミノルタの(後のSONYでも)慣例となっていた「7番機」
の登場である。

最初に書いておくが、本機は「傑作機」である。
銀塩AF一眼レフ、いや、全てのカメラを語るにおいて、
本機の存在を無視する事は出来ない。

ミノルタの「α」は、1990年代において決して順風満帆とは
言えなかった(第23回α-9、第27回α-SweetⅡ記事参照)
しかし銀塩末期において、紹介してきたα-9,α-SweetⅡ,
そして本機α-7の3機種がやっと出て来た事で、それまでの
紆余曲折を帳消にした。ミノルタαの最終期にこの「黄金期」
を築けた事は特筆するべき歴史だと思う。

本機発売の2年後の2003年に、ミノルタはコニカと合併して
「コニカミノルタ」となる、その後もデジタルカメラの事業は
継続していたが、さらに3年後の2006年にカメラ事業(α等)
を、そっくりSONY等に譲渡(移管)して撤退してしまう。

そうした歴史の中で、本機α-7(Limited)は、ミノルタが
最後に意地を見せた銀塩の最高傑作機であり、歴史的価値が
極めて高い。
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この時代は「趣味の時代」であると、本シリーズ記事では
定義している。まあBESSA等のレンジ機がデジタルカメラと
混ざって新発売されている位だから、確かに趣味性の高い
時代だ。が、中には投機目的、あるいはコレクターとして、
ひたすら「使わないカメラ」を買い捲っていたユーザーの
比率が高かった事も否定は出来ない。

だが、実際に写真を撮る為のカメラを必要としたユーザーも
当然多く居た。まあ業務上の用途でカメラを使うのであれば、
NIKON F5やCANON EOS-1N/Vが有力な候補であろう、
しかし重厚長大なそれらは趣味での実用的な撮影には向かない。


かと言って、流行のレンジ機や古いMF一眼レフでは、今度は
効率的な撮影は出来ない。「のんびり撮ればいいのさ」とは
言ってみたところで、撮りたい時に撮れない、あまりに
非効率的な操作性ではストレスを感じてしまう事であろう。

そういう視点では、この時代の実用的な銀塩カメラというのは、
さほど多くない、それを挙げるとしたら以下の数機種だけだ。

NIKON F100 1998年(未所有)
NIKON F80D/S 2000年(現在未所有)
CANON EOS-3 1998年(未所有)
CANON EOS 7 2000年(本シリーズ第26回)
PENTAX MZ-3 1997年(本シリーズ第21回)
MINOLTA α-7 2000年(本機の通常仕様版)
MINOLTA α-SweetⅡ 2001年(本シリーズ第27回)

たったこれだけだ。これは一眼レフに限定しているのではなく
他のジャンルのカメラ全体を見渡しても、これだけなのだ。
(まあ、銀塩高級コンパクト機の一部も実用機と言えただろう)

これら「実用機」のうち半数以上は使っていたが、いずれも
良く出来たカメラである。
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で、ここまでのAF一眼レフの進化は速かった。最初の実用的
AF機がミノルタα-7000(1985年)であった事を考えると、
およそ15年でAF一眼レフは完成の域にまで達してしまい、
そして、その後にデジタル時代をむかえ、2005年には、
ほぼ絶滅してしまっていた。この僅か20年だけの期間が、
(銀塩)AF一眼レフの歴史である。

以降のデジタル一眼レフについては、その殆どの歴史は別記事
「デジタル一眼レフ・クラッシックス」のシリーズに詳しい。
けど、それらを読んでもらってもわかると思うが、
デジタル一眼レフではデジタル化での増えすぎた機能に対して
それを写真を撮るという行為において、どのように整理して
どのように使い易くするか、という「操作系」の概念が
ずっと未発達のままだ。

また、別シリーズ記事「ミラーレス・クラッシックス」では
デジタル一眼レフよりも後発のミラーレス機において
「操作系」の概念は良く発達はしたが、それでもユーザー側
がついてこれずに、途中で操作系が退化してしまった例も
いくつかあったと述べた。
このあたりは、ターゲットユーザー層のスキル(技能、知識、
経験等)とのバランスもあってなかなか難しい点もある。

ただ、背面モニターやEVF内にGUI機能を持たせる事が任意等、
自由度の高いミラーレス機においては概ねデジタル一眼レフ
よりも操作系が優れている事は確かだ。

デジタル一眼レフにおけるもう1つの課題はハイエンド級の
機体の操作系が特に遅れている事だ。
そうした上級機には、当然多数の新機能が搭載されている、
それを使いやすくするべき操作子や操作系の改善が必要で
ある事は間違いないのだが、そこで2つの問題点がある。

まず、業務用途でそれらを使う職業写真家層は旧来の機種から、
操作系が変わると、それまでつちかってきた熟練の技能が役に
立たなくなる、だから新しい操作系の搭載を嫌う模様だ。
(ただ、例えそうだとしても、非常に保守的な考え方だ)

もう1つは、まったくの初級層がハイエンド機を欲しがる事だ、
勿論、複雑な新機能等は、さっぱり意味や使い方がわからない。
変にそれら新機能を使うと、元に戻せなくなったり、あるいは
写りがおかしい等とメーカーにクレームが来てしまう。
だから、それらをあえて使い難くしたり(安全対策)するので
結局、上級機は操作系の進歩が遅れてしまう。
(こちらも、決して納得の行く製品コンセプトでは無い)

新規ユーザー層を対象とした「ミラーレス機」においては、
どんどんと実験的に新しい操作系を搭載できる事に比べて
一眼レフとは、ますます差が開いていく一方になる。
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まあでも、上記は現代の話である。
銀塩時代ではどうだったか?と言えば、旗艦機だけを見たら
まずNIKONは、F3→F4→F5→F6の旗艦機群において
「まったく別のカメラ」とも言えるほどに操作系を変遷させ
ている、F3は旧来の方式であり、F4はアナログダイヤル、
F5はデジタルダイヤル、F6(末所有)は背面パネルの
メニュー式、という感じであった。

対してCANONはEOS-1/HS→EOS-1N/RS→EOS-1Vにおいて
ほとんど操作系を変えていない。まあEOS 7等の中級機に
おいては斬新な操作系であったので、技術的に無理であった
訳では無いのだが、前述の「操作系が変わる事を嫌う」
保守的ユーザー層への対応の意識が強かったのであろう。
でも、この結果、CANON旗艦機の操作系は、相当に時代から
取り残されてしまっていた。

CONTAXはN1で、旧来のRTS系MF一眼から、かなりの操作系
の進歩を見せたが、残念ながらNシステムは商業的に失敗し、

数年後にはカメラ事業から撤退してしまう。

PENTAXは1990年代前半のZシリーズで、斬新で高度な
「ハイパー操作系」等を搭載したが、難解なそれはユーザー
側がついてこれず、続く1990年代後半のMZシリーズでは
安易な操作系にダウングレードされた。
(注:デジタル時代では、他社との「差別化要因」で、また
高度で難解なハイパー操作系を採用しているが、これは概ね
悪く無い傾向だ)

ミノルタは1990年代初頭のα-xiシリーズでは、酷評を買う
ような状況であったのが、逆に、そこまで言われた事で
大きく開発方針を転換できたのであろう。α-507si(1995年)
からα-9(1998年)と、操作系の概念は確実に進歩、そして
ついに完成の領域に達したのが、本機の通常仕様版のα-7
(2000年)である。
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銀塩時代においては、写真を撮る為に必要な操作などは
本来は、たかが知れている。ピント、絞り、シャッター速度
その3つがちゃんと設定できさえすれば良い。

本シリーズ記事でも、この第四世代の趣味のカメラの中には
BESSAシリーズ等、実際に上記3要素しか搭載されていない
カメラもあるが、それでもちゃんと写真は撮れる訳だ。

銀塩では「増えすぎた機能・・」と言っても、AEとAF絡みの
内容に限定されている。AEすなわち露出をきちんと合わせる事
については合理的かつ迅速に行えれば良く、AFつまりピントも
必要な場所に素早く合えば良い、ただそれだけの事だ。

AF測距点が多ければ優秀なカメラだ、とは単純には言えず、
その測距点を選ぶ作業が煩雑になる為、操作性が悪化したり、
そうならないように、いくつかの測距グループにまとめる
ようにすれば、その設定操作系がまた煩雑になる。

また動体追従AFを実現すれば、もし動体が設定した測距点から
外れるような事があった際に、どのように追従させるか?
はたまた、前を横切る別の被写体があった場合、そこに追従
させるべきか否か?など、何か機能を追加した事で、それに
関する設定操作系は限りなく複雑化してしまう。

「もう面倒だから、AFは中央1点だけで十分だよ」と、そんな
声まで聞こえてきそうだ。まあ私も個人的には、精度が高い
強力なAFセンサーが1つあれば十分と思っている口だ、だから
その特徴を持つα-9(3点測距と貧弱だが、中央が高精度)
等は、高く評価しているのだ。

AFはまあ適当でも良い、いざとなればMFを使えば画面上の
どの場所でも瞬時にピントを合わせる事も可能だし
(ただし優秀なファインダーが必須だ)MFでは、被写体の
前を横切る物を気にする必要すら無い。

しかし、AE(露出)の方は、ちょっとやっかいだ。
「写真が撮れれば良い」と言うのであれば、BESSA等の
マニュアル露出機でも十分だ。けど、実際には、絞り値と
シャッター速度の関係や、測光方式はどうなっているか?
はたまた銀塩フィルムのラティチュード(ネガとポジでは
異なる)の制約の上で、露出補正をどう掛けるか、そして
ハイライトやシャドウをどう扱うか等が複雑に絡んでくる。

この辺の正解は無いのかも知れない、これ以前の時代では
PENTAXはハイパー操作系で、OLYMPUSではスポット測光で、
これらに対処をする方法を実践していた。
けど、複雑になりすぎるのだ、もっと簡便に設定操作が
出来る必要がある、そしてPENTAXやOLYMPUSの方式では、
ユーザー側に求める知識や経験値レベルが高い。そういう
意味では、簡単に使いこなせる方法論では無かったようにも
思える。

本機α-7 Limitedではどうか?
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まずAFに関しては、測距点が(やや中央寄りだが)比較的
バランス良く配置された9点測距で、これは背面の2次元操作子
(セレクター)が8方向+真ん中と、きっちり対応しているので、
ワンプッシュで確実に目的の測距点を選択できる。勿論LOCKも
でき、自動選択にもレバー操作子で瞬時に変更できる。
(注:AF精度は、α-9の中央測距点には敵わない)
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AF/MF切り替え専用ボタンを持ち、必要に応じて瞬時にMFに
移行できる。MF用に優れたM型スクリーンに換装しておけば
(α-9程に優秀では無いものの)MFでも不都合は感じない。

おまけにDMF機能がある。これはAFで合焦後、クラッチが自動
で切れるので、手動で任意にピントリングを廻す事が出来る。
近年のレンズ内モーターでのシームレスタイプ程の自由度は
無いが、殆どの旧α用レンズでもそれが実現できるのと、
旧来通りピントリングが有限回転式なので、近年の無限回転
式レンズの場合よりもMF技法的に圧倒的に有利だ。

9点測距のAF精度はさほど高くなく、たとえばマクロレンズ等
ではなかなかピントが合い難い。ただし、この時代であれば
まだマシな方で、一往復程度迷ったらちゃんと止まってくれる
(他機では何度も何度もAFが迷って往復する場合も良くあった)
で、止まったけど不安に思えば、DMF機能で何の操作も不要で
すぐさまMFに移行できる。(注:ピントが合い難い事が事前に
予想される場合、あえてダミーの場所でAFを合わせて停止させ、
DMFでMF移行する事で、AF/MFの切換の手間を省略する、という
上級者向けの高度なDMF技法が存在する)

ドライブモードの変更は専用のレバー操作子を持つ。
近年のミラーレス機FUJI X-T1(系)も類似の構造の操作子を
持つが、それは表示が小さくてわかりにくい。
本機α-7では設定操作を変える度に背面の白黒ディスプレイ
に、変更した設定内容がアイコンで表示される(勿論多言語
対応だ)今時のデジタルカメラでは、もっと綺麗で大きな
カラー液晶が背面についているのに、何故こんな簡単な事が
他機では実現されていない場合が多いのか・・?

さて、AE側はちょっと複雑だ。
まず14分割ハニカム測光は優秀なので、ネガフィルムでは
測光方式は殆どこれだけで事足りる。


絞り値とシャッター速度だが、P露出モードの場合、
PENTAX風のハイパープログラムとなっている。
PENTAX機では、この時に前後ダイヤルが占有されてしまい、
露出補正がやり難いという課題があったが、本機の場合、
独立した露出補正ダイヤルが存在しているので問題無い。
(PENTAX機で、この課題が改善されるのは、ハイパー操作系
初出の1991年から、実に25年後のK-1(およびKP,K-1Ⅱ
いずれも3ダイヤル機)での話である)
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しかも、この露出補正ダイヤルは反転させると1/2段±3EVと
1/3段±2EVが選択できる。
また、このダイヤルは絞り値とシャッター速度を変化させる
露出ステップ幅にも連動しているという念の入れようだ。

概ね1/3段側はポジ用、1/2段はネガ用と考えると良い。
これと同じ操作子は他にもCONTAX N1に搭載されているが
N1ではこれを変更しても露出ステップ幅は1段のままだ。

M露出モードでは、ちゃんとメーターによる表示で好ましい。
加えて、AEロックボタンを押してからが凄いのだが、
この時点では、もうハニカム測光は不要だ、ここで知りたいのは
画面上のある部分の輝度差がフィルムの限界(ラティチュード、
またはDレンジ)を超えているか否かだ。

だから、ここではスポット測光に自動的に切り替わる(!)
そしてメーター上にロックした基準露出値との差分が常時表示
されているので、画面上の部分でのハイライトとシャドウ等の
輝度差の判断が容易だ。
(これを本機では「メータードマニュアル」と呼んでいる)
加えてこのメーターは±3EVのスケールなので、ぴったり
ポジ(リバーサル)のラティチュードに相当している。
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さらに、AEロックを効かせた状態では、絞り値とシャッター
速度を同時に逆方向に動かす「マニュアルシフト」を
可能とする。これも非常に便利だ。
さらには、AEロックボタンは内蔵ストロボ使用時には意味が
変わるべき機能なので、自動的に「SLOW SYNC」設定になる。

この一連の操作系は「凄い!」の一言であり、設計思想の
秀逸さを強く感じる。
聞くところによると「メータードマニュアル」の概念は
社外アドバイザーの写真家の意見を取り入れたそうだが、
それを「操作系」に昇華させたのは社内開発チームの
功績であろう。

ちなみに、本機発売の数年後には一眼レフはデジタル時代に
突入したが、その時点においては、写真の専門家の意見を
取り入れようとしても無意味であった。つまり誰もデジタル
での撮影経験を持っていなかったからだ。

まあ、本機の時代の銀塩末期においては、そうした専門家層
の銀塩撮影に係わる高度なスキルやノウハウが、上手く製品
設計に反映できていた、という事であろう。
これはまさしく技術用語の「エキスパート・システム」だ。

ただまあ、非常に高度な概念とも言える。この優秀な操作系
を使いこなすには、ユーザー側にも高度なスキルが必要と
される、初級中級層では残念ながらその恩恵は受けれない。
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ここからは余談だが、本機の「操作系の無駄の無さ」は、
2008年のμ4/3機PANASONIC DMC-G1の無駄の無い操作系を
彷彿させる。設計思想に流れる血脈が極めて類似しているのだ。


まるで「Zガンダム」での「百式」が、初代ガンダム(RX-78)
の開発者が実は関与していて、両者の設計思想が似ている
(”機動戦士Ζガンダム Define”より)ようなものだと思う。

もしかすると同一人物の設計ではなかろうか・・?

これはダイナミック(動的)に変化する操作系の走りだった
かも知れない。後年のミラーレス機SONY NEX-7(2012年)
でも動的操作系が採用され、個人的には高く評価しているが、
続くα7(2013年)では、スタティックな操作系に簡略化
されてしまった。今回α7をシミュレーター機として使用して
いても無駄な操作子が沢山発生して、あまり使い易く無い。

ただ、SONY α7は初級中級層へのフルサイズ機の普及を狙った
機種なので、平易にせざるを得なかったのかも知れないが・・

(・・と言うか、NEX-7の操作系設計思想も、本機α-7に類似
している。ミノルタの事業撤退後、本機の開発メンバーが
PanasonicやSONYに流れた可能性が高いのだが、あまりに
パーソナルな話なので、あくまで推測のレベルで留めておこう。

しかし、1点だけ注意点、2013年からはPanasonicもSONYも
続くミラーレス機において、ここまで合理的かつ高度な
操作系は廃されてしまっていて、安直なものに落とされた。
結局、ユーザー側が追従してこれなかった訳だ。

まあ、この時代、新製品の企画マーケティングもネット上の
意見や要望等を反映している。その際、ネット上には
「AFが速い」「手ブレ補正が良く効く」「連写が速い」等の、
表面的でレベルが低い評価やレビューしか無いのであれば、
次世代の製品も、そういう面の改善しか優先しなくなって
しまう。残念な世情ではあるが、まずユーザー側がもっと
レベルアップしなくてはならないのも確かではなかろうか?)

それから本機α-7でのAE系の特徴だが、まだ色々ある。
AEロック状態でDISPボタンを押すと、背面のディスプレイに
14分割ハニカムパターンの個々のセル(素子)の露出値が
表示される、これはAEロックの露出値が基準で、黒(暗)
灰(標準)、白(明)という感じで、数値も出てくる。
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これを出せば、面倒なスポット測光を使わずとも露出分布の
確認に関しては十分であり、まさに驚異的な先進機能だ!
なお、後年のデジタル一眼レフでも、これに類似した機能を
実現した例は他に無い(あえて言えば白飛び警告や「ゼブラ
機能」であるが、銀塩の本機の露出概念とは異なっている)

それから、カメラ内部にEPROM(メモリー)を搭載していて、
撮影した写真のシャッター速度、絞り値を始め、測光モード
や露出モード、レンズの焦点距離等、現代の「EXIF」に
ほぼ相当する内容をフィルム7本分まで記憶してくれる(!)
なお、本機α-7 Limitedでは、この撮影データ記録機能は
フィルム18本分まで拡張されている。
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カスタム設定だが、背面のディスプレイに文字列でちゃんと
内容が表示され、それを読みながら設定ができるので
取扱説明書は不要だ。ここは現代のデジタル機では
当たり前の仕様であるが、本機α-7より前の機種では、
カスタム設定で説明文が表示された機種は1つも無い。
だから説明書が入手不能の中古機等の場合には、カスタム
設定を行う事が不可能であったのだ。

なお、背面のナビゲーションディスプレイはカメラを縦位置
に構えると連動して縦に表示される。今時のモバイル機器等
では当たり前の機能だが、一眼レフでは本機が勿論最初だ。
(注:縦位置判定で露出値算定を調整する機能は、NIKON機等で
既に実現されていたが、ここでは「表示が変わる」と言う意味だ)
この時代では、勿論、三脚を主体とする撮影技法は既に廃れて
いて、ほぼ100%手持ち撮影であるから、これは有効な機能だ。
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ここで、本機MINOLTA α-7 Limitedの仕様について述べて
おこうと思ったが、今回はあえて割愛する。本機の特徴は
数値スペックだけでは絶対に読み取る事ができない。

例えば、α-9の最高シャッター速度が1/12000秒だから
本機α-7の1/8000秒が劣っている、とか、そんな単純な
数値の比較でしかカメラの性能を語って欲しく無い訳だ。

そして、本機は実際に所有して、長く使った場合のみ、
いかに操作系やらの様々な点に配慮してあるかがわかる。
カメラの外観だけを見ていても、あるいはちょっと借りて
フィルム数本位撮っただけでは、絶対にわからない要素が
多々あるのだ。(だから、当時の雑誌のレビュー記事等も
あまり信用に値しないものが多かった)

まあでも、重さと価格だけあげておこう、いずれも
ノーマル機の場合のデータであり、本機α-7 Limitedの
縦位置グリップ仕様機では当てはまらない。

本体重量:575g(電池除く)
発売時定価:125,000円(税抜き)
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本機α-7 Limitedの長所だが、

すでに殆ど説明済みではあるが、ともかく優れた「操作系」が
特徴だ。それはAFやAE系、表示系など多数・多岐に及ぶが、
その中でも特に14分割ハニカムパターン測光値のグラフィカル
な表示等は、もう「操作系」という概念すら超越してしまう
ような革新的な機能であり、撮影技法そのものを変革させて
しまう。例えば、これまではOM-4Tiとかでチマチマと画面内の
それぞれの場所をスポット測光で測っていたのが、本機α-7
では14箇所が同時に計測され、一目瞭然に表示されるのだ!

他にも長所は多いが書いていくときりが無い、まあともかく
これまでの一眼レフとは次元が異なる凄いカメラであるし、
後年のデジタル一眼レフでも、本機を越えるレベルの操作系
を持つ機種は1つも無い。(注:操作概念はだいぶ異なるが、
PENTAX KP(2017年)は、本機と同等の、操作系5点満点の
評価となっている)
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あと、本機では現代のSONY α(A)マウント用レンズも、
超音波モーター搭載とかの新しい物でなければ使用できる。
(注:MINOLTA製で、ごく少数あった、超音波モーター
(SSM)仕様のレンズは、本機(以降の機種)で使用可)


例えばSONY製Sonnar T* 135mm/f1.8ZA(2006年)を
装着して試してみたが、ちゃんとAFも絞りも動作している。

さらに新しいSONY DT-SAM型番のAFモーター搭載レンズの
一部でも本機でAFが動作する。APS-C機用の狭いイメージ
サークルでも画面周辺のケラれは比較的少ないので、
周辺光量落ちの効果を狙って、デジタル専用レンズ(DT)
でのフィルム撮影も奇をてらって面白いかも知れない。


なお、勿論本機は銀塩機なので、手ブレ補正は当然効かない
センサーシフト方式のボデイ内手ブレ補正を銀塩で実現
しようとしたらフィルムを動かさなくてはならない。
(まるでCONTAX AXか?)銀塩一眼レフでそれを実現する
には、レンズ側に手ブレ補正を入れるしか無いのだ。

(だから、銀塩時代から手ブレ補正機能の搭載を目指した
CANON機、NIKON機(一眼レフ)は、デジタル時代の今に
なってもボディ内の手ブレ補正機能が搭載されていない)

ちなみに本機のデジタル版KONICA MINOLTA α-7 Digital
(2004年、デジタル一眼レフ・クラッシックス第3回記事)
は史上初のボディ内手ブレ補正搭載デジタル一眼レフだ。

本機は全体に、1機能=1操作子のアナログ的操作系を主体と
しているが、状況に応じて無駄な操作子とならないように
機能が動的に変化する絶妙な工夫が凝らしてある所が良い。
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余談だが、近年のデジタル機で、アナログ操作子を搭載すると、
必ずそこで設定操作をしないとならなくなり、他のデジタル系
ダイヤルと矛盾し、むしろ全体の操作系が悪化する場合がある。
(例:NIKON Df,FUJIFILM X-T1系等)

そうならないように、ぎりぎりの所で留めているのは、
これもまた本機の設計思想の優秀さであろう。
ともかく、実際に、かなり写真を撮っている人でないと、
この優れた設計は出来ないと思う。
_c0032138_07172547.jpg
さて、本機α-7 Limited の弱点であるが

まず、PASM選択ダイヤルが無駄である。これが軍幹部右側の
最も廻しやすい位置にある。露出モードはそんなに頻繁に変更
するものでは無いのだ。これを左側の露出補正ダイヤルと逆に
するか、又はFUNC+ダイヤル等で選択しても良かったと思う。

まあでも、ユーザー設定記憶の「3番」がデフォルトで
「STFモード」になっている為、これを適宜呼び出すという
意味では、このダイヤル位置は、かろうじてセーフだ。
(ちなみに、本物のSTFレンズを使っている場合は、
STFモードで擬似的に撮らなくても十分だ)
_c0032138_07172513.jpg
それから、縦位置グリップを使いカメラを縦位置に構えると、
測距点選択の操作子に親指が届かない。
私はキーボードやギター演奏もしているので、人よりも遠い
場所に指は届くとは思うけど、それでも無理だ。
(カメラ本体の設計チームと、付属品の設計チーム間で
製品コンセプトや機能仕様の統一が図られていない)

後は、背面ディスプレイの各種設定の操作系がNGだ。
下部に色々あるボタンを複数個押してチマチマと項目を選択
しなければならない、メインメニューを儲けて階層構造に
するべきであっただろう。この部分は設計思想が古いので、
全体の操作系とは別の人が設計したのかも知れない。
(ここも”分業”の課題が出ている。全体仕様を統括できる
優秀なマネージャーが居ないと、「縦割り組織」になって
個々にバラバラな仕様となってしまう恐れがある)

ただし、測距点選択の2次元操作子がカスタム等の設定操作に
有効な点はまだ救われる。
後年のデジタル一眼レフでは、本機より10年以上も後の機種
なのに、2次元操作子でのメニュー編集すら効かない、劣悪な
操作系のカメラもある。
_c0032138_07164136.jpg
さて、最後に本機α-7 Limitedの総合評価をしてみよう。
評価項目は10項目だ(項目の意味は本シリーズ第1回記事参照)
-----
MINOLTA α-7 Limited(2001年) 

【基本・付加性能】★★★★☆
【操作性・操作系】★★★★★
【ファインダー 】★★★★
【感触性能全般 】★★★
【質感・高級感 】★★★
【マニアック度 】★★★★
【エンジョイ度 】★★★★★
【購入時コスパ 】★★ (新品購入価格:105,000円)
【完成度(当時)】★★★★★
【歴史的価値  】★★★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】4.0点

非常に高得点だが、PENTAX LX(本シリーズ第7回)の
総合4.1点に僅かに負けてしまった(泣)その記事では
「LXの得点に並ぶカメラは、あと1機種あるか無いか・・?」
と書いたのだが、本機α-7(Limited)がそれである。


評価が低かったのは、感触性能、高級感、コスパであった。

コスパはまあしょうがない、この限定モデル(Limited)が
欲しくて、ノーマルのα-7から縦位置グリップ付きの
本機に買い換えたからだ。
ノーマル機であれば、4点は与えていたであろう。

感触性能や高級感も、いたしかたがない。
「工芸品」のLXは別格として、ミノルタには上位機α-9
(本シリーズ第22回)もある。その機種のこれらの評価点は
悪く無い、つまり本機はα-9から見たら「格下」であるから、
一応メーカー側としては「差別化」しておく必要がある。
さもないと、旗艦機α-9の立場が無い(汗)
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本機は歴史的傑作機であり、「銀塩撮影を行う道具」と
しては、まさしく究極の一眼レフであろう。

今からフィルム撮影をやってみたい、と考えるユーザーには
最大の推奨カメラである。中古相場もノーマル機であれば、
およそ1万円程度であるので、コスパは最高評価となり、
PENTAX LXとの順位をひっくり返して銀塩機トップに立てる。

この時代のミノルタαレンズは優秀で相場も安価で買いやすい、
そして現代のSONY α(A)マウントレンズの一部も使用できる。

2000年代には、私からの推奨で周囲の多数の初級中級者が
α-7を中古で購入した、その数は十数台に及ぶが、いずれも
満足していた模様だ。

ただまあ、本機を使いこなすには、それ相応の写真撮影知識が
必要である事も事実だ。ビギナーでは意味がわからない要素も
かなり多いと思う、フルオートで撮るだけでは、まるで使う
価値の無いカメラなので、その点のみ要注意だ。

そういう意味では、現代の視点からすれば、本機を銀塩時代に
多数の初級者層に勧めたのは失敗であった。
「α-7なら上達してもずっと使える」と思って推薦したのだが、
その後、デジタル時代になった事はさておき、初級層の中で、
真面目に写真やカメラの勉強をしてレベルアップしようとした
人は10人に1人も居なかったのだ。

交換レンズも何も買わないし、本機を推奨した人の中には
「もっと小さくて軽いカメラに買い換えたい」などという
人までも出てきて、とてもがっかりした。
本機の優れた本質を理解できる初級層は誰もおらず、結局、
「誰かが良いと言ったから買う」という購買行動は、初級層に
とって全く意味が無い事だと痛感した次第だ。

次回記事は、引き続き第四世代の銀塩カメラを紹介する。


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