本シリーズでは、写真撮影に係わる用語で、本ブログの範囲
でのみ使われたり、一般的では無い専門用語を解説している。
今回第20回目は、補足編~システム編Part5という事で、
カメラやレンズ関連の用語をとりあげる。
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なお、補足編は基本的に「小ネタ」をメインとするので、
項目(用語)数は多目に、個々の解説は若干少な目とする。
<機器・システム> Part 5
★超大口径レンズ
やや一般的な独自用語。
本ブログでは開放F値がF1.0以下のレンズを指して「超大口径」
と呼ぶ事にする。
このクラスのカメラ用(一眼レフ、ミラーレス、レンジ機)
市販レンズは数が少なく、だいたい以下のような感じである。
<F0.85のレンズ>
・HandeVision IBELUX 40mm(ミラーレス機用)
<F0.95のレンズ>
・CANON LENS 50mm (レンジ機CANON 7/s用)
・Leica NOCTILUX-M 50mm(レンジ機用)
・中一光学(MITAKON) Speedmastar 25mm,35mm,50mm
(μ4/3機用、APS-C型一眼レフ用)
・COSINA Voigtlander NOKTON 10.5mm,17.5mm,25mm,
42.5mm(μ4/3機用)
・SLR Magic 25mm/F0.95 (シネレンズ)
・NIKON Z 58mm/F0.95(Zマウント用、開発発表段階)
<F1.0のレンズ>
・CANON EF50mm/F1.0L USM
・Leica NOCTILUX 50mm/F1.0
これは記憶に頼って書いているので、まだ他にもあったかも
知れないが、他に存在していたとしても、かなりレアだろう。
そもそも、上記のうちCANON用やLeica用の超大口径レンズは
オールドで入手困難であったり、非常に高価であったりする。
まあつまり、現行製品で現実的な価格帯で購入できる物は
中一光学とフォクトレンダー製しか無いという事だ。
(注:IBELUX40/0.85は流通数が少ないが、あまり高価では
無かったと思う→未所有)
(下写真は、NOKTON 42.5mmm/F0.95)
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なお(暗所で使う)監視カメラ用ではF0.85~F0.95という
スペックの市販レンズが多数存在する。
古くは、1950年代位に海外各社で超大口径レンズが試作され、
アンジェニュー、シュナイダー、ケルン、デルフトあたりが
F1.0~F0.7のレンズを開発した模様であるが、あくまで
試作品的で、一般に販売されたかどうかは良くわからない。
又、映画撮影用や学術用の特注品では、F0.33~F0.7位の
レンズがツァイス社により作られた事もある模様だ。
光学の原理的には、まず、通常のレンズ設計においては
F0.707 (=1/√2)が、だいたい最大の口径比になる模様だ。
さらに「非球面アプラナート」等といった特殊設計により、
限界値としてF0.5までの光学レンズ構成を設計可能と聞く。
(注:設計が出来たとしても実際に作れるかどうかは不明)
また、光学レンズでは無く、反射鏡を用いた光学系
(マンジャン鏡等)では、F0.6程度のものが作られた事が
あるそうだが、実質的な明るさはF0.7程度だった模様だ。
それより明るいレンズは、現代で言う所の「レデューサー」
(補正レンズの入ったマウントアダプターの一種で、焦点距離を
短くすると同時に開放F値を明るくできる)の光学系原理を応用
したものであったのかも知れない(??専門的かつ詳細不明)
超大口径レンズの魅力は、非常に浅い被写界深度で、多大な
ボケ量を得られる事だ(以下はNOKTON 25mm/F0.95での撮影)
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ただし、上記の超大口径レンズ群は、CANON EF50mn/F1.0
(と開発中のNIKON Z 58mm/F0.95)を除き、全てMFレンズだ。
浅い被写界深度とあいまって、ピント合わせは、かなり困難
であり、あるいは近接した距離の異なる被写体が密集して
いると、なんだか作画的にも、ごちゃごちゃになる。
また、絞り開放近くでは、諸収差により描写が甘くなる傾向も
強く、総合的に使いこなしが極めて難しいレンズ群となる事は
要注意だ。(=「用途開発」がとても難しい)
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★ジャンクレンズ
一般用語。
商品に何らかの瑕疵(キズ、ゴミ、カビ)等があったり、
故障していたり、付属品が欠品していたり、現在のシステム
環境では使用が困難であったりと、通常の商品としての価値が
殆ど無いものを「ジャンク品」と呼ぶ。
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ジャンクレンズの場合は、カメラ中古店や各種中古店、あるいは
フリーマーケット等の片隅に置いてあったりする場合があり、
価格は瑕疵の程度により、概ね300円~3000円程である。
保証などは勿論無いし、返品も通常は不可だ。
よって、購入時には、様々な「目利き」(商品の良否を見分ける
経験や知識。本シリーズ第10回記事)が必要となる為、初級者層
には、こうした商品の購入は推奨できない。
(が、ジャンクレンズを何十本も買って、「目利き」の経験を
積む、といった方法論はある。中には「ハズレ」を引く事も
あるが、それも「勉強」だ。マニア層は皆そうしてきた筈だ)
なお、ジャンク品は、常に「壊れている」という訳でも無く、
性能が低かったり、現在の機材環境では使いにくかったり、
不人気であったりするだけのものが多い。よって、しっかり
「目利き」を行う事は勿論、性能の低い製品を、うまく弱点を
回避して使いこなすスキルがあれば、これらのジャンク品は
格安で購入出来る事から、非常にコスパが高い。
(ここも逆に言えば、低性能機材を使いこなそうとする事で、
スキルアップの為の「教材」として使える、という事になる)
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まあでも、基本的には「ジャンクレンズは中上級マニア向け」
という事にしておこう。
★水銀電池互換(代替)
一般用語。
1960年代~1970年代のカメラには、露出計が搭載されたが、
その電源電池に「水銀電池」を用いる事があった。
ところが水銀電池は環境汚染問題がある為、1990年代には
製造が中止されてしまう(水銀電池を使用する事は違法では
無いが、電池使用後は専用の回収BOXを経由して処理する)
水銀電池の生産終了後に丁度中古カメラブームが起こった為、
その電源を使用する旧カメラを使うマニア層も非常に増えた。
が、水銀電池は在庫品を除き入手不能だ、そこで水銀電池の
代替の手段を色々と模索する事となる。
まず、水銀電池を使用する代表的なカメラを挙げる。
H-B型電池:PENTAX SP系
H-C型(MR44型)電池:OLYMPUS PEN D系
H-D型(MR-9型)電池:OLYMPUS OM-1系、Rollei 35系
CANON 旧F-1/改、NIKOMAT FT系
概ね、水銀電池の型番には、H(水素の意味??)か、
MR(マーキュリー=水銀の英語)が付く。
この他の型番もあるかもしれないが、あまり記憶に無い。
・・と言うか、マニア層が欲しがる水銀電池使用カメラは、
だいたい上記の範囲であり、これら以外のマイナー機種は殆ど
流通も無いので、水銀電池も上記種類を知っていれば十分だ。
さて、上記は全て「機械式カメラ」であり、電池が無くても
写真は撮れる。電池ナシでは、ただ露出計が動作しないだけだ。
そのまま不安な状態で撮るか、または他のカメラの露出計や
外部単体露出計で露出を測って参照する事となる。、
「勘露出の公式」(本シリーズ第17回記事)を覚えて用いれば
撮れない事は無いが、あいにくその公式は単に正しい露出値
を得れるだけで、絞り値やシャッター速度を任意に変更した際
には通用しない。
で、不安に思えば水銀電池代替(互換)品を探すのだが・・
まずH-B型の場合は、PENTAXから安価(数百円)なアダプター
が発売されていて、これを買って現行の酸化銀電池(SR41)を
使えば良い。ただしこの安価なアダプターは若干レアであり
旧製品で現在も継続販売されているかどうかは微妙なところだ。
他には市販アダプターがあるが、若干高価(3000円弱)だ。
H-C型の場合は、44型番(これはサイズだ)が示すように
現代でも入手が容易なアルカリLR44や酸化銀SR44型で代替が
効く(ただし後述の電源電圧の問題がある)
次いでH-D型(MR-9型)は、以下の写真のような代替電池が
色々と発売されている。
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ただ、これもやや入手が面倒だ、それに常時在庫があるという
訳でもなく、まとめて輸入されて、家電量販店等でも一時的に
販売されていた事もあった。以前では見つけたら買い貯めして
おいたのだが、その価格は100円~300円程度と安価であった。
なお、現代ではいちいち探すより通販に頼るのも良いであろう。
さて、無事代替電池またはアダプターが入手できたとする。
ここで問題になるのは、水銀電池と代替電池の電圧差だ。
水銀電池は、だいたい1.3V前後の電圧値だが
例えばアルカリLR44は1.5V、酸化銀電池SR44は1.55Vと
若干高い。
この時、露出計は高い電圧で余分に反応する(大きく振れる)
この振れの差は、機種毎の電源回路の設計仕様で異なるが、
一般的に、いつでも差が一定(=オフセット)という訳では無く、
輝度の値(明るさ、暗さ)に応じて、非直線的に反応する事が、
私の経験的にわかっている。(例:明るいと余計に振れる、
又はその逆で、暗いと、より小さくしか振れない)
だから、ある明るさにおいて、他の露出計と比べて、
「ああ、半段くらい露出オーバーになるな、では撮る時にいつも
半段調整しよう」という対処法では上手く行かない。
結局、例えばだが、無茶苦茶明るい場合は1段くらい調整し、
暗い場合は半段くらいにする、などの「勘」が必要になるのだ。
なお、上記の機械式カメラはマニュアル露出なので「露出補正」
という概念は無い。よって、ISO(ASA)感度で補正するか、又は
露出メーターで差分を意識して、絞り値とシャッター速度で
調整する。
また、機体自体の経年劣化で、露出計の動作が怪しかったり、
高速シャッター速度の精度が出ていないケースも多々ある。
よって、あまり神経質にならず、必ず(露出許容範囲の広い)
ネガフィルムを用いて撮り、電圧差による露出差分は、勘で
適当に半段前後補正すれば、事足りるであろう。
それでも心配な向きには、専門店から専用の電池アダプター
が発売されている、これには減圧回路が組み込まれていて、
現代ボタン電池の1.5Vを、水銀電池相当の1.35Vあたりに
下げてくれるので、より正確な露出計の動作が期待できる。
(ただし、若干高価=3000円前後だ)
★銀塩機のシャッター速度のチェック
マニア用語。
前項でも少し述べたが、古い機械式カメラのシャッターは
電子制御では無い為、製造精度や経年劣化で、正確な速度で
動く保証は無い。
特に高速シャッターが怪しく、1/1000秒や1/2000秒では、
下手をすると、その7割や半分くらいの速度しか出ていない
場合も良くある。
こういう状態であると、シャッターが遅い=露光時間が長い
という事で露出オーバーとなる。
ネガフィルムであれば半分のシャッター速度は1段オーバー程度
なので露出許容範囲(ラティチュード)に収まるが、ポジ
フィルムでは厳しい。高速シャッターが怪しい機体はネガ専用に
する事が最も安全な対策であろう。
では、特に銀塩機の中古購入時に、どのようにシャッター速度
の低下を見分ける事ができるのだろうか?
これはちょっと高度ではあるが、以下の方法がある。
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カメラの裏蓋を開け、レンズを装着せずに明るい所に向ける。
機械式カメラの場合、又はAE機やAF機でもM露出モードとすると、
シャッターダイヤルで速度を手動変更できる。
この状態でシャッター速度を変えながら、1枚づつシャッターを
切る(当然、巻き上げ動作も必要だ)
すると、シャッター幕が一瞬だけ明るく見える。
この明るく見える時間が、設定シャッター速度が速くなるに
連れて、どんどんと短く見えれば良い。
1/1000秒や1/2000秒では、勿論ほんの一瞬明るくなるだけだ、
だが、その一瞬の度合い、というのは経験を積めば人間の眼で
だいたい正しいか否かは判定ができるようになる。
それに、不良になっているシャッターは、速度を速めていっても
順次短くなっていかないと思う、どこかの段階で止まって、
それ以上速くは見えない無い状態であれば、確実に故障だ。
高度な経験を必要とする良否判定技能ではあるが、何十台か
銀塩カメラを見ていれば(持っていれば)わかってくるし、
あるいはカメラ購入後であっても、このチェックの練習を
する事はできるであろう。
今更銀塩機を購入する層は、よほどのマニアだとは思うが、
ビギナー層での銀塩機見直しの風潮も、ある事はあるので、
そういう場合のノウハウとして覚えておくと良いだろう。
まあ、これもまた「目利き」の技能だ。
★レンズ構成文字の意味(H等)
やや専門的な一般用語。
銀塩時代の交換レンズには、HやらPGやらと意味不明な
暗号のような略語が書いてある場合がある。
これは一般にレンズ構成を表す文字である。メーカー毎で
異なるが、一般に、アルファベット順、あるいはラテン語を
ベースとした数字(化学分野でよく使われる。オクタン価等。
音楽分野でも同様だ。トリオ、カルテット等)である。
以下、全てを述べていくと冗長なので、簡単に説明するが、
アルファベット順:E=5枚、F=6枚、G=7枚、H=8枚
ラテン語系数字:Q(クアトロ)=4枚/4群、P(ペンタ)=5枚/5群
H(ヘキサ)=6枚/6群、S(セプタ)=7枚/7群
この時、どちらの系列の数字文字を、どの意味で使っているかは
メーカー毎にまちまちなのであるが、見かけ上では、
アルファベットとラテン語の数字は、H以外ではかぶらないので
そのメーカーの他の製品群や、レンズ仕様を見れば、文字の意味
のルールは簡単に推察できるであろう。
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例えばミノルタの銀塩時代のレンズで「PF」とあれば、
これは5群(P=ペンタ)、6枚(F=6番目のアルファベット)
構成である。(勿論、「6群5枚」と、逆の構成は有り得ない、
それではレンズが1枚少なくなってしまう)
なお、現代のレンズは構成が複雑化していて、十数群十数枚
という構成もごく普通であり、このような略語は使われない。
★焦点移動
やや専門的な一般用語。
レンズのピント位置が絞り値により変動してしまう現象。
(注:誤用が多い用語だし、そもそもしっかりとした用語定義
が無いかも知れない。上は写真分野での一般的な解釈だ)
これはレンズの設計によるが、開放測光である一眼レフでは、
開放でピントを合わせ、撮影の直前に絞り込まれる為、
そこでピント距離がずれてしまう危険性がある。
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ごく一部のレンズでは、上写真のように焦点移動が出る前提で
絞りを開けた状態と、絞り込んだ状態で、ピント位置を変える
べき事を示唆する指標があるが、これは非常に稀なケースだ。
一般的には、そういう問題点をメーカー側が公表する事は無い。
これを「重欠点である」ように評価する中級マニアや評論家の
レポートやレビューも良く見かけるが、私としては焦点移動は
大きな問題とは捉えていない。その理由は以下の通りだ。
1)絞り込むと被写界深度が深くなり、焦点移動をある程度は
カバー可能である。
2)マウントアダプターを用いた絞り込み(実絞り)測光では、
原理的に焦点移動は起こらず、何ら問題にならない。
3)レンズ設計とは、収差等の様々な課題の、どこに主眼を置いて
補正していくかを考察するものであり、「焦点移動が残った」
という事は、他の重要な性能(解像力やボケ質等)を優先的
に設計した結果なのであろう。だから、そうした良い特性が
あるのだ、という点をむしろ意識するべきで、その長所を
生かす方法論を考え実践する事が上級ユーザーの本分だ。
4)焦点移動が出る場合でも、「連写MFブラケット」等の
高度な技法でそれを回避できる。
(AFでフルオート等、カメラやレンズの言うがままの状態で
撮影せず、何か課題があれば、それを回避して使えば良い)
よって「焦点移動」に目くじらを立てる必要性があまりない。
★シャッター音
一般用語。
主に一眼レフにおいて、シャッターを切る(レリーズ)際の
音量および音質である。勿論静粛であって、品位のある音質
である事が望ましい。さも無いと、シャッター音が悪目立ち
してしまい、イベントや冠婚葬祭、音楽会、舞台、儀式、
発表や会見などの邪魔になるからだ。
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銀塩一眼レフ(ワインダーやモードラ機)ではシャッター機構
自体の音量・音質のみならず、フィルムを給送するモーター音
も問題となり、1990年頃のAF時代から、一部のメーカーでは
静音化が(AF)一眼レフ設計上のテーマとなっていた。
だが、そういうメーカーや機体は一部であり、銀塩AF時代から
デジタル時代にかけ、依然シャッター音が大きい、音質が悪い
など、うるさい一眼レフもまだまだ多い。
静音モードを搭載している事で、ユーザーからのクレームを
避ける傾向もあるのだが、そのモードにした場合は、
1)連写速度などの性能低下
2)シャッターを切る機械音そのものはあまり低減されない
3)音量は下がっても音質が悪い(品が無く、耳障り)
4)電子シャッターになる場合は、被写体状況に制限が出る
・・といった課題が多く残り、あまり好ましく無い。
各メーカーは、根本的にシャッター音を改善してもらいたいと
思う。結婚式や、クラッシックのライブ、演劇、トークショー、
プレゼン、スポーツ撮影、記者会見等で、音の大きなカメラは
顰蹙ものなのだ。
★ミラーアップ
一般用語およびマニア用語。
一般的には一眼レフカメラで、ユーザーが意図的にミラーを
上げる動作を行う事。これは、特殊なレンズを使う場合や、
センサーのクリーニング等のメンテナンス時、あるいは高速
連写性能を得る為、など、その機能の利用目的は複数ある。
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この場合の「ミラーアップ」は何ら問題が無いのだが・・
銀塩機では、稀に、意図しないでミラーが上がったままに
なる事もある。
これはつまり故障であり、マニアの間では、この故障は致命的
な物として「ミラーアップしたよ、もうこのカメラは修理に
出すか、廃棄処分だな」という風に解釈される事が普通だ。
しかし、ごく稀に、銀塩一眼レフにおいて、カメラを落とす、
ぶつける等の衝撃が加わった事で、一時的にミラーアップして
しまう場合がある。これは機械部分の完全な故障ではなく、
一時的な事もある。
だから、逆に軽い衝撃を与える事で無事直る場合もある。
実際に数回、そういうケースで「叩いて直す」という荒技が
成功した事もある。ただし相当にリスキーな手法であり、
銀塩カメラのメカがどういう状態になっているかを推察できない
あるいは、カメラのどの部分にどういう角度で、どれくらいの
力を加えれば良いかが類推できない、という初級中級層または
メカに詳しくない人には絶対におすすめできない処置である。
下手をすれば、その応急措置が裏目になって、完全にカメラを
壊してしまうかも知れない訳だ。
また、デジタル機等では、ミラー動作は電子的に制御されて
いる事が殆どであり、これは叩いて直るようなものでは無い。
(むしろ電源やバッテリーを入れなおす方が応急処置として適正)
銀塩機を使っていて、出先などで、ミラーアップのままでは
撮影を継続できず困ってしまい、応急措置が上手く行かない
場合には修理に出すという覚悟を持って行う等、上級者または
上級マニアでメカに詳しい人のみが許される対策であろう。
★スーパーサブ機
やや独自用語。
元々はスポーツ競技等で、「強力な控え選手」の事を指す
言葉が「スーパーサブ」である。
カメラの世界では、主力機に対してそれを補佐する役目の
カメラを「サブ機」と呼ぶ場合がある。一般的に主力機は
各社のハイエンド機級一眼レフであり、サブ機は、それと
操作系等を揃えた上級機である事が普通だ。
銀塩時代の例を挙げれば、NIKON F5とNIKON F100の関係、
デジタルで言えば、CANON EOS-1D系とEOS 5D系(または
EOS 6D/7D系)の関係などがある。
また、サブ機を同一マウントの一眼レフとはせず、例えば銀塩
時代で言えば、旗艦機+高級コンパクト、という組み合わせも
十分に有り得た(例:CANON EOS-1NとRICOH GR1等)
この例では、広角レンズは一眼レフ用の物に対してコンパクト
機でも遜色の無い写りをするので、機材の総重量を減らす等の
意味でも合理的な選択だ。
さて、サブ機はできるだけ高性能なものが望ましいのは勿論だ、
そもそも複数のカメラを持ち出しているという状況は、業務撮影
や、あるいは趣味撮影でも特に重要な撮影の場合であろうから、
「保険」の意味においてもサブ機が必要な訳だ。
さて、そういう観点でサブ機となりうる、高性能かつ軽量な
中高級機(主に一眼レフ)を探すのだが・・
時代がうまく合うと、稀にハイエンド機に遜色の無い高性能の
中高級機がメーカーのラインナップに存在している場合がある。
これを「スーパーサブ機」と一部のマニア層等では呼ぶ場合が
ある、本ブログでもそれに準ずる事とする。
具体例を挙げれば 銀塩時代では
NIKON F3に対するNIKON FE2
NIKON F4に対するNIKON F-801
MINOLTA α-9に対するMINOLTA α-SweetⅡ(or α-7)
CANON EOS-1Vに対するCANON EOS 7(or EOS-3)
などのケースがあった。
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まあ、すでに20年から30年以上も前の話であり、これらの
機体の事はピンと来ないかもしれないが、上記にあげたような
銀塩「スーパーサブ機」は確かに凄く、ハイエンド機が性能的に
負けてしまう「下克上」も良くあったし、実際に大きく重い
旗艦機級よりも、はるかにハンドリング性能が優れていて
実用的には非常に重宝していた状況であった。
(勿論、スーパーサブ機だけを複数持っていく事も十分ありだ)
デジタル時代においては、あまりこうした例は見られず
ハイエンド機に対する中高級機の組み合わせを挙げても、
あまりスーパーサブ機とも言い難い場合も多く、(ここには
「仕様的差別化」もある)無理やりの定義にしかならないだろう。
それに例えばフルサイズ機とAPS-C機という差も有り得るので、
この関係をサブ機とはなかなか言い難い。
さらには、ハイエンド機も中高級機も高価すぎる状況もあって
両者を同時に保有する等は、アマチュア層では殆ど有りえない
話に現代ではなっている
まあでも、1つだけスーパーサブ機の例をあげておけば
PENTAX K-1系に対するPENTAX KPとかがそれであろうか。
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で、ハイエンド機はいつの時代においても高価である。
それでも銀塩時代であれば、いくら高価なハイエンド機でも
だいたい当時の貨幣価値で30万円程までであったのだが、
デジタル時代、特に近年においては、「高付加価値化戦略」に
より(貨幣価値の変化を加味したとしても)銀塩時代よりも、
さらに高額となっている。
結局、デジタル時代では、ハイエンド機がなかなか手が出し
難い価格帯である為、中上級層においては(スーパー)サブ機
を主力機とする選択肢は十分にありだろう。
いや、むしろハイエンド機を1台新品購入する予算で、
高性能な中高級機を(中古で)3~4台そろえた方が、ずっと
コスパや実用性は良くなるのかも知れない(私はそうしてる)
デジタル機はどうせ消耗品だ、いくら性能が良い機体でも
いずれ「仕様老朽化寿命」(本シリーズ第8回記事)が来る。
そういう意味でも、その時代のコスパの良い中高級機を
主力機としつづける事も十分に有り得る訳だ。
★デジタルカメラ10年間寿命説
独自概念。
本シリーズ第8回記事の「仕様老朽化寿命」の説明では、
主に(進化のペースが速かった)ミラーレス機において
「後継機に対して、どれだけ見劣りせずに長く使う事が
出来るか?」という要素があり、ミラーレス機の性能評価
でも、その項目を独自に判定している事について解説した。
その記事では、デジタル一眼レフでは、進化のピークが
実用的性能に、もう達している為、「仕様老朽化寿命」を
あまり意識する必要は無い、とも書いた。
すなわち現代の高性能デジタル一眼レフは「超絶性能」
(本シリーズ第1回記事)を与えられ、実用的には不要なまでの
性能となっているからだ。
だから、あまり仕様(性能)がすぐ古くなる、という心配は
少ないのだが、それでも限界というものがある。
私はデジタル一眼レフの初期のものから、およそ20年間程度
の各社の各時代のものを20台以上所有して使ってきているが、
それらを使っている経験則からすれば、デジタル一眼レフの
寿命は、およそ発売後10年である。
勿論、壊れて使えなくなる、という意味では無い。
発売後10年を超える機種は、最新の機種に比べて性能や仕様が
大きく見劣りして、使いたく無くなって来てしまうのだ。
これもまさしく「仕様老朽化寿命」と言えるだろう。
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と言う事で、私の場合は、発売後10年を経過したデジタル
一眼レフは、いくらちゃんと動作していたとしても、
できるだけ新機種にリプレイスしている。
リプレイス(置き換え)と言っても、実質的には「買い増し」
である。何故ならば、発売後10年程の機種は発売時の定価の
およそ1/5から1/10にまで中古相場が下がってしまう、
仮に下取りに出したとしても、本当に二束三文だ。
であれば、古い機種は処分せず、雨天などの厳しい環境でも
気兼ねなく使える「消耗機」にしてしまい、壊れるまで
使い続けるのが賢明な訳だ。(注:当然、メーカー修理対応
期間も終了している事であろう、「使い潰す」という事だ)
また、同時代のレンズを装着しないと正しく動作しない場合
もあって、その意味でも古い機種は簡単には手放させない。
さて、でもこの「10年間寿命説」は、概ね2000年代~
2010年代の話である。2010年代後半あたりからの機種は
デジタル一眼レフとしての進化もピークに達し、加えて
「超絶性能」も与えられていて、結果的に高価である。
(注:高価な値付けにする為に、付加価値を高めているから
そうなる、そしてその「超絶性能」も実用範囲外だ)
なのでまあ、もしかすろと、近年のデジタル一眼レフで
あれば、「10年間寿命説」も、もうすこし伸びるのでは
なかろうか?とも予想している。
ただ、この予想には1つ重要なファクター(要素)がある、
それは、本シリーズ第19回での「カメラ形態20年寿命説」
であり、つまり、そろそろデジタル一眼レフも、何らかの
大きな変革があって、次の時代のカメラ形態に変貌して
しまうのではなかろうか? という危惧がある。
(現に、フルサイズ・ミラーレス機が台頭してきている)
別に進化は良い事なので否定しようも無いのだが、過去の
カメラの歴史を振り返ると、この「形態の変革」が起こると
旧型式のカメラは急速に時代遅れとなってしまうし、
実質的に使用不能になってしまう場合すらある。
具体例は、1990年代末に大ブームともなり、あれだけ人気の
あった銀塩中古カメラは、2000年代にデジタル時代になった
直後に、どんな高級機でも、およそ二束三文の相場となった。
「もう今更誰もフィルムで写真を撮らんよ」という状態だったのだ。
あるいは、その時代の銀塩APS(IX240)機も同様、これは急速に
廃れ、2000年代末にはフィルムの入手も現像も不能となる。
![c0032138_19430526.jpg]()
将来、デジタル機に変わるカメラがどんな物かは、今の段階
ではわからない。
フルサイズ・ミラーレス機の可能性は高いが、それはあまり
今までのカメラの概念と大きく変わるものでもない。
例えば、ほぼ無限に動画を撮りつづけて、静止画はその中
から好きなコマを選ぶとか。あるいはネットで繋がれた
世界中の様々なカメラを、自在に遠隔操作で撮るとか・・
だが、もしそういう大変革が起こったら、もう馬鹿馬鹿しくて
現代の高性能デジタル一眼レフですら、使いたくなくなって
しまう事であろう。
そういう時代が来て欲しく無い気もするし、いや、やはり
カメラの進歩はユーザーにとって歓迎するべきものだから、
早くそうなって欲しい気もするし・・なんとも複雑な心境だ。
---
さて、今回の記事はこのあたりまでで、次回もまた「補足編」
となるが、内容は未定とする。
でのみ使われたり、一般的では無い専門用語を解説している。
今回第20回目は、補足編~システム編Part5という事で、
カメラやレンズ関連の用語をとりあげる。

項目(用語)数は多目に、個々の解説は若干少な目とする。
<機器・システム> Part 5
★超大口径レンズ
やや一般的な独自用語。
本ブログでは開放F値がF1.0以下のレンズを指して「超大口径」
と呼ぶ事にする。
このクラスのカメラ用(一眼レフ、ミラーレス、レンジ機)
市販レンズは数が少なく、だいたい以下のような感じである。
<F0.85のレンズ>
・HandeVision IBELUX 40mm(ミラーレス機用)
<F0.95のレンズ>
・CANON LENS 50mm (レンジ機CANON 7/s用)
・Leica NOCTILUX-M 50mm(レンジ機用)
・中一光学(MITAKON) Speedmastar 25mm,35mm,50mm
(μ4/3機用、APS-C型一眼レフ用)
・COSINA Voigtlander NOKTON 10.5mm,17.5mm,25mm,
42.5mm(μ4/3機用)
・SLR Magic 25mm/F0.95 (シネレンズ)
・NIKON Z 58mm/F0.95(Zマウント用、開発発表段階)
<F1.0のレンズ>
・CANON EF50mm/F1.0L USM
・Leica NOCTILUX 50mm/F1.0
これは記憶に頼って書いているので、まだ他にもあったかも
知れないが、他に存在していたとしても、かなりレアだろう。
そもそも、上記のうちCANON用やLeica用の超大口径レンズは
オールドで入手困難であったり、非常に高価であったりする。
まあつまり、現行製品で現実的な価格帯で購入できる物は
中一光学とフォクトレンダー製しか無いという事だ。
(注:IBELUX40/0.85は流通数が少ないが、あまり高価では
無かったと思う→未所有)
(下写真は、NOKTON 42.5mmm/F0.95)

スペックの市販レンズが多数存在する。
古くは、1950年代位に海外各社で超大口径レンズが試作され、
アンジェニュー、シュナイダー、ケルン、デルフトあたりが
F1.0~F0.7のレンズを開発した模様であるが、あくまで
試作品的で、一般に販売されたかどうかは良くわからない。
又、映画撮影用や学術用の特注品では、F0.33~F0.7位の
レンズがツァイス社により作られた事もある模様だ。
光学の原理的には、まず、通常のレンズ設計においては
F0.707 (=1/√2)が、だいたい最大の口径比になる模様だ。
さらに「非球面アプラナート」等といった特殊設計により、
限界値としてF0.5までの光学レンズ構成を設計可能と聞く。
(注:設計が出来たとしても実際に作れるかどうかは不明)
また、光学レンズでは無く、反射鏡を用いた光学系
(マンジャン鏡等)では、F0.6程度のものが作られた事が
あるそうだが、実質的な明るさはF0.7程度だった模様だ。
それより明るいレンズは、現代で言う所の「レデューサー」
(補正レンズの入ったマウントアダプターの一種で、焦点距離を
短くすると同時に開放F値を明るくできる)の光学系原理を応用
したものであったのかも知れない(??専門的かつ詳細不明)
超大口径レンズの魅力は、非常に浅い被写界深度で、多大な
ボケ量を得られる事だ(以下はNOKTON 25mm/F0.95での撮影)

(と開発中のNIKON Z 58mm/F0.95)を除き、全てMFレンズだ。
浅い被写界深度とあいまって、ピント合わせは、かなり困難
であり、あるいは近接した距離の異なる被写体が密集して
いると、なんだか作画的にも、ごちゃごちゃになる。
また、絞り開放近くでは、諸収差により描写が甘くなる傾向も
強く、総合的に使いこなしが極めて難しいレンズ群となる事は
要注意だ。(=「用途開発」がとても難しい)

一般用語。
商品に何らかの瑕疵(キズ、ゴミ、カビ)等があったり、
故障していたり、付属品が欠品していたり、現在のシステム
環境では使用が困難であったりと、通常の商品としての価値が
殆ど無いものを「ジャンク品」と呼ぶ。

フリーマーケット等の片隅に置いてあったりする場合があり、
価格は瑕疵の程度により、概ね300円~3000円程である。
保証などは勿論無いし、返品も通常は不可だ。
よって、購入時には、様々な「目利き」(商品の良否を見分ける
経験や知識。本シリーズ第10回記事)が必要となる為、初級者層
には、こうした商品の購入は推奨できない。
(が、ジャンクレンズを何十本も買って、「目利き」の経験を
積む、といった方法論はある。中には「ハズレ」を引く事も
あるが、それも「勉強」だ。マニア層は皆そうしてきた筈だ)
なお、ジャンク品は、常に「壊れている」という訳でも無く、
性能が低かったり、現在の機材環境では使いにくかったり、
不人気であったりするだけのものが多い。よって、しっかり
「目利き」を行う事は勿論、性能の低い製品を、うまく弱点を
回避して使いこなすスキルがあれば、これらのジャンク品は
格安で購入出来る事から、非常にコスパが高い。
(ここも逆に言えば、低性能機材を使いこなそうとする事で、
スキルアップの為の「教材」として使える、という事になる)

という事にしておこう。
★水銀電池互換(代替)
一般用語。
1960年代~1970年代のカメラには、露出計が搭載されたが、
その電源電池に「水銀電池」を用いる事があった。
ところが水銀電池は環境汚染問題がある為、1990年代には
製造が中止されてしまう(水銀電池を使用する事は違法では
無いが、電池使用後は専用の回収BOXを経由して処理する)
水銀電池の生産終了後に丁度中古カメラブームが起こった為、
その電源を使用する旧カメラを使うマニア層も非常に増えた。
が、水銀電池は在庫品を除き入手不能だ、そこで水銀電池の
代替の手段を色々と模索する事となる。
まず、水銀電池を使用する代表的なカメラを挙げる。
H-B型電池:PENTAX SP系
H-C型(MR44型)電池:OLYMPUS PEN D系
H-D型(MR-9型)電池:OLYMPUS OM-1系、Rollei 35系
CANON 旧F-1/改、NIKOMAT FT系
概ね、水銀電池の型番には、H(水素の意味??)か、
MR(マーキュリー=水銀の英語)が付く。
この他の型番もあるかもしれないが、あまり記憶に無い。
・・と言うか、マニア層が欲しがる水銀電池使用カメラは、
だいたい上記の範囲であり、これら以外のマイナー機種は殆ど
流通も無いので、水銀電池も上記種類を知っていれば十分だ。
さて、上記は全て「機械式カメラ」であり、電池が無くても
写真は撮れる。電池ナシでは、ただ露出計が動作しないだけだ。
そのまま不安な状態で撮るか、または他のカメラの露出計や
外部単体露出計で露出を測って参照する事となる。、
「勘露出の公式」(本シリーズ第17回記事)を覚えて用いれば
撮れない事は無いが、あいにくその公式は単に正しい露出値
を得れるだけで、絞り値やシャッター速度を任意に変更した際
には通用しない。
で、不安に思えば水銀電池代替(互換)品を探すのだが・・
まずH-B型の場合は、PENTAXから安価(数百円)なアダプター
が発売されていて、これを買って現行の酸化銀電池(SR41)を
使えば良い。ただしこの安価なアダプターは若干レアであり
旧製品で現在も継続販売されているかどうかは微妙なところだ。
他には市販アダプターがあるが、若干高価(3000円弱)だ。
H-C型の場合は、44型番(これはサイズだ)が示すように
現代でも入手が容易なアルカリLR44や酸化銀SR44型で代替が
効く(ただし後述の電源電圧の問題がある)
次いでH-D型(MR-9型)は、以下の写真のような代替電池が
色々と発売されている。

訳でもなく、まとめて輸入されて、家電量販店等でも一時的に
販売されていた事もあった。以前では見つけたら買い貯めして
おいたのだが、その価格は100円~300円程度と安価であった。
なお、現代ではいちいち探すより通販に頼るのも良いであろう。
さて、無事代替電池またはアダプターが入手できたとする。
ここで問題になるのは、水銀電池と代替電池の電圧差だ。
水銀電池は、だいたい1.3V前後の電圧値だが
例えばアルカリLR44は1.5V、酸化銀電池SR44は1.55Vと
若干高い。
この時、露出計は高い電圧で余分に反応する(大きく振れる)
この振れの差は、機種毎の電源回路の設計仕様で異なるが、
一般的に、いつでも差が一定(=オフセット)という訳では無く、
輝度の値(明るさ、暗さ)に応じて、非直線的に反応する事が、
私の経験的にわかっている。(例:明るいと余計に振れる、
又はその逆で、暗いと、より小さくしか振れない)
だから、ある明るさにおいて、他の露出計と比べて、
「ああ、半段くらい露出オーバーになるな、では撮る時にいつも
半段調整しよう」という対処法では上手く行かない。
結局、例えばだが、無茶苦茶明るい場合は1段くらい調整し、
暗い場合は半段くらいにする、などの「勘」が必要になるのだ。
なお、上記の機械式カメラはマニュアル露出なので「露出補正」
という概念は無い。よって、ISO(ASA)感度で補正するか、又は
露出メーターで差分を意識して、絞り値とシャッター速度で
調整する。
また、機体自体の経年劣化で、露出計の動作が怪しかったり、
高速シャッター速度の精度が出ていないケースも多々ある。
よって、あまり神経質にならず、必ず(露出許容範囲の広い)
ネガフィルムを用いて撮り、電圧差による露出差分は、勘で
適当に半段前後補正すれば、事足りるであろう。
それでも心配な向きには、専門店から専用の電池アダプター
が発売されている、これには減圧回路が組み込まれていて、
現代ボタン電池の1.5Vを、水銀電池相当の1.35Vあたりに
下げてくれるので、より正確な露出計の動作が期待できる。
(ただし、若干高価=3000円前後だ)
★銀塩機のシャッター速度のチェック
マニア用語。
前項でも少し述べたが、古い機械式カメラのシャッターは
電子制御では無い為、製造精度や経年劣化で、正確な速度で
動く保証は無い。
特に高速シャッターが怪しく、1/1000秒や1/2000秒では、
下手をすると、その7割や半分くらいの速度しか出ていない
場合も良くある。
こういう状態であると、シャッターが遅い=露光時間が長い
という事で露出オーバーとなる。
ネガフィルムであれば半分のシャッター速度は1段オーバー程度
なので露出許容範囲(ラティチュード)に収まるが、ポジ
フィルムでは厳しい。高速シャッターが怪しい機体はネガ専用に
する事が最も安全な対策であろう。
では、特に銀塩機の中古購入時に、どのようにシャッター速度
の低下を見分ける事ができるのだろうか?
これはちょっと高度ではあるが、以下の方法がある。

機械式カメラの場合、又はAE機やAF機でもM露出モードとすると、
シャッターダイヤルで速度を手動変更できる。
この状態でシャッター速度を変えながら、1枚づつシャッターを
切る(当然、巻き上げ動作も必要だ)
すると、シャッター幕が一瞬だけ明るく見える。
この明るく見える時間が、設定シャッター速度が速くなるに
連れて、どんどんと短く見えれば良い。
1/1000秒や1/2000秒では、勿論ほんの一瞬明るくなるだけだ、
だが、その一瞬の度合い、というのは経験を積めば人間の眼で
だいたい正しいか否かは判定ができるようになる。
それに、不良になっているシャッターは、速度を速めていっても
順次短くなっていかないと思う、どこかの段階で止まって、
それ以上速くは見えない無い状態であれば、確実に故障だ。
高度な経験を必要とする良否判定技能ではあるが、何十台か
銀塩カメラを見ていれば(持っていれば)わかってくるし、
あるいはカメラ購入後であっても、このチェックの練習を
する事はできるであろう。
今更銀塩機を購入する層は、よほどのマニアだとは思うが、
ビギナー層での銀塩機見直しの風潮も、ある事はあるので、
そういう場合のノウハウとして覚えておくと良いだろう。
まあ、これもまた「目利き」の技能だ。
★レンズ構成文字の意味(H等)
やや専門的な一般用語。
銀塩時代の交換レンズには、HやらPGやらと意味不明な
暗号のような略語が書いてある場合がある。
これは一般にレンズ構成を表す文字である。メーカー毎で
異なるが、一般に、アルファベット順、あるいはラテン語を
ベースとした数字(化学分野でよく使われる。オクタン価等。
音楽分野でも同様だ。トリオ、カルテット等)である。
以下、全てを述べていくと冗長なので、簡単に説明するが、
アルファベット順:E=5枚、F=6枚、G=7枚、H=8枚
ラテン語系数字:Q(クアトロ)=4枚/4群、P(ペンタ)=5枚/5群
H(ヘキサ)=6枚/6群、S(セプタ)=7枚/7群
この時、どちらの系列の数字文字を、どの意味で使っているかは
メーカー毎にまちまちなのであるが、見かけ上では、
アルファベットとラテン語の数字は、H以外ではかぶらないので
そのメーカーの他の製品群や、レンズ仕様を見れば、文字の意味
のルールは簡単に推察できるであろう。

これは5群(P=ペンタ)、6枚(F=6番目のアルファベット)
構成である。(勿論、「6群5枚」と、逆の構成は有り得ない、
それではレンズが1枚少なくなってしまう)
なお、現代のレンズは構成が複雑化していて、十数群十数枚
という構成もごく普通であり、このような略語は使われない。
★焦点移動
やや専門的な一般用語。
レンズのピント位置が絞り値により変動してしまう現象。
(注:誤用が多い用語だし、そもそもしっかりとした用語定義
が無いかも知れない。上は写真分野での一般的な解釈だ)
これはレンズの設計によるが、開放測光である一眼レフでは、
開放でピントを合わせ、撮影の直前に絞り込まれる為、
そこでピント距離がずれてしまう危険性がある。

絞りを開けた状態と、絞り込んだ状態で、ピント位置を変える
べき事を示唆する指標があるが、これは非常に稀なケースだ。
一般的には、そういう問題点をメーカー側が公表する事は無い。
これを「重欠点である」ように評価する中級マニアや評論家の
レポートやレビューも良く見かけるが、私としては焦点移動は
大きな問題とは捉えていない。その理由は以下の通りだ。
1)絞り込むと被写界深度が深くなり、焦点移動をある程度は
カバー可能である。
2)マウントアダプターを用いた絞り込み(実絞り)測光では、
原理的に焦点移動は起こらず、何ら問題にならない。
3)レンズ設計とは、収差等の様々な課題の、どこに主眼を置いて
補正していくかを考察するものであり、「焦点移動が残った」
という事は、他の重要な性能(解像力やボケ質等)を優先的
に設計した結果なのであろう。だから、そうした良い特性が
あるのだ、という点をむしろ意識するべきで、その長所を
生かす方法論を考え実践する事が上級ユーザーの本分だ。
4)焦点移動が出る場合でも、「連写MFブラケット」等の
高度な技法でそれを回避できる。
(AFでフルオート等、カメラやレンズの言うがままの状態で
撮影せず、何か課題があれば、それを回避して使えば良い)
よって「焦点移動」に目くじらを立てる必要性があまりない。
★シャッター音
一般用語。
主に一眼レフにおいて、シャッターを切る(レリーズ)際の
音量および音質である。勿論静粛であって、品位のある音質
である事が望ましい。さも無いと、シャッター音が悪目立ち
してしまい、イベントや冠婚葬祭、音楽会、舞台、儀式、
発表や会見などの邪魔になるからだ。

自体の音量・音質のみならず、フィルムを給送するモーター音
も問題となり、1990年頃のAF時代から、一部のメーカーでは
静音化が(AF)一眼レフ設計上のテーマとなっていた。
だが、そういうメーカーや機体は一部であり、銀塩AF時代から
デジタル時代にかけ、依然シャッター音が大きい、音質が悪い
など、うるさい一眼レフもまだまだ多い。
静音モードを搭載している事で、ユーザーからのクレームを
避ける傾向もあるのだが、そのモードにした場合は、
1)連写速度などの性能低下
2)シャッターを切る機械音そのものはあまり低減されない
3)音量は下がっても音質が悪い(品が無く、耳障り)
4)電子シャッターになる場合は、被写体状況に制限が出る
・・といった課題が多く残り、あまり好ましく無い。
各メーカーは、根本的にシャッター音を改善してもらいたいと
思う。結婚式や、クラッシックのライブ、演劇、トークショー、
プレゼン、スポーツ撮影、記者会見等で、音の大きなカメラは
顰蹙ものなのだ。
★ミラーアップ
一般用語およびマニア用語。
一般的には一眼レフカメラで、ユーザーが意図的にミラーを
上げる動作を行う事。これは、特殊なレンズを使う場合や、
センサーのクリーニング等のメンテナンス時、あるいは高速
連写性能を得る為、など、その機能の利用目的は複数ある。

銀塩機では、稀に、意図しないでミラーが上がったままに
なる事もある。
これはつまり故障であり、マニアの間では、この故障は致命的
な物として「ミラーアップしたよ、もうこのカメラは修理に
出すか、廃棄処分だな」という風に解釈される事が普通だ。
しかし、ごく稀に、銀塩一眼レフにおいて、カメラを落とす、
ぶつける等の衝撃が加わった事で、一時的にミラーアップして
しまう場合がある。これは機械部分の完全な故障ではなく、
一時的な事もある。
だから、逆に軽い衝撃を与える事で無事直る場合もある。
実際に数回、そういうケースで「叩いて直す」という荒技が
成功した事もある。ただし相当にリスキーな手法であり、
銀塩カメラのメカがどういう状態になっているかを推察できない
あるいは、カメラのどの部分にどういう角度で、どれくらいの
力を加えれば良いかが類推できない、という初級中級層または
メカに詳しくない人には絶対におすすめできない処置である。
下手をすれば、その応急措置が裏目になって、完全にカメラを
壊してしまうかも知れない訳だ。
また、デジタル機等では、ミラー動作は電子的に制御されて
いる事が殆どであり、これは叩いて直るようなものでは無い。
(むしろ電源やバッテリーを入れなおす方が応急処置として適正)
銀塩機を使っていて、出先などで、ミラーアップのままでは
撮影を継続できず困ってしまい、応急措置が上手く行かない
場合には修理に出すという覚悟を持って行う等、上級者または
上級マニアでメカに詳しい人のみが許される対策であろう。
★スーパーサブ機
やや独自用語。
元々はスポーツ競技等で、「強力な控え選手」の事を指す
言葉が「スーパーサブ」である。
カメラの世界では、主力機に対してそれを補佐する役目の
カメラを「サブ機」と呼ぶ場合がある。一般的に主力機は
各社のハイエンド機級一眼レフであり、サブ機は、それと
操作系等を揃えた上級機である事が普通だ。
銀塩時代の例を挙げれば、NIKON F5とNIKON F100の関係、
デジタルで言えば、CANON EOS-1D系とEOS 5D系(または
EOS 6D/7D系)の関係などがある。
また、サブ機を同一マウントの一眼レフとはせず、例えば銀塩
時代で言えば、旗艦機+高級コンパクト、という組み合わせも
十分に有り得た(例:CANON EOS-1NとRICOH GR1等)
この例では、広角レンズは一眼レフ用の物に対してコンパクト
機でも遜色の無い写りをするので、機材の総重量を減らす等の
意味でも合理的な選択だ。
さて、サブ機はできるだけ高性能なものが望ましいのは勿論だ、
そもそも複数のカメラを持ち出しているという状況は、業務撮影
や、あるいは趣味撮影でも特に重要な撮影の場合であろうから、
「保険」の意味においてもサブ機が必要な訳だ。
さて、そういう観点でサブ機となりうる、高性能かつ軽量な
中高級機(主に一眼レフ)を探すのだが・・
時代がうまく合うと、稀にハイエンド機に遜色の無い高性能の
中高級機がメーカーのラインナップに存在している場合がある。
これを「スーパーサブ機」と一部のマニア層等では呼ぶ場合が
ある、本ブログでもそれに準ずる事とする。
具体例を挙げれば 銀塩時代では
NIKON F3に対するNIKON FE2
NIKON F4に対するNIKON F-801
MINOLTA α-9に対するMINOLTA α-SweetⅡ(or α-7)
CANON EOS-1Vに対するCANON EOS 7(or EOS-3)
などのケースがあった。

機体の事はピンと来ないかもしれないが、上記にあげたような
銀塩「スーパーサブ機」は確かに凄く、ハイエンド機が性能的に
負けてしまう「下克上」も良くあったし、実際に大きく重い
旗艦機級よりも、はるかにハンドリング性能が優れていて
実用的には非常に重宝していた状況であった。
(勿論、スーパーサブ機だけを複数持っていく事も十分ありだ)
デジタル時代においては、あまりこうした例は見られず
ハイエンド機に対する中高級機の組み合わせを挙げても、
あまりスーパーサブ機とも言い難い場合も多く、(ここには
「仕様的差別化」もある)無理やりの定義にしかならないだろう。
それに例えばフルサイズ機とAPS-C機という差も有り得るので、
この関係をサブ機とはなかなか言い難い。
さらには、ハイエンド機も中高級機も高価すぎる状況もあって
両者を同時に保有する等は、アマチュア層では殆ど有りえない
話に現代ではなっている
まあでも、1つだけスーパーサブ機の例をあげておけば
PENTAX K-1系に対するPENTAX KPとかがそれであろうか。

それでも銀塩時代であれば、いくら高価なハイエンド機でも
だいたい当時の貨幣価値で30万円程までであったのだが、
デジタル時代、特に近年においては、「高付加価値化戦略」に
より(貨幣価値の変化を加味したとしても)銀塩時代よりも、
さらに高額となっている。
結局、デジタル時代では、ハイエンド機がなかなか手が出し
難い価格帯である為、中上級層においては(スーパー)サブ機
を主力機とする選択肢は十分にありだろう。
いや、むしろハイエンド機を1台新品購入する予算で、
高性能な中高級機を(中古で)3~4台そろえた方が、ずっと
コスパや実用性は良くなるのかも知れない(私はそうしてる)
デジタル機はどうせ消耗品だ、いくら性能が良い機体でも
いずれ「仕様老朽化寿命」(本シリーズ第8回記事)が来る。
そういう意味でも、その時代のコスパの良い中高級機を
主力機としつづける事も十分に有り得る訳だ。
★デジタルカメラ10年間寿命説
独自概念。
本シリーズ第8回記事の「仕様老朽化寿命」の説明では、
主に(進化のペースが速かった)ミラーレス機において
「後継機に対して、どれだけ見劣りせずに長く使う事が
出来るか?」という要素があり、ミラーレス機の性能評価
でも、その項目を独自に判定している事について解説した。
その記事では、デジタル一眼レフでは、進化のピークが
実用的性能に、もう達している為、「仕様老朽化寿命」を
あまり意識する必要は無い、とも書いた。
すなわち現代の高性能デジタル一眼レフは「超絶性能」
(本シリーズ第1回記事)を与えられ、実用的には不要なまでの
性能となっているからだ。
だから、あまり仕様(性能)がすぐ古くなる、という心配は
少ないのだが、それでも限界というものがある。
私はデジタル一眼レフの初期のものから、およそ20年間程度
の各社の各時代のものを20台以上所有して使ってきているが、
それらを使っている経験則からすれば、デジタル一眼レフの
寿命は、およそ発売後10年である。
勿論、壊れて使えなくなる、という意味では無い。
発売後10年を超える機種は、最新の機種に比べて性能や仕様が
大きく見劣りして、使いたく無くなって来てしまうのだ。
これもまさしく「仕様老朽化寿命」と言えるだろう。

一眼レフは、いくらちゃんと動作していたとしても、
できるだけ新機種にリプレイスしている。
リプレイス(置き換え)と言っても、実質的には「買い増し」
である。何故ならば、発売後10年程の機種は発売時の定価の
およそ1/5から1/10にまで中古相場が下がってしまう、
仮に下取りに出したとしても、本当に二束三文だ。
であれば、古い機種は処分せず、雨天などの厳しい環境でも
気兼ねなく使える「消耗機」にしてしまい、壊れるまで
使い続けるのが賢明な訳だ。(注:当然、メーカー修理対応
期間も終了している事であろう、「使い潰す」という事だ)
また、同時代のレンズを装着しないと正しく動作しない場合
もあって、その意味でも古い機種は簡単には手放させない。
さて、でもこの「10年間寿命説」は、概ね2000年代~
2010年代の話である。2010年代後半あたりからの機種は
デジタル一眼レフとしての進化もピークに達し、加えて
「超絶性能」も与えられていて、結果的に高価である。
(注:高価な値付けにする為に、付加価値を高めているから
そうなる、そしてその「超絶性能」も実用範囲外だ)
なのでまあ、もしかすろと、近年のデジタル一眼レフで
あれば、「10年間寿命説」も、もうすこし伸びるのでは
なかろうか?とも予想している。
ただ、この予想には1つ重要なファクター(要素)がある、
それは、本シリーズ第19回での「カメラ形態20年寿命説」
であり、つまり、そろそろデジタル一眼レフも、何らかの
大きな変革があって、次の時代のカメラ形態に変貌して
しまうのではなかろうか? という危惧がある。
(現に、フルサイズ・ミラーレス機が台頭してきている)
別に進化は良い事なので否定しようも無いのだが、過去の
カメラの歴史を振り返ると、この「形態の変革」が起こると
旧型式のカメラは急速に時代遅れとなってしまうし、
実質的に使用不能になってしまう場合すらある。
具体例は、1990年代末に大ブームともなり、あれだけ人気の
あった銀塩中古カメラは、2000年代にデジタル時代になった
直後に、どんな高級機でも、およそ二束三文の相場となった。
「もう今更誰もフィルムで写真を撮らんよ」という状態だったのだ。
あるいは、その時代の銀塩APS(IX240)機も同様、これは急速に
廃れ、2000年代末にはフィルムの入手も現像も不能となる。

ではわからない。
フルサイズ・ミラーレス機の可能性は高いが、それはあまり
今までのカメラの概念と大きく変わるものでもない。
例えば、ほぼ無限に動画を撮りつづけて、静止画はその中
から好きなコマを選ぶとか。あるいはネットで繋がれた
世界中の様々なカメラを、自在に遠隔操作で撮るとか・・
だが、もしそういう大変革が起こったら、もう馬鹿馬鹿しくて
現代の高性能デジタル一眼レフですら、使いたくなくなって
しまう事であろう。
そういう時代が来て欲しく無い気もするし、いや、やはり
カメラの進歩はユーザーにとって歓迎するべきものだから、
早くそうなって欲しい気もするし・・なんとも複雑な心境だ。
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さて、今回の記事はこのあたりまでで、次回もまた「補足編」
となるが、内容は未定とする。