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【熱い季節2019】第36回 堅田 湖族船競争

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正式名称「第36回 堅田湖族まつり 湖族船競争」が
今年も2019年8月4日(日)に、滋賀県大津市・堅田
地区の「神辺(こうべ)なぎさ公園」にて行われた。
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毎年観戦記事を書いているので、大会自体の説明は
最小限とする。

長年の歴史を誇る、関西圏最古参のドラゴンボート系
大会であり、大会会場は堅田の観光名所「浮御堂」の近く。
最寄り駅はJR湖西線堅田駅より、およそ徒歩20分強程度だ。
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レギュレーションは、500mターン戦(250mの往復)であり、
艇は本大会専用の幅広の物(通称:バスタブ艇)を使用する。
安定性は抜群であり、転覆等の危険性はまず無いのだが、
その分、速度は遅く、だいたい秒速2m前後しか出ない。
(=時速約7km、ドラゴンボートの約半分の速度)
c0032138_20443656.jpg
クルー数は、12人漕ぎに加えて、鼓手(ドラマー)、舵取り、
監督(船長)が同乗して計15名。漕手の不足は認められている。

カテゴリーは、例年では、自治会の部(地元堅田近辺の町単位)、
中学生の部(参加校不問)、一般の部(参加資格不問)である。

ただし、昨年および今年に関しては、猛暑の為、中学生の部
は中止となっている。
大会当日の滋賀県大津市の最高気温は、昨年が37℃、
今年は35℃だ。相当に暑いので、熱中症には要注意である。

自治会の部は、冒頭写真のように地区名が記載された自治会
旗を艇に装着する。この旗はなかなか格好良いが、見た目で
どこの自治会か?を区別する事のみならず、風向、風力が
一目瞭然である為、レース観戦の際にも結構役に立つ。

なお自治会の区域名は、現代の区分ではなく、昔ながらの
町割りの名前だ。よって現代では存在しない地名のチームも
多い。(例:冒頭写真左の小番城(こばんぎ/こばき)等)

自治会は全部で20弱程ある模様だ、自治会の部への例年の
参加数は平均16チーム。つまり、たいてい殆どの自治会が
参戦しており、「地域同士の意地による戦い」という様相も
ある。なお、本年の自治会の部への参戦数は15チームだ。
(注:自治会以外にも地元の企業単位での出場もある)

各レースは最大4艘建てであり、レースフローは、例年では、
予選→準決勝→決勝となっているが、ここも、猛暑を鑑み、
今年は、予選→決勝の短縮フローによるレースである。

具体的には、自治会の部の場合、予選では、4艘建てx
4レース(1レースのみ3艘建て)、各レースの1位のみ
決勝進出が可能。2位以下は、その瞬間に敗退という
厳しいレースフローである。
一般の部は、7チームが参戦しているので、4艘建て+
3艘建ての2戦、各レース2位までが決勝進出できる。

開会式の時刻は午前9時。京都駅発午前8時頃の湖西線
でも、なんとか間に合う。終了予定時刻は短縮レースの
為、正午頃と、他の大会よりも早目に終了する。
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開会式では、各自治会チームが、自治会旗を掲げて整列
する為、なかなか荘観である。
開会式で、昨年優勝チーム(自治会、一般)の優勝カップ
の返還がある、上写真で返還しているのは、一般の部での
昨年優勝の「守(もり)のシルバニアファミリー」である。 

「守のシルバニアファミリー」は、「高島ペーロン」を
出自とし、ドラゴン専業チーム化した希少なチームだ。
近年では、ホーム大会である「高島ペーロン」のみならず、
本「湖族船競争」「びわこペーロン」「スモール選手権」
にも出場し、昨年の戦績は、この全ての大会に入賞、および
「湖族船競争」「びわこペーロン」では優勝である。
この好成績の所以は、昨年より戦術を変え「ロケットスタート」
を習得した事による。こうした戦績を鑑み、本ブログの昨年末の
ドラゴン総集編では「ベストチーム」の1つに選出されていた。

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さて、以下は予選の模様から紹介する。
なお、実際のレース順は、一般の部予選→自治会予選→
一般の部決勝→自治会の部決勝であるのだが、記事記載の
便宜上、自治会と一般の部の順番を入れ換えて紹介する。

ではまず、自治会の部の予選の模様だ。
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上写真は、自治会の部予選第1回戦を制した「堅田第一」
チームである。タイムは4分45秒。

自治会チームの中では、毎年決勝進出クラスの実力値を
持つ強豪だ、ただし若干のバラツキ(ムラ)がある模様で、
序盤は、たいてい速いが、後半から終盤戦で急激に失速
してしまう事が良くある。 
匠「後半戦のスタミナ切れは克服できましたか?」
と聞いてみると、
堅「あはは・・ どうでしょう?」
との答えだった。実際に漕いでみないとわからない
模様なのだが、この予選ではペースダウンは少なく、
今日は調子が良さそうだ。

ちなみに、自治会の部の想定優勝タイムであるが、
4分15秒、プラスマイナス10秒という感じである。
この会場は、風や水流の影響を受けやすく、毎年で
最大20秒程度の優勝タイムの差異がある状況だ。

それから、レースの模様の撮影であるが、この会場
(他の琵琶湖の会場も同様)は、午前中は東向きで
酷い逆光状況となる、したがって艇が真っ黒、または
背景が真っ白となって写り、臨場感に欠けてしまう。
だが、これを回避する手段は殆ど無い。

あるとすれば、艇が画面いっぱいに写る程度の
超々望遠レンズを使う事だ、そうすると背景等が無くなり
写っている範囲は、ほぼ均一の適正な露出値となる。

しかし、この会場は、艇までの距離がとても遠い、
艇を画面いっぱいに写すには、換算1000mm以上の
超々望遠レンズが必要だ、昨年までは、そうした機材を
使った事もあったが、手持ちで振り回すのは重いし、
近年の猛暑の状態では、ハンドリング性が悪すぎる。
今年は楽をして、換算600mm級のレンズで留めている。
だから逆光条件を防ぐ術は無い。
レース中の選手の様子が見え難い写真も多いとは思うが、
あしからず了承あれ。

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さて、次いで、自治会の部の予選第2組。
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このレースには強豪チームが2つ居る。

まずは優勝候補の「小番城」(こばんぎ/こばき)だ。
地名の読み方は、正式には「こばんぎ」なのだが、
地元の堅田、かつ同地域の人は「こばき」と短く読む
事が大半であり、その読み方で同地域の住民かどうかを
判断できる。 

「小番城」だが、2011年から2018年までの間の8回の
大会で、実に7度の優勝をしている。
準優勝となったのは、2016年に「柳田」に決勝で
負けたのが、ただ1度であり、”絶対王者”と言えよう。

まあ、ドラゴンボートで言えば「磯風漕友会」のような
戦績なのだが、圧倒的に勝つ、という感じではなく、
毎年、いずれかのチームと競り合いながらも、最後に
かわして勝つ、という”粘り腰戦術”である。

もう1つの強豪チームが「永楽」(えいらく)である。
私は本大会を2016年から観戦開始しているのだが、
昨年まで3年間の大会を見てきた印象では、地元の
自治会チームは、いずれもターンが上手いのだが、
その中でも、特に「芸術的なターン技術」を持つのが
「永楽」である。(上写真は「永楽」のターンの模様)

しかし、「永楽」は、何故かレースフロー上の不運に
見舞われる事が多い、上写真では永楽がターンして
いる少し先に、白い艇の「小番城」が先行しているのだ。

今年のレースフローでは、予選では1位にならない限り
決勝に進めない、そこに「小番城」が居たのが不運だ。
ただ、ターンインの瞬間まで、「永楽」は「小番城」に
対し2~3秒程度の遅れだったので、スーパーターンで
逆転できる可能性もあった。(それ故に、「永楽」の
ターンを追いかけながら写真を撮っていた訳だ)

だが、トップの「小番城」は、「永楽」に勝るとも
劣らない見事なターンで、「永楽」がターンで詰め寄る
展開を許さず、後半はさらに突き放して、余裕の1位抜け
であった。(タイムは4分08秒と、なかなか速い)

「永楽」は、この1レースのみで残念ながら終了だ。
ちなみに、「永楽」は2017年の本大会で準優勝している。

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次いで、自治会の部の予選第3組は、強豪の「今堅田」
と「衣川(きぬがわ)」が居るが、ここは「衣川」
の勝ちであった。(タイムは4分38秒)
「今堅田」は、戦国時代にこの地区に同名の城があった
事や、明智光秀等による、その攻城戦があった事で、
歴史マニア等の間ではおなじみの地名であろう。

ちなみに、「衣川」のメンバーの一部は、一般の部の
「湖鼓Ro(こころ)」チーム(後述)と重複している。

この重複登録は、ルール上では認められてはいるのだが、
勝ち上がった場合、大会の終盤で重複登録選手は連続して
決勝等に出場する事となり、なかなか体力的に厳しい状況
となる。現に今回も、重複選手が2時間ほどの間に4度も
漕ぐ羽目となり、しんどい他、チーム戦績にも悪影響を
及ぼしてしまうリスクもある。選手達も、よほど強い理由
がある場合の他は、重複登録をする事は、まず無いと思う。
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上写真は、「柳田」の元選手である。
前述のように「柳田」は、近年では唯一、「小番城」を
破って優勝したチームであるが、もうそれも3年前の
話となる。また、彼は「柳田は2度(のレース)くらい
しか小番城に勝った事が無い」とも言っていた。

さて、自治会の部の予選第4組は、その「柳田」が出る。
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このレースは「柳田」が貫禄の展開で1位抜け、
タイムは4分27秒と、自治会の部の予選の中では、
「小番城」に次ぐ2番手の好タイムを出している。
このあたりは、さすがと言えるであろう。

ただし、本会場は毎年コンディションが若干変わるとは
言え、「小番城」を除く、他の2番手強豪チームでは、
4分20秒を切る事はまずなく、たいてい4分20秒台で
団子状態となるのが例年の決勝タイムである。

対して「小番城」は、例年4分20秒を切り、場合に
よっては、4分10秒を切って4分程度のタイムとなる
事すらもあったので、「競り合って勝つ」と前述はしたが、
やはり地力の差が、少しだけあるようにも感じる。

で、これで自治会の部の決勝進出チームが決定、
「堅田第一」「小番城」「衣川」「柳田」となり、
まあ、波乱は特に無い結果である。

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さて、ではここからは「一般の部」の予選の模様を
紹介しよう。
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上写真は、一般の部予選第1回戦に出場する
「水統」(すいとう)チームである。

企業系での集まりだと思うが、詳細は不明。
メンバーは近畿圏の他府県、および全国区である。
毎年、この大会の為だけに集まって来られると聞く。

また、一部の女子選手に、ドラゴンボート専業チーム
にも所属している人が居る。

昨年の本大会観戦記事でも紹介したチームであるが、
今年はユニフォームが昨年とは違う色だ。
匠「あれ? ユニフォーム変えました?」
水「実は、毎年変えているのですよ」

そういえば、Tシャツのロゴに「9th Times」と
記載されているので、これは「9回目の出場」と言う
意味なのであろうか?(英語がちょっと変な気も
するが・・汗)
なお、昨年の「水統」の紹介時に「入賞経験は無い」
と書いたのだが、それは私が観戦している近年の範囲での
話であり、どうやら2014年に優勝しているそうだ(!)

でも、その後は勝てない様子である。
その最大の理由は「ドラゴン専業チーム」の本大会への
参戦であろう。
現状、「小寺製作所」「守のシルバニアファミリー」
「湖鼓Ro」が居るので、これら専業チーム達が入賞
(3位まで)を独占してしまう事が、ここ数年の通例だ。
(注:「湖鼓Ro」そのものは、和太鼓集団(スモール
選手権でも演奏している)なので、専門は音楽家なの
だが、「GPO」のメンバーとコラボして、ドラゴン専業
チームのように活動する事も少なくない)

よって、「水統」も、昨年は4位と、惜しい戦績だった
訳だ。今年は何とか、頑張っていただきたいのだが・・
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上写真は、「水統」と同じ予選レースに出場する
「守のシルバニアファミリー」の、美人監督(船長)
である。船長は漕がず、クルーに作戦の指示を声で
伝えたり、笛、あるいはその他の鳴り物を用いて、
ペースの指示やサイン的指示を出したりする場合もある。


また、ただ座っているのみならず、ターン時は、艇に
対して、オートバイでの「リーン・ウィズ」のような
体重による重心移動を掛ける場合もあり、なかなか忙しい
仕事である。

なお、ルール上、漕手の不足は認められているが、
監督(船長)、太鼓手、舵手は、各々必須である。
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上写真は、一般の部予選第1回戦の模様。
ターン直前の様子、右手前のチームが「水統」であり、
左奥が「シルバニア」である。

優勝候補の「シルバニア」にここまで追従しているので
大健闘の「水統」ではあるが、ここからターンと帰路で
ペースダウンしてしまった。

なお、4つの艇には、それぞれ、白、青、黄、赤の塗装が
施してあって、ターンする旗の色は、艇の色と同じものを
廻らないとならない。間違った色の旗を廻ったり、逆廻りを
したら勿論NGであり、やりなおすか、または失格だ。

一般の部では、艇に旗はつけていないケースが大半だが、
(注:つけてはいけない訳では無い、旗を準備していない
だけである)自治会の部では、色とりどりの自治会旗が
ついている。その自治会旗の色と、艇およびターンフラッグ
の色とは無関係であるので念の為。

一般の部予選第1回戦は、1着が「シルバニア」で
こちらは4分12秒の好タイム。
昨年のシルバニアの優勝時は、4分2秒程度だったと
記憶しているので、今年は10秒ほど遅い。ただし、その
理由がレーンのコンディションなのか、あるいは、これは
まだ予選なので、適宜、体力を温存する戦略なのかは、
現状、良くわからない。


なにせ、記事記載の都合でレース順を前後させているが、
この一般の部予選第1回戦が、本日最初のレースなのだ、
その後に続く他チームのタイムを見ない限りは、
コース・コンディション等の状況は不明だ。

チームテントに帰ってきた「シルバニア」から、こんな
質問が。
シ「匠さん、この大会のコースレコードって知ってます?」
匠「え~と、確か3分48秒だったかな? 小寺製作所さんです」

シ「すると、まだまだ我々も出せるな」
匠「シルバニアさんは、昨年が4分少々、一昨年が
  3分52秒あたりだったので、まだまだ20秒くらいは、
  伸ばせる余地があります。でも、この後、北風が強く
  なるかも知れないので、帰りは向かい風で、しんどい
  ですね。タイムは風と水流次第では無いですか?」

結局、この一般の部の予選第2組は、「シルバニア」と
「北部連合」(初参戦?詳細不明)が、1位2位で決勝進出が
決定。
前述の「水統」は、せっかく全国から集まっていただいて
いるし、ユニフォームまで新調していたが、残念ながら
1度漕いだだけで予選敗退となってしまった。

また、今回初出場の「旭食品」チーム(下写真)も、
このレース3位で、予選敗退となっている。
こちらは恐らく、全国に事業所や工場を持つ、大企業の
チームであり、滋賀事業所からの参戦という事だ。
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さて、次は一般の部の予選第2組、こちらは、ベテラン
専業の「小寺製作所」(過去3年間:優勝、2位、2位)
と、「湖鼓Ro」(注:和太鼓の演奏家とドラゴンチーム
「GPO」とのコラボ、過去3年間:2位、3位、3位)が
居る。また、同じ和太鼓演奏家チームの「湖族太鼓」
も、本大会の常連として参戦している。
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こちらのレースの見所は、優勝候補の「小寺製作所」
の様子ではあるが・・ 今日は2名の漕手が欠員のまま
出場している状況である。

小「匠さん、メンバーが足りないので小寺艇に乗って
  くれないか? 迫力のある写真が撮れるぞ」
匠「ん? 嫌ですよ、どうせ漕がされるのでしょう?」
小「あはは・・・ 実は「シルバニア」にも応援を
  頼んだけど、断られた」
匠「当たり前ですよ、ライバルチームの片棒を担ぐ事など
  する訳は無いし、仮に、選手を借りて勝ったとしても、
  小寺さんも嬉しく無いでしょう?」
小「まあそうだな。 しかたない、このまま漕ぐか」
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案の定、「小寺製作所」はスピードが出ない。
実況解説席にも、その情報は届いていた模様で・・

実「小寺製作所、メンバーが足りない様子です。
  艇が軽くなるとも言えますが、やはりスピードが
  伸びないですね・・」
という実況。

まあ、漕手2名欠員状態は、車で言えば、エンジンのパワー
が12分の2、つまり16%減っている計算となる。
仮に100馬力のエンジンだと、83馬力しか出てない事に
なるから、遅くなるのはやむを得ない。
概算だが、本レースにおいては、10秒以上のタイムロスは
避けられない事であろう。

このレースの着順は1着「湖鼓Ro」(タイムは4分12秒)
次いで「小寺製作所」(4分22秒)となり、ここまでが
決勝進出。常連の「湖族太鼓」は残念ながら予選敗退だ。

---
「湖鼓Ro」(こころ)だが、強豪「シルバニア」と、
ほぼ同タイムとなった事は、彼らとしては喜ばしい。

湖「今日はフル(強力な)メンバーです!」
と事前には聞いていたのだが、まあ、その理由は、地元
強豪チ-ムの「衣川(きぬがわ)」とのメンバー重複も
根拠としてあるのだろう。

しかし、前述のように、強力な選手の重複出場は、レース
間隔の長い予選の間は有効な措置だが、終盤、決勝戦とも
なれば連続出場となって、相当に漕手への負担が大きい。

例えば、ドラゴンの日本選手権大会やKIX(関空)大会
においては、海外からの強豪チームがよく参戦するが、
彼らは、”せっかく日本の大会に出るから”と、多くの
場合、異なるカテゴリーに複数エントリーする。
そして、そう沢山の選手が(自費で)来日する事は
難しい訳だから、選手も重複して出場する事となる。

予選好調で、それぞれのカテゴリーで勝ち上がって来ると
準決勝から決勝にかけては、ボートを降りては次のレースに
乗り換える、という、極めて忙しい状態となり、当然ながら
体力も、そこまで持たない。

だから、予選の間、あれだけ強かった(速かった)海外
チームでも、決勝に出る頃には、ボロボロに疲弊して
国内チームに負けてしまう事も、良く見かける光景なのだ。

今回の一般の部の「湖鼓Ro」と、自治会の部の「衣川」も
そんな事態にならなければ良いが・・ 

いや、やはり相当に厳しい状況であろう、この猛暑の中、
合計4回ものレースを漕ぎ、しかも後半は、ほぼ連続
出場である、よほどの「超人」でも無いかぎり、それは
過酷すぎる。両方のチームを決勝進出させた功績は大きい
が、両カテゴリーとも結果を出せなくなる恐れもある。

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さて、次は、自治会の部決勝戦の模様を紹介する。

決勝戦のレーン割りと、参考の為、予選タイムを
()内に挙げておく。
1レーン(赤):(4分27秒):柳田
2レーン(黄):(4分38秒):衣川
3レーン(青):(4分45秒):堅田第一
4レーン(白):(4分08秒):小番城

予選タイムだけを見るならば、小番城(下写真)が
有利であろう。
c0032138_20450527.jpg
小番城(こばんぎ/こばき)は、本大会において2011年~
2015年まで5連覇、2016年に「柳田」に負けて準優勝、
以降、2017年~2018年(注:短縮レース1回戦制)
では、また連覇中の(超)強豪チームである。

ただ、その”黄金期”も、彼らの話によると
小「ちょっとメンバーが高齢化してきている、
  他の自治会では若い選手達も増えてきている」
と言っていた。 

なお、自治会毎の住居の「戸数」にも差がある模様で、
小さい自治会では、100戸以下のところもあるらしく、
そんな中から15人以上のメンバーを集めてくるのは、
それなりに苦しい状況もあるだろう。

また、その地域独特の職業柄もある模様で、例えば
昔からの漁師さんが良く集まっている自治会もあると聞く。
そんな場合、「地元の漁師の意地」もある様子で、
「船を扱う試合で負けたら、ご先祖様に申し訳が立たない」
と言っている選手達も居るくらいだ。
「小番城」も、恐らくは昔からの漁師町なのだろう。
(参考:ここにも戦国時代には城があり、地名はそれを
由来とする。なお、前述の「今堅田城」とは異なる城だ)

ちなみに、他地区のローカル大会でも、地元漁師チームが
強い大会はいくつか存在している模様だ。
しかし、そういう大会は、元々、地域のお祭り的な様相で
地元チーム同士が戦い、「やはり船が専門の漁師は強いな」
という感じで、そういう風に納得できていたのだが・・

そういう地元大会に、日常的にボートの練習を行っている
いわゆる「ドラゴン専業チーム」が参戦してしまうと、
さしもの地元強豪チームも、まったく歯が立たない。
下手をすれば、「よそモノが荒らしに来ている」という
悪感情を地元の人達に与えてしまう恐れもある為、要注意だ。

この状況は、以前から実際に何度となく見られた事なので
本ブログでも「ドラゴン専業チームの参戦は地域住民の
感情にも配慮」という旨を、良く書いている。
簡単な解決策は、カテゴリーを分離してしまう事である。
地元またはビギナーの部と、競技志向の強いチャンピオンの
部等を分けてしまうのが、最も安全かつ合理的な解決だ。

その点、本大会は「自治会の部」には、ドラゴン専業チームは
参戦できない訳だから、完全に分離されていて好ましい。
もし地元の部でも競技志向の強いチームが出てきたら、
それは「専業チーム化」して、チャンピオンの部なり、
他地区大会に参戦を行えば良い訳である。
ただ、それをする実例はさほど多くなく、前述の高島市の
「守のシルバニアファミリー」くらいしか無いと思う、
だからこそ「シルバニアの例は希少だ」と、本ブログでは
書いている訳だ。

さて、余談が長くなった、他の「自治会の部」の
決勝進出チームは、いずれもベテラン強豪ではあるが、
いま一歩「小番城」を倒せない状況が長年続いている。

今年は「下克上」があるのか? そこが観戦の楽しみだ。
c0032138_20450429.jpg
上は、自治会の部、決勝戦のターン地点の模様、
各艇入り乱れている状況だが、やはり絶対王者の
「小番城」が、いち早くターンに突入している。

「堅田第一」は、前述のように、ツボにハマると速いが、
スタミナ切れで失速するパターンが多い、最後まで
キレずに行ければ、まだ上位入賞の可能性は高い。

「衣川」は、前述のように重複出場選手が多い。
記事掲載の都合で、レース順を換えて紹介しているが、
実際にはこのレースが今日の最終戦である。漕手達の
疲労はピークに達している頃だ、ここから最後の
踏ん張りを見せられるのであろうか?

写真に写っていない、一番手前のレーンの「柳田」は
悪く無い。ここ数年間で、唯一「小番城」に勝利した
事があるチームである。

そういえば、昨年の本大会の観戦時、37℃を超える
猛暑ながら、高齢のおばあちゃんが一人でレースを
観戦していた。熱中症が危険かと思い、話かけてみると・・

老「今年は”こばき”の成績はどうかのう?」
地名の呼び方から「小番城地区自治会」のおばあちゃんで
ある事が明白だ、選手のお母さんであろうか?

匠「大丈夫です、今年も「小番城」は優勝できそうですよ」
老「去年だったか、どこかに負けたと、悔しがっていたよ」
匠「一昨年(2016年)ですね、「柳田」に負けたのです」
老「そうそう、「柳田」だった・・」

というやりとりがあった事を思い出した。

後半、その「柳田」が猛チャージ!
c0032138_20451914.jpg
「柳田」の方が後半戦(300~400m)でのレートが速い、
この後も、みるみる追いつくが、私の撮影地点は
ターン地点(250m地点)であるが故、両チームの位置
関係は、撮影の角度的に、常に接戦であるようにしか
見えない。「これはヤバい(結果がわからない)」と
思った私は、撮影地点を放棄、ゴール前に向けて走り出す。

堅田艇の速度は、時速7km程度と低速だ、だから走れば
追いつけない事は無い、けど、猛暑だし、2台のカメラを
首から下げて走りつつ、たまに撮っているので大変だ。

選手村の前を通過するので、選手達もたくさん居る。
匠「凄い面白い決勝戦になりましたね~」
などと言いながら、選手村の選手達に通り道を作って
もらって、ゴール方面に走っている状況だ。

そういえば、レース前に「柳田」の選手が、
柳「小番城に勝った年は、泣いて喜んだ」と言っていた
事を思い出す。

柳田が勝った時の写真は、2016年の本ブログの観戦
記事に掲載していたと思うが、泣いていただろうか?
いや、前述の、”小番城のおばあちゃん”の話と同様に、
きっとレース後には、自治会で集まって飲み会等を
行うのであろう、その時に、喜んだり、悔しがったり、
感情が爆発しているのかも知れない。

さて、今年も「柳田」は歓喜の涙を流す事ができるのか?
ゴール前、わずかに「小番城」がリードか・・・?

前述のように、ここは「小番城」には「粘り腰」がある
接戦の中でも、絶対に相手には負けない、という気持ちや
それにともなう技術(ラストスパートのペース配分等)
があり、そうやって長期間勝ち続けた経験値もあるのだ。

ゴール地点に着いた時には、ちょうどレースは終了して
いた。実況アナウンスは「小番城の勝ち」と告げている。
角度の関係で接戦に見え続けたが、実際には1艇身強
(数秒程度)のリードを保ち続けた模様であった。
c0032138_20451900.jpg
上写真は、事後に行われた表彰式の模様。
これで「小番城」は、近年では3連覇である。

結果だけみればそうなのだが、レースの背後には、様々な
「人間ドラマ」がある。そこがドラゴンやペーロン観戦の
最大の醍醐味なのだ、それを知らずしてレースを見て
いるだけでは、あまり面白味が無いのではなかろうか?

まあ、他の例をあげれば、近年の「高校野球」等でも
大会前から、様々なチームに事前密着取材を敢行し、
そうした選手達の人間模様をTVで放映している事が多い、
そういう番組は、面白く、かつ感情移入できる。

昔の高校野球では、ただ単に、視聴者の出身都道府県や
その近隣の地域のチームを応援するケースが大半であった。
だが、高校野球も、勝つ為に有力選手の越境入学を行う
ケースが増えていくと、視聴者も、ただ「地元だから」
という理由だけでは応援できなくなって来ている。
そういう世情において、選手達の人間ドラマは、また
別の視点から高校野球を観戦できるので、興味深い訳だ。
c0032138_20451966.jpg
上は、今年も準優勝に甘んじた「柳田」の選手達の様子。

女子選手は「賞金」(注:本大会は賞金が出る)を
手にして嬉しそうな表情であるが、男子選手はニコリとも
していない。当然、今年もまた「小番城」を倒せなかった
悔しさがあるのだろう。

先の「人間ドラマ」は、大会の写真を撮る際にも多大な
関係がある。そうした人間ドラマの背景を象徴して表現
できるような写真を撮る(または選ぶ)必要がある訳だ。

スポーツ新聞の1面に載る写真等も、近年のものは皆、
そうした写真ばかりである。状況に応じて、監督や選手の
喜怒哀楽がはっきりと現れている写真だ。
そういう写真が1面に載ることで、その新聞の売り上げが
変わってくる。各スポーツのファン層は、当然、それまでの
成り行きを良く知っているから、共感できるのであろう。

だから、知らない競技の撮影など、基本的には出来る筈が
無い。いくら最新の高価な高性能機材で武装した金満家の
アマチュア層であっても、あるいは経験豊富な職業写真家
層であっても、競技そのものを知らないと、どんな写真を
撮ったら良いか、全くわからない訳だ。

私は、各ドラゴン系大会の撮影をする度に、少なくとも
過去数年間の各チームの戦績や、場合により、タイムまで
復習し、全て暗記してきてから観戦撮影に臨む。
つまり「ドラマ」を全部覚えていないと、撮りようが無いし
また、選手達と話をする事も出来ないからだ。

ちなみに、毎試合の観戦記事を執筆しているのも、
その記憶を容易に定着させる事にも繋がる。自分で書いた
ものは良く覚えることが出来るからであって、これはまあ
学生の「漢字書き取り」等と同じ事をやっている訳だ。

自治会の部の最終順位とタイムは以下の通り。
1位:4分12秒:小番城
2位:4分21秒:柳田
3位:4分35秒:堅田第一
4位:4分40秒:衣川

ちなみに3位までが入賞(賞金あり)で、4位は何も
無しだが、決勝に限らず全ての参戦チームに、参加賞
(ケースの缶ビール等)が振舞われる。

----
さて、次は一般の部の決勝の模様の紹介だ。
まず決勝レーン割りと、予選タイムを記載しておこう。

1レーン(赤):(4分36秒):北部選抜
2レーン(黄):(4分12秒):守のシルバニアファミリー
3レーン(青):(4分22秒):小寺製作所
4レーン(白):(4分12秒):湖鼓Ro

「北部選抜」は初出場だと思われ、詳細は不明。
取材を行おうとしていたが、どこに集まっているのか?
見当たらない(汗) 場合により大会本部関係者系の
チームなのかも知れず、殆ど選手村等では過ごして
いなかったのかも知れない訳だ。

他は全て「専業チーム」である、ここ数年間の本大会
は、必ず上記3チームが入賞を独占している状況だ。
他大会ならば「地元チームへの影響が強い」となるが
本大会は地元チームとは完全分離のカテゴリーなので、
こちら(一般の部)は、こちらの中だけで戦えば良いので、
地元チームの参戦意欲減退等には関与しない。
c0032138_20451948.jpg
上写真は、2連覇中の「守のシルバニアファミリー」

初出場の2017年からいきなり優勝している。当初は
「松陽台 守のシルバニアファミリー」の名前で参戦、
実況解説から「長すぎて上手くチーム名が言えません、
今度から8文字以内で御願いします」等とも言われて
いたが、連続優勝で、その名前もすっかり定着。
「松陽台」も消えた事から、実況解説の方でも
実「さて、優勝候補のシルバニアファミリーです」
と、難なく言えている模様だ。

---
レースが始まると、「シルバニア」は、一昨年の
オフシーズンから練習を始め、昨シーズンの各大会で
それを実施し、好成績を収めた、「ロケットスタート」を
炸裂させる。

一週間前の「高島ペーロン」大会でも、この技が見られ、
同大会の実況解説では、
高「守のシルバニアファミリー、とんでもないペースです、
  いったいこのペースで最後まで持つのか?!」
と実況。その後、シルバニアが「巡航レート」に落とすと、
高「ああ、なるほど、最初だけ速く漕いで、勢いに乗る
  作戦なのですね・・」
と納得の解説を行っていた。

本大会の実況解説は、数十年は本大会を観てきている
ベテランだ、シルバニアのその作戦を、一発で見抜き、
実「漕ぎ始めが重いのですよ・・ そこだけ速く漕いで
  スピードに乗せる戦略でしょう、なかなか上手ですね」
と冷静で的確な評価。

ただ、シルバニアの課題は「まだラストスパートの練習
を行っていない」という事である。 
ここは本大会が始まる前に、彼らと話して確認してあった。

だから、もし他チームと終盤に接戦になった場合、
そこでペースアップすると、パドルの動きが乱れてバラけて
しまい、むしろ遅くなる危険性がある。
事実、先週の「高島ペーロン」の決勝戦でも、ターン直後は、
「シルバニア」が「小寺製作所」より、わずかだけ先行
していたが、帰路の直線で「小寺」と接戦となり、
ラストスパートした「小寺」(準優勝)に「シルバニア」が
競り負けて3位に甘んじているのだ。

すなわちシルバニアが勝つには、現状では「先行逃げ切り」
しか無いのだ。
c0032138_20452572.jpg
上写真は、一般の部決勝のターンの模様。

この時点では、上位から「シルバニア」(黄)
「湖鼓Ro」(白)、「小寺」(青)と、大差が無い。

「このままでは接戦となる」と判断したのか?
ここから「シルバニア」は、未挑戦のラストスパート、
つまり後半のペースアップを試みる事となる。

「シルバニア」のピッチは上がり、みるみる他チームを
引き離していく。レース終盤では、その差は数艇身、
15秒以上は差がついていそうだ(下写真)
c0032138_20452616.jpg
左が「シルバニア」、右が「湖鼓Ro」、僅かに遅れて
「小寺」も居るが、もう、順位はこれで確定的だ。

これには、私も驚いた、いったいいつ、ラストスパートの
練習をしたのだろうか? いや、きっとそれはやっていない
レースの中から実践的に学んでいく方法論なのだろう。

まあそれは悪く無い、レースを1度すれば、それは数回の
練習と同等の価値や成果が得られる。これはドラゴンだけの
話では無く、他の様々な、スポーツやその他の分野でも
同様であろう。例えば、楽器演奏や歌や演劇等の世界でも、
”一度ステージに立つ事は、10回分以上の練習に匹敵する”
とも言われているのだ。
c0032138_20452679.jpg
「優勝」の実況アナウンスに喜ぶ、「シルバニア」(手前)
のメンバー達。

タイムは、4分04秒と、ここのところの3連覇の中では
最も遅いタイムではあるが、前述のように、この会場は
年次によって20秒程度のタイム差が生じる可能性がある
ので、今日のコース条件では、かなりの好タイムであろう。
全チームを通じ、このタイムは本日最速であった。

以下、順位は、2位「湖鼓Ro」(4分19秒)、3位が
「小寺製作所」(4分27秒)(ここまで若干だが賞金が出る)
4位は「北部連合」であった。

(ちなみに、2016年までは、本大会の一般の部は無料参加
できたが、2017年以降、若干の参加料(3000円)を徴収し、
そこから一般の部の賞金をまかなうようになっている)

しかし、「守のシルバニアファミリー」が、実戦の中から
これまで課題であった「ラストスパート」が習得できた
のであれば、ますます彼らの成長は著しい事となる。

けど、それは今日の段階では良くわからない。
今後、彼らは今年は「びわこペーロン」(昨年10人漕ぎ
で優勝)と、「スモール選手権」(昨年、普及の部で
準優勝)に参戦予定と聞く、それらの大会での
彼らの様子を見て、真価を確かめていく事としようか・・
c0032138_20452514.jpg
上写真は、今回準優勝の「湖鼓Ro」の表彰式の模様。
しかも「衣川」と重複参戦の選手達だ。
今日は炎天下の酷暑の中、4回も漕いで、疲労の色が
隠せないが、まあ、こちら(一般の部)で準優勝が
出来てよかったと思う。自治会の部で「衣川」は
4位で入賞を逃しているので、両カテゴリーともその
状態であったら、お疲れ損であったかも知れない訳だ。

さて、時刻は12時過ぎ、酷暑の短縮レースであったので
これで大会は早目に終了である。

とても暑いので私も早々に引き上げるとしよう、
JR堅田駅までは通常徒歩20分強ではあるが、暑さと疲労と
重たいカメラ機材で、ダラダラと歩いたり途中で飲料水を
買ったりしていたので、30分強ほどかかってしまった。
路線バスも無い訳では無いが、20分~30分に1本程度だ、
少し離れた場所にある停留所を探して、バスを待っている
間には、駅まで歩ききってしまう。

なお、食事をする場合には、国道沿いに飲食店は沢山
あり、大型スーパーもあるので、苦労は無いであろう。

では、「堅田 湖族船競争」の観戦記事は、このあたり
までで、次回ドラゴン系記事に続く・・


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