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レンズ・マニアックス(17)

新規購入等の理由により、過去の本ブログのレンズ紹介記事
では未紹介のマニアックなレンズを紹介するシリーズ記事。
今回も引き続き、未紹介レンズを4本取りあげる。
なお、一部のレンズは別シリーズ「特殊レンズ・マニアックス」
で既に紹介済みの物もある。

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まず、今回最初のレンズ
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レンズは、OLYMPUS ZUIKO DIGITAL 35mm/f3.5 Macro
(中古購入価格 8,000円)(以下、ZD35/3.5)
カメラは、OLYMPUS E-410 (フォーサーズ機)

2005年に発売のフォーサーズ機用AF等倍マクロ。
発売当時は、等倍マクロとして世界最軽量の165gだ。

(参考:以降の時代では、一眼レフ用等倍マクロでは、
SONY製DT30/2.8(SEL30M28)が、さらに軽量な150gで発売。
ミラーレス(μ4/3)用では、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL
ED 30/3.5 Macroが128gの等倍マクロとなっている)
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フォーザーズ(4/3)システムは現在では終焉している為、
現状で、本レンズ等の4/3用レンズを使うのはやや難しく、
以下の2つの方法しかない。

1)フォーサーズ機を中古で入手して用いる。
 (今回使用のE-410等。中古相場は安価である)

2)4/3→μ4/3電子マウントアダプターを入手して、
 (例:OLYMPUS MMF-2/3等)
 それを介してμ4/3機に装着して使う。

これら以外の方法では、4/3用レンズは他社機等には
装着できない。マウント形状だけを揃える簡易アダプター
では、4/3用純正レンズの絞りを制御できず、MFも動かない。

ただし、簡易アダプターは、4/3用のMFトイレンズの場合
(例:HOLGA LENSやLENSBABY等)には有効であり、安価
であるし、SONY α7系等のフルサイズ機でも利用可能となる。

さて、本ZD35/3.5は、発売後10数年を経て、今更の購入だ。
このレンズの発売頃、4/3機を所有している初級層数人から
初「オリンパスの35mmマクロはどうか?」という質問を受け、
匠「オリンパスのマクロは昔から性能には定評があります」

・・と、所有してもいないレンズに対しての、曖昧な答えを
してしまった(汗) で、実際に本レンズを購入した初級者
も居て、さらに焦ったのだが、幸いにして購入者からは
初「良く写る、これを選んで良かった!」
という感想が得られたので、まあ、結果オーライだ(汗)

今更の購入となった動機だが、その10数年前の話の
罪滅ぼしというか・・ それもあるし、4/3システムが
現在とてつもなく安価になっているのも理由だ。

そして、「昔から定評がある」と言った手前、オリンパス
のマクロの各時代を代表するものを(全部では無いが)、
集めておこう、とも思った訳だ。

このオリンパスマクロの、時代の変遷を研究する事で、
なにか興味深い事がわかってくるかも知れない・・・
その結果は「特殊レンズ・スーパー・マニアックス第2回」
「OLYMPUS新旧マクロ編」の記事で紹介している。
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で、本ZD35/3.5の購入前に予想した事は、OLYMPUSに
おけるマクロレンズのラインナップ的な住み分けについてだ。

銀塩OM時代では、医療・学術用途の特殊マクロを除き、
OM50/3.5,OM50/2,OM/90/2の3本がラインナップ
されていた。
内、OM50/2は、後年にプレミアム相場となってしまって
未所有であるのだが、概ね、F2級マクロは、汎用的な被写体
に向くレンズ特性となっていて、F3.5版は解像力を重視した
設計の、いわゆる「平面マクロ」又は「カリカリマクロ」と
なっていたと思われる。

すると、本レンズもF3.5版なので、「平面マクロ」や
「カリカリマクロ」なのだろうか? という興味がある。
この手の特性のマクロは、被写体を著しく限定する為、
銀塩時代には好きになれず、入手しては手放していたのだが
近年になって、これらの「平面マクロ」も、「使い方次第で
面白い」という感覚に変わってきて、機材環境も変わって
デジタル時代での新しい撮影技法が使えるようになった為、
以前手放したレンズを再購入するケースが増えてきている。
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さて、本ZD35/3.5の描写力だが、予想通り解像感が高い。
ただ、これは「平面マクロ」での設計コンセプト、と言う
よりも、フォーサーズ・システムの設計コンセプトによる
ようにも思えている。

すなわち、フォーサーズシステムは、センサーサイズが
その当時主流であった、APS-C型よりも、さらに小さい。
今回使用機のE-410は、1000万画素と画素数が少ない
のであるが、それでもピクセルピッチは、約4.7μmと
かなり狭い。

たとえば他社機で言えば、同時代の、NIKON D3は、
フルサイズ機で1200万画素、ピクセルピッチは約8.4μm
と、フォーサーズ機の倍程大きく、これを逆に言えば、
レンズの解像力に対して余裕があり、まだまだ画素数も
レンズ性能も、改善の余地がずいぶんとあった訳だ。

ところが、フォーサーズ機は、もうレンズ性能の余裕が無い
従来レンズよりも、よほど高い解像力を持つレンズでないと
すぐに頭打ちしてしまう訳だ。
こういう事情から、フォーサーズ・システムでは、他社に
先駆けて、銀塩時代の一般的なレンズ解像力から、さらに
高い解像力を持たせる為の改良が進んだのであろう。

なお、近年の超高画素一眼レフ、例えばCANON EOS 5Ds系
であると、ピクセルピッチは約4μmとなり、さらなる今後の
画素数向上により、それが2~3μmとなると予想される。

この状況に対応するため、2010年代からレンズメーカーや、
一眼レフメーカーの新鋭レンズも、銀塩時代を遥かに超えた
高解像力仕様となっている。まあ、タイミング的には
それで良いのだが、こうした新鋭レンズの価格がとても
高価である事が現状の大きな課題だ。(本記事のラスト
でも、そうした高解像力仕様のレンズを1本紹介する)

しかし、同じ現代でも、μ4/3機では画素数増加により
既に3μm程度のピクセルピッチとなっていて、これでは
やはり一眼レフ用レンズに先駆けて、解像力の向上を
図らざるを得なかった状況だ。

では、解像力の高いμ4/3機用レンズを、デジタル一眼レフ
に装着すると、より良い結果が得られそうなのではあるが、
残念ながらマウント仕様の差異や、イメージサークルの
関係で、そういう組み合わせは実現できない。

そして、逆に一眼レフ用の旧型(=高解像力では無い)
レンズをμ4/3機に装着する場合は、あまり高画素であったり
カメラ側がローパスレス仕様であったりすると、レンズ性能が
足りないケースもありうる。

基本的には、古いレンズには、同じ時代の機体をあてがうのが、
解像力の問題のみならず、様々な仕様面においても、こういう
アンバランスの回避法になる。

近年、この事が良くわかってきた為、古い時代のカメラを
ますまず処分しずらくなってきてしまった。
加えて、あるレンズを買っても、同じ時代の機体に装着
しないと、まともに動作しないケースも稀にあるからだ。

これは「古い時代のカメラやレンズは、さっさと新しい物に
買い換えて下さい」というメーカーや流通側の理屈かも
知れないが、これも一種の「排他的仕様」であるから、
個人的には、あまり賛同できるものでは無い。

カメラやレンズに詳しくない人は、「そんなに沢山の機材
を買わずに、最新のセットを持っていれば済むのでは?」
と良く言うが、そういう話では全く無い訳だ。
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余談が長くなった・・

本ZD35/3.5は、解像感は高いが、その代償として、
ボケ質破綻が出易い、これらは使用するカメラの(仕様や)
組み合わせにもよるかも知れないが、今回のシステムは
ほぼ同時代(2006~2007年)で組んでいるため、基本的
には問題は無い筈だ。
ともかく、今後においても本ZD35/3.5を様々な他機に
装着してみて、さらに追加の検証をしていく事にしよう。

フォーサーズシステムの終焉により、現代での4/3用レンズ
の中古相場は、かなり安価なので、使いようによっては
コスパが非常に良いと思われる。

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さて、次のシステム
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レンズは、CBC(Computar) M1214-MP2 12mm/f1.4
(中古購入価格 5,000円)(以下、M1214)
カメラは、PENTAX Q7 (1/1.7型機)

2000年代~2010年代に発売と思われる、マシンビジョン
用レンズ。メガピクセル対応、2/3型センサー用MF単焦点
手動絞り(クランプ無し)レンズ。

本レンズのメーカー(ブランド)名は「Computar」であり、
スペルは、Comput「er」ではなく「ar」が正しい。

「特殊レンズ・マニアックス第1回マシンビジョン編」で
既に紹介している為、重複するので今回の説明は最小限
とする。
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マシンビジョン用レンズを使う事が難しいのは、本シリーズ
前回第16回記事の、VS-LD25Nの項でも述べた通りだ。
が、本レンズM1214は、VS-LD25Nよりも、だいぶ使い易い。

その理由は、本M1214は近接専用レンズでは無く
15cm~∞の通常撮影が出来る事と、ボケ質もそこそこ良い
為に、あまり絞り値を、あれこれといじくる必要が無い。
それに関連して、他のマシンビジョンレンズに良くある
ピントリングと絞りのロック(クランプ)機構も無い、

まあ、通常の写真レンズの使用感に、より近いという事だ。
逆に言えば、マシンビジョン用レンズの多くは、写真用
レンズと同じ感覚では全く使えず、「高度」と言うよりも
むしろ「専門的」な撮影技法・技能を要求される。
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それと、母艦であるが、今回は、標準画角を意図して
PENTAX Q7を使用した(12mmx4.6倍=55.2mmの画角)
・・が、旧型だがMF性能に優れるPENTAX Q(2011年)の
方が、画角は狭くなる(66mm相当)が、若干使い易い。

これは、PENTAX Q7(2013年)および、この時代の前後の
各社ミラーレス機の一部では、モニターの自動再生時の
解像度が出ておらず、撮影写真のピントが合っていたか
どうかが良くわからないからだ。この欠陥は、Qではなく
後継機のQ7方に出ているのだが、恐らく東日本大震災
(2011年)による部品調達不足や代替部品等の影響と
推察される。

この震災後の時代(2012~2014年)製のカメラの多く
には、様々な品質不良が存在するケースを沢山知っている。
(私の所有する、この時代の各社のカメラも、7台程が、
様々な「共通症状」を抱えている。
この問題点を「持病」と呼ぶ場合もある)

それらは致命的問題では無いが、例えばスーパキャパシタ
の電荷抜けは、バッテリーを外した充電の度に、内部時計
がリセットされ毎回設定が必要になるのは、面倒なのは
確かだ。また、背面モニターのコーティングの不良は
見た目が悪いし、中古売却時の相場も著しく落としてしまう。
私は機材をあまり売却しないが、逆に、そういう中古品は、
安価であっても、あまり買いたいとは思いにくい。

まあ、震災等の影響で、やむをえない状況とは想像されるが、
それにしても、品質不良を見逃して出荷してしまったり、
その後の時代の後継機で、その欠陥が直ったら、古い機種
での問題点は、メーカー側も流通も「知らん顔」という
スタンスは褒められた話では無い。
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さて、本レンズは「リサイクル店」での購入である。
前記事第16回記事で、「マシンビジョン用レンズは個人で
購入不可、中古流通も無い」と書いたが、ごくごく稀に、
リサイクル店等に置かれているケースもあるという事だ、
でもそれは非常に少ない確率なので、偶然に発見するのを
待つしかない。

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さて、次のシステム
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レンズは、CANON EF 100-200mm/f4.5 A
(中古購入価格 324円)(以下、EF100-200/4.5)
カメラは、CANON EOS 7D (APS-C型機)

購入価格324円(税込み)は誤記では無く、ジャンク品
を購入した為である、購入時点では動作するかどうかが
不明であったが、幸いな事に正常に動作した。
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銀塩EOS発売開始(1987年)後の、比較的早い時期での
1988年に発売されたEFマウント用AF望遠ズーム。
開放F値固定型である。

型番の最後の「A」の文字の意味は不明、初期EFマウント
のレンズには何本かこの型番のものがある。
もしかすると「AF専用」を意味するのかも知れない。
と言うのも、本レンズには、他のCANON EFマウントレンズ
には標準的に装備されているAF/MF切り替えスイッチが
付いていない、またMF距離指標も存在しない。

「では、MFで撮れないのか?」と言うと、そういう事は
無く、後年のUSMレンズによるフルタイムMFのように、
任意の時点で、ヘリコイドを廻してあげればMFが出来る。

ただし、ピントリングのような形状はしていないので、
操作性はあまり良く無い。それと、MFで廻すと「ギー」
という摩擦音がするので、壊れてしまわないかと不安だ。

さらに言えば、AF合焦後のシャッター半押しでAFロックを
している状態でないと実質的にMFは使えない。何故ならば
半押し前にMFで操作をしても、いざシャッターを切ろうと
したら、そこでAFが動作してしまうからだ。

一部の他社機(例:SONY機)や、他の一部のEOS機のように、
シャッターボタンとAFの動作開始を分離してしまう設定が
出来れば良いが、残念ながら今回使用のEOS 7Dでは、
そうした設定は出来ない模様だ。

まあでも、あまりそのあたりの弱点には神経質になる必要も無く
AFプラス「強制フルタイムMF」(汗)で、なんとでも撮れる。
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描写力は思った程は悪くないが、最大の課題は最短撮影距離
の長さである。距離指標も持たない廉価版のレンズなので、
正確な値は不明だが、一説には最短撮影距離1.9mとの事。

実際に被写体に対峙すると、この長さは結構長く、被写体
選択の強い制約を感じる。なお、この弱点を緩和する為、
今回はAPS-C型機のEOS 7Dを使用しているが、それでも
最短撮影距離と撮影倍率の、いずれも不満だ。

ボケ質破綻が頻発するようにEOS 7Dの光学ファインダーでは
感じたが、これは、EOS 7Dに搭載された、EOS初の透過型
スクリーンの特性上の問題点であり、実際には、さほど
ボケ質破綻は出なかった。なお、EOS 7Dのこのファインダー
スクリーンは交換する事が出来ない(EOS 7D MarkⅡは可)

本レンズの購入価格324円(税込みなので実質300円)は
異常なまでに安価であり、かつて購入したレンズの中では
無償譲渡品を除き、お金を払った範囲では最安値であろう。
(注:ごく近年、2018年頃から、リサイクル店では相場が
従前よりも若干下がり、本レンズ購入以降、300円の
ジャンク品レンズも良く見かけるようになって来た)

およそ30年前のレンズではあるが、特に使用上の大きな
問題点は無い。勿論、最短撮影距離の長さやAFオンリーという
弱点はあるし、当然超音波モーターも手ブレ補正も内蔵されて
いないが、いずれも重欠点とは言い難く、また、描写力も
さほど悪くなく、壊滅的に酷い写りでもない。むしろ廉価版
ズームとして見れば写りは優秀な方だ。

要は「古くて不人気」と、ただ、それだけなのであろう。
しかし、似たようなスペックの現代レンズ、例えば
EF70-200/4 L IS USMの中古相場約9万円と比べれば、
実に300分の1の価格である。
勿論、新鋭レンズの方が高付加価値で高性能ではあるの
だろうが、300倍という価格差は、とてつもなく大きい。

例えば、喫茶店のコーヒー1杯15万円、卵1パックが6万円、
地下鉄の初乗り運賃が5万4000円、USJの入場料が237万円、
これらが「300倍の値段の世界」であるが、想像を絶する
世界観であり、値段が300倍も違う、というのはこういう事だ。

「モノの価値とは何か?、高級レンズとは何か?」という
事を、考えさせられる試算である。

なお、1990年代の中古カメラブームの際、どこかのマニア氏
か評論家氏が、「レンズのグラム単価」を計算していた。

それによると、100gあたりの単価が30万円を超える計算
となる「CONTAX Hologon 16mm/f8」(Gマウント)が、
「最もグラム単価の高い」レンズであったそうな。
これを、高級牛肉やら宝石やらの高額商品とグラム単価を
競って解説していたのだが、とても面白い記事であった。

この視点は、遊び心があって極めてユニークで秀逸だ、
それに、中古ブームの際の、過剰な高付加価値化や、
投機層などにより相場が吊り上げられてしまって、
不条理に高価すぎる状態になったレンズを、チクりと
批判する心理もあって、なかなか良く考えられている。

現代のレンズでも「グラム単価」を計算すると面白そう
だが、これを全て調べるのは、極めて大変だ。
90年代のマニア氏は、Good Job!でした・・

でも、これがわかれば「高級レンズの価値とは?」を
再度、考えさせられることにもなる。
私は、コスパの悪いレンズは嫌いだし、購入もしていない、
それが機材購入のコンセプトにもなっているが、今後は
グラム単価の高いレンズも評価点を下げる事にしようか(笑)
(参考:NIKON AF-S NIKKOR 58mm/f1.4G (2013年)が、
100gあたり約5万9000円と単価が高い→後日紹介予定)

さらなる余談だが、前記事(第16回記事)で、現代の中古
カメラ(レンズ)市場が、変化してきている、という話をし、
そこでは、ネットオークション、ネット利用販売、老舗中古店
と書いたのだが、それに加えて、近年では「新勢力」がある。

それは、「PC中古店」「家電量販店」「リサイクル店」
「古書店」等でも、僅かだが中古のカメラやレンズを扱う
店が増えてきているのだ。
これらの店舗では、一般的な中古相場とは連動していない、
つまり相場より高い物も安い物もある、という事だ。
勿論高い物は買う必要は無く、安い場合のみ買えば良い。

その為には、様々なレンズの相場を把握している必要が
あるが、以前は、上級マニアであれば、これは要求される
必須スキルであった。様々な土地に行って中古機材を
買う際、相場より高いか安いかを判断する「目利き」が
必要だからだ。

銀塩時代の末期の2000年頃に、上級マニア10人程での
「韓国買出しツアー」に参加した事がある。韓国の中古
市場では、値札が無く、カメラやレンズの価格は、個々に
店主と交渉する必要がある(注:筆談で値段を書けば十分)
だが、上級マニア達は、自分が欲しい機材の中古相場は
全て暗記している為、日本の相場より安い金額を「ウォン」
で紙に書いて交渉すれば良かった訳だ。

まあでも、今時であれば、スマホ等を用いて、その場で
WEB検索をして、世の中の相場を知る事は可能だ。
例えば本レンズEF100-200であれば、4000~5000円
程度の相場である事がわかる。レンズキャップ等が無い
B級品扱いとしても、3000円程度は下回らないであろう。

それが300円であれば、これはもう「買い」だ。
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ただ、AF専用である事は見た目からわかるかも知れないが
距離指標が無いので、最短撮影距離が長い事は、「目利き」
ではわからない、これは知識か、又は経験則による「勘」
で判断するしかない。
(例:同時代の同スペックのMINOLTA AF100-200/4.5
は、最短撮影距離1.9mと、本レンズと同等だ)


加えて、ここまでのジャンク品だと正常動作する保証も
無い、ここはレンズ各部の動きを見て、その感触で
壊れているか否かを判断するしかなく、これも高度な
「目利き」である。


後は価値感覚である、仮にAFが壊れていても、MFで
撮れば良いし、絞りが動かなくても開放で撮れば良い、
そうした場合に、価格が妥当か否か?である。
まあ、324円であれば、仮に、いずれかの不良があっても
許容範囲であろう・・

そういう訳で、リサイクル店などの「中古新勢力」は
魅力的だ、私は近年ではそういう店舗も定期的に巡る事に
している。この手法は、私の他でも、ここ2~3年前位から
これを実践する中上級マニア層等も増えている模様だ。

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では、今回ラストのシステム
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レンズは、COSINA Carl Zeiss Milvus 50mm/f1.4 ZF2
(中古購入価格 85,000円)(以下、Milvus50/1.4)
カメラは、NIKON Df (フルサイズ機)

2016年に発売の高解像力仕様MF大口径標準レンズ。
勿論フルサイズ対応で、「ZF2」仕様はCPU内蔵であるから
全てのNIKONデジタル一眼レフでレンズ情報(焦点距離等)
手動設定不要で使用する事が出来る他、通常の絞り環搭載
でもあるから、マウントアダプターで、殆どの他社機体で
使用できる。
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さて、「カール・ツァイス」と言ってもコシナ製だ。
まあ、現代ではツァイス社は、自社では一眼レフや
ミラーレス機用のレンズを製造しておらず、その全てが
日本製と思われる。一部 Touit等は、国内での製造メーカー
名が非公開であるが、まあどうせ国内メーカーと言っても
製造業の協業、分業体制が進化している現代であるから
製造メーカーの差異は、事実上意味が無い。

だとすると「カール・ツァイスだから良く写る」等という
論理はまるで成り立たず、今時ブランド名を気にするのは
ビギナー層か、それを対象とした「投機層」だけだ。

現代のコシナ社は設計製造技術に定評のある企業である、
各種フォクトレンダーやツァイスブランドのレンズは
いずれも高性能である事で知られている。

では、コスパが悪いと思われるツァイスブランドを
何故購入するのか? フォクトレンダーでも十分だろう?
というのは当然の疑問なのだが、2000年代のフォクトは
安価なレンズも多かったのが、近年のフォクトは高価だ。

例えば2018年発売のフォクトレンダー・マクロアポランター
110mm/f2.5は、本Milvus50/1.4と同等の定価(約15万円)
であり、つまり、「フォクトもツァイスも、もう一緒」
という位に、コスパは悪化している。

その理由は、勿論、カメラ・レンズ市場が縮退している
からであり、「高付加価値化」商品を出して、利益を稼が
ないと、メーカー側がやっていけない。
ブランド銘を欲しがるニーズを持つユーザー層に、高額な
商品を売れば、まあ、それで良いという事となる。

だが、コスパを信条とするユーザーならば、そういう製品には
手を出さない事が賢明だ。

しかし、コスパとは、価格だけではなくて、パフォーマンス
も勿論重要な要素だ。

本Milvus50/1.4は、大口径標準としては平凡なスペック
ながら、旧来のプラナー型などの「変形ガウスタイプ」
とはまるで異なる設計である。

レンズ構成は8群10枚、ツァイスで言う「ディスタゴン」
型であり、広角レンズでバックフォーカスを伸ばす
「レトロフォーカス」型(逆望遠型)の設計である。

これは興味深い、なにせ、変形ガウス型の標準レンズは
1960年代から現代に至る物を、数十本を所有していて、
もう「どれを買っても殆ど同じ」という事で飽きが来ていた。

が、例えば、本シリーズ第2回記事や、デジタル一眼レフ
第16回記事で紹介の「SIGMA ART 50mm/f1.4」のような
プラナー型では無い、全く新設計の新標準レンズには
そこそこインパクトがあって、気にいっていた訳だ。

本Milvus 50/1.4も、お気に入りのレンズになりうるか?
そして、中古相場は安目のものを買ったとは言え、依然
標準レンズとしては、過去製品の数倍から十数倍も
高価だ、この価格差をどう見るか?もポイントとなる。

確かに解像感は高い、でもこれは装着するカメラにも
よりけりだ、特に今回使用のNIKON Dfは、銀塩時代の
レンズ性能に合わせて設計されたカメラであるから、
こうした高解像力仕様のレンズとの組み合わせは
あまり適切とは言い難い。

Milvus50/1.4は、ボケ質も悪くない、ボケ質破綻も出にくい、
コントラストは非常に高く、ここは長所だ。
最短撮影距離は45cmとまあ普通である。
MF操作性も悪く無い、ただし重量は800gオーバーと重い。

ハンドリング性能にやや劣るが、他の描写力や操作性
についての不満は無い。
あえて言うならば逆光耐性にやや劣る所があるので
光線状況には留意して撮影する必要がある。
出来ればフードを常用するのが良いであろう。

また、ディスタゴン型構成のレンズはピントのピークが
分かり難く、MFに若干の難を抱えるが、重欠点では無い。
(いざとなれば、MFアシスト機能を持つミラーレス機で
使用する事は、本レンズの仕様上、とても容易だ)

コスパ面も、この性能であれば、まあ、例えば(非常に
優秀な)SIGMA ART 50/1.4と同等と思えば、そちらの
中古相場が約7万円であるから、本レンズの8万円台とは
大差がない。(注:購入時点での相場)
つまり、十分に高性能なレンズであり、加えて、コスパも
問題になる程には酷いものでは無いという事だ。

しかし、例えば、TAMRON SP45/1.8(本シリーズ第7回)
や PENTAX-DA★55/1.4(ミラーレス名玉編第3位)は
それぞれ、本Milvus 50/1.4やSIGMA ART50/1.4に
見劣りしない高い描写力を持ちながら、中古は4万円
前後と、およそ半額近くも安価である。
この価格差をどう見るかは微妙であり、ツァイスの
ブランド・バリューを加味したとしても、実用上では、
中古4万円クラスの超高性能レンズを2本買った方が、
お買い得なような気もする。
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本Milvus50/1.4の総括については、現時点では微妙な
ところだ。まだ本レンズで数千枚程度しか撮っていない。
もっと試写を重ねないと、本レンズの真の実力値や
価値は見えてこないかも知れない。

もうしばらく使い続け、研究が進んだ段階で、必要で
あれば、また続編や補足編で紹介しよう。

なお、コシナ・ツァイスには、さらなる上位機種が
存在し、それは「Otus 55mm/f1.4」であり、そちらの
定価は、なんと税込み45万円越えだ。
ここまで高価になると、「たいした事が無い」などと
評価する事は一切許されず「さすがツァイス、完璧な
写りだ」としか(たとえ専門家でも)評価の術が無い。

で、本Milvus50/1.4は、その下位機種であるから、
「これが気に入らないのであれば、Otusを買えば?」
等と、他者に「間違った論理」を組み立てられてしまう
危険性すらもある。
レンズ評価は、あくまでコスパである、いくら性能が
良くても、それに見合わない価格のものは、価値が低い。

ただ、本当に優れた性能であれば、価格が高くでも
そこは構わない。しかし、性能をどう評価するかは
利用者や評価者のスキルや、撮影ジャンルや技法にも
影響が強い事であろう。
例えば、85mmレンズだからといって人物撮影だけをして
評価しても意味が無い。人物をどう撮りたいかによっても
評価は変わるだろうし、古今東西、人物撮影に向くレンズは、
高価な大口径85mmではなくても、いくらでも存在している。

そういう視点では、50mmレンズの評価は難しい。
評価者によって、非常に様々な撮り方や被写体の選び方
があるからだ。だから、そう簡単には答えは出て来ない。
風景から小物から人物、夜景、スナップ、草花、動物等を、
何年も何年も様々な被写体を撮ってみて、やっとその評価が
出来ると言っても過言では無いだろう。
いくら専門的な評論家だったとしても、標準レンズを1週間や
そこら借りて撮ったところで、評価が出来る筈も無く、
結果的にレビュー記事等は信用できない、あくまでユーザーが
自分の目や感覚で評価するしか無い訳だ。

で、ポイントは、そのように「何年も使いたい気にさせて
くれるかどうか?」というあたりだ。
本Milvus50/1.4は、そういう点では、その資格は十分に
あると予想はできる。

例えば、京セラ・CONTAXのRTSプラナー50mm/f1.4は、
1975年の発売だが、発売後40年を超えた現代でも
十分に「実用的に使う気になる」レンズである。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
c0032138_16000428.jpg
本Milvus50/1.4が、40年後の2060年になっても、
まだ使う気になれるかどうか?(まあ、私自身が
使わないまでも、後世に引き継げるかどうか?)
そこが、真の名玉かどうかを判断する、ひとつの指標に
なる事であろう・・

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さて、今回の第17回記事は、ここ迄とし、次回記事に続く。


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