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ハイ・コスパレンズBEST40 (10) 12位~9位

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高いコストパフォーマンスと付随する性能を持った優秀な
写真用交換レンズを、主にコスパ面から評価したBEST40を
ランキング形式で紹介するシリーズ記事。

今回もランクインしたレンズを順に紹介して行こう。
(ランキングの決め方は第1回記事を参照)

---
第12位
評価得点 4.05 (内、コスパ点 4.0)
c0032138_17114337.jpg
レンズ名:TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
レンズ購入価格:18,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC LUMIX DMC-GX7(μ4/3機)

ハイコスパ第5回記事で紹介、またミラーレス名玉編第2回
記事では総合第13位にランクインした、2010年代のμ4/3
専用MF超望遠ミラーレンズ。
c0032138_17114347.jpg
ミラー(反射)レンズは、銀塩MF時代から存在している。
特に有名なのはTAMRON SP500mm/f8 (Model 55B,55BB)
であろうか?(ミラーレス・マニアックス第31回記事)
55Bシリーズは1979~2006年の長きに渡って生産が継続された。

超望遠レンズに対するニーズ(そこには、初級層における
「憧れ」もあるし、野鳥撮影等で実用的にそれを必要とする
ユーザー層も勿論居る)は、昔(銀塩時代)から強くある。

ただ、一般的な500mm級という超望遠レンズにおいては、
「大きく、重く、高価」というレンズであるから、一般層では
よほどの強い必要性が無いと、まず購入は無理だ。

そんな銀塩時代のニーズを簡便に満たしてくれたのが
「ミラーレンズ」である。レンズとは言うが、光学的には
ガラスレンズの光の屈折による製品では無く、主体は反射鏡
(ミラー)により光を収束させる「反射光学系」による物だ。
(勿論、一部にレンズも含まれている、後述の反射望遠鏡
での接眼部(アイピース)のような感じだ)

この原理はニュートンの反射望遠鏡(1668年)の発明による。
日本では江戸時代頃の昔の話だ。

で、MF時代のミラー(レンズ)は、描写力がスペシャルと
言う訳では無かった。が、勿論、ミラーレンズや反射望遠鏡
の全部が描写力に問題がある訳では無い。

現代における天体観測用の大型望遠鏡は、その殆ど全てが
反射式であり、屈折式はむしろ稀なのだ、それは製造上や設置
(重量)上の問題もあるだろうが、基本原理的には反射光学系
が屈折光学系に劣る訳では無い。
いやむしろ、ニュートンは屈折望遠鏡に発生する「色収差」
を嫌って、それを解消する為に反射望遠鏡を発明したのだ。

でもまあ、上記の写真用ミラーレンズ、例えば55B/55BBや
他社のミラー製品が、ガラスレンズの一般望遠レンズに対して
描写力等の課題があったのは確かだと思う。恐らくはコストや
製造技術上等の問題で、あまり高画質な仕様の製品を作る事が
出来なかったのであろう(それをすると、むしろガラスレンズ
型よりも高価になってしまうかも知れない)

まあそんな訳で、ミラー(レンズ)の人気は少しづつ翳りが
出てくる。AF対応製品を作るのが困難(唯一MINOLTAで実用化
したAF製品が1本ある。未所有)だった事もあり、1990年代の
AF時代以降は、忘れ去られたカテゴリーの製品となっていた。

2000年代位にはKENKO等から何機種かの安価なミラー(レンズ)
が発売されたが、その頃のデジタル時代の新規ユーザー層からは
「トイレンズの一種」と見なされてしまったかも知れない、
これらが話題になる事も殆ど無かった。

こういう状況の中、2010年代発売の本Reflex 300mm/f6.3
であるが、実にひさしぶりの本格派ミラー(レンズ)だ。

旧来のミラーよりも大幅に進化した点がいくつかあり、それは
小型軽量化、電子接点搭載、最短撮影距離の短縮、画質の改善、
通常フィルターの使用可、がある。
c0032138_17114339.jpg
μ4/3マウント専用レンズであるのは、小型軽量化に貢献して
いる他、換算焦点距離が2倍となる事により、600mm相当の
超望遠画角が簡単に得られるという利点に繋がる。

なお、PANASONIC機に備わっている優秀なデジタル拡大機能
(デジタルズーム、デジタルテレコン)を併用すれば、
600mm~1200mm/F6.3(テレコン無し)
1200mm~2400mm/F6.3(テレコン2倍)
2400mm~4800mm/F6.3(テレコン4倍)
の、都合3種類の連続可変型超々望遠ズームとして実質的に
使用する事ができる。

なお、今回使用のDMC-GX7では内蔵手ブレ補正が入っているが
デジタル拡大使用時でも、拡大率に応じた手ブレ補正焦点距離
設定の再入力は必要ない。
過去記事でそうした記述があった場合は、誤りであるので
ここで訂正する(ミラーレス・クラッシックス第12回記事、
GX7の回で、その詳細を述べている)

ただ、本レンズで、2倍拡大での1200mmを超える焦点距離以上
では、実用的には長すぎて使用できないし、内蔵手ブレ補正
も精度の面で不安定となってくる。
手持ち撮影での実用限界は、手ブレ補正機能が有っても無くても、
経験的(実験的)には、およそ1500mm迄という所だ、
これを越える換算焦点距離は、まず使えない。
c0032138_17114326.jpg
本レンズの特徴は、上記のように、過去のミラー(レンズ)の
弱点の多くを解消している点だ。
特に最短撮影距離の短縮(80cm)は非常に大きな利点となり、
望遠型マクロ(ワーキング・ディスタンスを大きく取れる)
となる事で、フィールド(屋外)自然撮影全般に適している。
(遠くの野鳥等から、近くの花等まで、なんでも撮れる)

弱点もいくつかある、まず開放F値がF6.3と固定な事だ、
これはミラー(レンズ)全般に開放F値が固定であるが、
それにより被写界深度の調整が困難だ。

「困難」というのは「不可能」という話ではなく、例えば
被写界深度を深くしようとした際、たとえ絞りが無くても、
「撮影距離を離し、その分、デジタルズームで拡大する」
という高度なデジタル技法で代替できる。
(トリミングと等価ではあるが、後編集の手間が大幅に減る
事と、撮影時にボケ質破綻を確認・固定できる事が長所だ)

続く弱点だが、描写力はだいぶ改善されたとは言え、依然まだ
屈折光学系に比べると劣っている。
特に解像感が低く感じられる事、それからこれは作画上の意図
によりけりだが、ミラー特有の「リングボケ」が発生する事だ。
c0032138_17114264.jpg
MFしか無いのは初級層には気になるかも知れないが、DMC-GX7
以降やDMC-G6以降のPANA機であれば、優秀なピーキング機能が
常時使える。OLYMPUS機では、OM-D E-M1以降の機種で
いずれかのファンクションボタンに、その機能を設定すれば
ピーキングでのMFアシストが可能だ、ただ、操作性の観点
から言えば、常時それが可能なPANA機の方が使い易いだろう。
(注:本レンズ使用に限り、電子接点からの情報伝達により
OM-D E-M1やE-M5 MarkⅡ等では、MFアシストの拡大OFF、
ピーキングONの設定で、ピーキング機能が常時利用可能)

そして、本Reflex 300mm/f6.3の様々な長所を考慮すれば
これらの弱点は微々たるものだ、
おまけに小型軽量で価格も安価である。
この為、ミラーレス名玉編でも、本ハイコスパ名玉編でも
どちらにも上位にランクインするという結果になっている。

本Reflex 300mm/f6.3は、μ4/3機ユーザーであれば、
初級層から上級層まで必携のレンズであろう。

---
第11位 
評価得点 4.10 (内、コスパ点 4.5)
c0032138_17115626.jpg
レンズ名:TAMRON SP90mm/f2.8 Macro (Model 72E)
レンズ購入価格:20,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX K-5(APS-C機)

ハイコスパ第14回記事で紹介の、1990年代のAF単焦点
中望遠等倍マクロレンズ。


今更説明の必要も無い定番のマクロレンズだ。
c0032138_17115679.jpg
銀塩MF時代の1979年に発売のSP90mm/f2.5(Model 52B)
(ミラーレス・マニアックス第8回記事)で、TAMRONの名を
世に知らしめた「90マクロ」シリーズは、その後AF化や
等倍化といったモデルチェンジを繰り返しながら、
現代に至るまで、およそ40年間もの超ロングセラー製品である。
当然、バリエーションも多いのだが、本72E型は1996年発売の、
「等倍」&「F2.8版」になった最初のレンズだ。

本72E型以降は、光学系に大きな変更は無いが、272E型
(2004年)では、レンズ後群にコーティングを施し、
デジタル一眼レフ対応の「Di型」と称している。


さらに、後年のF004型(2012~2013年発売)やF017型
(2016年)では、内蔵手ブレ補正や超音波モーターが加わって
いる。

(注:F004型では、異常低分散ガラスを採用する等、若干の
光学系の見直しも行われている)

この歴史を良く見ると、2004年から2012/3年まで約9年間も
この「90マクロ」のモデルチェンジが滞った時代がある。
これは恐らくだが、この時代は丁度デジタル一眼レフが
一般層に普及していった時代なのだが、その多くはAPS-C型
センサー機であった(デジタル一眼レフ・クラッシックスの
シリーズ記事群を参照)
APS-C機で使うと、このマクロは約135mm相当の画角となり、
ちょっと長すぎる、と言うイメージもあったのかも知れない。

まあ、だから2009年にはAPS-C機専用のSP60mm/f2 Macro
(Model G005、本シリーズ第9回記事)を発売したのであろう。
そのレンズであればAPS-C機で90mm相当の画角となる訳だ。
「90マクロ」は既に完成度も極めて高いレンズであったので、
慌ててモテルチェンジをする必要もあまり無かったのだろう。
c0032138_17115697.jpg
じゃあ、何故また2012年頃には「90マクロ」のモデルチェンジ
が再開したか?と言うと、こちらも想像の範疇であるが、
その2012年は「フルサイズ元年」とも言われる程、各社から
多くのフルサイズ・デジタル一眼レフが発売された年である。
だからTAMRONとしても「また90マクロが主流になる」と判断し、
シリーズの強化を図ったのかも知れない。
あるいは、この時代から、一眼レフ市場の縮退が始まって
いて、各社のレンズは高付加価値化、すなわち値上げされた
訳であり、TAMRONもその為に手ブレ補正や超音波モーター
を搭載し「高付加価値化」したのであろう。

しかし、個人的な意見としては、「90マクロ」において
F004型から付加された手ブレ補正や超音波モーターの機能は、
ちょっと製品コンセプト的には矛盾を感じる。

何故ならば、マクロ撮影ではMFを使用するケースが主であり
AFの強化は中遠距離撮影にのみ効果がある事。それから、
マクロ撮影でのブレは、撮影者の手ブレよりも被写体ブレの
問題が遙かに大きい事。そして、撮影者側がブレるとしても
手ブレ補正機構が効果を発揮する上下左右方向のブレではなく、
むしろ被写体までの距離が微妙に変化する「前後ブレ」の方が
問題になるからだ。(それは手ブレ補正機構では防げない)

まあでも、メーカー側としては、手ブレ補正や超音波モーター
といった「付加価値」をつけないと、前モデルとの差別化が
出きず、すなわち値上げも出来ない。つまりモデルチェンジに
かかる費用を回収する為にも、あえて「付加価値」を付与して
結果的に利益を上げる(値上げする)必要がある訳だ。
(例:272E型の定価は68,000円、F004型の定価は90,000円)
c0032138_17115521.jpg
さて、この90マクロは、昔からレンズ構成に大きな変更が
無い事から、私は、20年以上も前の古いバージョン(72E型)を
いまだに使い続けている状態だ。
(しかも、2種類のマウントで保有している)
まあでも、レンズ構成の変更の必要が余り無いと言う事は、
それだけ光学系の完成度の高いレンズであると言う事であろう。

本レンズの特徴や注意点等の詳細は、ハイコスパ第14回記事や、
それ以前のミラーレス・マニアックス第31回、第53回記事に
詳しいので、重複する為に割愛する。

一言で言えば、描写力自体に不満は殆ど無いと思うが、
中古購入時に、どの時代のバージョンを買うか?という選択が
あると思う。ただ、前述のようにレンズの描写傾向に大きな
変更も無いし、付加価値要素も実用価値は微妙である。
結局、予算に応じて好きな時代(仕様)のものを選べば良い。

AF/F2.8版以降の中古相場は、バージョンや程度に応じて、
1万円台前半~6万円位になると思う。

まあ、バージョンの選択はともかく、一眼レフユーザーの
誰もが必携のマクロレンズだ。
・・とは言え、本レンズを所有していないマニアや中上級者を
探す方が難しいであろうが。

---
さて、ここからBEST10に突入だ。

第10位
評価得点 4.20 (内、コスパ点 5.0)
c0032138_17120767.jpg
レンズ名:SIGMA 30mm/f2.8 EX DN
レンズ購入価格:8,000円(新古)
使用カメラ:OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機)

2012年に発売されたSIGMA初のミラーレス機専用交換レンズ
(DNシリーズ)のうちの1本(ハイコスパ第25回記事等で紹介)

μ4/3用とSONY E(NEX,APC-C専用)との2種類のマウント用
で発売されていたので、換算画角は、それぞれ60mmまたは
45mm相当の、ほぼ標準画角となる。
c0032138_17120703.jpg
この「DNシリーズ」のレンズ群の特徴は以下となる。
*エントリーレンズ並みの低価格
*小型軽量な単焦点レンズ
*高画質である。このDNシリーズのレンズ群の仕様や
 レンズ構成はSIGMAの高級コンパクト(APS-Cセンサー)の
 「DPシリーズ」の搭載レンズと同等の仕様のものが多い。

さて、本レンズは、発売後翌年に早くもリニューアルされ、
Art Lineと呼ばれるSIGMAの製品ラインナップの中では
高画質(高解像力)やボケ質などの描写性能を優先した
カテゴリーに属した、という歴史がある。

まず、本レンズの発売時2012年は、その前後の2010~2014年
頃にミラーレス機(ミラーレス一眼)が、市場シェアを大幅に
伸ばし、一眼レフ市場を喰い尽くす勢いであった事が背景に
ある。
μ4/3機の登場(2008年末)より、一眼レフ陣営の各社は、
当初、ミラーレス機の市場に懐疑的であったと思われるが、
実際の伸びは凄く、2012年の時点では、ほぼ全ての一眼レフ
メーカーもミラーレス機市場に参入せざるを得なくなっていた。

カメラメーカーは市場戦略が極めて難しかった時代ではあるが
レンズメーカーも同様だ。従来のように一眼レフ用のレンズ
だけを作っていて済む訳が無い。ミラーレス機用レンズへの
対応あるいは方針策定も急務であった事だろう。

ただ、ミラーレス機のユーザー層のニーズが良く掴めない。
これはカメラメーカー側でも同様であり、PANAのGシリーズや
SONY NEXシリーズの、この頃(2012年)迄の製品ターゲット
やコンセプトは、くるくると変化していたように思える。

そして、この年2012年から、一眼レフ陣営(コンパクト機を
含む)の巻き返しが図られる。
製造技術の進歩で、従来より低コストで大型化が可能となった
撮像素子(センサー)を搭載したフルサイズ・デジタル一眼
レフや、大型センサー搭載コンパクトが次々と市場にリリース
され始める。
ミラーレス陣営は、少なくともμ4/3は規格でセンサーサイズ
が4/3型に決められている為、この動きに追従できない。
まあそれが一眼レフ陣営が考えたミラーレス対抗策なのだ。

SONYでは2012年迄APS-Cセンサーで展開していたNEXシリーズ
を拡張し、同じEマウントでフルサイズ化したα7(/R)を
翌2013年にリリースする。(同時にシリーズ名もαに統一)

まあ、SONYは撮像センサーを他社に供給する立場だ、
センサー技術のロードマップ(注:製品が将来的に進化して
いく様子を年表化した開発計画の事)を自社では当然理解して
いたから、近い将来のフルサイズ化を見据えて、NEXの時代の
Eマウントはフルサイズセンサーが入る大きさで設計していた。

SIGMAも、一端ミラーレス用に傾きかけたレンズの市場戦略を
また一眼レフ用を主軸とする事に方向転換しなくてはならない。
なにせ今後は、フルサイズ機や、超高画素機が、次々と出て
くる状況が予想されるからだ。

SIGMAは自社のレンズ群を大幅に見直し、多くのレンズ機種を
ディスコン(生産中止)とし、新たに、アート、スポーツ、
コンテンポラリーの3つの分野にカテゴリー分けし、
ユーザー毎のレンズの使用目的を2013年頃に明確化した。
まあ、使用目的別というのは良い考え方ではあるのだが、
高付加価値化戦略(=利益の出ないレンズは作らない)も
あったと思う。
c0032138_17120721.jpg
さて、本レンズ30mm/f2.8 EX DN はどうなるのか?
価格帯(25,000円程度)から言えば、高コスパをかかげる
「コンテンポラリー」に分類されてもおかしく無いのだが、
単焦点である事、高画質である事、等から「Art Line」に
分類される事になったのであろう。(自社高級コンパクトの
DPシリーズ搭載レンズもあったから、これをコンテンポラリー
とは呼び難い、DPシリーズの付加価値を落としてしまうからだ)

しかし、旧来と同じレンズを「これは今日からArt Lineです」
とは流石に言えない。
そこで、本レンズ EX DN型の弱点であった外観のチープさを
改善し、高級感のある外装でモデルチェンジした物が、
2013年発売のArt (A) 30mm/f2.8 DNである。

こういう場合に旧製品は、「新古品」扱いとして中古市場に
大量放出される事がある。とは、以前の記事でも述べた通り。
本レンズもそうなり、未使用の新古品として流通した。
結果的に僅かに8,000円という格安相場で入手出来た訳だ。

で、本レンズの描写力はあまり問題点を感じない。
低価格レンズながら、極めて良く写るレンズだ。
c0032138_17120779.jpg
弱点は、まず、大きなボケを得られない事。
つまり開放F値がF2.8、最短撮影距離が30cmは、いずれも
平凡な仕様であり、被写界深度を浅くする撮影が困難だ。

近接撮影をすれば、勿論被写界深度を浅くできるのだが、
無限回転式のピントリングのMF操作性の弱点と、ミラーレス機
のコントラストAFの精度不足の問題が重くのしかかる。

AFについては、電源OFF時にレンズがカタカタと鳴るという
弱点がある、これは実用上は問題無しとも言えるのだが、
私は非常に気になるし、なんだか安っぽい。
安っぽいと言えば、外観のチープさもある。後継機のArt型
では若干改善されているが、本レンズでは少々問題だ。
また、DNシリーズでは、本30/2.8のみフードが付属して
おらず別売だ。

まあ、細かい弱点はあるが、価格から言えば、殆どが許せて
しまうハイコスパレンズである事は間違い無い。

---
第9位
評価得点 4.25 (内、コスパ点 4.0)
c0032138_17121727.jpg
レンズ名:smc PENTAX-DA★55mm/f1.4 SDM
レンズ購入価格:42,000円(中古)
使用カメラ:PENTAX KP(APS-C機)

ハイコスパ第1回、ミラーレス名玉編第4回(総合第3位)
で紹介の、2009年発売のAPS-C機専用AF単焦点標準
(中望遠画角)レンズ。

特徴を一言で言うと、「高性能レンズ」である。

これは「★(スター)のマークが付いているから」といった
事が根拠なのではなく、そう言う事は、むしろどうでも良い。
(注:PENTAX では銀塩時代の昔から高性能レンズに★の
マークを付けて販売していた。同様の例として、他社では
CANONの「Lレンズ」、TAMRONの「SPレンズ」、
MINOLTA/SONYの「Gレンズ」、OLYMPUSの「PROレンズ」
等がある)


メーカーが高性能レンズの印(しるし)をつけて、どう言おうが
最終的に品質の判断をするのは、あくまでユーザー側だ。
性能の評価は、メーカーや評論家に押し付けられる物では無い。
むしろ、「そういう印をつけて価格を吊り上げている」と
いった悪印象があるので、個人的には、そうしたレンズを
出来るだけ買わないようにしている位だ。
c0032138_17121757.jpg
さて、本レンズの描写傾向は、銀塩時代の名レンズ、PENTAX
FA★85mm/f1.4 (ミラーレス名玉編第1回、総合第18位)に
極めて良く似ている。本レンズはデジタル(APS-C)機で
82.5mm相当の換算画角となる事から、「FA★85/1.4の
デジタル代替レンズである」と個人的には定義している。

名玉FA★85/1.4は、1990年代末位にFA77mm/f1.8Limited
(ミラーレス名玉編第4回、総合第1位)に置き換わるように
市場から姿を消してしまった(生産中止)
まあFA77/1.8は確かにトップクラスの性能のレンズなのだが、
FA★85/1.4も捨てがたい。

そこで、デジタルでは使い難くなったFA★85/1.4
(注:この意味だが、PENTAXでは2016年のK-1の発売まで
全てのデジタル一眼レがAPS-機であった為、換算画角が
約127mm相当となるFA★85/1.4は、本来威力を発揮する
人物撮影の分野では、やや長すぎる焦点距離(画角)となる為)
を代替する、と言う点では、本DA★55/1.4は最適のレンズと
なった訳だ。

SDM(超音波モーター)仕様は、迅速なAF動作をもたらすが
AF精度がとても高いという訳でもない。
それとこの超音波モーターは、可聴域の高周波音を発する為
撮影中に「チーッ」と言う耳障りな音が聞こえる弱点を持つ。

まあでも、独特なボケ質などは好感が持てる、
SDMの弱点は不問としよう。
c0032138_17121755.jpg
他、本レンズは比較的高価である事も弱点だ。
本レンズが発売された2000年代末では、50mm/f1.4級レンズは
銀塩時代からの設計を引き継いだ、古いが、技術がこなれていて
完成度の高い物ばかりで、当然ながら価格も安価であり、
中古でも2万円程度迄で「よりどりみどり」であった状況だ。

しかし、本レンズ以降の時代では、最新設計の非常に高価な
単焦点標準レンズも各社から色々と出始める。
代表的な新鋭AF標準レンズを2つほど上げれば・・
NIKON AF-S NIKKOR 58mm/f1.4G
(2013年発売、定価210,000円税別、後日紹介予定)
SIGMA Art 50mm/f1.4 DG HSM
(2014年発売、定価127,000円税別、レンズマニアックス第2回)
等がある。

それらに比べると本DA★55/1.4(発売時実勢価格約80,000円)
はまだ安価な方ではある。が、後年のそれらは、確かに高画質
なのかも知れないが、開発費の上乗せが大きいのだろうか?
そう安易に買える価格帯ではなくなってしまった。
なお、カールツァイスのブランドからは、さらに非常に高価な
新鋭単焦点標準レンズが発売されている。
また、さらに後年ではPENTAXやTOKINAからも、高価格の
標準レンズが次々と発売されている。

もし、こう言った価格帯が新標準レンズの「常識」となって
しまうと、正直困る。
「AF単焦点標準レンズは中古で2万円」これがほんの10年程前
までの常識(相場)であり、それでも、完成度の高いそれらは
十分に使えていたのだ。

まあ「高画素化時代への対応」と言う大義名分はあったのかも
知れないが、要は値段の高さは開発費のコスト回収が主であろう。
そして、あまり数が売れないと思われるカテゴリーのレンズ
だけに、余計にレンズ1本あたりの開発費上乗せが多額になる、
と言う厳しい状態だ。

ただまあ、本DA★55/1.4も、発売後10年を超えるくらいの
現代においては、それらの新鋭超高性能単焦点標準に比べると
解像度チャート等での数値評価上では、さすがに若干見劣り
する状態になってきたのであろう。

PENTAXも2016年にフルサイズ一眼レフを発売した所では
あるが、高性能なフルサイズ対応単焦点標準が存在しない。

FA50mm/f1.4(ミラーレス第23回記事)があるが、これは
銀塩時代の1990年代の古いレンズである、いくら当時から
完成度が高いレンズだとは言え、発売後四半世紀を超えれば
仕様的老朽化(周囲の新製品が皆、高性能化して来る)は、
どうしても避けられない。

PENTAXでは、2018年にHD PENTAX-D FA★50mm/f1.4
SDM AWを発売(末所有)、これも定価18万円と高価な
標準レンズで、超高画素対応(高解像力)をうたっている。


ちなみに、超高画素対応と言っても、現在のフルサイズ機の
最大5000万画素位での、ピクセルピッチと、レンズの
解像力(LP/mm)を計算してみると、まだ若干余裕がある。

すなわち、まだ従来レンズでも高性能な物を使えば何とか
なる状況なのだが・・もし近い将来に画素数の向上が急速に
進展した場合、そこから対応レンズを開発していたのでは
間に合わない。
間に合わないのは開発の時間のみならず、ユーザー側の
「意識」の変化も、それには急には追いつか無いのだ。

そこで、今のうちから早目に
「超高画素カメラには、新世代の高解像力レンズが必須!」
と言う新たな「常識」を、ユーザー層に刷り込んでいかなくては
ならない。

一般ユーザーで解像力の検証や計算が出来る人は皆無だろう。
だから、ちょっと凝ったマニア等により、ちゃんと計算されて、
その辺りが「あれ?」と疑問に思われない内に、ユーザーには、
そのように思い込んで貰わないとならないのであろう。
c0032138_17121641.jpg
・・まあ、余計な話だった(汗)
結局はユーザー側が、その価格や品質を納得して新型レンズを
買うならば、それで良い、という事だ。
「新製品は高性能だ、だから高いんだ」と、ユーザー層には
単純に、そう思い込んでもらって、メーカーに利益を還元して
いかないと、カメラ市場そのものが崩壊してしまう・・

さて、裏の事情はそのあたりまでで・・
ともかく、本DA★55/f1.4は見事にランキングのベスト10入り
を果たしたハイコスパレンズである。
まだ若干中古相場は高目の推移ではあるが、仮に3万円台
前半位で入手できるのであれば、もう文句の無い、お買い得
レンズとなると思う。

(追記:類似スペックの、新鋭中国製レンズ、「七工匠
55mm/F1.4」(2018年頃発売、実売16000円前後)も
悪く無い。これは銀塩時代のプラナー系85mm/F1.4構成を
スケールダウンしたAPS-C以下ミラーレス用MFレンズだ。
そのレンズも、これくらいの上位ランキングに入って来ても
おかしく無かったが、本記事執筆時点では、購入および
評価が間に合っていなかった→後日別記事で紹介予定)

----
今回はこのあたりまでで、次回記事では、いよいよBEST8
となる、引き続きランキングレンズを順次紹介していこう。


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