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【玄人専科】匠の写真用語辞典(18)補足編~システム編Part4

本シリーズでは、写真撮影に係わる用語で、主に本ブログの
範囲でのみ使われたり、あまり一般的では無い専門用語を
解説している。ちなみに、本ブログでは「写真や光学の
世界では用語統一が出来ていない」と、いつも憂いている
状況だが、新技術や新概念が次々と出てくるのは当然だ、
しかし、その際に、ちゃんと「用語の定義」が出来て居ない
事が問題点であり、曖昧な定義や、明らかに間違った用語が
そのまま広まってしまう事は、大きな課題だと思っている。
だから、新用語を作る場合は、それと同時に、しっかり定義
も決める事が肝要だ、


今回からは「補足編」として、第17回記事までの本編では
紹介しそびれていた「小ネタ」や「新ネタ」等を取り上げる。
なお、この「補足編」は、とりあえずは十数回続く予定だが、
新ネタはどんどん増えていく為、不定期長期連載としておく。
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今回第18回目は、補足編~システム編Part4という事で、
カメラやレンズ関連の用語をとりあげる。
なお、補足編は基本的に「小ネタ」をメインとする為、
項目(用語)数は多目に、個々の解説は若干少な目とする。

<機器・システム> Part 4

★アサイナブル(ダイヤル)
 やや専門的な一般的用語。

 Assignableとは「割り当てが可能」と言う意味だ。
 カメラの場合では、デジタル(電子)ダイヤルや、
 Fnボタン等において、その機能の設定が固定では無く、
 ユーザーの利用状況に応じて、ユーザー自身がこれらの
 ダイヤルやボタン等に任意の設定項目を割り振れる機能を
 指す。
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 上写真は、デジタルコンパクト機、FUJIFILM XQ1(2013年)
 の「アサイナブル・ダイヤル」である。

 このXQ1の場合、レンズ根元の無限回転式電子ダイヤルを
「コントロールリング」と呼び、ここに、絞り値、露出補正、
 ISO感度、ホワイトバランス、連写モード、ズーム焦点距離、
 フィルムシミュレーションの設定機能のいずれかをアサイン
(割り当て)可能である。
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 この機種以外にも、近年のデジタル機全般で、このような
 アサイナブルダイヤルの機能を持つカメラが増えてきている。

 ところで、XQ1の連写モード設定は、高速、低速、ブラケット、
 単写等、一般的なメニューから変更する内容と同じなのだが、
 もしこれが「秒あたりの連写コマ数の任意変更機能」であれば、
 そういう機能は高速連写一眼レフ(CANON EOS 7D MarkⅡや
 NIKON D500等)での業務撮影用途では非常に役に立つであろう
 と思われる。が、残念ながら今のところ連写コマ数(速度)を
 連写中に変更可能な操作系を持つカメラは存在しない模様だ。
(注:このXQ1やPENTAX KPでも、連写速度のアサインは可能だが
 連写中にそれらを廻しても、連写速度は変更されない)

 この例のような「実用的な操作系」の概念が、いつまでも
 発達しないのは残念な話だ。
 
 それから、XQ1のコントロールリングを始めとする、様々な
 アサイナブルダイヤルは、いずれも通常は単一の機能しか
 アサインできない。
 例えばこれを「動的アサイナブルダイヤル」にすれば、
 きっと非常に使いやすいカメラになるだろう。

 これはすなわち、複数の機能をアサインして順次それらを
 呼び出せるように、操作系を改良する、という意味だ。
(注:XQ1で「スタンダード」を選択すると、若干の動的要素を
 持つのだが、一般操作での露出補正ボタン等と併用する
 必要がある為、あまり効率化はされ無い)

 簡単な例を挙げれば、コントロールリングに複数の機能を
 以下のようにアサインする。
 1番機能、手動ズーム
 2番機能、露出補正
 3番機能、ISO感度
 ・・まあこれくらいで良いであろう、あまり多くても
 逆に使いにくくなる。
 で、これらの機能は、最後に使用した機能をメモリーするか、
 又は常に1番から開始するかは、カスタムファンクション等
 で設定できれば良い。

 機能の選択は単一ボタンの場合は循環型で1→2→3→1→ の
 ように変化し、2ボタン(シーソースイッチや方向キー)の
 場合は、どちら向きにも順次機能を呼び出せるようになる。

 さて、これをどのように使うか?と言えば、まず1番の
 手動ズームで画角を調整、ここで露出補正が必要ならば  
 右手のスイッチ等で2番機能を呼び出して、左手は同じ
 コントロールリングを触ったまま、シームレスに露出補正
 操作に移行できる。
 この時、シャッター速度に問題があれば(高速シャッター
 限界を超える、または、手ブレ限界速度を下回る)、さらに
 3番機能のISO感度調整を呼び出して、それを調整すればよい。

 この操作系であれば、無限回転式ダイヤルであるコントロール
 リングの特徴を最大に活かせるし、ほとんど右手も左手も
 指動線を固定したままで、カメラ設定を効率的かつ合理的に
 行える。

 まあ、本来こういう機能が欲しいのであるが、残念ながら
 こうした利用法はビギナー層には絶対に無理であり、
 限られた中上級者のみが使いこなせるという感じであろう。
 ・・と言うのも、ここに書いた操作系に近いレベルのものは、
 SONY NEX-7(2012)での、トライ(トリプル)ダイヤル+
 ナビゲーション・ボタンにおいて、既に「動的UI」が実装
 されていた。で、その機能はカスタマイズを行う事で
 さらに使いやすい操作系となるが、実際のNEX-7ユーザーで
 それをカスタマイズしている、またはそもそも動的にこれを
 使用しているという話は、まず聞いた事が無い。
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 まあつまり「複雑すぎる」という風に思われていたのだろう。
 結果的にNEX-7は好評価も得られず、続く後継機α7シリーズや
 α6000系列では、機能を固定した「静的UI」にダウングレード
 されてしまったのだ。
(他の同様な例として、1990年代前半のPENTAX銀塩AF一眼の
 Zシリーズでの「ハイパー操作系」も、ユーザーに理解されず 
 1990年代後半のMZシリーズでは安易な操作系に落とされた。
 だが、2000年代でのPENTAXデジタル一眼でハイパー操作系は
 復活している。ユーザー層のレベルが上がったという事か?
 あるいは、それを「付加価値」と考えての実装なのか?)

 で、つまりNEX-7はユーザーの誰も使いこなせかった、という
 お粗末な話であり、せっかくの優れた操作系設計思想が
 台無しだ。これはもう全面的にユーザー側の責任だろう。
 そもそもNEX-7クラスの高度なカメラは、初級中級層が安易に
 使うカメラでは無い、だから上級者向けの操作系が搭載されて
 いる事は、カメラの設計コンセプト上、何ら間違いでは無い。

 ただ、この時代2010年代前半から「高級機をビギナー層が
 欲しがる」という風潮が出てしまったため、製品コンセプトが
 正しくても、マーケティング的コンセプトは間違っていた訳だ。

 ちなみにFUJI XQ1も安価なコンパクト機ながら中上級者向けの
 高機能カメラである、ビギナー層がフルオートのモードでしか
 撮らないのであれば、この機種を使う意味が全く無い。
 
 コンパクトやミラーレス機に限らず、デジタル一眼レフでも、
 高価な上級機種を、ビギナー層がありがたがって買う事が
 最大の課題なのだろう。複雑な機能は、使いこなせない事が
 明白であるから、平易だが非効率的な操作系仕様にしたり、
 ロック機構等の様々な余計な安全対策が必要になってしまう。

 こういう事がカメラ設計技術や撮影技法の発展を妨げて
 しまうのだ。操作系レベルの低いカメラは決して「使い易い」
 カメラでは無い事は言うまでも無い。
 そして、フルオートでしか撮らないならば、高機能を持つ
 カメラなど、そもそも不要ではないか。
 
 まあしかし、そういう風に高い機種にお金を使うビギナー層が
 多数居る事で、現代の(縮退した)カメラ市場が、なんとか
 支えられている事も事実だ。

 それにしても、メーカー側においても、操作系に優れた
 使い易いカメラを「作りたくても作れない」という状況は、
 なんとも残念で面白く無い話だ・・

★ダイヤルとダイアル
 一般用語。
 
 円形、円盤型の回転式の操作子(入力装置)の総称。
 基本的には、あくまで「操作子」であるが、古くから
 一般的な機器であり、稀に円形の表示装置についても
 ダイヤルと呼ばれる場合もある(メーターや文字盤等)
 
 英語では、Dialであるが、日本語の読みは「ダイヤル」が
 普通であるが。稀に本来の英語の読みに近い「ダイアル」も
 使われる。(自身で、どちらかに統一しておく事が望ましい)

★プラスチッキー
 やや一般的な用語。

「プラスチック製で安っぽい」というネガティブな意味で
 使われる一般用語。
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 カメラにおいては、主に銀塩AF時代からの各社の普及機等に
 おいて、それまでの銀塩MF高級機が金属製ボディ(外装)等で
 高級感のある作りだったのに対して、プラスチック製等で
「がっかりする」「所有満足度が低い」等の否定的な意味で
 使われる事が多い。

★排他的仕様
 独自用語。

 例えば、近年のデジタルカメラ(一眼レフ、ミラーレス)に
 おいて、そのカメラに同一メーカー製のレンズを装着すれば
 全ての機能が動作するが、他社製同マウントレンズを装着
 したり、マウントアダプターを使った際に(AFはともかく)
 多数の基本機能や便利機能が使えなくなってしまう事。
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 具体的には、「収差補正」「高精度・高速AF」
「フォーカスエイド」「露出の正しさ(精度)」などがある。
(また、仮に便利機能が動いたとしても、連写速度が著しく
 低下する等の性能制限が生じる場合もある)

 このように、同じメーカーのカメラとレンズでシステムを
 組まない限り、最高の性能が発揮できないような仕様と
 している事を、本ブログでは「排他的仕様」と呼ぶ。

 これは自社純正のシステムに高い付加価値をつけ、他メーカー
 の製品利用を排除するというビジネス的な戦略ではあるが・・

 PCやIT等の新しい技術分野では、できるだけ他のシステム
 との互換性を高める為の「汎用化思想」により、技術の発展を
 促す方向性を取る事が近年の常識であるので、カメラ界での
「排他的思想」は、時代に逆行するイメージがあり、それが
 行き過ぎたケースにおいては、個人的には「賛同できる戦略
 では無い」と思っている。
 
 そうした機器の具体例はあまり書く気はしないが、それぞれ
 の機器のオーナーであれば、思い当たる節は多々あるだろう。

★三悪(三重苦)、重厚長大
 独自用語。

 高性能なカメラやレンズは確かに魅力的な商品ではあるが、
 必ずしも長所ばかりとは限らない。
 本ブログで、こうした高性能機器の問題点を挙げる時、
「三悪」または「三重苦」という表現を良く使う。
 具体的には「大きく、重く、高価である」という内容だ。
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 または「重厚長大」と呼ぶ事もあるが、「重厚長大」には
 あまりネガティブな意味は無く、単に製鉄や造船等の重工業
 分野の製品や業種を指す事も多い。

「三悪」の場合は、意図的にネガティブ(否定的)な意味を
 持って書いている。これについてカメラやレンズにおいては、
 基本的には高性能な機材である事が望ましい、特に業務用途
 撮影では絶対的に高性能機材が必須であるのだが、では何故
 その事が良く無いケースがあるのか?という点では・・

 趣味撮影(散歩撮影とか旅行での撮影など)では、大きく
 重いと、その機材を持ち出す事がストレスになってしまい
 あまり楽しめないからである。また高価な機材は、破損、故障、
 盗難等のリスクがあると厳しい為、これもまたフットワークや
 ハンドリング、行動範囲等を損ねてしまう原因となる。

 そうした趣味撮影の場合での常用機材は、すなわち、小さく、
 軽く、安価な方が望ましい訳だ。
 
 まあ、中上級者やマニア層であれば、撮影目的に応じて
 複数の用途の異なるカメラやレンズ群を多数保有している
 事が当然であるから、こういう事は言わずもがなである。

 だから「三悪」は、初級者層のみに向けての説明に過ぎない。
(つまり、近年の初級者層が、最初から高価な高級機材を
 欲しがる傾向がとても強過ぎる事に対する警鐘の意味だ)

★露出安全機構
 やや独自用語。

 一眼レフ等のAE(自動露出)機構、特に絞り優先または
 シャッター優先において、ユーザーが優先的に設定した
 値に対し、もう1つの値が、カメラの性能上得られない場合
 がある。

 たとえば、絞り優先AEでF1.4に設定したが、その時の
 シャッター速度が1/8000秒となった。しかし、そのカメラ
 の最高シャッター速度が1/4000秒である場合、これでは
 露出オーバーになる。

 そこで、ユーザーの設定値を安全な範囲までシフトし、
 F2と1/4000秒等の組み合わせを自動で得る機能の事だ。

 古くはMF一眼レフがAE(自動露出)化された1970年代
 より、一部の機種(MINOLTA XDやMAMIYA ZE-X)に
 搭載された機能である。
 その当時は、最高シャッター速度が1/1000秒程度と
 貧弱な性能であり、こうした機構の必要性が高かった。

 その後、AF/デジタル時代においても一部のカメラには搭載
 されている機能だ。
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 上は近年のEOSでの同様な効果を得る「セイフィティシフト」
 機能である。 
 この他、PENTAXの一眼レフ等にも搭載されている。

 まあ、現代のデジタル機においては、絞り優先AEにおいて、
 高速シャッター(1/8000秒以上、電子シャッター可)と
 AUTO-ISOでの低感度(50以下)の両者が搭載されていれば
 この露出安全機構が無くても、殆どのケースで対応可能だと
 思われるが、AUTO-ISOで100未満まで下がる機種は現代は皆無で、
 そして機械シャッターと電子シャッターがシームレスに自動で
 切り替わる機種も、一部のミラーレス機等、非常に稀である。

★トリガーワインダー
 マニア用語。

 銀塩カメラでは、撮影後のフィルムの1枚づつの巻上げ(給走)
(およびシャッターチャージ)が必須だが、これをモーターで
 自動で行う(ワインダー/モータードライブ)時代(1980年代~)
 より以前では、機械式レバー又は機械式ダイヤルでフィルムを
 手動で巻き上げていた。

 この時代以降でも、レンズ付きフィルム(写ルンです等)
 といった簡素な構造のカメラでは、ダイヤルによる手動
 巻き上げ方式であった。

 手動巻上げの時代、少々変わった巻上げ方式としては、
 まず、旧フォクトレンダー社のヴィテッサ(ビテッサ)
(1950年代)がある、これは、カメラ上部に煙突のような
 長い巻上げ機構があり、これを「プランジャー」と呼ぶ。

 マニアックな格好良いカメラだが、現代では中古市場でも、
 あまり見かける事も無いと思われる。が、近年のTVアニメ
「有頂天家族2」では、オープニングシーンと本編内で1回、
 主人公(人間に化けた狸である)が、このヴィテッサを
 使って撮影、巻き上げをしているシーンが出て来る。
(欲しかったカメラだが、残念ながら所有の機会に恵まれず。
 ごく最近、京都の老舗中古専門店で見かけ、あまり高価では
 なかったが、「今更銀塩機はなぁ・・」と思って見送った)

 後年、フォクトレンダーのブランドを取得した日本の
 コシナ社では、「BESSA-T」(2001年)等において、この
「プランジャー」ではないものの、「トリガーワインダー」
 という巻上げ機構が、オプション品として存在していた。
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 上写真のレバー(左側)を握るとフィルム巻上げが出来る、
 ボトムグリップ(右側)と併用すると、意外に使いやすく
 かつ速い。慣れると秒2~3コマ程度の連続撮影も可能で、
 下手な銀塩初級一眼レフやコンパクト機のワインダーよりも
 速いくらいだ。

 この機構は「BESSA-T」(への装着)が初めてではなく、
 古くは、バルナック・ライカ(1930年代~)やM型ライカ
(1950年代~)用のオプション品「Leicavit」(ライカビット)
 が存在していたし、CANON キヤノネット(1960年代)系でも
 同じでは無いが、似たような下部巻上げ機構が存在している。
(キヤノネットは所有していた事があるが、トリガーワインダー
 系程の速写性は得られない)

 現代、デジタル時代では、勿論フィルムを巻き上げる必要は
 無い為、このような機構を搭載している機種は皆無であるが、
 例外的に、セイコーエプソン社が2004年~2014年頃に発売
 していた、デジタル・レンジファインダー機 R-D1シリーズ
 では、銀塩機同様の巻上げ機構のギミックが搭載されていた。
(ただし、一般的な巻き上げレバー型式であり、トリガー
 ワインダー型式では無い)
(追記:近年に発売された、ヤシカブランドでのデジタル・
 トイカメラにも巻き上げ機構が付いている模様だ→未所有)

★レリーズタイムラグ
 一般用語。

 シャッターボタン(レリーズボタン)を押してから、実際に
 撮影が行われるまでの時間、または時間差(タイムラグ)の
 事。勿論これは出来るだけ速い(短い)方が望ましい。
 シャッターを切ってからすぐに撮影できないと、動体撮影等
 では狙った構図が得られないとか、色々と問題なのだ。

 銀塩の「写ルンです」のように、シャッターボタンが
 機械式シャッターに直結しているような簡単な機構であれば
 この時間差は少ないのだが、一眼レフではAE,AF,ミラー駆動
 等の複雑な準備動作が必要な為、これが遅い機種も多い。
 またコンパクト機ではさらに遅く、数百mS(コンマ何秒)も
 遅れる機種もある。

 銀塩時代の一眼レフでの最速はNIKON F2(1971年)での 
 28mS(ミリ秒)
 AFおよびデジタル一眼では、NIKON D2H (2003年)の
 37mSが最速であると言われている。

(銀塩一眼第2回記事、デジタル一眼第1回記事参照)
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 ただし、固定ミラー(ペリクルミラー、後述)の特殊機が
 存在する。具体的には、EOS RT(1989)の8mS、および
 EOS-1N RS (1995)の6mSが例外的に速い。
(銀塩一眼第16回記事)


 一眼レフがAEやAF等、様々に多機能化していくと、なかなか
 レリーズタイムラグを短くする事が難しくなって来ている。
 現代のデジタル一眼レフでは、例えば高速連写機の
 EOS 7D MarkⅡ(2014)、NIKON D500(2016)等が、
 いずれも 50mSの公称値であり、まあ、そこそこ速い。

(デジタル一眼第19回、第20回記事参照)
 
 しかしながら、ミラー機構を持たないミラーレス機では
 さすがに速く、多くは仕様上では非公開だが、概ね20mS
 前後というデータもあり、これはおよそどの時代の一般的な
 一眼レフよりも短いレリーズタイムラグだ。

 もっとも、いくらレリーズタイムラグが短いカメラを
 使ったとしても、撮影者の反応速度の方が重要であり、
 動体撮影等においては、自分が想定している構図の、ちゃんと
 その一瞬でシャッターを切れるかどうかが課題であろう。


(参考:人間が、陸上競技でスタートの号砲を聞いてから
 体が反応する速度は200mSあたりが平均値と聞く。
 ただし「今、この瞬間でシャッターを切る」という動作は
 何かに反応している訳では無いので、もっと高速であろう)

 この練習の為には、例えば徒歩でカメラを持ち歩いている際、
 電車の踏切待ちをした場合、電車が通る構図を想定して、
 その一瞬でシャッターを切る練習をする事が、かなり役に立つ。
 私の場合、踏切に引っかかったら、イライラせずにカメラを
 取り出して、そのカメラのレリーズタイムラグを含めて、
 ピッタリの構図を狙う練習を常に行っている。
  
 なお「そんな練習をせずに連写をすれば良いのでは?」とは
 思うなかれ、例えばデジタル一眼レフで最速級の秒10コマ
 連写においても、時速40km程度で動く被写体は、1秒間に
 10mも進んでしまい、秒10コマでも1mも位置が異なるのだ。
 勿論、時速100km以上の高速被写体では、1秒に動く距離は
 数十mにも及ぶ。あるいはスポーツ撮影における、ある一瞬
(例:野球、テニスなどでの打撃やインパクトの瞬間等)では
 いくら機械シャッター高速連写機でも、その一瞬にハマる
 確率は極めて低い。(下のテニスの写真は、タイムラグを
 意識した単写気味での中速連写撮影)
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 ただ、ごく近年のミラーレス機+電子シャッター、あるいは
 4K動画エンジンを応用した秒数十コマの超高速連写機では、
 こうしたある一瞬を撮れる確率も高い。だから本当にそうした
 一瞬の撮影が必要な場合は、カメラの連写性能に頼るのも
 良いであろう。ただし、電子シャッターでは、そのカメラの
 構造によっては、場合によりローリングシャッター歪みが出る
 危険性もあるし、被写体が電子ディスプレイやモニター上の
 時は、走査線の周期との干渉で縞が写ってしまう時もある。

 また、趣味撮影の範囲では、秒数十コマを常用してで何千枚
 もの写真を撮ったら、後で選別や編集が厳しい(やりたくない)
 事であろう。

 だからまあ、結局のところ、自分が望むある瞬間で、できるだけ
 シャッターを確実に切れるようなスキル(技能)を身につけ
 なくてはならない訳だ。特にビギナー層の場合は動体の撮影を
 苦手とするケースが非常に多い。が、それでは、例えば家族や
 友人の出る運動会などの撮影で、上手く撮れずに困る事だろう。
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 それをカメラのせい(性能が低い)と思うビギナーも多いの
 だろうが、このケースは100%撮り手側の問題だ。
 例えばMFで、単写で、レリーズタイムラグも意識して
 一発必中を狙えば、カメラ側の性能差は全く無関係である。

(上の運動会写真は、10数年前に古いデジタル一眼レフで、
 MFの単写で撮影)

 安易にカメラ側のAFやドライブ性能に頼らない方が良い、
 という事であり、まずはスキル(技能)を鍛える事だ。
 これは経験がまず必要、できるだけ沢山の動体撮影を
 こなしていく事が、時間はかかるが確実な方法論だ。

 また、知識も勿論必要だ、特にビギナー層が
「ワタシのカメラはシャッターが遅い」などと言うケースは、
 いったい何の話をしているのか? まったく不明である。
 技能よりも前に、カメラの基本知識を学ぶべきかも知れない。

★ ペリクルミラー
 やや専門的な一般用語。

 上記「レリーズタイムラグ」をできるだけ減らすような
 コンセプトで考え出された機構である。
 一眼レフでは必須の「ミラー」を半透明の「ペリクルミラー」
 として、その駆動動作を不要とする仕組みだ。

 古くは、CANONペリックス」(1964年)や、業務用特殊仕様機
「CANON New F-1ハイスピードモーター」(1984年)で採用例が
 あり、一般機では、EOS RT(1989年、銀塩一眼第16回記事)
 が最初だ(下写真)
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 また、2010年以降のSONY αフタケタ一眼レフ機でも
「トランスルーセント」ミラーという同様な機構が採用された。
(デジタル一眼第13回、第18回記事参照)

 これらの機構は、 レリーズライムラグを減らせる他、副次的に
 *ミラー駆動が不要で、連写速度が速くなる
 *EVF型構造とすれば、ミラーレス機のような長所が得れる
(SONY αフタケタ機の場合:ファインダー像が一定の明るさで
 暗くならない、露出補正やエフェクト等の効果が撮影前に
 確認できる、ピーキング等のMFアシスト機能が使える、
 メニュー設定がファインダー内のみで可能、等)
 ・・といったメリットが得られる。

 まあ、あまり一般的な機構では無いのだが、メリットは大きい。
 もしデジタル一眼レフが、将来別の形態に進化するとすれば、
 この手法(機構)を採用するのも悪く無いかも知れない。
(ただ、その方向性を狙うと、恐らく、皆、ミラーレス機に
 なってしまうのだろうが・・)

★撮影可能枚数
 一般用語。

 デジタルカメラ仕様には、CIPA規格(カメラ映像機器工業会
 規格)の撮影可能枚数(バッテリーの持ち)が載っている。
 
 だが、これは様々な撮影状況(例:フラッシュを何枚かに
 1枚か焚く等)を混在した場合での撮影可能枚数である。

 よって、フラッシュを使わず、撮影画像のモニター再生も
 殆ど使わず、手ブレ補正機能も、ライブビューも使わない。
 さらには、撮影後は速やかに(こまめに)電源をOFF。
 カメラの設定も、メニューを選ぶ操作等をモタモタしない。
 加えて、カメラを構えて(ファインダーを覗いて)からは、
 あれこれ悩まずに、数秒以内にシャッターを切る、連写をする。
 下手をすればAFも使わず、適宜MFを混ぜるかMF主体での撮影。

 このように、徹底的にエコ(省バッテリー)な撮影技法を
 用いれば、仕様書に記載の撮影可能枚数の最低5~6倍
 程度は撮影する事が可能である。

(先日、イベント会場で、たまたま私と同じカメラを使っていた
 中級層と思われるアマチュアカメラマンと話をしていたが、
 私が「このカメラは、6000枚程度は撮れる」と言った所
「ウソでしょう? 1000枚くらいしか撮れませんよ!」と
 反論された。だが、実際にそのカメラは、私が使えば、
 バッテリー交換無しで6000枚は確実に撮れる。すなわち、
 撮影可能枚数は利用者の使用法や技能に依存する、と言う事だ)

★Cナシ
 マニアおよび流通業界用語。
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 ニコンのオールドレンズ、例えば銀塩一眼レフ用の
 ニッコール銘の1960年代の物は単層(モノ)コーテイングで
 あるが、同じニッコールでも1970年代からは、多層(マルチ)
 コーティング化している。

 この多層コートタイプのレンズは、NIKKOR-? C AUTO
 という型番となっている。ここで?は、レンズ枚数を表す
 アルファベット1文字であり、Hであればヘキサだから6枚、
 Sであればセプタで7枚、Oはオクトで8枚構成である。
 
 で、Cの文字は、多層コートを示す(コーテイングのCか?)
 1960年代の単層コートの旧型とは同じ型番で、Cの文字の
 有無だけの違いなので、マニアの間、あるいは中古流通業界
 においては、単層コート版旧型ニッコールレンズを区別して
「Cナシ」と呼ぶ事が普通である。

 単層コートレンズはレンズ(の透過光)が黄色味がかって
 見える場合が多いが、これは恐らく単層コートが理由では
 無く、一部に屈折率の高い重フリント等のガラス素材を
 使っていたからではなかろうか?
 その手のガラスを使ったレンズは青や紫などの短波長の透過率
 が良く無い為、若干黄色に見えやすく、加えてコーティングの
 膜厚を薄くして短波長の透過率を高めようとすると、この時の
 コーティングの色(反射光)は琥珀色がかって見える模様だ。
 
 で、これらの黄色く見えるレンズは、現代の発色が良い
 デジタル機で使う上では、カラーバランスにおいても
 殆ど問題は無いと私は思っているのだが、銀塩時代には
「黄色く見える=黄色く写る」と、ユーザー層は(誤解して)
 敬遠した。

 なので、それらのレンズは(安全を期して)主に白黒フィルム
 で、マニア層は使っていた。
 この風潮が、少しだけ誇張されて、マニアや中古流通での
 常識となり、「Cの付くニッコールはカラーフィルム用、
 Cナシはカラーでは使えず、モノクロフィルム専用」という
 風に(間違った)認識が広まった。
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c0032138_19371892.jpg
 前述のように、現代機を使うならば「Cナシ」のニッコール
 でカラー撮影しても、ほとんど気にならない事であろう、
 それは実際に試してみれば簡単にわかる事だ。
 それに、どうしても微妙な差異が気になるのであれば
 ホワイトバランスの微調整とか、撮影後の編集で色味の
 調整は任意に可能だ。

 単なる思い込みとか、あるいは何十年も前に、どのような
 経緯で広まったかも良くわからない古い常識(風評)には
 現代において、なお囚われている必要は全く無い。
 疑問点があれば、自分で実際に試してみれば済む話だ。

---
さて、今回の記事はこのあたりまでで、次回もまた「補足編」
となるが、内容は未定だ。


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