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レンズ・マニアックス(18)

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過去の本ブログのレンズ紹介記事では未紹介のマニアックな
レンズを紹介するシリーズ記事。
今回も4本のレンズを取り上げるが、内、3本が過去未紹介で
1本は再掲となる。

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まず、今回最初のレンズ
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レンズは、HD PENTAX-DA 18-50mm/f4-5.6 DC WR RE
(中古購入価格 16,000円)(以下、HD18-50)
カメラは、PENTAX K-30 (APS-C機)

2015年に発売されたAPS-C機専用AF標準ズーム。
c0032138_07131390.jpg
細かい型番がややこしいので、まずそこを説明しておく。

HD:PENTAX伝統のsmcコーティングに代わり、2010年代前半
 より採用されつつある新型High Definitionコーティング。

DA:APS-C機専用レンズ(Digital APS-C)の意味。

 PENTAX機は2000年代前半~2010年代前半まで、全て
 APS-C機であったので、DA型番のレンズでも問題無かったが、
 DA型をPENTAX K-1等のフルサイズ機に装着した場合も、
 センサーが自動的にクロップされて使用可能だ。
 ファインダー枠が狭くなり、NIKON方式と類似なのだが・・
 PENTAXの場合、クロップOFF操作ができ、フルサイズでの
 撮影が許可されている。勿論、レンズによってはイメージ
 サークルの小ささでケラれるが、それはレンズ毎に異なるし
 あえてギリギリでトリミングを狙って、少しでも広い画角と
 したり、あるいは適宜の「周辺光量落ち」を意図した広目の
 トリミング処理も可能だ。

 要は、PENTAXフルサイズ機は上級者が使うものであるから、
 こうした事は、上級層には「言わずもがな」の常識だ。
 そのあたりをメーカーが細かく、おせっかいをする必要は無く
「ユーザーは自己責任で使えば良い」と言う設計思想である。

 対して、NIKONフルサイズ機で、クロップOFFの操作が
 出来ないのは、現代ではNIKON高級機ユーザーの大多数が
 ビギナー層なので、クロップOFF操作を許すと、例えば
「写真の廻りが真っ黒になった」等と、慌ててクレームを
 言ってくるユーザーが激増するからであろう。

 両メーカーのターゲットユーザー層の違いと設計コンセプトの
 違いが良くわかる実例であるが、銀塩時代から現代にまで続く
 NIKON高級機の「過剰安全対策」は、職業写真家層を含む
 上級層、あるいは実用派マニア層には極めて不評である。

 最大の問題点は「NIKON高級機を超ビギナー層、又は、写真を
 撮らない富裕層が欲しがる」事なのだが、NIKONはその事で
 事業が維持できているので、この安全対策方針は変えれない。
 結局、近年の実用派上級者層では「NIKON高級機を敬遠する」
 という方法論を選ぶようにもなってきている。

(余談:先日、イベント会場で撮影をしていたシニア中心の
 グループの1人は、高級機の設定をいじくって、元への
 戻し方がわからなくなり、「サービスセンターに行く」
 と言っていた。こんなユーザーばかりであると、メーカー
 のサービスセンターも、商売にもならない無駄な対応に
 時間を取られるばかりで、困ったものであろう・・)

DC:直流(DC)モーター搭載

WR:簡易防滴仕様(Water Resistant)

RE:レンズを小さくして収納できる「沈胴式」仕様。
  型番の意味は不明、リトラクタブル(Retractable)か?

さて、本レンズに、こうした細かい補助型番が多いのは、
特徴的な要素(仕様)を多く持つ、という事である。
とは言え、基本的には、何の変哲も無い標準ズームであり、
普段であれば、私はこういうレンズには興味を持たないが、
これの購入用途は、ドラゴン、ペーロン等の「ボート大会
撮影用」である。
c0032138_07131326.jpg
本レンズの特徴だが、

第一にWR(簡易防滴)仕様の為、今回使用のK-30(簡易防滴)
等と組み合わせれば、水辺や雨天での使用耐久性に優れる。

もっとも、ドラゴン競技撮影を15年以上もやってきていて、
雨天や水辺等でカメラを濡らすケースはいくらでもあったが、
これまで防水カメラなど使って来なかったので、「いまさら」
という感じもある(汗) まあでも、近年の異常気象は本当に
「異常」であり、従前の時代のような常識は通用しない。

とてつもないゲリラ豪雨で一瞬で非防水カメラが故障直前迄
浸水して動作停止してしまった事も近年にはあったのだ。
で、旧来、そういう過酷な環境においては、カメラを保護
する為に様々に気をつかって撮影していたのが、これで
少しは楽になるであろう。

第二にRE(沈胴式)の為、薄型化できて持ち運びが楽である。
格好良い小型フードが固定装着でき、ここも実用上および
デザイン上の長所だ。

ただし、沈胴式で薄くなるとは言え、レンズの径は結構
大きい、これは沈胴機構を実現する為にやむをえなかった
と思うが、もう一声コンパクトであると嬉しい。
それと、沈胴させる/伸ばすには、レンズ側面のボタンを
押す必要があり、撮影中は一々のこの操作は煩雑になる為、
伸ばしたまま使用するしか無いであろう。
(注:勿論、沈胴状態のままでの撮影は出来ない)

第三にHD(新型コーティング)の為、逆光耐性に優れる、
炎天下で行われるボート大会では、逆光状態での選手の写真や
チームの集合写真等を多数撮らなくてはならないので、この
画角(換算約27~76mm)が、そうしたスナップ撮影に適する。
なお、旧来のsmcコーティングでも十分に高性能と思っていたが、
近年、HD仕様のレンズを入手してみると、レンズによっては
smcよりもHDに逆光耐性の利点がある事を知って、本レンズの
購入動機にも繋がった。

なお、非常に類似した仕様のレンズとして、
「smc PENTAX-DA L 18-50mm/f4-5.6 DC WR RE」
が存在している、そちらはPENTAX K-S2のキットレンズと
なっていたものだ。軽量化されているが、HDコーディング
では無い。外観上の差異として、HD版には、角穴フードが
付属している事であるが、当該レンズは所有していないので
描写力等の差異は不明である。
c0032138_07131386.jpg
まあ、利点は上記の通りである。ボート大会用に色々な長所が
あるとは言え、実質のところは業務用の「消耗品レンズ」だ。
あまり価格が高いと消耗用途にはならないが、中古16,000円
ならば、コスパ的には及第点であろう。(注:それでも
若干高価であるが、実は、母艦PENTAX K-30の無償修理で、
購入店舗側に負担をかけてしまったので、その際に本レンズ
を購入した、という理由がある)

弱点だが、開放F値がやや暗く、また、ズーム比も小さい事だ、
これらは小型化、特に沈胴式を実現する為には、やむをえない
仕様だとは思うが、「もう一声」という気はする。

それから、HDで逆光耐性が高いのは確かだが、炎天下直射日光
のボート大会では、ここも「もう一声」の様相がある。
こうした特殊な環境では、PENTAXの高級レンズに使われている
「エアロ・ブライト」方式のコーティングの方が、逆光耐性は
ともかく、ヌケが良く描写が優れるような感じもするが・・
両方式の技術的な詳細は不明であるし、両方式の多数のレンズを
所有していて比較した訳でも無いので、なんとも言えない。

もしかするとエアロ・ブライトは、製造コストがかかるのかも
知れず、まあ、そうであればHD方式で十分だ。
それに、コーティング方式だけで性能差が出る訳でもない、
元々のレンズ設計やレンズ構成に依存する部分の方が大きい
であろう。まあつまり、本HD18-50は、そのやや特殊な
構造故に、若干無理をした設計なのかもしれない。

無理をしていると言えば、描写力も特にスペシャルという
印象は無く、標準ズームとして普通か、あるいはやや劣る、
感じである。超晴天時に、やや絞って使う用途が殆どだし
連写はあまりしないので、カメラ本体側の収差補正機能も
ONできるので、収差などは気にならない。
(注:PENTAX機の収差補正機能は、連写性能低下を招く)

ただ、歪曲収差補正をOFFにすると、広角端では歪曲収差が
かなり目立つ、ここは連写とのトレードオフでよく考えて
使う必要があるだろう。(注:歪曲収差は絞っても減らない)

また、背景ボケを期待するような目的のレンズでは無いので、
ボケ質の評価もあまり意味が無い。

いずれにしても「業務用消耗品レンズ」としての特徴が
大きい為、真剣に画質をあれこれ語るべきものでもない。
より高性能な描写力が欲しければ、PENTAXでも他社でも
良く写るレンズは他にいくらでもある、本レンズは使い潰す
為には最適なレンズだ、その「目的感覚」が重要であろう。
c0032138_07131224.jpg
なお、初級層であったとしても、これを主力(メイン)レンズと
するような用法は適正では無い。そうする位ならば、本レンズ
よりも安価な単焦点エントリーレンズを入手して使った方が、
「一眼レフを使う意味」が出てくるであろう。本レンズでは
コンパクト機を使っているのと大差無いのだ。

ただ、コンパクト機も市場縮退により低価格で高性能な
機体が1つも無くなってしまったのが大問題だ。
旧来であれば、本システムの用途程度であれば、PANASONIC
DMC-LX3やFUJIFILM XQ1あたりの低価格高性能コンパクト
で十分代替できていた。現代での10万円以上もする高額な

コンパクト機では「大は小を兼ねない」から使えない。
本システムのようなセット(一眼本体+レンズで合計3万円台)
を別途組まざるを得ない状況なのだ。
まあ、いくら市場縮退で値上げ傾向とは言え、ユーザー側では、
常に正しい価値(コスパ)感覚を持つ必要があると思う。

まあ、本レンズは用途的に「普通に写れば良い」という
事なので、これ以上の詳細な説明は割愛する。

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さて、次のレンズ
c0032138_07133590.jpg
レンズは、GIZMON Utulens 32mm/f16
(新品購入価格 5,000円 マウントアダプター付き)
カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機)

2017年発売の「写ルンです」レンズ再利用品トイレンズ。
「Utulens」(うつれんず)の名前は、それを由来とする。
本シリーズ第15回記事の「Wtulens」の姉妹レンズである。
c0032138_07133684.jpg
「トイレンズ」とは言うものの、銀塩時代から定評のある
「写ルンです」で使用された非球面メニスカス・プラスチック
レンズの再利用(移植)品なので、そこそこ普通に写る。
(注:ギズモ社のHP上の説明にある「メスカス」は誤記だろう、
凹凸型=メニスカス(meniscus)レンズ、が正しいが、
稀に「メニスク」レンズと呼ばれる場合もある)

パンフォーカスレンズであり、絞りやピント機構を持たない。
レンズは薄型(パンケーキ)でL(39)マウント仕様だ。
(注:銀塩L39であり、近年のミラーレス用マウントでは無い)
Lマウントのミラーレス機用アダプターが付属しての販売形態
であるので、既にアダプターを所有している場合は買いにくい
が、まあ各種ミラーレス機用Lマウントアダプターを持って
いても損は無いので、マイナーマウント版で買う事とした。

「写ルンです」のレンズ開放F値は、本来F10相当であり、
本Utulensは、それより暗いF16相当である、この理由だが
銀塩の「写ルンです」は、像面湾曲収差を補正する為に、
フィルム面が湾曲構造となっている特殊な仕様だったが、
デジタル機ではセンサーを曲げる事は現状では出来ないので
やや暗い目の簡易絞り部品を入れて、収差を低減している
構造と思われる。(注:像面湾曲収差と非点収差は、レンズ
の有効径(≒F値の逆数)に反比例して少なくなる。
ボケ質にも影響が強いが、本レンズや「写ルンです」では
基本はパンフォーカス撮影なので、その点は関係が無い)

銀塩「写ルンです」も、勿論一眼レフのようなミラーBOX
を持たず、フランジバック長が短い。よって、本Utulensも
フランジバックの短いL39マウント仕様となっている。
結果的に、このシリーズのレンズは、ミラーレス機専用と
なって、一眼レフでは使用できない。
なお、L39マウント版であるから、銀塩ライカ等のレンジ
ファインダー機に装着可能だと思われるが、ボディへの直接
装着は様々な危険性がある為、メーカー側では、その用法は
「非推奨」となっている。
c0032138_07133580.jpg
本レンズは特に語るべき性能は持たない、デジタル機で
使うと、コントラストの低さも目立ち、そういう点では、
銀塩「写ルンです」までの描写力は持たず「トイレンズ」
相当になってしまう。

今回使用のFUJIFILM X-E1は、エフェクト機能を持たず、
こうした「Lo-Fi」描写のレンズを救済する術を持たないが
それでもまあ、「写ルンです」を開発したメーカーの機体を
用いる事で、各種のフィルム・シミュレーションを掛けて
楽しむ事は出来る。というか、このシステムが本来の本レンズ
の使用法ではなかろうか? つまり仮想的にフィルムを変えて
楽しむ事が可能な、「デジタル写ルンです」が、ここに
成り立っている訳だ。

X-E1は、AF/MF性能に課題を持つFUJI最初期のミラーレス機
ではあるが、こうしたパンフォーカスタイプの準トイレンズ
であれば、極めて快適に利用できる。

レンズ価格も安価であるし、その半分は付属のアダプター代
だと思えば良いであろうから、コスパは悪く無い。
c0032138_07133586.jpg
なお、レンズ前面は、そのままでは何のデザインも施されて
おらず、付属している数種類のステッカーの中から選んで
レンズ前面にユーザー自身で貼れるようになっている。

ただ、普通の紙のステッカーであるので、ボロボロになったら
貼りなおすのは面倒そうだ。なにせ、私は猛暑日とかでも
本システムは使っていて、既に剥がれ掛けたりしていた。
今後、雨天などでも持ち出す事もあるだろう。
まあ、ユーザーによっては、作る側では想定もしていない
ような過酷な環境でカメラを使う場合もある、という事だ。

あまり誰にでも必要性の高いレンズでは無いが、参考まで。

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さて、3本目のレンズ
c0032138_07141706.jpg
レンズは、小堀製作所 TEFNON H/D-MC 80-200mm/f4 MACRO
(ジャンク購入価格 500円)
カメラは、PANASONIC DMC-G6 (μ4/3機)

出自不明だが、恐らくは1980年代前半のMF望遠ズーム。

カメラ中古店では無くリサイクル店で購入のジャンク品であり
MINOLTA MDマウント版、外観キズ1箇所あり、レンズ内小カビ
という状態で、価格は破格の500円(+税)であった。
c0032138_07141873.jpg
TEFNONブランドは、銀塩MF時代の末期(1980年代)に
高倍率ズーム製品等を製造販売し、カメラメーカー純正品
レンズよりも、ずっと安価な価格で販売を行っていた。
例えば本レンズの定価はおよそ2万円程度と聞き、これは
当時であっても十分に安価な類であった事だろう。

まあ、この時代によくあった、レンズ専業メーカーの
典型的なビジネス・スタイルである。
ここの所の本シリーズ記事での、第3回記事のSUNズーム、
第13回記事のKIRONの各メーカーも類似の状況であった。
それと、現代でも残っているサードパーティーとしては
第15回記事のSIGMA製ズームも、この時代(1980年代)の
もので、まあ同様な状況であっただろう。

何故、この時代のレンズメーカーの多くは、その後、自社
ブランドレンズを殆ど作っていないか?と言えば、それは
言わずもがなであり、1985年のMINOLTA α-7000の発売
以降、時代は急激にAF化にシフトしたからだ。

その激変に追いていけないメーカーは、撤退するしかない。
厳しい話だが、これが真の「αショック」の意味だ。

まあ、世間一般で想像する「αショック」と言うと、例えば
「ミノルタが他社に先駆けて実用的AF一眼レフシステムを
 発売したので、市場もユーザーも、みんなびっくり!
 各メーカーは大慌てで、ミノルタに追いつけ、とばかり
 一所懸命にAF化を進めた」
という、昔話のような呑気なイメージであろうが、実際には、
そんな生易しいものではなく、ビジネス的に壊滅的なダメージ
を受けてしまった関連企業も当然沢山あった事であろう。

まあ、だからα”ショック”なのであり、例えば後年の
「リーマン・ショック」等と同様に、経済的なダメージを
受けた人が非常に沢山居る、という意味である。
c0032138_07141830.jpg
ちなみに、本「TEFNON」ブランドのレンズを製造した
「小堀製作所」は現代でも健在である。
TEFNONは、急に出てきたメーカーでは無く、それ以前から
CANONブランドのMFレンズのOEM生産をやっていた模様だし
AF時代以降、自社ブランドのレンズを殆ど作らなくなって
からも、他のカメラメーカーのレンズを生産していたそうだ。

まあ、そう言う歴史だと、たとえばCOSINAと同じような
状況であったのだろう。1980年代から1990年代にかけ、
コシナも同様な大手OEMメーカーであったのだが、反面、
自社ブランドレンズは、とんてもない新品値引き戦略で、
その当時のユーザー層からは「安かろう、悪かろう」と
思われていたのだ。

だが、コシナは1999年と2006年に「フォクトレンダー」
と「カール・ツァイス」という超強力なブランドを取得して
現代では、60万円以上もする超高級レンズを作って
販売している。
当然、「高級レンズメーカー」という市場認識だ。

結局、「ブランド」というのは、そういう類の物であり、
無名だからといって、悪い製品を作っている訳では無いのだ。
しかし、世間一般の99%のカメラユーザーはそうは思わない、
「有名ブランドのカメラやレンズの方が、良く写る
良い製品である」と極めて単純に思い込んでしまう。
勿論、その認識は間違っているが、間違っている理由が
わからない人には真実はわからないので、しょうがない。

・・さて、そういう認識を持った上で、本TEFNONレンズを
試してみよう。
と言っても、私も実は、本レンズだったか? あるいは
類似のスペックのTEFNONレンズを、銀塩時代の1990年代
に一度買った事がある。
・・が、当時の私は、そのTEFNONを「安かろう、悪かろう」と
解釈してしまい、あまりちゃんと使いこなそうともせずに
数回撮っただけで「写りが悪い」と処分してしまっていた(汗)
これは前述のように、「誤解」であり「思い込み」の類だ。

現代において、私は、「レンズを使いこなせないのは
撮る側(ユーザー)の責任だ」と思っている。
そりゃあ、本TEFNONは古いレンズであるし、当時発展途上の
ズームレンズでもあるし、色々と性能的な未熟は、当然存在
するであろう。が、それを「レンズの言うがまま」に
撮影してしまったら、それらの弱点がモロに出てしまう。

そうではなくて、オールドレンズであるから、性能的な
弱点がある事は想定の上で、まず、どういう点が弱点で、
どういう点が長所なのかを分析し、その後、弱点を回避する
あるいは、その弱点を逆用して特徴に変えてしまう。
そして、レンズの長所は、そのまま活かすようにする。
こういう考え方が、とても重要であろう。

ちなみに、本「レンズ・マニアックス」のシリーズ記事を
スタートしてから、私はこうしたジャンクズームレンズを
15本以上購入している。何故ならば、これらは皆、その
「弱点回避」の練習の為の教材として使えるからである。

現代の高性能レンズでは、「弱点回避」の練習は難しい、
勿論、そこまで顕著な弱点は持たないからである。
だからこそ、弱点が目立ち易いこれらのオールド・ジャンク
ズームが、その練習には適切なのだ。

こうしたジャンクレンズの私の購入価格は、各々、最低
300円から高くても3000円までだ。平均1000円台で購入
しているとすれば、合計1万円台かそこらで、こうした
高度な練習の機会が作れるのであれば、「授業料」として
考えれば、ずいぶんと安価だ。

それに、実際にレンズを買っている訳だから後には引けない。
使いこなす事ができなければ、買ったレンズが無駄になるし、
それでは「ユーザーの負け」である。
その「負け」は、レンズの弱点を回避するスキルを持って
いないからであって、あくまで自分自身の責任だ。

本TEFNON 80-200/4の長所は、WIDE端でマクロ切り替え
が可能な事、直進式ズームでMF操作性に優れる事、
さらに、開放F値固定型ズームである事。それとボケ質が、
この時代のズームにしては良い方である事だ。

弱点は、解像感が低く、開放では特にNGだ。
開放からは少し絞って使う必要があり、それでもあまり
改善されない事から、結局、F5.6/F8あたりで、ほぼ固定の
用法になる。
この状態て、ボケ質破綻回避の技法、あるいは被写界深度の
調整をしたい際、実質的にF8かF11にしか絞り値を調整
できる範囲が無い、さらに悪い事に、絞り値は1段刻みだ。

また、光線状況によっては、いっきにフレアっぽくなって
コントラストが低下するが、逆光耐性全般の課題では無い。
これについては光線状況を良く「読んで」使うのが良い。
c0032138_07141739.jpg
使いこなしがやや難しい為、使用する母艦は操作系や
望遠レンズ向きの性能に優れた「望遠母艦DMC-G6」を
用いている。ここで連続デジタルズームを2倍迄の使用に
おいては、換算160-800mm/F4のスペックとなる為、
これは自然観察撮影や野鳥撮影に適した焦点域であり、
被写体も、そうしたものを選ぶのが望ましい。

なお、こういう事を色々と書いているが、これを読んで
同じ事を試してみよう、とか言うのは、意味が無い事だ。

レンズの欠点に対する回避法は、沢山のパターンがあると
最近では思っている。加えて、それは各々のユーザーが
自分で意識して考えないと意味が無いと思う。
まあつまり、その為の「レンズへの投資」であり、
実用における「分析」「研究」「練習」でもある訳だ。
それら一連のプロセスを自身でやっていかないとならない。

撮影に係わる技法とかノウハウとかは、他人から受動的
に教えてもらうものではない、そんな事をしていたら、
それでは、単なる「習い事」になってしまう。
自分で色々と考えて、工夫をして撮る事が「写真」では
なかろうか? 写真撮影を「習い事」だと誤解していたら、
永久にビギナーから脱出は出来ないのだが、残念ながら
ビギナー層では、そういう考え方が、ほぼ全てだ。

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次は今回ラストのレンズ
c0032138_07142654.jpg
レンズは、SONY Sonnar T*135mm/f1.8 ZA (SAL135F18Z)
(中古購入価格 89,000円)(以下、ZA135/1.8)
カメラは、SONY α77Ⅱ(APS-C機)

2006年発売の大口径AF単焦点望遠レンズ。

ハイ・コスパレンズ・マニアックス第16回記事で紹介
済みなのだが、そのシリーズは一種の「抜粋編」なので、
本筋として、過去シリーズ「ミラーレス・マニアックス」
および本シリーズ「レンズ・マニアックス」で、全ての
所有レンズを紹介する。この系列記事では本ZA135/1.8は
未紹介だったので、ここで再掲しておこう。
c0032138_07143453.jpg
本レンズは、SONYがコニカミノルタよりαの事業を継続
移管した後、最初の年(2006年)に発売されたツァイス
ブランドの3本のレンズの中の1本である。それら以外の
α用レンズ群は、ほぼ全てが、ミノルタまたはコニカ・
ミノルタ時代の物を外観変更して流用していた為、
「SONYはレンズを作れないのでは?」という、市場からの
懸念を払拭する為に、急遽追加された高級レンズだろう。
(注:外観変更版レンズも、価格は大きく値上げされた。
当然、ミノルタ時代のレンズ生産設備(工場)や関連部品を
流用したと思われ、そうであれば設計開発費が殆どかかって
いないのに、大幅な値上げは不条理だと思う)

で、本レンズの場合は、例えばだが、日本で作られた設計図
や試作品をカール・ツァイス社に送って「お伺い」を立てて、
同社の「お墨つき」を貰えれば、ツァイスのブランド銘で
売れるのだろう。勿論ブランド使用料は、1本あたり等で、
ツァイス社に支払わなければならないであろうが・・


そして、高級(すなわち高価、定価20万円+税)である
事と、高性能である事、はイコールでは無い。

私は、本レンズの上記の「出自」が、あまり気に入らず、
旧来製品の値上げ問題もあって、反発心すら持っていた為、
ずっと無視しつづけた。

後年、ライブ等のステージ系の撮影で、換算200mm級の
明るい望遠が必要となっていて、その目的においては
本ZA135/1.8が最適であろう事がわかってきた。
c0032138_07150168.jpg
そうであっても、価格が高価すぎてコスパが見合わず、
10万円以上の相場の中古をずっと見送り続け、実に発売後
10年の2016年になって、やっと9万円を切るB級中古品を
購入した次第だ。(注:近年では、SONY α(A)マウント
製品の市場縮退の為、さらに相場が下落している)

本ZA135/1.8は、描写性能的には悪く無く、当初反発心を
持っていた「ブルジョアレンズ」(高価なだけで、たいした
性能では無い、何もわかっていない富裕層が買うレンズ)
では無い事がわかった。あくまで実用レンズとして考えれば、
9万円であればコスパは、まあ及第点だ。

だが、AFは遅く(超音波モーター無し)、描写傾向は
解像力よりもコントラスト特性を重視した、いわゆる
「ツァイスっぽい」描写で、あまり現代的では無い。
つまり、10年以上も前の設計のレンズなので、それなり
の古さがある。現状、特に大きな不満点は無いが、
それでも、「いつまでもこのレンズは使えないだろうな」
という予感が強くなってきていた。
また、SONY α(A)マウント機のラインナップ縮退も
影響が大きく、現在、本レンズを使える機体が殆ど無い。

その後、2017年に発売されたSIGMA 135/1.8 | Artを
入手し、そちらを暗所ステージ撮影等における、
本ZA135/1.8の将来的な代替としようとしている。

さて、そうなると近い将来に本ZA135/1.8の使い道が
なくなりそうなのだが、そこで、「用途開発」が
進んでいる。
「用途開発」とは、そのレンズの長所や短所からなる
特性を実践撮影等から分析・研究し、その特性に見合った
撮影ジャンルや被写体分野を探し出す事である。
c0032138_07150595.jpg
本レンズは、優れたボケ質と、良好なコントラスト特性、
そして短い最短撮影距離(72cm)が長所であり、
弱点は、AF速度と解像感である。また、MFは無限回転式
ピントリングにより、あまり向いていない。

また、本レンズの母艦は、SONY α(A)マウント機が
基本であろう、ミラーレス機でも使えない事は無いが、
MF操作性が劣る為に厳しい。


αフタケタ一眼レフであれば、画質無劣化のデジタル・
テレコンバーターが使用でき、殆ど望遠マクロレンズと
して使用可能だが、この機能を用いると画素数をあまり
高める事ができず、おおよそ600万画素に制限される。
この画素数は趣味撮影では十分であるが、業務用途の
場合や、大伸ばしの可能性がある等では、やや厳しい。

これらから、本レンズの他の有益な用途として
「自然(観察)撮影分野」、いわゆる「フィールド撮影」
に有益である事がわかった。(=「用途開発」できた)
殆ど趣味撮影の分野ではあるが、実務的に、この分野の
写真が資料として必要とされる場合もあるだろうから、
単に「遊びだ」とも言い切れない。

では、この目的に使う為にだが、まず母艦はα77Ⅱが
適正であろう。
αフタケタ機のデジタルテレコンを断続的に掛ければ、
フルサイズ換算200mm,約300mm,400mmの画角が
得られ、いずれも最短撮影距離は72cmで、最大撮影倍率
は0.75倍にも達し、ほとんど望遠マクロとして使える。

(注:本ZA135/1.8の最短72cmは、長らく135mm級
トップの近接性能であったが、2019年発売のSONY FE
135/1.8GMの最短70cmが、僅かに上回る性能となった。
ただし、最大撮影倍率は両者同等の0.25倍である)

MF操作性の弱点があり、フィールド撮影では厳しいが、
α77ⅡのDMF機能を用いて、MFに自動移行後にピーキング
機能を併用すれば、ほとんど問題点は回避できる。

開放F1.8は、フィールドでは明るすぎるが、ND2減光
フィルターの併用で、α77Ⅱの1/8000秒シャッターで
ぴったりの性能だ。明所でも絞りをフルレンジで使え、
被写界深度の調整や、ボケ質破綻回避(殆ど出ないが)
の技法が自在に使える。

まあ、これで何も問題無い、本ZA135/1.8は、
フィールド撮影用途、および暗所ステージ撮影用として
まだ長らく使える事であろう。
なお、カメラ側がこれ以上画素数等が進化してしまうと
本ZA135/1.8の解像力ではバランス的に厳しいが、
それでも記録画素数を下げて使うとか(注:それの効果は
不詳)現時点でのα機を残しておくか、または、そんな
事は気にしなければ良いと思う。

仮に、今後SONYがミラーレス1本に絞り、Aマウント機を
完全に無くしてしまったとしても、まあ10年間以上は
中古市場には機体は残るので、大きな問題では無い。
その頃には、本レンズも「オールドレンズ」であるから
実用レンズではなく、趣味レンズに特化すれば良い。
その為にも、趣味分野での「用途開発」を模索していたのだ。
c0032138_07143496.jpg
本レンズは、ユーザー層の誰にでも必要なレンズでは無い。
用途が限られていて、かつ、上記の用例以外にも、個々の
ユーザー毎の「用途開発」も必要になるだろう。
まず、それが出来る事が使用の為の条件である。
初級中級層が考えるように、「カール・ツァイスだから
良く写る」などと言う話が購入の論点では全く無いので、
念の為。

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さて、今回の第18回記事は、このあたり迄で、次回記事に続く。


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