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ハイ・コスパレンズBEST40 (11) 8位~5位

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高いコストパフォーマンスと付随する性能を持った優秀な
写真用交換レンズを、コスパ面からの評価点のBEST40を
ランキング形式で紹介するシリーズ記事。

今回は、上位の8位から5位にランクインしたレンズを順に
紹介して行こう。
(ランキングの決め方は第1回記事を参照、なお、評価得点
が同点の場合は、適宜、順位を決定している)

---
第8位 
評価得点 4.30 (内、コスパ点 5.0) 
c0032138_16092272.jpg
レンズ名:SIGMA 19mm/f2.8 EX DN
レンズ購入価格:7,000円(新古)
使用カメラ:SONY NEX-7(APS-C機)

ハイコスパ第22回記事等で紹介の、2012年発売のミラーレス
機(APS-C型以下)専用AF単焦点広角レンズ。

本レンズの出自は、前記事本シリーズ第10回で、第10位に
ランクインしたSIGMA 30mm/f2.8 EX DN と同じである。

SIGMA初のミラーレス機専用(μ4/3用およびSONY E(NEX)用)
高性能レンズ「DNシリーズ」として2012年にリリースされた
が、翌2013年のSIGMAのレンズ・ラインナップの整理により
外観を変更したArt版19mm/f2.8 DNにモデルチェンジ
されたレンズである。

c0032138_16092201.jpg
旧型の発売時の定価は24,000円程、実勢価格は1万円台
後半であった。なお、マイナーチェンジによる定価の
値上げは無かった。


購入に至る経緯は30/2.8DNとまったく同様で、旧型の在庫処分
の為、中古市場に大量に流通した「新古品」を購入したのだが
本レンズ19/2.8DNの方が、何故か30/2.8DNよりも少し安価で、
税込み7,000円強という格安価格であった。

このA-DNシリーズは19mm.30mm,60mmの3本が現行品として
発売されているが、本シリーズ記事のランキングのBEST10に
3本とも見事にランクインしている(60mmは本記事で後述)
(注:2017年に関連製品、C16/1.4DC DN が発売されている。
こちらはコストが高い為、レンズマニアックス第15回で紹介済。
さらに後年、C-DC DNシリーズは色々と新製品が出ているが
他は、いずれも未所有であるので、詳しい紹介は割愛する)

DNシリーズの特徴は全レンズとも同じで。具体的には、
エントリーレンズ並みの低価格、小型軽量の単焦点である事、
高画質(高級コンパクトDPシリーズの搭載レンズに準拠)である。

本レンズの19mmという焦点距離はちょっと中途半端な印象が
あると思うが、これは、高級コンパクトのDP1(メリル以降)の
搭載レンズを単体発売したものであり、DP1(メリル)は、
APS-C機なので、19mmの焦点距離は、フルサイズ換算
約28mmの一般的な広角画角となる。


本レンズをμ4/3機で使用した場合は、38mm相当の準広角画角
になるが、今回使用のAPS-C機NEX-7で用いると、DP1と同等の

28mm相当の広角画角となる。
本レンズ購入時には、マウントの選択の余地はあったのだが
28mm広角画角になる事を主眼として、E(NEX)マウント版を
購入している。


なお、フルサイズEマウント機(α7等)で使用する場合は、
メニューから「APS-Cサイズ撮影」を「オート」又は「入り」に
しておけば、クロップした状態で28mm相当の画角で使える。
ただし、私の所有しているα7で、この機能がオートの場合は、
APS-Cに切り替わるタイミングがやや遅く、一瞬だがクロップ
前のイメージサークルが小さい状態での周囲が暗くなる映像が
出る場合もある。

これはレンズ(19/2.8DN)と本体(α7)間の通信プロトコルの
不具合がある可能性があるが、もしその状態のままでAPS-Cに
切り替わらない時は、手動でAPS-Cモードを「入り」とすれば
問題無いであろう。(勿論、AFや絞りの制御は問題無い)
まあ、ややこしいので、フルサイズαではなく、NEX系の
古いEマウント機と組み合わせた方が、カメラとレンズの価格
バランスの面(=オフサイトの法則)でも適正であろうし、
フルサイズ機クロップでの画素数の激減の課題も解消できる。
NEX-7,NEX-3,α6000等では何ら問題無く動作している事は
確認済みだ。

さて、ハイコスパなレンズのBEST40を決める、というコンセプト
で始めた本シリーズ記事だが、ランキングの上位レンズは
「エントリーレンズ」と「マクロレンズ」ばかりになってしまう
と言う傾向が得点の集計中にわかってきていた。

全てそればかりになると面白く無いので、特性が極めて類似
するようなレンズ(例:同一シリーズ)は、紹介を見送った
ケースもある(ただし、本DNシリーズは全部紹介する)
c0032138_16092370.jpg
で、「エントリーレンズ」とは何か?とは、過去記事で何度も
説明しているが、もう1度簡単に・・

(デジタル)一眼レフやミラーレス機などの、レンズ交換式
カメラでは、初級層は最初の購入時のキット(付属)レンズの
他の交換レンズは、まず購入しない。

買わない理由は、1つはレンズが高価な事だ。
初級層のほぼ100%は、カメラを購入時にカメラ本体の事しか
考えない、レンズの事は全く度外視だ。これは予算面であっても
どんな被写体をどんなレンズで撮りたいのか?という用途の面
からも同様だ。いざカメラを買う際に、とりあえずレンズキット
の物を購入するのだが、後で他の交換レンズの価格を見て驚く。
初「ひえ~っ!10万円? 20万円? カメラ本体よりも、ずっと
  高いじゃないか、こんなの買えないよ!(汗)」

もう1つの理由だが、その交換レンズを調べる際に気がつく、
初「いったい何種類あるのだ!(汗)おまけにどれも似たような
  名前ばかりで区別がつかない。焦点距離?開放F値?それ何?
  いったいどれを買えばいいの?良く写るメーカーはどれ?」
つまり、全くレンズの知識が無いので、そもそも交換レンズを
選ぶ事ができないのだ。

こういう市場状況への対策として、概ね2010年前後から
各メーカーで始まったのが「エントリーレンズ」の発売である。

これはいわば「お試し版レンズ」である。性能の良い(ただし
若干の制限を、あえて設けている場合もある)レンズを安価に
販売し、ビギナー層に、それを買って貰う。
すると、レンズ交換の楽しさを、わかって貰えると同時に、
交換レンズに関する知識も付いてくるし、また次に高価な
高級レンズを買ってくれるかもしれない。

あるいは何本か交換レンズが揃ってきたら、もうそのユーザー
は、別のマウントのカメラに乗り換えようとはしなくなる。
初「一眼レフ用で、もう3本もレンズを持っているから、
  今更ミラーレス機は買えないよ、またレンズを色々と
  揃えるのは大変だし・・」

はたまた、その初級層は、エントリーレンズの高性能に惹かれ、
そのメーカーのファン(信奉者)になるかも知れないのだ。
初「こんなに良く写るレンズを安く売るとは、なんて素晴らしい
  メーカーなのだ、”神対応”と言っても過言では無い。
  気に入った! 今後もこのメーカーにしよう」

まあすなわち、メーカーからすれば、エントリーレンズを安く
売った事で、一時的に損をするのであろうが(販売利益が赤字に
なるとは限らないが、他の高価格製品の「販売機会損失」という
点は言える)結局、長い目で見れば、その損失は解消できるのだ。

こうした「お試し版」の市場(販売)戦略は、カメラ以外の
分野でも、昔から存在している。
それは概ね、1990年代初頭のバブル経済崩壊後の各種市場に
おいては、特に顕著に見られるようになってくる。

例えば通販での薬品や食品の安価なお試し品、パソコンの
機能限定フリーソフト、携帯電話等の本体価格の格安化・・
いくらでもある。
まあ、それらの市場分野は様々に異なれど「損して得取れ」
的な発想の原点は全て同様だ。
c0032138_16092261.jpg
カメラ界における「エントリーレンズ」は全て「買い」で
あると私は思っている。つまり見かけたら、あれこれ悩まず
買ってしまっても損は無い、という事であり、本19/2.8DNも
勿論同様だ。

本レンズが「エントリーレンズ」であるかどうかは、SIGMAの
レンズメーカーとしての市場戦略上では、微妙な要素がある、
それについては長くなるので、本記事ラストの A60/2.8DN
のところで説明しよう。

まあ、「エントリーレンズ」は、いずれもマニアック度は
低いので、マニア層への受けは良く無いかも知れないが、
実用的に写真を撮る観点からすれば、安くて良く写るレンズ
が買えるのだから、文句のつけようがない。
初級層のみならず、全てのカメラユーザー層にオススメだ。

ただまあ、2010年代後半以降は、新規のエントリーレンズ
の新発売は極めて稀となっている。一眼レフ市場の大幅な
縮退により、そんな悠長な市場戦略を取る暇が無いのだろう。
富裕層に向けた新鋭フルサイズミラーレス機と、その新規の
交換レンズ等で、がっぽりと儲けるしか無いという事か・・

結局、その国内市場の弱点がある為、中国製等の安価な
交換レンズが2010年代末頃から、大量に国内市場に流通が
始まっている。それらは、次に繋げる高額製品が無いから
「エントリーレンズ」とは言い難いが、「売り切り型」の
商品としては有効な市場戦略だ。それらの一部はコスパに
非常に優れるものがあるが、本シリーズ記事執筆時点では
評価が間に合っておらず、残念ながら本シリーズ記事での
ランクインは見送っている。

---
第7位 
評価得点 4.40 (内、コスパ点 5.0)
c0032138_16095598.jpg
レンズ名:CANON (New) FD 70-210mm/f4.0
レンズ購入価格:2,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC LUMIX DMC-G6(μ4/3機)

ハイコスパ第9回記事で紹介の1980年代のMF望遠ズームレンズ。
このシリーズに、こうしたオールドレンズがランクインする
のは少々異例だ。一応、このランキングでは
「現代で入手不能のレンズは対象外」と決めているのだが、
本レンズは、中古市場を丹念に探せば、まだギリギリで入手
可能と思われる。
c0032138_16095614.jpg
そして、ともかくこのレンズは「望遠レンズ母艦」の
DMC-G6との組み合わせで、抜群の相乗効果を発揮するのだ。
だから、DMC-G6以外のカメラとの組み合わせは、正直
あまり推奨できない。

その組み合わせの何処が凄いか?は、ハイコスパ第9回記事
や、ミラーレス第52回記事(注:DMC-G5との組み合わせ)
で詳しく解説しているので、重複する為に詳細は割愛するが、

代表的な特徴のみ上げると、光学ズームとデジタルズームの
自由自在な組み合わせにより、140mm~840mm/F4相当の
あらゆる望遠域の画角が何の設定操作も不要で簡単に得られ、
最短撮影距離は上記の焦点距離の全域で1.2mと短い。
これにより「フィールド撮影全般に最適なシステムとなる」
と言うことだ。

が、レンズそのものは、古い平凡な望遠ズームである、
中古店の片隅のジャンクコーナー等に1000円~3000円程度で
ひっそりと置かれている目立たないレンズであるし、
初級中級者層はもとより、マニア層であっても誰も見向きも
しないレンズであろう、けど、このレンズは違うのだ。

「この時代の望遠ズームなんて、どれを買っても同じだろう?」
とマニアは思うかも知れない。
「同じ」と言うのは悪く言えば「どれも見るからに高性能とは
思えず、いずれも買うに値しない」と言う事だろう。

事実私もそう思っていた、銀塩時代のズーム発展期とは言え
あまりに平凡だ。他社製でも同様なスペックの望遠ズームは
いくらでもある。そして、いずれも描写性能は期待できない。

2010年前後の「大放出時代」(デジタル化により地方DPE店等
が多数廃業し、それらの店で在庫されていた銀塩時代の大量の
レンズ等が中古市場に集められ、外観等の程度の悪いものは
二束三文の価格で販売された時代)において、私は当初
実用的な「単焦点標準レンズ」等を多数購入した、その数は
数十本におよぶだろう、その多くは現在も保有しているが
知人友人に、ギフト代わりに譲渡したケースも多い。

私が「単焦点標準レンズ」を買い尽くした(およそ市場にある
入手の容易な種類は全て購入した)頃、もう実用的な単焦点
レンズは残っていなかった、他のマニアも買い漁ったのであろう。
c0032138_16095625.jpg
が、まだズームレンズが残っている。標準ズームは、さすがに
私も興味の対象にはならなかったが、望遠ズームを、ちょっと
調べてみようと思った。これも同様に十数種のレンズを購入し
試写を行った後、その大半を知人友人に譲渡した。
(注:現在でもジャンク望遠ズーム購入は続き、その数は
数十本に及んでいる)

その十数種の中で、唯一に近く非常に高い評価点を与えられ、
「現代でもなお実用的な銀塩MF望遠ズーム」となったのが、
本New FD 70-210mm/f4である。

まあでも、仮に本記事を読んで、このレンズに興味を持った
読者が居たとしても、わざわざこの古い、二束三文の相場の
レンズを必死に探してまで購入する人は少ないであろう。
c0032138_16095507.jpg
だから、これ以上、色々と本レンズを評価しても意味が無い
かも知れない。
まあ、あえて、本レンズに関しては「参考まで」という形に
しておこう。

ただ、「望遠母艦」としてのPANASONIC DMC-G6の実用的
性能の話は、またレンズの話とは別の要素としてある。
DMC-G6については、過去記事、
*デジタル一眼レフ・クラッシックス第15回
*ミラーレス・クラッシックス第10回記事
に詳しいので、適宜参照されたし。

---
第6位 
評価得点 4.40 (内、コスパ点 5.0)
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レンズ名:SONY DT 50mm/f1.8 SAM(SAL50F18) 
レンズ購入価格:9,800円(中古)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ(APS-C機)

ハイコスパ第1回記事で紹介の、2009年発売のエントリー標準
レンズ。APS-C機専用レンズである。

これもまたエントリーレンズだ、しかし「お試し版」と言っても
大きな性能制限は、かけられていない。
c0032138_16094350.jpg
あえて課題を書くとすれば、α77Ⅱに搭載されているDMF機能
を使う際、一応AFクラッチが切れてMF操作は可能なのだが、
ピーキング機能が有効では無い。(他レンズではこれが効く)
これはモードが「AFのまま」と認識されているのであろう。
まあでも、SAM型モーターの場合は、構造上、DMFが効く事
自体が「ラッキー」という状況なので、これでもやむを得ない。

それから、最短撮影距離が34cmと非常に短い、これは他の
SONYのAマウント50mm標準レンズ2本(SAL50F14,
SAL50F14Z)の45cmよりも遥かに短く、エントリーレンズ
の下克上が見られる。

c0032138_16094455.jpg
ところで、本シリーズ記事では、あまりレンズの性能や
仕様の長所短所などの評価を行っていない。

これはまあ、ここにランクインするレンズは、全てが他記事
で別途紹介済みである事が1つ、そして、もうこのBEST40の
クラスのレンズともなると、あまり欠点も無く、無理して
それをあげても、重箱の隅をつつくような、枝葉末節の話に
なってしまうからだ。
すなわち、ランクインしたレンズのどれを買っても
コスパ的な不満は一切無いであろう、という事になる。

まあ、中には使いこなしが難しいレンズもある事も確かだ、
それは「MFレンズだから使い難い」という初級者レベルの
技能的な話をしているのでは無い。例えばレンズの様々な
微妙な欠点が中級者やマニア層では理解できたとしよう・・
だが、中級者級であれば「このレンズは、ここがダメだ」で
終わってしまう。けど、それでは、文句を言っているだけの
話にすぎず、何も建設的・前向きな解決にはなっていない。

そこから、さらにステップアップしようとすれば、
「このレンズは、ここがダメだが、こういう使い方をすれば
問題が無くなる。むしろそうすると、このレンズの、こうした
長所を活かす事ができる」
と言う事を考えて実践していかなければならない、その実践が
出来る事が「使いこなし」であり、それが非常に高度な内容や
技能を要求されてしまう場合に「使いこなしが難しい」と
言っている訳だ。
c0032138_16094397.jpg
さて、余談が長くなったが・・
本SAL50F18は、定価でも22,000円、中古相場は1万円以下と
超格安だ、この価格帯でも特に描写力は問題なく、おまけに
最短撮影距離が短いという大きな長所を持つ事から、
SONY Aマウントユーザー必携のレンズであろう。

特に、αフタケタ機の中級機以下と組み合わせる事で、
軽快なハンドリング性能(持ち運びの容易さと、仮に故障や
破損した場合でも、安価な事から損害が少ない)を発揮できる
という大きな「用途特徴」を持つが・・ 残念ながら、現在の

SONY α Aマウントのフタケタ機は、国内向けには、なんと
高級機α77Ⅱが最下位の機種で、中級機以下は販売されていない。
まあ、中古のα55(未所有)やα65(デジタル一眼第13回)
あたりと組み合わせて使えば、そのハンドリング性能が得られる。

---
第5位 
評価得点 4.40 (内、コスパ点 5.0)
c0032138_16100818.jpg
レンズ名:SIGMA 60mm/f2.8 DN | Art
レンズ購入価格:14,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC LUMIX DMC-GX7(μ4/3機)

ハイコスパ第4回記事で紹介の2010年代のミラーレス機専用
AF中望遠単焦点レンズ。(APS-C以下専用)
SIGMAの「(Art)DNシリーズ」レンズは、これで全3本ともに
本シリーズBEST10に見事にランクイン。
c0032138_16100887.jpg
本レンズの描写力的な弱点は殆ど無い、あえて上げると
しても、重箱の隅をつつくようなものだ。

ミラーレス名玉編にノミネートされなかったのは、コスパ
以外のマニアック度等の評価が、あまり高くなかったのが
原因であったが、ランクインぎりぎりの状態であった。
本シリーズ記事では、コスパ点が主となる評価法なので、
見事、総合5位という好順位にランクインした。

A-DNシリーズ中、本レンズのみ、SIGMAの高級コンパクト
DPシリーズの交換レンズに準拠していない。
最も近いのは、SIGMA DP3(Merrill/Quattro)であるが、
その搭載レンズは、50mm/f2.8 最短撮影距離22.6cmの
準マクロ(1:3)仕様であり、本レンズの60mm/f2.8,
最短撮影距離50cmとは全く違うレンズだ。

私はSIGMA DP3を所有していないので、性能比較は避けるが、
本レンズの描写力は、DP3の件は抜きにして、ともかく良く
写るレンズである。
まあ、DNシリーズはどれも良く写るのだが、本レンズは、
他のDNシリーズよりも頭1つ抜きん出ている印象があり、
それ故に、他のDNシリーズよりも若干高価に購入している
にも係わらず、様々な項目の評価点が高く、より上位に
ランクインする結果になった(ちなみに、描写力評価は
4.5点となっている)

本レンズが「エントリーレンズ」であるかどうかは微妙だ、
「エントリー戦略」をメーカー側が実施するには、それに続く
高額な(利益を取れる)製品群が無くてはならない。

カメラメーカーであれば、自社のカメラでも純正交換レンズ群
でも、売るものはいくらでもあるが、SIGMAのようなレンズ
メーカーでは、基本的に「エントリー戦略」の実施は難しい。
次に繋ぐ製品群が無いからだ、ミラーレス機用のエントリー
レンズを売って、次にユーザーが高性能ミラーレス機を
買ったとしても、SIGMAは直接的には儲からない。
そしてSIGMAは過去、高性能(高価格)ミラーレス機用レンズ
を、あまりラインナップしていなかった。
(注:ごく近年、一眼レフ用高性能単焦点レンズをSONY E
マウントや、新規Lマウント向けに変更してラインナップする
傾向が見られる)

ただまあ、本レンズがSIGMAにおけるArt Lineのカテゴリーに
属する事は、かろうじて意味があると思う。
本A60/2.8DNの価格からは超絶的な高描写力を見てしまえば、
このレンズよりも、数倍から10倍も高価な「Art Line」の
高性能一眼レフ用単焦点レンズにも期待が膨らみ、異マウント
ながら、それを購入する(主にマニア層等の)ユーザーも出て
来ると思われるからだ(事実、私もArt Lineの高価なレンズを
何本か購入している)
c0032138_16100846.jpg
さて、ここからは余談だが・・
私は、こうした「エントリーレンズ」は、2010年前後に
ミラーレス機やスマホの台頭により、一眼レフや交換レンズの
販売数が減少するのを防ぐ為、一眼レフ陣営のメーカーにより、
新規に始められた戦略だ、と分析していた、しかし、カメラの
歴史を良く見ていくと、いくつかの前例がある事がわかった。

その前例の1つは、CANON EF50mm/f1.8Ⅱ(1990年)である。
このレンズは未所有だが、旧型のEF50/1.8Ⅰ(1987年、
本シリーズ第8回記事)や、コピー品のYONGNUO YN50/1.8
(後日紹介予定)を所有している。
EF50/1.8Ⅱは旧型の優秀な光学系はそのままに、外装や仕様を
簡略化してコストダウンを実現、定価も大幅に値下げされた。

これは、この直前の1987年に、CANONは旧来のFDマウント
を捨て、全く互換性の無いEF(EOS)マウントに転換した事が
背景にある。ミノルタαショック(1985)を受け、CANONも
FDマウントのままAF一眼レフを作ろうとしたが、AF初号機
T80(1985)の失敗により、規格的な制限のあるFDマウントを
見限った、という、やむを得ない措置だ。
しかしユーザーからしたら、今まで愛用していた多数のFDレンズ
が、新しいEOSに買い換えたら全て無駄になるのは許せない、
新規のEOSユーザー以外の層には極めて不評を買ってしまった、
という歴史がある。

なので、CANONとしては、ローコストで非常に高性能な
EF50mm/f1.8Ⅱを発売し、これを「エントリーレンズ」と
同等の効果を得る為の市場戦略を取ったのであろう。

この戦略は成功し、EF50mm/f1.8Ⅱは「安くて良く写る」
と初級中級層から圧倒的な支持を得、「神格化」される程に
までなった。当然、銀塩EOSの売り上げ(市場シェア獲得)
にも大きく貢献した。その数年後、1990年代初頭にはバブル

崩壊に加え、ミノルタαの特許訴訟敗訴と、α-xiシリーズ
のカメラ仕様の方向性の失敗により、αが縮退してしまうと、
とって代わるようにEOSはシェアを伸ばす。

そしてこの「エントリー戦略」を、レンズのみならずカメラ
本体側にも適用したのが、1993年発売の「EOS kiss」(初代)
である。この低価格化戦略も見事に成功し、EOS kissにより
新規のユーザー層(女性、ファミリー)が大幅に拡大、これで
EOSシリーズは磐石の地位を得て現代に至る、という歴史である。

なお、その後、EF50/1.8Ⅱはずっと生産が継続され、はるかに
時代が下った2015年にEF50mm/F1.8STM型にリニューアル
されるまで、実に25年、四半世紀の長さに渡る超ロングセラー
レンズになった。


「エントリー戦略」に関しては、この話だけでは無い。
2000年頃には、カメラ界全体がデジタル化への転換の時期を
迎えていた。
コンパクト機はともかく、一眼レフ市場は特に重要だ、
従来のAF一眼用レンズをデジタル一眼でも使えるようにする
のは勿論の事、この銀塩末期には、各メーカーは自社の
銀塩一眼レフを、どうしても買ってもらわないとならない。
さも無いと、デジタル化を機に、ユーザーは別マウントの
カメラに走ってしまう危険性もあったからだ。

将来の自社製デジタル一眼レフや、その交換レンズ群を買って
貰うためには、初級中級層に、なんとしても自社の銀塩最後の
AF一眼レフを売らなくてはならない。

この為、この時代、1990年代末~2000年代初頭の、各社の
銀塩AF一眼レフには、初級中級機並みの安価な価格帯の製品
にも、全て、クラスを超えた超高性能(高機能)が与えられた。

具体的には、MINOLTA α-Sweetシリーズ(銀塩一眼第27回)
CANON EOS 7シリーズ(銀塩一眼第26回)、CANON EOS
Kiss末期シリーズ(Kiss 7等、未所有)、NIKON uシリーズ

(現在未所有)、PENTAX *ist(未所有)等である、
今でも所有している2機種は、いずれも別シリーズ記事の
「銀塩一眼レフ・クラッシックス」で好評価を得ている。

すなわち、「買いたい」とユーザーに思わせる魅力的な
カメラであったのだ、これらを買う事で、そのまま数年後の
デジタル一眼レフの時代に突入、自社製デジタル一眼レフに
買い換えてもらう・・ という筋書き(シナリオ)である。

まあでも、こういう話は別にメーカー側が悪い事をしている
という訳では無い、ユーザーは知ってか知らずか、その戦略に
乗せられたとしても、別に何も損はしていない。
これはむしろ「上手な市場戦略」の、お手本のようなものだ。

ならば、ユーザー側が少し賢くなれば良いのではなかろうか?
つまり、そのように、メーカー側があえて「損して得取れ」の
戦略を展開しているのであれば、ユーザーは、そこに呼応し
メーカー側の「損」だけを、ユーザー側の利点にしてしまえば
良い訳だ。

具体的には「エントリー戦略」が明らかに見てとれる製品群は
全て「買い」である。それらはすべて高性能や魅力的な仕様で
あり、しかも安価だ、これは、最高のハイコスパな製品群だ。

そしてメーカー側が「損して」の後で「得取れ」つまり、
利益の出る高額な製品群を売りたかったとしても、それを
買うか買わないかは、あくまでユーザー側の選択だ。
別に買わなくてもバチはあたらない。
(例:フルサイズ・ミラーレス初号機SONY α7は比較的安価
だったが、続く派生機種や純正交換レンズ群は極めて高価だ。
だから私は、後年のそれらを殆ど購入していない)
c0032138_16100720.jpg
さて、余談が長くなったが・・
本レンズSIGMA A60/2.8 DNは、まあ、ともかく価格に対して
極めて良く写るという、かなりのハイコスパレンズである事は
間違いは無い、そして他の欠点も少ない。
さもないと、そもそもここまで上位にはランクインしないのだ。

ミラーレスのμ4/3機、およびSONY E(NEX=APS-C)機専用
という、マウントの選択肢が少ない点で、ユーザーを選ぶとは
思うが、このレンズを使う為に、カメラ本体を買ってしまって
も後悔は無い事であろう。

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今回はこのあたりまでで、次回記事では、最終回として
BEST4へのランクイン・レンズを紹介していこう。


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